説明

梱包材アセンブリ

【課題】 輸送による加工装置の損傷や加工精度の不良を低減可能な梱包剤アセンブリを提供することである。
【解決手段】 加工装置を梱包する梱包材アセンブリであって、ベースと、該ベース上に設けられた枠体と、該枠体中に挿入された緩衝材と、該枠体中に挿入された緩衝材上に載置され、加工装置を支持する可動天板とを具備し、該ベースと、該枠体と、該緩衝材とで該可動天板の沈み込みを許容する緩衝室を画成することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸送に際して加工装置を梱包する梱包材アセンブリまたはパレットに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、各種の加工を行う加工装置を輸送する際は、金属製や木製のパレット上に加工装置を固定し、梱包して加工装置を輸送している。外装カバーを加工装置に装着したまま輸送すると、輸送中の振動によって外装カバーが加工装置の骨格に衝突して損傷したり、塗装が剥げ落ちる恐れがある。
【0003】
そこで、従来から加工装置よりカバーを取り外し、外装カバーと加工装置とを個別に梱包して輸送する方法が採用されていた。このように個別に梱包して輸送した後、それぞれ開梱するという手間を解消すべく、特開2007−331050号公報では、外装カバーを装着したまま輸送できるようにした加工装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−331050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1に開示されたような加工装置でも、輸送中の振動や衝撃で加工装置のボルトが緩んだり、又は脱落してしまうという問題がある。加工装置のボルトが緩んだり脱落してしまうと、加工装置自体を損傷してしまうことになる。
【0006】
特に、道路や鉄道の整備が不十分な諸外国において精密加工装置を車両等で輸送する場合には、輸送時に受ける衝撃や振動が大きく、この衝撃や振動によって加工装置の精度が狂い、輸送先で再度精度出しを行う必要があった。
【0007】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、輸送による加工装置の損傷や加工精度の不良を低減可能な梱包材アセンブリを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によると、加工装置を梱包する梱包材アセンブリであって、ベースと、該ベース上に設けられた枠体と、該枠体中に挿入された緩衝材と、該枠体中に挿入された緩衝材上に載置され、加工装置を支持する可動天板とを具備し、該ベースと、該枠体と、該緩衝材とで該可動天板の沈み込みを許容する緩衝室を画成することを特徴とする梱包材アセンブリが提供される。
【0009】
好ましくは、可動天板は加工装置を支持する支持部を有している。好ましくは、ベースと可動天板とが複数本のボルトにより締結されて梱包材アセンブリが組み立てられる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の梱包材アセンブリは、加工装置を支持する可動天板の下方に緩衝室を備えているため、輸送中に衝撃を受けた場合、加工装置を支持する可動天板が緩衝室に沈みこむことにより衝撃を緩和するため、加工装置が損傷したり加工装置の加工制度不良が発生することを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明実施形態に係る梱包材アセンブリの分解斜視図である。
【図2】梱包材アセンブリの分解側面図である。
【図3】梱包材アセンブリの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1を参照すると、本発明実施形態に係る梱包材アセンブリ(パレット)10の分解斜視図が示されている。図2は梱包材アセンブリ10の分解側面図、図3はその側面図である。
【0013】
主に図1を参照すると、12は梱包材アセンブリ10のベースであり、合板から形成された床板14と、床板14に固定された複数(本実施形態では3本)の足16とから構成される。
【0014】
各足16は床板14に固定された合板からなる梁18と、梁18の下面に接着された緩衝材20とから構成される。緩衝材20は、発泡ポリエチレンや発泡ポリプロピレン等から構成される。
【0015】
ベース12の床板14上には矩形状枠体(矩形状側壁)22が載置され、内部に緩衝室23を画成する。枠体22は合板から形成されている。床板14上に載置された枠体22の緩衝室23中には緩衝材24が挿入されている。緩衝材24は、足16の緩衝材20と同様に、発泡ポリエチレン、発泡ポリプロピレン等から形成される。
【0016】
緩衝材24上には強化ダンボール26が載置される。そして、この強化ダンボール26上に可動天板28が搭載される。可動天板28は、合板から形成された天板30と、天板30に固定された複数(本実施形態では3本)の支持部を構成する梁32と、梁32と直交するように梁32に固定された2本の梁34とから構成される。支持部を構成する梁32の上面には防振ゴム36が接着されている。
【0017】
図3に示すように、ベース12の床板14と可動天板28の梁34とは、緩衝材38を介装して、複数本のボルト40及びナット42,44により締結され、梱包材アセンブリ10が組み立てられる。
【0018】
切削装置等の加工装置の輸送に際しては、加工装置46が梱包材アセンブリ10の可動天板28上に搭載される。より詳細には、加工装置46は可動天板28の支持部を構成する梁32上に搭載され、ボルト等により梱包材アセンブリ10に固定される。
【0019】
可動天板28の支持部は、合板から形成された梁32の上に防振ゴム36が接着されているため、梱包材アセンブリ10に固定された加工装置が振動や衝撃を受けても、防振ゴム36が振動を軽減し、梁32がばねとして作用して衝撃を緩和する。床板14に固定された梁状の足16もばねとして作用し、衝撃を緩和する。
【0020】
上述した実施形態では、合板から形成された天板30に表面処理が施されていないため、表面に微小な凹凸を有している。よって、強化ダンボール26を使用せずに、可動天板28と緩衝材24とを直接接触させると面接触せず、衝撃の分散効率が低下する。
【0021】
これを防止するために、本実施形態では、表面に凹凸を有しない強化ダンボール26を緩衝材24と可動天板28との間に挿入している。天板30として、表面処理が施されて表面が均一な合板を使用する場合には、強化ダンボール26を省略することができる。
【0022】
梱包材アセンブリ10上に加工装置46を搭載して輸送中に衝撃を受けた際には、可動天板28が緩衝室23内に沈み込み、緩衝材24に含まれていた空気が緩衝室23中に流出することで、エアバッグのように作用することにより衝撃を緩和する。
【0023】
本発明の梱包材アセンブリ10の有効性を確認するため、以下の比較実験を行った。測定器具としてはマイクロナノテクノ社製の衝撃振動データロガーSR300を使用し、加工装置にX,Y,Z方向の衝撃振動データロガーを取りつけ、高さ30センチから自由落下させた際に加工装置が受ける衝撃を測定した。
【0024】
従来よく使用されている金属性パレットに加工装置を固定した場合の衝撃値は表1に示した通りであった。
【0025】
【表1】

【0026】
一方、本発明の梱包材アセンブリ10に加工装置を固定した場合の衝撃値は表2に示す通りであった。
【0027】
【表2】

【0028】
表1及び表2において、X方向の+、−は装置所定位置を基準に左右方向を示しており、Y方向の+、−は装置所定位置を基準に前後方向を示しており、Z方向の+は鉛直線上の上方向を示し、Z方向の−は鉛直線上の下方向をそれぞれ示している。更に、+方向の衝撃値は−方向から受けた衝撃を示し、−方向の衝撃値は+方向から受けた衝撃を示している。
【0029】
表1及び表2を観察すると明らかなように、本発明の梱包材アセンブリ10上に加工装置を固定した場合には、従来の金属パレット上に加工装置を固定した場合に比較して、X,Y,Zの何れの方向の衝撃値をも顕著に改善している。
【0030】
本発明の梱包材アセンブリ10に加工装置46を固定して、落下前後での加工精度(X軸ピッチング、X軸ヨーイング、Y軸ピッチング、Y軸ヨーイング、X−Y直角度)の比較を行ったが、加工精度の悪化は見られず落下による問題はなかったことが判明した。更に、落下前後での装置外観(形状変化、位置ずれ)は見受けられなかった。
【符号の説明】
【0031】
10 梱包材アセンブリ(パレット)
12 ベース
14 床板
16 足
22 枠体
23 緩衝室
24 緩衝材
26 強化ダンボール
28 可動天板
30 天板
32 支持部(梁)
36 防振ゴム
38 緩衝材
40 ボルト
42,44 ナット
46 加工装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工装置を梱包する梱包材アセンブリであって、
ベースと、
該ベース上に設けられた枠体と、
該枠体中に挿入された緩衝材と、
該枠体中に挿入された緩衝材上に載置され、加工装置を支持する可動天板とを具備し、
該ベースと、該枠体と、該緩衝材とで該可動天板の沈み込みを許容する緩衝室を画成することを特徴とする梱包材アセンブリ。
【請求項2】
前記可動天板は、加工装置を支持する支持部を有している請求項1記載の梱包材アセンブリ。
【請求項3】
前記ベースと前記可動天板とは複数本のボルトにより締結されて、梱包材アセンブリが組み立てられる請求項1又は2記載の梱包材アセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−189959(P2011−189959A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−57558(P2010−57558)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【出願人】(510071600)トライウォールジャパン株式会社 (1)
【Fターム(参考)】