説明

棒受け漁用の集魚灯

【課題】 光源の長寿命化や高効率化を容易に図ることができ、かつ、エネルギーの利用効率も大幅に引き上げることができる棒受け漁用の集魚灯を提供する。
【解決手段】 集魚灯1は、ショートアークで小型のメタルハライドランプが使用される光源20と、光源20からの光を集光して反射させる反射ミラー21と、光源20を安定的に点灯させる安定器27と、光源20の瞬時の点灯及び瞬時の再点灯を行わせるスターター28とを有するランプユニット2を、一体として複数台、かつ、防水状態で備えるとともに、複数のランプユニット2中の光源20を同時に点灯及び消灯させる回路手段9を備えた。反射ミラー21の使用により光の利用効率がよくなった小型の光源20を用いて、小型軽量なランプユニット2を作り、これらを複数台用いて集魚灯1を形成しているので、この集魚灯1を棒受け漁用の漁船の支持棒に取り付けても、これに大きな撓みは生じない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漁船から水面側に突出する支持棒に取り付けられ、水中に光を照射することにより、前記漁船の周りに魚を集めて、この魚を棒受け網中に誘い込む棒受け漁用の集魚灯に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、光に集まる性質(走光性)を有する魚(サンマや烏賊等)の捕獲には、夜間、漁船上から水中を明るく照らして魚を漁船周りに集める集魚灯が用いられている。例えば、棒受け網を用いたサンマの棒受け漁では、漁船の船体から海側に延びる長尺な支持棒に、多数の光源が取り付けられた集魚灯(いわゆる、スズラン灯)が用いられ、かかる集魚灯を状況に応じて点灯・消灯させることにより、サンマを漁船周りに集めるとともに、このサンマを棒受け網に誘い込んで捕獲している。
【0003】
上記集魚灯には、瞬時点灯や瞬時再点灯が可能な、例えば、500〜750Wの白熱電球が21個、支持棒に取り付けられていて、100トン程度の中型漁船では、この集魚灯を20本以上備えている。このため、このような集魚灯を備えた漁船の消費電力は大きなものとなっている。
【0004】
一方、近年の集魚灯では、白熱電球に替えて、高輝度放電ランプの一つである大型のメタルハイドランプが使用され、光源の長寿命化や高効率化(省電力化)が図られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記大型のメタルハイドランプは、棒受け漁に不可欠な瞬時点灯、瞬時再点灯が容易にできないため、これを棒受け漁用の集魚灯に用いるには、シャッターのような付加設備が必要になり、装置の複雑化やコスト高の問題が生じる。
【0006】
また、上記メタルハイドランプには、安定器や点灯用のスターターが必要になるが、安定器は大型で重量があり、かつ、スターターは高周波ノイズ防止等の観点から安定器側に設置することが望まれることから、大型のメタルハイドランプを棒受け漁用の集魚灯に用いるには、メタルハイドランプのみを支持棒に取り付け、安定器とスターターとは船内に設置せざるをえないこととなる。このため、このような集魚灯では、スターターとメタルハイドランプとの間の高圧配線が支持棒に沿って長く設置されることとなり、これが電気を通しやすい海水等に触れることから、この高圧配線の漏電防止対策が充分にできず、安全性にも問題が生じる。また、上記集魚灯では、船内に安定器やスターターの収納空間が必要となり、船内が狭くなってしまうとともに、船内温度が安定器等から発する熱によって上昇し、作業者が船内に居づらいという問題もある。
【0007】
したがって、棒受け漁用の集魚灯では、補助的なもの以外、大型のメタルハイドランプは使用されず、従来通りの白熱電球等が使用されつづけており、光源についての長寿命化や高効率化の問題は充分に解決されていない。
【0008】
また、白熱電球を光源とした上記従来の集魚灯では、光源の上方に簡単な傘が設けられているのみであり、光源自体はこの傘からはみ出すように位置決めされているので、光源からの光が上方や側方に飛散し易く、エネルギーの利用効率上も問題がある。特に、発電用に使用される重油燃料の量も多いため、近年の石油製品の高騰を考えると、燃料費が経営を圧迫しているという問題もある。
【0009】
この発明は、以上の点に鑑み、光源の長寿命化や高効率化を容易に図ることができるとともに、エネルギーの利用効率も大幅に引き上げることができる棒受け漁用の集魚灯を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の請求項1記載の発明は、漁船から水面側に突出する支持棒に取り付けられ、水中に光を照射することにより、前記漁船の周りに魚を集めて、この魚を棒受け網中に誘い込む棒受け漁用の集魚灯において、ショートアークで小型のメタルハライドランプが使用される光源と、前記光源からの光を集光して反射させる反射ミラーと、前記光源を安定的に点灯させる安定器と、前記光源の瞬時の点灯及び瞬時の再点灯を行わせるスターターとを有するランプユニットを、複数台一体となるように、かつ、防水状態で備えるとともに、前記複数のランプユニット中の前記光源を同時に点灯及び消灯させる回路手段を備えていることを特徴とする。
【0011】
この発明では、漁船の支持棒に、これ1本に必要とされる光量を得るだけの数のランプユニットを取り付けても、以下の2つの理由により、支持棒に大きな撓みが生じるのを防止できる。1つ目の理由は、反射ミラーの使用により、光源から発せられる光の利用効率を上げているので、漁船の支持棒1本当たりに必要とされる光源(メタルハライドランプ)の総出力を充分に下げることができ、その分、安定器等の小型軽量化が図られているからである。2つ目は、光源に発光効率のよいメタルハライドランプを使用しているので、従来の白熱電球等の場合と比較して、光源の総出力を減少でき、この点からも、安定器等の小型軽量化が図られているからである。すなわち、この発明では、支持棒に安定器やメタルハライドランプを複数備えた集魚灯を取り付けても、支持棒に不都合(大きな撓み)は生じず、かつ、スターターと光源との間の距離も短くなって、安全上の問題も生じない。
【0012】
また、この発明では、メタルハイドランプは、ショートアーク(電極線間距離が数mm以下、例えば、1.5〜5mm)で小型(例えば、出力が35〜75W)のため、ランプの発光内管が小さくなり、瞬時点灯及び瞬時再点灯も容易に可能となる。
【0013】
この発明の請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の場合において、前記反射ミラーは、前記光源からの光をほぼ平行なスポット光として反射させるための焦点を備えているとともに、前記ランプユニットは、前記反射ミラーの光軸方向に前記光源を移動させ、前記反射ミラーからの反射光を、ほぼ平行なスポット光と、外方に発散する光とに切り替えるランプ移動手段を有しており、かつ、前記回路手段は、前記複数のランプユニットの前記ランプ移動手段を同時に作動させる機能を有していることを特徴とする。
【0014】
この発明では、ショートアークのメタルハイドランプは点光源と見なせるため、これをランプ移動手段により、反射ミラーの光軸方向に沿って、焦点の位置に移動させれば、反射光をほぼ平行なスポット光にすることができるとともに、これをランプ移動手段により、反射ミラーの光軸方向に沿って焦点の位置からずらせば、反射光を外方に発散する発散光とすることができる。
【0015】
この発明の請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明の場合に、前記光源は、発光内管及び外管内の電極線の向きが前記反射ミラーの光軸方向と直行するように、この反射ミラーに位置決めされていることを特徴とする。
【0016】
この発明の請求項4記載の発明は、請求項1乃至3の何れかに記載の発明の場合に、前記スターターは、プラス10KV、マイナス10KVの点灯用交流電圧を前記光源に印加することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
この発明の請求項1記載の発明によれば、メタルハライドランプの使用により、光源の長寿命化や高効率化を達成できるとともに、メタルハイドランプから発した光を反射ミラーで集めて、必要な場所に無駄なく照射できるので、エネルギーの利用効率を上げることができる。また、この発明によれば、同時に点灯・消灯する複数のランプユニットを一体的に備えているので、操作や取り付けが容易であるとともに、ランプユニットの並べ方により、集魚灯からの照度分布も、漁に合わせて種々に変えることができる。さらに、この発明によれば、光源として、ショートアークで小型のメタルハイドランプを使用しているので、瞬時点灯及び瞬時再点灯が容易に可能となり、シャッター等が不要となって、設備のコストダウンや構成の簡単化を図ることができる。さらに、この発明では、集魚灯内に安定器やスターターを有していて、これらを船内に置く必要がないので、船室内を広く利用することができるとともに、安定器等による船室内の温度上昇を防止でき、船室内の作業環境等をよくすることができる。
【0018】
この発明の請求項2記載の発明によれば、ランプユニットから、水中深くまで達する、平行なスポット光と、水中を広く照射できる、発散光とを照射できるので、漁の状況に応じて集魚灯を種々に利用することができる。
【0019】
この発明の請求項3記載の発明によれば、ランプユニットからの光を下向きに照射しても、発光内管と外管中を通る電極線の向きは、上下方向を向かず、水平方向を向くこととなる。このため、この発明では、発光内管や外管と電極線とのシール部が、熱のこもる反射ミラー近傍に位置することはなく、これらのシール部が熱によって損傷を受けるのを防止できる。また、下向き照射の場合に、発光内管が上下方向に向いていると、消灯時に発光内管中の発光体が、放電部から離れた発光内管の下部に結晶化するため、点灯時に発光体の完全蒸発が生じにくく、発光色の変更が生じるおそれがあるが、本発明では、このような現象を避けることができる。
【0020】
この発明の請求項4記載の発明によれば、スターターから光源に印加する点灯用の高圧電圧を、プラス10KV、マイナス10KVの交流電圧としたので、例えば、自動車のヘッドライトのように、プラス20KVの高電圧パルスを用いる場合に比べて、点灯用の電圧を下げることができ、その分設備の安全性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
図1はこの発明の一実施の形態に係る集魚灯の主要な構成要素であるランプユニットを示している。
【0022】
ランプユニット2は、図1で示されるように、光源20と、反射ミラー21と、カバーレンズ22と、ミラー支持板23と、ランプガイド24と、ランプ支持部25と、ランプ移動手段となるランプ移動機構26(図3参照)と、安定器27と、スターター28と、高圧配線29とから構成されている。なお、説明の都合上、ランプユニット2から安定器27、スターター28、高圧配線29を除いたものを、照明部30という。
【0023】
光源20は、高輝度放電ランプ(HIDランプ)の一種であり、自動車のヘッドライト等に使用されるメタルハライドランプから形成されている。したがって、光源20は、通常の白熱電球等と比べ、長寿命で、発光効率が高い高効率光源となっている。この光源20は、図2で示されるように、細長くかつ透明で、内部に発光体(金属のハロゲン化物、又は金属のハロゲン化物とキセノンガスとの混合物)が封入されている発光内管20aと、この発光内管20aを囲む細長くて透明な外管20bと、外管20bの一端側から発光内管20aの一端側を通って、発光内管20aの中央部近くまで、互いに近接して向き合うように差し込まれている一対の電極線20c,20cと、外管20bの外側の電極線20cを覆う保護部材20dと、一対の電極線20c,20cを高圧配線29と接続させるソケット部20eとから構成されている。
【0024】
この光源20は、出力が小型(本実施例では55Wのものを使用)で、発光内管20a内の電極間距離D(一対の電極線20c,20c間距離)が、数ミリ以下(例えば、1.5〜5mm程度)と短い、いわゆる、ショートアーク(点光源)タイプのものである。したがって、光源20は、発光内管20aが小型となり、内部の高温・高圧化が容易であるとともに、電極間に形成される電弧の長さも小さいので、瞬時点灯、瞬時再点灯が容易に可能となる。なお、発光内管20aは、高品質な石英ガラスから形成されている。
【0025】
また、この光源20は、発光内管20aや外管20b内の電極線20cの向き(放電極の向き)が、反射ミラー21の光軸(回転対称軸)Yの向きと直行するように、反射ミラー21に対して位置決めされている。このため、ランプガイド24に支持されるソケット部20eは、発光内管20aや外管20bの長手方向と直行するように位置決めされている。また、光源20は、ソケット部20eが、反射ミラー21の光軸Yに沿って移動可能に、ランプガイド24に支持されているので、発光内管20aや外管20bも、反射ミラー21に対して、その光軸Yに沿って移動可能となっている。
【0026】
ここで、このランプユニット2は、棒受け漁用の集魚灯に用いられるので、照明部30を下向きにして、光が下向き照射されるように使用される(図9参照)。このため、光源20の反射ミラー21近傍には、光源20で発生した熱がこもるという現象が生じるが、この場合、光源20の発光内管20aや外管20b中の電極線20cが、反射ミラー21の光軸Yの向き(上下方向)に向いていると、光源20には、上部側の電極線20cと発光内管20aや外管20bとのシール部S1,S2に熱による損傷が生じやすい。ところが、この光源20では、照明部30が下向きの場合でも、発光内管20aや外管20b中の電極線20cは、反射ミラー21の光軸Yに直交する向き(水平方向)に向いているので、発光内管20aや外管20bと反射ミラー21等との間に充分な放熱空間が設けられ、この放熱空間によって、光源20のシール部S1,S2等に熱による損傷が生じるのが防止される。もちろん、反射ミラー21外方の光源20の取り付け部に、ヒートシンクのような冷却手段を取り付ければ、上記のような不都合は生じない。
【0027】
また、光源20の発光内管20aや外管20b(中の電極線20c)が、反射ミラー21の光軸Yの向きに向き、かつ、下向き照射するように光源20を下に向けると、光源20の冷却時、発光内管20a内の金属のハロゲン化物が放電部から離れた発光内管20aの下部で結晶化し、点灯時に、金属のハロゲン化物が完全に蒸発しにくく、光源20の発光色が異なってしまうという問題があるが、発光内管20a内の電極線20cの向きを、反射ミラー21の光軸Yに直交する向きに向ければ、金属のハロゲン化物が発光内管20aの放電部近傍に結晶化するため、このような不都合は生じない。
【0028】
反射ミラー21は、光源20の背後や側方に照射される光を集めて(反射して)、前方のカバーレンズ22側に照射するものである。この反射ミラー21は、アルミ板から形成される放物面鏡であり、内面の鏡面部には、反射光を均一化するエンボス加工(小凹凸模様の付加)が施されている。この反射ミラー21は、中心部を、ミラー支持板23と不図示のねじを介して、ランプガイド24の拡径部24aに加圧固定されており、ランプガイド24の孔から突出する光源20(詳細に言えば、発光内管20a内の放電部分)を、その光軸Y上に位置させている。なお、反射ミラー21の外周部は、鏡面加工されていない平らなリング部21aとなっている。
【0029】
カバーレンズ22は、反射ミラー21の開口端側を隙間なく覆って、反射ミラー21や光源20を保護するガラスレンズであり、外周部内面が、防水用のシリコンゴムGを介して、反射ミラー21のリング部21aに接着固定されている。このカバーレンズ22は、光源20からの前方への直接光及び反射ミラー21からの反射光を、反射ミラー21の光軸Y側に集めるように、凸レンズ形状に形成されている。なお、ランプガイド24は、光源20のソケット部20eを反射ミラー21の光軸Yに沿って移動自在に支持しており、ランプ支持部25は、ランプガイド24に取り付けられ、内部に、ランプ移動機構26を収納している。ランプガイド24及びランプ支持部25は、絶縁材から形成されている。
【0030】
ランプ移動機構26は、光源20を、反射ミラー21の光軸Yに沿って、この光軸Y上の2点(焦点Fと後方拡散点K)間に、例えば1〜7mmの距離Eだけ移動させるものである。このランプ移動機構26は、図3で示されるように、ランプ支持部25内に収納されており、励磁によって可動鉄芯260aを所定距離だけ内部に引き込むソレノイド260と、ソレノイド260の可動鉄芯260aを弾性力により所定距離だけ外方に引き出すバネ部材261と、支点Rを中心にランプ支持部25に回動自在に支持され、ソレノイド260の可動鉄芯260aの進退によって、電極線20cのソケット部20eを反射ミラー21の光軸Yに沿って移動させ、光源20(発光内管20a)を反射ミラー21の焦点Fと発散点Kの位置に位置決めするカム262とから構成されている。なお、ソレノイド260の可動鉄芯260aとカム262、及びカム262と電極線20cのソケット部20eとは、それぞれ、回動可能なピン接合部Q1,Q2により連結されている。また、ソレノイド260には、電源コード260bを介して、所定の電源から電気が供給される。
【0031】
ここで、ソレノイド260に電源が投入され、これが励磁されると、可動鉄芯260aが内部に引き込まれ、カム262を介して、光源20のソケット部20eがランプ支持部25内に引き込まれるので、光源20は反射ミラー21の発散点Kの位置に位置決めされる。このため、光源20からの光は、カバーレンズ22である程度は収束されるが、光柱角が最大で45度となるような発散光として外方に照射される。また、ソレノイド260への電気の供給が停止されると、可動鉄芯260aがバネ部材261により外方に所定長さだけ引き出され、カム262を介して、光源20は反射ミラー21の焦点Fの位置に位置決めされる。このため、光源20からの光は、反射ミラー21とカバーレンズ22を介して、ほぼ平行なスポット光として外方に照射される。
【0032】
安定器27は、光源20を安定的に点灯させるものであり、出力55Wの光源20用で、その大きさは、縦120mm、横90mm、厚さ35mmであり、その重さは、数百グラムである。なお、安定器27には、電源コード27aを介して、AC100〜240V電源から電気が供給される。
【0033】
スターター28は、電気的に、安定器27と光源20との間に置かれ、光源20を瞬時点灯(冷えた状態から瞬時に所望の光量が得られるように点灯させること)、及び瞬時再点灯(消灯後直ちに所望の光量が得られるように点灯させること)させるものである。このスターター28は、プラス10KV、マイナス10KVの高電圧交流を光源20に印加して、光源20の瞬時点灯、瞬時再点灯を実現している。このため、このスターター28は、自動車のヘッドライト用のスターター(例えば、20KVの高電圧パルスを印加)等と比べ、瞬間的には10KVの電位差しか生じさせないため、安全性に優れている。
【0034】
このスターター28は、光源20との間の高圧配線29を短くして、漏電防止性能といった設備の安全性を高めるため、光源20の近くに設置される。また、このスターター28は、安定器27とスターター28間の配線に、高圧配線29に起因して、高周波ノイズが発生するのを防止すべく、安定器27と一体又は安定器27の近くに設置される。
【0035】
図4はこの発明の一実施の形態に係る集魚灯1を示している。
この集魚灯1は、出力55Wの光源20を使用したランプユニット2を6セット、一列に並べるように一体化し、内部への水の侵入を防止(防水処理)したものである。この集魚灯1は、図4で示されるように、6セットのランプユニット2と、ランプユニット2を収納する断面(コ)の字形の細長いケース3と、ケース3の開口を覆って塞ぐとともに、ランプユニット2の照明部30が取り付けられるケース蓋4と、断面(コ)の字型の、6個のリング状ゴムパッキン5と(図1参照)、6個の押さえ枠板6と、複数の止めねじ7と、2枚のガイド板8と、6個のランプユニット2を同時に点灯・消灯させる回路手段としての端子板9と、トグルスイッチ10とから構成されている。なお、ケース3、ケース蓋4、押さえ枠板6、及びガイド板8は、薄い(例えば厚さ1.2mm)ステンレス板から形成されている。また、止めねじ7もステンレス材により形成されている。
【0036】
ケース蓋4には、図4の(a)で示されるように、190mmのピッチPで、ランプユニット2のカバーレンズ22等をケース3の外に突き出すための円形開口4a(図1参照)が、6個形成されているとともに、押さえ枠板6にも同じサイズの円形開口6aが形成されている。ランプユニット2の照明部30をケース蓋4に取り付けるには、図1で示されるように、反射ミラー21とカバーレンズ22との外周部にゴムパッキン5が嵌め込まれた照明部30のゴムパッキン5側を、円形開口4aから突き出すようにしてケース蓋4に当てるとともに、カバーレンズ22の中央部を円形開口6a側に逃がすようにして、ゴムパッキン5の反対側に押さえ枠板6を当てた後、押さえ枠板6側から差し込んだ止めねじ7をケース蓋4にねじ込み、照明部30のゴムパッキン5側を押さえ枠板6によりケース蓋4側に加圧固定すればよい。
【0037】
したがって、集魚灯1は、図4の(b)で示されるように、ケース3内にランプユニット2の6セット分の安定器27とスターター28とを収納するように取り付けた後、6つの安定器27からの電源コード27aを端子板9に接続するとともに、ケース蓋4に取り付けられたランプユニット2の6つの照明部30からの電源コード260bを端子板9に接続し、つぎに、6つの照明部30が取り付けられたケース蓋4をケース3に不図示のパッキンを介して取り付け、最後に、2つのガイド板8をケース3に取り付ければ、防水処理された状態で、その外観は完成する。そして、ケース3の端子板9には、ケース3の貫通パイプ部3bを介して、船内の所定の電源につながる電源ケーブルが接続されるとともに、船内の操作盤側からの、光源20の遠隔操作用オン/オフ信号線と、ソレノイド260の遠隔操作用の動作信号線とがパイプ部3bを介して接続される。なお、トグルスイッチ10は、現場で、ランプユニット2の6つの光源20を同時に点灯及び消灯するためのものである。
【0038】
この集魚灯1は、ケース3の長さL1が1140mm、幅L2が190mm、奥行きL3が155mm、ガイド板8間の最大距離L4が250mm、ガイド板8を含めた奥行きL5が200mmの細長い形状のものであり、総重量も19Kgしかない。したがって、この集魚灯1を、ケース3の上部の両端側に設けられた固定部3aを介して、漁船100の支持棒101(何れも図7参照)の一端側に取り付けても、光源20の全出力が小さくて、その総重量も小さいので、この集魚灯1によって、支持棒101が大きく撓んでしまうことはなく、この集魚灯1の取り扱いも容易となる。
【0039】
また、この集魚灯1では、6つのランプユニット2を同時に点灯及び消灯できるとともに、6つのランプユニット2からの光を、同時に、スポット光J1か、発散光J2(何れも図8参照)かに変更できるので、6つのランプユニット2の取り扱いも容易である。
【0040】
さらに、この集魚灯1では、反射ミラー21やカバーレンズ22を使用して、光源20からの光をロスなく所望の場所に照射できるので、従来の集魚灯に比べて、エネルギーの利用効率がよい。すなわち、この集魚灯1では、簡単な傘を使用した従来の白熱電球の集魚灯(スズラン灯)(このスズラン灯では、光源(白熱電球)の側方や一部上方への光の飛散があるため、必要な海面の照射には、多く見積もっても、発生光量の1/2程度しか利用されていない)に比べて、光の利用効率を2倍以上、上げることができる。また、この集魚灯1では、メタルハライドランプを使用しているので、白熱電球等と比べて発光効率がよく、出力55Wの6個の光源20(総出力350W)で、裸電球の状態で使用される出力500Wの白熱電球6個分(総出力3KW)の光量を出すことができる。このため、この集魚灯1は、必要な場所への必要量の光の照射という観点では、出力500Wの白熱電球12個を備えた従来のスズラン灯と同等とみなすことができる。したがって、この集魚灯1では、エネルギーの有効利用を図ることができ、経費の節減を図ることができる。
【0041】
もちろん、この集魚灯1では、光源20にメタルハライドランプを使用しているので、光源20の高効率化以外に、光源20の長寿命化をも図ることができるとともに、メタルハライドランプを使用しても、光源20の瞬時点灯及び瞬時再点灯ができるので、その使い勝手が悪くなることもない。
【0042】
また、この集魚灯1では、光源20からの光を、スポット光J1と発散光J2とに瞬時に切り替えることができるので、例えばサンマ漁で、サンマが海中の深い位置にいる場合や漁船から離れた位置にいる場合には、水中深く達するスポット光J1を用い、サンマが比較的漁船近くに達すると、発散光J2を用いて漁船の周りを広く照らす等、漁の状態に応じて、集魚灯1を種々に利用することができる。
【0043】
さらに、この集魚灯1では、6個のランプユニット2が1列に長く配置されているので、棒受け漁に適した、漁船側から海側に向かって細長い照度分布を容易に得ることができる。
【0044】
また、この集魚灯1では、安定器27やスターター28を船室内に収納する必要がないので、船室内を広く利用できるとともに、安定器27等による船室内の温度上昇を防止でき、船室内の作業環境等をよくすることができる。もちろん、この集魚灯1では、光源20とスターター28間の高圧配線29が短く、かつ、スターター28や高圧配線29がケース3内に防水状態で収納されているので、高圧配線29等に漏電等が生じにくく、設備の安全性を高めることができる。
【0045】
なお、集魚灯1は、ランプユニット2を3個以上横に並べたものであればよく、光源20の出力も、35W〜70W程度の小型のものであれば、どのようなものでもよい。
【0046】
また、反射ミラー21の形状も、反射光を平行光にできるものであれば、放物面形状に限らず、楕円面の一部を用いるものであってもよい。
【0047】
さらに、ケース3やケース蓋4等の材質を、金属材(ステンレス材)でなく、FRB等から形成することにより、集魚灯1の重量をさらに小さくすることができる。
【0048】
図5及び図6は他の実施の形態に係る集魚灯1Aを示している。この集魚灯1Aでは、1つのランプユニット2のみを、1個用のケース蓋や押さえ枠板等を使用して、小ケース11中に取り付けてランプ装置2Aを形成し、このランプ装置2Aを、複数台(この場合、6台)、平面的に(例えば10角形状に)並べた後、これらを、その背面側に配置される支持具12,13で一体的に連結支持させたものである。なお、符号14は、支持具13に支持されるサイドカバーであり、符号15は、6つのランプ装置2Aを、同時に点灯・消灯させるとともに、光源20を同時に移動させるための、防水処理された回路手段としての端子板である。
【0049】
この集魚灯1Aでは、中央部に配置されるものを除いた、外周側に配置されるランプ装置2Aが、光の照射面をやや側方を向けるように傾けられていて、広範囲に光を照射できるようになっている。また、この集魚灯1Aでは、ランプ装置2Aの並べ方によって、種々の形状の照度分布を簡単に得ることができる。
【0050】
つぎに、この集魚灯1を使用した、例えばサンマの棒受け漁について説明する。
図7は、サンマの棒受け漁を行う漁船100を上方から見た状態を示している。
この漁船100には、右舷100a側に6本、左舷100b側に2本、船首100c側に1本、計9本の細長い支持棒101が、海面側に突き出すように位置決めされており、これらの支持棒101の一端側には、海面を照射できるように集魚灯1が下向きに取り付けられている。これらの支持棒101は、下端を支点として上端側を上下方向に回動できるようになっているが、この実施の形態例では、図9で示されるように、海面Hと例えば20度の角度をなすように位置決めされていて、集魚灯1が海面Hに向かってほぼ下向きに光を照射している。船首100c側の支持棒101のみは、下端を中心に、右舷100a側から、左舷100b側まで、首を振るように水平回動でき、その集魚灯1で、漁船100の右舷100a側から船首100c側を通って左舷100b側までの海面Hを照射する。なお、漁船100の左舷100b側の中央の支持棒101には、本発明とは異なる赤色光を発する集魚灯200が取り付けられている。
【0051】
図8は、漁船100のすべての集魚灯1を点灯した状態を示している。漁船100には、平面上、これと直行するように海面H側に向かって支持棒101が取り付けられ、この支持棒101に沿って集魚灯1が取り付けられているので、この集魚灯1を点灯すると、漁船100外方の海面Hは縦長の楕円状に照らされる。この場合、集魚灯1からの光がスポット光J1であれば、各集魚灯1からの光は交わることなく海面Hを強く照射するが、集魚灯1からの光が発散光J2であれば、少なくとも、右舷100a側の集魚灯1からの光は、互いに重なり合い、漁船100の右舷100a側の海面H全体を広く照射する。
【0052】
サンマ漁用の棒受け網102は、図7で示されるように、上方から見て四角い開口を有した袋状のものであり、一般に漁船100の左舷100b側に仕掛けられる。この棒受け網102には、漁船100から離れた側の開口端に、海面Hに浮く、細長い向竹103が取り付けられており、漁船100側の開口端102aには、これを漁船100側に引き上げるための複数のロープ104が取り付けられている。この棒受け網102では、サンマS(図9参照)を内部に誘い込んだ後、ロープ104を引いて開口端102aを海面H側に持ち上げるとともに、向竹103を漁船100側に引いて、サンマSを捕獲する。
【0053】
夜間、魚群探知機等を使用してサンマSの群れを見つけると、漁船100は微速で進み、船首100c側の集魚灯1も右舷100a側に回して、右舷100a側の集魚灯1をすべて点灯し、漁船100の右舷100a側に走光性のサンマSを誘集する。この場合、サンマSが海中深い位置にいれば、集魚灯1からは、到達距離の長いスポット光J1が照射され、サンマSが海中の浅い位置にいたり、浅い位置に上がってくると、広範囲に光を照射する発散光J2が照射される。また、サンマSの群れの移動状況によっては、集魚灯1を消灯して漁船100をサンマSの群れの方に高速移動させた後、集魚灯1を上述のように点灯する。そして、サンマSが漁船100の右舷100a側に集まり始めると、漁船100の左舷100b側に、棒受け網102を仕掛ける。
【0054】
つぎに、図9で示されるように、サンマSの群れが漁船100の右舷100a側に充分に集まってくると、右舷100a側の集魚灯1を消灯し、左舷100b側の集魚灯1を点灯して、漁船100の右舷100a側のサンマSを船底下方を通って左舷100b側に移動させる。この場合、船首100c側の集魚灯1は、点灯した状態で、左舷100b側までゆっくり回動され、サンマSを漁船100の左舷100b側に誘導するとともに、消灯後右舷100a側に回動して同様な動作を繰り返す。そして、図10で示されるように、サンマSを漁船100の左舷100b側に充分誘導すると、左舷100b側の集魚灯1も消灯し、赤色の集魚灯200のみを点灯して、サンマSを海面H近くまで上昇させ、その後、ロープ102cを引き上げるとともに、向竹102aを引き寄せ、サンマSを棒受け網102を用いて捕獲する。なお、右舷100a側の集魚灯1を消灯後、左舷100b側へサンマSが充分に集まらない場合等には、再度右舷100a側の集魚灯1を点灯する等をして、臨機応変な漁がなされる。
【0055】
以上のように、サンマ漁では、集魚灯1の点灯・消灯が繰り返されるので、集魚灯1には、瞬時点灯、瞬時再点灯の機能が要求されるが、この集魚灯1では、その要求に充分答えることができる。なお、支持棒101を長くし、これに、2つの集魚灯1を直列に取り付けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】この発明の一実施の形態に係る集魚灯の主要な構成要素であるランプユニットの説明図である。
【図2】ランプユニットの光源の拡大説明図である。
【図3】ランプユニットのランプ移動機構の説明図である。
【図4】集魚灯を示す図であり、(a)は正面図、(b)は(a)のAA矢視断面図、(c)は(a)のBB矢視図である。
【図5】変更実施例に係る集魚灯の側断面図である。
【図6】図5のCC矢視図である。
【図7】集魚灯を備えた漁船の平面図である。
【図8】漁船の集魚灯をすべて点灯した状態を示す図である。
【図9】集魚灯で海中のサンマを漁船の右舷側に集めている状態を示す図である。
【図10】漁船の右舷側のサンマを左舷側の棒受け網に誘導している状態を示す図である。
【符号の説明】
【0057】
1 集魚灯
2 ランプユニット
9 端子板(回路手段)
20 光源
20a 発光内管
20b 外管
20c 電極線
21 反射ミラー
26 ランプ移動機構(ランプ移動手段)
27 安定器
28 スターター
100 漁船
101 支持棒
102 棒受け網
F 焦点
H 海面(水面)
J1 スポット光
J2 発散光
Y 光軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
漁船から水面側に突出する支持棒に取り付けられ、水中に光を照射することにより、前記漁船の周りに魚を集めて、この魚を棒受け網中に誘い込む棒受け漁用の集魚灯において、
ショートアークで小型のメタルハライドランプが使用される光源と、前記光源からの光を集光して反射させる反射ミラーと、前記光源を安定的に点灯させる安定器と、前記光源の瞬時の点灯及び瞬時の再点灯を行わせるスターターとを有するランプユニットを、複数台一体となるように、かつ、防水状態で備えるとともに、
前記複数のランプユニット中の前記光源を同時に点灯及び消灯させる回路手段を備えていることを特徴とする棒受け漁用の集魚灯。
【請求項2】
前記反射ミラーは、前記光源からの光をほぼ平行なスポット光として反射させるための焦点を備えているとともに、前記ランプユニットは、前記反射ミラーの光軸方向に前記光源を移動させ、前記反射ミラーからの反射光を、ほぼ平行なスポット光と、外方に発散する光とに切り替えるランプ移動手段を有しており、かつ、前記回路手段は、前記複数のランプユニットの前記ランプ移動手段を同時に作動させる機能を有していることを特徴とする請求項1記載の棒受け漁用の集魚灯。
【請求項3】
前記光源は、発光内管及び外管内の電極線の向きが前記反射ミラーの光軸方向と直行するように、この反射ミラーに位置決めされていることを特徴とする請求項1又は2記載の棒受け漁用の集魚灯。
【請求項4】
前記スターターは、プラス10KV、マイナス10KVの点灯用交流電圧を前記光源に印加することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の棒受け漁用の集魚灯。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2009−22205(P2009−22205A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−188357(P2007−188357)
【出願日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成19年5月28日 株式会社 水産新聞社発行の「週刊 水産新聞」に発表
【出願人】(507243418)有限会社ライティング (1)
【出願人】(507243429)有限会社仁光電機商会 (1)
【Fターム(参考)】