説明

棒状トランス

【課題】本発明は、簡単な構成により、トランスの唸りの発生や製造工程での難易度を抑えた,よりコンパクトでスリムな棒状トランスの提供を目的とする。
【解決手段】多段接続された2方向径を残りの1方向径の1/3〜1/20にし、更にトランスの1次側を並列接続すると共にトランスの2次側を直列接続した棒状トランスによる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多段接続された2方向径を残りの1方向径に比し極端に小さくした棒状のトランスに関するもので、殊に棒状の空間に収納してトランスの機能を持たせた、棒状トランスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、トランスを小型化、薄型化したもの、即ち外観形状を薄くしたり、コンパクトにしたりしたものは、例えば特許文献1などにより知られており、図3に示すように構成されている。
即ち、図3において、トランスは、コイルと絶縁層とが一体化されて平面化された高圧側コイル1と、導電板を打ち抜いた低圧側コイル2,3とを有する。高圧側コイル1の絶縁層には、コイルの導体部を避ける位置に孔1e,1fまたは切欠きを設けている。低圧側コイル2,3には高圧側コイル1の孔1e,1fまたは切欠きに対応する部分に突起2a,2b,3a,3bを設けている。前記突起2a,2b,3a,3bと前記孔1e,1fまたは切欠きとを嵌合して高圧側コイル1と低圧側コイル2,3との相対位置を決定する。
【0003】
前記トランスは、コイル形状の設計の自由度が高く、薄型化が可能であり、特性が安定し、簡略化された構造でコスト安となる薄型トランスを提供することを目的としている。
【0004】
また、特許文献2には、高圧変圧器2次側コイルを3分割し、各コイルに整流器を設け、それらを直列接続し低圧側コイルの整流電圧を電圧検出器にて検出するようにした、小型化を図ったインバータ式X線高電圧装置が開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、基板に1次巻線パターンおよび2次巻線パターンを配設し、それら基板の1次巻線パターン同志を並列接続すると共に、2次巻線パターン同志を巻き方向が同一方向になるように直列接続し、それら基板をコアを軸にして積層することによって、高圧トランスを構成して、分割ボビンおよび仕切りバリヤを不要にし、製作を容易にすると共に小型化を図った高圧トランスが開示されている。
【0006】
近年、電気・電子部材、部品の使用箇所が大幅に増加し、またその使用状況・状態が多岐にわたって来ており、その使用状況・状態に対応した形状のトランスが求められている。
一方、従来においては、一般的には理想型トランスとしては、その性能安定などの理由から、長らく縦、横、奥行きの径比率が比較的近いものが良いとされてきた。しかしながら、現在では上述のように、その使用状況・状態に対応した形状のトランスが求められて来ており、縦、横、奥行きの一方向径のみ小さいものが見られる。
【特許文献1】特開2004ー303864号公報
【特許文献2】特開平9ー266093号公報
【特許文献3】特開2000ー30951号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、最近の電気・電子分野における傾向としては、上述の理由により、さらに薄いものやスリムなトランスが求められてきている。
これに対応するため、従来の製法で1個で棒状トランスを作った場合、コアの脚が長くなり、唸りの発生及び製造工程での難易度が高くなる不具合があった。 本発明では、複数のトランスを棒状の空間に収納して全体としてもトランスの機能を持たせている。これにより、当該トランスを使用する各種製品の設計レイアウトの自由度向上を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的は、本願発明によれば、多段接続された2方向径を残りの1方向径の1/3〜1/20にしたことを特徴とする、棒状トランスにより達成される。
これにより、1方向径が残りの2方向径に比し極端に小さい、所謂棒状のトランスの作用効果を得る。
【0009】
本発明による棒状トランスは、好ましくは、多段接続された2方向径を残りの1方向径の1/3〜1/20にし、更にトランスの1次側を並列接続すると共にトランスの2次側を直列接続している。
これにより、1方向径が残りの2方向径に比し極端に小さい、所謂棒状のトランスの作用効果を得ると共に、所定の電圧が発生し得るトランスを得る。
【発明の効果】
【0010】
前記構成によれば、トランスの縦、横、奥行き中2方向径を残りの1方向径に比し、極端に小さくしたので、外観が棒状のトランスとして形成され、その使用分野、状況、状態が幅広く対応可能となり、トランス収納、収載の使い勝手が極めて良くなる。
【0011】
また、前記構成によれば、従来の製法で1個で棒状トランスを作った場合、コアの脚が長くなり、所謂トランスの唸りの発生及び製造工程での難易度が高くなる不具合を解消した、棒状の空間に収納してトランスの機能を充分に持たせた棒状トランスを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、この発明の好適な実施形態を図1〜図2を参照にしながら、詳細に説明する。
なお、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
[実施例1]
【0013】
図1は、本発明による棒状トランスの一実施形態の構成を示しており、内部組立てを示す正面図であり、(A)はその平面図、(B)はその正面図である。
この実施例において、本発明に係る棒状トランスは、オゾン発生装置内に使用される。
図1において、棒状トランス10は、各トランス20,30の1次側を並列接続すると共にトランスの2次側を直列接続したもので、縦径X並びに奥行き径Yと横径Zとの径比率を略1:4〜6としたものである。
【0014】
各トランス20,30は、巻線11,コア12,クランプ金具13,ブリッジ用基板14,ボビン15とから構成されており、各トランスの数は当該トランスを利用する製品の状況に応じ、適宜変更できる。
本実施例においては、前記のように各トランス20,30を接続することにより、全形として所謂棒状のトランスを形成する。
【0015】
図1において、巻線11はU形状のコア12に巻回するものであり、コア12に巻回する巻線11の巻線回数は、当該トランスの必要電圧により、適宜変更できる。
また、ボビン15は所定間隔を設けてコア12を囲うように形成され、本実施例においては、各トランス20,30毎に巻回されている。
ブリッジ用基板14は、巻線11と巻線11とを架橋するものである。
【0016】
コア12は、クランプ金具13のスプリング機構により押圧されている。
【0017】
前記各トランス20,30は、図1に示すように、1.0〜1.5mm厚のガラスエポキシ製の基板に銅などの導体でなるブリッジ用基板14を有する。これらのブリッジ用基板14はスルーホールで半田接続されている。
【0018】
また、前記ブリッジ用基板14は樹脂充填剤17により覆われており、本トランス10全体としても樹脂充填され埋められている。
前記各トランス20,30は、外方に伸びた端子部を有すると共に端子部に上下のブリッジ用基板14の外端にそれぞれ連通する端子を有する。
【0019】
該端子の付近において、外部回路と接続するため、導体部が露出している。また、各トランス20,30の中央部には、コア12の脚を挿入する挿入孔を有している。
【0020】
ブリッジ用基板14は、巻き方向が同一方向になるように、直列接続され、巻線11を中心に任意巻数により形成される。
【0021】
上述のように、棒状トランス10は、各トランス20,30の1次側を並列接続すると共にトランスの2次側を直列接続したもので、各トランス20,30の全体の棒状トランスの縦径Xを40mm、奥行き径Yを25mmとすると共に横径Zを158mmとし、その径比率を略1:4〜6としたものである。
【0022】
図2は、本発明による棒状トランス用の高電圧発生を示す結線図である。上述のように、本実施例においてはトランス20,30を接続しているが、各トランスの数により、また巻線11の巻線回数により、当該トランスの必要電圧を発生するようにする。なお、16は電源である。
【0023】
本発明実施形態による棒状トランス10は、以上のように構成されており、並列接続されたトランスの1次側並びに直列接続されたトランスの2次側による全体トランスに通電した場合、トランスを多段接続したことにより、より高い電圧を取り出すことことが出来ると共に、コアの脚径を抑えることにより、トランスの唸りの発生を抑えることができ、製造工程での難易度が低くなる。
【0024】
また、横径Zに比し、縦径X並びに奥行き径を極端に小さくしたので、上述のように、本発明では、棒状の空間に収納してトランスの機能を持たせることが可能となり、棒状トランスとして幅広い利用が可能となる。
【0025】
上述のように、本発明の棒状トランスをオゾン発生装置に使用した場合、トランスの多段接続による高電圧の発生により、所望のオゾンが発生されることとなる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
上述した実施形態においては、オゾン発生用で小スペース内に取り付けるように構成されているが、これに限らず、電子・電気製品のその使用状況、状態に様々な対応が可能である。
【0027】
また、上述の実施形態では、トランス2つを接続した例を示しているが、これに限らず、より多段接続をすることにより、より高い電圧を取り出すことが可能であり、電子・電気製品のその使用状況、状態に対応し得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明による棒状トランスの一実施形態の構成を示す、内部組立て図で、(A)はその平面図、(B)はその正面図である。
【図2】本発明による棒状トランス用の高電圧発生を示す結線図である。
【図3】従来のコンパクトなトランスの構成を示す概略一部断面正面図である。
【符号の説明】
【0029】
10 棒状トランス
20,30 トランス
X 縦径
Y 奥行径
Z 横径
11 巻線
12 コア
13 クランプ金具
14 ブリッジ用基板
15 ボビン
16 電源
17 樹脂充填剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多段接続されたトランスの2方向径を残りの1方向径の1/3〜1/20にしたことを特徴とする、棒状トランス。
【請求項2】
多段接続された2方向径を残りの1方向径の1/3〜1/20にし、更にトランスの1次側を並列接続すると共にトランスの2次側を直列接続したことを特徴とする、請求項1に記載の棒状トランス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−305850(P2007−305850A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−133786(P2006−133786)
【出願日】平成18年5月12日(2006.5.12)
【出願人】(000106900)シシド静電気株式会社 (39)
【出願人】(592022039)株式会社トネパ−ツ (4)