説明

椅子

【課題】 折り畳んだ状態において、杖として使用可能な折り畳み式の椅子であり、杖として使用するときは、脚をコンパクトに重ね合わせることができ、安全に歩行することができる椅子を提供する。
【解決手段】 上部に握柄12を備えた第1脚部材11と、第2脚部材21が球状の連結部位3で摺動自在に連結しており、腰掛け部材31が、第1のヒンジ構造51を介し、第1脚部材11に沿って摺動可能なスライド部材41と回動自在に連結し、かつ、裏面で第2のヒンジ構造を介して第2脚部材21の上部と回動自在に連結していることにより、第1脚部材11と第2脚部材21とが連結部位3で交差し、スライド部材41がストッパー構造により下方への摺動が抑止された第1の状態と、第1脚部材11と第2脚部材21とが沿い、スライド部材41が第1の状態より上方に上がっている第2の状態とに変化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折り畳んだ状態において杖として使用可能な折り畳み式の椅子であり、特に、折り畳んだ状態において、2本の脚が1本の脚のように重なり合う椅子に係る。
【背景技術】
【0002】
折り畳んだ状態において杖代わりに使用することができる折り畳み式の椅子は、足腰の弱い使用者が外出する際には、特に重宝がられる。特許文献1には、板状の腰掛け部に3本の脚を備えた折り畳み式の椅子が開示されている。この椅子は、3本の脚のうち中央の1本はまっすぐな棒状であり、それを挟むように回動自在に連結した2本の脚は下側が互いに離れるように折り曲げられており、折り畳まれた状態において、中央に位置する1本の脚が地面に接するように構成されており、杖代わりに使用することができる。しかしながら、このような椅子は、地面に接しない2本の脚が杖から離れて広がるように構成されているため、杖として使用するとき、地面に接しない2本の脚が歩行の妨げとなる可能性があった。
【0003】
【特許文献1】特開平9−75172号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明においては、折り畳んだ状態において、杖として使用可能な折り畳み式の椅子であり、杖として使用するときは、脚をコンパクトに重ね合わせることができ、安全に歩行することができる椅子を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明は、上部に握柄を備えた第1脚部材と、前記第1脚部材に連結した第2脚部材と、前記第1脚部材と前記第2脚部材とにより支持される腰掛け部材と、を備えた椅子であって、前記第1脚部材に設けられた第1連結部の球状外面に、前記第2脚部材に設けられた第2連結部が摺動自在に嵌合し連結部位を構成し、前記第1脚部材は、前記第1脚部材に沿って摺動自在に備えられたスライド部材と、前記スライド部材の下方において、前記スライド部材の摺動を抑止するストッパー構造と、を有しており、前記腰掛け部材は、第1のヒンジ構造を介して前記スライド部材と回動自在に連結し、かつ、この腰掛け部材の裏面に設けられた第2のヒンジ構造を介して前記第2脚部材の上部と回動自在に連結しており、前記第1脚部材と前記第2脚部材とが前記連結部位で交差し、前記スライド部材が前記ストッパー構造により下方への摺動が抑止された第1の状態と、前記第1脚部材と前記第2脚部材とが沿い、前記スライド部材が前記第1の状態より上方に上がっている第2の状態と、に変化することを特徴とする椅子である。
第1の発明の椅子は、第1連結部の球状外面に、第2連結部が摺動自在に嵌合し、連結部位を構成していることにより、球状外面と第2連結部とが摺動することにより、第1脚部材と第2脚部材とが、連結部位を支点として回動し、交差した状態と、沿った状態とに変化することができる。腰掛け部材は、第1脚部材に摺動自在に設けられたスライド部材と第1のヒンジ構造を介して連結し、第2のヒンジ構造を介して第2脚部材の上部と連結しており、第1脚部材と第2脚部材との状態が変化するのに伴って腰掛け部材の状態も変化することができる。本発明の椅子によれば、第1脚部材と第2脚部材とが連結部位で交差し、スライド部材の下方への摺動が抑止されている第1の状態において、腰掛け部材に腰掛けられる状態となり、第1脚部材と第2脚部材とが沿い、スライド部材が第1の状態より上方に上がっている第2の状態において、折り畳まれた状態となる。
【0006】
第2の発明は、第1の発明に記載の椅子であって、前記第1脚部材はパイプ状であり、前記第1脚部材の側面には、前記第1連結部と前記ストッパー構造との間に位置する上孔と、前記第1連結部より下側に位置する下孔と、が設けられており、前記第1脚部材の内部には、前記上孔と前記下孔とを渡してロープが通されており、前記ロープは、上孔から出る一端が前記スライド部材に固定され、下孔から出る他端が前記第2脚部材に固定されており、前記ロープには、凸部が設けられており、前記第1の状態において、前記第1脚部材の側面で、前記凸部が前記上孔を通過できないことにより、前記第1脚部材と前記第2脚部材との交差する角度の拡がりを抑止することを特徴とする椅子である。
第2の発明の椅子によれば、ロープの一端はスライド部材に固定されており、他端はパイプ状の第1脚部材に設けられた上孔から第1脚部材の内部を通り、下孔から出て第2脚部材に固定されている。そのロープの上孔より外側に出ている部分は凸部が設けられており、腰掛けられる第1の状態において、凸部が上孔を通過できないことにより、第1脚部材と第2脚部材との交差の角度が所定の角度以上に拡がるのが抑止されている。また、第2の状態においては、ロープはスライド部材に引っ張られて第1脚部材に沿って伸びた状態となるから垂れ下がらない。
【0007】
第3の発明は、第1の発明または第2の発明に記載の椅子であって、前記第2脚部材は、前記第1脚部材に対向した面がくぼんでいる樋状であり、前記第2の状態において、前記第2脚部材が前記第1脚部材の外面に覆い重なることができることを特徴とする椅子である。
第3の発明の椅子によれば、折り畳まれた第2の状態において第2脚部材が第1脚部材に覆い重なり、第1脚部材と第2脚部材が一本の脚部材のような格好となることができる。
【発明の効果】
【0008】
第1の発明の椅子によれば、折り畳み可能であり、第1の状態において、腰掛け部材に腰掛けられる状態となり、第2の状態において、折り畳まれた状態となり、第1脚部材を支柱とし、杖として使用することができる。この折り畳まれた状態(第2の状態)において、2本の脚部材が沿った状態となるため、杖として使用しない第2脚部材が歩行の邪魔になることがなく、安全に歩行することができる。
第2の発明の椅子によれば、第1脚部材と第2脚部材との交差の角度の拡がりがロープにより抑止され、腰掛けられる第1の状態において、安定性に優れるとともに、第2の状態において、ロープが垂れ下がることなく、歩行時の安全が保持される。
第3の発明の椅子によれば、折り畳まれた状態(第2の状態)において、杖として使用するときは、使用しない第2脚部材が支柱となる第1脚部材に重なり合うため、使用しない第2脚部材が邪魔になることなく安全に歩行できる。しかも、見た目にもすっきりとしており携帯性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態について説明する。図1は、本実施の形態に係る椅子の斜視図であり、第1の状態を実線で示し、第2の状態を二点鎖線で示した図である。図2は、図1の椅子の第2の状態における背面図である。図3は、図1の椅子の第1の状態における側面図の腰掛け部材を一部切り欠いて示す部分図であり、図4は、図1の椅子の第2の状態における側面図の腰掛け部材を一部切り欠いて示す部分図である。図5(a)は、図2に示す椅子のA−A断面図であり、図5(b)は、図2に示す椅子のB−B切断部の端面を示す図であり、図5(c)は、図2に示す椅子のC−C切断部の端面を示す図である。図6(a)は、図1の椅子の第1脚部材の背面図であり、図6(b)は、図6(a)に示す第1脚部材のD−D断面図であり、図6(c)は、図6(b)に示す第1脚部材のE−E断面図である。
【0010】
図1に示すように、椅子1は、上部に握柄12を備えた第1脚部材11と、第1脚部材11に連結した第2脚部材21と、第1脚部材11と第2脚部材21とにより支持される腰掛け部材31とを備えており、第1脚部材11に設けられた第1連結部13の球状外面14に、第2脚部材21に設けられた第2連結部23が摺動自在に嵌合し連結部位3を構成している。
【0011】
具体的には、図1に示すように、椅子1には、略L字状の握柄12を備えた第1脚部材11と第2脚部材21とが備えられており、円盤状の腰掛け部材31が、第1脚部材11と第2脚部材21の2本の脚部材により支持されている。第1脚部材11には、球状外面14を有する中空球状の第1連結部13が設けられており(図6(a)参照)、第2脚部材21には、球殻状の第2連結部23が設けられている。図5(a)および図5(b)に示すように、第1連結部13の球状外面14に、第2連結部23が摺動自在に嵌合し、連結部位3を構成している。球状外面14と第2連結部23とが摺動することにより、第1脚部材11と第2脚部材21とが、連結部位3を支点として回動し、交差した状態と、沿った状態とに変化することができる(図1参照)。
【0012】
図5(b)に示すように、第1脚部材11と第2脚部材21との回動作用を円滑にするために、第2連結部23の内部にはセンターシャフト23aが備えられている。センターシャフト23aは、第2連結部23に溶接して固定されており、第1脚部材11の長手方向に対し直交した状態で、第1脚部材11に設けられた孔11a,11bおよび第1連結部材13に設けられた孔13a,13bを挿通している。このセンターシャフト23aは、第1連結部13と第2連結部23との回動の回転中心として作用するだけでなく、連結部位3の補強構造としても作用する。
【0013】
図2に示すように、第1脚部材11は、第1脚部材11に沿って摺動自在に備えられたスライド部材41と、スライド部材41の下方において、スライド部材41の摺動を抑止するストッパー構造45とを有している。
【0014】
具体的には、スライド部材41は、第1脚部材11の外周をめぐるように設けられた円筒状の部材であり、第1連結部13より上方において第1脚部材11に沿って摺動自在に備えられている。スライド部材41の下方においては、円筒状のストッパー部材45が第1脚部材11に固定されている。スライド部材41を下方へ摺動させると、ストッパー部材45に当接し、スライド部材41の下方への摺動が抑止される(図3参照)。したがって、本実施の形態においては、ストッパー部材45が、本発明の「ストッパー構造」に該当する。
【0015】
図3に示すように、腰掛け部材31は、第1のヒンジ構造51を介してスライド部材41と回動自在に連結し、かつ、この腰掛け部材31の裏面に設けられた第2のヒンジ構造55を介して第2脚部材21(21a)の上部と回動自在に連結している。
【0016】
具体的には、図3および図4に示すように、第1のヒンジ構造51の回転軸52は、第1脚部材11の長手方向に対して直行するように設けられている。腰掛け部材31は、その縁が第1のヒンジ構造51を介して第1脚部材11に備えられたスライド部材41に連結している。言い換えれば、腰掛け部材31は、その腰掛け面32と第1脚部材11との角度が変化する方向に回動可能な状態でスライド部材41に連結している。また、腰掛け部材31は、その裏面33に設けられた第2のヒンジ構造55を介して、第2脚部材21(21a)の上部に連結している。第2のヒンジ構造55の回転軸56は、第1のヒンジ構造51の回転軸52と平行に設けられており、第2のヒンジ構造55は、第1のヒンジ構造51の動作により腰掛け部材31が回動するのに伴って動作可能な状態となっている。
【0017】
第1脚部材11と第2脚部材21とが連結部位3で交差し、スライド部材41がストッパー構造45により下方への摺動が抑止された第1の状態と、第1脚部材11と第2脚部材21とが沿い、スライド部材41が第1の状態より上方に上がっている第2の状態とに変化する。
【0018】
具体的には、椅子1は、図1に実線で示す第1の状態と、図1に二点鎖線で示す第2の状態とに変化することができる。第1の状態においては、第1脚部材11と第2脚部材21とが連結部位3で交差しており、図3に示すように、スライド部材41がストッパー部材45に当接し、スライド部材41の下方への摺動が抑止されている。このとき、腰掛け部材31は横になっており、腰掛けることができる。第2の状態においては、第1脚部材11と第2脚部材21とが沿い、図4に示すように、スライド部材41が第1の状態より上方に上がり、腰掛け部材31が立ち上がった状態となっている。このとき、第2脚部材21と腰掛け部材31とが、第1脚部材11に引き寄せられたような格好となっており、椅子1は折り畳まれた状態となる。この第2の状態において、椅子1は、第1脚部材11を支柱とし、杖として使用することができる。このとき、2本の脚部材が沿った状態となるため、杖として使用しない第2脚部材21が歩行の邪魔になることがなく、安全に歩行することができる。
【0019】
なお、本発明の椅子は、第2の状態において、杖として使用する際にスライド部材41が下方へ摺動して第1の状態に変化するのを防ぐために、スライド部材41を上方で係止する手段を備えていると、より好ましい。本実施の形態においては、第1脚部材11の上方に備えられたロック部材47がスライド部材41に設けられたロック孔42に係合することにより、スライド部材41を上方で係止することができる。
【0020】
具体的には、図3に示すように、ロック部材47は、片側に二つの突起47a,47bを有する細い板状の部材であり、バネ48を介してユニットパイプ46の内壁に弾性的に支持されている。ユニットパイプ46は、第1脚部材11の内部に嵌め込まれており、第1脚部材11とユニットパイプ46のそれぞれに形成された切り欠きが重なり、孔49を成している。このときロック部材47は、突起47a,47bが孔49から突出した状態でユニットパイプ46の内壁に弾性的に支持されている。スライド部材41を上方へ摺動すると、スライド部材41は、その内壁でロック部材47を第1脚部材11の内部に押し込みながら摺動する。さらにスライド部材42を上方へ摺動し、孔49とスライド部材41に設けられたロック孔42が重なると、ロック部材47はバネ48の弾性力で押し戻されて、下側の突起42aがロック孔42から突出した状態でロック孔42の縁に係合する。それにより、スライド部材41は上方で係止される(図4参照)。なお、上側の突起42bを押し、ロック部材47を第1脚部材11の内部に押し込むことにより、ワンタッチで係止状態を解除することができる。
【0021】
第1脚部材11はパイプ状であり、第1脚部材11の側面には、第1連結部13とストッパー構造45との間に位置する上孔61と、第1連結部13より下側に位置する下孔63とが設けられている。第1脚部材11の内部には、上孔61と下孔63とを渡してロープ65が通されており、ロープ65は、上孔61から出る一端がスライド部材41に固定され、下孔63から出る他端が第2脚部材21に固定されている。ロープ65には、凸部67が設けられており、第1の状態において第1脚部材11の側面で、凸部67が上孔61を通過できないことにより、第1脚部材11と第2脚部材21との交差する角度の拡がりを抑止する。
【0022】
具体的には、図6に示すように、第1脚部材11はパイプ状であり、その側面には、第1連結部13を挟み、上孔61と下孔63との2つの孔が設けられている。上孔61と下孔63とを渡して第1脚部材11の内部にロープ65が通されており、そのロープ65の上孔61から出る一端は、スライド部材41に固定されており、下孔63から出る他端は、第2脚部材21の下孔63と対向する位置に固定されている。図1に示すように、ロープ63には、上孔61から出ている部分に位置する凸部67が設けられている。第1脚部材11と第2脚部材21とが連結部位3で交差し、その交差の角度が拡がるとき、第2脚部材21がロープ65を引っ張りながら拡がる。ここで、「交差の角度」とは、図1にθで示される第1脚部材11と第2脚部材21との交差の角度を指している。第1の状態において、凸部67が上孔61の縁にひっかかると、上孔61を通過できず、第2脚部材21はそれ以上ロープ65を引っ張ることができない。このことにより、第1脚部材11と第2脚部材21との交差の角度は所定以上に拡がらない。
【0023】
第1の状態において、腰掛け部材31に人が腰掛けると、腰掛け部材31には下がる方向の力が加わり、それに伴い第1脚部材11と第2脚部材21とには、交差の角度がより拡がる方向に力が加わる。このとき、ストッパー部材45がスライド部材41の下方向への摺動を抑止し、さらに、ロープ65の凸部67が上孔61に引っかかることにより、第1脚部材11と第2脚部材21との交差の角度の拡がりが抑止される。このように、ストッパー部材45の作用に加えて、ロープ65が作用することにより、人が腰掛けた状態においても確実に第1の状態を保つことができる。したがって、椅子として使用するときは、安定して腰掛けた人を支えることができる。なお、本実施の形態においては、第2脚部材21の下端15は、第2の状態において、歩行の邪魔にならない程度の大きさでT字状に形成されている。これにより、第1の状態において、椅子1は単独で立つことが可能であり、人が腰を掛けるときは、左右にぐらつくことなく、より安定して腰掛けられる。
【0024】
また、椅子1が第2の状態となるとき、ロープ65は、スライド部材41に引っ張られ、第1脚部材11に沿って伸びた状態となり、杖として使用するときに、垂れ下がって脚に引っかかることがない。したがって、ロープ65の長さは、少なくとも、スライド部材41の上方への摺動を妨げず、第2の状態において垂れ下がらない長さでなければならない。
【0025】
なお、図6(b)および図6(c)に示すように、下孔63の内側においては、緩やかに湾曲して下孔63へ続くガイド溝64が設けられており、そのガイド溝64に沿ってロープ65が通されている。ロープ65がガイド溝64に沿って下孔63を出入りするため、ロープ65と下孔63の縁との摩擦が軽減され、摩擦によりロープ63が細くなったり、切断したりするのを防ぐことができる。
【0026】
第2脚部材21は、第1脚部材11に対向した面25がくぼんでいる樋状であり、前記第2の状態において、前記第2脚部材21が第1脚部材11の外面に覆い重なることができる。
【0027】
具体的には、第2脚部材21は、樋状の部位21a,21bと、第2連結部23とからなり、第2連結部23を挟んで、互いに反対向きの面が開口した2本の樋状の部位21a,21bが連なっているような格好となっている。また、その樋状の部位21a,21bが使用に伴い徐々に広く開口するのを防ぐために、外周に沿って湾曲し帯状に突出するように形成された複数の補強構造26が設けられている。図5(c)示すように、第2の状態においては、第2脚部材21(21a,21b)が第1脚部材11に覆い重なり、その結果、第1脚部材11と第2脚部材21が一本の脚部材のような格好となる(図1に示す二点鎖線図および図2参照)。これにより、椅子1をよりコンパクトに折り畳むことができる。したがって、第2の状態において、椅子1を杖として使用するときは、使用しない第2脚部材21が邪魔になることなく安全に歩行できるだけでなく、見た目にもすっきりとしており携帯性に優れる。
【0028】
また、図6(a)に示すように、第1脚部材11には複数のクッション材19が備えられている。このクッション材19は、第2の状態において杖として使用するときに、第1脚部材11と第2脚部材21(21a,21b)との間に位置し、第1脚部材11と第2脚部材21(21a,21b)とが接触して音が出るのを防ぎ、防音効果を発揮する。
【0029】
以上の構成の椅子1は、以下の動作をする。
椅子1は、腰掛けられる第1の状態と、折り畳まれて杖として使用することができる第2の状態とに変化させることができる。第1の状態においては、第1脚部材11と第2脚部材21とが連結部位3で交差し、腰掛け部材31は横になっており、スライド部材41がストッパー部材45に当接し、スライド部材41の下方への摺動が抑止される。第2の状態においては、第1脚部材11と第2脚部材21とが沿い、スライド部材41が第1の状態より上方に上がり、腰掛け部材31が立ち上がった状態となる。
さらに、第1の状態においては、ロープ65の凸部67が上孔61に引っかかることにより、第1脚部材11と第2脚部材21との交差の角度の拡がりが抑止されているため安定性に優れている。第2の状態においては、ロープ65が第1脚部材11に沿って伸び、第2脚部材21が第1脚部材11に覆い重なることによって一本の脚部材のような格好となるため、ロープ65および使用しない第2脚部材21が邪魔になることなく、杖として使用したときに安全に歩行できる。
【0030】
なお、本発明において、各部材の材質は特に限定されるものではなく、形状についても、本実施の形態に限定されるものではない。
第1脚部材11および第2脚部材21には、アルミやスチール等の金属、カーボン、合成樹脂等の種々の材料を用いることができる。第1脚部材11の握柄12の形状は、略L字状に限らず、例えば、T字状に形成されているものや、直線状で指が馴染みやすいようにくぼみや溝が形成されているようなものであってもよく、手でつかみやすいように形成されたつまみ状のものであれば、どのような形状でもよい。また、第1脚部材11および第2脚部材21の下端には、合成ゴムや合成樹脂等の弾性材により形成された、クッションを兼ねた滑り止め17,27a,27bを設けることもできる。
【0031】
腰掛け部材31には、金属、合成樹脂、木材、皮、スポンジ、布等の各種の材料を用いることができ、これらを複数組み合わせて用いてもよい。また、腰掛け部材31の形状は特に限定されず、種々の形状とすることができる。例えば、金属板の芯材に、弾性材としてスポンジを重ね、さらに表面を柔らかい布で覆い、形成することができる。
【0032】
ロープ65としては、ワイヤーロープ、合成樹脂製のロープ等、種々のロープを用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本実施の形態に係る椅子の斜視図である。
【図2】図1の椅子の第2の状態における背面図である。
【図3】図1の椅子の第1の状態における側面図の腰掛け部材を一部切り欠いて示す部分図である。
【図4】図1の椅子の第2の状態における側面図の腰掛け部材を一部切り欠いて示す部分図である。
【図5】(a)は図2に示す椅子のA−A断面図であり、(b)は図2に示す椅子のB-B切断部の端面を示す図であり、(c)は図2に示す椅子のC−C切断部の端面を示す図である。
【図6】(a)は、図1の椅子の第1脚部材の背面図であり、(b)は、図6(a)に示す第1脚部材のD−D断面図であり、(c)は、図6に示す第1脚部材のE−E断面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 椅子
3 連結部位
11 第1脚部材
12 握柄
13 第1連結部
14 球状外面
21 第2脚部材
23 第2連結部
31 腰掛け部材
41 スライド部材
45 ストッパー部材(ストッパー構造)
51 第1のヒンジ構造
55 第2のヒンジ構造
61 上孔
63 下孔
65 ロープ
67 凸部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に握柄を備えた第1脚部材と、前記第1脚部材に連結した第2脚部材と、前記第1脚部材と前記第2脚部材とにより支持される腰掛け部材と、を備えた椅子であって、
前記第1脚部材に設けられた第1連結部の球状外面に、前記第2脚部材に設けられた第2連結部が摺動自在に嵌合し連結部位を構成し、
前記第1脚部材は、前記第1脚部材に沿って摺動自在に備えられたスライド部材と、前記スライド部材の下方において、前記スライド部材の摺動を抑止するストッパー構造と、を有しており、
前記腰掛け部材は、第1のヒンジ構造を介して前記スライド部材と回動自在に連結し、かつ、この腰掛け部材の裏面に設けられた第2のヒンジ構造を介して前記第2脚部材の上部と回動自在に連結しており、
前記第1脚部材と前記第2脚部材とが前記連結部位で交差し、前記スライド部材が前記ストッパー構造により下方への摺動が抑止された第1の状態と、
前記第1脚部材と前記第2脚部材とが沿い、前記スライド部材が前記第1の状態より上方に上がっている第2の状態と、に変化することを特徴とする椅子。
【請求項2】
請求項1に記載の椅子であって、
前記第1脚部材はパイプ状であり、
前記第1脚部材の側面には、前記第1連結部と前記ストッパー構造との間に位置する上孔と、前記第1連結部より下側に位置する下孔と、が設けられており、
前記第1脚部材の内部には、前記上孔と前記下孔とを渡してロープが通されており、
前記ロープは、上孔から出る一端が前記スライド部材に固定され、下孔から出る他端が前記第2脚部材に固定されており、
前記ロープには、凸部が設けられており、前記第1の状態において、前記第1脚部材の側面で、前記凸部が前記上孔を通過できないことにより、前記第1脚部材と前記第2脚部材との交差する角度の拡がりを抑止することを特徴とする椅子。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の椅子であって、
前記第2脚部材は、前記第1脚部材に対向した面がくぼんでいる樋状であり、前記第2の状態において、前記第2脚部材が前記第1脚部材の外面に覆い重なることができることを特徴とする椅子。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−209590(P2007−209590A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−33586(P2006−33586)
【出願日】平成18年2月10日(2006.2.10)
【出願人】(506048809)