説明

植付装置

【課題】苗マット上の苗を傷つけることなく、苗マットを確実に下方(下流)へ搬送することができる植付装置を提供する。
【解決手段】苗載台16の下流上に、先端が苗マットに突入される苗マット突入部材111・111・・・と、該苗マット突入部材111・111・・・の基部を支持する横軸113と、該横軸113が固設されて苗送りベルト92の動作に連動して回動する揺動アーム41と、を具備し、苗マット押さえ46の左右幅方向に苗垂れ防止板54を横架した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、田植機に関し、詳しくは、苗載台上に載置される苗マットを下方へ搬送しながら苗の植付を行なう植付装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、田植機の植付部は、苗載台が車両幅方向の移動端に到達すると、該苗載台に載置される苗マットが苗送りベルトまたは苗送りローラ等によって下方へ搬送される構成となっていた。そして、棒状の苗マット押さえを苗載台上に前後方向に苗載台と平行に配設することによって、苗マットを苗載台の載せ面(苗送りベルトまたは苗送りローラ)側に押さえ付ける構成となっていた。該苗マット押さえは、上方係合部を苗載台上の係止部に係脱可能にする等して、苗載台上に着脱自在な構成としていた(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−141097号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の田植機においては、前記苗マット押さえのみによって苗マットを押さえ付ける構成となっていたため、走行中に生じる田植機の振動等によって苗マットがずり落ちる虞があり、その結果、苗付け本数のバラツキを招く虞があった。特に、苗送りベルトの下端よりも下方に位置する苗マットでは抑え圧が小さくなり、また、苗載台が左端または右端に位置する手前の植付爪によって苗が掻き取られた部分においては、苗マットの下端と苗載台の下端との間に隙間が生じてしまい、苗マットがずり落ち易くなっていた。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、苗マット上の苗を傷つけることなく、苗マットを確実に下方(下流)へ搬送することができる植付装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0005】
即ち、請求項1においては、苗載台上に載置された苗マットを、苗マット押さえによって押さえつつ、苗送りベルトによって下方へ搬送するように構成された植付装置であって、該苗載台の下流部に、先端が苗マットに突入される苗マット突入部材と、該苗マット突入部材の基部を支持する横軸と、該横軸が固設されて該苗送りベルトの動作に連動して回動する揺動アームと、を具備し、該苗マット押さえ下流部に苗垂れ防止板を左右幅方向に横架したものである。
【0006】
請求項2においては、前記横軸が、前記苗載台の載せ面を基準とした前記苗垂れ防止板の高さ幅内で上下揺動する構成としたものである。
【0007】
請求項3においては、前記苗垂れ防止板の苗載台の載せ面側における苗マット押さえ近傍に、切欠を形成したものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0009】
請求項1においては、苗垂れ防止板によって苗マット上の苗が苗載台の下流側に垂れ下がることを防止することができ、苗マット突入部材の上下動による苗先端の巻き込みや押しつぶし等を防止することができる。
【0010】
請求項2においては、横軸が上下動したときに、横軸と苗垂れ防止板との間に苗が挟まれることを防止でき、植付前の苗が傷つくことを防止することができる。
【0011】
請求項3においては、苗垂れ防止板の上下幅が長い構成であっても、切欠を通して苗マット押さえに苗ストッパを取り付けることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の植付装置4を搭載した乗用田植機の一実施例を示す側面図であり、図2は同じく平面図であり、図3は本発明の植付装置4の一実施例を示す後方斜視図であり、図4は同じく正面図であり、図5は植付装置4下部を示す前方斜視図であり、図6は苗送りベルト92の駆動機構15を示す拡大前方斜視図であり、図7は揺動アーム41の支持構成を示す後方斜視図であり、図8は苗垂れ防止板54と横軸113との位置関係を示す一部断面左側面図であり、図9は苗垂れ防止板54近傍を示す前方斜視図、図10は苗ストッパ28の使用状態を示す苗垂れ防止板54近傍の後方斜視図、図11は苗ストッパ28の非使用状態を示す苗マット押さえ46の後方斜視図である。
【0013】
まず、本発明の一実施例として、植付装置4が搭載される8条乗用田植機の全体構成をについて説明する。
図1及び図2に示すように、乗用田植機は走行部1の後部に昇降リンク機構27を介して植付装置4が配置され、該走行部1は車体フレーム3前部上方にエンジン2を搭載し、前下部にフロントアクスルケースを介して前輪6を支持させると共に、後部にリヤアクスルケース7を介して後輪8を支持している。
そして、エンジン2はボンネット9に覆われ、該ボンネット9後部のダッシュボード5上に操向ハンドル14を配置し、該ボンネット9両側とその後部の車体フレーム3上を車体カバー12で覆い、操向ハンドル14後方位置に座席13を配置し、ボンネット9の両側を前ステップとし、座席13前部を中ステップとし、座席13左右両側を後ステップとしている。また、前記ボンネット9の両側には予備苗載台10・10が配設されており、前記ダッシュボード5の側部には走行変速レバー等のレバー類が、ダッシュボード5の下部のステップ上には走行用ペダル等のペダル類が配設されている。
【0014】
図1乃至図4に示すように、本実施例における植付装置4は、苗載台16や植付爪17・17やセンターフロート34やサイドフロート35や苗マット押さえ46や苗送りベルト92や苗マット保持機構100等から構成され、走行部1の後方に配設されるものである。
該苗載台16は前高後低に配設され、該苗載台16の後下部は下ガイドレール18、苗載台16の前上部は上ガイドレール19によって左右往復摺動自在に支持されている。詳しくは、該下ガイドレール18及び上ガイドレール19は、植付伝動フレーム20によって後述する支持フレーム65・66・・・等を介して支持されている。そして、植付伝動フレーム20より連結パイプ63を介してチェーンケース21を後方へ突出させ、該チェーンケース21の後部に一方向に回動するロータリーケース22を配置し、該ロータリーケース22の両側に一対の植付爪17・17を配置している。
【0015】
また、前記植付伝動フレーム20の前部は、ローリング支点軸68を介して前記昇降リンク機構27と連結され、該昇降リンク機構27はトップリンク25やロアリンク26等から構成されて、座席13下方に配置した図示しない昇降シリンダによって植付装置4を昇降できるようにしている。
こうして、乗用田植機は、前進走行とともに苗載台16を左右に往復摺動させ、該往復動に同期させて植付爪17・17を駆動して一株分の苗を切り出し、連続的に植え付け作業を行う構成となっている。
本発明の植付装置4に関する説明においては、苗載台16の前上部を上流側とし、苗載台の後下部を下流側とする。
【0016】
次に、本実施例に係る植付装置4の支持構成について説明する。
図4及び図5に示すように、苗載台16下方には、前記走行部1に設けられたPTO軸(図示せず)に作動連結される植付入力軸75を有する植付駆動ケース61が配設されている。該植付駆動ケース61の右側面からは、車両幅方向に縦送り軸88が突設されている。
そして、植付装置4は、前記連結パイプ63や、該連結パイプ63に立設された左右一対のサイドフレーム65・65と、該サイドフレーム65・65の上部間を連結するべく車両幅方向に延びるローリングフレーム66とを備えている。
【0017】
斯かる植付装置4は、ヒッチブラケット23と、該ヒッチブラケット23に連結されるトップリンク25及びロアリンク26を含む昇降リンク機構27とを介して、前述した様に前記走行部1に昇降自在に連結されている。
さらに、植付装置4は、走行部1に対して車両幅方向揺動自在とされており、該走行部1が左右方向に傾斜しても植付装置4が水平状態に保持され得るようになっている。詳しくは、植付装置4には、植付駆動ケース61に連結される支点部材69と、下端部が前記支点部材69に連結され且つ上端部が前記ローリングフレーム66に連結される一対の左右フレーム71・71とが備えられており、該支点部材69は前記ヒッチブラケット23に車両前後方向に沿うように設けられたローリング支点軸68回りに揺動自在に支持されている。
そして、前記ヒッチブラケット23と前記左右フレームの一方との間には、ブラケット等を介して油圧ローリングシリンダ73が介設されており、該油圧ローリングシリンダ73を進退制御させることにより前記植付装置4を前記ローリング支点軸68回りに揺動させ得る構成となっている。
【0018】
以下、苗載台16上に苗マットを押さえ付ける構成について説明する。
図3及び図7に示すように、苗載台16には、上面の各条毎左右両側にリブ16a・16a・・・が設けられており、苗載台16上に載置された苗マットの両側を該リブ16a・16aによってガイドできるように構成されている。そして、それぞれのリブ16a・16a間には、苗マット押さえ46が配置されている。
図3・図7・図11に示すように、苗マット押さえ46は、縦押さえ棒46a・46a・・・と横支持棒46bと支持シャフト46c等からなり、該縦押さえ棒46a・46aがリブ16a・16a間に各条二本ずつ左右平行に配置されている。そして、該縦押さえ棒46aによって、苗戴台16上の図示しない苗マットを苗載台16上面(載せ面)に押さえ付ける構成となっている。
【0019】
該縦押さえ棒46aの上流側(上前側)は側面視略逆V字状に構成され、先端が横支持棒46bに固設されている。該横支持棒46bは、リブ16a・16aの上流位置に立設した係止部51・51に係合されている。
【0020】
一方、図3・図7・図8に示すように、縦押さえ棒46aの下流側(後下側)は、左側面視逆Z字状に折り曲げられて、立ち上がり部46dが形成されている。そして、該立ち上がり部46dの上端は苗載台16の下流方向に折り曲げられ、溶接等によって支持シャフト46cに固設されている。該支持シャフト46cの両側は、苗載台16若しくはリブ16a・16aに立設されたステー50・50に支持されている。
【0021】
そして、図7乃至図11に示すように、立ち上がり部46dには該立ち上がり部46dと平行に苗垂れ防止板54が固設されている。該苗垂れ防止板54は、リブ16a・16a間に形成される一対の立ち上がり部46d・46dの上下略中途部に横架されるものであって、プレート状の部材である。
本実施例においては、溶接等によって苗垂れ防止板54を立ち上がり部46dに固設しているが、苗垂れ防止板54が苗マット押さえ46の他の部分に立設されていても良く、限定するものではなく、固定方法も限定するものではなく、ボルト等により上下位置調節可能に取り付けられるように構成することも可能である。
【0022】
このように、苗載台16上に載置された苗マットを、苗マット押さえ46によって押さえつつ、苗送りベルト92によって下方へ搬送するように構成された植付装置4であって、該苗載台16の下流側の上部に、先端が苗マットに突入される苗マット突入部材111・111・・・と、該苗マット突入部材111・111・・・の基部を支持する横軸113と、該横軸113が固設されて該苗送りベルト92の動作に連動して回動する揺動アーム41と、を具備し、該苗マット押さえ46下流部に苗垂れ防止板54を左右幅方向に横架したので、苗垂れ防止板54によって苗マットの苗の上部が苗載台16の下流側に垂れ下がることを防止することができ、後述する苗マット突入部材111・111・・・の上下動による苗先端の巻き込みや押しつぶし等を防止することができる。
【0023】
次に、苗送りベルト92の駆動機構15について説明する。
図3及び図4に示すように、苗載台16の上下中途部から下流部にかけては、該苗載台16と略同一平面状に苗送りベルト92が配設されており、該苗送りベルト92によって苗載台16に載置された苗マットを下流へ搬送する構成となっている。
そして、図5に示すように、本実施例の植付装置4は、植付駆動ケース61内において前記植付入力軸75と図示しない前記横送り軸及び縦送り軸88が作動連結されている。詳しくは、該横送り軸と縦送り軸88は、植付駆動ケース61から車両幅方向に延設されて常時回動している駆動軸であり、一端部が前記植付駆動ケース61内において前記植付入力軸75に作動連結されて、他端部が軸受板等に枢支されている。そして、前記植付駆動ケース61内には、前記植付入力軸75から入力された駆動力の多段変速を行なう図示しない変速機構が収容されており、前記横送り軸及び縦送り軸88には変速後の駆動力が伝達されるようになっている。
【0024】
図5及び図6に示すように、縦送り軸88の略上方には第二縦送り軸31が配設されており、該第二縦送り軸31の略上方には後述するフォークカム32が回動自在に枢支されたベルト駆動軸33が配設されている。
該縦送り軸88上には、前記リブ16a・16a・・・の配設間隔と同じ間隔をあけて、換言すれば苗載台16の左右方向の往復幅と同じ間隔をあけて、2つの押動カム91・91が固設されている。
該第二縦送り軸31は、後述するように該フォークカム32の回動に合わせてベルト駆動軸33を中心に円弧状に移動可能な構成となっている。
【0025】
そして、該ベルト駆動軸33には苗送りベルト92・92・・・の下端が巻回される駆動プーリ38・38・・・が固設されている。図4及び図5に示すように、苗送りベルト92は、該駆動プーリ38と、該駆動プーリ38から上流方向に離間配置されたベルト従動軸上に遊嵌した従動プーリ(図示せず)とに無端状に巻回されているものであって、該駆動プーリ38によって駆動されるものである。
【0026】
図5及び図6に示すように、ベルト駆動軸33にはフォークカム32が遊嵌されており、該フォークカム32に隣接して、ベルト駆動軸33上に図示しない一方向クラッチを介してベルト駆動カム53が外嵌されている。該一方向クラッチは、苗マットが下流へ搬送される方向にベルト駆動カム53が回動したときのみ、ベルト駆動カム53の駆動力をベルト駆動軸33へ伝達するものである。
【0027】
フォークカム32は、後述する作用フレーム40やリブ16aの略下方に配設されるものであって、前記苗載台16が車輌幅方向一方及び他方の移動端に到達した際に、前記縦送り軸88上の一対の押動カム91・91の一方または他方とそれぞれ当接するように、ベルト駆動軸33上に遊嵌されるものである。
つまり、該一対の押動カム91・91とフォークカム32と第二縦送り軸31とベルト駆動カム53とベルト駆動軸33とを介して、前記縦送り軸88の駆動力により前記苗送りベルト92が間欠的に駆動されるようになっている。
【0028】
詳しくは、図6に示すように、フォークカム32は、ベルト駆動軸33に遊嵌される基部32bと、前記押動カム91と当接する当接部32cと、後述のU字部材37が溶接される溶接部32dとが一体的に成形されて成るものである。該溶接部32dには、正面視U字状のU字部材37が溶接等によって固設されており、該U字部材37には後述する作用フレーム40の下端部が枢支されている。
尚、前記ベルト駆動機構15以外の他の作用フレーム40の下端部は、ベルト駆動軸33に遊嵌される基部32bと溶接部32dのみから構成される図示しない遊嵌部材、及び該溶接部32dに溶接されたU字部材37によって支持されている。
【0029】
また、ベルト駆動カム53は、ベルト駆動軸33に遊嵌される基部53bと、第二縦送り軸31と係合する係合部53cとが一体的に成形されて成るものである。ベルト駆動カム53の係合部53cは、フォークカム32が回動し、それと共に第二縦送り軸31が上昇してきたときに、該第二縦送り軸31と係合する形状に形成されている。
フォークカム32及びベルト駆動カム53の基部32b・53bには戻しバネ150の一端が連結されており、戻しバネ150の他端が苗載台16等に連結されることによって、フォークカム32及びベルト駆動カム53が常に左側面視反時計方向に付勢される構成となっている。
【0030】
該フォークカム32の該当接部32cと溶接部32dの分岐部には、前記第二縦送り軸31が挿通される挿通孔が設けられており、前述した様に、該挿通孔に第二縦送り軸31が挿通されて、該第二縦送り軸31に溶接されている軸側フランジ57をフォークカム32にボルト締めすることによって、第二縦送り軸31とフォークカム32とを連結固定している。
以上の構成により、苗載台16が車両幅方向に往復動するときは、第二縦送り軸31・フォークカム32・ベルト駆動軸33・ベルト駆動カム53等が苗載台16と共に横送り軸・植付駆動ケース61・縦送り軸88・押動カム91・走行部1に対して相対的に左右往復動する。
【0031】
次に、苗マットの保持機構について説明する。
該苗マット保持機構は、前記苗送りベルト92の停止時には苗マットを前記苗載台16に対して移動不能に保持し、前記苗送りベルト92が停止状態から搬送状態へ移行する搬送開始時には該苗送りベルト92が駆動される前に苗マットを移動可能状態とし、且つ、前記苗送りベルト92が搬送状態から停止状態へ移行する搬送停止時には該苗送りベルト92の駆動が停止された後に苗マットを前記苗載台16に対して移動不能に保持するものである。
【0032】
具体的には、図5・図7・図8に示すように、本実施例の苗マット保持機構は、上下動する苗マット保持部110と、該苗マット保持部110を支持して上下動させるリンク機構60とから構成され、苗載台16の下流部に配設されるものである。
該苗マット保持部110は、複数の棒状部材である苗マット突入部材111・111・・・及び車輌幅方向に横架された横軸113によって構成されており、苗マット突入部材111・111・・・の上端(基部)がそれぞれ横軸113に溶接等によって接合され、全体としてフォーク形状に形成されている。そして、該横軸113が、苗送りベルト92の駆動に合わせて、リンク機構60により上下方向に往復動するのである。
該リンク機構60は、揺動アーム41や支点フレーム39や作用フレーム40や前記駆動機構15等から構成されるものであって、前記苗マット保持部110を上下方向に往復動させるものである。
【0033】
支点フレーム39はリブ16aの上下中途部付近上面に立設されるものであり、その上端部に揺動アーム41の上流端が枢支される。該揺動アーム41は、上流側の端部が該支点フレーム39上端部に上下回動自在に枢支され、中途部には作用フレーム40の上端部が枢支され、下端部が前記苗マット保持部110の横軸113の一端に固設されている。詳しくは、図7に示すように、揺動アーム41・41の下流端及び横軸113の端部が共に板状に形成されて、この板状部41b・113bをボルト等によって共締めすることにより、揺動アーム41・41の下端部に横軸113が横架されている。
つまり、図8に示すように、横軸113は、側面視において揺動アーム41の下流端と重なる位置に配設されている。
【0034】
該作用フレーム40は、上端部が揺動アーム41の中途部に枢支されており、リブ16aの下部付近を上下摺動自在に貫通して配設される部材であり、下端部が前記フォークカム32に溶接されているU字部材37に枢支されている。
【0035】
即ち、前記U字部材37の上下動によって作用フレーム40が上下動し、該作用フレーム40の上下動によって揺動アーム41が支点フレーム39上端を支点として回動し、その結果、苗マット保持部110が支点フレーム39上端を中心として前後上下方向へ回動する構成となっている。
前述した様に、該U字部材37はフォークカム32の回動に合わせて上下動するものであるので、フォークカム32の回動に合わせて苗マット突入部材111・111・・・が、苗マットに突入したり、抜き出されたりする構成となっている。
【0036】
ここで、本実施例の植付装置4においては、3本の作用フレーム40・40・40をリブ16a・16a・16aに貫通させて、その下端部をベルト駆動軸33上に遊嵌したU字部材37・37・37に枢支している。即ち、作用フレーム40が枢支されていない残りの揺動アーム41・41・41は、作用フレーム40が枢支されている揺動アーム41に直接支持されて上下動する横軸113・113・・・を介して、間接的に上下動する構成となっている。これによって、多数の作用フレーム40を設けたり、リブ16aに多数の作用フレーム40用の孔を設ける必要がなく、製造行程及び製造コストを低減させることができる。
【0037】
斯かる構成の苗マット保持機構100は以下のように作動する。
図5乃至図8に示すように、前記苗載台16が車輌幅方向の一方の移動端と他方側の移動端との間で移動している間は、前記フォークカム32は前記押動カム91とは係合しない。ここで、前記戻しバネ150は、フォークカム32及びベルト駆動カム53を左側面視反時計方向に付勢するものであるから、作用フレーム40を下方へ引っ張る方向へ付勢するものである。つまり、本実施例の植付装置4においては、苗マット突入部材111が苗マットに突入する状態(苗マット保持状態)に付勢される構成となっている。本実施例では、戻しバネ150を用いているが、前記苗マット保持部110を保持状態に向けて直接的または間接的に付勢する付勢部材であれば良く、図6のような巻きバネに限定するものではない。
以上の構成により、苗載台16の移動中において、該苗マットの位置ずれが有効に防止される。
【0038】
そして、苗載台16が左右方向に往復動して左右何れかの端部に達すると、常時回動している縦送り軸88上の左右何れかの押動カム91の回動によってフォークカム32が持ち上げられる。即ち、フォークカム32が戻しバネ150に抗して左側面視時計回りに回動する。該フォークカム32が回動すると、該フォークカム32の回動につれて第二縦送り軸31やU字部材37が略上方に持ち上げられる。該U字部材37が持ち上げられると、作用フレーム40が上方へ押出され、その結果、揺動アーム41が持ち上げられる。該揺動アーム41が持ち上げられると、揺動アーム41に固設された横軸113が後上方へ持ち上げられて、その結果、苗マット突入部材111が苗マットから抜き出される。
【0039】
換言すれば、前記苗載台16が車輌幅方向移動端に到達すると、フォークカム32が前記押動カム91と係合するため、フォークカム32がベルト駆動軸33を支点として前記戻しバネ150の付勢力に抗して作用フレーム40を持ち上げる。該作用フレーム40は、支点フレーム39上端を中心にして、揺動アーム41を左側面視反時計方向に回動させるので、前記苗マット保持部110が保持状態から解放状態へと移行される。
【0040】
そして、押動カム91の回動に従って、更にフォークカム32が回動して第二縦送り軸31が持ち上げられると、該第二縦送り軸31がベルト駆動カム53の係合部53c下面に係合し、ベルト駆動カム53が回動する。
斯かる構成により、前記苗載台16が車輌幅方向移動端に到達した際に、前記押動カム91と前記フォークカム32とが係合し、且つ、第二縦送り軸31とベルト駆動カム53とが係合している間のみ、該ベルト駆動軸33が軸線回りに回動し、前記苗載台16に載置された苗マットが前記苗送りベルト92によって所定ピッチだけ下方に搬送される構成となっている。
【0041】
つまり、前記フォークカム32は、前記ベルト駆動カム53の回動より先に右側面視反時計方向に回動し始めるため、ベルト駆動軸33が回動しはじめる前に苗マット保持部110が開放されるのである。換言すれば、苗マット突入部材111・111・・・が苗マットから抜き出されたのちに、苗送りベルト92によって苗マットが下方へ搬送される構成となっている。
なお、前述した様に、前記ベルト駆動カム53と前記ベルト駆動軸33との間には一方向クラッチが介挿されているため、ベルト駆動軸33が逆向きに回動することはなく、且つ、戻しバネ150の付勢力により、第二縦送り軸31との係合が解除された際には該ベルト駆動カム53が初期位置に戻されるようになっている。
【0042】
そして、更に押動カム91が回動すると、該押動カム91とフォークカム32との係合が解除される。そうすると、戻しバネ150の付勢力によってフォークカム32とベルト駆動カム53が右側面視時計方向に回動し、苗送りベルト92による苗マットの搬送が完了する。その後、第二縦送り軸31とベルト駆動カム53との係合が解除されて、フォークカム32やU字部材37のみが回動する。それに合わせて作用フレーム40が下降し、苗マット突入部材111・111が苗マットに突入される。つまり、苗送りベルト92による苗マットの搬送が完了した後に、苗マット突入部材111・111が苗マットに突入される構成となっている。
以上の構成により、前記苗載台16の車輌幅方向移動端において、苗送りベルト92による苗マットの搬送が確実に行われる。
【0043】
次に、苗マット保持部110を構成する横軸113等と苗垂れ防止板54との位置関係について説明する。
図7及び図8に示すように、本発明の植付装置4においては、横軸113及び苗マット突入部材111が苗垂れ防止板54よりも苗載台16の下流側に位置する構成となっており、横軸113及び苗マット突入部材111が、立ち上がり部46d及び苗垂れ防止板54の後方(下流側)で上下揺動する構成となっている。
詳しくは、図8に示すように、横軸113が、立ち上がり部46dに横架された苗垂れ防止板54の高さ幅内(矢印X内)を上下動するように構成されている。
【0044】
ここでいう「高さ」とは、苗載台16の載せ面若しくは苗送りベルト92若しくは苗マット等を基準とした、該載せ面(苗送りベルト92・苗マット)から垂直方向の長さ、即ち、載せ面からの距離をいうものである。つまり、横軸113は、載せ面からの苗垂れ防止板54上端の高さより低く、且つ、載せ面からの苗垂れ防止板54下端の高さより高い、範囲内において上下揺動する構成となっているのである。
この場合、苗載台16の載せ面(苗送りベルト92・苗マット)を基準面とした該載せ面からの高さは、苗マット突入時(苗マット保持状態)の苗マット突入部材111・111・・・の上端の方が、苗垂れ防止板54の下端よりも高くなる構成となっている。
【0045】
具体的には、前記リブ16aに固設される支点フレーム39の配設箇所や、該支点フレーム39に枢支される揺動アーム41の長さや、前記作用フレーム40の長さ等を調節することによって、横軸113の揺動範囲を調節することができる。
【0046】
例えば、支点フレーム39の配設箇所をリブ16aの下流側に移動させる等、支点フレーム39から作用フレーム40までの距離を変化させることによって、揺動アーム41の上下回動幅を調節することができ、その結果、横軸113の上下揺動幅を調節することができる。
即ち、横軸113及び苗マット突入部材111・111・・・の上下方向の揺動幅を大きなものにするためには、支点フレーム39から作用フレーム40までの距離を短く構成し、逆に横軸113及び苗マット突入部材111・111・・・の上下方向の揺動幅を小さなものとするためには、支点フレーム39から作用フレーム40までの距離を長く構成すれば良いのである。
【0047】
そして、前記作用フレーム40の長さを調節することによって、苗マット突入部材111・111・・・を苗マットに突き刺した状態(苗マット保持状態)の横軸113の高さを調節することができる。即ち、苗マット保持状態における横軸113と苗載台16の載せ面までの距離を短く(載せ面からの高さを低く)するためには、作用フレーム40の長さを短く形成すれば良く、逆に苗マット保持状態における横軸113と苗載台16までの距離を長く(載せ面からの高さを高く)するためには、作用フレーム40の長さを長く形成すれば良いのである。
【0048】
このように、前記横軸113が、前記苗載台16の載せ面を基準とした前記苗垂れ防止板54の高さ幅内で上下揺動する構成としたので、横軸113が上下動したときに、横軸113と苗垂れ防止板54との間に苗が挟まれることを防止でき、植付前の苗が傷つくことを防止することができる。
【0049】
そして、図8乃至図10に示すように、苗垂れ防止板54下部には切欠54b・54bが形成されている。該切欠54b・54bは、前上方視(後下方視)において、前記苗マット押さえ46の立ち上がり部46d・46dと略重複する箇所、つまり、近傍に形成されるものである。該切欠54b・54bを形成することにより、図8乃至図10に示すように、苗垂れ防止板54が立ち上がり部46dの上端から下端まで延設される構成である場合でも、該切欠54b・54bを通して、苗ストッパ28等を立ち上がり部46dに取り付けることが可能となる。
【0050】
ここで、苗ストッパ28は、苗マット押さえ46等に着脱自在に取り付けられるものであって、苗マットの搬送を制止する部材である。詳しくは、図9乃至図11に示すように、苗マット押さえ46の立ち上がり部46dに凸部46fが形成されており、該凸部46fに苗ストッパ28の後部を着脱自在に係止する構成となっている。
つまり、苗垂れ防止板54に切欠54b・54bを形成することによって、苗ストッパ28を苗マット押さえ46やリブ16a・16a等に着脱するタイプの植付装置4においても、高さ方向に長く形成された苗垂れ防止板54を備えることができるのである。
【0051】
換言すれば、苗ストッパ28と苗垂れ防止板54との干渉を防止することができ、即ち、苗ストッパ28の後方部を該切欠54b・54bに通すことにより、該苗ストッパ28の後端部を該立ち上がり部46dに取り付けることが可能となるのである。
本実施例においては、図11に示すように、該苗ストッパ28を使用しないときには、苗ストッパ28に設けられている係止部28bを前記横支持棒46bに係止することによって、苗ストッパ28が苗マットの搬送の邪魔にならないようにすることができる。
【0052】
このように、前記苗垂れ防止板54の苗載台16の載せ面側における苗マット押さえ46近傍に、切欠54b・54bを形成したので、苗垂れ防止板54の上下幅が長い構成であっても、切欠54bを通して苗マット押さえ46(46d)に苗ストッパ28を取り付けることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の植付装置を搭載した乗用田植機の一実施例を示す側面図。
【図2】同じく平面図。
【図3】本発明の植付装置の一実施例を示す後方斜視図。
【図4】同じく正面図。
【図5】植付装置下部を示す前方斜視図。
【図6】苗送りベルトの駆動機構を示す拡大前方斜視図。
【図7】揺動アームの支持構成を示す後方斜視図。
【図8】苗垂れ防止板と横軸との位置関係を示す一部断面左側面図。
【図9】苗垂れ防止板近傍を示す前方斜視図。
【図10】苗ストッパの使用状態を示す苗垂れ防止板近傍の後方斜視図。
【図11】苗ストッパの非使用状態を示す苗マット押さえの後方斜視図である。
【符号の説明】
【0054】
4 植付装置
16 苗載台
32 フォークカム
37 U字部材
39 支点フレーム
40 作用フレーム
41 揺動アーム
46 苗マット押さえ
46d 立ち上がり部
53 ベルト駆動カム
54 苗垂れ防止板
54b 切欠
92 苗送りベルト
111 苗マット突入部材
113 横軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
苗載台上に載置された苗マットを、苗マット押さえによって押さえつつ、苗送りベルトによって下方へ搬送するように構成された植付装置であって、
該苗載台の下流部に、先端が苗マットに突入される苗マット突入部材と、該苗マット突入部材の基部を支持する横軸と、該横軸が固設されて該苗送りベルトの動作に連動して回動する揺動アームと、を具備し、
該苗マット押さえ下流部に苗垂れ防止板を左右幅方向に横架したことを特徴とする植付装置。
【請求項2】
前記横軸が、
前記苗載台の載せ面を基準とした前記苗垂れ防止板の高さ幅内で上下揺動する構成としたことを特徴とする請求項1に記載の植付装置。
【請求項3】
前記苗垂れ防止板の苗載台の載せ面側における苗マット押さえ近傍に、切欠を形成したことを特徴とする請求項1若しくは請求項2に記載の植付装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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