説明

植物による表現方法

【課題】様々な面において、刈カスを発生させることなく文字や図形を描くことができる、植物による表現方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る植物による表現方法は、植物が一様に生育する面的区域において、濃淡の差のみで表現される文字及び/又は図形の濃い部位に対応させる部分に、前記部分に対応する前記部位の濃さに比例する成長促進剤を散布する。濃淡の差のみで表現される文字或いは図形とは、例えば、白と黒の2値で描かれるものの他、白と黒及びその中間色で描かれる、いわゆるグレースケール画像も相当する。ただし、色彩に制限はなく、単色であれば、黒以外の色彩で描かれるものであってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芝生地等植物が一様に生育する面的区域に文字や図形を描き、視覚的効果を演出し、或いはメッセージ等の表現をするための、植物による表現方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、芝生が一様に生育する面的区域において、芝生の刈り込みの仕方によって草丈に段差をつけ、文字や図形を描き視覚的効果を演出することが広くなされている。しかし、刈り込み後に、発生する刈りカスの清掃には手間を要するという問題がある。ただし、刈りカスを発生させずにそのような演出を行うための手法も存在し、そのような手法として、例えば、特開平7−246029に開示された、芝生にマークを付ける方法及びそれを応用した機械がある。この方法では、芝生の茎方向の差は観客にとっては極めて明瞭に視認できることから、特定の地点で芝生の茎を傾けて寝かせ、別の地点ではそれらを起こすことにより文字や図形が形成されている。従って、刈カスを発生させることなく、芝生地に文字や図形を描くことができる。なお、この方法に使用される機械は、所定の区画で芝生の茎を起こす回転式ブラシを備え、機械の走行やブラシの回転を司どるモータは電動式とされ、複写する図形や処理面上の機械の位置がメモリーに組み込んだコンピュータによって制御されるものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平07−152336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記マークを付ける方法の場合、芝生の茎方向を調整するためには専用の機械を使用しなければならず、機械が移動できる平坦な面等に適用できる場所が限定されてしまうという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、様々な面において、刈カスを発生させることなく文字や図形を描くことができる、植物による表現方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る植物による表現方法は、植物が一様に生育する面的区域において、濃淡の差のみで表現される文字及び/又は図形の濃い部位に対応させる部分に、前記部分に対応する前記部位の濃さに比例する成長促進剤を散布する。
【0007】
濃淡の差のみで表現される文字或いは図形とは、例えば、白と黒の2値で描かれるものの他、白と黒及びその中間色で描かれる、いわゆるグレースケール画像も相当する。ただし、色彩に制限はなく、単色であれば、黒以外の色彩で描かれるものであってもよい。従って、白地の紙にインクや鉛筆で書かれた文字は、インクや鉛筆の芯の色に関係なく、濃淡の差のみで表現される文字に含まれることになる。なお、2値で描かれるものの場合、濃さに比例するとは、色彩を有さない部分において散布されないことに対し、散布を行うことを意味する。
【0008】
前記成長促進剤はジベレリンとしてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る植物による表現方法によれば、薬剤を散布するだけの容易な作業のみで、刈りカスを発生させることなく、また、清掃作業を要することなく、植物を利用して所望の文字や図形を描くことができる。また、薬剤の散布であれば、専用の機械を使用することなく人手によって行うことができるため、急な斜面など、様々な面に適用することが可能となる。なお、本発明は、従来の技術とは逆の発想によるものである。すなわち、従来の技術では、ある程度成長した植物体を一定範囲において除去し或いは丈を低くすることを前提としているところ、本発明では、必要箇所の植物体だけを伸長成長させ、植物体の高さに段差をつけることで生み出される視覚的効果を利用したものである。
【0010】
成長促進剤としては、公知の農業用植物ホルモン剤を使用することができ、例えば、ジベレリンを使用することができる。
【0011】
なお、本発明に係る植物による表現方法で生み出される視覚的効果は一時的なものである。成長促進剤の効果が切れれば、成長促進剤を散布しなかった箇所の草丈が追いついてくるので、面的区画はやがて自然な状態に戻ってしまうため、視覚的効果が維持される期間は限定的となる。しかしながら、その反面、所定の期間が経過した後、その視覚的効果をとり除く必要がある場合、例えば、会場となる施設を通常の使用方法とは異なる方法で使用することにより開催される短期のイベントには好適である。この場合、イベントの開催期間中に図形等を表現するために用いた面的区域を、特別な作業を行うことなく、イベント終了後の通常使用時には、植物が自然に育った状態に戻すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る植物を利用した表現方法の実施工程を模式的に示し、(a)は成長促進剤を散布する工程を示す図、(b)は植物が生長し図形が描かれた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図を参照しながら、本発明に係る植物を利用した表現方法の実施例を説明する。なお、実施例として、長方形の枠10aとその中に配置された円10bとで構成される図形10を、道路や駐車場などの側部に設けられたのり面1に表現する場合について説明する。
【0014】
この実施例における表現方法では、まず、のり面1に設けられた、芝が一様に生育する面的区域2に、円形の孔11が形成されたシート3を敷設し、図1(a)における想像線で示す状態とする。シート3は、面的区域2と相似形で面的区域2よりも小さいものとされている。なお、シート3の材質は、成長促進剤を浸透させないものであればよく、ブルーシートとよばれるプラスチックシートを使用してもよい。また、単一のシートである必要はなく、複数のシートを並べて形成してもよい。
【0015】
シート3の敷設が完了したら、面的区域2において、シート3の外側に露出した部分2aと、シート3の孔11を介して露出した部分2bに成長促進剤を散布する。なお、これら部分2a、2bは、濃淡の差のみで表現される図形10において濃い部位に対応させる部分、すなわち、長方形の枠10aとその中に配置された円10bに対応させる部分となる。
【0016】
薬剤散布が完了したら、シート3を取り除く。すると、成長促進剤が散布された部分2a、2bでは、それ以外の部分よりも芝の丈が大きくなり、その段差により生み出される視覚的効果により図形10が表現される。そして、この表現方法によれば、薬剤を散布するだけの容易な作業のみで、刈りカスを発生させることなく、また、清掃作業を要することなく、植物を利用して所望の文字や図形を描くことができる。また、薬剤の散布であれば、専用の機械を使用することなく人手によって行うことができるため、様々な面に、例えば急な斜面であっても、適用することが可能となる。
【0017】
なお、この実施例では、成長促進剤の散布を行う部分と散布を行わない部分とを、シート3を利用して区分けしているが、面的区域2に石灰やロープ等で直接描いた線などで区分けしてもよい。
【0018】
また、植物生育調整剤(成長促進剤の生合成を阻害する機能を有するもの)を面的区域2の全面に予め散布した後、上記工程により成長促進剤を散布することとしてもよい。この場合、成長促進剤が散布された部分だけの芝が伸長成長し、散布されなかった部分とのコントラストを強調できる。
【0019】
更に、この実施例では、面的区域2に表現される図形10は、濃い部位とそれ以外の部位、すなわち、成長促進剤を散布した部分と散布しなかった部分のみで構成されているが、成長促進剤の散布量を調整し、濃さの程度の異なる部分で構成することもできる。例えば、図形10の円10bにおいて、中心からの位置に応じて円10bの外側の散布量を少なくし、中心に近づくにつれて散布量を多くすれば、外側から中心に向かって除々に濃さが増す円を表現することができる。
【0020】
適切な散布量は、植物や薬剤により異なるため、状況に応じて適宜調整する。例えば、成長促進剤としてジベレリン液剤を使用し、芝が育成される面的区域に濃い部位とそれ以外の部位のみで図形を表現するのであれば、ジベレリン溶剤を100ppmに希釈し、濃くする部分における植物に対し茎葉散布をすればよい。ただし、ジベレリン溶剤は、草本(イネ科型、広葉型問わず)には効果があるものの、木本(樹木)にはあまり効果が無い。薬剤及び植物の組合せは、適宜最適なものを選定する必要がある。
【符号の説明】
【0021】
1 のり面
2 面的区域
2a、2b 部分
3 シート
10 図形
10a 枠
10b 円


【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物が一様に生育する面的区域において、濃淡の差のみで表現される文字及び/又は図形の濃い部位に対応させる部分に、前記部分に対応する前記部位の濃さに比例する成長促進剤を散布することを特徴とする描画演出方法。
【請求項2】
前記成長促進剤がジベレリンである請求項1に記載の描画演出方法。


【図1】
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【公開番号】特開2010−268691(P2010−268691A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−120921(P2009−120921)
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【出願人】(505398952)中日本高速道路株式会社 (94)
【Fターム(参考)】