説明

植物の水分ストレスによる影響を軽減する方法

【課題】植物の水分ストレスによる影響を軽減する方法を提供すること。
【解決手段】水分ストレスに暴露された又は暴露されるであろう植物に、下記式(I)で示される化合物及びその農学的に許容される塩からなる群から選ばれる少なくとも一の化合物を施用する。当該施用は、種子処理が好ましく、100kg種子当り1〜30gの前記化合物を処理する種子処理が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の水分ストレスによる影響を軽減する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
植物は、降雨量や灌水量の不足により土壌中の水分含量が減少し吸水が阻害されるいわゆる乾燥ストレスや、過剰な降雨や灌水により土壌中の水分含量が増加し根圏が過湿状態になるいわゆる過湿ストレスに暴露されると、細胞の生理機能が低下して様々な障害が現れる場合がある。植物ホルモンや植物生長調節剤等のいくつかの化学物質に、植物の乾燥ストレスや過湿ストレスといった水分ストレスによる影響を軽減する効果を有するものがあることが知られているが、必ずしも満足できるものではない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】ジャーナル・オブ・プラント・グロース・レギュレーション 29巻(2010年) 366-374頁(Journal of Plant Growth Regulation (2010) 29:366-374)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、植物の水分ストレスによる影響を軽減する方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、鋭意検討した結果、特定の化合物を施用された植物は、水分ストレスに暴露されたときの当該ストレスによる影響が軽減されることを見出し、本発明に到達した。
【0006】
即ち、本発明は次の通りの構成をとるものである。
[1]
植物の水分ストレスによる影響を軽減する方法であって、
水分ストレスに暴露された又は暴露されるであろう植物に、有効量の下記式(I)で示される化合物及びその農学的に許容される塩からなる群から選ばれる少なくとも一つの化合物(以下、本化合物と記すことがある。)を施用することを特徴とする方法(以下、本発明方法と記すことがある。);

式(I)

[式中、Rはフェニル基、ナフチル基又は芳香族複素環基を示し、これらの基はハロゲン原子、水酸基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキルチオ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2〜6のアルケニル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2〜6のアルキニル基、アミノ基、炭素数1〜6のアルキルアミノ基及びジ(炭素数1〜6のアルキル)アミノ基から選ばれる1〜5個の基で置換されていてもよく、
は水酸基、アミノ基又は炭素数1〜6のアルコキシ基を示し、
Xは直鎖又は分枝鎖の炭素数1〜6のアルキレン基を示し、
Yは直鎖又は分枝鎖の炭素数1〜6のアルキレン基又は直鎖又は分枝鎖の炭素数2〜6のアルケニレン基を示す。]
[2]
式(I)において
がフェニル基、1−ナフチル基又は3−インドリル基(但し、これらの基はその水素原子がハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、炭素数1〜6のアルキル基及び炭素数1〜6のアルコキシ基から選ばれる1〜5個の基で置換されていてもよい)であり、
が、水酸基、アミノ基又は炭素数1〜6のアルコキシ基であり、
Xが、直鎖又は分枝鎖の炭素数1〜6のアルキレン基であり、
Yが、直鎖又は分枝鎖の炭素数1〜6のアルキレン基又は直鎖又は分枝鎖の炭素数2〜6のアルケニレン基である、
前項1記載の方法;
[3]
式(I)において、
がフェニル基、4−ヨードフェニル基、1−ナフチル基又は3−インドリル基であり、
が水酸基又はメトキシ基であり、
Xがエチレン基又はテトラメチレン基であり、
Yがエチレン基又はトリメチレン基である前項1記載の方法;
[4]
式(I)で示される化合物が、下記化合物群Aから選ばれる化合物である前項1記載の方法;
<化合物群A>
(1)4−オキソ−4−(2−フェニルエチル)アミノ酪酸(以下、化合物aと記すことがある。)
(2)4−オキソ−4−(4−フェニルブチル)アミノ酪酸メチル(以下、化合物bと記すことがある。)
(3)4−オキソ−4−(2−フェニルエチル)アミノ酪酸メチル(以下、化合物cと記すことがある。)
(4)4−オキソ−4−(4−フェニルブチル)アミノ酪酸(以下、化合物dと記すことがある。)
(5)5−オキソ−5−[2−(3−インドリル)エチル]アミノ吉草酸(以下、化合物eと記すことがある。)
(6)5−オキソ−5−[(1−ナフチル)メチル]アミノ吉草酸(以下、化合物fと記すことがある。)
(7)4−オキソ−4−[2−(4−ヨードフェニル)エチル]アミノ酪酸メチル(以下、化合物gと記すことがある。)
[5]
施用が、種子処理である前項1〜4記載の方法;
[6]
種子処理が、本化合物を100kg種子当り1〜30g処理する種子処理である前項5記載の方法;
[7]
植物がイネ、トウモロコシ、ダイズ又はコムギである前項1〜6記載の方法;
[8]
植物が遺伝子組換え植物である前項1〜7記載の方法;
[9]
水分ストレスが乾燥ストレスである請求項1〜8記載の方法。
[10]
水分ストレスが過湿ストレスである請求項1〜8記載の方法。
[11]
水分ストレスによる影響が、以下の(1)〜(14)に記載の少なくとも1つの植物表現型の変化により示される前項1〜10記載の方法;
<植物表現型>
(1)発芽率
(2)苗立ち率
(3)健全葉数
(4)草丈
(5)植物重量
(6)葉面積
(7)葉色
(8)種子・果実の数又は重量
(9)収穫物の品質
(10)着花率、着果率
(11)クロロフィル蛍光収率
(12)水分含量
(13)葉面温度
(14)蒸散能
[12]
植物の水分ストレスによる影響を軽減するための、前記式(I)で示される化合物及びその農学的に許容される塩からなる群から選ばれる少なくとも一の化合物の使用;
[13]
水分ストレスが、以下の(1)〜(14)に記載の少なくとも1つの植物表現型の変化により示される、前項12記載の使用;
<植物表現型>
(1)発芽率
(2)苗立ち率
(3)健全葉数
(4)草丈
(5)植物重量
(6)葉面積
(7)葉色
(8)種子・果実の数又は重量
(9)収穫物の品質
(10)着花率、着果率
(11)クロロフィル蛍光収率
(12)水分含量
(13)葉面温度
(14)蒸散能
【発明の効果】
【0007】
本発明方法を用いることによって、植物の水分ストレスによる影響を軽減することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明において、「水分ストレス」とは、乾燥ストレス及び過湿ストレスを意味する。「乾燥ストレス」とは、降雨や灌水の不足により土壌中の水分含量が減少し吸水が阻害されることに基づき植物が暴露されるストレスを意味し、「過湿ストレス」とは、過剰な降雨や灌水により土壌中の水分含量が増加し根圏が過湿状態になることに基づき植物が暴露されるストレスを意味する。水分ストレスは、植物において、その細胞の生理機能を低下させ、その結果様々な障害を引き起こす要因となる。
乾燥ストレスがある条件としては、土壌の種類により値は異なることがあるが、具体的に、植物が栽培されている土壌含水率が15重量%以下、更には10重量%以下、更には、7.5重量%以下、または、植物が栽培されている土壌のpF値が、2.3以上、更には2.7以上、更には3.0以上である。
過湿ストレスがある条件としては、土壌の種類により値は異なることがあるが、具体的に、植物が栽培されている土壌含水率が30重量%以上、更には40重量%以上、更には50重量%以上、または、植物が栽培されている土壌のpF値が、1.7以下、更には1.0以下、更には0.3以下である。ここで、pF値は、「土壌・植物栄養・環境事典」(大洋社、1994年、松坂ら)の61〜62頁の「pF値測定法」において定義される値である。
【0009】
植物の水分ストレスによる影響は、水分ストレスに暴露されていない植物と暴露された植物とを次の植物表現型の変化において比較することにより把握される。即ち、当該植物表現型は植物の水分ストレスによる影響の指標となる。
<植物表現型>
(1)発芽率
(2)苗立ち率
(3)健全葉数
(4)草丈
(5)植物重量
(6)葉面積
(7)葉色
(8)種子・果実の数又は重量
(9)収穫物の品質
(10)着花率、着果率
(11)クロロフィル蛍光収率
(12)水分含量
(13)葉面温度
(14)蒸散能
【0010】
本明細書においては、水分ストレスを以下の式であらわされる「ストレスの強さ」によって定量化することができる。
【0011】
式:「ストレスの強さ」=100×「水分ストレスに暴露されていない植物におけるいずれか一つの植物表現型」/「水分ストレスに暴露された植物における当該いずれか一つの植物表現型」
【0012】
本発明方法は、前記式で表される「ストレスの強さ」が、105〜450、好ましくは110〜200、より好ましくは115〜160である水分ストレスに暴露された又は暴露されるであろう植物に適用するものである。
【0013】
植物が水分ストレスに暴露されることによって、前記の表現型の少なくとも1つに影響が認められる。すなわち、
(1)発芽率低下
(2)苗立ち率低下
(3)葉の枯死率の増加
(4)草丈低下
(5)植物重量減少
(6)葉面積増加の遅延
(7)葉色退色
(8)種子あるいは果実の数又は重量の減少
(9)収穫物の品質の悪化
(10)着花率、着果率の低下
(11)クロロフィル蛍光収率の低下
(12)水分含量の減少
(13)葉面温度の上昇
(14)蒸散能の低下
等が観察され、これを指標として植物の水分ストレスの大きさを測定することができる。
本発明は、本化合物を植物に施用することにより、水分ストレスに暴露された又は暴露されるであろう植物の前記水分ストレスによる影響を軽減する方法である。水分ストレスによる影響の軽減効果は、本化合物を処理した植物と処理しない植物とを、当該植物が水分ストレスに暴露された後の前記指標を比較することによって評価することができる。
【0014】
本発明において対象となる植物が水分ストレスに暴露されうるステージは、発芽期、栄養生長期、生殖生長期、収穫期を含む全ての植物の生育ステージを含む。
本発明に使用される本化合物の施用時期は、植物のいずれの生育ステージであってもよく、例えば、播種時前、播種時、播種後出芽前後などの発芽期、育苗時、苗移植時、挿し木・挿し苗時、定植後の生育時などの栄養生長期、開花前、開花中、開花後、出穂直前・出穂期などの生殖生長期、収穫予定前、成熟予定前、果実の着色開始期などの収穫期が挙げられる。また、本化合物の施用対象は、水分ストレスに暴露された植物であっても暴露されるであろう植物であってもよい。即ち、水分ストレスに暴露された植物のみならず、水分ストレスに暴露される前の植物に予防的に適用することもできる。
【0015】
本発明において使用される本化合物は、
下記式(I)

[式中、Rはフェニル基、ナフチル基又は芳香族複素環基を示し、これらの基はハロゲン原子、水酸基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキルチオ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2〜6のアルケニル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2〜6のアルキニル基、アミノ基、炭素数1〜6のアルキルアミノ基及びジ(炭素数1〜6のアルキル)アミノ基から選ばれる1〜5個の基で置換されていてもよく、
は水酸基、アミノ基又は炭素数1〜6のアルコキシ基を示し、
Xは直鎖又は分枝鎖の炭素数1〜6のアルキレン基を示し、
Yは直鎖又は分枝鎖の炭素数1〜6のアルキレン基又は直鎖又は分枝鎖の炭素数2〜6のアルケニレン基を示す。]
で示される化合物及びその農学的に許容される塩からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物である。
本化合物は、特許第4087942号公報または特開2001−139405に記載された化合物であり、例えば、当該公報に記載された方法によって合成することができる。
【0016】
本化合物として、好ましくは、式(I)において、
がフェニル基、1−ナフチル基又は3−インドリル基(但し、これらの基はその水素原子がハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、炭素数1〜6のアルキル基及び炭素数1〜6のアルコキシ基から選ばれる1〜5個の基で置換されていてもよい)であり、
が、水酸基、アミノ基又は炭素数1〜6のアルコキシ基であり、
Xが、直鎖又は分枝鎖の炭素数1〜6のアルキレン基であり、
Yが、直鎖又は分枝鎖の炭素数1〜6のアルキレン基又は直鎖又は分枝鎖の炭素数2〜6のアルケニレン基である、
化合物及びその農学的に許容される塩からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物
である。
本化合物として、さらに好ましくは、式(I)において、
がフェニル基、4−ヨードフェニル基、1−ナフチル基又は3−インドリル基であり、
が水酸基又はメトキシ基であり、
Xがエチレン基又はテトラメチレン基であり、
Yがエチレン基又はトリメチレン基である
化合物及びその農学的に許容される塩からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物
である。
【0017】
本化合物として、具体的には、
<化合物群A>
(1)4−オキソ−4−(2−フェニルエチル)アミノ酪酸
(2)4−オキソ−4−(4−フェニルブチル)アミノ酪酸メチル
(3)4−オキソ−4−(2−フェニルエチル)アミノ酪酸メチル
(4)4−オキソ−4−(4−フェニルブチル)アミノ酪酸
(5)5−オキソ−5−[2−(3−インドリル)エチル]アミノ吉草酸
(6)5−オキソ−5−[(1−ナフチル)メチル]アミノ吉草酸
(7)4−オキソ−4−[2−(4−ヨードフェニル)エチル]アミノ酪酸メチル
を挙げることができ、当該化合物は、植物の水分ストレスによる影響を効果的に軽減しうる点から好ましい。
【0018】
本化合物は、塩基との塩であってもよい。式(1)で表される化合物の塩基性塩は次に挙げられるものである。
アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等の金属塩(例えば、ナトリウム、カリウム、またはマグネシウムの塩);アンモニアとの塩;モルホリン、ピペリジン、ピロリジン、モノ−低級アルキルアミン、ジ−低級アルキルアミン、トリ−低級アルキルアミン、モノ−ヒドロキシ低級アルキルアミン、ジ−ヒドロキシ低級アルキルアミン、トリ−ヒドロキシ低級アルキルアミン等の有機アミンとの塩。
【0019】
本発明方法において使用する場合の本化合物は、本化合物のみでも使用することが可能であるが、後述するとおり種々の不活性成分を用いて製剤化して使用することができる。
【0020】
製剤化の際に用いられる固体担体としては、例えばカオリンクレー、アッタパルジャイトクレー、ベントナイト、モンモリロナイト、酸性白土、パイロフィライト、タルク、珪藻土、方解石等の鉱物、トウモロコシ穂軸粉、クルミ殻粉等の天然有機物、尿素等の合成有機物、炭酸カルシウム、硫酸アンモニウム等の塩類、合成含水酸化珪素等の合成無機物等からなる微粉末又は粒状物等が挙げられ、液体担体としては、例えばキシレン、アルキルベンゼン、メチルナフタレン等の芳香族炭化水素類、2−プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテル等のアルコール類、アセトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン類、ダイズ油、綿実油等の植物油、石油系脂肪族炭化水素類、エステル類、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、及び水が挙げられる。
【0021】
界面活性剤としては、例えばアルキル硫酸エステル塩、アルキルアリールスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルリン酸エステル塩、リグニンスルホン酸塩、ナフタレンスルホネートホルモアルデヒド重縮合物等の陰イオン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤、及びアルキルトリメチルアンモニウム塩等の陽イオン界面活性剤が挙げられる。
【0022】
その他の製剤用補助剤としては、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子、アラビアガム、アルギン酸及びその塩、CMC(カルボキシメチルセルロース)、ザンサンガム等の多糖類、アルミニウムマグネシウムシリケート、アルミナゾル等の無機物、防腐剤、着色剤、及びPAP(酸性リン酸イソプロピル)、BHT等の安定化剤が挙げられる。
【0023】
本発明方法は、通常、本化合物の有効量を植物又はその生育場所に施用することにより行われる。施用対象となる植物は、茎葉、芽、花、果実、穂、種子、球根、塊茎、根、苗等の種々の形態又は部位であってよい。ここで球根とは、鱗茎、球茎、根茎、塊根、および担根体を意味する。また、苗としては、本明細書においては、挿し木、種黍等を含むものとする。植物の生育場所としては、植物を植えつける前または植えつけた後の土壌等が挙げられる。
植物又は植物の生育場所に施用する場合は、本化合物は、対象植物に対して、1回もしくは複数回処理する。
【0024】
本発明方法における施用方法としては、具体的には、例えば、茎葉散布等の植物の茎葉、花器又は穂への処理、種子消毒・種子浸漬・種子コート等の種子処理、苗への処理、球根処理等、また、土壌処理等の植物の栽培地への処理等が挙げられる。これらのうち、種子処理、球根処理が好ましく挙げられる。
【0025】
開花前、開花中、開花後を含む開花時期における花器、出穂時期の穂等、植物の特定の部位のみに施用しても良く、植物全体に施用しても良い。
【0026】
本発明方法における土壌処理方法としては、例えば、土壌への散布、土壌混和、土壌への薬液潅注(薬液潅水、土壌注入、薬液ドリップ)が挙げられ、処理する場所としては例えば、植穴、作条、植穴付近、作条付近、栽培地の全面、植物地際部、株間、樹幹下、主幹畦、培土、育苗箱、育苗トレイ、苗床等が挙げられ、処理時期としては播種前、播種時、播種直後、育苗期、定植前、定植時、及び定植後の生育期等が挙げられる。また、上記土壌処理において、複数の本化合物を植物に同時に処理してもよく、本化合物を含有するペースト肥料等の固形肥料を土壌へ施用してもよい。また、本化合物を潅水液に混合してもよく、例えば、潅水設備(潅水チューブ、潅水パイプ、スプリンクラー等)への注入、条間湛水液への混入、水耕液へ混入等が挙げられる。また、あらかじめ潅水液と本化合物を混合し、例えば、上記潅水方法やそれ以外の散水、湛水等のしかるべき潅水方法を用いて処理することができる。また、シート状やひも状等に加工した樹脂製剤を作物に巻き付ける、作物の近傍に張り渡す及び/又は株元の土壌表面に敷く等の方法で本化合物を使用することもできる。
【0027】
本発明方法における種子処理又は球根処理としては、例えば、植物の種子又は球根に本化合物を処理する方法であって、具体的には、例えば、本化合物の懸濁液を霧状にして種子表面もしくは球根表面に吹きつける吹きつけ処理、本化合物の水和剤、乳剤、またはフロアブル剤等に少量の水を加えるか、またはそのままで種子もしくは球根に塗付する塗沫処理、本化合物の溶液に一定時間種子を浸漬する浸漬処理、フィルムコート処理、ペレットコート処理が挙げられる。
【0028】
本発明方法における苗への処理としては、例えば、本化合物を水で適当な有効成分濃度に希釈調製した希釈液を苗全体に散布する散布処理、その希釈液に苗を浸漬する浸漬処理、粉剤に調製した本化合物を苗全体に付着させる塗布処理が挙げられる。また、苗を植えつける前または植えつけた後の土壌への処理としては、例えば、本化合物を水で適当な有効成分濃度に希釈調製した希釈液を、苗を植えつけた後に苗及び周辺土壌に散布する方法、粒剤または粒剤等の固形剤に調製した本化合物を、苗を植えつけた後周辺土壌に散布する方法が挙げられる。
【0029】
本化合物は水耕栽培における水耕液に混合して用いてもよく、また組織培養における培地成分の1つとして用いてもよい。水耕栽培に使用する場合は、通常用いられる園試等の水耕栽培用の培地に培地中濃度として0.001ppm〜10000ppmの範囲で溶解又は懸濁して用いることができる。また組織培養や細胞培養時に使用する場合は、通常用いられるMS培地等の植物組織培養用の培地に、培地中濃度として0.001ppm〜10000ppmの範囲で溶解又は懸濁して用いることができる。この場合、定法に従い、炭素源としての糖類、各種植物ホルモン等を適宜加えることができる
本化合物を、植物または植物の生育場所に処理する場合、その処理量は、処理する植物の種類、製剤形態、処理時期、気象条件等によって変化させ得るが、1000m2あたり有効成分量として通常0.1〜1000g、好ましくは1〜500gの範囲である。土壌に全面混和する場合は、その処理量は、1000m2あたり通常0.1〜1000g、好ましくは1〜500gである。このとき、乳剤、水和剤、フロアブル剤、マイクロカプセル剤等は、通常水で希釈して散布することにより処理する。この場合、本化合物の濃度は、通常0.01〜10000ppm、好ましくは1〜5000ppmの範囲である。粉剤、粒剤等は通常希釈することなくそのまま処理する。
【0030】
種子処理又は球根処理においては、種子100kgに対する本化合物の重量としては、通常0.1〜100g、好ましくは1〜30gの範囲である。本処理に用いる種子または球根の重さは、例えば100g以下のもの、好ましくは20g以下のもの、より好ましくは、0.5g以下のもの、さらにより好ましくは、50mg以下のものが挙げられる。種子又は球根の例としては、例えば、好ましくはダイズ、トウモロコシ、イネ、コムギなど、より好ましくはイネ、コムギなどが挙げられる。
苗への処理においては、苗1つに対する本化合物の重量としては、通常0.01〜20mg、好ましくは0.5〜8mgの範囲である。苗を植えつける前または植えつけた後の土壌への処理においては、1000m2あたり本化合物の重量としては、通常0.1〜100g、好ましくは1〜50gの範囲である。
本発明により水分ストレスによる影響の軽減が可能な植物として、以下のようなものが挙げられる。
【0031】
農作物;トウモロコシ、イネ、コムギ、オオムギ、ライムギ、オートムギ、エンバク、ソルガム、ワタ、ダイズ、ピーナッツ、ソバ、テンサイ、キャノーラ、ナタネ、ヒマワリ、サトウキビ、タバコ、エンドウ等、
野菜;ナス科野菜(ナス、トマト、ピーマン、トウガラシ、ジャガイモ等)、ウリ科野菜(キュウリ、カボチャ、ズッキーニ、スイカ、メロン、スカッシュ等)、アブラナ科野菜(ダイコン、カブ、セイヨウワサビ、コールラビ、ハクサイ、キャベツ、カラシナ、ブロッコリー、カリフラワー等)、キク科野菜(ゴボウ、シュンギク、アーティチョーク、レタス等)、ユリ科野菜(ネギ、タマネギ、ニンニク、アスパラガス)、セリ科野菜(ニンジン、パセリ、セロリ、アメリカボウフウ等)、アカザ科野菜(ホウレンソウ、フダンソウ等)、シソ科野菜(シソ、ミント、バジル等)、イチゴ、サツマイモ、ヤマノイモ、サトイモ等、
花卉、
観葉植物、
シバ、
果樹;仁果類(リンゴ、セイヨウナシ、ニホンナシ、カリン、マルメロ等)、核果類(モモ、スモモ、ネクタリン、ウメ、オウトウ、アンズ、プルーン等)、カンキツ類(ウンシュウミカン、オレンジ、レモン、ライム、グレープフルーツ等)、堅果類(クリ、クルミ、ハシバミ、アーモンド、ピスタチオ、カシューナッツ、マカダミアナッツ等)、液果類(ブルーベリー、クランベリー、ブラックベリー、ラズベリー等)、ブドウ、カキ、オリーブ、ビワ、バナナ、コーヒー、ナツメヤシ、ココヤシ等、
果樹以外の樹;チャ、クワ、花木、街路樹(トネリコ、カバノキ、ハナミズキ、ユーカリ、イチョウ、ライラック、カエデ、カシ、ポプラ、ハナズオウ、フウ、プラタナス、ケヤキ、クロベ、モミノキ、ツガ、ネズ、マツ、トウヒ、イチイ)等。
【0032】
本発明により水分ストレスによる影響の軽減が可能な植物として、より好ましくはイネ、トウモロコシ、ダイズ、コムギが挙げられる。
【0033】
上記「植物」とは、イソキサフルトール等のHPPD阻害剤、イマゼタピル、チフェンスルフロンメチル等のALS阻害剤、グリホサート等のEPSP合成酵素阻害剤、グルホシネート等のグルタミン合成酵素阻害剤、セトキシジム等のアセチルCoAカルボキシラーゼ阻害剤、ブロモキシニル、ジカンバ、2,4−D等の除草剤に対する耐性を古典的な育種法、もしくは遺伝子組換え技術により付与された植物も含まれる。
【0034】
古典的な育種法により耐性を付与された「植物」の例として、イマゼタピル等のイミダゾリノン系ALS阻害型除草剤に耐性のナタネ、コムギ、ヒマワリ、イネがありClearfield(登録商標)の商品名で既に販売されている。同様に古典的な育種法によるチフェンスルフロンメチル等のスルホニルウレア系ALS阻害型除草剤に耐性のダイズがあり、STSダイズの商品名で既に販売されている。同様に古典的な育種法によりトリオンオキシム系、アリールオキシフェノキシプロピオン酸系除草剤等のアセチルCoAカルボキシラーゼ阻害剤に耐性が付与された植物の例としてSRコーン等がある。アセチルCoAカルボキシラーゼ阻害剤に耐性が付与された植物は、プロシーディングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシーズ・オブ・ザ・ユナイテッド・ステーツ・オブ・アメリカ(Proc. Natl. Acad. Sci. USA)、1990年、87巻、p.7175−7179等に記載されている。また、アセチルCoAカルボキシラーゼ阻害剤に耐性の変異アセチルCoAカルボキシラーゼが、ウィード・サイエンス(Weed Science)、2005年、53巻、p.728−746等に報告されており、こうした変異アセチルCoAカルボキシラーゼ遺伝子を遺伝子組換え技術により植物に導入するかもしくは抵抗性付与に関わる変異を植物アセチルCoAカルボキシラーゼに導入することにより、アセチルCoAカルボキシラーゼ阻害剤に耐性の植物を作出することができる。さらに、キメラプラスティ技術(Gura T.1999.Repairing the Genome's Spelling Mistakes. Science 285:316-318.)に代表される塩基置換変異導入核酸を植物細胞内に導入して植物のアセチルCoAカルボキシラーゼ遺伝子やALS遺伝子等に部位特異的アミノ酸置換変異を導入することにより、アセチルCoAカルボキシラーゼ阻害剤やALS阻害剤等に耐性の植物を作出することができる。
【0035】
遺伝子組換え技術により耐性を付与された植物の例として、グリホサート耐性のトウモロコシ、ダイズ、ワタ、ナタネ、テンサイ品種があり、ラウンドアップレディ(RoundupReady(登録商標))、AgrisureGT等の商品名で既に販売されている。同様に遺伝子組換え技術によるグルホシネート耐性のトウモロコシ、ダイズ、ワタ、ナタネ品種があり、リバティーリンク(LibertyLink(登録商標))等の商品名で既に販売されている。同様に遺伝子組換え技術によるブロモキシニル耐性のワタはBXNの商品名で既に販売されている。
【0036】
上記「植物」とは、遺伝子組換え技術を用いて、例えば、バチルス属で知られている選択的毒素等を合成することが可能となった植物も含まれる。
【0037】
この様な遺伝子組換え植物で発現される毒素として、バチルス・セレウスやバチルス・ポピリエ由来の殺虫性タンパク;バチルス・チューリンゲンシス由来のCry1Ab、Cry1Ac、Cry1F、Cry1Fa2、Cry2Ab、Cry3A、Cry3Bb1またはCry9C等のδ−エンドトキシン、VIP1、VIP2、VIP3またはVIP3A等の殺虫タンパク;線虫由来の殺虫タンパク;さそり毒素、クモ毒素、ハチ毒素または昆虫特異的神経毒素等動物によって産生される毒素;糸状菌類毒素;植物レクチン;アグルチニン;トリプシン阻害剤、セリンプロテアーゼ阻害剤、パタチン、シスタチン、パパイン阻害剤等のプロテアーゼ阻害剤;リシン、トウモロコシ−RIP、アブリン、ルフィン、サポリン、ブリオジン等のリボゾーム不活性化タンパク(RIP);3−ヒドロキシステロイドオキシダーゼ、エクジステロイド−UDP−グルコシルトランスフェラーゼ、コレステロールオキシダーゼ等のステロイド代謝酵素;エクダイソン阻害剤;HMG−CoAリダクターゼ;ナトリウムチャネル、カルシウムチャネル阻害剤等のイオンチャネル阻害剤;幼若ホルモンエステラーゼ;利尿ホルモン受容体;スチルベンシンターゼ;ビベンジルシンターゼ;キチナーゼ;グルカナーゼ等が挙げられる。
【0038】
また、この様な遺伝子組換え植物で発現される毒素として、Cry1Ab、Cry1Ac、Cry1F、Cry1Fa2、Cry2Ab、Cry3A、Cry3Bb1、Cry9C、Cry34AbまたはCry35Ab等のδ−エンドトキシンタンパク、VIP1、VIP2、VIP3またはVIP3A等の殺虫タンパクのハイブリッド毒素、一部を欠損した毒素、修飾された毒素も含まれる。ハイブリッド毒素は組換え技術を用いて、これらタンパクの異なるドメインの新しい組み合わせによって作り出される。一部を欠損した毒素としては、アミノ酸配列の一部を欠損したCry1Abが知られている。修飾された毒素としては、天然型の毒素のアミノ酸の1つまたは複数が置換されている。
【0039】
これら毒素の例、及びこれら毒素を合成することができる組換え植物は、EP−A−0374753、WO93/07278、WO95/34656、EP−A−0427529、EP−A−451878、WO03/052073等に記載されている。
【0040】
これらの組換え植物に含まれる毒素は、特に、甲虫目害虫、半翅目害虫、双翅目害虫、鱗翅目害虫、線虫類への耐性を植物へ付与する。
【0041】
また、1つもしくは複数の殺虫性の害虫抵抗性遺伝子を含み、1つまたは複数の毒素を発現する遺伝子組換え植物は既に知られており、いくつかのものは市販されている。これら遺伝子組換え植物の例として、YieldGard(登録商標)(Cry1Ab毒素を発現するトウモロコシ品種)、YieldGard Rootworm(登録商標)(Cry3Bb1毒素を発現するトウモロコシ品種)、YieldGard Plus(登録商標)(Cry1Ab毒素とCry3Bb1毒素とを発現するトウモロコシ品種)、Herculex I(登録商標)(Cry1Fa2毒素と、グルホシネートへの耐性を付与する為にホスフィノトリシン N−アセチルトランスフェラーゼ(PAT)とを発現するトウモロコシ品種)、NuCOTN33B(登録商標)(Cry1Ac毒素を発現するワタ品種)、Bollgard I(登録商標)(Cry1Ac毒素を発現するワタ品種)、Bollgard II(登録商標)(Cry1Ac毒素とCry2Ab毒素とを発現するワタ品種)、VIPCOT(登録商標)(VIP毒素を発現するワタ品種)、NewLeaf(登録商標)(Cry3A毒素を発現するジャガイモ品種)、NatureGard(登録商標)Agrisure(登録商標)GT Advantage(GA21 グリホサート耐性形質)、Agrisure(登録商標)CB Advantage(Bt11コーンボーラー(CB)形質)、Protecta(登録商標)等が挙げられる。
【0042】
上記「植物」とは、遺伝子組換え技術を用いて、選択的な作用を有する抗病原性物質を産生する能力を付与されたものも含まれる。
抗病原性物質の例として、PRタンパク等が知られている(PRPs、EP−A−0392225)。このような抗病原性物質とそれを産生する遺伝子組換え植物は、EP−A−0392225、WO95/33818、EP−A−0353191等に記載されている。
こうした遺伝子組換え植物で発現される抗病原性物質の例として、例えば、ナトリウムチャネル阻害剤、カルシウムチャネル阻害剤(ウイルスが産生するKP1、KP4、KP6毒素等が知られている。)等のイオンチャネル阻害剤;スチルベンシンターゼ;ビベンジルシンターゼ;キチナーゼ;グルカナーゼ;PRタンパク;ペプチド抗生物質、ヘテロ環を有する抗生物質、植物病害抵抗性に関与するタンパク因子(植物病害抵抗性遺伝子と呼ばれ、WO03/000906に記載されている。)等の微生物が産生する抗病原性物質等が挙げられる。このような抗病原性物質とそれを産生する遺伝子組換え植物は、EP−A−0392225、WO95/33818、EP−A−0353191等に記載されている。
【0043】
上記「植物」とは、遺伝子組換え技術を用いて、油糧成分改質やアミノ酸含量増強形質等の有用形質を付与した植物も含まれる。例として、VISTIVE(登録商標)(リノレン含量を低減させた低リノレン大豆)又はhigh−lysine(high−oil)corn(リジン又はオイル含有量を増量したコーン)等が挙げられる。
【0044】
さらに、上記の古典的な除草剤形質又は除草剤耐性遺伝子、殺虫性害虫抵抗性遺伝子、抗病原性物質産生遺伝子、油糧成分改質やアミノ酸含量増強形質等の有用形質について、これらを複数組み合わせたスタック品種も含まれる。
【0045】
本発明では、水分ストレスによる影響の指標として、(1)発芽率、(2)苗立ち率、(3)健全葉数、(4)草丈、(5)植物重量、(6)葉面積、(7)葉色、(8)種子あるいは果実の数又は重量、(9)収穫物の品質、(10)着花率、着果率、(11)クロロフィル蛍光収率、(12)水分含量、(13)葉面温度、(14)蒸散能などの植物表現型を用いることができる。
【0046】
当該指標は、次のようにして測定することができる。
(1)発芽率
植物の種子を、例えば土壌中、ろ紙上、寒天培地上、砂上などに播種して発芽させ、播種数に対する発芽数の割合を調査する。
(2)苗立ち率
植物の種子を、例えば土壌中、ろ紙上、寒天培地上、砂上などに播種し、一定期間栽培する。栽培の全ての期間中あるいは一部の期間中に水分ストレスを負荷した後、生き残った幼植物の割合を調査する。
(3)健全葉数
各植物について健全な葉の枚数を数え、総健全葉数を調査する。あるいは植物の全ての葉数に対する健全葉数の割合を調査する。
(4)草丈
各植物について地上部分の茎の根元から先端の枝葉までの長さを測定する。
(5)植物重量
各植物の地上部を切り取り、重量を測定して、植物新鮮重量を求める、あるいは切り取ったサンプルを乾燥させた後に重量を測定して、植物乾燥重量を求める。
(6)葉面積
植物をデジタルカメラで撮影し、写真の緑色の部分の面積を画像解析ソフト例えばWin ROOF(三谷商事社製)で定量することにより、植物の葉面積を求める。
(7)葉色
植物の葉をサンプリングし、葉緑素計(例えばSPAD−502、コニカミノルタ製)を用いて葉緑素量を測定することにより、葉色を求める。
(8)種子あるいは果実の数又は重量
植物を果実が結実あるいは完熟するまで栽培した後、植物当りの果実数を計測あるいは植物当りの総果実重量を測定する。また、種子が登熟するまで栽培した後、例えば穂数、登熟歩合、千粒重などの収量構成要素を調査する。
(9)収穫物の品質
植物を果実が完熟するまで栽培した後、例えば糖度計を用いて、完熟果の糖度を測定することで収穫物の品質を評価する。
(10)着花率、着果率
植物を着果するまで栽培した後、着花数と着果数をかぞえ着果率%(着果数/着花数×100)を求める。
(11)クロロフィル蛍光収率
パルス変調クロロフィル蛍光測定装置(例えば、IMAGING-PAM、WALZ社製)を用いて、植物のクロロフィル蛍光値(Fv/Fm)を測定することによって、クロロフィル蛍光収率を求める。
(12)水分含量
植物の各生育段階において、上記「(5)植物重量」に記載の方法に従い、植物新鮮重量と植物乾燥重量を求め、植物新鮮重量から植物乾燥重量を差し引いた値を、植物の水分含量として算出する。また、近赤外光を照射し、この特定波長の吸収量(透過量)を計測することによって、植物の水分含量を非破壊的に測定する。例えば、スキャナライザー(レムナテック社製)を用いて水分含量を測定する。
(13)葉面温度
植物の各生育段階において、サーモグラフィー(例えば、TVS-8000 MKII、アビオニックス製)を用いて、葉面温度をモニターする。
(14)蒸散能
植物の各生育段階において、ポロメーター(例えば、AP4、デルタT社製)を用いて葉の表面からの水の蒸散を測定する。
【実施例】
【0047】
以下、本発明を製剤例、処理例、及び試験例にてさらに詳しく説明するが、本発明は以下の例のみに限定されるものではない。なお、以下の例において、部は特にことわりの無い限り重量部を示す。
【0048】
製剤例1
本化合物を3.75部、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエ−テル14部、ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム6部、及びキシレン76.25部をよく混合することにより各乳剤を得る。
【0049】
製剤例2
本化合物を10部、ホワイトカーボンとポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートアンモニウム塩との混合物(重量割合1:1)35部、及び水55部を混合し、湿式粉砕法で微粉砕することにより各フロアブル製剤を得る。
【0050】
製剤例3
本化合物を15部、ソルビタントリオレエ−ト1.5部、及びポリビニルアルコ−ル2部を含む水溶液28.5部を混合し、湿式粉砕法で微粉砕した後、この中にキサンタンガム0.05部及びアルミニウムマグネシウムシリケ−ト0.1部を含む水溶液45部を加え、さらにプロピレングリコ−ル10部を加えて攪拌混合し各フロアブル製剤を得る。
【0051】
製剤例4
本化合物を45部、プロピレングリコールを5部(ナカライテスク製)、Soprophor FLKを5部(ローディア日華製)、アンチフォームCエマルションを0.2部(ダウコーニング社製)、プロキセルGXLを0.3部(アーチケミカル製)、及びイオン交換水を49.5部の割合で混合し、原体スラリーを調製する。該スラリー100部に150部のガラスビーズ(Φ=1mm)を投入し、冷却水で冷却しながら、2時間粉砕する。粉砕後、ガラスビーズをろ過により除き、各フロアブル製剤を得る。
【0052】
製剤例5
本化合物を50.5部、NNカオリンクレーを38.5部(竹原化学工業製)、Morwet D425を10部、Morwer EFWを1.5部(アクゾノーベル社製)の割合で混合し、AIプレミックスを得る。当プレミックスをジェットミルで粉砕し、各粉剤を得る。
【0053】
製剤例6
本化合物を5部、合成含水酸化珪素1部、リグニンスルホン酸カルシウム2部、ベントナイト30部、及びカオリンクレー62部をよく粉砕混合し、水を加えてよく練り合せた後、造粒乾燥することにより各粒剤を得る。
【0054】
製剤例7
本化合物を3部、カオリンクレー87部、及びタルク10部をよく粉砕混合することにより各粉剤を得る。
【0055】
製剤例8
本化合物を22部、リグニンスルホン酸カルシウム3部、ラウリル硫酸ナトリウム2部、及び合成含水酸化珪素73部をよく粉砕混合することにより各水和剤を得る。
【0056】
種子処理例1
製剤例1に準じて作製した乳剤を、ソルガム乾燥種子100kgに対し、回転式種子処理機(シードドレッサー、Hans−Ulrich Hege GmbH製)を用いて500ml塗沫処理することにより、処理種子を得る。
【0057】
種子処理例2
製剤例2に準じて作製したフロアブル製剤を、ナタネ乾燥種子10kgに対し、回転式種子処理機(シードドレッサー、Hans−Ulrich Hege GmbH製)を用いて50ml塗沫処理することにより、処理種子を得る。
【0058】
種子処理例3
製剤例3に準じて作製したフロアブル製剤を、トウモロコシ乾燥種子10kgに対し、回転式種子処理機(シードドレッサー、Hans−Ulrich Hege GmbH製)を用いて40ml塗沫処理することにより、処理種子を得る。
【0059】
種子処理例4
製剤例4に準じて作製したフロアブル製剤を5部、ピグメントBPD6135(Sun Chemical製)を5部、及び水を35部混和し、混和物を調製する。該混和物を、ワタ乾燥種子10kgに対し、回転式種子処理機(シードドレッサー、Hans−Ulrich Hege GmbH製)を用いて60ml塗沫処理することにより、処理種子を得る。
【0060】
種子処理例5
製剤例5に準じて作製した粉剤を、トウモロコシ乾燥種子10kgに対し、50g粉衣処理することにより、処理種子を得る。
【0061】
種子処理例6
製剤例7に準じて作製した紛剤を、イネ乾燥種子100kgに対し、40g粉衣処理することにより、処理種子を得る。
【0062】
種子処理例7
製剤例2に準じて作製したフロアブル製剤を、ダイズ乾燥種子10kgに対し、回転式種子処理機(シードドレッサー、Hans−Ulrich Hege GmbH製)を用いて50ml塗沫処理することにより、処理種子を得る。
【0063】
種子処理例8
製剤例3に準じて作製したフロアブル製剤を、コムギ乾燥種子10kgに対し、回転式種子処理機(シードドレッサー、Hans−Ulrich Hege GmbH製)を用いて50ml塗沫処理することにより、処理種子を得る。
【0064】
種子処理例9
製剤例4に準じて作製したフロアブル製剤を5部、ピグメントBPD6135(Sun Chemical製)を5部、水を35部混和し、ジャガイモ塊茎片10kgに対し、回転式種子処理機(シードドレッサー、Hans−Ulrich Hege GmbH製)を用いて70ml塗沫処理することにより、処理種子を得る。
【0065】
種子処理例10
製剤例4に準じて作製したフロアブル製剤を5部、ピグメントBPD6135(Sun Chemical製)を5部、水を35部混和し、ヒマワリ種子10kgに対し、回転式種子処理機(シードドレッサー、Hans−Ulrich Hege GmbH製)を用いて70ml塗沫処理することにより、処理種子を得る。
【0066】
種子処理例11
製剤例5に準じて作製した粉剤を、テンサイ乾燥種子10kgに対し、40g粉衣処理することにより、処理種子を得る。
【0067】
実施例1 イネ種子処理による乾燥ストレス影響軽減評価試験(植物重量)
(種子処理)
5% (V/V) color coat red (Becker Underwood, Inc.)、5% (V/V) CF-Clear (Becker Underwood, Inc.)、0.4% Maxim XL (Syngenta)を含むBlank slurry溶液を調製した。化合物aのナトリウム塩をBlank slurryに溶解し、333−10,000ppmの濃度で化合物aのナトリウム塩を含むslurry溶液を調製した。50-mlプラスチック製遠沈管の中で、イネ種子(品種;日本晴)10gに対して 300μlの前記Slurry溶液を添加して、3〜5分間撹拌し、その後、種子を乾燥させた。また、対照としては、前記slurry溶液に代えてBlank slurryを用いて作製した種子を無処理区用種子とした。
(供試植物)
406穴プラグトレーの穴にろ紙を載せ、種子処理したイネ種子をろ紙上に播種した。2倍希釈した木村B水耕液(Plant Science 119:39-47 (1996))を用い、温度:28℃/23℃(昼/夜)、照度:8500Lux、日長12時間の条件下で、14日間栽培し、供試植物とした。
(乾燥ストレスおよび回復処理)
供試植物を5株ずつ空の35-ml平底テストチューブ(アシスト/Sarstedt製)に入れ、ふたをせずに2日間静置した(これを乾燥ストレス有りの試験区とする。)。乾燥ストレス無しの試験区として、供試植物を5株ずつ10mlの2倍希釈した木村B水耕液の入った遠心管に入れ、ふたをせずに2日間静置した。2日間の静置後の植物を滅菌処理した圃場土の入ったプラスチックポット(N-71-130G、東罐興業(株)製)に5株ずつ移植し、底面灌水しながら、温度:28℃/23℃(昼/夜)、照度:8500 Lux、日長12時間の条件下で、14日間栽培した。
(評価)
乾燥ストレス処理後、各試験区の供試植物5個体を纏めて、地上部新鮮重量を測定し、各試験区につき3反復の平均値を求めた。結果を表1に示した。その結果、本発明試験区の地上部新鮮重量は、対照と比べて明らかに大きく、乾燥ストレスによる影響が軽減されていた。
【0068】
【表1】

【0069】
実施例2 コムギ浸漬処理による乾燥ストレス影響軽減評価試験(植物重量)
(供試植物)
406穴プラグトレーの穴にろ紙を載せ、コムギ種子(品種:シロガネコムギ)をろ紙上に播種する。ホグランド水耕液(Science 52(1354):562-564 (1920))を用い、温度:22℃、照度:3650 Lux、日長16時間の条件下で、7日間栽培し、供試植物とする。
(本化合物処理)
化合物aのナトリウム塩は250,000ppm水溶液を調製し、これを100mlのホグランド水耕液に各試験濃度になるように添加し、供試液とする。化合物bは各試験濃度の1000倍濃度のDMSO溶液を調製し、これをホグランド水耕液に100mlに対して 0.1mL添加し、供試液とする。対照として、ホグランド水耕液に0.1% DMSOを添加し、供試液とする。
次に、100mlの供試液をふたに穴をあけたプラスチックカップ(C-AP角カップ(88-200)、中央化学(株)製)に入れ、上記の供試植物15個体の根部を供試液に浸漬して、ふたの穴から地上部を出した状態でふたを閉め、温度:22℃、照度:3650 Lux、日長16時間の条件下で、3日間栽培する。
(乾燥ストレスおよび回復処理)
供試植物を5株ずつ空の35-ml平底テストチューブ(アシスト/Sarstedt製)に入れ、ふたをせずに3日間静置する(これを乾燥ストレス有りの試験区とする。)。乾燥ストレス無しの試験区として、供試植物を5株ずつ10mlのホグランド水耕液の入った遠心管に入れ、ふたをせずに3日間静置する。3日間静置後の植物を滅菌処理した培土(愛菜、片倉チッカリン製)の入ったプラスチックポット(N-71-130G、東罐興業(株)製)に5株ずつ移植し、底面灌水しながら、温度:26℃、照度:5000 Lux、日長16時間の条件下で、14日間栽培する。処理後の植物につき、5株ごとの地上部新鮮重量を測定する(乾燥ストレス処理後重量)。
(評価)
乾燥ストレス処理後、各試験区の供試植物5個体を纏めて、地上部新鮮重量を測定し、各試験区につき3反復の平均値を求める。本発明試験区の地上部新鮮重量は、対照と比べて明らかに大きく、乾燥ストレスが軽減されている。
【0070】
実施例3 コムギ種子処理による乾燥ストレス影響軽減評価試験(植物重量、葉面積)
(種子処理)
5% (V/V) color coat red (Becker Underwood, Inc.)、5% (V/V) CF-Clear (Becker Underwood, Inc.)、0.4% Maxim XL (Syngenta)を含むBlank slurry溶液を調製する。化合物aのナトリウム塩をBlank slurryに溶解し、385−11,538ppmの濃度で化合物aのナトリウム塩を含むslurry溶液を調製する。種子処理機(HEGE11、Hans-Ulrich Hege社製)を用いて、コムギ種子(品種;Apogee)50g当り、1.3mlのSlurry溶液を混和させて種子コーティングした後、種子を乾燥させる。また、対照としては、前記slurry溶液に代えてBlank slurryを用いて作製した種子を無処理区用種子とする。
(乾燥ストレス処理および回復処理)
乾燥機にて1日間それぞれ乾燥させた培養土(愛菜、片倉チッカリン社製)および砂を、重量比1:1で混合し、水分量が7.5%(W/W)あるいは10%(W/W)となるように水道水を添加し混合した後、プラスチックポット(129パイ860B、リスパック社製)に充填する。本化合物で処理(コーティング)したコムギ種子を5個体/ポットずつ播種し、温度:23℃、照度:4000 Lux、湿度:55%、日長12時間の乾燥ストレスを付加しうる条件に設定した人工気象器に入れ、1日2回、ポット重量を測定し、蒸発した水分を足して、ポット内の水分量を一定に調節しながら、5日間栽培する。5日後、底面灌水し水分ストレスの無い条件で、さらに6日間栽培する。
乾燥ストレスなしの処理として、上記培養土に種子を播種した後、底面灌水しながら11日間栽培する。
(評価)
各試験区の供試植物5個体を纏めて、地上部新鮮重量を測定する。また、各試験区の供試植物5個体を纏めて、WinRHIZO画像解析装置(REGENET INSTRUMENTS 社製)を用いて総葉面積を定量する。本発明試験区の地上部新鮮重量および総葉面積は、対照と比べて明らかに大きく、乾燥ストレスが軽減されている。
【0071】
試験例4 ダイズ種子処理による過湿ストレス影響軽減評価試験(発芽率、草丈)
(供試植物)
4.5% (V/V) color coat red (Becker Underwood, Inc.)、5% (V/V) CF-Clear (Becker Underwood, Inc.)、1.7% Maxim XL (Syngenta)を含むBlank slurry溶液を調製する。本化合物として、化合物aのナトリウム塩、化合物a、化合物b、化合物c、化合物d、化合物e 、化合物f、又は化合物gをBlank slurryに溶解し、1000−30,000ppmの濃度で本化合物を含むslurry溶液を調製する。種子処理機(HEGE11、Hans-Ulrich Hege社製)を用いて、ダイズ種子(品種;さちゆたか)50g当り、0.5mlのSlurry溶液を混和させて種子コーティングした後、種子を乾燥させる。また、対照としては、前記slurry溶液に代えてBlank slurryを用いて作製した種子を無処理区用種子とする。
(過湿ストレス処理及び回復処理)
培養土(愛菜、片倉チッカリン社製)に水分量が40%(W/W)となるように水道水を添加して混合した後、プラスチックポット(129パイ860B、リスパック社製)に充填する。本化合物で処理(コーティング)したコムギ種子を5個体/ポットずつ播種し、温度:23℃、照度:4000 Lux、湿度:60%、日長12時間の条件に設定した人工気象器に入れ、底面灌水しながら栽培する。
過湿ストレスなしの処理として、上記培養土に種子を播種後、適宜灌水しながら栽培する。
(評価)
各試験区の発芽率を調査する。また、生存している個体の草丈を調査する。本発明化合物溶液添加区の発芽率や草丈は、対照区と比べて明らかに大きく、過湿ストレスによる影響が軽減されている。
【0072】
実施例5 トウモロコシ種子処理による乾燥ストレス影響軽減評価試験(植物重量)
5% (V/V) color coat red (Becker Underwood, Inc.)、5% (V/V) CF-Clear (Becker Underwood, Inc.)、0.4% Maxim XL (Syngenta社製)を含むブランクスラリー溶液を調製する。トウモロコシ種子(品種:黒もち)100kg当り1g〜30gとなるように化合物a、化合物a、化合物b、化合物c、化合物d、化合物e 、化合物f、又は化合物gをブランクスラリー溶液に溶解しスラリー溶液とする。50mL遠沈管(日本BD社製)に、トウモロコシ種子(品種:黒もち)20g当り0.48mlのスラリー溶液を入れ、スラリー溶液が乾くまで攪拌し、種子をコーティングする。対照としては、ブランクスラリー溶液を用いてコーティングした種子を無処理区用種子とする。
種子処理後のトウモロコシ種子をプラスチックポット(直径55 mm×高さ58mm)中の培土(愛菜)に2粒ずつ播種し、温度:27℃、照度:5000 Lux、日長16時間の条件下で4日間栽培し、実験に供試する。
乾燥機にて1日間それぞれ乾燥させた培養土(愛菜、片倉チッカリン社製)および砂を、重量比1:1で混合し、水分量が7.5%(W/W)あるいは10%(W/W)となるように水道水を添加し混合した後、プラスチックポット(129パイ860B、リスパック社製)に充填する。上記のトウモロコシ実生を1ポットあたり1個体移植し、温度:27℃、照度:5000 Lux、湿度:50%、日長16時間の条件に設定した人工気象室に入れ、ポット重量を測定して、蒸発して減少した重量分の水道水を添加し、当初のポット内の水分量を一定に保つように調節しながら、7日間栽培する。7日後、十分に灌水し水分ストレスの無い条件で、さらに7日間栽培する。
(評価)
各試験区の供試植物の地上部新鮮重量を測定する。本発明試験区の地上部新鮮重量は、無処理区と比べて明らかに大きく、乾燥ストレスによる影響が軽減されている。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明方法を用いることによって、植物の水分ストレスによる影響を軽減することが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物の水分ストレスによる影響を軽減する方法であって、
水分ストレスに暴露された又は暴露されるであろう植物に、有効量の下記式(I)で示される化合物及びその農学的に許容される塩からなる群から選ばれる少なくとも一の化合物を施用することを特徴とする方法。
式(I)

[式中、Rはフェニル基、ナフチル基又は芳香族複素環基を示し、これらの基はハロゲン原子、水酸基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキルチオ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2〜6のアルケニル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2〜6のアルキニル基、アミノ基、炭素数1〜6のアルキルアミノ基及びジ(炭素数1〜6のアルキル)アミノ基から選ばれる1〜5個の基で置換されていてもよく、
は水酸基、アミノ基又は炭素数1〜6のアルコキシ基を示し、
Xは直鎖又は分枝鎖の炭素数1〜6のアルキレン基を示し、
Yは直鎖又は分枝鎖の炭素数1〜6のアルキレン基又は直鎖又は分枝鎖の炭素数2〜6のアルケニレン基を示す。]
【請求項2】
式(I)において、
がフェニル基、1−ナフチル基又は3−インドリル基(但し、これらの基はその水素原子がハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、炭素数1〜6のアルキル基及び炭素数1〜6のアルコキシ基から選ばれる1〜5個の基で置換されていてもよい)であり、
が、水酸基、アミノ基又は炭素数1〜6のアルコキシ基であり、
Xが、直鎖又は分枝鎖の炭素数1〜6のアルキレン基であり、
Yが、直鎖又は分枝鎖の炭素数1〜6のアルキレン基又は直鎖又は分枝鎖の炭素数2〜6のアルケニレン基である、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
式(I)において、
がフェニル基、4−ヨードフェニル基、1−ナフチル基又は3−インドリル基であり、
が水酸基又はメトキシ基であり、
Xがエチレン基又はテトラメチレン基であり、
Yがエチレン基又はトリメチレン基である、
請求項1記載の方法。
【請求項4】
式(I)で示される化合物が、下記化合物群Aから選ばれる化合物である請求項1記載の方法。
<化合物群A>
(1)4−オキソ−4−(2−フェニルエチル)アミノ酪酸
(2)4−オキソ−4−(4−フェニルブチル)アミノ酪酸メチル
(3)4−オキソ−4−(2−フェニルエチル)アミノ酪酸メチル
(4)4−オキソ−4−(4−フェニルブチル)アミノ酪酸
(5)5−オキソ−5−[2−(3−インドリル)エチル]アミノ吉草酸
(6)5−オキソ−5−[(1−ナフチル)メチル]アミノ吉草酸
(7)4−オキソ−4−[2−(4−ヨードフェニル)エチル]アミノ酪酸メチル
【請求項5】
施用が、種子処理である請求項1〜4記載の方法。
【請求項6】
種子処理が、下記式(I)で示される化合物及びその農学的に許容される塩からなる群から選ばれる少なくとも一の化合物を100kg種子当り1〜30g処理する種子処理である請求項5記載の方法
式(I)

[式中、Rはフェニル基、ナフチル基又は芳香族複素環基を示し、これらの基はハロゲン原子、水酸基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキルチオ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2〜6のアルケニル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2〜6のアルキニル基、アミノ基、炭素数1〜6のアルキルアミノ基及びジ(炭素数1〜6のアルキル)アミノ基から選ばれる1〜5個の基で置換されていてもよく、
は水酸基、アミノ基又は炭素数1〜6のアルコキシ基を示し、
Xは直鎖又は分枝鎖の炭素数1〜6のアルキレン基を示し、
Yは直鎖又は分枝鎖の炭素数1〜6のアルキレン基又は直鎖又は分枝鎖の炭素数2〜6のアルケニレン基を示す。]
【請求項7】
植物がイネ、トウモロコシ、ダイズ、又はコムギである請求項1〜6記載の方法。
【請求項8】
植物が遺伝子組換え植物である請求項1〜7記載の方法。
【請求項9】
水分ストレスが乾燥ストレスである請求項1〜8記載の方法。
【請求項10】
水分ストレスが過湿ストレスである請求項1〜8記載の方法。
【請求項11】
水分ストレスによる影響が、以下の(1)〜(14)に記載の少なくとも1つの植物表現型の変化により示される請求項1〜10記載の方法。
<植物表現型>
(1)発芽率
(2)苗立ち率
(3)健全葉数
(4)草丈
(5)植物重量
(6)葉面積
(7)葉色
(8)種子・果実の数又は重量
(9)収穫物の品質
(10)着花率、着果率
(11)クロロフィル蛍光収率
(12)水分含量
(13)葉面温度
(14)蒸散能
【請求項12】
植物の水分ストレスによる影響を軽減するための、下記式(I)で示される化合物及びその農学的に許容される塩からなる群から選ばれる少なくとも一つの化合物の使用。
式(I)

[式中、Rはフェニル基、ナフチル基又は芳香族複素環基を示し、これらの基はハロゲン原子、水酸基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキルチオ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2〜6のアルケニル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2〜6のアルキニル基、アミノ基、炭素数1〜6のアルキルアミノ基及びジ(炭素数1〜6のアルキル)アミノ基から選ばれる1〜5個の基で置換されていてもよく、
は水酸基、アミノ基又は炭素数1〜6のアルコキシ基を示し、
Xは直鎖又は分枝鎖の炭素数1〜6のアルキレン基を示し、
Yは直鎖又は分枝鎖の炭素数1〜6のアルキレン基又は直鎖又は分枝鎖の炭素数2〜6のアルケニレン基を示す。]
【請求項13】
水分ストレスによる影響が、以下の(1)〜(14)に記載の少なくとも1つの植物表現型の変化により示される、下記式(I)で示される化合物及びその農学的に許容される塩からなる群から選ばれる少なくとも一つの化合物の使用。
<植物表現型>
(1)発芽率
(2)苗立ち率
(3)健全葉数
(4)草丈
(5)植物重量
(6)葉面積
(7)葉色
(8)種子・果実の数又は重量
(9)収穫物の品質
(10)着花率、着果率
(11)クロロフィル蛍光収率
(12)水分含量
(13)葉面温度
(14)蒸散能
式(I)

[式中、Rはフェニル基、ナフチル基又は芳香族複素環基を示し、これらの基はハロゲン原子、水酸基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキルチオ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2〜6のアルケニル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2〜6のアルキニル基、アミノ基、炭素数1〜6のアルキルアミノ基及びジ(炭素数1〜6のアルキル)アミノ基から選ばれる1〜5個の基で置換されていてもよく、
は水酸基、アミノ基又は炭素数1〜6のアルコキシ基を示し、
Xは直鎖又は分枝鎖の炭素数1〜6のアルキレン基を示し、
Yは直鎖又は分枝鎖の炭素数1〜6のアルキレン基又は直鎖又は分枝鎖の炭素数2〜6のアルケニレン基を示す。]

【公開番号】特開2012−97068(P2012−97068A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86131(P2011−86131)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】