説明

植物プランクトン付着シート及びその利用方法

【課題】本発明は、植物プランクトンを付着させるシート及びそれを使用した二酸化炭素の削減方法に関する発明である。
【解決手段】本発明は、上記の課題を解決するために、糸を編んだシートと、前記シート付着させた植物プランクトンとからなり、屋外の緑化により二酸化炭素削減に利用することを特徴とする植物プランクトン付着シート4と、前記植物プランクトン付着シート4を屋外に設置し、常時水を供給し、光合成をさせることを特徴とする植物プランクトン付着シートの利用方法の構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物プランクトンを付着させるシート及びそれを使用した二酸化炭素の削減及び将来の代替エネルギーでえる水素の生成に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
従来の壁面緑化技術ではコケ植物などを石の壁に自然発生させ、それを増殖させる必要があるため、かなりの時間と手間を要するものであるが、コケ植物などは石の種類によっては自然発生をさせることが難しく、また石以外の壁製品に対しては増殖はおろか自然発生させることも難しく、時間や設備投資費用がかかるものであった。このような問題から壁面緑化技術の進展は難しく、その温暖化対策の目的達成度もなかなか上がらず、成果も非常に限定的で希薄であった。
【0003】
また、例えば地球環境戦略研究機関や地球環境産業技術研究機構、日本環境協会があり、21世紀環境立国戦略特別部会では、環境省、外務省、農林水産省、経済産業省、国土交通省の緑化技術の専門家が論議を交わすなど、先駆けて実践し、研究されているにも拘わらず、緑化技術の高層ビル化を実現するには遙かに難しい状況にある。更に企業レベルでは2000年の京都議定書の二酸化炭素6%を受け、現在までに植林活動やエコカーの製造など企業努力はしているものの+7.8%の増加となっている。
【0004】
この原因は様々に考えられるので幾つか挙げると、
1.今現在、二酸化炭素自体を分解する技術が開発されていない。
2.光合成機能を有する物の技術開発がなされていない。
3.芝生や雑草などでは光合成機能が平面(二次元)的にしか発揮されない。
4.毎秒サッカー場ほどの緑地面積が失われているうえ、苗木を植えても大木になるまで何十年もの時間が必要となる。
5.現在、荒れ地、空き地の多くは放置されている状態であり、中には何十年も放置されている土地がある。また社会の敷地の利用として駐車場の他、草地のみの部分が多い。更に屋上緑化技術によるビルの屋上緑化などは知られていてもあまり利用されていない。
6.植物は根・茎・葉などの器官や組織を作らなければならず、大木に成長すればするほど、その分のエネルギーはその為に使われてしまう。つまり植物自身の成長の為に使われるエネルギーが増加することになる。これは全て光合成のみに使われるわけではないので、光合成機能が十分に発揮されることにはならない。また植物は葉だけで光合成を行うので、いくら放射状に広がっても光合成機能は葉の総面積に比例してしまうので、効果は限定的となる。その証拠に、縦5m横5m高さ10mの直方体に入る木1本を考えると、光合成機能は葉のみなので葉一枚一枚をその直方体に隙間無く貼ったとしても底面積20平方メートルを除く残りの表面積225平方メートルを覆い尽くすことは全く不可能である。
7.植物の光合成機能は知られていても植物プランクトンの光合成機能についてはあまり知られていない。
などが考えられる。ここで特に7については非常に重要であるため、詳しく説明する。
光合成機能の利用の主なものは炭酸固定による炭水化物の生産である。植物以外の微細藻類の光合成機能の利用については様々挙げられるが、中でも水素生成、炭酸固定が重要である。微細藻類などは光合成機能を有する植物で根や葉といった細胞の分化が進んでいないためその光合成機能は極めて高い。
水素は単位重量あたりの発熱エネルギーが石油の3倍と大きく、大気汚染の心配がない。その生産システムとして期待されているものの一つが光合成による水素生成である。ラン藻、緑藻などが水素を生成する光合成微生物である。燃料電池では水素を生成するために常に電気分解させる必要があり、太陽電池その他の装置などの設備費用が重なり、非常にコストがかかる。しかし、特定の微細藻類は光エネルギーを直接水素生成するので、簡単であり、非常に低コストの生産が可能になるので、将来の水素エネルギー生産に重要な役割を果たすことができる。
また、炭酸固定では1987年度エネルギー生産の84.6%を石油や石炭などの化石燃料に依存している日本では、二酸化炭素量の排出は特に大きな問題となっている。100万kwの発電所から排出される二酸化炭素量を発電エネルギー効率40%、重油燃焼熱10,000kcal/kg、重油中のオクタン価0.842と仮定し算出した場合、炭素量にして約4,400t/day、c二酸化炭素として1,600t/dayが放出される。微細藻類を用いてこの火力発電所から排出される二酸化炭素を固定するときの必要面積を計算した。植物や大型藻類より単位面積あたりの炭酸固定そくどの速い微細藻類は14日間で2gdrycell/lまで成育する。この藻体の50%が炭素なので70mg/l/dayの速度で炭素が固定される。従って水深1mの池を利用して微細藻類を培養すると24時間光照射下では7,500m×7,500m、9時間光照射下では12km×12kmの面積が必要である。(「現代植物生理学1光合成 宮地重遠編」 p216より参照)
【特許文献1】特開平09−294461号広報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、現在までの緑化技術のこのような点に鑑みて、繊維構造体における人為的な栄養分の吸収及びそれによる湖水中の植物プランクトン・藻類養殖の生産性の向上と地上の二酸化炭素の大幅削減を可能ならしめる植物プランクトン付着シート及びその資料方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するために、糸を編んだシートと、前記シート付着させた植物プランクトンとからなり、屋外の緑化により二酸化炭素削減に利用することを特徴とする植物プランクトン付着シート4と、
前記植物プランクトン付着シート4を屋外に設置し、常時水を供給し、光合成をさせることを特徴とする植物プランクトン付着シートの利用方法の構成とした。
【発明の効果】
【0007】
本発明の植物プランクトン付着シート及びその利用方法は、植物プランクトンが着生しやすい素材で構成された付着シートに一定条件下で成長する植物プランクトンを付着させ、これまで利用価値の乏しかった雨水を利用して二酸化炭素の削減や将来の代替エネルギーとなる水素の発生を実現することができる。
【0008】
また、植物プランクトン付着シートの資材として、半永久的に廉価で利用できる人毛を活用することができるため、付着シートを製造するに当たり、資材不足を心配する必要がなく永続的に利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
地球温暖化の原因となっている二酸化炭素の削減または将来の代替エネルギーとなる水素の生成という目的を、半永久的に廉価で利用できる資材と、不要となっている資材及び一定条件下で成長する植物プランクトンを利用することによって実現した。
【実施例1】
【0010】
図1は、本発明である植物プランクトン付着シート及びその利用方法の説明図である。先ず植物プランクトン付着シート4について説明する。
【0011】
植物プランクトン付着シート4は、糸2aを編んだシート2と、前記シート2に付着した植物プランクトン4aとからなる。
【0012】
シート2は、糸2aを編んだものである。糸2aには、その性能要求から親性・吸水性の良好なタコ糸が好ましいが、特に限定したものではなく、必要に応じてビニロン、木綿等を混撚した撚糸を用いてもよく植物プランクトンが付着しやすい素材を使用する。
【0013】
また、前記糸2aについては、図1に示すように接着剤2c等を使用して糸2aに髪の毛2bを接着させた糸を利用することもできる。
【0014】
植物プランクトン付着シートの繊維材料は半永久的に生産できる保障がないため、繊維材料不足時に対応できる吸水性に富み、半永久的に生産できる資材が必要となる。更に地球的規模に鑑み、低コストで生産でき、低価格で提供することが可能な繊維であることが必要である。即ち、以前より廃棄物としてあまり注目されなかったものである。
【0015】
以上の条件を満たす資材として髪の毛に注目した。髪の毛2bが植物プランクトンを付着させる資材として有用か否かについては、次の通り実験してみた。
【0016】
ここで、植物プランクトンを付着させる資材として髪の毛が有効であるか否かを検証してみた。500mlのプラスチック容器に湖水を400ml入れ、そこに窒素(N)、リン(P)、カリウム(K)を8:8:5の割合で20ml入れ、更にその中に髪の毛を数本入れ、よく振って放置した。(但し、この髪の毛は1ヶ月以上ホコリが付着するように放置したものである)
【0017】
水温が5〜6℃であったため、容器を20℃まで暖めた。すると2日後あたりから容器内にある藻や植物プランクトンが髪の毛に付着し始め5日後には髪の毛の周りに藻などが固まって付着していた。容器を逆さまや横にしても髪の毛から藻や植物プランクトンが離れず付着したままだった。これは髪の毛の成分などが藻や植物プランクトンの栄養になっているからである。一方、人工の髪も同様に試してみたが全く何も付着することなく、何日経っても結果は変わらなかった。このことから、植物プランクトンや藻類の栄養物である繊維用紙材として髪の毛が有効であることが分かる。
【0018】
植物プランクトン付着シート4の作成方法1としては、図1に示すように、シート2を繁殖液3fを張った水槽3に浸し、光3eを照射し、培養する。これにより、植物プランクトン4aはシート2に付着する。
【0019】
水槽3の底面に反射板3aを取り付けることで光3eが反射し、効率よく植物プランクトン4aの繁殖を進めること及び植物プランクトン付着シート4を作成することが可能になる。
【0020】
また、前記水槽3の内部壁面には複数のライト3bが取り付けられており、太陽光などの光3eが弱い曇りの日や夜間などにライト3bを照射することで植物プランクトン4aが繁殖し植物プランクトン付着シート4を作成することができる。
【0021】
このように繁殖プール3にあたる光が重要な理由について「淡水赤潮 門田元編」p193ウログレナの増殖と物理的環境要因より説明することとする。
【0022】
植物プランクトン黄藻類ウログレナの増殖のための温度と光照度の影響について調べウログレナ赤潮発生前後に出現した植物プランクトンA.formasa、F.crotonesis、D.lavaricum及びS.dorsidentifermの4種の結果と併せて考察してみた。
【0023】
実験はウログレナ又は他の藻類をUr−1培地に接種し、標準条件として6000Lx、14h明、16h暗で15℃において行い、適時、温度及び光照度を変えて培養し、結果を分裂速度(2分裂に要する時間)と最大細胞量の相対値として表した。
【0024】
ウログレナは20℃に最適温度を持ち、25℃以上では全く増殖しない。15℃では分裂速度(分裂時間の逆数)は劣るが最大細胞収量は変わらず、5℃では更に分裂速度は著しく低下するが、1ヶ月以上培養を続けると20℃や15℃と同程度の細胞収量となる。ウログレナの分裂速度を分裂時間の逆数として求めると、15℃や20℃では1日に1^1.2回分裂し、24℃と10℃では0.25回分裂することとなる。
【0025】
ウログレナの分裂速度は混在している細胞の分裂速度と密接に関係があるため、この値は、相対的なものであると考えた方が適切である。従ってウログレナの最適温度は混在する細菌側の温度感受性にも影響されるため、時には15℃に最適温度を示すこともある。赤潮前後に出現するA.formasa及びF.crotonesisは20℃にD.fanariumは20〜25℃にS.dorsidentifermは25℃又はそれ以上に最適温度を示す。
【0026】
光照度の影響については、培養温度を15℃として白色蛍光灯を用いて14h明:10h暗サイクルの照明を3000、5000、9000、12000Lxで調べると、ウログレナは12000Lxで最大分裂速度c/dayを示し、1日に1.2回分裂するが、15000Lxでは低下し、3000Lxでも0.7回以上の分裂を行い、暗所では有機物を添加しても数日で死滅する。一方、D.fanariumとF.crotonesisの最適照度は5000Lxで分裂速度は1.4/dayと1.5/dayであるが、それ以上では低下する。A.formasaとS.dorsidentifermの最適照度は9000Lxで分裂速度はそれぞれ1.7/dayと0.7/dayである。
【0027】
これらの結果は窒素とリン濃度を湖水程度に低下させると他の植物プランクトンの分裂速度はウログレナのそれより著しく小さくなる。従って赤潮発生時期(4月中旬〜6月上旬)における水温と光照度ではウログレナが他の植物プランクトンより優位に立つものと推測される。琵琶湖において水温が10℃以上になったころから発生し、20℃近くなると死滅するウログレナは培養実験からも低温性であるといえる。我が国の湖のうちでウログレナの存在が確認されているのは比較的水温の低い河口湖、精進湖、中禅寺湖、湯の湖、小河内ダム湖など数少なく、また諸外国では緯度の高い冷涼な地域にある貧栄養ないしは中栄養の湖であるという共通点がある。このように低温性はウログレナの本来的性状であると差し支えないだろう。
【0028】
これらのことから現実の琵琶湖北湖では主要無機物(k+、Mg+、Ca+)の濃度比、リンの濃度、溶存鉄の濃度、ビタミンB12に濃度などが赤潮形成を可能にする程度のウログレナの増殖量を得るのに必要な条件をぎりぎりの線で充たし、その上水中の細菌群集もウログレナの増殖に好都合な密度に達していると考えられよう。
【0029】
水槽3については、各学校のプールが考えられる。6月〜9月までのプール使用期間を除く期間中に使用許可をもらい植物プランクトン付着シートを作成する方法である。この場合、全国に屋外プールが散在していることから地域ごとに植物プランクトン付着シートを作成することができ、かつ規模は全国であることから非常に生産性に優れている。また、別の方法も考えらえる。海から400m下の大陸棚付近の海洋深層水には多量のリン(P)、窒素(N)、などのミネラルが豊富なため、海の近くにプールを作り、海洋深層水をそこに入れる方法である。この方法であれば植物プランクトン付着シートも作成でき、付着シートを作成しない場合でも、増殖した植物プランクトンなどを再び海に戻すことで動物プランクトンや魚介類も増殖させることができるため、生態系により良い環境を提供できる。
【0030】
実際に現在の屋外プールには、水草、藻、植物プランクトンなどの様々な水生生物が繁殖している。つまり植物プランクトン付着シートを作成できる状況にある。また、このことは、ビルや校舎などの屋上や荒れ地や空き地など他に利用されていない空間でも繁殖プールを設置することで同じように植物プランクトンを成育できるということになる。更に高さ1〜2m側面を鏡張りにし、底面に反射鏡という構造であればより効果的に植物プランクトンを繁殖させることができる。このように植物プランクトン付着シートを作成またはそれ以外の目的を持つ繁殖プールが果たす役割を理解させることが今後の小学校、中学校、高等学校における環境教育の飛躍的な発展につながると考えられる。つまり、より身近に温暖化対策が実施できるので、場所としても市町村が管理する公用地であり、全国規模であることを鑑みると教育における公平性と公益性、将来性を有することになる。そして全国的に植物プランクトン付着シートを提供できるようになれば、地域性も有する。また、植物プランクトン付着シートを提供しない場合でも、地上の陽当たりの良い荒れ地や空き地などの空間を高さ10m透明ガラスの直方体の巨大な植物プランクトン繁殖タンクを設置することで、太陽エネルギーを効率よく利用でき、光合成機能も他の植物以上に発揮することができる。また、既に述べたように光合成機能による水素生成も可能なため、将来において非常に合理的で低コストな環境対策を実施できる。
【0031】
付着シートの設置方法については、縦、横、蛇状など種々考えられる。そこで、プールの幅より少し短い鉄の棒の両端に鉄板を垂直に溶接し、その鉄の棒に付着シートを何重にも巻きつけプール内に沈める。この方法であればプール内の植物プランクトンを効率よくシートに付着させることができる。また、付着シートを何重にも巻き付けることで、より広範囲で大きな付着シートを作成することが可能になる。
【0032】
また、付着シートの放置日数については、植物プランクトンの増殖過程に鑑み、20〜30日を目安にした方が良いと考えられる。
【0033】
次に植物プランクトン付着シートの利用方法5について説明する。
【0034】
図1に示すように、植物プランクトン付着シート4を建物6の壁面に取付け、植物プランクトン付着シート4に付着した植物プランクトン4aが光合成を行い二酸化炭素を吸収して酸素を放出する。
【0035】
植物プランクトン付着シート4を取り付ける方法として建物6の壁面上部に上ローラー5cを取付け、下部には下ローラー5fを備え水5eが貯められている下部貯水槽5dを備えた。前記上ローラー5cから下ローラー5dにかけて前記植物プランクトン付着シート4をベルトコンベアのように取付け植物プランクトン付着シート4が回動可能な状態とした。
【0036】
また、建物6の屋上には上部貯水槽5aを備え、上部貯水槽5aからパイプ5iを介して放水管5bを取り付けた。この放水管5bは前記上ローラー5cの上部に位置しており上部貯水槽5aに貯められた雨水を植物プランクトン付着シート4に噴霧することができるようにした。尚、前記パイプ5iの途中に取り付けられているのはバルブ5hであり、放水管5bからの放水を制御する。また、放水管5bには無数の放水口5gが穿設されている。
【0037】
前記上ローラー5cはベルト5kを介して駆動源5jと接続されており、駆動源5jの駆動に伴い上ローラー5cが回転する。上ローラー5cが回転すると上ローラー5cに取り付けられている植物プランクトン付着シート4が回転する。
【0038】
上述のように回転する植物プランクトン付着シート4は上ローラー5c付近を通過する際に放水管5bからの放水を受け、更に下ローラー5f付近を通過する際は下部貯水槽5dに貯められた雨水の中を通過することとなり、常に湿った状態を保っている。
【0039】
以上のように植物プランクトン付着シート4は一方のローラーから他方のローラーに移動する間に光合成を行い、植物プランクトン4aが乾いて死滅する前に上下ローラー5c、5dの位置で湿らされる。また、雨7aなどが降った場合には直接雨水を浴びて雨水中の二酸化炭素を取り入れることができる。
【0040】
ここで上述のようにビルなどの建物の利用と雨水等の利用に着目した点について説明することとする。
【0041】
現在まで雨水を有効利用しようと考えられずに見落とされていた。理科の実験にもあるように、二酸化炭素(息)を吹きかけると色が白濁色になるという実験をした。つまり酸性雨と言われているように、二酸化炭素は液体に溶けることを小学校の頃には既に知っていることになる。これは世界中どこでも降っている雨水中に二酸化炭素が含まれると言うことである。現在まで降った雨水をそのまま放置あるいは配水とし続けていたため、植物に吸収される以外は蒸発してまた大気中に拡散してしまうことになる。つまり、二酸化炭素の絶対量はこのままでは減ることはないのである。二酸化炭素を分解する技術開発がなされていない現在、二酸化炭素を含む雨水を植物プランクトンに直接消費させる技術が必要である。
【0042】
現在温暖化問題が深刻となり、異常気象などの様々な影響をもたらしている。また、先進国では年間70億トンもの二酸化炭素を排出し続けるのみで、対策はあまり施されていないため、状況はひどくなる一方である。
【0043】
また、生活排水については、植物プランクトンの成育過程に最も適した成分、即ち窒素(N)、リン(P)などが含まれているため、今から30年以上も前から霞ヶ浦などで富栄養化による藻、植物プランクトンの大量発生によるアオコなどが発生していたが、現在では無リン洗浄や微生物を使った下水処理場があるなど環境対策が施されているため、ここでは使用しないこととする。その代わりとなるのが、処理後の水や海洋深層水などである。処理後の水は現在、あまり用途がないため川や海に戻している状況であり、海洋深層水は先述したようにミネラルが多く含まれているため利用すべきである。
【0044】
現在、ビルの屋上や壁面、家屋の屋根などでは、先述したようにほとんど技術開発がなされていない。つまり、太陽エネルギーを受けている面積は非常に広大であるにも拘わらず、そのエネルギーを利用できていない状況にある。これはエネルギー効率で考えれば非常に効率が悪いといえる。この事を証明するために、縦50m、横50m、高さ100mのビルで計算することとする。我が国の表面積を38万㎢の正方形と仮定すると、1辺の長さは約620kmとなる。ここでビルの屋上だけを緑化する場合、38万㎢÷2500平方メートル=1億5200万棟のビルが必要となる。しかし、ビルの側面だけを緑化した場合、ビルの側面積は5000(平方メートル)×4=20000平方メートルなので、38万㎢÷2000平方メートル=190万棟つまり、前者の8分の1(12.5%)で済むことになる。
【0045】
また、現在の大都市は超高層ビルが高密度に集まった場所である。例えば人間の胃のようなものである。人間の胃は栄養物が効率よく吸収されるように表面には無数の突起物(ひだ)があり、そのひだは更に小さいひだ状のものが集まってできている。つまり、高層ビル1棟を一つのひだとして考えれば、二酸化炭素や水などを効率よく吸収させるには、ビルの屋上のみならず、壁面全てを光合成微生物で覆う必要がある。また人間の胃は強酸性の粘液に覆われていることで固形物を細かく分解し液状にしてより効率の良い吸収ができるようになっている。つまり壁面ということもあり、はがれ落ちるのを防ぐためや、二酸化炭素などをより広範囲に吸収できるようにするために、粘性のある光合成微生物でなければならない。
【0046】
本発明は光合成による二酸化炭素削減や水素生成という役割を果たすだけでなく、我が国の温暖湿潤気候という気候特性や植物の水循環機能に鑑み、水系特に雨水の循環機能を促進させ、ヒートアイランド現象を防ぐ役割も担っている。
【実施例2】
【0047】
次に図2を使用して植物プランクトン付着シートの利用方法の第2実施例を説明することとする。図2は、本発明である植物プランクトン付着シート及びその利用方法の第2実施例の説明図である。
【0048】
実施例1で示したように植物プランクトン付着シート4を作成するまでは同じであるため、植物プランクトン付着シート4の利用方法9を説明する。
【0049】
図2に示すように、植物プランクトン付着シート4を取り付ける方法として建物6aの屋根上部に上ローラー9cと屋根の縁に中ローラー9eを取付け、下部には下ローラー9dを備え雨水9bが貯められた貯水槽9aを備えた。
【0050】
前記上ローラー9cから中ローラー9e、下ローラー9dと全てのローラーを使用して植物プランクトン付着シート4をベルトコンベアのように取付け植物プランクトン付着シート4が回動可能な状態とした。
【0051】
前記上ローラー9cの隣には駆動源を使用する必要はなく、手動でローラーを回転させると植物プランクトン付着シート4がベルトコンベアのように回転する。
【0052】
以上のように取り付けられた植物プランクトン付着シート4は下ローラー9d付近を通過する際に貯水槽9a内に貯められた雨水9b等の中を通過することとなり、湿った状態を保つこととなる。そして、このとき植物プランクトン付着シート4の植物プランクトン4aは雨水9b中の二酸化炭素を取り入れることができる。
【0053】
植物プランクトン付着シート4が回動し下ローラー9dから上ローラー9cに移動するまでにシートに付着した植物プランクトン4aは光合成をし酸素8を放出する。尚、雨7aが降った場合には直接雨水を浴びて雨水中の二酸化炭素を取り入れることができる。
【0054】
前記貯水槽9aに効果的に雨水9b等を集めるため図2の下図に示したように排水溝9hへ向かう地面9gに傾斜9fを設けてもよい。この場合、ゴム芝を設置することが考えられるが、このゴム芝については、タイヤでも使用可能であり古タイヤや廃タイヤなどをリサイクルすることができ廃棄物を有効活用することができる。
【実施例3】
【0055】
次に図3を使用して植物プランクトン付着シートの利用方法の第3実施例を説明することとする。図3は、本発明である植物プランクトン付着シート及びその利用方法の第3実施例の説明図である。
【0056】
実施例1で示したように植物プランクトン付着シート4を作成するまでは同じであるため、植物プランクトン付着シート4の利用方法10を説明する。
【0057】
図3に示すように、植物プランクトン付着シート4を取り付ける方法として建物6の屋上にシート掛け11を設置し、前記シート掛け11に向かって放水するための放水管5bを備えた上部貯水槽5aを併置した。
【0058】
前記シート掛け11は山部と谷部を交互に形成した階段状の枠体で、このシート掛け11に植物プランクトン付着シート4を蛇状に取り付ける。
【0059】
前記放水管5bはシート掛け11に向かって放水するように設置されており上部貯水槽5aに貯められた雨水が放水される。
【0060】
以上のように植物プランクトン付着シート4を蛇状に取り付けることにより植物プランクトン付着シート4の表面積が増え建物6の屋上という限られたスペースでも効率よく光合成による二酸化炭素の削減を実現することができる。
【0061】
また、放水管5bからの放水を決められた間隔または任意に行うことで植物プランクトン付着シート4に付着している植物プランクトン4aは雨水中の二酸化炭素を取り入れることができ、雨が降った場合には直接雨水を浴びて雨水中の二酸化炭素を取り入れることもできる。
【0062】
尚、シート掛け11の構造については、後で詳細に説明することとする。
【実施例4】
【0063】
次に図4を使用して植物プランクトン付着シートの利用方法の第4実施例を説明することとする。図4は、本発明である植物プランクトン付着シート及びその利用方法の第4実施例の説明図である。
【0064】
実施例1で示したように植物プランクトン付着シート4を作成するまでは同じであるため、植物プランクトン付着シート4の利用方法10aを説明する。
【0065】
図4に示すように、植物プランクトン付着シート4を取り付ける方法として建物6aの屋根上にシート掛け11を設置し、前記シート掛け11に向かって放水するための放水管5bを屋根の上部に取り付けた。更に前記放水管5bは吸水管5lを介して下部貯水槽5dに連結されている。
【0066】
前記シート掛け11は山部と谷部を交互に形成した階段状の枠体で、このシート掛け11に植物プランクトン付着シート4を蛇状に取り付ける。建物6aのような一般家庭では屋根が傾斜していることが多いためシート掛け11の設置については固定部材等を使用して固定することが望ましい。
【0067】
前記放水管5bはシート掛け11に向かって放水するように設置されており下部貯水槽5dに貯められた雨水5eが放水される。
【0068】
以上のように植物プランクトン付着シート4を蛇状に取り付けることにより植物プランクトン付着シート4の表面積が増え建物6aの屋根という限られたスペースでも効率よく光合成による二酸化炭素の削減を実現することができる。
【0069】
また、放水管5bからの放水を決められた間隔または任意に行うことで植物プランクトン付着シート4に付着している植物プランクトン4aは雨水中の二酸化炭素を取り入れることができ、雨が降った場合には直接雨水を浴びて雨水中の二酸化炭素を取り入れることもできる。
【0070】
尚、下部貯水槽5dに効率よく雨水等を集めるため、実施例2で示したように排水溝9hへ向かう地面9gに傾斜9fを設けてもよい。この場合、ゴム芝を設置することが考えられるが、このゴム芝については、タイヤでも使用可能であり古タイヤや廃タイヤなどをリサイクルすることができ廃棄物を有効活用することができる。
【0071】
次に図5から7を利用して実施例1から実施例4で使用した各部材を説明することとする。図5は本発明である植物プランクトン付着シート及びその利用方法で使用するシートを示した図、図6は植物プランクトン付着シート及びその利用方法で使用する水槽を示した図、図7は植物プランクトン付着シート及びその利用方法で使用するシート掛けを示した図である。
【0072】
図5に示すように、シート2は糸2aを網機でシート状に編んだものである。シート2の上下辺に示したのは耳糸2dである。
【0073】
シート2の編み方については有結節網2eや無結節網2fが考えられるが、特に限定した編み方はない。
【0074】
シート2に使用する糸2aについては前述のように接着剤2c等を介して髪の毛2bを取り付けた糸2aであっても良い。植物プランクトンや藻を付着させる資材として髪の毛2bが有用か否かについては既に説明しているため省略する。
【0075】
以上のように糸2aを編んでシート2にし、次に説明する水槽3で植物プランクトンを効率よく付着させるためシート2を任意の長さで切断し両端に棒2g、2gを取り付けた。このようにすることでシート2を水槽3に設置しやすくなり、一度により多くの植物プランクトン付着シート4を作成することができる。
【0076】
尚、上記のようにシート2を水槽3に設置する際には、必ず棒2gを取り付けなければならないものではなく、水槽3の構造にあった方法でシート2を取り付けることとする。
【0077】
また、糸2aの色を巧みに利用することで様々な模様や文字などを簡単に作成できることからシート2aを巨大にすることで、壁面を単調な色からより鮮やかな色にすることができ、企業などにとっては、巨大な広告になるという利点がある。
【0078】
図6に示すように、水槽3は前記シート2を植物プランクトン付着シート4にするためのものであり、内部底面に反射板3aを備えている。また、水槽3内は繁殖液3fで満たされている。
【0079】
光源3dからの光3eが繁殖液3fに当たり、繁殖液3f内の植物プランクトン4aや藻類が成長するが、上記のように一度水槽3内に差し込んだ光3eが内部底面の反射板3aで反射し更に繁殖液3fに当たるため、光源3dの光3eを有効に利用することができる。
【0080】
また、図6の中央図に示すように、水槽3の壁面上部を反射鏡3cとすることで、より多くの光3eを繁殖液3fに当てることができる。
【0081】
更に、図6の下図に示すように、水槽3の内壁面に複数のライト3bを取り付けることで、光3eの弱い日や夜間でも繁殖液3fに光をあてることができ、植物プランクトン4aや藻の成長を促すことができる。
【0082】
図7に示すように、シート掛け11は中軸11bと突起軸11cを交互に備えた枠体11aを複数連結したものである。
【0083】
枠体11aの内側には複数の中軸11bが等間隔に取り付けられて梯子状になっている。また、枠体11aには上面に向かって起立するように突起軸11cが取り付けられている。
【0084】
前記中軸11bと突起軸11cは交互に取り付けられており、中軸11bと突起軸11cを交互に縫うように植物プランクトン付着シート4を取り付けて使用する。
【0085】
前記枠体11a同士の連結部11dは回動可能になっており折り畳むことができる。また、図7のように設置する際は山部と谷部を交互に形成した状態で設置して使用するが、特に限定したものではない。
【0086】
また、突起11cはシート掛け11に縫うようにとりつける植物プランクトン付着シートの表面積を増やす目的で取付けられたものであるため、突起軸11cを使用せずに全て中軸11bを使用しても構わない。
【0087】
前記シート掛け11は廃車のスクラップなどで得る鉄製品などを使用することで、ゴミとなった廃車を有効利用することができる。
【0088】
次に図8を使用してこれまでに説明した各部材とそれらの利用方法を流れ図で説明することとする。図8は本発明である植物プランクトン付着シート及びその利用方法の流れ図である。
【0089】
図8に示すように、まず「編機によりシート状に編む」12の行程で糸(またはそれに代わる資材)を用いて「シート」2を製造する。
【0090】
「水槽」3には繁殖溶液3fが満たされており、この中に前記「シート」2を浸して放置する。「繁殖溶液3f」は湖水(又は雨水/海水等)3gからなり、湖水中には窒素3h、リン酸3i、カリウム3j等が含まれている。
【0091】
「水槽」3内では反射板3aやライト3bにより植物プランクトンが増殖し、「シート」2に「植物プランクトンが付着」12aし、「植物プランクトン付着シート」4となる。尚、前記窒素3h、リン酸3i、カリウム3jの濃度を植物プランクトンの成育に適切な濃度に調節し、更に水温等も併せて調節することが望ましいが、植物プランクトンの種類によって生育環境が異なるため、「水槽」3の設置地域にあった湖水と植物プランクトンを使用すれば、特に調節することなく利用できる。
【0092】
「水槽」3より取り出した「植物プランクトン付着シート」4を「シート掛け」11に取付け、それを「壁面や屋上等の平面に取付け」12bる。
【0093】
「建物等」6、6aでは「雨水等」3gが「上部貯水槽」5bまたは「下部貯水槽」5dに貯められた状態となっている。「上部貯水槽」5bに貯められた「雨水」は壁面に取り付けられた「植物プランクトン付着シート」4に「散布」12cされる。
【0094】
また、「下部貯水槽」5dに貯められた「雨水」は、そのまま貯水され「植物プランクトン付着シート」4を一時的に「浸す」12dために使用される。尚、実施例4のような場合では「下部貯水槽」5dの「雨水」は、「散布」12cに使用される。
【0095】
上記のような状態で建物に取り付けられた「植物プランクトン付着シート」4で成育する植物プランクトン4aは「二酸化炭素」12fを含んだ雨水等と光により「光合成」12eを行い「酸素」8を放出する。このとき、植物プランクトンが吸収する「二酸化炭素」は雨水等に含まれるもの以外に大気中の「二酸化炭素」も利用している。
【0096】
ここで繁殖プールでの繁殖液の割合について「水域の窒素:リン比と水産生物 吉田陽一編−諏訪湖・霞ヶ浦(P107)」から説明することとする。G・P・Harrisは湖沼に一般的に増殖しているヒメマルケイソウとクラミドモナスがN:P比によって増殖速度及び最大収量に影響すると述べている。更に我が国の湖沼で水の華現象を引き起こし温帯域での富栄養化の指標生物とされているミクロキスティス属の一種についてもN:P比が増殖速度に影響し、収量にも変化を来すと指摘している。自然界でのN:P比と優先種との関係についても下記のように述べている。
N:P比が60以下の場合には窒素固定能のあるアナベナ属やアファニゾメノン属が優先することが多く、60以上の場合にはミクロキスティス属とオッシラトリア属が優先することが多い。
ここで富栄養湖として知られている霞ヶ浦を取り上げてみる。茨城県公共用水域水質測定結果を基に1973年から1988年までのTN(全窒素量):TP(全リン量)比とDIN(溶存無機態窒素):DIP(溶存無機能リン)比を示す。
【0097】
TN:TP比の年間平均値は1974年前後には50〜60、その後徐々に低下し、1979年には30前後と最低を記録し、その後再び上昇、1986年には70に達している。一方、植物プランクトンに直接利用されるDIN:DIP比の年間平均値は1974年〜1982年までは10〜40と低い値に終始しているが、1983年以降は40〜80となっている。
【0098】
1978年以降のTN:TP比の季節的変動では、傾向として1月〜5月は毎年の差が大きく、藍藻類による水の華現象の発生時期には20〜60と他の時期に比べると安定している。一方、DIN:DIP比は毎年大きく値が変動し、1月〜4月及び9月〜12月にかけての変動が特に大きい。比較的季節的変化の傾向が類似している。
【0099】
1981、1982、1986、1987、1988年における変動傾向はTN:TPとの傾向と似ているが、9月以降に春と同様に値が上昇、かつ変動の大きくなる点に違いがある。いずれにしても藍藻類による水の華現象発生時期にDIN:DIP比が10〜20と低下、安定する点は、TN:TP比の変化と類似している。
【0100】
次に茨城県水産試験場内水面支場の報告を基にN:P比とプランクトンの関係が霞ヶ浦でどのようになっているかを示す。
【0101】
1980年の結果を一例として示すが、この年のTN:TP比は20〜45、DIN:DIP比は7〜70と、他の年に比べると変動幅は小さく、数値も低い。しかし、夏期藍藻類の出現時期のTN:TP比は他の年と同様に20前後となっている。この時期の植物プランクトンの内容は、6月には藍藻類が優先しているが、7月には珪藻類の方が優先度が高い傾向となっている。
【0102】
一方、1986年の場合は、TN:TP比およびDIN:DIP比が100を超える時期が1月〜3月と11月〜12月にあり、この年以降も類似した傾向を維持している。この年の植物プランクトンの細胞密度は1月〜3月に極端に低いが、4月以降は1980年の2倍程度に増加している。特に夏期の藍藻類の増加が少なく、春に引き続いて珪藻類が優先しているのが特徴的である。
【0103】
ここで淡水植物プランクトンについて報告されている最適N:P比によると、低いN:P比を好むのは必ずしも藍藻類だけではない。また、全ての藍藻類がN:P比が低い所を好むわけでもない。
【0104】
StockenerとShortreedが行った貧栄養湖の一部に栄養塩を投入した実験では、N:P比が低いときは窒素固定藍藻アナベナの大増殖が見られたが投入する栄養塩のN:P比を上げると優先種はやはり藍藻類ではあるがSynechocouus spに変化したことが明らかにしている。
【0105】
つまり植物プランクトンの各種はそれぞれ異なった生理的特性を持ち最適な増殖環境条件も少しずつ異なっていることがわかる。同一水塊に生息しているプランクトン間にも様々な生理的特性の違いがあることもN:P比を変えた混合培養実験から明らかにされている。
【0106】
SuttleとHarrisonはカナダの貧栄養湖の湖水中に見られる植物プランクトン群落を様々なN:P比の栄養塩を添加しながら連続培養を行った。その結果、高N:P比(原子比で45)の栄養塩の添加では藍藻類ピコプランクトンが優先したが、低N:P比(原子比で15以下)の場合には、2種類の珪藻NityschiaとSynedraと1種の緑藻類が優先種となった。
【0107】
高N:P比のもとで優先するSynechocouusはリンに関しての競争に強い特性を持ち、低N:P比のもとで優先したSynedraなどは窒素をめぐる競争に強いという特性を持つことが推定される。そしてリンに強いSynechocouusは窒素制限の条件下ではアンモニア態窒素の取込能力は小さく、逆に窒素に強いSynedraはリン制限下ではリンの取込能力は小さいことも明らかにされた。このように貧栄養な条件下に増殖する種間にも様々な生理特性を持つ種が共存し、その場の栄養状況が変化すると、それに従った優先種の変化が起こることが示されている。
【0108】
そこで日本全国の地域ごとに合った植物プランクトンを特定し、大量発生させるために知っておきたいことがある。それが、3つの植物プランクトンの栄養獲得戦略である。(1)取込速度に適応した戦略(取込戦略)。この戦略をとる種は最大取込速度Vmax及び最大増殖速度Umaxが高いため、入ってきた栄養塩をすぐに利用して増殖する。(2)細胞内に多く蓄える戦略(蓄え戦略)。この戦略をとった種はVmaxは高いがUmaxは小さく栄養塩が入ってきたときに必要以上に取込み、濃度が低くなったときにもこれを利用して増殖することができる。(3)栄養塩が低濃度でも取り込むことができる戦略(親和性適応戦略)。この戦略をとった種は栄養塩の取込みの半飽和定数Ksが低く増殖速度はそれ程大きくないが、栄養塩の枯渇が進む環境のもとでは競争に有利である。
【0109】
このような戦略は、日本全国の湖沼などで現実に植物プランクトン間で進行している為、例えば霞ヶ浦で優先している種は、つまり植物プランクトンの地域特性を有しているとも考えられる。よって繁殖プールでの繁殖液の割合は霞ヶ浦の湖水の割合と推測される。しかし、以前にアオコの大発生などを経験しているため、植物プランクトンの大量発生を鑑みるとやはり当時の湖水に溶液を作り変えた方がより効率的である。
【0110】
次に繁殖プールの繁殖液の温度について「淡水赤潮 門田元 編−ペリディニウムの増殖に影響を及ぼす環境条件(p263)」より説明することとする。水温については永瀬ダム湖の植物プランクトンペリディニウムの培養実験から考える。10〜25℃での培養実験の結果では、夏型のP.cunningtoniiは20℃を増殖至適温度とし、次いで15℃であり、25℃でも増殖したが、10℃では増殖は見られなかった。一方冬型のP.penardiiは20℃及び15℃で最も良好な増殖を示し、10℃でも増殖したが、25℃では全く増殖しなかった。
【0111】
P.cunningtoniiは現地では水温16〜28℃で出現しており、顕著な赤潮は22〜28℃で見られるので、この培養結果とよく一致する。一方、P.penardiは水温16〜17℃以下の秋季ないし翌年春季に出現する種にも拘わらず、培養では20℃においてもよく増殖し、初期の培養速度は15℃におけるよりも相当上回った。
【0112】
しかし、このP.penardiiは増殖量においては15℃が最高であり、10℃でも増殖するが、25℃では全く増殖しないこと、一般に培養における増殖至適温度は現地条件のそれに比して数℃上回ることが多いことなどから、15℃前後を増殖至適温度と考えられる方が妥当と思われる。いずれにせよ、これらの結果は両種のペリディニウムの出現時期の相違を裏書きするものであり、現場での両種の交替は17〜18℃付近が境界と思われる。
【0113】
このように季節毎に増殖する植物プランクトンが存在するため、水温は常温でもよい。また洞爺湖や阿寒湖など寒い地域に低温で増殖する植物プランクトンなども存在するので、仮に全く増殖が見込まれない場所(寒い場所)にそれらを採取してプールに入れれば増殖することは可能であるため、一年中、一定温度に保つ場合に比べ、コストなど鑑みて、繁殖プールの繁殖液の温度は常温でもよいと考えられる。
【0114】
最後に図9を使用して本発明の基礎をなすペットボトルでの実験を説明することとする。図9は本発明である植物プランクトンシート及びその利用方法で使用する繁殖液を示した図である。
【0115】
図9に示すように、プランクトン等の付着実験13では、まず「湖水を400mlボトルに注ぐ」13aを行い、そこに「窒素、リン、カリウムを8:8:5の割合で20ml注ぐ」13b。このようにして作り出した溶液に「N型状の針金にタコ糸を八の字状に巻き、入れる」13c。
【0116】
ボトルを振るなどして、「混合液をよくかき混ぜる」13dを行い「室温10℃で放置する」13e。「3日後、タコ糸に大量のプランクトンや藻が付着」11fしていることから、タコ糸が親性、吸水性に優れており植物プランクトンが付着したと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】本発明である植物プランクトン付着シート及びその利用方法の説明図である。
【図2】本発明である植物プランクトン付着シート及びその利用方法の第2実施例の説明図である。
【図3】本発明である植物プランクトン付着シート及びその利用方法の第3実施例の説明図である。
【図4】本発明である植物プランクトン付着シート及びその利用方法の第4実施例の説明図である。
【図5】本発明である植物プランクトン付着シート及びその利用方法で使用するシートを示した図である。
【図6】本発明である植物プランクトン付着シート及びその利用方法で使用する水槽を示した図である。
【図7】本発明である植物プランクトン付着シート及びその利用方法で使用するシート掛けを示した図である。
【図8】本発明である植物プランクトン付着シート及びその利用方法の流れ図である。
【図9】本発明である植物プランクトン付着シート及びその利用方法で使用する繁殖液を示した図である。
【符号の説明】
【0118】
1 植物プランクトン付着シートの作成方法
2 シート
2a 糸
2b 髪の毛
2c 接着剤
2d 耳糸
2e 有結節網
2f 無結節網
2g 棒
3 水槽
3a 反射板
3b ライト
3c 反射鏡
3d 光源
3e 光
3f 繁殖液
3g 湖水/雨水
3h 窒素
3i リン酸
3j カリウム
4 植物プランクトン付着シート
4a 植物プランクトン
5 植物プランクトン付着シートの利用方法
5a 上部貯水槽
5b 放水管
5c 上ローラー
5d 下部貯水槽
5e 水
5f 下ローラー
5g 放水口
5h バルブ
5i パイプ
5j 駆動源
5k ベルト
5l 吸水管
6 建物
6a 建物
7 雲
7a 雨
8 酸素
9 植物プランクトン付着シートの利用方法
9a 貯水槽
9b 雨水
9c 上ローラー
9d 下ローラー
9e 中ローラー
9f 傾斜
9g 地面
9h 排水溝
10 植物プランクトン付着シートの利用方法
10a 植物プランクトン付着シートの利用方法
11 シート掛け
11a 枠体
11b 中軸
11c 突起軸
11d 連結部
12 編機によりシート状に編む
12a 植物プランクトンが付着
12b 壁面や屋上等の平面に取付け
12c 散布
12d 浸す
12e 光合成
12f 二酸化炭素
13 プランクトン等の付着実験
13a 湖水400mlをボトルに注ぐ
13b 窒素(N)、リン(P)、カリウム(K)を8:8:5の割合20ml注ぐ
13c N型状の針金にタコ糸を八の字状に巻き、入れる
13d 混合液をよくかき混ぜる
13e 室温15℃で放置する
13f 3日後、タコ糸に大量のプランクトンや藻が付着
14 ボトル
14a N型状の針金
14b タコ糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸を編んだシートと、前記シート付着させた植物プランクトンとからなり、屋外の緑化により二酸化炭素削減に利用することを特徴とする植物プランクトン付着シート。
【請求項2】
前記糸に髪の毛を絡ませたことを特徴とする請求項1に記載の植物プランクトン付着シート。
【請求項3】
前記植物プランクトンの付着は、植物プランクトンを含む繁殖液を満たした水槽に前記シートを浸し、光を照射し、植物プランクトンを培養させて行うことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の植物プランクトン付着シート。
【請求項4】
前記光が、太陽光などの光源と共に水槽内に設置したライトから照射されることを特徴とする請求項3に記載の植物プランクトン付着シート。
【請求項5】
前記水槽が、プールであることを特徴とする請求項3又は請求項4のいずれかに記載の植物プランクトン付着シート。
【請求項6】
前記水槽の内部底面に反射板を設置したことを特徴とする請求項3乃至請求項5のいずれかに記載の植物プランクトン付着シート。
【請求項7】
前記水槽の壁面上部に反射鏡を設置したことを特徴とする請求項3乃至請求項6のいずれかに記載の植物プランクトン付着シート。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の植物プランクトン付着シートを屋外に設置し、常時水を供給し、光合成をさせることを特徴とする植物プランクトン付着シートの利用方法。
【請求項9】
前記屋外への設置方法が、建物上部に固定された上ローラーと、建物の近傍に設置した下部貯水槽中に設置した下ローラーとに前記植物プランクトン付着シートをベルト状に張り、前記上ローラーを回転させ、植物プランクトン付着シートを循環させ、下部貯水槽に浸漬させることを特徴とする請求項8に記載の植物プランクトン付着シートの利用方法。
【請求項10】
前記建物の上部に上部貯水槽を設置し、前記植物プランクトン付着シートに上部から水を散水することを特徴とする請求項9に記載の植物プランクトン付着シートの利用方法。
【請求項11】
前記屋外への設置方法が、建物屋上に設置したシート掛けに植物プランクトン付着シートを取付け、同じく建物屋上の設置した上部貯水槽から前記植物プランクトン付着シートに水を散水することを特徴とする請求項8に記載の植物プランクトン付着シートの利用方法。
【請求項12】
前記シート掛けを屋根に取付け、建物近傍の下部貯水槽と接続された放水管を前記シート掛けの上方に設置し、前記植物プランクトン付着シートに水を散水することを特徴とする請求項8に記載の植物プランクトン付着シートの利用方法。
【請求項13】
前記シート掛けが、複数の中軸及び突起軸を交互に備えた複数の枠体を折りたたみ可能に連結したことを特徴とする請求項11又は請求項12のいずれかに記載の植物プランクトン付着シートの利用方法。
【請求項14】
前記上部貯水槽又は下部貯水槽中の水が雨水、配水、湖水、海水のいずれかであることを特徴とする請求項9乃至請求項12に記載の植物プランクトン付着シートの利用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−4745(P2010−4745A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−164262(P2008−164262)
【出願日】平成20年6月24日(2008.6.24)
【出願人】(308013126)
【Fターム(参考)】