説明

植物保護に使用するためのネオファン誘導体およびアザネオファン誘導体の安定な粉末状製剤

【発明の詳細な説明】
本発明は,式I

(上式中, AおよびBは,CH,CR4およびNであり, XはCH2,OまたはSであり, YはCHまたはNであり, ZはHまたはFであり, R1およびR4はH,ハロゲン,(C1−C3)−アルキル,(C1−C3)−ハロアルキル,(C1−C3)−アルコキシ,(C1〜C3)−ハロアルコキシ,(C1−C4)−アルキルチオまたは(C1−C4)−ハロアルキルチオであるか,または R1およびR4は一緒で−CH2−O−CH2−であり, R2はH,(C1−C3)−アルキル,エチニル,ビニル,ハロゲンまたはシアノであり, R3はH,ハロゲン,(C1−C4)−アルキルまたは(C1−C3)−アルコキシであり、そして MはCまたはSiである)
で表わされる化合物を含有する貯蔵安定性に富んだ粉末状製剤であって,上記式Iの化合物に関して1.5ないし2.8倍量の高沸点溶剤を通常の不活性物質と共に含有することを特徴とする上記粉末状製剤に関する。量という用語は,重量%で表わした割合を意味するものとする。
本発明に従って使用されるべき溶剤の沸点は,160〜350℃,好ましくは210〜250℃の範囲内である。好ましい溶剤は,例えばソルベツソ(RSolvesso)200〔エクソン・ケミカルズ社(Exxon Chemicals)製〕のようなアルキルナフタレンである。しかしながら,同一または異なった物質群よりの溶剤混合物を使用することも可能である。
式Iの化合物のうちで特に重要な化合物(Ia)は,MがSiであり,R1がエトキシであり,AおよびBがCHであり,XがCH2であり,R2がHであり,YがCHであり,ZがFでありそしてR3がHである化合物である。
ネオフアン誘導体およびアザネオフアン誘導体(I)よりなる群から選択された有効物質は,農業において,林業において,貯蔵品および物資の保護においてそして衛生の分野において発生する有害動物,特に昆虫類,ダニ類および線虫類の防除に好適であり,しかも植物に対する許容性が大でありかつ温血動物に対する毒性が弱い。それらは通常の敏感性を有する種および耐性を有する種に対して,そして全部の,あるいは個々の生長段階に対して有効である(ヨーロッパ特許出願公開第0,224,024号,ヨーロッパ特許出願公開第0,249,015号およびドイツ特許第3,712,752.7号参照)。
更に,上記の文献には,この型の有効物質の粉末状製剤が一般的にまた実施例として記載されている。
ネオフアン誘導体およびアザネオフアン誘導体は,水が存在する場合においても液状の製剤中で安定であるとしても,水和剤および粉剤のような固体の製剤が貯蔵される場合には,ある場合には著しい有効物質の分解が起る。
ネオフアン誘導体,アザネオフアン誘導体および特にシラネオフアン誘導体(I,M=Si)は,酸性媒質中で加水分解的に分解されることは知られている。
第1表中に記載された粉剤は,水で希釈された10%の濃度の希釈物中では僅かに酸性を示す(pH=3.1〜5.0)。粉末状製剤の場合には,水の残量は,これらの製剤中に含有された不活性物質,例えば沈殿ケイ酸上に吸着されるので、完成製剤が酸性である結果,有効物質の分解が起ることがある。


1)アルキリホスフエート−抗ドリフト剤として〔サンキヨウ株式会社(Sankyo Co.,Ltd.)製〕
2)脂肪酸誘導体と炭化水素との混合物−抗ドリフト剤として(サンキヨウK.K.製〕
3)沈殿ケイ酸〔デグツサ社(Degussa AG)製〕このものは各種の粘土と次に混合される吸着物質を製造するために使用される。
4)上記表中に挙げられたすべての粘土は,日本産の不活性物質であり,それらは主としてケイ酸アルミニウム類である。
調合済みの粉剤のpHを増加せしめそして場合によっては生成物の安定性を改善するために,塩基性の条件下で沈殿せしめられたケイ酸を混合することができる〔例えばデュロシル(RDurosil),デグツサ社(Degussa AG)製〕。そのような手段は,5%粉剤の場合には室温において安定性を改善せしめうる。しかしながら,貯蔵中に容易に起りうるより高い温度においては,有効物質が完全に分解する結果にもなる。有効物質をより少量含有する粉末状製剤は,単独の不活性物質として塩基性ケイ酸が使用される場合においてさえも安定化され得ない。該当する結果は,第2表に記載されている。


第1および第2表において記載された粉剤は,従来の方法に従って,すなわち,有効物質を特定の不活性物質と一緒に単純に粉砕することによって製造された〔ウイナッカー−キュヒラー(Winnacker−K■chler),“化学技術(Chemische Technologie)",Vol.7,C.Hauser Verlag Munich,4th Ed.1986参照〕。
驚くべきことには、本発明者らは,この度,粉剤を製造するために化合物Iの溶液を使用することにより,すなわち活性物質を溶剤で希釈することによって,粉剤の極めてすぐれた安定性が得られることを見出した。粉剤の大きな表面積からの蒸発を排除するために,高い沸点および高い蒸発値を有する溶剤のみが使用される。以下のものが特に好適であることが立証された;
アルキルナフタレン,例えば1−/2−メチルナフタレンまたはソルベッソ(RSolvesso)200,〔エクソン・ケミカルズ社(Exxon Chemicals)〕,高い沸点を有する脂肪族化合物,例えば芳香族化合物を含有する以下の溶剤,エッソバルソル(REssovarsol)100,エッソバルソル280/310(エクソン・ケミカルズ社製),シエルソル(RShellsol)R〔シエル社(Shell)製〕,または芳香族化合物を含有しない対応する生成物,例えばシエルソル(RShellsol)K(シエル社製)およびエクソル(RExxsol)D各種(エクソン・ケミカルズ社製),n−パラフィン類,例えば,ノルパール(RNorpar)13およびRノルパール15(エクソン・ケミカルズ社製)。イソパラフィン類,例えばイソパール(RIsopar)MおよびイソパールV(エクソン・ケミカル社製),テトラヒドロナフタリン誘導体,例えばアクトレル(RActrel)400(エクソン・ケミカルズ社製),オキソアルコールアセテート例えばエクセート(RExxate)1000およびRエクセート1300(エクソン・ケミカルズ社製),ポリグリコール,例えばブチルジグリコール,トリエチレングリコールジメチルエーテル,テトラエチレングリコールジメチルエーテル,ブチルジグリコールアセテート,ケトン,例えばTCDケトンA(ヘキサヒドロ−4,7−メタノ−インダン−5(6)−オン,トリアセチルグリセリン,例えばトリアセチン〔ヘンケル社(Henkel KGaA)製〕,およびメチルオレエート。
粉剤を十分に安定化するためには,有効物質Iを最小量の溶剤中に溶解しなければならない。例えば,粉剤を製造するためにIの50%溶液を使用することは,20%溶液を使用するより不利である。有効物質の濃度が同じである場合,でき上った粉剤は,第2の場合には有効物質を希釈するための溶剤をより多く含有する。




第3表の例から溶剤で適当に希釈することによって式Iの化合物の貯蔵安定性に富んだ粉剤を製造しうることが判る。0.4ないし0.55%の粉末にとって少なくとも0.6ないし1.1%の量の溶剤が必要であり,そして5%の粉末に対して少なくとも8ないし10%の溶剤が必要である。
このことは含有される溶剤の量は,有効物質に関して1.5ないし2.8倍であるべきであり,好ましくはその量は1.8ないし2倍であるべきであるということを意味する。
生物学的作用を改善するために,本発明による粉剤は,非イオン性および/または陰イオン性乳化剤0.2ないし1.5重量%を含有しうる。これらの型の乳化剤の混合物が好ましい。使用されるべき非イオン性乳化剤の例は,アロコパル(RArokopal)N,ジェナポル(RGenapol)0,RジエナポルX,エマルソゲン(REmulsogen)およびサポゲナット(RSapogenat)T型〔ヘキスト社(Hoechst AG)製〕であり,これらのうちで特にRエマルソゲンEL−400である。挙げうる陰イオン乳化剤の例には,Rフエニルスルホネート−CaまたはRフエニルスルホネートCAL(ヘキスト社製)がある。
本発明による粉剤は,式Iで表わされる物質を0.2ないし7重量%,特に0.4ないし0.55重量%含有する。式Iの化合物と他の殺虫性または殺ダニ性有効物質との組合せもまた貯蔵安定な粉剤を得るために本発明に従って調合されうる。更に本明細書中で記載した粉剤は,このような製剤用に常用される不活性物質,例えばタルク,天然産粘土,例えばカオリン,ベントナイト,葉ロウ石またはケイソウ土,アタパルジヤイト,キーゼルグーアあるいは合成ケイ酸カルシウムを含有しうる〔ウイナッカー−キュヒラー(Winnacker−Kuchler),“ヘミッシエ・テヒノロギー(Chem.Technologie)";ワトキンス(Watkins),“殺虫粉剤用希釈剤担体便覧第2版(Handbook of Insecticide Dust Diluents and Carriers),Darland Books,Caldwell N.J.,オルフエン(H.v.Olphen),“粘土コロイド化学入門第2版(Introduction to Clay Colloid Chemistry",2nd Ed.,J.Wiley,& Sons,N.Y.)参照〕。これらの不活性物質は,例えば第3表に記載された“粘土”に置換えてもよい。
これに関連して特に言及すべきものは,塩基性条件下で沈殿するケイ酸〔例えばデュロシル(RDurosil)〕であり,このものは完成製剤の貯蔵安定性を向上させるために、個々の場合に更に有効に使用される。
本発明は,更に本発明による粉剤の有効量を有害な昆虫類またはダニ類あるいはそれらに侵された植物,地面または基体に適用することを特徴とする上記昆虫類またはダニ類の防除方法に関する。
本発明による粉剤は所望の最終生成物が得られるまで,種々の濃度の有効物質を用いる一連の工程において有利に製造される。
本発明を以下の製造例によって説明する;
製造例工程1;溶剤中のIの20%濃縮物 まず,ソルベッソ(RSolvesso)200中にドリレス(RDriless)Aを添加したものを使用してIの20%溶液を調製する。下記の各成分を攪拌容器内で一緒にする;
式Iの化合物 20.00重量% RドリレスA 40.00重量% Rソルベッソ200 40.00重量% 上記混合物を透明な溶液が得られるまで攪拌する。
工程2;Iの5%の粉末濃縮物 有効物質の20%溶液から5%粉末濃縮物を調製する;
Rソルベッソ200中のIの20%濃縮物 25.00重量%デュロシル(RDurosil) 75.00重量% チョッパーを備えた混合機内にデュロシルを導入し,そして上記の20%液体濃縮物を滴加後,混合を15分間継続する。
工程3;Iの0.4%粉剤 上記の5%粉末濃縮物から所望の最終生成物を製造する;
Iの5%粉末濃縮物 8.00重量%シヨウコウザン(Shokozan)DL粘土 92.00重量% 粉末濃縮物およびシヨウコウザンDL粘土を混合機中で30分間混合する。この混合物を次にクロス−ビーターミルで3000rpmの回転数において均質化する。
貯蔵安定性に関するデータについては,第3表に記載されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】式I

(上式中,AおよびBは,CH,CR4およびNであり,XはCH2,OまたはSであり,YはCHまたはNであり,ZはHまたはFであり,R1およびR4はH,ハロゲン,(C1−C3)−アルキル,(C1−C3)−ハロアルキル,(C1−C3)−アルコキシ,(C1−C3)−ハロアルコキシ,(C1−C4)−アルキルチオまたは(C1−C4)−ハロアルキルチオであるか,またはR1およびR4は一緒で−CH2−O−CH2−であり,R2はH,(C1−C3)−アルキル,エチニル,ビニル,ハロゲンまたはシアノであり,R3はH,ハロゲン,(C1−C4)−アルキルまたは(C1−C3)−アルコキシであり、そしてMはCまたはSiである)
で表わされる化合物を含有する粉剤であって,上記式Iの化合物に関して1.5ないし2.8倍量の高沸点溶剤を通常の不活性物質と共に含有することを特徴とする上記粉剤。
【請求項2】含有された溶剤の量が式Iの化合物の1.8ないし2倍の量である請求項1記載の粉剤。
【請求項3】含有された溶剤が160℃ないし350℃の沸点を有する請求項1または2に記載の粉剤。
【請求項4】含有された溶剤が210℃ないし250℃の沸点を有する請求項1〜3のうちのいずれかに記載の粉剤。
【請求項5】含有された溶剤がアルキルナフタレンである請求項1〜4のうちのいずれかに記載の粉剤。
【請求項6】式Iで表わされる有効物質0.2ないし7重量%を含有する請求項1〜5のうちのいずれかに記載の粉剤。
【請求項7】式Iで表わされる有効物質0.4ないし0.55重量%を含有する請求項1〜6のうちのいずれかに記載の粉剤。
【請求項8】式Iの化合物において,MがSiであり,R1がエトキシであり,AおよびBがCHであり,XがCH2であり,R2がHであり,YがCHであり,ZがFでありそしてR3がHである請求項1〜7のうちのいずれかに記載の粉剤。
【請求項9】請求項1〜8のうちのいずれかによる粉剤の有効量を有害な昆虫類またはダニ類あるいはそれらに侵された植物,地面または基体に適用することを特徴とする上記有害な昆虫類またはダニ類の防除方法。
【請求項10】請求項1〜8のうちのいずれかによる粉剤を有害な昆虫類またはダニ類の防除に使用する方法。

【特許番号】第2764313号
【登録日】平成10年(1998)4月3日
【発行日】平成10年(1998)6月11日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平1−211556
【出願日】平成1年(1989)8月18日
【公開番号】特開平2−124804
【公開日】平成2年(1990)5月14日
【審査請求日】平成8年(1996)8月12日
【出願人】(999999999)ヘキスト・アクチエンゲゼルシヤフト