説明

植物栽培装置

【課題】植物に対し斑なく均一に光を当てることができて、しかも電源ユニット等からの熱による植物に対する悪影響を防止することができる植物栽培装置を提供する。
【解決手段】LED照明装置19のLED19bが発光して、矢印Lで示すように仕切り板13の上面に向かって照射される。仕切り板13の上面側から入った光Lは仕切り板13を透過して下面側から種々の方向へ拡散されて植物配置室15へ出る。植物配置室15の内面15a、扉9、11の内面9a、11aは光を反射しやすい材料によって構成されているので、多くの光が種々の方向へ反射される。従って、光Lは植物Pの葉全体に斑なく照射される。電源ユニット19a等において発生した熱は照明配置室17に放出される。照明配置室17は空調装置23の吹き出し口23bから吹き出される冷気によって冷却される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は植物栽培装置に係り、特に発光ダイオード(LED)を搭載する植物栽培装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、植物栽培装置を用いて野菜等の植物を栽培することが行われている。この植物栽培装置は植物の生育に最も適した光、温度、水分・養分の供給等の条件を人工的に管理するものであり、天候に左右されることなく植物を栽培でき、また農薬を使用しなくても植物を病害虫から守ることができる等の多くの利点がある。
この種の植物栽培装置には特許文献1に記載された植物栽培用照明装置のようにLEDを用いたものが使用される。LEDは消費電力が少なく、また長寿命である等の優れた特徴をもつ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−291185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、LEDの光は指向性が高く、植物に光の当たらない部分ができやすいという問題がある。また、LED自体の発熱量は僅かであるものの、LEDに電力を供給するための電源ユニット等からはかなりの発熱があるため、植物の葉焼けや葉枯れ等が生じて、植物に悪影響を及ぼすおそれがある。
本発明は上記従来の問題点に着目して為されたものであり、植物に対し斑なく均一に光を当てることができて、しかも電源ユニット等からの熱による植物に対する悪影響を防止することができる植物栽培装置の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、請求項1の発明は、内部に空間部を有する箱状の本体と、前記空間部と外部とを連通させる開口と、前記開口を閉鎖する状態と開放する状態に開閉可能な扉と、前記空間部に収容されるLED照明装置と、前記空間部を冷却する冷却手段とを具備する植物栽培装置において、前記空間部をLED照明装置が備えられる照明配置室と、栽培する植物が備えられる植物配置室とを仕切る仕切り板を備え、前記仕切り板は光を拡散する光拡散板であることを特徴とする植物栽培装置である。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載した植物栽培装置において、冷却手段は照明配置室と植物配置室の両方を冷却するものであることを特徴とする植物栽培装置である。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載した植物栽培装置において、植物配置室の内面と扉の内面は光を反射する材料によって構成されていることを特徴とする植物栽培装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の植物栽培装置によれば、植物に対し斑なく均一に光を当てることができる。しかも電源ユニット等からの熱による植物に対する悪影響を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態に係る植物栽培装置の斜視図である。
【図2】図1の植物栽培装置の扉を省略した状態の正面図である。
【図3】図1のA−A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態に係る植物栽培装置1を図面にしたがって説明する。
符号3は本体を示し、この本体3は箱状に形成され、内部に空間部5を有している。また、本体3の前面には空間部5と外部とを連通させる開口7が形成されている。
符号9、11は扉を示し、扉9、11は開口7を閉鎖する状態と開放する状態に開閉できるようになっている。扉9、11は研磨されたステンレススチール等によって構成され、光を反射しやすい材料によって構成されている。
【0011】
空間部5には仕切り板13が備えられ、この仕切り板13によって空間部5は植物配置室15と照明配置室17とに仕切られている。仕切り板13は光拡散板であり、上面側から入った光を透過して下面側から種々の方向へ拡散させて出す特性を有している。
光拡散板としては、例えばポリカーボネイトの基板表面に屈折機能をもたせる加工が施されたもの等が適用される。
植物配置室15は仕切り板13より下側の空間であり、照明配置室17は仕切り板13より上側の空間である。植物配置室15の内面15aは研磨されたステンレススチール等によって構成され、光を反射しやすい材料によって構成されている。
【0012】
照明配置室17にはLED照明装置19は備えられており、このLED照明装置19は本体3の天板21の裏面に固定されている。LED照明装置19は電源ユニット19aとこの電源ユニット19aに取り付けられたLED19bとを有している。LED19bは電源ユニット19aの下面に多数配列された状態で備えられており、真下を向いた姿勢で取り付けられている。
【0013】
符号23は冷却手段としての空調装置を示し、この空調装置23は冷気と暖気を選択的に送ることができる。
空調装置23には吹き出し口23a、23b、吸い込み口23c、23dが備えられている。吹き出し口23a、吸い込み口23cは植物配置室15に配置され、吹き出し口23b、吸い込み口23dは照明配置室17に配置されている。空調装置23は吹き出し口23a、23bのいずれか一方からのみ冷気、暖気及び冷却、加温のいずれも行わずに室温の空気を出すことも可能である。
【0014】
植物配置室15にはプランター25が備えられ、このプランター25には人工土壌Sが入れられており、この人工土壌Sに植物Pが植えられている。また、植物配置室15には図示しない水分・養分供給装置が備えられており、この水分・養分供給装置によってプランター25内の人工土壌Sに水分・養分供給されるようになっている。
【0015】
次に、この植物栽培装置1の使用方法について説明する。
プランター25の人工土壌Sに植えた植物Pに対し水分・養分供給装置により水分、養分が供給される。
また、LED照明装置19のLED19bが発光して、図2において矢印Lで示すように仕切り板13の上面に向かって照射される。前述のように仕切り板13は光拡散板なので、上面側から入った光Lは仕切り板13を透過して下面側から種々の方向へ拡散されて植物配置室15へ出る。更に、光Lは植物配置室15の内面15a、扉9、11の内面9a、11a等に当たり反射する。前述のように植物配置室15の内面15a、扉9、11の内面9a、11aは光を反射しやすい材料によって構成されているので、多くの光が種々の方向へ反射される。従って、光Lは植物Pの葉全体に斑なく照射される。
【0016】
また、植物配置室15内の空気が吸い込み口23cから吸引され、冷却されて冷気となってから吹き出し口23aを通って冷気として吹き出され、植物配置室15内が適温になるように冷却される。
LED照明装置19の電源ユニット19a等において発生した熱は照明配置室17に放出されるが、照明配置室17と植物配置室15は仕切り板13によって仕切られており、しかも照明配置室17内の空気が吸い込み口23dから吸引され、冷却されて冷気となってから吹き出し口23bを通って冷気として吹き出される。これにより照明配置室17は冷却されて、熱が植物配置室15へ伝わるのが防止される。従って、植物配置室15を適温に安定して保つことができる。
このように、植物栽培装置1では、植物配置室15内の光、温度条件を植物Pにとって適切な状態に容易に保つことが可能である。
【0017】
なお、空調装置23は吹き出し口23a、23bのいずれか一方からのみ冷気、暖気及び冷却、加温のいずれも行わずに室温の空気を出すことも可能であるので、植物配置室15の温度によっては室温の空気や暖気を吹き出す場合があるのは勿論である。また、照明配置室17には冷気の他、室温の空気を吹き出す場合もある。
【0018】
以上、本発明の実施の形態について詳述してきたが、具体的構成は、この実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計の変更などがあっても発明に含まれる。
例えば、上記実施の形態では植物配置室15にプランター25を1つ備える構成としたが、プランター25を複数多段に備える構成としてもよい。この場合でもLED19bからの光Lは植物配置室15の内面15a、扉9、11の内面9a、11a等に当たって反射するので、多段に備えられたプランター25内の植物Pの葉全体に斑なく照射される。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は植物栽培装置の製造業、植物栽培装置を用いた農業に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0020】
1…植物栽培装置 3…本体 5…空間部
7…開口 9、11…扉 9a、11a…扉の内面
13…仕切り版 15…植物配置室 15a…植物配置室の内面
17…照明配置室 19…LED照明装置
19a…電源ユニット 19b…LED 21…本体の天板
23……空調装置 23a…植物配置室側の空調装置の吹き出し口
23b…照明配置室側の空調装置の吹き出し口
23c…植物配置室側の空調装置の吸い込み口
23d…照明配置室側の空調装置の吸い込み口
25…プランター S…人工土壌 P…植物
L…LEDから発せられた光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に空間部を有する箱状の本体と、前記空間部と外部とを連通させる開口と、前記開口を閉鎖する状態と開放する状態に開閉可能な扉と、前記空間部に収容されるLED照明装置と、前記空間部を冷却する冷却手段とを具備する植物栽培装置において、前記空間部をLED照明装置が備えられる照明配置室と、栽培する植物が備えられる植物配置室とを仕切る仕切り板を備え、前記仕切り板は光を拡散する光拡散板であることを特徴とする植物栽培装置。
【請求項2】
請求項1に記載した植物栽培装置において、冷却手段は照明配置室と植物配置室の両方を冷却するものであることを特徴とする植物栽培装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載した植物栽培装置において、植物配置室の内面と扉の内面は光を反射する材料によって構成されていることを特徴とする植物栽培装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−235750(P2012−235750A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107798(P2011−107798)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(302031812)株式会社ケイ・アイ・ディ (4)
【Fターム(参考)】