説明

植物油脂系難燃剤

【目的】1、環境に負荷をかけない植物油脂系難燃剤をもって常温乾燥成形可能な不燃耐熱素材を提供すること。
2、難燃性を与えたポリマー素材に難燃耐熱性を付加する基礎技術を提供すること。
3、難燃処理済素材(マテリアルリサイクル)を熱分解炭素化焼成させ高温酸化性雰囲気で不燃超耐熱性などの諸特性を向上させグラファイト(黒鉛)を超える超耐熱性カーボンを得ること。
【構成】1、ラウリン酸含有植物油脂系石鹸素材と水、金属酸化物系無機フィラーを複合した素材で得られる素材の不燃化と難燃化添加剤。
2、ラウリン酸含有植物油脂系石鹸素材とPAC,金属酸化物系無機フィラーから成る難燃剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【産業上の利用分野】
【0001】
椰子油、パーム核油など植物油脂系をベースとした難燃性と環境保護の両立を目的とするものである。この難燃剤はエマルジョン系ポリマーに特に相溶性が優れている。
人、環境にとっても優しく且つ安価にその目的を達成することが可能である。
住宅火災が懸念される部位の内装用の壁、天井部位に簡易な方法で熱無溶融不燃性の芳香性塗膜も形成させることもできる。特に最近は高齢者を対象とした養護老人ホーム、一人暮らし高齢者に火災の恐怖がありそれらの危険部位に簡単に耐炎塗膜を施工する有効な方法を提供するものである。又、抗菌、除菌効果のある薬剤や脱臭剤をブレンドすることも可能です。
【背景技術】
【0002】
水酸化アルミニュウム、水酸化マグネシュウム、硼酸、水ガラス系、りん酸系、塩化物などの無機難燃剤や有機りん酸エステル、ブロム化合物、グアニジン系などがその大勢を占め、植物由来の油脂系難燃剤は現在のところその知見はなく植物原料は微生物により分解される。
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
環境にとって好ましい植物系難燃化化合物を選定する。選定された植物系の化合物と共にネットワークする環境に負荷をかけない無機化合物の選定によって分子量が向上する組成配合比を構成する。その何れも高価であってはならず、リサイクル性も考慮した研究に着手。
また、耐水性も求められる場合は環境を鑑みエマルジョン系ポリマーを主に選定し、環境に優しい素材の組み合わせに配慮する。この操作によって相溶性が優れる塗膜や接着剤が得られ耐熱性、難燃性、不燃性レベルの高い素材を得ることを課題とする。
【課題を解決する為の手段】
【0004】
本発明の植物油脂系難燃剤の構成において有効な素材として、ラウリン酸含有量が勝る椰子油、パーム核油系洗濯石鹸粉末、薬用石鹸粉砕粉末、水酸化アルミニュウム、酸化マグネシュム、ポリ塩化アルミニュウム、アルミナなど有効、経済的な組み合わせが見出された。
以上、前記記載の植物油脂系難燃剤を構成する主要原料である。
(A)難燃剤SAの重量比組成(代表例)と配合手順を以下に示す。
ラウリン酸含有洗濯粉石鹸(以下Sと略称)40部:水24部:水酸化アルミニュウム30部:酸化マグネシュウム6部(重量部)
A−1、前記粉石鹸S40部に水40部を加え水酸化アルミニュウム30部を加え良く攪拌する。水酸化アルミニュウムを加えると反応熱(約26〜30℃±)が生じる。
A−2、前記の反応熱が継続している時点で酸化マグネシュウム6部を加え安定させる。
この難燃性組成物(以下SAと略称)を塗膜として金属、非極性樹脂以外の被着体に塗布した場合、被着体に接着し塗膜は相互結合し安定する。
この難燃性塗膜に1,400℃バーナを5分間照射しても燃えず溶融せず無煙性である。
【0005】
前記の配合比に限らずS35〜55部:水20〜30部:水酸化アルミニュム20〜35部:酸化マグネシュム2〜8部近似の重量比でも良いが限定されるものではない。(請求項1)
【0006】
前記組成物SA20〜25部:エマルジョン系ポリマー75〜80部を均一混合する。
飽和脂肪酸のもつ界面活性効果で相溶性が良く均一に相溶する。
前記乾燥した塗膜1400℃バーナー面照射30秒間不燃無煙性で炭化する。
試験体エマルジョンポリマーは、アクリル系、ウレタン系、EVA系など。
【0007】
(B)難燃剤のSP重量組成比(代表例)を以下に示す。
B−1、粉石鹸S15〜20部:PAC30〜40部:水酸化アルミニュウム20〜45部
B−2、SにPACを添加すると一時的に膨潤反応する。反応時に水酸化アルミニュウムを添加攪拌する操作で膨潤反応が終息する。この組成物を以下、SPと略称する。(請求項2)
【0008】
前記、SP18〜25部:エマルジョン系ポリマー75〜82部均一にブレンドする。
SP添加量が22部以上であれば1,400℃接炎30秒間不燃、無溶融、無煙性でエマルジョン系ポリマーは超難燃化する。(燃焼認定垂直試験UL94 V−0)
試験体エマルジョンポリマーは、アクリル系、ウレタン系、EVA系など全て超難燃化有効。
【0009】
B−3、粉石鹸S30部:PAC50部:エマルジョンポリマー20部を均一に攪拌する。
前記組成物をウレタンフォーム材(独立気泡体)の表面層に塗布した。塗膜乾燥後、20秒間接炎しても可燃性のフォーム材にも着火せず熱溶融せず無煙であり熱分解ガスの発生がない状況である。(ブレンド使用材料:アクリルエマルジョン系耐熱100℃クラス)
【作用】
【0010】
炭素数12のラウリン酸48%±を含有する椰子油、パーム核油、動物油脂系固形石鹸(R−CHCOOM)は水分率も高く接炎しても燃焼しないが水分と共に熱溶融流動する又連続接炎で含有水分が完全に気化すると接炎によって炭化する。
一方ラウリン酸含有量が少ない合成洗濯粉石鹸は僅か2秒の接炎によって燃焼するが激しく燃え上がる現象はない。この現象はニートソープから成る石鹸成分中ラウリン酸(酢酸メチル基)の可燃性分解ガス発生量が極めて少ないことを意味する。したがってラウリン酸含有量によって可燃性、難燃性能が左右されることが判断可能。しかし液状洗濯洗浄剤は結晶化阻害剤としてグリセリンやアルコールなどが含まれている為、激しく燃焼する。
【0011】
前記の様な反応から推察してもラウリン酸を50%±含有する(カルボン酸のナトリュムやカリウムの塩)結晶化ニートソープから成る石鹸粉末(結晶)に対し水溶性無機高分子、或いは金属酸化物系無機フィラーを混合相溶する操作で超難燃性或いは不燃性組成物が得られる。
【0012】
熱分解ガス量の少ないラウリン酸と不燃性無機高分子或いは金属酸化物系無機フィラーなどを混合相溶させた化合物をエマルジョン系ポリマーに対し重量比22%以上添加する操作でポリマー成分中に脂肪酸の界面活性効果相溶化でラウリン酸と無機高分子と有機高分子が結合する。この高分子量化した耐熱向上効果と可燃性ポリマー成分の全体比の低減及び金属酸化物無機フィラー分布範囲占有量とのプラス相乗効果と推察される。
接炎時の状況においての難燃メカニズムは脱水吸熱反応による酸化反応場ポリマー成分中の分解ガスの発生を抑制し火炎による熱伝播を遮断するものと考えられる。
【実施例】
【0013】
(第1実施例)
以下、本発明の第1実施例植物油脂系難燃組成物SAの場合を以下に説明する。
1−1 配合比S35部:水30部:水酸化アルミニュム28部:Mgo7部(重量部)
1−2、S35部に水30部を加え攪拌更に水酸化マグネシュウム28部添加攪拌するこの時点で反応熱が発生する更にMgo7部を添加し均一攪拌する。
1−3、この組成物SAをその状態で不燃化した木材片に金属ヘラ冶具にて塗布した。
自然乾燥時間(気温26℃湿度72%±)4時間。木材被着体に良く接着しSA粒P相互も結合し石鹸含有中の香料の香りも保持している。燃焼試験(1400℃バーナー照射接炎2分間)は8時間経過後に実施。SA塗布膜(厚さ2mm±)接炎2分間の結果。
燃焼せず、炭化深さ1mm未満、無溶融、無煙性。被着体木材燃焼せず損傷なし。
【0014】
1−4 配合比S30部:水28部:水酸化アルミニュウム37部:Mgo5部
1−5、S30部に水28部を加え攪拌更に水酸化アルミニュウム37部添加攪拌するこの時点で反応熱が発生する更にMgo5部を添加し均一攪拌する。
1−6、この組成物SAを前記同様の不燃化処理木粒子成形体に金ヘラ冶具にて塗布する。
塗膜乾燥、燃焼試験は前記に近似の条件とした。接炎180秒間燃焼せず炭化深さ1mm、無溶融、無煙性。被着体木粒子成形体燃焼せず損傷なし。
【0015】
1−6、前記配合(1−4)SA25部:ウレタンエマルジョン75部を均一攪拌する。
1−7、試験塗布被着体ジュラルミンに刷毛塗り片面1回塗布。接炎20秒間着火せず、炭化、無溶融、無煙。接炎終了後、1分後ジュラルミン無処理裏面表面温度測定値630℃±。
熱伝導に優れたジュラルミンの上昇温度測定値630℃の半数すなわち300℃以上短時間に耐えるウレタン塗膜が形成されたことが判断可能。従来のリン酸エステルなどの難燃剤は難燃性に寄与するが総じて耐熱性能が劣る様になるが、本発明の植物油脂系難燃剤は確実に耐熱性能も格段に向上することが電気炉による連続耐熱試験によっても証明される。
【0016】
(第2実施例)
以下、本発明植物油脂系難燃組成物SPの場合を以下に説明する。
2−1 配合比 粉石鹸S22部:PAC40部:水酸化アルミニュウム38部(重量比)
2−2 粉石鹸S22部に対しPAC40部を均一攪拌すると膨潤するが水酸化アルミニュウム38部を加え均一攪拌して安定させる。
【0017】
2−3 前記配合のSP20部:アクリルエマルジョン80部を均一攪拌する。
燃焼試験体アルミ箔積層PET不織布の両面に前記組成物を2回追いかけ塗り塗布する。
15時間自然乾燥後、燃焼試験実施。(燃焼テストは照射接炎1分間1,400℃バーナー使用)
試験体PET不織布部分燃焼せず炭化する。アルミ箔燃焼せず炭化する。
【0018】
2−4 前記配合のSP25部:EVAエマルジョン75部を均一攪拌する。
2−5 燃焼試験体綿生地に片面1回塗布する操作で生地に浸透する。
20時間自然乾燥後、前記同様条件で燃焼試験実施。綿生地は燃焼せず炭化する。
【0019】
2−6、粉石鹸S25部:PAC60部:ウレタンエマルジョン15部を均一攪拌する。
2−7、燃焼試験体PE独立気泡フォーム材を前記組成物中に浸し軽く絞り乾燥させる。
前記同様条件で燃焼試験実施。熱に弱いPEフォーム材燃焼せず無煙炭化する。
【0020】
2−8、粉石鹸S30部:PAC55部:EVAエマルジョン15部を均一攪拌する。
2−9、燃焼試験体PS発泡体の表面層に(塗膜厚さ0,4mm±)2層膜を形成する。
前記同様条件で燃焼試験実施。通常簡単に黒煙を上げ延焼熱溶融するPS発泡体が黒煙を上げず燃焼しないが約3秒を経過する時点から熱収縮する。この結果からも超難燃耐熱シールド層がポリマー相溶前記ブレンド組成物によって形成されたことが判断可能。
【0021】
本発明の応用として可燃性或いは熱溶融する素材に含浸或いは粗粉砕した可燃素材に被膜を形成させる方法で熱分解させると炭素化して黒く手に付着しない各素材に応じた特性や個性のある新たな素材として各種高温耐酸化性耐熱カーボン素材が生まれる。
また、焼成カーボン化する炉内は素材が熱溶融しない為、炉内が損傷しない。
【0022】
PACは、金属酸化物半導体性液体でもありその含有量によってSP含有塗膜或いは接着剤は導電性機能を発揮する。
【0023】
この技術の応用範囲は広くエマルジョン系ポリマーの超難燃化以外に本発明の植物油脂系難燃剤粒子の吸着水分を飛ばし微粉砕(30μ±)して練り込みする工業的操作で溶剤系塗装材料、熱硬化性レジン、熱可塑性ポリマー系にも有効である。その理由は、油脂系固有の界面活性効果によるポリマーとの相溶化が容易であるからである。
以上、本発明の実施例を説明してきたが、具体的な構成は、本発明の実施例に限らず、要旨を逸脱しない範囲における追加、変更があっても本発明に含まれる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の植物油脂系難燃剤の組成割合においてラウリン酸含有石鹸質素材と金属酸化物系無機高分子や金属酸化物系無機フィラーとの間に技術的に絶妙な組み合わせが有り、この極めて地味な創造と実験の積み重ねが超耐熱難燃性素材を創作させたものである。
【0025】
可燃性が懸念される各種素材に対し耐熱、難燃性シールド層が簡易塗装で形成可能。火災発生時、耐炎無煙性の防火塗料として延焼防止効果が期待できる。
【0026】
耐炎シールド塗料の他、汎用レベルの各種ポリマーや熱硬化性レジンが本発明SP素材とある種の無機フィラーを追加配合する操作によって硬質化させた素材は熱無溶融、不燃性、超耐熱素材(例:アクリル樹脂、電気炉連続24時間耐熱試験400℃キープする)となる。
【0027】
本発明難燃剤に微生物に対して殺菌作用を持つ殺菌剤として塩化ベンザルコニウム、アルキルリン酸化ベンザルコニウム等を複合する操作で除菌効果に優れた薬用不燃塗膜の形成や除菌機能に優れた超難燃性ポリマーが創作できる。高齢者医療施設などの医療機関の天井や内壁素材として有効。
【0028】
本発明難燃剤を定着した条件下で高温酸化性雰囲気で熱分解カーボン化する技術効果は優れた高温耐酸化性超耐熱素材を生む。
また、使用の限界を超えたこれら素材の粉砕細粒物は炭素化温度領域を1000℃クラスでカーボン化処理する操作で不燃性活性炭、不燃性耐熱フィラー、不燃性導電性カーボン素材としても多彩な再利用が可能である。(マテリアルリサイクル性)
完全に熱分解を伴って焼成されたカーボン素材は、生体不活性であり、医療用途等にも応用可能な製品となる可能性を持っている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラウリン酸含有植物油脂系石鹸質素材と水、金属酸化物系フイラーを複合化することを特徴とする難燃性組成物。
【請求項2】
ラウリン酸含有植物油脂系石鹸質素材とPAC,金属酸化物系無機フィラーを複合することを特徴とする難燃剤。

【公開番号】特開2008−101179(P2008−101179A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−312211(P2006−312211)
【出願日】平成18年10月22日(2006.10.22)
【出願人】(591095214)株式会社HI−VAN (11)
【Fターム(参考)】