説明

植物用グアノ溶解液製造方法と、その製造方法で製造された植物用グアノ溶解液

【課題】 従来のバットグアノには特に課題はないが、バットグアノと同様の肥効を発揮できる、葉面散布剤や水耕栽培用液肥等の液状の植物用活性剤の製作が求められている。
【解決手段】 本件出願の植物用グアノ溶解液製造方法は、グアノを酸性液に溶解させ、そのグアノ溶解液から液体部分を取り出すようにした方法である。この場合、グアノ溶解液中の固形物を沈殿させて液体部分を取り出すようにすることもできる。グアノ溶解液の酸性度を中和液で希釈化することもできる。本件出願の植物用グアノ溶解液は植物用グアノ溶解液製造方法で製造されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は植物の葉面散布剤や水耕栽培用液肥等として使用可能な植物用グアノ溶解液に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、植物栽培時に土壌に施す肥料として、こうもりの糞や死体からなるグアノ(以下「バットグアノ」とする。)を粉砕した粒状のものがあった(特許文献1)。原料となるバットグアノには有機リン酸が多く(約28%)配合されているため、生育中の植物にバットグアノの肥料を施すと植物の生育が著しく促進される。また、バットグアノに含まれる有機リン酸には、土壌に溶け込み易い水溶性リン酸と、土壌に溶け込み難いク溶性リン酸の二種類があるため、肥効も長く持続する。
【0003】
【特許文献1】実公平1−129240号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の粒状のバットグアノ肥料には特に課題はないが、バットグアノをはじめとする各種グアノは、元来は水溶性でないため水に溶かして水溶液とすることはできない。液状化できれば葉面散布剤や水耕栽培用液等として活用でき、活用範囲が広がるが、未だ液状のグアノは存在しない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本件発明者は長年、鋭意研究を重ねて本願発明の植物用グアノ溶解液製造方法とその製造方法で製造された植物用グアノ溶解液を開発した。
【0006】
本件出願の植物用グアノ溶解液製造方法は、グアノを酸性液に溶解させ、そのグアノ溶解液から液体部分を取り出すようにした方法である。この場合、グアノ溶解液中の固形物を沈殿させて液体部分を取り出すようにすることもできる。グアノ溶解液の酸性度を中和液で希釈化することもできる。
【0007】
本件出願の植物用グアノ溶解液は植物用グアノ溶解液製造方法で製造されたものである。
【発明の効果】
【0008】
本件出願の植物用グアノ溶解液製造方法によれば、これまで困難であった液状化が酸性液の使用により容易に実現できる。
【0009】
こうもりの糞や死体からなるグアノ(バットグアノ)等の各種グアノを酸性液に溶解させ、その溶解液から液体部分を取り出して植物用グアノ溶解液とするため、次の各種効果がある。
(a)固形物が殆ど含有されないため、植物への葉面散布剤として使用することができ、グアノに含有される有機リン酸やカルシウムが葉の表裏面から効率よく吸収される。
(b)固形物が多少含有されていても水耕栽培用液肥として使用することができ、この場合は、グアノに含有される有機リン酸やカルシウムが植物の根から効率よく吸収される。
(c)前記いずれの場合も、果実・稲などの収量が上がるため生産者の経済的利益が大きくなる。また、糖度も上がるため美味しい穀物や野菜や果物を収穫でき、高値での販売が可能となり、収益増につながる。
(d)蘭、バラ等の花卉用植物に用いれば、色付きや花付きが良くなり、落花防止にもなる。
(e)グアノ溶解液中の固形物を沈殿させて取り出した液体部分は噴霧器に入れて噴霧等しても噴霧器が目詰まりしにくいためスムーズな噴霧ができる。
(f)グアノ溶解液の酸性度を中和液で希釈化した場合は、グアノに含有される有機リン酸やカルシウム等の成分が強過ぎて植物や土壌が損傷するといったこともない。また、再結晶化しにくいため、長期間保存しても液状のまま確保でき、必要時に何時でも液状で使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(植物用グアノ溶解液製造方法の実施形態1)
本発明の植物用グアノ溶解液製造方法の実施形態の一例を図1(a)(b)に基づいて説明する。本例の植物用グアノ溶解液製造方法は、次の(1)〜(3)の手順で植物用グアノ溶解液を製造する。
(1)所定量のグアノ1を所定濃度、所定量の酸性液2に投入し、溶解させる(図1(a)参照。)。
(2)グアノ1を溶解させた溶解液3を所定時間寝かせ、溶解液3中の固形物4を沈殿させる。
(3)固形物4が沈殿した溶解液3から、液体部分5を取り出して(図1(b)参照。)、植物用グアノ溶解液とする。
得られた植物用グアノ溶解液は、必要に応じて中和液で酸性度を希釈化して保存したり使用したりする。
【0011】
酸性液2に溶解されるグアノ1としては、例えばこうもりの糞や死体が化石化されて出来たもの(以下「バットグアノ」とする。)が用いられる。本実施形態においては、図1(a)に示すように、前記バットグアノ1は酸性液2に溶解させ易いように粉砕されて粉状又は粒状(ペレット状)とされている。このバットグアノ1は、天然の有機リン酸を豊富に含むことを特徴としており、東南アジア、特にフィリピン・マニラの洞窟から採取されたものが良質であって好ましい。このバットグアノは、粉状又は粒状のまま土壌に撒き、土壌用の肥料として使用することもできる。
【0012】
前記バットグアノ1の成分組成は例えば以下の通りである。〔単位:10g/kg〕
水分:1.2
窒素全量(N):0.01
リン酸全量(P25):28.40
ク溶性リン酸(P25):15.22
カリウム全量(K2O):0.05
カルシウム全量(CaO):42.85
マグネシウム全量(MgO):0.23
ケイ酸全量(SiO2):4.42
腐植酸:6.79
【0013】
バットグアノ1を溶解させる酸性液2(図1(a)参照。)としては、例えばクエン酸水溶液が用いられる。このクエン酸水溶液は、水にクエン酸粉末を溶解させて作ることができる。クエン酸水溶液の濃度は、例えば2重量%(水98lに対してクエン酸粉末2kgを溶解させる)とする等、任意とすることができる。また、酸性液2はクエン酸水溶液には限られず、塩酸、酢酸等、バットグアノを溶解させられる酸性液であれば任意のものを用いることができる。
【0014】
前記酸性液2に溶解させるバットグアノ1の分量は、例えば濃度2%のクエン酸水溶液100lに対して5kgとする等、酸性液2に溶解可能な分量であれば任意の分量とすることができる。酸性液2にバットグアノ1を溶解させるときは、溶解させる分量のバットグアノ1を酸性液2に一度に投入することも、少しずつ投入することもできる。バットグアノ1を酸性液2に投入すると、バッドグアノ1の溶解が始まり、バットグアノ1に含まれるカルシウムと酸性液2が反応して泡が発生する。バットグアノ1を酸性液2に投入した後は、バットグアノ1と酸性液2の反応を促進させるためによく撹拌することが望ましい。このとき、バットグアノ1投入後にしばらく撹拌してそのまま放置することも、所定時間毎に定期的に撹拌することも、バットグアノ1と酸性液2の反応が収まったのを見計らって撹拌することも、常時撹拌することもできる。撹拌は、攪拌機を用いて行うこともできる。バットグアノ1を酸性液2に投入、撹拌させて酸性液と反応させることにより、バットグアノ1は、一部の固形物を残して溶解され、溶解液3ができる。溶解液3には、バットグアノに含まれる各成分(窒素、有機リン酸、カリウム、カルシウム、マグネシウム、ケイ酸、腐植酸)が溶かし込まれる。
【0015】
酸性液2にバットグアノ1を溶解させて出来た溶解液3中には一部溶け残った固形物4が含まれるため、その固形物4を沈殿させるべく所定時間寝かせる(安置する)。寝かせる時間は、固形物4が完全に沈殿するのに十分な時間であれば任意の時間とすることができる。溶解液3を所定時間寝かせることによって沈殿する固形物4(図1(b)参照。)は主にバットグアノ1に含まれていた石灰石成分(カルシウム)である。
【0016】
固形物4が沈殿した溶解液3から、液体部分(上澄み液)5を取り出す。このとき、溶解液3を濾過して液体部分5を取り出すようにすることも、液体部分5を掬い取るようにすることもできる。このように固形物と分離させた液体部分5が植物用グアノ溶解液となる。溶解液3を濾過する場合は、例えば150メッシュの濾過膜を使用して液体部分5のみを取り出せるようにする。
【0017】
(植物用グアノ溶解液製造方法の実施形態2)
本発明の植物用グアノ溶解液製造方法では、固形物4を沈殿させる工程を省き、固形物4が混入した状態の溶解液3を植物用グアノ溶解液とすることもできる。その場合、その植物用グアノ溶解液の使用の際に噴霧器等を使用すると固形物が目詰まりを起こすおそれがあるため、使用の際に噴霧器等、目の細かい機械は使わないようにする必要がある。
【0018】
(植物用グアノ溶解液製造方法のその他の実施形態)
本発明の植物用グアノ溶解液製造方法においては、酸性液に溶解させるグアノはバットグアノに限られず、鳥の糞や死体が化石化されて出来たグアノ等、他の任意のグアノであってもよい。
【0019】
(植物用グアノ溶解液の実施形態)
本発明の植物用グアノ溶解液は、前記各実施形態記載の植物用グアノ溶解液製造方法によって得られた植物用グアノ溶解液である。
【0020】
この植物用グアノ溶解液は、原液のまま保管すると、含まれる成分が再結晶化するおそれがあるため、成分の再結晶化を防ぐために2〜3倍程度に水等の中和液で希釈して保管することもできる。
【0021】
この植物用グアノ溶解液を葉面散布剤や水耕栽培用液肥として使用する場合、前記の原液を水等の中和液で300倍〜1500倍程度に希釈して使用する。このとき、希釈したグアノ溶解液が、ph6〜7前後(弱酸性〜中性)となるように調整することが望ましい。また、このとき用いる中和液は、水に限らず、他の中和液を用いることもできる。希釈したグアノ溶解液には、例えばリン酸が0.001〜0.1%含まれる。このリン酸含有量は、一般的な葉面散布剤や水耕栽培用液肥のリン酸含有量とほぼ同程度である。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明の植物用グアノ溶解液製造方法によって製造した植物用グアノ溶解液は、葉面散布剤や水耕栽培用液肥に限らず、土壌に散布して土壌用肥料として使用することも当然可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(a)は、本発明の植物用グアノ溶解液製造方法において、グアノを酸性液に溶解させる様子を示す説明図。(b)は、本発明の植物用グアノ溶解液製造方法において、グアノを酸性液に溶解させた溶解液中の固形物を沈殿させた様子を示す説明図。
【符号の説明】
【0024】
1 グアノ(バットグアノ)
2 酸性液
3 溶解液
4 固形物
5 液体部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グアノを酸性液に溶解させ、その溶解液から液体部分を取り出すことを特徴とする植物用グアノ溶解液製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の植物用グアノ溶解液製造方法において、グアノを酸に溶解させた溶解液中の固形物を沈殿させてから液体部分を取り出すことを特徴とする植物用グアノ溶解液製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の植物用グアノ溶解液製造方法において、グアノを酸に溶解させた溶解液の酸性度を中和液で希釈化したことを特徴とする植物用グアノ溶解液製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の植物用グアノ溶解液製造方法で製造されたことを特徴とする植物用グアノ溶解液。

【図1】
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【公開番号】特開2009−73690(P2009−73690A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−243768(P2007−243768)
【出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(507314671)株式会社日本バットグアノ (1)
【Fターム(参考)】