説明

植物由来成分を有するポリカーボネートの製造方法

【課題】耐熱性、機械物性および色相に優れた、植物由来成分を有するポリカーボネートの製造方法を提供すること。
【解決手段】ジアンハイドロヘキシトール類からなるジオールと炭酸ジエステルとを、該ジオール1molに対して含窒素塩基性化合物50〜500μmol、並びに、アルカリ金属元素およびアルカリ土類金属元素の合計量1.2〜40μmolの存在下に溶融重縮合させて植物由来成分を有するポリカーボネートを得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物由来のジオール成分を用いて、耐熱性、機械物性および色相に優れた植物由来成分を有するポリカーボネートを製造する方法に関する。さらに詳しくは、植物由来の特定のジオールと炭酸ジエステルとから溶融重縮合法により該ポリカーボネートを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂は透明性、耐熱性、耐衝撃性に優れており、現在、光メディア分野、電気・電子・OA分野、自動車・産業機器分野、医療分野、その他の工業分野で広く使用されている。しかしながら、現在一般に用いられている芳香族ポリカーボネートは、石油資源から得られる原料より製造されている。そのため、石油資源の枯渇や、廃棄物の焼却処理に伴い発生する二酸化炭素による地球温暖化が懸念されている昨今において、芳香族ポリカーボネートと同様の物性を有しながら、より環境負荷が小さく、リサイクル性に優れた材料の登場が待たれている。
【0003】
このような状況の中、無水糖アルコールであるジアンハイドロヘキシトール類(イソマンニド、イソイディド、イソソルビドなど)は、マンニトール、イジドール、ソルビトールといった植物由来の原料から誘導することができ、ポリマー特にポリエステルおよびポリカーボネート製造用の再生可能資源(石油や石炭のような枯渇性のあるような天然資源とは異なり、森林資源、バイオマスなどのようにそれ自身が再生能力を持つような資源)として検討されている(例えば特許文献1〜4等)。
【0004】
しかしながら、これらの無水糖アルコールをポリマーの原料として用いた場合、特に溶融重縮合法によりポリマーを製造する場合には、得られるポリマーが着色したり重合度が上がらないといった問題が起こり易く、実用上問題があった。
【0005】
【特許文献1】国際公開第2004/111106号パンフレット
【特許文献2】特表2002−512268号公報
【特許文献3】特表2002−512279号公報
【特許文献4】特表2002−512289号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、植物由来の無水糖アルコール(ジオール)を有するポリマーを製造する際の上記の問題を解消し、耐熱性、機械物性および色相に優れた、植物由来成分を有するポリカーボネートの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するための本発明は、次の構成を要旨とするものである。
【0008】
1.下記式(1)で表されるジオールと、
【化1】

(R〜Rはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基またはアリール基から選ばれる基である)
下記式(2)で表される炭酸ジエステルとを、
【化2】

(RおよびRは、アルキル基、シクロアルキル基またはアリール基から選ばれる基であり、RとRは同じ基であっても異なる基であってもよい。)
上記式(2)で表されるジオール1molに対して含窒素塩基性化合物50〜500μmol、並びに、アルカリ金属元素およびアルカリ土類金属元素の合計量1.2〜40μmolの存在下に溶融重縮合させることを特徴とする、下記式(3)で表される植物由来成分を有するポリカーボネートの製造方法。
【化3】

(R〜Rはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基またはアリール基から選ばれる基であり、またnは繰り返し単位数を表す。)
2.アルカリ金属元素およびアルカリ土類金属元素が、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウムおよびバリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素である上記1に記載のポリカーボネートの製造方法。
3.含窒素塩基性化合物がテトラメチルアンモニウムヒドロキシドである上記1または2に記載のポリカーボネートの製造方法。
4.上記式(1)で表されるジオール中のNa、Fe、Caの含有量合計が2質量ppm以下、ガスクロマトグラフィーでの純度分析値が99.7%以上であり、かつ、式上記(2)で表される炭酸ジエステル中のNa、Fe、Caの含有量合計が2質量ppm以下、ガスクロマトグラフィーでの純度分析値が99.7%以上である上記1〜3のいずれかに記載のポリカーボネートの製造方法。
5.上記1〜4のいずれかに記載の方法により製造されたポリカーボネートであって、該ポリマーの比粘度(0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液を温度20℃で測定)が0.22〜0.34であり、かつCol−b値が5以下である植物由来成分を有するポリカーボネート。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法によれば、高重合度でかつ色相に優れ、耐熱性および機械的特性も良好な植物由来成分を有するポリカーボネートを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、本発明の趣旨に合致する限り、他の実施の形態も本発明の範疇に属することは言うまでもない。
【0011】
本発明においては、上記式(1)で表されるジオールと、上記式(2)で表される炭酸ジエステルとを、溶融重縮合させることにより上記式(1)で表される植物由来成分を有するポリカーボネートを製造する。ポリカーボネートの一般的な製造方法としては、ジヒドロキシ化合物のアルカリ水溶液とホスゲンを有機溶媒の存在下反応させるホスゲン法が知られているが、有毒なホスゲンを使用するだけでなく、生成ポリマーの溶剤として使用される有機溶媒が通常含塩素化合物であるジクロロメタンであるため、得られるポリカーボネート中に塩素原子が残留しやすいという問題がある。
【0012】
本発明で使用される上記式(1)で表されるジオールは、ジアンハイドロヘキシトール類であり、具体的には例えば下記式(4)〜(6)で表されるイソマンニド、イソイディドおよびイソソルビドが挙げられる。これらジアンハイドロヘキシトール類は、自然界のバイオマスから得られる物質で、再生可能資源と呼ばれるものの1つである。なかでもイソソルビドは、でんぷんなどから簡単に作ることができるジオールであり、資源として豊富に入手することができる上、イソマンニドやイソイディッドと比べても製造も容易なので特に好ましい。
【0013】
【化4】

【化5】

【化6】

【0014】
本発明で使用される上記のジオールは、ガスクロマトグラフィーより検出される有機不純物の含有量が全体量の0.3質量%以下であり、好ましくは0.1質量%以下、特に好ましくは0.05質量%以下であることが望ましい。また、ICP発光分析より検出されるNa、Fe、Caの含有量合計が3質量ppm以下、好ましくは2質量ppm以下、特に好ましくは1質量%以下であることが望ましい。Na、Fe、Caの含有量合計がこの範囲を超えたり、不純物の含有量がこの範囲を超える場合には、得られるポリカーボネートの着色抑制効果が低下したり、溶融安定性や耐加水分解が低下する場合がある。
【0015】
このようなジオールの精製方法については特に限定されない。好ましくは、単蒸留、精留または再結晶のいずれか、もしくはこれらの手法の組み合わせにより精製すればよい。ただし、該ジオールの市販品には安定剤や、保管中に生成した劣化物が含まれていることがあり、これらが得られるポリマー品質に悪影響を与える可能性があるため、該市販品を用いる場合には、再度精製を行い直ちに重合反応に使用するのが好ましい。やむを得ず精製後暫く保管してから使用する場合には、乾燥、40℃以下の低温、遮光および不活性雰囲気下で保管しておくことが好ましい。
【0016】
なお、上記ジオールとは異なるジオール、例えばエチレングリコール、トリメチレングリコール、ブチレングリコールなどのアルキレングリコールを、本発明の目的を阻害しない範囲で得られるポリカーボネートの全ジオール成分を基準として、該ジオール割合が2mol%未満となる割合で併用してもよい。
【0017】
次に本発明で使用される上記式(2)で表される炭酸ジエステルとしては、たとえばジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート、ジキシリルカーボネート、ビス(エチルフェニル)カーボネート、ビス(メトキシフェニル)カーボネート、ビス(エトキシフェニル)カーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ビフェニル)カーボネートなどの芳香族系炭酸ジエステルや、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート等の脂肪族系炭酸ジエステルが挙げられる。このような化合物のうち反応性、コスト面から芳香族系炭酸ジエステルを用いることが好ましく、特にジフェニルカーボネートを用いることが好ましい。
【0018】
このような炭酸ジエステルは、ガスクロマトグラフィーにより検出される有機不純物の含有量が全体量の0.3質量%以下、好ましくは0.1質量%以下、特に好ましくは0.05質量%以下であることが望ましい。また、ICP発光分析より検出されるNa、Fe、Caの含有量合計が3質量ppm以下、好ましくは2質量ppm以下、特に好ましくは1質量%以下であることが望ましい。Na、Fe、Caの含有量合計がこの範囲を超えたり、不純物の含有量がこの範囲を超えても、得られるポリカーボネートの着色抑制効果が低下したり、溶融安定性や耐加水分解が低下する場合がある。
【0019】
上記の炭酸ジエステルについても、その精製方法は特に限定されない。好ましくは、単蒸留、精留または再結晶のいずれか、もしくはこれらの手法の組み合わせにより精製すればよい。
【0020】
本発明においては、上述のジオールと炭酸ジエステルとを溶融重縮合させるが、その際、炭酸ジエステルはジオール成分1モルに対して0.90〜1.30モルの量を用いるのが好ましく、特に0.99〜1.05モルの量を用いるのが好ましい。
【0021】
溶融重縮合させる際には重縮合触媒を用いる必要があるが、本発明においては、上記式(2)で表されるジオール1molに対して含窒素塩基性化合物が50〜500μmol、好ましくは100〜500μmol、並びに、アルカリ金属元素およびアルカリ土類金属元素が合計量で1.2〜40μmol、好ましくは1.2〜30μmol、さらに好ましくは1.2〜20μmol特に好ましくは1.2〜10μmolの存在下に溶融重縮合させることが肝要である。
【0022】
含窒素塩基性化合物量が上記範囲未満の場合には、初期の重縮合反応の進行が遅くなり生産効率が悪くなるだけでなく、反応系が熱履歴をより長く受けることで生成ポリマーが着色するので好ましくない。一方、含窒素塩基性化合物が上記範囲を超える場合には、初期の重縮合反応中の発泡が激しくなり、それに伴って反応系内のモノマーおよびオリゴマー成分が揮発し、モノマーのモルバランスが崩れて重合度が所望の値まで上がらなくなるので好ましくない。
【0023】
また、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の合計量が上記範囲未満の場合には、生成ポリマーの重合度が十分には上がらなくなるので好ましくない。一方、上記範囲を超える場合には生成ポリマーの着色が顕著になるだけでなく、得られたポリマーの成形工程や各種安定剤など種々の添加剤混練工程における溶融安定性が悪くなるので好ましくない。
【0024】
好ましく用いられる含窒素塩基性化合物としては、例えばテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(Me4NOH)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(Et4NOH)、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(Bu4NOH)、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド(Ph−CH2(Me)3NOH)、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシドなどのアルキル、アリール、アルキルアリール基などを有する4級アンモニウムヒドロオキシド類、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルベンジルアミン、ヘキサデシルジメチルアミンなどの3級アミン類、あるいはテトラメチルアンモニウムボロハイドライド(Me4NBH4)、テトラブチルアンモニウムボロハイドライド(Bu4NBH4)、テトラブチルアンモニウムテトラフェニルボレート(Me4NBPh4)、テトラブチルアンモニウムテトラフェニルボレート(Bu4NBPh4)などの塩基性塩を挙げることができ、なかでもテトラメチルアンモニウムヒドロキシドが好ましい。
【0025】
アルカリ金属元素およびアルカリ土類金属元素の種類は特に限定されないが、コスト、重合触媒としての活性、生成ポリマーの分解・着色などへの影響などの点からリチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム、バリウムが好ましく、これらは単独で用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0026】
本発明においては、上記の含窒素塩基性化合物、並びに、アルカリ金属元素および/またはアルカリ土類金属元素の存在下に溶融重縮合させるが、これらは溶融重縮合反応の開始時または反応中に反応系に存在させてもよく、また、原料として用いられる前記ジオールや炭酸ジエステル中に予め含有するものを用いてもよい。
【0027】
例えばアルカリ金属元素および/またはアルカリ土類金属元素を反応系に存在させる場合には、これらの水酸化物や、炭酸塩、炭酸水素塩などの無機塩類、アルコキシド類、フェノキシド類、有機酸塩類、含ホウ素化合物類などを反応系に添加すればよいが、なかでもこれらの水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、メトキシド、フェノキシド、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン塩、酢酸塩が、反応性、最終的に得られる成形体品質への影響、コスト、衛生性などの点から特に好ましい。
【0028】
一方、原料中に予め含有するものを用いる場合、上記ジオール中に含有していてもよくまた、炭酸ジエステル中に含有していてもよい。なお、これらジオールや炭酸ジエステル中に含有させる場合には、これらの製造工程、精製工程などのいずれの工程で添加してもよい。例えばアルカリ金属元素および/またはアルカリ土類金属元素を含有するジオールを用いる場合には、上記ジオール中には保存安定性改善の目的でアルカリ金属またはアルカリ土類金属を含有する還元剤、抗酸化剤、脱酸素剤、光安定剤、制酸剤、金属不活性剤などが添加される場合が多いので、これらから選ばれる少なくとも1種の添加剤を含有するものを用いればよい。なかでも、水素化ホウ素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、メタホウ酸ナトリウム、リン酸二ナトリウムなどがジオールの保存安定性改善効果やコストといった点から特に好ましい。
【0029】
本発明においては、上記のとおり、含窒素塩基性化合物、並びに、アルカリ金属元素および/またはアルカリ土類金属元素の存在下に溶融重縮合させるが、好ましくはこれらの存在下に該ジオールと炭酸ジエステルとを常圧下で加熱して予備反応させた後、徐々に減圧、好ましくは6.7kPa(50mmHg)以下まで減圧し、更に昇温しながら撹拌して、生成するフェノール等の芳香族アルコールまたは脂肪族アルコールを留出させる。その際反応系は、窒素、アルゴン等の原料、反応混合物に対し不活性なガスの雰囲気に保つことが好ましい。
【0030】
ここで反応初期に常圧下で加熱反応させるのは、オリゴマー化反応を進行させ、反応後期に減圧してフェノール等の芳香族アルコールまたは脂肪族アルコールを留去する際、未反応のモノマーが留出してモルバランスが崩れ、重合度が低下することを防ぐためであるり、反応後期に減圧するのは、副生する芳香族アルコールまたは脂肪族アルコールを適宜系(反応器)から除去して効果的に反応を進行させるためである。
【0031】
また、本発明においては、ジオールの分解を抑え、着色が少なく高粘度の樹脂を得るためにはできるだけ低温の条件が好ましく、280℃以下とするのが好ましい。一方重合反応を適切な速度で進めるためには温度は高い方が好ましく、180℃以上とするのが好ましい。したがって、適切な重合温度は180℃以上280℃以下の範囲であり、特に最高の重合温度が230〜270℃の範囲にあることが好ましい。
【0032】
以上に説明した本発明の製造方法により得られるポリカーボネートは、色相を示すCol−b値が5以下であり、かつ、該ポリカーボネート0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液の20℃における比粘度が0.22〜0.34の範囲にあることが好ましい。比粘度が0.22未満の場合には、十分な機械強度を有する成形物を得ることが困難になる場合があり、一方比粘度が0.34を超える場合には溶融流動性が低下しすぎて成形に必要な流動性を有する溶融温度がポリマーの分解温度に接近し、溶融成形中にポリマーの熱分解が起こしやすくなる。
【0033】
また、得られるポリカーボネート中のNa、Fe、Caの含有量の合計は10質量ppm以下であることが好ましい。ポリマー中のNa、Fe、Caの合計の含有量がこの範囲を超える場合にはポリマーの着色がしやすくなるだけでなく、溶融安定性や耐加水分解が悪化しやすくなる。
【0034】
本発明で得られたポリカーボネートは、光メディア用途、電気・電子・OA用途、自動車・産業機器用途、医療・保安用途、シート・フィルム・包装用途、雑貨用途をはじめとする様々な用途に幅広く用いることができる。具体的には、光メディア用途としてDVD、CD−ROM、CD−R、ミニディスク、電気・電子・OA用途として携帯電話、パソコンハウジング、電池のパックケース、液晶用部品、コネクタ、自動車・産業機器用途としてヘッドランプ、インナーレンズ、ドアハンドル、バンパ、フェンダ、ルーフレール、インバネ、クラスタ、コンソールボックス、カメラ、電動工具、医療・保安用途として銘板、カーポート、液晶用拡散・反射フィルム、飲料水タンク、雑貨としてパチンコ部品、消火器ケースなどが挙げられる。
【0035】
上記のような用途に適用するための成形方法としては、射出成形,圧縮成形,射出圧縮成形,押し出し成形、ブロー成形等が挙げられ、例えばフィルムやシートを製造する方法としては、例えば溶剤キャスト法、溶融押出し法、カレンダー法等が挙げられる。
【実施例】
【0036】
以下の実施例により、本発明の詳細をより具体的に説明する。しかし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
本実施例に使用したジフェニルカーボネートは帝人化成製、塩化メチレンは和光純薬製である。ジオール成分のイソソルビドについては、ロケット社製でアルカリ金属およびアルカリ土類金属成分含有量が異なるもの5種類(以下、ロットA〜Eのように称する)、またはそのロットDを1回単蒸留したもの(ロットS)のうちのいずれかを用いた。なお、炭酸ジフェニルおよびロットSのイソソルビドからは、ICP発光分析でアルカリ金属およびアルカリ土類金属成分は検出されなかった。
【0037】
(1)ポリマーの比粘度は、ポリカーボネート0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液の20℃における粘度を測定して求めた。
(2)ポリマーの色相について、JIS Z 8722に従い、UV−VIS RECORDING SPECTROPHOTOMETER(島津製作所製)を用いて、ポリマー0.935gに塩化メチレン4mlを加え溶解し、波長780〜380nm、照明:C、視野:2°の条件のもとCol−b値を測定することにより確認した。
(3)イソソルビド、およびジフェニルカーボネート中の各種の金属量については、ICP発光分析装置VISTA MP−X(マルチ型)(バリアン社製)を用いて定量し(検出下限0.1ppm)、添加した触媒化合物の金属量と併せてジオール1モル当たりのμmol量を計算した。
【0038】
[実施例1]
ロットSのイソソルビド87.68g(0.6mol)、およびジフェニルカーボネート128.53g(0.6mol)を三ツ口フラスコに入れ、重合触媒として2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン二ナトリウム塩(0.12mg、4.5×10-7mol、ナトリウム1.5μmol/ジオール1mol)およびテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH、16.4mg、1.8×10-4 mol、300μmol/ジオール1mol)を加え窒素雰囲気下180℃で溶融した。攪拌下、反応槽内を100mmHg(13.33kPa)に減圧し、生成するフェノールを溜去しながら約20分間反応させた。次に200℃に昇温した後、フェノールを留去しながら30mmHg(4.00kPa)まで減圧し、さらに260℃に昇温した。ついで、徐々に減圧し、最終的に260℃、0.5mmHg(0.067kPa)の条件下で反応させた。この時点を時間0分とし60分後サンプリングし、比粘度、及びCol−b値を測定した。結果を表1に示す。
【0039】
[実施例2〜8、比較例1〜4]
使用するイソソルビドのロット、含窒素塩基性化合物量、触媒化合物および原料イソソルビドに由来するアルカリ金属およびアルカリ土類金属量を表1のとおり変えた以外は実施例1と同様の操作を行った。結果を表1に示す。なお、触媒化合物について、実施例6においては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン二ナトリウム塩の代わりに水酸化リチウムを、実施例7では水酸化バリウムの八水和物を用いた。実施例8では触媒化合物の添加を行わなかった。
【0040】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるジオールと、
【化1】

(R〜Rはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基またはアリール基から選ばれる基である)
下記式(2)で表される炭酸ジエステルとを、
【化2】

(RおよびRは、アルキル基、シクロアルキル基またはアリール基から選ばれる基であり、RとRは同じ基であっても異なる基であってもよい。)
上記式(2)で表されるジオール1molに対して含窒素塩基性化合物50〜500μmol、並びに、アルカリ金属元素およびアルカリ土類金属元素の合計量1.2〜40μmolの存在下に溶融重縮合させることを特徴とする、下記式(3)で表される植物由来成分を有するポリカーボネートの製造方法。
【化3】

(R〜Rはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基またはアリール基から選ばれる基であり、またnは繰り返し単位数を表す。)
【請求項2】
アルカリ金属元素およびアルカリ土類金属元素が、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウムおよびバリウムからなる群から選ばれる少なくとも1つの金属元素である請求項1に記載のポリカーボネートの製造方法。
【請求項3】
含窒素塩基性化合物がテトラメチルアンモニウムヒドロキシドである請求項1または2に記載のポリカーボネートの製造方法。
【請求項4】
請求項1記載の式(1)で表されるジオール中のNa、Fe、Caの含有量合計が2質量ppm以下、ガスクロマトグラフィーでの純度分析値が99.7%以上であり、かつ、請求項1記載の式(2)で表される炭酸ジエステル中のNa、Fe、Caの含有量合計が2質量ppm以下、ガスクロマトグラフィーでの純度分析値が99.7%以上である請求項1〜3のいずれかに記載のポリカーボネートの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の方法により製造されたポリカーボネートであって、該ポリマーの比粘度(0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液を温度20℃で測定)が0.22〜0.34であり、かつCol−b値が5以下である植物由来成分を有するポリカーボネート。

【公開番号】特開2009−91417(P2009−91417A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−262048(P2007−262048)
【出願日】平成19年10月5日(2007.10.5)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【Fターム(参考)】