説明

植物繊維の製造方法

【課題】より簡便な環境で植物から植物繊維を製造することができる植物繊維の製造方法を提供する。
【解決手段】本方法は、植物(例えば、ケナフなど)の靭皮から植物繊維を製造する植物繊維の製造方法であって、水の存在下で植物の靭皮に対して酵素を作用させる酵素処理工程を備え、酵素にはペクチナーゼを含む。また、酵素には、更に、β−グルカナーゼを含むことができ、更に、ヘミセルラーゼを含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物繊維の製造方法に関する。更に詳しくは、酵素を用いて植物の靭皮から植物繊維を製造する植物繊維の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護の観点からカーボンオフセットの手法が注目されている。このカーボンオフセットの手法の一つとして、植物繊維を利用する研究が進められている。植物繊維は比重に対して比較的大きな強度を有し、例えば、熱可塑性樹脂との併用により、構造部材をはじめ、様々な部材への加工が可能である。この植物繊維は、植物自体から様々な工程を経て取り出されるものの、通常、レッティングと称される微生物処理工程を経て取り出される。この処理については下記特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−220505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示された技術は、微生物を含む液体に靭皮を浸して、この靭皮中に存在し、靭皮繊維を相互に接着しているガムを分解する、いわゆるレッティングという工程を備える。この微生物を利用したレッティングは、植物繊維を取り出す処理方法として優れてはいるものの種々の問題もある。即ち、例えば、微生物を含んだ液体は、これに処理する植物を十分に浸す必要があるために、処理植物の質量に対して16倍以上の液量を要する。また、液中の微生物の活性を向上させるために分解物の除去や、曝気を行う必要がある。更に、植物への液の浸透を促進するために液を循環させる必要がある。そしてこれらの必要性からレッティングを行うために規模の大きな施設や設備が必要となるという問題がある。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、より簡便な環境で植物から植物繊維を製造することができる植物繊維の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記問題を解決するために、請求項1に記載の植物繊維の製造方法は、植物の靭皮から植物繊維を製造する植物繊維の製造方法であって、水の存在下で植物の靭皮に対して酵素を作用させる酵素処理工程を備え、前記酵素にはペクチナーゼを含むことを要旨とする。
また、請求項2に記載の植物繊維の製造方法は、請求項1において、酵素には、更に、β−グルカナーゼを含むことを要旨とする。
更に、請求項3に記載の植物繊維の製造方法は、請求項1又は2において、酵素には、更に、ヘミセルラーゼを含むことを要旨とする。
また、請求項4に記載の植物繊維の製造方法は、上記植物がケナフであることを要旨とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の植物繊維の製造方法によれば、微生物を用いたレッティングに比べて、処理に必要な液量を著しく小さくすることができる。
酵素には、更に、β−グルカナーゼを含む場合には、β−グルカナーゼを含まない酵素を作用させる場合に比べてより短時間で植物繊維を製造できる。
酵素には、更に、ヘミセルラーゼを含む場合には、ヘミセルラーゼを含まない酵素を作用させる場合に比べてより短時間で植物繊維を製造できる。
植物がケナフである場合は、この方法によって特に良好な植物繊維を短時間で製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を詳しく説明する。
ここで示される事項は例示的なもの及び本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0008】
上記「酵素処理工程」は、水の存在下で植物の靭皮に対して酵素を作用させる工程である。
本方法で用いる「植物」は、靭皮から繊維を取り出すことができるものであれば特に限定されることなく利用できる。靭皮から繊維を取り出すことができる植物としては、ケナフ、ジュート麻、マニラ麻、サイザル麻、雁皮、三椏、楮、バナナ、パイナップル、ココヤシ、トウモロコシ、サトウキビ、バガス、ヤシ、パピルス、葦、エスパルト、サバイグラス、麦、稲、竹、針葉樹(杉、檜等)及び広葉樹などが挙げられる。これらの植物は1種のみ用いてもよく2種以上を併用してもよい。
尚、本方法における酵素処理工程では、植物から取り出した靭皮のみに対して酵素処理工程を行ってもよいが、靭皮とともに植物の他部が含まれていてもよい。植物の他部としては、例えば、木質部、葉部及び根部が挙げられる。これらの植物の他部を用いる場合には、これらの他部は1種のみ用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0009】
本方法では、上記植物のうちでも特にケナフを植物として用いることが好ましい。ケナフに対してはペクチナーゼを用いる酵素がより効果的に作用すると考えられるからである。更に、ケナフは、成長が極めて早い一年草であり、優れた二酸化炭素吸収性を有し、大気中の二酸化炭素量の削減、森林資源の有効利用等への貢献度も大きいという観点からも好ましい。尚、ケナフには、学名におけるhibiscus cannabinus及びhibiscus sabdariffa等、並びに通称名における紅麻、キューバケナフ、洋麻、タイケナフ、メスタ、ビムリ、アンバリ麻及びボンベイ麻等が含まれる。
【0010】
また、酵素処理工程において、植物から取り出した靭皮に対して、そのまま酵素を作用させてもよいが、靭皮に対して何らかの前処理を行ってもよい。即ち、例えば、靭皮を裁断する前処理や、プレスローラ等を用いて靭皮をプレスする前処理が挙げられる。特に植物から取り出した靭皮を所望の大きさに裁断する前処理を行ったうえで、酵素処理工程に供した場合には、酵素処理工程後に、必要に応じた洗浄や、乾燥を行って植物繊維を簡便に得ることができる。対して、酵素処理工程前に靭皮の裁断を行わない場合には、洗浄によって植物繊維の方向が不揃いなる場合があり、その植物繊維を引き揃えたうえで裁断を行う必要があり、この点において、靭皮を予め所望の大きさに裁断する前処理を施した方が工程を簡略化できる場合がある。
【0011】
上記のうち、前処理としてプレスを行う場合には、通常、靭皮の厚さ方向へ押圧することによってプレスを行う。具体的には、プレスローラを用いて行うことができる。即ち、靭皮の繊維に垂直な方向又は平行な方向へローラを移動させながら、且つ、靭皮の厚さ方向へローラを押圧することでプレスを行うことができる。これにより、植物繊維同士を植物体内で結着させている部分を機械的に破壊できる。そして、植物繊維を結着させている成分を靭皮から部分的に搾出して、植物繊維同士の結着を緩和するとともに、靭皮及び植物繊維同士を結着させている成分の表面積を増大させて、酵素処理工程における酵素がより作用し易くすることで処理時間を短縮できる。
【0012】
上記「酵素」は、少なくともペクチナーゼを含む酵素である。即ち、ペクチナーゼのみからなる酵素であってよく、ペクチナーゼと他の酵素を含む複合酵素であってもよい。
上記「ペクチナーゼ」は、ペクチン、ペクチン酸、ペクチニン酸などの各種ペクチン質を分解できる酵素であれば特に限定されず用いることができる。即ち、ペクチン質を加水分解する作用、ペクチン質を脱離反応させる作用、ペクチン質の有するメチルエステル結合等の特定の結合を分解する作用、などを有する酵素であればよい。このようなペクチナーゼとしては、例えば、ポリガラクツロナーゼ、ペクチンリアーゼ、ペクチンエステラーゼなどが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上併用してもよい。
また、ペクチナーゼの使用量は、処理する靭皮の状態、温度及びpHなどの環境条件、並びに併用する他の酵素等により適宜選択できるが、通常、靭皮の質量(平均水分率75%における質量)に対して0.1〜10質量%であり、1〜5質量%とすることが好ましい。
【0013】
上記「β−グルカナーゼ」は、(1,4)−β−D−グルカン、(1,6)−β−D−グルカン、(1,3)−β−D−グルカン等のβ−グルカンを分解する酵素であれば特に限定されず用いることができる。このようなβ−グルカナーゼとしては、例えば、セルラーゼ(β−1,4−グルカナーゼ)、β−1,6−グルカナーゼ、β−1,3−グルカナーゼ、ラミナリナーゼ、キタラーゼ、リチカーゼ、ザイモリアーゼ、カルラーゼなどが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上併用してもよい。
また、β−グルカナーゼの使用量は、処理する靭皮の状態、温度及びpHなどの環境条件、並びに併用する他の酵素等により適宜選択できるが、通常、靭皮の質量(平均水分率75%における質量)に対して0.1〜10質量%であり、1〜5質量%とすることが好ましい。
【0014】
上記「ヘミセルラーゼ」は、ヘミセルロースを分解する酵素であれば特に限定されず用いることができる。このようなヘミセルラーゼとしては、例えば、キシラナーゼ、マンナナーゼ、α−ガラクトシダーゼ、ガラクタナーゼ、アラビナーゼ、ポリガラクツロナーゼ及び上記β−グルカナーゼに含まれない他のグルカナーゼなどが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上併用してもよい。
また、ヘミセルラーゼの使用量は、処理する靭皮の状態、温度及びpHなどの環境条件、並びに併用する他の酵素等により適宜選択できるが、通常、靭皮の質量(平均水分率75%における質量)に対して0.1〜10質量%であり、1〜5質量%とすることが好ましい。
【0015】
更に、本方法で用いる酵素には、その他の酵素を併用することができる。他の酵素としては、ペクチン酸のα−1,4結合を切断するとともにC4とC5との間に二重結合を形成するペクテートリアーゼ、アラバン(アラビナ)を分解するアラバナーゼなどが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上併用してもよい。
【0016】
酵素処理工程において、処理する靭皮と水との比率は、処理する靭皮が酵素液内に浸る量であればよく特に限定されないが、通常、靭皮1質量部(平均水分率75%における質量)に対して水は0.1〜5質量部であり、0.1〜1質量部とすることが好ましい。
酵素処理工程における作用温度は、用いる酵素の特性等によって適宜の値とすればよいが、通常、40〜55℃であり、45〜53℃とすることが好ましい。
更に、酵素処理工程における処理時間についても、処理する靭皮の状態、温度及びpHなどの環境条件、並びに用いる酵素の特性等によって適宜の値とすればよいが、通常、4〜15日であり、7〜10日とすることが好ましい。
【0017】
また、酵素処理工程における酵素液のpH値は、用いる酵素の特性等によって適宜の値とすればよいが、通常、3〜10であり、5〜7とすることが好ましい。
pH値は必要に応じて酸又はアルカリにより調整できる。酸を用いる場合には、無機酸及び有機酸のいずれを用いてよく、これらを併用してもよい。酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、過塩素酸、次亜塩素酸等の無機酸、クエン酸、酒石酸、りんご酸、酢酸、シュウ酸、琥珀酸等の有機酸、などが挙げられる。また、アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、過塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、酒石酸カリウムナトリウム、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、などが挙げられる。
【0018】
更に、酵素処理工程は、密閉系(閉鎖系)で行うことが好ましい。密閉系とは、少なくとも水の蒸発を防いで酵素液の量を維持できる環境である。微生物を用いて植物繊維を製造する方法では、曝気を行う必要があったことや、発酵時に生じる気体による加圧を防止するために、密閉系で処理を行うことが困難であった。しかし、本方法では、酵素液として利用する水の蒸発を防止する観点から処理空間を密閉することができる。これにより、酵素液として必要な水量は微生物を利用する場合に比べて著しく少なくできる。即ち、例えば、微生物を用いた処理では植物の靭皮1質量部に対して16質量部以上の水を要したのに対して、本方法では植物の靭皮1質量部に対して0.1〜1質量部と非常に少ない量の水で処理を行うことができる。更に、曝気を行う必要がないことから、そのための手段を要さず、微生物を用いる場合に比べると、本方法では極めて小さな空間で密閉して処理を行うことができる。
【0019】
また、本方法では、酵素液が靭皮へ浸透することを促すために、圧力の調整を行うことができる。即ち、例えば、加圧と減圧とを繰り返すことで、酵素液が靭皮へ浸透することを促すことができる。
【0020】
尚、酵素処理工程を終了する際には、何ら行わなくともよいが、例えば、加熱や加圧等の手段によって酵素を失活させることができる。例えば、加熱によって酵素を失活させる場合には、70〜100℃の温度を0.5〜10分間加えることができる。
【0021】
本方法によれば、熱可塑性樹脂をバインダとして利用して植物繊維同士を結着させた繊維基材としての利用が好適な植物繊維を得ることができる。更に、長さ30mm以下の植物繊維とした場合には熱可塑性樹脂と混合してもなお射出形成が可能な熱可塑性樹脂組成物としての利用が好適な植物繊維を得ることができる。即ち、過度な酵素処理によって植物繊維がパルプ状に細かく解繊されてしまうことがなく、上記のような構造材或いは樹脂補強材として好適に機能できる植物繊維を製造することができる。
【実施例】
【0022】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
(1)試験片の調製
ケナフの生茎のコアから靭皮を剥離した。次いで、剥離された靭皮を長さ約70mm×幅約25mmに裁断して靭皮片とした。
【0023】
(2)実験例1(ペクチナーゼ単用)
(1)得られた靭皮片6枚を取り出して質量を測定し、1%濃度のペクチナーゼ(天野エンザイム株式会社製、品名「ペクチナーゼPL「アマノ」」)を添加した酵素液を靭皮片6枚と同質量となるように秤量し、これら靭皮片6枚と同質量の酵素液とを、チャック付きポリ袋(縦120m×横85mm)に投入し、ポリ袋から気泡を抜いてチャックを閉じてポリ袋を密閉した。このようなポリ袋を2つ用意し、一方は、温度25℃に保持された空間に4日間、他方は7日間静置した。そして、一方を4日後に開封し、他方を7日後に開封し、各々のポリ袋から取りだした靭皮片を親指と人差し指との間で指を摺り合わせるようにした際に、靭皮片からの植物繊維の解繊具合を4段階で官能評価した。その結果を表1に示した。
【0024】
(3)実験例2(ペクテートリアーゼ単用)
ペクチナーゼに換えてペクテートリアーゼ(ノボザイムズ社製、品名「Bio Prep3000L」)を添加した1%濃度の酵素液を用いた以外は、上記(2)と同様にして靭皮片からの植物繊維の解繊具合を4段階で官能評価した。その結果を表1に併記した。
【0025】
(4)実験例3(セルラーゼ単用)
ペクチナーゼに換えてセルラーゼ(天野エンザイム株式会社製、品名「セルラーゼA「アマノ」3」)を添加した1%濃度の酵素液を用いた以外は、上記(2)と同様にして靭皮片からの植物繊維の解繊具合を4段階で官能評価した。その結果を表1に併記した。
【0026】
(5)実験例4(キシラナーゼ単用)
ペクチナーゼに換えてキシラナーゼ(天野エンザイム株式会社製、品名「ヘミセルラーゼ「アマノ」90」)を添加した1%濃度の酵素液を用いた以外は、上記(2)と同様にして靭皮片からの植物繊維の解繊具合を4段階で官能評価した。その結果を表1に併記した。
【0027】
(6)実験例5(複合酵素)
ペクチナーゼに換えて、ペクチナーゼ、β−グルカナーゼ、ヘミセルラーゼを含んだ複合酵素(ノボザイムズ社製、品名「ViscozymeL」、酵素No.3.2.1.6)を添加した1%濃度の酵素液を用いた以外は、上記(2)と同様にして靭皮片からの植物繊維の解繊具合を4段階で官能評価した。その結果を表1に併記した。
【0028】
尚、上記各官能評価では下記の基準で評価を行った。
「◎」;解繊が進んでおり、指の摺り合わせ具合に関わらず、簡単に植物繊維が
ばらばらになる状態である。
「○」;3〜5回の指の摺り合わせによって植物繊維がばらばらになる程度
に解繊されている状態である。
「△」;5〜10回の指の摺り合わせによっても植物繊維を十分に解繊できな
い状態であるが、靭皮片からの分解は進んでいる状態である。
「×」;靭皮片からの分解がほとんど進んでおらず、ポリ袋への投入前後での違
いに乏しい状態である。
【0029】
【表1】

【0030】
本発明によれば、設備を大幅に縮小できる。また、曝気の必要がないために曝気手段等を要さず、設備を簡素化できる。加えて、酵素を含んだ液体を循環させる必要がないために液循環手段等を要さず、更に設備を簡素化できる。また、微生物を用いた処理に比べてより短時間で解繊を行うことができ、生産性を向上させることができる。更に、液量を少なくすることができるために廃液量を少なくでき、汚泥発生及び臭気発生が緩和されて、環境面での影響を抑制できる。
【0031】
前述の記載は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施態様を挙げて説明したが、本発明の記述及び図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく、説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その態様において本発明の範囲又は精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料及び実施態様を参照したが、本発明をここにおける開示事項に限定することを意図するものではなく、寧ろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、車両及び建材等の広範な製品分野で利用することができ、本発明により得られる植物繊維は、熱可塑性樹脂をバインダとして利用して植物繊維同士を結着させた繊維基材として利用したり、長さ30mm以下の植物繊維とした場合には熱可塑性樹脂と混合した射出形成可能な組成物として利用したりすることができる。
このような繊維基材及び組成物は、例えば、自動車、鉄道車両、船舶及び飛行機等の外装材、内装材及び構造材等として用いられる。このうち自動車用品としては、自動車用外装材、自動車用内装材、自動車用構造材、エンジンルーム内部品等が挙げられる。具体的には、バンパー、スポイラー、カウリング、フロントグリル、ガーニッシュ、ボンネット、トランクリッド、フェンダーパネル、ドアパネル、ルーフパネル、インストルメントパネル、ドアトリム、クオータートリム、ルーフライニング、ピラーガーニッシュ、デッキトリム、トノボード、パッケージトレイ、ダッシュボード、コンソールボックス、キッキングプレート、スイッチベース、シートバックボード、シートフレーム、アームレスト、サンバイザ、インテークマニホールド、エンジンヘッドカバー、エンジンアンダーカバー、オイルフィルターハウジング、車載用電子部品(ECU、TVモニター等)のハウンジング等が挙げられる。更に、例えば、建築物及び家具等の内装材、外装材及び構造材が挙げられる。即ち、ドア表装材、ドア構造材、各種家具(机、椅子、棚、箪笥など)の表装材、構造材等が挙げられる。その他、包装体、収容体(トレイ等)、保護用部材及びパーティション部材等が挙げられる。また、家電製品(薄型TV、冷蔵庫、洗濯機、掃除機、携帯電話、携帯ゲーム機、ノート型パソコン等)の筐体及び構造体としても活用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物の靭皮から植物繊維を製造する植物繊維の製造方法であって、
水の存在下で植物の靭皮に対して酵素を作用させる酵素処理工程を備え、
前記酵素にはペクチナーゼを含むことを特徴とする植物繊維の製造方法。
【請求項2】
前記酵素には、更に、β−グルカナーゼを含む請求項1に記載の植物繊維の製造方法。
【請求項3】
前記酵素には、更に、ヘミセルラーゼを含む請求項1又は2に記載の植物繊維の製造方法。
【請求項4】
前記植物がケナフである請求項1乃至3のうちのいずれかに記載の植物繊維の製造方法。

【公開番号】特開2013−91878(P2013−91878A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235480(P2011−235480)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)