説明

検体分析用具

【課題】供給したサンプル液を効率良く検出部に移動させることが可能な、より詳細には、前記サンプル液の量が少ない場合であっても、効率よく検出部に移動させることが可能な、検体分析用具の提供を目的とする。
【解決手段】本発明の検体分析用具は、検体を供給するための検体供給層、標識化結合物質を含む試薬層、前記検体を展開するための展開層、固定化結合物質が固定化された検出部および支持体を含み、前記支持体の上に、前記展開層、前記試薬層および前記検体供給層が積層され、前記展開層における前記検体の流れ方向において、前記展開層に接触した状態で前記試薬層が配置され、前記試薬層の上流側の側面に前記検体供給層の下流側の側面が接触した状態で前記検体供給層が配置され、前記展開層が前記検出部を含み、前記検体供給層の単位体積あたりの吸水量が5.4mL/cm以下である。前記検体分析用具によれば、前記検体供給層に供給したサンプル液を効率よく検出部に移動できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体分析用具に関する。
【背景技術】
【0002】
細菌およびウイルス等の病原体の検出は、感染症の診断において非常に重要である。前記診断においては、簡便且つ迅速な診断を可能とすることから、前記病原体の抗原を、イムノクロマトグラフィー法を利用して検出する検体分析用具が汎用されている。
【0003】
前記検体分析用具は、例えば、支持体上に、検体を供給する検体供給層、試薬を有する試薬層、前記検体を展開する展開層が配置されている。前記試薬層は、前記展開層の上流側に隣接して配置され、前記検体供給層の下流側の領域は、前記試薬層の上流側に積層され、前記検体供給層の上流側の領域は、前記支持体上に積層されている。前記試薬は、例えば、着色ラテックス粒子等で標識化された、ターゲットに対する標識化抗体等が使用され、前記展開層の下流側領域には、前記ターゲットに対する抗体の固定化により検出部が形成されている(特許文献1)。
【0004】
前記検体分析用具を用いた、前記イムノクロマトグラフィー法による測定原理は、つぎのとおりである。まず、検体を含むサンプル液を前記検体供給層に滴下する。滴下した前記サンプル液は、前記検体供給層を移動し、前記試薬層に到達する。前記サンプル液が前記ターゲットを含む場合、前記試薬層において、前記ターゲットと前記標識化抗体とが反応して、複合体が形成される。そして、前記複合体を含むサンプル液は、前記試薬層を移動して、前記展開層に到達する。前記展開層に到達した前記サンプル液は、前記流れ方向の下流側に向かって移動する。前記展開層において、前記複合体を含む前記サンプル液が前記検出部に到達すると、前記複合体は、前記検出部の前記固定化抗体により捕捉される。前記複合体における前記標識化抗体は、前記着色ラテックス粒子で標識化されているため、前記複合体の捕捉により、前記検出部が着色される。前記検出部の着色を検出することで、前記検体中のターゲットの有無または量を分析できる。
【0005】
しかしながら、前記検体分析用具は、以下のような問題がある。すなわち、前述の検体分析用具は、前記検体供給層に供給した前記サンプル液が、効率良く前記検出部にまで移動しないため、十分な検出感度が得られないという問題がある。このため、前記試薬層における前記標識化抗体と十分に反応する量の検体を、前記検出部にまで移動させるには、前記検体供給層に対して、大量の前記サンプル液を添加させる必要があった。そして、大量のサンプル液を調製するには、前記検体を大量の抽出液で希釈する必要があるが、その結果、前記サンプル液において、前記検体の濃度が低くなるという問題が、新たに発生する。さらに、この前記サンプル液における前記検体濃度の低下という問題を回避するには、前記サンプル液の調製に使用する前記検体の量を増加させなければならず、結果的に、前記検体の必要量が増加してしまう。このように、大量の検体を用いて大量のサンプル液を調製すること、さらに、大量のサンプル液を前記検体分析用具に供給すること等によって、分析方法が煩雑となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−60297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、例えば、供給したサンプル液を効率良く検出部に移動させることが可能な、より詳細には、前記サンプル液の量が少ない場合であっても、効率よく検出部に移動させることが可能な、検体分析用具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の検体分析用具は、
検体を供給するための検体供給層、標識化結合物質を含む試薬層、前記検体を展開するための展開層、固定化結合物質が固定化された検出部および支持体を含み、
前記支持体の上に、前記展開層、前記試薬層および前記検体供給層が積層され、
前記展開層における前記検体の流れ方向において、
前記展開層に接触した状態で前記試薬層が配置され、
前記試薬層の上流側の側面に前記検体供給層の下流側の側面が接触した状態で前記検体供給層が配置され、
前記展開層が、前記検出部を含み、
前記検体供給層の単位体積あたりの吸水量が5.4mL/cm以下である
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の検体分析用具は、前述のように、前記試薬層の上流側の側面に前記検体供給層の下流側の側面が接触した状態で前記検体供給層が配置されており、且つ、前記条件を満たす検体供給層を備える。このような構成によって、供給した前記サンプル液を効率よく検出部に移動させることが可能である。このように、前記サンプル液の効率良い移動が可能であるため、例えば、前記サンプル液の量を低減し、且つ、前記サンプル液の調製に使用する前記検体の量を低減できる。したがって、本発明の検体分析用具によれば、特に、少量の生体由来の検体であっても、少ない量の前記サンプル液によって、効率良く前記検出部に移動させ、感度に優れた検出を実現可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1(A)は、本発明の検体分析用具の一例を示す断面図であり、図1(B)は、本発明の検体分析用具のその他の例を示す断面図である。
【図2】図2(A)は、本発明の検体分析用具の一例を示す断面図であり、図2(B)は、本発明の検体分析用具のその他の例を示す断面図である。
【図3】図3は、本発明の検体分析用具の一例を示す断面図である。
【図4】図4は、本発明の検体分析用具の一例を示す断面図である。
【図5】図5は、従来の検体分析用具の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の検体分析用具は、前述のように、検体を供給するための検体供給層、標識化結合物質を含む試薬層、前記検体を展開するための展開層、固定化結合物質が固定化された検出部および支持体を含み、
前記支持体の上に、前記展開層、前記試薬層および前記検体供給層が積層され、
前記展開層における前記検体の流れ方向において、
前記展開層に接触した状態で前記試薬層が配置され、
前記試薬層の上流側の側面に前記検体供給層の下流側の側面が接触した状態で前記検体供給層が配置され、
前記展開層が、前記検出部を含み、
前記検体供給層の単位体積あたりの吸水量が5.4mL/cm以下である
ことを特徴とする。
【0012】
本発明において、前記検体供給層の単位体積あたりの吸水量は、検体供給層が保持できる最大の水分量を意味する。
【0013】
前記吸水量は、以下の方法により決定できる。まず、その外形が、幅30cm×長さ1cm×厚み0.014cm(空隙を含む全体積30×1×0.014=0.42cm)である検体供給層を準備し、これを、水平な台の上に置く。前記検体供給層の上側の表面の中心に、試験液を0.1mLずつ滴下する。前記試験液は、70mmol/L NaClおよび0.7w/v% BSAを含む17.5mmol/L Tris(pH8.4)である。そして、前記検体供給層から前記試験液が溢れる直前の液量を、体積0.42cmで割り、この算出値を、前記単位体積あたりの吸水量とする。なお、この方法は、本発明における前記検体供給層の条件である単位体積あたりの吸水量を決定する方法であり、この方法により本発明は制限されない。
【0014】
前記検体供給層の単位体積あたりの吸水量は、前述のように、5.4mL/cm以下であり、その範囲は、例えば、4.5〜5.4mL/cmであり、好ましくは5.24mL/cmである。
【0015】
前記検体供給層の材質は、特に制限されず、例えば、ガラスファイバー、セルロース繊維等があげられる。また、前記検体供給層の形態は、例えば、不織布があげられる。
【0016】
前記検体供給層は、例えば、市販品を使用してもよく、例えば、ミリポア社のガラスファイバー製パッド(商品名GFCP001000 G041 Glass Fiber Conjugate Pad)があげられる。
【0017】
前記検体供給層の大きさは、特に制限されず、前記検体供給層に供給する、前記検体を含むサンプル液の量に応じて適宜決定できる。本発明の検体分析用具は、前述のように、前記サンプル液の量が少量であっても、効率よく展開層に移動させることができる。このため、例えば、前記検体を含むサンプル液の量が約50μLの場合、前記検体供給層の面積は、0.1〜1.5cmが好ましく、より好ましくは、0.3〜1cmである。
【0018】
本発明の検体分析用具は、例えば、前記検体を含むサンプル液を、前記検体供給層に供給すると、前記検体が前記試薬層に導入され、さらに、前記試薬層から前記展開層に導入され、前記検体は、前記展開層を下流方向に向かって移動する。これによって、前記試薬層において、前記標識化結合物質と前記検体中のターゲットとの複合体を形成させ、前記検出部において、到達した前記複合体を前記固定化結合物質により捕捉する。そして、前記検出部において、前記固定化結合物質により捕捉された、前記複合体における前記標識化結合物質の標識を検出することで、前記ターゲットを分析できる。
【0019】
前記標識化結合物質は、前記標識により標識化された結合物質である。前記標識化結合物質の前記結合物質は、前記ターゲットに結合可能であればよく、特に制限されない。前記結合物質は、例えば、抗体、抗原および核酸等があげられる。
【0020】
前記ターゲットが抗原の場合、例えば、前記標識化結合物質は、前記抗原に対する標識化抗体が好ましい。前記標識化結合物質の前記結合物質が抗体の場合、その種類は、特に制限されず、例えば、IgG、IgA、IgM、IgD、IgEおよびIgY等の免疫グロブリン分子、ならびにこれらのFab、Fab’、F(ab’)等の抗体フラグメント(抗原結合断片ともいう)等があげられる。前記抗体は、例えば、ヒト、または、マウス、ウサギ、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジおよびヤギ等の非ヒトの哺乳類動物、ニワトリ等の鳥類等の動物種由来のものでもよい。前記抗体は、例えば、前記動物種由来の血清から、従来公知の方法により作製してもよいし、市販の抗体を利用してもよい。前記抗体は、例えば、ポリクローナル抗体でもよいし、モノクローナル抗体でもよい。
【0021】
前記ターゲットが抗体の場合、例えば、前記標識化結合物質は、前記抗体に対する標識化抗体が好ましい。前記標識化結合物質の結合物質が抗体の場合、その種類は、特に制限されず、前述と同様であり、例えば、前記ターゲットである抗体のFc領域に結合する抗体およびその抗体フラグメント等があげられる。
【0022】
前記標識化結合物質の前記標識は、特に制限されず、検出可能であればよい。前記標識は、例えば、着色不溶性担体粒子または酵素があげられる。
【0023】
前記着色不溶性担体粒子は、特に制限されず、例えば、着色ラテックス粒子、金属コロイド粒子、着色ポリメチルメタクリレート粒子、着色ポリ乳酸粒子、着色多孔性ガラス粒子、着色シリカ粒子、着色アガロース粒子、着色デキストラン粒子等があげられる。前記着色ラテックス粒子は、特に限定されず、例えば、青色ラテックス粒子、赤色ラテックス粒子等があげられる。前記金属コロイド粒子は、特に限定されず、例えば、金コロイド粒子、白金コロイド粒子等があげられる。前記着色不溶性担体粒子の平均粒子径は、特に限定されない。前記着色ラテックス粒子の場合、前記平均粒子径は、例えば、0.05μm〜5μmの範囲であり、好ましくは、0.1μm〜1μmの範囲である。前記金属コロイド粒子の場合、前記平均粒子径は、例えば、2nm〜100nmの範囲であり、好ましくは、10nm〜50nmの範囲である。
【0024】
前記標識が前記着色不溶性担体粒子の場合、例えば、前記標識化結合物質の調製方法は、特に制限されない。具体例として、例えば、前記着色不溶性担体粒子を溶媒に懸濁し、この懸濁液に、前記抗体等の前記結合物質を加える。この反応液中で、前記着色不溶性担体粒子と前記結合物質とを反応させることで、着色不溶性担体粒子で標識化された前記結合物質を調製できる。前記溶媒は、特に限定されず、例えば、水、緩衝液等があげられる。前記緩衝液は、特に制限されず、例えば、トリス緩衝液、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、ホウ酸緩衝液等があげられる。前記緩衝液のpHは、特に限定されず、例えば、pH4〜10の範囲であり、好ましくは、pH6〜9の範囲である。前記懸濁液において、前記着色不溶性担体粒子の濃度は、特に制限されず、例えば、0.001〜10重量%の範囲であり、好ましくは、0.01〜1重量%の範囲である。前記反応液におけて、前記抗体等の前記結合物質の濃度は、特に制限されず、例えば、0.01〜20mg/mLの範囲であり、好ましくは、0.1〜5mg/mLの範囲である。
【0025】
前記酵素は、特に制限されず、例えば、基質との反応により、着色、発色または発光を生じるものがあげられる。前記酵素は、例えば、パーオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−D−ガラクトシダーゼ等があげられる。
【0026】
前記基質は、特に制限されず、例えば、前記酵素の種類に応じて適宜決定できる。前記基質は、例えば、2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)(ABTS)、3,3’,5,5’−テトラメチルベンチジン(TMB)、ジアミノベンチジン(DAB)、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルリン酸(BCIP)、4−メチルウムベリフェニル−β−D−ガラクトシド(4MUG)、3−(2’−スピロアダマンタン)−4−メトキシ−4−(3’’−β−D−ガラクトピラノシル)フェニル−1,2−ジオキセタン(AMGPD)等があげられる。
【0027】
前記標識が前記酵素の場合、例えば、前記標識化結合物質の調製方法は、特に制限されず、例えば、従来公知の方法が採用できる。
【0028】
前記固定化結合物質は、前記展開層の前記検出部に固定化された結合物質である。前記固定化結合物質の前記結合物質は、前記ターゲットに結合可能であればよく、特に制限されない。前記結合物質は、例えば、抗体、抗原および核酸等があげられる。
【0029】
前記ターゲットが抗原の場合、例えば、前記固定化結合物質は、前記抗原に対する抗体が好ましい。前記固定化結合物質の前記結合物質が抗体の場合、その種類は、特に制限されず、前述と同様に、前記免疫グロブリン分子、ならびにこれらの抗体フラグメント等があげられる。
【0030】
前記ターゲットが抗体の場合、例えば、前記固定化結合物質は、前記抗体に対する固定化抗原が好ましい。
【0031】
前記固定化結合物質の前記展開層への固定化方法は、特に制限されず、従来公知の方法が採用できる。具体例としては、例えば、塗布装置等を用いて、前記展開層の所定の領域に、前記固定化結合物質を含む塗布液を塗布し、乾燥することによって固定化できる。そして、前記所定の領域が、前記展開層における前記検出部となる。前記塗布液は、特に制限されず、例えば、前記固定化抗体または前記固定化抗原等の前記固定化結合物質を溶媒に懸濁して調製できる。前記溶媒は、特に制限されず、例えば、水および緩衝液があげられる。前記緩衝液は、特に制限されず、前述の緩衝液があげられる。また、前記塗布液における、例えば、前記固定化結合物質の濃度は、特に制限されず、例えば、0.01〜20mg/mLの範囲であり、好ましくは、0.1〜5mg/mLの範囲である。前記乾燥の条件は、特に制限されず、例えば、乾燥器等を用いて風乾してもよい。
【0032】
前記標識化結合物質および前記固定化結合物質の種類は、例えば、同一でもよいし、異なってもよい。前記標識化結合物質および前記固定化結合物質は、例えば、前記ターゲットの異なる部位に結合することが好ましい。前記ターゲットが抗原の場合、前記標識化結合物質および前記固定化結合物質は、それぞれ、例えば、前記ターゲットの異なる部位をエピトープとすることが好ましい。前記ターゲット、前記標識化結合物質および前記固定化結合物質の組み合わせは、特に制限されない。具体例としては、前記ターゲットが抗原の場合、例えば、前記標識化結合物質および前記固定化結合物質が、それぞれ、前記抗原に対する抗体であることが好ましく、前記ターゲットが抗体の場合、例えば、前記固定化結合物質が、前記抗体に対する抗原であり、前記標識化結合物質が、前記抗体に対する抗体であることが好ましい。
【0033】
前記支持体は、例えば、その表面から内部に液体が移動できないものが好ましい。前記支持体の表面は、例えば、液体が浸透しない液体非浸透性であることが好ましく、疎水性であることが好ましい。
【0034】
本発明において、前記検体は、何ら制限されない。前記検体は、例えば、鼻腔吸引液、鼻腔洗浄液、鼻腔ぬぐい液、鼻汁、咽頭ぬぐい液、含漱液、唾液、全血、血清、血漿、汗、尿等の生体由来の検体、食品、飲料等の飲食品由来の検体、海水、河川水、生活排水等の環境由来の検体等があげられる。前記検体は、例えば、液状でもよいし、固形状でもよい。本発明の検体分析用具に供給する前記サンプル液は、例えば、液体の前記検体そのもの、これらの検体を溶媒に懸濁、分散または溶解した希釈液等があげられる。また、前記サンプル液は、例えば、固形状の検体を、前記溶媒に懸濁、分散または溶解したもの、前記検体を前記溶媒で抽出したもの、これらの希釈液でもよい。前記固形状の検体は、特に制限されず、例えば、細胞、糞便等の生体由来の検体、動物および植物等の食物および加工食品等の食品由来の検体等があげられる。前記溶媒は、特に制限されず、例えば、水および緩衝液があげられる。前記緩衝液は、特に制限されず、前述の緩衝液があげられる。前記溶媒は、例えば、さらに、界面活性剤、抗菌剤等を含んでもよい。前記界面活性剤は、特に制限されず、例えば、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤等があげられる。前記抗菌剤は、特に限定されず、例えば、アジ化ナトリウム、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン等があげられる。
【0035】
本発明の検体分析用具は、前記検体を含むサンプル液として、例えば、液状の前記検体をそのまま、または、前記希釈液を供給することが好ましい。本発明の検体分析用具は、前述のように、少量のサンプル液であっても、効率良く移動させることができる。このため、前記希釈液を前記サンプル液とする場合、例えば、低希釈率で希釈した前記希釈液を使用することが好ましい。本発明の検体分析用具によれば、このようなサンプル液であっても、効率よく展開できる。前記低希釈率は、特に制限されず、例えば、8倍希釈以下、好ましくは、4倍希釈以下である。
【0036】
本発明の検体分析用具による分析対象のターゲットは、特に制限されない。前記ターゲットは、例えば、A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、C型インフルエンザウイルス、アデノウイルス、RSウイルス、コロナウイルス、アストロウイルス、ノロウイルス、麻疹ウイルス、ロタウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV−1)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、ヘルペスウイルス、マイコプラズマ、梅毒トレポネーマ、クラミジア・トラコマチス、結核菌、大腸菌群、A群溶連菌、B群溶連菌、肺炎球菌、ブドウ球菌、MRSA、レジオネラ、腸管出血性大腸菌O157、ベロ毒素、サルモネラ、クロストリジウム・ディフィシル、ヘリコバクター・ピロリ、CRP、HBs抗原、HBs抗体、HBc抗原、HBc抗体、HBe抗原、HBe抗体、前立腺特異抗原(PSA)、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)、黄体形成ホルモン(LH)、トロポニンT、トロポニンI、ミオグロビン、D−ダイマー、便中ヘモグロビン、ヘモグロビンA1c、IgE抗体等の病原体抗原、抗体、癌マーカー、ホルモン等の生体成分、残留農薬、環境ホルモン、食品中のアレルギー物質等があげられる。これらは例示であって、本発明は、これらに制限されない。
【0037】
本発明の検体分析用具は、例えば、さらに、展開液供給手段を備えてもよい。前記展開液供給手段により、例えば、前記検体分析用具の所望の部位に、さらに展開液を供給できる。このように、前記展開液を供給することによって、より一層、前記検体の移動を効率良く行うことができる。前記展開液供給手段は、例えば、検体供給層、試薬部または展開層等に、展開液を供給できるように、配置されていることが好ましい。
【0038】
本発明の検体分析用具は、例えば、分析装置にセットして使用することもできる。前記分析装置は、例えば、前記検体分析用具の配置部および前記検体分析用具の検出部の状態を分析する分析手段を備える。前記分析装置によれば、例えば、前記配置部に前記検体分析用具をセットし、前記分析手段により前記検体分析用具の検出部の状態を分析することで、検体を分析可能である。前記分析手段は、例えば、前記検体分析用具の前記検出部へ光を照射する照射手段、および、前記検出部からの反射光または前記検出部を透過した透過光等を検出する検出手段を有する。前述のように、前記検出部に前記複合体が保持された場合、例えば、前記検出部が着色する。このため、前記検出部に光を照射し、その反射光または透過光を検出することで、前記検体中のターゲットの有無または量を判断できる。前記分析装置は、例えば、さらに、展開液供給手段を備えてもよい。前記展開液供給手段は、特に制限されず、例えば、前記分析装置にセットされた前記検体分析用具に、前記展開液を供給できる手段であればよい。前記展開液供給手段は、例えば、排液手段を有し、前記排液手段により、前記展開液を、前記検体分析用具に供給できる。前記排液手段は、例えば、吸排手段でもよく、この場合、前記吸排手段で、前記展開液を吸引し、続いて前記展開液を排出することで、前記検体分析用具に前記展開液を供給できる。
【0039】
前記検体分析用具は、前記支持体の上に、前記検体供給層、前記試薬層および前記展開層が積層されており、前記検体の流れ方向において、上流側から、前記検体供給層、前記試薬層および前記展開層が配置されている。
【0040】
前記展開層と前記試薬層とは、前述のように、両者が接触するように配置されていればよい。前記展開層と前記試薬層とは、例えば、前記流れ方向において、前記試薬層の下流側端部が、前記展開層の上流側端部に接触した状態(隣接した状態)でもよい。前記接触の形態は、特に制限されず、例えば、前記流れ方向における端部の側面同士が接触していることが好ましい。また、前記展開層と前記試薬層とは、例えば、前記流れ方向において、前記試薬層の下流側端部が、前記展開層の上流側端部の上に積層され、前記試薬層の他の領域が、前記支持体の上に積層された状態でもよい。このように積層した状態であれば、例えば、流れ方向以外に、厚み方向における展開も生じるため、さらに効率よく、前記サンプル液を展開できる。
【0041】
前記試薬層と前記検体供給層とは、前述のように、前記試薬層の上流側の側面に前記検体供給層の下流側の側面が接触した状態で前記検体供給層が配置されている。
【0042】
本発明の検体分析用具において、前記支持体上に配置される部材は、例えば、前記支持体の表面に直接配置されてもよいし、他の構成部材を介して、前記支持体の上に配置されてもよい。前記他の構成部材は、例えば、その表面から内部に液体が移動できないものが好ましい。前記構成部材の表面は、例えば、液体が浸透しない液体非浸透性であることが好ましく、疎水性であることが好ましい。
【0043】
つぎに、本発明の検体分析用具について、例をあげて説明する。本発明は、以下の例に限定されない。
【0044】
本例の検体分析用具は、前述した、前記支持体の上に、前記検体供給層、前記試薬層および前記展開層が積層された形態である。特に示さない限り、本実施形態で述べた形態は、各検体分析用具に適用できる。
【0045】
前記検体分析用具を、図1に示す。図1(A)は、検体の流れ方向における、本例の検体分析用具101の断面図である。検体分析用具101は、支持体11、展開層12、検体供給層13および試薬層14を有し、支持体11上に、検体の流れ方向の上流から、検体供給層13、試薬層14および展開層12が、この順序で配置されている。検体供給層13は、その下流側端部が、試薬層14の前記上流側端部に接触し、試薬層14は、その下流側端部が、展開層12の前記上流側端部に接触している。展開層12は、固定化抗体が固定化された検出部15を有する。
【0046】
支持体11は、特に制限されず、前述のように、その表面が、液体非浸透性であることが好ましく、疎水性であることが好ましい。支持体11は、例えば、表面が疎水化処理された基材でもよいし、疎水性の材質から形成された基材でもよい。前記疎水性の材質は、特に制限されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエステル等があげられる。支持体11は、例えば、その表面が非多孔質構造であることが好ましい。この場合、支持体11は、例えば、表面に非多孔質層が積層された基材でもよいし、非多孔質体からなる基材でもよい。支持体11の形状は、特に制限されず、例えば、フィルム状、シート状、板状等があげられる。支持体11の形および大きさは、特に制限されず、前記検体分析用具の構成等に応じて、適宜設定できる。
【0047】
展開層12は、特に制限されず、例えば、その内部および/または表面を液体が移動できるものであれよい。展開層12は、例えば、毛細管作用を奏するものが好ましく、多孔質体があげられる。具体例としては、例えば、セルロース膜、酢酸セルロース、ニトロセルロース等のセルロース誘導体膜、ガラスフィルター、濾紙等の多孔質体があげられる。展開層12の形状は、特に限定されず、例えば、長方形等があげられる。展開層12の大きさは、特に制限されず、適宜設定できる。展開層12の形状は、特に制限されず、適宜設定できる。
【0048】
検体供給層13は、前記条件を満たせばよく、その材質は、特に制限されない。検体供給層13の形状および大きさは、特に制限されず、適宜設定できる。
【0049】
試薬層14の材質は、特に制限されない。試薬層14は、例えば、液体が通過可能であることが好ましい。試薬層14の基材は、例えば、多孔質体等があげられる。試薬層14の前記材質は、例えば、ポリエチレン、ガラスファイバー、レーヨン、ナイロン、紙、セルロース等があげられる。試薬層14の形状および大きさは、特に制限されず、適宜設定できる。
【0050】
試薬層14は、前述のように、前記標識化抗体を有する。試薬層14は、例えば、前記基材に、前記標識化抗体を含む抗体液を含浸させた後、乾燥することで作製できる。前記抗体液において、前記標識化抗体の濃度は、特に制限されず、例えば、前述の通りである。
【0051】
検出部15は、前述のように、展開層12に、固定化抗体を固定化することで形成される。
【0052】
展開層12、検体供給層13および試薬層14は、それぞれ、例えば、常法により支持体11上に配置できる。具体的には、例えば、両面テープまたは接着剤を用いて、支持体11上に固定してもよい。
【0053】
検体分析用具101の大きさは、特に制限されず、例えば、以下のように例示できる。以下、検体分析用具およびそれを構成する各部材について、前記検体の流れ方向のサイズを「長さ」といい、各部材の表面において、前記流れ方向に垂直方向のサイズを「幅」といい、前記長さおよび前記幅に対して垂直方向のサイズを「厚み」という(以下、同様)。検体分析用具101の全体の大きさは、例えば、長さ56〜84mm、幅3〜5mmである。支持体11の大きさは、例えば、長さ56〜84mm、幅3〜5mmである。展開層12の大きさは、例えば、長さ16.8〜25.2mm、幅3〜5mmである。検体供給層13の大きさは、例えば、長さ2.5〜12mm、幅3〜5mmである。試薬層14の大きさは、例えば、長さ8〜12mm、幅3〜5mmである。検体分析用具101に供給する前記サンプル液の量は、特に制限されず、前述のように、従来よりも低減できることから、例えば、20〜100μLであり、好ましくは30〜60μLである。また、前記サンプル液において、前記検体の希釈率は、特に制限されず、前記検体の種類に応じて適宜決定できるが、例えば、検体が鼻汁由来検体の場合、2〜7倍であり、好ましくは3〜5倍である。
【0054】
つぎに、本例の検体分析用具101を用いた検体分析方法の一例について、図1(A)に基づき説明する。
【0055】
まず、サンプル液を検体供給層13に滴下する。滴下した前記サンプル液は、検体供給層13を、前記下流方向に移動する。本例の検体分析用具101は、前述のように、その表面から内部に液体が移動できない支持体11上に、検体供給層13が配置されている。このため、前記サンプル液は、検体供給層13よりも上流側に移動することなく、検体供給層13内を下流方向(図において矢印方向)に向かって移動する。そして、前記サンプル液が、検体供給層13の下流側に配置された試薬層14に到達すると、前記サンプル液は、試薬層14の内部を、さらに、前記下流方向に移動する。この際、前記サンプル液によって、試薬層14内の標識化抗体が前記サンプル液中に混合される。そして、前記サンプル液中にターゲットである抗原が含まれる場合、前記抗原と試薬層14内の標識化抗体とが、抗原抗体反応により結合し、前記抗原および前記標識化抗体の複合体が形成される。前記複合体を含む前記サンプル液は、試薬層14を通過して、展開層12に到達する。そして、前記サンプル液が検出部15に到達すると、検出部15の固定化抗体により、前記複合体が捕捉される。具体的には、前記固定化抗体と、前記複合体における前記抗原とが結合し、前記固定化抗体、前記抗原および前記標識化抗体の複合体が形成される。前記標識化抗体として、例えば、前述の着色不溶性粒子で標識化された抗体を使用した場合、前記複合体の形成により、検出部15が着色する。この検出部15の着色を検出することにより、前記検体中のターゲットの有無または量を分析できる。前記着色の検出は、例えば、目視で行ってもよいし、光学分析機器等を用いて、反射率、透過率等により、光学的に測定してもよい。
【0056】
前記検体分析方法の条件は、特に制限されず、例えば、10〜40℃の条件下で行うことが好ましい。
【0057】
前記検体分析方法において、例えば、さらに、展開液を添加してもよい。このように、前記展開液を供給することによって、より一層、前記検体の移動を効率良く行うことができる。前記展開液の添加部位は、例えば、検体供給層13、試薬層14または展開層12であり、好ましくは、検体供給層13である。前記展開液の添加のタイミングは、特に制限されず、前記サンプル液を添加した後が好ましく、具体的には、例えば、前記サンプル液の添加から2分以内が好ましい。前記展開液は、特に制限されず、例えば、水、緩衝液等の溶媒があげられる。
【0058】
本例の検体分析用具について、前記試薬層の形態が異なる例を、図1(B)に示す。図1(B)は、前記流れ方向における、本例の検体分析用具102の断面図を示す。図1(B)において、図1(A)と同一箇所には同一符号を付している。図1(B)に示すように、検体分析用具102において、試薬層24は、その下流側端部が、展開層12に積層され、残りの領域が、支持体11上に配置されている。前記残りの領域は、例えば、展開層12の上流側端部に接触した状態でもよい。
【0059】
本例の検体分析用具について、前記支持体と前記検体供給層との位置関係が異なる例を、図2に示す。図2において、図1と同一箇所には同一符号を付している。図2(A)は、前記流れ方向における、本例の検体分析用具104の断面図を示す。図2(A)に示すように、検体分析用具104は、支持体11の上流側端部と、検体供給層13の上流側端部とが同じ位置となるように、支持体11の上に、検体供給層13が配置されている。また、図2(B)は、前記流れ方向における、本例の検体分析用具105の断面図を示す。図2(B)に示すように、検体分析用具105は、支持体11の上流側端部が、検体供給層13の上流側端部よりも下流側となる状態で、支持体11の上に検体供給層13が配置されている。図1(B)の検体分析用具についても、支持体と検体供給層とが、図2(A)および(B)に示す位置関係でもよい。
【0060】
本例の検体分析用具は、例えば、さらに、吸収層を備えてもよい。このように前記検体分析用具が、さらに吸収層16を備えることで、より一層、展開層12における液体の移動を効率よく行うことができる。吸収層を備える検体分析用具の一例を、図3に示す。図3において、図1と同一部位には同一の符号を付している。図3は、前記流れ方向における、本例の検体分析用具の断面図を示す。図3の検体分析用具106は、前記図1(A)の検体分析用具101が、さらに、吸収層16を有する形態である。検体分析用具106は、支持体11の上に、吸収層16が配置され、吸収層16は、その上流側端部が、展開層12の下流側端部に接触している。吸収層16は、例えば、図3に示すように、その上流側端部が、展開層12の下流側端部に積層され、残りの領域が、支持体11上に配置されてもよい。前記残りの領域は、例えば、展開層12の下流側端部に接触した状態でもよい。図1(B)、図2(A)および(B)の検体分析用具についても、図3に示すように吸収層が配置されてもよい。図4の検体分析用具103は、図1(B)の検体分析用具に吸収層16が配置された形態を示す。
【0061】
吸収層16は、特に制限されず、例えば、液体を吸収可能であることが好ましく、例えば、多孔質体があげられる。前記多孔質体の材質は、特に制限されず、例えば、前述した試薬層または展開層と同様の材料等があげられる。前記吸収層の形状および大きさは、特に制限されず、適宜設定できる。吸収層16の大きさは、例えば、長さ28〜32mm、幅3〜5mm、厚み1434〜1467μmである。
【0062】
本発明のターゲットの分析方法は、前記本発明の検体分析用具を使用し、サンプル液を、前記検体分析用具の前記検体供給層に供給して、前記展開層に前記サンプル液を展開させることにより、前記サンプル液中のターゲットと前記試薬層の標識化結合物質との複合体を形成させ、前記検出部において、前記固定化結合物質によって前記複合体を捕捉させる工程と、
捕捉された前記複合体における前記標識化結合物質の前記標識を検出する工程とを有することを特徴とする。
【0063】
本発明のターゲットの分析方法は、前記本発明の検体分析用具を使用することが特徴であって、その他の工程および条件等は、何ら制限されない。本発明のターゲットの分析方法は、例えば、前記本発明の検体分析用具において述べたのと同様に行うことができる。
【実施例】
【0064】
つぎに、本発明の実施例について説明する。本発明は、下記の実施例に制限されない。
【0065】
[実施例1]
本例では、図3に示す検体分析用具106を用いて、サンプル液中のA型インフルエンザウイルス(FluA)を検出した。
【0066】
以下、検体分析用具およびそれを構成する各部材について、前記検体の流れ方向のサイズを「長さ」といい、各部材の表面において、前記流れ方向に垂直方向のサイズを「幅」といい、前記長さおよび前記幅に対して垂直方向のサイズを「厚み」という(以下、同様)。
【0067】
(1)検体分析用具の作製
(1−1)青色ラテックス標識抗FluA抗体液の調製
20mmol/Lのホウ酸緩衝液(pH8.2)に、青色ラテックス粒子(粒子径0.3μm、セラダイン社製)を、1重量%の濃度になるように懸濁し、懸濁液を調製した。前記懸濁液に、0.4mg/mL濃度の抗FluAモノクローナル抗体(フィッツジェラルド社製)を1:1の体積比で混合し、室温で60分間反応させた。つぎに、前記反応液を遠心分離後、上清を除去し、1w/v%ウシ血清アルブミン含有ホウ酸緩衝液(pH8.2)で再懸濁した。前記再懸濁液を遠心分離して、上清を除去し、トリス緩衝液2.5mLに懸濁した。これを、青色ラテックス標識抗FluA抗体液とした。
【0068】
(1−2)展開層形成用シート
多孔質のニトロセルロースメンブレン(ミリポア社製)を、帯状に裁断した。前記裁断した前記メンブレンを、抗体塗布装置(バイオドット社製)にセットし、帯の長辺の一端から離れた部分に、抗FluAモノクローナル抗体(フィッツジェラルド社製)をライン状に塗布し、検出部を形成した。前記抗体を塗布した前記メンブレンを乾燥した。これにより、前記メンブレンに前記抗体が固定化された、展開層形成用シートを作製した。
【0069】
(1−3)試薬層形成用シート
前記青色ラテックス標識抗FluA抗体液2.2mLを、ガラスフィルター(ミリポア社製、商品名GFCP001000)に含浸させ、乾燥した。これにより、試薬層形成用シートを作製した。
【0070】
(1−4)検体供給層形成用シート
ガラス繊維(ミリポア社製、商品名GFCP001000 G041 Glass Fiber Conjugate Pad)を、検体供給層形成用シートとして使用した。前記ガラス繊維は、単位体積当たりの吸水量5.24mL/cm、重さ72−78g/m、厚み、0.35〜0.51mm、引張MD >150N/50mm、引張CD 80N/50mm、エアー透過性 2300〜3300L/m/秒であった。
【0071】
(1−5)吸収層形成用シート
ろ紙(ワットマン社製)を、吸収層形成用シートとして使用した。
【0072】
(1−6)支持体形成用シート
両面テープ(商品名ソニーケミカルT−4100)付のプラスチックシートを、支持体形成用シートとして使用した。
【0073】
(1−7)検体分析用具の作製
まず、前記支持体形成用シートの幅方向中央領域の上に、前記展開層形成用シートを積層した。この際、前記展開層形成用シートにおいて、前記検出部が形成された領域側を、検体の流れ方向における下流側とした。つぎに、前記展開層形成用シートの下流側端部から、下流側の前記支持体形成用シートの端部上に、前記吸収層形成用シートを積層した。この際、前記吸収層形成用シートは、前記展開層形成用シートと7mm重なるように配置した。そして、前記支持体形成用シートの上であって、前記展開層形成用シートの上流側に、前記展開層形成用シートと接触するように、前記試薬層形成用シートを積層した。つづいて、前記支持体形成用シートの上であって、前記試薬層形成用シートの上流側に、前記試薬層形成シートと接触するように、前記検体供給層形成用シートを積層した。なお、前記各シートは、両面テープにより前記支持体形成用シート上に積層した。このようにして積層したシートを、前記検体の流れ方向に沿って、幅4mmの短冊状に裁断し、幅4mm、全長77mmの検体分析用具106を作製した。検体分析用具106において、前記展開層形成用シートの裁断部分が、展開層12であり、前記試薬層形成用シートの裁断部分が、試薬層114であり、前記検体供給層形成用シートの裁断部分が、検体供給層13であり、前記吸収層形成用シートの裁断部分が、吸収層16である。
【0074】
前記検体分析用具106は、全体長77mm、全体幅4mmであった。支持体11は、長さ77mm、幅4mm、展開層12は、長さ21mm、幅4mm、検体供給層13は、長さ10mm、幅4mm、厚み0.35〜0.51mm、試薬層14は、長さ10mm、幅4mm、吸収層16は、長さ29mm、幅4mmであった。また、展開層12において、上流側端部から検出部15の上流側端部までの長さは、7mmであった。
【0075】
(2)インフルエンザウイルスの検出
本例の検体分析用具106を用いて、以下のようにして、検体中のインフルエンザウイルスを分析した。本例において、前記検体として、A/Aichi/2/68(H3N2)を使用した。
【0076】
まず、前記検体100μLを、抽出液(トリス緩衝液)に懸濁し、懸濁液400μLを調製した。前記懸濁液をサンプル液とした。前記サンプル液50μLを、検体供給層13に滴下した。前記検体の滴下直後から2分以内に、検体供給層13に、展開液として、前記抽出液120μLを添加した。そして、前記検体の滴下から15分後に、検出部15の着色を、目視で観察した(n=2)。また、コントロールとして、前記抽出液を検体供給層13に滴下して、同様に目視で観察した(n=2)。
【0077】
(比較例1)
前記検体供給層形成用シートの作製に、前記ガラス繊維に代えて、ニトロセルロースメンブレン(ミリポア社製)を使用した以外は、前記実施例1と同じ各シートを使用して、以下に示すようにして、図5に示す検体分析用具を作製した。図5は、検体の流れ方向における、比較例1の検体分析用具107の断面図である。
【0078】
前記支持体形成用シートの幅方向中央領域の上に、前記展開層形成用シートを貼付した。この際、前記展開層形成用シートにおいて、前記検出部が形成された領域側を、検体の流れ方向における下流側とした。つぎに、前記展開層形成用シートの下流側端部から、下流側の前記支持体形成用シートの端部上に、前記吸収層形成用シートを貼付した。この際、前記吸収層形成用シートは、前記展開層形成用シートと7mm重なるように配置した。そして、前記展開層形成用シートの上流側端部から、上流側の前記支持体形成用シートの上に、前記試薬層形成用シートを貼付した。この際、前記試薬層形成用シートは、前記展開層形成用シートと1mm重なるようにして配置した。つぎに、前記試薬層形成用シートと、上流側の前記支持体形成用シートの端部の上に、前記検体供給層形成用シートを積層した。前記積層したシートを、前記検体の流れ方向に沿って、幅4mmの短冊状に裁断し、幅4mm、長さ77mmの検体分析用具107を作製した。検体分析用具107において、前記展開層形成用シートの裁断部分が、展開層12であり、前記試薬層形成用シートの裁断部分が、試薬層54であり、前記検体供給層形成用シートの裁断部分が、検体供給層53であり、前記吸収層形成用シートの裁断部分が、吸収層56である。
【0079】
検体分析用具107は、全体長77mm、全体幅4mmであった。支持体11は、長さ77mm、幅4mm、展開層12は、長さ30mm、幅4mm、検体供給層53は、長さ26mm、幅4mm、試薬層54は、長さ10mm、幅4mm、吸収層56は、長さ29mm、幅4mmであった。また、展開層12において、上流側端部から検出部15の上流側端部までの長さは、11mmであった。
【0080】
検体分析用具107を使用し、検体供給層53に前記サンプルを供給した以外は、前記実施例1と同様にして、目視で測定を行った(n=2)。また、コントロールとして、前記抽出液を検体供給層53に滴下して、同様に目視で観察した。
【0081】
下記表1に、実施例1および比較例1の目視観察について、下記評価基準で判断した着色の程度を示す。+の数が多いほど、着色が強いことを示す。本実施例においては、得られた結果のうち、最も強い着色を+++と評価し、+++に対する相対的な評価として、++、+、−を判定した。
(評価基準)
−:コントロールと同程度の着色または無着色
+:着色あり
++:より強い着色
+++:最も強い着色
【0082】
(表1)
目視による着色の程度
実施例1 ++
比較例1 +
【0083】
前記表1に示すように、実施例1の検体分析用具によれば、比較例1の検体分析用具よりも、強い着色が観察された。この結果から、効率よく前記サンプル液を前記検出部に展開できるため、優れた感度が達成できたことがわかった。
【0084】
[実施例2]
青色ラテックス標識FluA抗体液に代えて、以下の赤色ラテックス標識FluB抗体液を使用し、検体として、B型ウイルスを使用した以外は、前記実施例1と同様にして、検体分析用具の作製およびインフルエンザウイルスの検出を行った。その結果、前記実施例1と同様の結果が得られた。
【0085】
ラテックス粒子として、赤色ラテックス粒子(粒子径0.3μm、セラダイン社製)を用い、前記抗体として、抗FluBモノクローナル抗体(フィッツジェラルド社製)を用いた以外は、実施例1の前記(1)と同様にして、抗体液を調製した。これを、赤色ラテックス標識抗FluB抗体液とした。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の検体分析用具によれば、前記条件を満たす検体供給層を備えることによって、供給した前記サンプル液を効率よく検出部に移動させることが可能である。このように前記サンプル液を効率良く移動させることができるため、例えば、前記サンプル液の量を低減し、且つ、前記サンプル液の調製に使用する前記検体の量を低減できる。したがって、本発明の検体分析用具によれば、特に、少量の生体由来の検体であっても、少ない量の前記サンプル液によって、効率良く前記検出部に移動させ、感度に優れた検出を実現可能である。本発明は、例えば、臨床検査、生化学検査、医学研究等の分野に適用可能であり、その用途は限定されず、広い分野に適用可能である。
【符号の説明】
【0087】
101〜107 検体分析用具
11 支持体
12 展開層
13、53 検体供給層
14、24、54 試薬層
15 検出部
16、56 吸収層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体を供給するための検体供給層、標識化結合物質を含む試薬層、前記検体を展開するための展開層、固定化結合物質が固定化された検出部および支持体を含み、
前記支持体の上に、前記展開層、前記試薬層および前記検体供給層が積層され、
前記展開層における前記検体の流れ方向において、
前記展開層に接触した状態で前記試薬層が配置され、
前記試薬層の上流側の側面に前記検体供給層の下流側の側面が接触した状態で前記検体供給層が配置され、
前記展開層が、前記検出部を含み、
前記検体供給層の単位体積あたりの吸水量が5.4mL/cm以下である
ことを特徴とする検体分析用具。
【請求項2】
前記検体供給層が、ガラスファイバー製の部材である、請求項1記載の検体分析用具。
【請求項3】
前記検体の流れ方向において、
前記支持体における前記検体供給層が積層されている領域の上流側表面が、露出している状態、または、前記支持体の上流側端部が、前記検体供給層の上流側端部と同じ位置もしくは前記検体供給層の上流側端部よりも下流側となる状態で、前記支持体の上に前記検体供給層が配置されている、請求項1または2記載の検体分析用具。
【請求項4】
さらに、前記展開層を展開した前記検体を吸収するための吸収層を含み、
前記支持体の上に、前記吸収層が積層され、
前記検体の流れ方向において、
前記展開層の下流側端部に、前記吸収層が接触した状態で、前記吸収層が配置されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の検体分析用具。
【請求項5】
前記支持体の表面が、液体非浸透性である、請求項1から4のいずれか一項に記載の検体分析用具。
【請求項6】
前記支持体の表面が、疎水性である、請求項5記載の検体分析用具。
【請求項7】
前記検体中のターゲットが抗原であり、
前記固定化結合物質が、前記抗原に対する固定化抗体であり、
前記標識化結合物質が、前記抗原に対する標識化抗体である、請求項1から6のいずれか一項に記載の検体分析用具。
【請求項8】
前記検体中のターゲットが抗体であり、
前記固定化結合物質が、前記抗体に対する固定化抗原であり、
前記標識化結合物質が、前記抗体に対する標識化抗体である、請求項1から7のいずれか一項に記載の検体分析用具。
【請求項9】
前記標識化結合物質の標識が、着色不溶性担体粒子または酵素である、請求項1から8のいずれか一項に記載の検体分析用具。
【請求項10】
前記着色不溶性担体粒子が、着色ラテックス粒子または金属コロイド粒子である、請求項9記載の検体分析用具。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の検体分析用具を使用し、
検体を含むサンプル液を、前記検体分析用具の前記検体供給層に供給して、前記展開層に前記サンプル液を展開させることにより、
前記サンプル液中のターゲットと前記試薬層の標識化結合物質との複合体を形成させ、
前記検出部において、前記固定化結合物質によって前記複合体を捕捉させる工程と、
捕捉された前記複合体における前記標識化結合物質の前記標識を検出する工程とを有することを特徴とするターゲットの分析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−137326(P2012−137326A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−288414(P2010−288414)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000141897)アークレイ株式会社 (288)