説明

検体検査用具

【課題】イムノクロマトグラフィー法によるイムノクロマト用検体抽出チューブのみならず、核酸クロマトグラフィーを原理とするサンドイッチ法あるいは阻害法等特に限定されない小さな核酸増幅用チューブに至るまで検体採取用のチューブ類の種類如何に関わりなく適用することが可能な検体検査用具を開発する。
【解決手段】細長のバッキングシートと、該バッキングシートの表面に検体液表示部を挟んで長さ方向に亘って連続重合される検体液採取部、コンジュゲートパッド部および吸収パット部とからなり、検体液採取部は、吸水性の柔軟材からなり、しかもその少なくとも一部が前記バッキングシートの長さ方向端部より突出している。これによりとくに核酸増幅用チューブなど小さな検体容器にも適用が可能となり、検体や展開液、検体抽出液等の検査液を蓄えるチューブの種類、形状、および大小に拘わらず対応させることができ、また少量の検査液で試験を可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディップスティック、検査ストリップ、更に具体的にはイムノクロマトグラフィー法又は核酸クロマトグラフィー法に基づき、感染症、心筋マーカー、ホルモン、腫瘍マーカー、各種アレルギー、薬物、凝固・線溶等の分野において、各種の抗原や抗体、核酸の検査に用いられる試験検査用のストリップ状の検体検査用具に関する。
【背景技術】
【0002】
上記の検体検査用具に関しては、従来主としてインフルエンザウイルスやRSV、クラミジア、O157等の検出に用いられる抗原抗体反応を原理としたイムノクロマト法によるもので、一般に検体抽出液、あるいは更に綿棒や検体抽出用のチューブと共に検出キットとして実用に供されているもの〔例えば、「医療と検査機器・試薬 28(3),2005」第211〜214頁(2005年6月ラボ・サービス発行)を参照〕が知られている。
【0003】
これは上記したインフルエンザウイルスやRSV等の検査対象物の含まれている検体と展開液等の検査液を試験検査用のストリップ状の検査装置幅以上の径からなる試験管や抽出容器内に溜めておき、試験検査用のストリップ状の検査装置をその検査液が溜まっている試験管や抽出容器に挿入することで毛細管現象により試験検査用のストリップ状の検査装置に検査液が展開されるような試験方法である。
【0004】
つまり図4にあらわしたように、従来汎用されている検体検査用具11は、細長いバッキングシート12の表面に、固層化されたテストライン13aおよびコントロールライン13bが形成されている検体液表示部13を挟んで長さ方向に亘って一方にコンジュゲートパッド部14および検体液採取部15が、また他方には吸収パット部16が、それぞれバッキングシート12の長さ方向に亘って連続重合されて構成されている。
【0005】
また検査対象物から気管支嘆息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎などの原因となるアレルゲンを測定する場合に、検体採取部分を着脱式にし、別な場所で検体を採取し、それを検査器具に取り付けることで試験を行うようにした免疫クロマトグラフィー用分析装置も知られている(特開2005−17248号公報参照)。
【非特許文献1】「医療と検査機器・試薬 28(3),2005」第211〜214頁(2005年6月ラボ・サービス発行)
【特許文献1】特開2005−17248号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に検体抽出用のチューブは綿棒等で採取した検体から検査対象物を展開液等に多く抽出するために押し潰して扱いやすい特殊な形状になっており、これまで検体抽出用のチューブ内に差し込む試験検査用のストリップ状の検査用具に合わせて検体抽出用のチューブ形状を変えることで対応してきた。
【0007】
既述したストリップ状の検査用具は、一般的に長軸方向の一方の端側に検体及び展開液等の検査液を検査装置内に導入する検査液導入部(採取部)があり、これに続くコンジュゲートパッド部、展開部を経て他端の吸収部に向かって検体反応液が湿潤し、検出の目的物が移動(展開)する構造を有している。
【0008】
しかし近年、試験検査用のストリップ状の検査装置の適応範囲は遺伝子検査まで拡大した。遺伝子検査は検査材料として核酸を用いることで抗原抗体反応により検査対象物を検出してきたイムノクロマトよりもPCR法やNASBA法等の核酸増幅技術を使うことで高感度な検出を可能とした。遺伝子検査への試験検査用のストリップ状の検査装置の適応範囲の拡大は、簡便な操作性を有する試験検査用のストリップ状の検査装置に飛躍的な検出感度の向上をもたらすとともに、高い検出感度を有する遺伝子検査の汎用性を高めることとなった。
【0009】
ただ、遺伝子検査は高感度故にコンタミの可能性も高まり、検査対象物の核酸を増幅させた核酸増幅反応液を試験検査用のストリップ状の検査装置に導入するために試験検査用のストリップ状の検査装置幅よりも広いチューブに移すことは増幅産物の汚染を拡大させる危険性があるとともに、検査結果の信頼性を落とすことにつながる。
【0010】
また、検査対象物の核酸をPCR法やNASBA法により増幅する場合、核酸増幅反応液量は少量であり、従ってその増幅時のチューブも小型であり、反応効率、核酸増幅産反応液の回収率を考え、底部にかけて径が小さくなる逆円錐様の計上したチューブが使用されている。 PCR法等はサーマルサーキュラーのような専用の器材を使うためそれに合わせた小型の増幅チューブが多く使われている。
【0011】
したがって、図2にあらわしたように、汎用されているストリップ状の検体検査用具11の適用範囲が、イムノクロマト用検体抽出チューブ〔図2(A)ならびに(B)〕、および検体と展開液を溜める試験管〔図2(C)〕のみならず、小型でキャップC付きの核酸増幅用チューブ:0.5ml容量〔図2(D)〕および0.2ml容量〔図2(E)〕のものまでに拡大されたことになる。
【0012】
この場合に汎用のストリップ状の検体検査用具11を例えばイムノクロマト用検体抽出チューブT1〔図2(A)〕について使用する場合においてはチューブT1の内底部付近の内径が大きいために検体液採取部15が十分に入り込み、検体液サンプルSに容易に触れることができる〔図5(A)参照〕のに対し、核酸増幅用チューブT4では検体液採取部15の先端部が検体液サンプルSに触れにくく、また核酸増幅用チューブT5〔図2(E)〕では検体液サンプルSに届かない〔図5(B)参照〕。
【0013】
つまり PCR法等で使われる増幅チューブに直接試験検査用のストリップ状の検査装置を挿入する場合、試験検査用のストリップ状の検査装置の形状から増幅チューブの底まで検査液導入部が届かず、また、核酸増幅反応液量も少量のため従来の試験検査用のストリップ状の検査装置では適応はできないということである。これは検体液採取部15の先端部がバッキングシート12によって裏うちされているためで、検体液採取部15の先端部に融通性がないためである。
【0014】
この場合に、 PCR法等で使用される増幅チューブの形状に合わせるため、試験検査用のストリップ状の検査用具の先端部幅を増幅チューブの内底部に合わせて細くすることも考えられるが、そうした場合においては視認性の悪化をもたらし、試験検査用のストリップ状の検査用具の有用性を乏しくすることになる。
【0015】
また特許文献1のように検査採取部を離脱式にした場合、着脱によるコンタミの可能性や採取した検査液が少量の場合、接合部の隙間などでの損失により検出に十分な検査対象物が得られない可能性もあり、特に遺伝子増幅反応液量は少量なので僅かな反応液量の損失も試験検査用のストリップ状の検査用具の性能を著しく下落させる結果となる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
そこで本発明は、前記した従来の課題と実状に鑑みて開発されたものであり、取扱い性および操作性に優れ、とくにイムノクロマトグラフィー法によるイムノクロマト用検体抽出チューブのみならず、核酸クロマトグラフィーを原理とするサンドイッチ法あるいは阻害法等特に限定されない小さな核酸増幅用チューブに至るまで検体採取用のチューブ類の種類如何に関わりなく適用することが可能な検体検査用具を開発するに至ったものである。
【0017】
具体的には細長のバッキングシートと、該バッキングシートの表面に検体液表示部を挟んで長さ方向に亘って連続重合されるところの検体液採取部、コンジュゲートパッド部および吸収パット部とからなり、検体液採取部は、吸水性の柔軟材からなり、しかもその少なくとも一部が前記バッキングシートの長さ方向端部より突出していることを特徴とした検体検査用具に関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明のストリップ状の試験検査のための検体検査用具は、先端の検体液採取部に吸水性の柔軟材を用いるとともに、しかもその少なくとも一部が前記バッキングシートの長さ方向端部より突出していることで、イムノクロマト用検体抽出チューブや各種の試験管はもとより、バッキングシートに裏打ちされていない柔軟材先端部がチューブの内径や内底部の形状に合わせて柔軟に湾曲あるいは折れ曲がることができるために、とくに核酸増幅用チューブなど小さな検体容器にも適用が可能となり、検体や展開液、検体抽出液等の検査液を蓄えるチューブの種類、形状、および大小に拘わらず対応させることができる。
【0019】
また、従来品のように先端の検体液採取部を取り外したりする必要がないから少量の検査液で試験・検査をおこなうことができ、特に検査液の移し替えや検査装置への検査液の導入等によりコンタミの可能性が高まる遺伝子検査領域において高精度の試験・検査が可能となり優れた実用性を発揮する。また、従来の検査においてチューブ形状に依存する試験からチューブ形状に依存しない、少量の検査液で試験を可能とし、きわめて広い用途に利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下において本発明の内容を図1にあらわした実施例をもとに説明をする。同図において、1は本発明に拘わる検体検査用具をあらわしており、該検体検査用具1は細長のバッキングシート2、検体液表示部3、コンジュゲートパッド部4、検体液採取部5、吸収パット部6より構成される。具体的には細長のバッキングシート2と、該バッキングシート2の表面に、長さ方向の略中央部に位置させた検体液表示部3を挟んで先端方向にコンジュゲートパッド部4および検体液採取部5が、また検体液表示部3の反対側には基部方向にかけて吸収パット部6が、それぞれ連続重合されている。
【0021】
つまり細長のバッキングシート2の表面に、その長さ方向の一方の端側に検体及び展開液等の検査液を検査装置内に導入する検体液採取部5があり、これに続くコンジュゲートパッド部4、検体液表示部3を経て他端の吸収パット部6に向かって検体反応液が湿潤し、検出の目的物が移動(展開)する構造を有している。
【0022】
バッキングシート2は、従来より用いられていた薄いプラスチック板などある程度張りのある材質のもので形成され、通常は幅が3mm〜8mm程度で、長さが40mmから100mm程度のものが用いられる。コンジュゲートパッド部4には、検出の目的物(抗体、抗原、あるいは核酸)に対する標識物(標識抗原、標識抗体、あるいは標識核酸)が含浸されており、検体液採取部5で採取された試料液の浸潤に伴った検出の目的物が移動・結合し、これに続く検体液表示部3へと浸潤に伴った移動をしていく。
【0023】
また検体液表示部3は、検出の目的物と反応する別の抗原、抗体、あるいは核酸がテストライン3aとして固相化されており、標識物(標識抗体、標識抗原、あるいは標識核酸)と結合した目的物と反応して(サンドイッチ法)着色する。目的物と結合しなかった標識物は更に浸潤に伴う移動をし、標識物と結合しこれと捕捉する抗体や核酸を固相化したコントロールライン3b上で着色する構成となっている。
【0024】
なお吸収パット部6については検体液表示部3を通過した試料を吸収するためのものであって、既知の材料を用いることができる。さらに本願発明の特徴とするところは前記した検体液採取部5が吸水性の柔軟材からなり、しかもその少なくとも一部が前記バッキングシート1の長さ方向端部より突出していることにある。
【0025】
検体液採取部5を構成する吸水性の柔軟材については、例えば、PVDF、ニトロセルロース、ナイロン、 CMF、あるいは不織布などの多孔質の吸水性材料であって、検査液に浸った状態で試験検査用のストリップ状の検査用具1から容易に脱落しない程度の耐久性と、また検査液に浸らない状態(自由状態)では折れ曲がらない程度の保形性を維持できる強度が望まれる。
【0026】
なおこの場合に、強度が高すぎるとチューブの内底形状に合わせて変形することができないため、チューブの内壁面に接触した場合においては内壁形状に合わせて容易に変形できる柔軟性を併せ持つ必要がある。また、検体液採取部5の厚みがあまりあると検査液が検査液採取部5からコンジュゲートパッド部4を経て検体液表示部3、吸収パッド部6に行き着くまでに時間がかかりすぎることから、薄くても高い吸水性を示す材料であるのが望ましく、好ましくは不織布が良い。
【0027】
試験検査用のストリップ状の検査用具1は、その大部分がプラスチック基材よりなるバッキングシート2により裏打ちされており、検体液採取部5を構成する吸水性の柔軟材の少なくとも先端部をチューブ形状に合わせて変形させるためには、その少なくとも先端部を上記したバッキングシート2の長さ方向端部よりも先方に突出させる必要がある。その場合に、例えば4mm幅のストリップ状の検査用具1の場合、2mm未満では変形が困難となり、反対に40mmを超えても自由状態での十分な保形性を維持することが難しいところから、2mm〜40mmの範囲、さらに好ましくは5mm〜35mmの範囲内である必要がある。
【実施例】
【0028】
幅:4mmの細長の試験検査用ストリップ状の従来品検査用具を0.2mLマイクロチューブ内に検査用具を挿入したところ、先端の検体液採取部がマイクロチューブの底までたどり着かなかった。これに対し同幅の細長の試験検査用ストリップ状の本発明品検体検査用具1を作製すべく、検体液採取部5を構成する吸水性の柔軟材として不織布を用いるとともに、その先端部を上記したバッキングシート2の長さ方向端部よりも先方に7mm突出させた試験検査用のストリップ状の検体検査用具1を作成した。
【0029】
これを図3(A)にあらわしたような0.2mL容量の小さな核酸増幅用マイクロチューブT5内に挿入して検体サンプルSの採取・検査に用いてみたところ、検体液採取部5の先端部5aがチューブT5の内壁面に当接後、内壁面に沿って多少折れ曲がるとともに、狭い内底部付近の内壁に沿って先端が湾曲〔図3(B)参照〕して検体液採取部5の幅より狭い内底部付近の検体サンプルSに十分に浸漬させることができた。
【0030】
その後、吸収した検体サンプルSは検出の目的物(抗体、抗原、あるいは核酸)に対する標識物(標識抗原、標識抗体、あるいは標識核酸)が含浸されたコンジュゲートパッド部4を経て検体液表示部3の目的物結合用テストライン3aおよび標識物と結合しこれと捕捉する抗体や核酸を固相化したコントロールライン3bを通過して着色した後吸収パッド部6へと順次湿潤により順調に移動する様子が確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施例である検体検査用具の平面図(A)および分解側面図(B)、側面図(C)。
【図2】本発明の検体検査用具の適用が可能な各種チューブ類の側面図。
【図3】本発明の検体検査用具の使用状態をあらわした斜視図(A)およびチューブ内での検体液採取部の先端部の変形状態を背面側からあらわした部分的斜視図(B)。
【図4】従来の検体検査用具の平面図(A)および側面図(B)。
【図5】従来の検体検査用具を用いたイムノクロマト用検体抽出チューブ(A)および0.2ml容量の核酸増幅用チューブ(B)、それぞれの内部に挿入した状態をあらわした側面図。
【符号の説明】
【0032】
1 検体検査用具
2 バッキングシート
3 検体液表示部
3a テストライン
3b コントロールライン
4 コンジュゲートパッド部
5 検体液採取部
5a 検体液採取部の先端部
6 吸収パッド部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長のバッキングシートと、該バッキングシートの表面に検体液表示部を挟んで長さ方向に亘って連続重合されるところのコンジュゲートパッド部、検体液採取部、および吸収パット部とからなり、検体液採取部は、吸水性の柔軟材からなり、しかもその少なくとも一部が前記バッキングシートの長さ方向端部より突出していることを特徴とした検体検査用具。
【請求項2】
検体液採取部を構成する吸水性の柔軟材が不織布であるところの請求項1に記載の検体検査用具。
【請求項3】
検体液採取部を構成する吸水性の柔軟材がPVDF、ニトロセルロース、ナイロン、CMF等の多孔質ポリマーであるところの請求項1に記載の検体検査用具。
【請求項4】
検体液採取部の幅が3mm〜8mmの範囲内であってバッキングシートの長さ方向端部より突出する部分の突出長さが、2mm〜40mmの範囲内であるところの請求項1〜3のいずれか1に記載の検体検査用具。
【請求項5】
検体液採取部の幅が3mm〜8mmの範囲内であってバッキングシートの長さ方向端部より突出する部分の突出長さが、5mm〜35mmの範囲内であるところの請求項1〜3のいずれか1に記載の検体検査用具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−14507(P2010−14507A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−174100(P2008−174100)
【出願日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(391031074)株式会社カイノス (5)