説明

検出方法及び検出装置

【課題】長手方向に沿って移動している芯線の温度を得ることができる検出方法及び検出装置を提供する。
【解決手段】検出装置1は金属で構成されかつ前記芯線3が外周面に接触して当該芯線3の移動とともに回転されるプーリ31とプーリ31の温度を検出する放射温度計32と放射温度計32が検出した前記プーリ31の温度に基づいて前記芯線3の温度を推定する制御装置33とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長手方向に移動している芯線の温度を検出する検出方法及び検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
移動体としての自動車などには、種々の電子機器が搭載される。このため、前記自動車などは、前記電子機器に電源などからの電力やコンピュータなどからの制御信号などを伝えるために、ワイヤハーネスを配索している。この種のワイヤハーネスは、互いに束ねられた複数の電線と、該電線の端部などに取り付けられたコネクタなどを備えている。
【0003】
電線は、導電性の芯線と該芯線を被覆する絶縁性の合成樹脂からなる被覆部とを備えている。電線は、所謂被覆電線である。コネクタは、電線の端部に取り付けられた端子金具と、当該端子金具を収容したコネクタハウジングを備えている。前述したワイヤハーネスは、コネクタが前述した電子機器に取り付けられて、自動車に配索される。
【0004】
前述したワイヤハーネスを構成する電線は、従来から種々の電線製造装置(例えば、特許文献1参照)により、前記芯線をその長手方向に移動させながら、当該芯線の周りに前記被覆部を構成する合成樹脂を押し出し被覆して製造される。
【特許文献1】特開2005−63737号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した電線製造装置では、芯線の温度が合成樹脂の材質毎などに定められる所定の温度を下回ると、被覆部を構成する合成樹脂が芯線に付着し難くなり、電線を製造することが困難となる。しかしながら、長手方向に沿って移動している芯線の温度を検出することは、勿論、困難であった。
【0006】
したがって、本発明は、長手方向に沿って移動している芯線の温度を得ることができる検出方法及び検出装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決し目的を達成するために、請求項1に記載の本発明の検出方法は、長手方向に沿って移動している芯線の温度を検出する検出方法において、
金属で構成されかつ前記芯線が外周面に接触して当該芯線の移動とともに回転されるプーリの温度を放射温度計により検出することで、前記芯線の温度を推定することを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載の本発明の検出装置は、長手方向に沿って移動している芯線の温度を検出する検出装置において、金属で構成されかつ前記芯線が外周面に接触して当該芯線の移動とともに回転されるプーリと、前記プーリの温度を検出する放射温度計と、前記放射温度計が検出した前記プーリの温度に基づいて前記芯線の温度を推定する推定手段と、を備えたことを特徴としている。
【0009】
請求項3に記載の本発明の検出装置は、請求項2に記載の検出装置において、前記プーリが、円環状に形成されかつ金属で構成されたプーリ本体と、前記プーリ本体の内周に配置されて当該プーリ本体を支持部材に対して回転自在に支持する軸受と、前記軸受と前記プーリ本体との間に設けられた断熱材と、を備えたことを特徴としている。
【0010】
請求項1に記載した本発明の検出方法によれば、芯線が外周面に接触したプーリの温度を放射温度計により検出するので、長手方向に移動している芯線の温度に対応した情報としてのプーリの温度を確実に得ることができる。
【0011】
請求項2に記載した本発明の検出装置によれば、芯線が外周面に接触したプーリの温度を検出する放射温度計を備えているので、長手方向に移動している芯線の温度に対応した情報としてのプーリの温度を確実に得ることができる。
【0012】
請求項3に記載した本発明の検出装置によれば、プーリがプーリ本体と軸受との間に断熱材を設けているので、プーリの熱が軸受を介して支持部材などに伝わることを防止できる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、請求項1に記載の本発明によれば、長手方向に移動している芯線の温度に対応した情報としてのプーリの温度を確実に得ることができる。さらに、予め定められたプーリの温度と芯線の温度との関係に基づいて、芯線の温度を推定する。したがって、長手方向に移動している芯線の温度を確実に得ることができる。
【0014】
請求項2に記載の本発明によれば、長手方向に移動している芯線の温度に対応した情報としてのプーリの温度を確実に得ることができる。さらに、予め定められたプーリの温度と芯線の温度との関係に基づいて、芯線の温度を推定する推定装置を備えている。したがって、長手方向に移動している芯線の温度を確実に得ることができる。
【0015】
請求項3に記載の本発明によれば、プーリの熱が軸受を介して支持部材などに伝わることを防止できるので、プーリの熱と芯線の熱との関係が予め定められた関係から離れることを防止でき、芯線の温度をより正確に推定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態にかかる検出方法及び検出装置を、図1ないし図3を参照して説明する。
【0017】
本発明の一実施形態にかかる検出装置1は、図1に示す電線製造装置2を構成している。電線製造装置2は、図1に示すように、少なくとも一本の導電性の素線が撚り合わされて構成された芯線3の外周を絶縁性の合成樹脂で被覆して電線4(所謂被覆電線)を製造する装置である。電線4は、勿論、導電性の芯線3と、絶縁性の被覆部5とを備えている。芯線3は、複数の素線が撚られて形成されている。芯線3を構成する素線は、導電性の金属からなる。また、芯線3は、一本の素線から構成されても良い。被覆部5は、例えば、ポリ塩化ビニル(Polyvinylchloride:PVC)などの合成樹脂からなる。被覆部5は、芯線3を被覆している。
【0018】
電線製造装置2は、図1に示すように、サプライユニット10と、押し出し被覆ユニット11と、電線冷却水槽14と、巻き取りユニット15と、検出装置1とを備えている。
【0019】
電線製造装置2は、サプライユニット10と検出装置1と押し出し被覆ユニット11と電線冷却水槽14と巻き取りユニット15とに順に芯線3を当該芯線3が直線状をなしてその長手方向(図1中に矢印Kで示す)に沿って走行(移動)させて、前述した電線4を製造する。このため、勿論、電線製造装置2は、前述した電線4を当該電線4が直線状をなしてその長手方向に沿って走行(移動)させて製造する。
【0020】
サプライユニット10は、被覆部5が被覆されていない状態の芯線3を巻きつけたドラム16を有して、当該ドラム16を回転することで、前述した芯線3を押し出し被覆ユニット11に供給する。
【0021】
押し出し被覆ユニット11は、前述した芯線3を内側に通す孔が設けられたダイス17と、溶融樹脂供給部18とを備えている。溶融樹脂供給部18は、前述した合成樹脂を一旦溶かして、前述したダイス17の孔内に供給する。
【0022】
押し出し被覆ユニット11は、溶融樹脂供給部18が合成樹脂を一旦溶かして(高温にして)ダイス17の孔内に供給し、ダイス17の孔内を通る芯線3の周りに前述した溶かされた合成樹脂をサプライユニット10から供給された芯線3の全周に塗りつける。こうして、押し出し被覆ユニット11は、合成樹脂をサプライユニット10から供給された芯線3の周りに押し出し被覆して、被覆部5を成形する。押し出し被覆ユニット11の直後では、被覆部5は高温になっている。
【0023】
電線冷却水槽14は、押し出し被覆ユニット11の芯線3即ち電線4の移動方向としての矢印Kの下流側に設けられている。電線冷却水槽14は、押し出し被覆ユニット11により高温となった電線4の被覆部5を冷却する。
【0024】
巻き取りユニット15は、電線冷却水槽14の矢印Kの下流側に設けられている。巻き取りユニット15は、芯線3と該芯線3を被覆した被覆部5とからなる電線4をドラム19に巻き付けて、当該電線4を出荷できる状態にする。
【0025】
検出装置1は、矢印Kのサプライユニット10の下流側でかつ押し出し被覆ユニット11の上流側に配置されている。即ち、検出装置1は、サプライユニット10との押し出し被覆ユニット11との間に配置されている。
【0026】
検出装置1は、図1に示すように、工場などのフロア上などに設置される本体30と、プーリ31と、放射温度計32と、推定手段としての制御装置33とを備えている。
【0027】
本体30は、箱状に形成されており、フロア上に設置される柱状に形成されている。プーリ31は、図2及び図3に示すように、円環状のプーリ本体34と、軸受35と、断熱材36とを備えている。
【0028】
プーリ本体34は、プーリ31は、銅、アルミニウム合金などで構成された高熱伝導率の金属で構成された母材の外表面に酸化クロムなどの金属で構成された鍍金層(黒色鍍金)が形成されて得られる。このように、プーリ本体34が金属で構成されていることで、プーリ31は、金属で構成されている。
【0029】
プーリ本体34は、その外周面に断面円弧状の溝37が全周に亘って形成されている。軸受35は、本体30から芯線3に向かって立設した支持部材としての円柱状の支持軸38の外周に取り付けられた内輪39と、この内輪39と同軸でかつ外周に配置された外輪40と、これら内外輪39,40間に設けられた転動体とを備えた周知の転がり軸受である。軸受35は、転動体が内外輪39,40の双方に対して転動することで、支持軸38に対してプーリ本体34を回転自在に支持する。
【0030】
断熱材36は、円環状に形成され、かつ軸受35の外輪40の外周とプーリ本体34の内周との間に設けられている。断熱材36は、プーリ本体34の熱が軸受35即ち支持軸38に伝わることを防止する。これらプーリ本体34と軸受35と断熱材36とは、互いに同軸に配置されている。
【0031】
プーリ31は、軸受35によって支持軸38即ち本体30に回転自在に支持されている。そして、プーリ31は、溝37の内面即ちその外周面に芯線3が接触した状態に配置されて、当該芯線3の移動とともに本体30に対して回転される。また、プーリ31は、外周面に芯線3が接触することで、当該芯線3の熱が伝導する。
【0032】
放射温度計32は、プーリ31の上方に配置されている。放射温度計32は、プーリ31が放射する赤外線などを検出して、当該プーリ31の温度を検出する。
【0033】
制御装置33は、周知のROM(Read-only Memory)と、RAM(Random Access Memory)と、CPU(Central Processing Unit)とを備えたコンピュータである。制御装置33は、押し出し被覆ユニット11と、巻き取りユニット15と、放射温度計32などに接続して、これらの動作を制御することで、電線製造装置2全体の制御をつかさどる。
【0034】
また、制御装置33は、プーリ31の温度と芯線3の温度との関係を記憶している。制御装置33は、放射温度計32が検出したプーリ31の温度と前述した関係に基づいて、矢印Kに沿って移動している芯線3の温度を推定する。制御装置33は、芯線3の温度が、当該芯線3の外周に溶けた合成樹脂が付着しやすい温度の予め定められた範囲を超えている場合には、電線製造装置2を強制的に停止して、この強制的に停止したことを作業員に知らせる。
【0035】
前述した構成の電線製造装置2を用いて、電線4を以下のように製造する。まず、サプライユニット10から芯線3を、検出装置1を介して押し出し被覆ユニット11に供給する。そして、押し出し被覆ユニット11で、溶けた合成樹脂を芯線3の周りに押し出し被覆して、被覆部5を成形する。
【0036】
その後、電線冷却水槽14が押し出し被覆ユニット11により成形された電線4を冷却し、巻き取りユニット15が芯線3と該芯線3を被覆した被覆部5とからなる電線4をドラム19などに巻き付ける。なお、電線製造装置2が、芯線3の周りを合成樹脂で被覆して被覆部5を成形している間に、検出装置1は、放射温度計32がプーリ31の温度を検出して制御装置33が芯線3の温度を推定している。このように、検出装置1は、芯線3が外周面に接触して当該芯線3の移動とともに回転されるプーリ31の温度を放射温度計32により検出することで、長手方向に沿って移動している芯線3の温度を推定する。そして、制御装置33は、推定した芯線3の温度が前述した予め定められた範囲外となると電線製造装置2を強制的に停止する。
【0037】
こうして、電線4を得ることができる。このように得られた電線4は、所定の長さに切断されて、複数束ねられるとともに、端部にコネクタなどが取り付けられて、移動体としての自動車などに配索されるワイヤハーネスを構成する。
【0038】
本実施形態によれば、芯線3が外周面に接触したプーリ31の温度を放射温度計32により検出するので、長手方向に移動している芯線3の温度に対応した情報としてのプーリ31の温度を確実に得ることができる。さらに、予め定められたプーリ31の温度と芯線3の温度との関係に基づいて、芯線3の温度を推定する。したがって、長手方向に移動している芯線3の温度を確実に得ることができる。
【0039】
プーリ31がプーリ本体34と軸受35との間に断熱材36を設けているので、プーリ31の熱が軸受35を介して支持軸38などに伝わることを防止できる。したがって、プーリ31の熱と芯線3の熱との関係が、制御装置33に記憶された予め定められた関係から離れることを防止でき、芯線3の温度をより正確に推定することができる。
【0040】
また、前述した実施形態では、放射温度計32をプーリ31の上方に配置したが、本発明では、図4に示すように、放射温度計32を例えばプーリ31の下方などの他の位置に配置しても良い。
【0041】
なお、前述した実施形態は、本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施形態にかかる検出装置を備えた電線製造装置の構成を示す説明図である。
【図2】図1中のII−II線に沿う検出装置の断面図である。
【図3】図1中のIII−III線に沿う検出装置の断面図である。
【図4】図3に示された検出装置の変形例の断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 検出装置
3 芯線
31 プーリ
32 放射温度計
33 制御装置(推定手段)
34 プーリ本体
35 軸受
36 断熱材
38 支持軸(支持部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に沿って移動している芯線の温度を検出する検出方法において、
金属で構成されかつ前記芯線が外周面に接触して当該芯線の移動とともに回転されるプーリの温度を放射温度計により検出することで、前記芯線の温度を推定することを特徴とする検出方法。
【請求項2】
長手方向に沿って移動している芯線の温度を検出する検出装置において、
金属で構成されかつ前記芯線が外周面に接触して当該芯線の移動とともに回転されるプーリと、
前記プーリの温度を検出する放射温度計と、
前記放射温度計が検出した前記プーリの温度に基づいて前記芯線の温度を推定する推定手段と、
を備えたことを特徴とする検出装置。
【請求項3】
前記プーリが、円環状に形成されかつ金属で構成されたプーリ本体と、前記プーリ本体の内周に配置されて当該プーリ本体を支持部材に対して回転自在に支持する軸受と、前記軸受と前記プーリ本体との間に設けられた断熱材と、を備えたことを特徴とする請求項2記載の検出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−229073(P2009−229073A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−71026(P2008−71026)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】