説明

検査シート

【課題】検査の開始と同時に計時を開始することができる検査シートを提供する。
【解決手段】皮膚から発生する検査対象物の量を検査する検査シートであって、皮膚から発生する検査対象物の量に応じて色が変化する試薬を保持する試薬保持部と、検査シートの使用が開始されてからの経過時間を可視的に示す時間表示部とを備える。また、試薬の上に設けられ、試薬が外部と接触することを防ぐ保護部、をさらに備え、時間表示部は、保護部が除去されてからの経過時間を、色変化によって示してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査シートに関する。特に、本発明は、被検者の皮膚の状態を検査する検査シートに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、時間変化または温度−時間積算値を色の変化として表示する用途のテープが記載されている。また、特許文献2には、生物学的液体を検査ストリップに塗布して、所定時間経過後に変色する直読式試薬検査ストリップのための化学的タイマーが記載されている。
【特許文献1】特開平9−26363号公報
【特許文献2】特開平8−297124号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1においては、シールを貼り合わせた時点からの時間積算値を表示するが、他の試薬による検査の開始と同時に計時を開始することを提供するものではない。また、特許文献2においては、生物学的液体の濃度によって試薬の反応時間が異なるので、全ての被検体に対して同一の検査時間を提供するものではない。
【0004】
そこで本発明は、上記の課題を解決することができる検査シートを提供することを目的とする。この目的は特許請求の範囲における独立項に記載の特徴の組み合わせにより達成される。また従属項は本発明の更なる有利な具体例を規定する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の第1の形態においては、皮膚から発生する検査対象物の量を検査する検査シートであって、皮膚から発生する検査対象物の量に応じて色が変化する試薬を保持する試薬保持部と、検査シートの使用が開始されてからの経過時間を可視的に示す時間表示部とを備える。
【0006】
時間表示部は、検査シートの使用が開始されてからの経過時間を、色変化によって示してもよい。また、試薬の上に設けられ、試薬が外部と接触することを防ぐ保護部、をさらに備え、時間表示部は、保護部が除去されてからの経過時間を、色変化によって示してもよい。また、時間表示部は、第1物質を保持する第1物質保持部と、第1物質と接触した時間長さに応じて色が変化する第2物質を保持する第2物質保持部と、第1物質保持部と第2物質保持部との間に設けられ、第1物質と第1物質とが接触することを防ぐ接触防止部と、を有してもよい。
【0007】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0009】
図1は、検査シート10の上面図および側面図を示す。検査シート10は、皮膚から発生する検査対象物の量に応じて色が変化する試薬を保持する試薬保持部104と、検査シート10の使用が開始されてからの経過時間を可視的に示す時間表示部160とを備える。検査シート10は、さらに、粘着部140、保護シート150、第1色見本170、および第2色見本180を備える。
【0010】
時間表示部160は、透明支持体100、反応液保持フィルム115、第1物質保持部110、第2物質保持部120および保護部130が積層されてなり、検査シート10の使用が開始されてからの経過時間を、第2物質保持部120の色変化によって示す。反応液保持フィルム115は、透明支持体100に一端が接着される。
【0011】
第1物質保持部110は、反応液保持フィルム115の皮膚と接する面と反対の面に接着される。第2物質保持部120は、透明支持体100の皮膚と接着する面に接着され、第1物質保持部110と向かい合うように設けられる。保護部130は、透明支持体100と一端が接着されており、第1物質保持部110と第2物質保持部120との間で2重になるように折り返されて設けられる。また、保護部130は、第1物質保持部110と接する面において接着される。
【0012】
透明支持体100は、皮膚に貼付される面に試薬保持部104が接着される。また、透明支持体100は、皮膚に貼付される部分に粘着部140を有する。保護部130は、粘着部140に一部が接着されて、試薬保持部104および粘着部140を被覆して保護する。また、保護部130は、検査シート10の長手方向に透明支持体100より延伸されて設けられる。保護シート150は、粘着部140に一部が接着されて、反応液保持フィルム115および粘着部140を被覆して保護する。
【0013】
透明支持体100は、皮膚と貼付される反対の面に第1色見本170および第2色見本180を有する。第1色見本170は、検査シート10の皮膚と貼付される反対の面から見て第2物質保持部120と隣り合うように設けられ、第2色見本180は、検査シート10の皮膚と貼付される反対の面から見て試薬保持部104と隣り合うように設けられる。第1色見本170は、希望する検査時間に応じて第2物質保持部120が変化する色に応じて同じ色を有しているのが望ましい。また、第2色見本180は、時間表示部160の色および皮膚から単位時間当たりに発生する検査対象物の量に対応づけて、当該量の検査対象物が単位時間当たりに発生する皮膚に、時間表示部160の色が示す経過時間だけ試薬保持部104を接触させた場合に期待される試薬の色を示してもよい。これにより、第2物質保持部120と第1色見本170との色差が無くなった場合に、検査終了時刻であることを認識させることができる。
【0014】
透明支持体100は、透明樹脂であり、試薬保持部104および第2物質保持部120が呈する色を透過して、同時に視認可能に設けられる。透明支持体100は、柔軟性を有してよく、透明性に優れ、また強靭性にも優れた樹脂フィルムが好ましい。具体的には、高分子樹脂フィルムであってよく、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリオレフィン、およびポリアミド系合成繊維等であってよい。高分子樹脂フィルムの重合度および平均分子量等は、検査シート10の使用状況、並びに検査シート10に要求される柔軟性、および耐久性等に応じて適宜決定してよい。
【0015】
試薬保持部104は、皮膚から蒸散される物質と反応して呈色反応を示す試薬を含む。なお、試薬保持部104は、試薬保持部104が保持する試薬と皮膚とが直接に接触することを避けるべく、皮膚と接触する面に水分又は皮脂を透過するが試薬を透過しない不織布等の層を備えてもよい。
【0016】
第1物質保持部110は、第2物質保持部120と反応する第1物質を保持するポッドであってもよい。第2物質保持部120は、第1物質と接触した時間長さに応じて色が変化する第2物質を保持する。保護部130は、第1物質保持部110と第2物質保持部120との間に設けられ、第1物質と第2物質とが接触することを防ぐ接触防止部として機能してもよい。接触防止部は、保護部が試薬から除去されるとともに、第1物質保持部110と第2物質保持部との間から除去され、第1物質と第2物質とを接触させる。
【0017】
すなわち、接触防止部は、保護部130と一体的に設けられ、保護部130が試薬保持部104から除去されることで第1物質保持部110と第2物質保持部120との間から除去される。なお、保護部130は、第1物質保持部110と第2物質保持部120との間から除去されて、第1物質保持部110に含まれる第1物質と、第2物質保持部120に含まれる第2物質とが反応するとともに、試薬保持部104の検査が開始される構成であれば、どのような構成であっても構わない。
【0018】
検査開始時、すなわち、保護部130が検査シート10の長手方向に引き抜かれて除去された場合に、同時に第1物質保持部110のポッドを破くことによって、第2物質保持部120に対して第1物質保持部110に含まれる第1物質が拡散する。時間表示部160は、保護部130が除去されてからの経過時間を、色変化によって示す。
【0019】
また、保護部130は、試薬保持部104の上に設けられ、試薬保持部104が外部と接触することを防ぐ。保護部130は、検査シート10の長手方向に引き抜かれて除去された場合に、透明支持体100と接している一端が外れ、試薬保持部104および粘着部140を露出させる。
【0020】
保護シート150は、検査シート10から剥がされることによって、粘着部140の一部を露出させる。これにより、検査シート10の一部を検査開始前にあらかじめ皮膚に貼付させることができる。
【0021】
なお、他の例においては、時間表示部160は、電子的に経過時間を計算して表示するタイマであってもよい。保護部130を引き抜いた場合、粘着部140を皮膚に貼付した場合、または検査シート10のパッケージを開けた場合、時間表示部160はそれぞれ、圧力、熱、光等を感知して、電子的なタイマをスタートさせてもよい。
【0022】
本実施形態によれば、試薬保持部104を用いた検査開始と同時に時間表示部160による計時が開始される。従って、本実施形態の検査システム1000を実際の製品に適用した場合には、時間表示部160の色変化に応じて、試薬保持部104の検査終了時刻を適切に判断することができる場合がある。
【0023】
図2は、検査システム1000のシステム構成を示す。検査システム1000は、検査シート10、検査シート10を撮像する撮像装置20、および解析装置30を備える。検査システム1000は、皮膚40に貼り付けられた検査シート10を撮像装置20で撮像して、皮膚40の状態を解析する。
【0024】
撮像装置20は、検査シート10を撮像する。撮像装置20が撮像した撮像画像を示す撮像画像データは、LANおよびインターネット等のネットワーク50を介して、撮像画像を解析して皮膚の状態を判断する解析装置30に送信される。また、撮像装置20は、撮像装置20を電気通信的に接続可能なクレードルに保持されてよい。そして、クレードルはネットワーク50を介して解析装置30と通信可能に接続される。係る場合に、撮像装置20は、クレードルを介して解析装置30に撮像画像データを送信してもよい。
【0025】
解析装置30は、試薬の色を検出する色検出部と、色検出部が検出した色および時間表示部160が示す時間長さに基づいて、皮膚から発生する検査対象物の量を算出する算出部とを有する。解析装置30は、撮像装置20が撮像した検査シート10の撮像画像から、皮膚40の状態を解析する。解析装置30は、PCまたはサーバであってよい。具体的には、色検出部は、試薬保持部104および時間表示部160が呈した色を検出する。算出部は、試薬保持部104および時間表示部160が示す時間長さに基づいて、皮膚40から発生する検査対象物の量を算出する。
【0026】
また、解析装置30は皮膚40から発生する検査対象物の量を、検査対象物と接触した時間長さおよび試薬の色に対応づけて格納する量格納部を備えていてもよい。算出部は、時間表示部160が示す時間長さおよび色検出部が検出した色に対応づけて、量格納部が格納している検査対象物の量を選択する。
【0027】
本実施形態によれば、試薬保持部104を用いた検査開始と同時に時間表示部160による計時が開始されるので、本実施形態の検査シート10を実際の製品に適用した場合には、時間表示部160の色変化に応じて、試薬保持部104の検査終了時刻を適切に判断することができる場合がある。また、検査途中であっても、皮膚40が有する算出部が、試薬保持部104が示す色と、時間表示部160が示す色とから検査対象物の量を算出できる場合がある。
【0028】
図3は、第2物質保持部120の色変化の模式図を示す。図3(a)は、検査開始前におけるA−A'断面の模式図を示す。図3(b)は、検査開始時におけるA−A'断面の模式図を示す。図3(c)は、検査中におけるA−A'断面の模式図を示す。
【0029】
図3(a)において、第1物質保持部110および第2物質保持部120は、保護部130によってそれぞれが接触することを防がれている。検査開始時に、検査シート10は皮膚40に貼付され、保護部130は、検査シート10の長手方向に除去される。
【0030】
図3(b)において、保護部130は、第1物質保持部110と第2物質保持部120との間から除去されるとともに、第1物質保持部110のポッドを破る。これにより、第1物質保持部110は、第2物質保持部120に対して第1物質に接触させ、計時が開始される。
【0031】
図3(c)において、第2物質保持部120は、第1物質保持部110から第1物質と接触して呈色反応を示す。第2物質保持部120は、第1色見本170と色比較され、検査開始からの時間がユーザによって計時される。
【0032】
本実施形態によれば、保護部130を除去すると同時に第1物質保持部110および第2物質保持部120の反応が開始される。従って、本実施形態の第2物質保持部120を実際の製品に適用した場合には、第2物質保持部120の色と、第1色見本170が示す色とを比較することで、反応開始からの時間を計測することができる場合がある。すなわち、試薬保持部104を皮膚40に接触させてからの検査時間を計測することができる場合がある。
【0033】
図4は、第2物質保持部120における検査開始からの反射光学濃度変化の一例を示す。第1物質保持部110は、第1物質として0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液を10μL保持する。第2物質保持部120は、第2物質として赤色リトマス試験紙を保持する。
【0034】
第2物質保持部120には、市販されている赤色リトマス試験紙(例えば、「INDICATOR PAPERS LITMUS RED」Cat No 2600−202A(ワットマン社製))を利用する。第1物質保持部110に存在する水酸化ナトリウム水溶液を、室温で第2物質保持部120に展開させた。
【0035】
第2物質保持部120が保持する赤色リトマス試験紙の反応前スペクトルは、450nm〜550nmにかけての広い波長を吸収する。従って、第2物質保持部120は赤色を呈している。反応開始1分後、第1物質保持部110が含む水酸化ナトリウム水溶液が赤色リトマス試験紙と接触して反応することによって、450nm〜550nmにかけての吸収が小さくなり、550〜650nmにかけての広い波長の吸収に変化する。従って、第2物質保持部120は青色を呈する。これにより、本実施形態の時間表示部160を実際の製品に適用した場合には、第2物質保持部120に第1物質保持部110が含む第1試薬を接触させることによって反応を生じさせ、検査開始からの経過時間を第2物質保持部120の色の変化で計時できる場合がある。
【0036】
図5は、第2物質保持部120における検査開始からの反射光学濃度変化の他の例を示す。第1物質保持部110は、第1物質として0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液を10μL保持する。第2物質保持部120は、第2物質としてフェノールレッドを保持する。
【0037】
第2物質保持部120が保持するフェノールレッドを生成することを目的として、pH7.0、濃度10mMのHEPES緩衝溶液に、フェノールレッドを溶解させて100μMの濃度になるように調整したものを用意した。第2物質保持部120は、これにポリスルホン酸多孔質膜(孔径10μm、膜厚100μm)を室温で10分間浸透させた後に引き上げて自然乾燥させた膜を反応させた反応試薬含有フィルムとした。第1物質保持部110は、室温で水酸化ナトリウム水溶液を第2物質保持部120に展開させた。
【0038】
第2物質保持部120が含むフェノールレッドの反応前のスペクトルは、緑および黄色から青にかけてのスペクトルが吸収される。従って、第2物質保持部120は赤紫色を示している。反応開始1分後、第1物質保持部110が含む水酸化ナトリウムとフェノールレッドとが反応することで、緑および黄色から青にかけてのスペクトル吸収が鈍くなる。そして、反応開始2分後には、第2物質保持部120は、赤紫色から青紫色に近づく。これにより、本実施形態の時間表示部160を実際の製品に適用した場合には、第2物質保持部120に第1物質保持部110が含む第1試薬を接触させることによって反応を生じさせ、検査開始からの経過時間を第2物質保持部120の色の変化で計時できる場合がある。
【0039】
図6は、他の実施形態に係る検査シート60の上面図および側面図を示す。検査シート60は、透明支持体100、試薬保持部104、第1色見本170、時間表示薬保持部610、保護部630、粘着部640および第1色見本660を備える。
【0040】
なお、本実施形態に係る検査シート60は、時間表示薬保持部610が透明支持体100の皮膚と反対側の面に備えられる点、および保護部630が透明支持体100の皮膚と貼付される面と時間表示薬保持部610とを被覆する点を除き、図1から図5の上記説明における検査シート10と略同一の構成を有する。従って、以下の説明においては、透明支持体100、試薬保持部104、および第1色見本170の構成要素についての詳細な説明は省略する。
【0041】
時間表示薬保持部610は、透明支持体100の皮膚に貼付される面の反対の面に接して設けられる。時間表示薬保持部610は、保護部630によって気密および水密になるように被覆される。すなわち、保護部630は、時間表示薬保持部610の上に設けられ、時間表示薬保持部610が外気と接触することを防ぐ接触防止部として機能する。従って、接触防止部は、保護部630と一体的に設けられ、保護部630が試薬から除去されることで時間表示薬保持部610から除去される。
【0042】
時間表示薬保持部610は、外気と接触することによって、外気と接触した時間長さに応じて色が変化してよい。また、時間表示薬保持部610は、外気中の酸素と接触することによって、酸素と接触した時間長さに応じて色が変化してよい。また、時間表示薬保持部610は、外気中の水分と接触することによって、水分と接触した時間長さに応じて色が変化してよい。また、時間表示薬保持部610は、光が照射されることによって、光が照射された時間長さに応じて色が変化する光指示薬を保持する光指示薬保持部であってよい。なお、時間表示薬保持部610は、時間表示部160と同様の機能を有する。
【0043】
保護部630は、透明支持体100の皮膚と接する面に設けられた粘着部640の一部と接着され、粘着部640および試薬保持部104を被覆する。また、保護部630は、透明支持体100の端部において折り返されて、時間表示薬保持部610および第1色見本660を被覆する。保護部630は、保護部630が試薬から除去されるとともに、時間表示薬保持部610から除去され、時間表示薬保持部610を外気と接触させる。
【0044】
すなわち、接触防止部は、保護部630が試薬から除去されるとともに、時間表示薬保持部610から除去され、時間表示薬保持部610を外気と接触させる。なお、保護部630は、保護部630を検査シート60から剥がすことによって時間表示薬保持部610の呈色反応と、試薬保持部104の呈色反応を開始させる構造であればどのような構造であっても構わない。また、保護部630は、第1色見本660を被覆せずともよい。
【0045】
時間表示薬保持部610が光指示薬を保持する場合、保護部630は、光指示薬の上に設けられ、光指示薬への光の照射を遮蔽する光遮蔽部として機能してもよい。光遮蔽部は、保護部630が試薬から除去されるとともに、時間表示薬保持部610から除去され、時間表示薬保持部610に光を照射させる。従って、光遮蔽部は、保護部630と一体的に設けられ、保護部630が試薬から除去されることで時間表示薬保持部610から除去されてもよい。
【0046】
第1色見本660は、時間表示薬保持部610の色変化を比較できる色見本であってもよい。第1色見本660は、希望する検査時間に応じて時間表示薬保持部610が変化する色に応じて、同じ色を有しているのが望ましい。これにより、時間表示薬保持部610と第1色見本660との色差が無くなった場合に、検査終了時刻であることを認識させることができる。
【0047】
本実施形態によれば、保護部630を除去すると同時に時間表示薬保持部610および試薬保持部104の反応が開始される。従って、本実施形態の検査シート60を実際の製品に適用した場合には、時間表示薬保持部610の色を常時観察することができ、第1色見本170が有する色と比較することで反応開始からの時間を計測することができる場合がある。
【0048】
図7は、検査システム2000のシステム構成を示す。検査システム1000は、検査シート60、検査シート60を撮像する撮像装置20および解析装置30を備える。検査システム2000は、皮膚40に貼り付けられた検査シート10を撮像装置20で撮像して、皮膚40の状態を解析する。
【0049】
なお、本実施形態に係る検査システム2000は、検査シート10が検査シート60である点を除き、図1から図5の上記説明における検査シート10と略同一の機能および構成を有する。従って、撮像装置20および解析装置30についての詳細な説明は省略する。
【0050】
撮像装置20は、検査シート60を撮像する。解析装置30は、撮像装置20が撮像した検査シート60の撮像画像から、皮膚40の状態を解析する。具体的には、色検出部は、試薬保持部104および時間表示薬保持部610が呈した色を検出する。算出部は、試薬保持部104および時間表示薬保持部610が示す時間長さに基づいて、皮膚40から発生する検査対象物の量を算出する。
【0051】
本実施形態によれば、試薬保持部104を用いた検査の開始と同時に時間表示薬保持部610による計時が開始される。従って、本実施形態の検査システム2000を実際の製品に適用した場合には、時間表示薬保持部610の色変化に応じて、試薬保持部104の検査終了時刻を適切に判断することができる場合がある。また、検査途中であっても、皮膚40が有する算出部が、試薬保持部104が示す色と、時間表示薬保持部610が示す色とから検査対象物の量を算出できる場合がある。
【0052】
図8は、時間表示薬保持部610の変化の模式図を示す。図8(a)は、検査開始前におけるB−B'断面の模式図を示す。図8(b)は、検査開始時におけるB−B'断面の模式図を示す。図8(c)は、検査中におけるB−B'断面の模式図を示す。
【0053】
図8(a)において、時間表示薬保持部610は、保護部630によって外気、湿気および水分と接触することを防がれている。検査シート60による検査が開始される場合に、保護部630は、検査シート60から剥がされる。
【0054】
図8(b)において、時間表示薬保持部610は、保護部630が剥がされたことにより、外部エネルギーを受けて呈色反応を示す。外部エネルギーは、酸素、湿度、光、体温等であってもよい。時間表示薬保持部610は、外部エネルギーに対して暴露されることで、徐々に色変化する。
【0055】
図8(c)において、時間表示薬保持部610は、外部エネルギーを受けて呈色した色に応じて、第1色見本660と比較される。時間表示薬保持部610は、第1色見本660が示す色と比較されて、検査開始からの時間が計時される。
【0056】
本実施形態によれば、保護部630を除去すると同時に時間表示薬保持部610の反応が開始する。従って、本実施形態の時間表示薬保持部610を実際の製品に適用した場合には、時間表示薬保持部610が示す色と、第1色見本660が示す色とを比較することで反応開始からの時間を計時することができる場合がある。
【0057】
図9は、時間表示薬保持部610が含む時間表示薬を酸化させた場合における検査開始からの反射光学濃度の変化を示す。時間表示薬保持部610は、時間表示薬としてジアリールイミダゾールロイコ色素を保持する。透明支持体100は、厚さ150μm程度のポリエチレンテレフタレートフィルムが使用される。また、保護部630は、外気と接しない面をアルミニウム蒸着によってコーティングしたポリエチレンフィルムであり、酢酸ビニルなどの接着剤をアルミニウム蒸着面に塗布して、透明支持体100にヒートシールさせる。
【0058】
検査シート60の使用前に時間表示薬が空気中の酸素と反応することを防ぐことを目的として、検査シート60は、気密な保存袋に密封して保存される。保存袋の内側の面は、アルミニウム蒸着によってコーティングしたポリエチレンフィルムとしてもよい。アルミニウム蒸着面は、酢酸ビニルなどの接着剤が塗布されてもよい。形成された気密な袋の内部には、微細鉄粉を用いた脱酸素剤(例えばエージレス(登録商標))を用いた脱酸素材が同梱されてもよい。
【0059】
検査シート60は、保存袋を開封して取り出された後に、保護部630が剥がされる。保護部630が剥がされることで、時間表示薬保持部610は、酸素が存在する空気中に暴露される。
【0060】
時間表示薬保持部610は、検査開始前において白色を呈している。時間表示薬保持部610は、30分の経過時間によって発色して薄青色を呈する。時間表示薬保持部610は、白色から薄青色を呈するので、時間表示薬保持部610の時間経過による色変化はユーザの目視により確認できる。これにより、本実施形態の時間表示薬保持部610を実際の製品に適用した場合には、時間表示薬保持部610が含む時間表示薬を空気酸化させることによって、検査開始からの経過時間を時間表示薬保持部610の色変化によって計時できる場合がある。
【0061】
図10は、時間表示薬保持部610が含む時間表示薬に光を照射した場合における検査開始からの反射光学濃度の変化を示す。時間表示薬保持部610は、時間表示薬としてニトロテトラゾリウムブルーを保持する。また、検査シート60は、透明支持体100および保護部630に図9と同様の物質および構成を用いる。時間表示薬保持部610は、保護部630を剥がした後、50mWハロゲンランプの白色光が照射される。
【0062】
時間表示薬保持部610は、時間表示薬の反応前において黄色を示す。反応開始6分後、時間表示薬保持部610は、時間表示薬のスペクトルが540nmにおいて光学濃度が増加するので、黄色からマゼンダ色に変化した。これにより、本実施形態の時間表示薬保持部610を実際の製品に適用した場合には、時間表示薬保持部610が含む時間表示薬に光を照射することによって反応を生じさせ、検査開始からの経過時間を時間表示薬保持部610の色で計時できる場合がある。
【0063】
また、時間表示薬保持部610が含む時間表示薬に湿気と反応する無水塩化コバルトを用いた場合を示す。検査シート60は、透明支持体100および保護部630に図9と同様の物質および構成を用いる。時間表示薬保持部610は、保護部630を剥がした後、室温で相対湿度75%の雰囲気中に暴露される。
【0064】
時間表示薬保持部610は、時間表示部の反応開始時には薄青色を呈している。30分経過後、時間表示薬保持部610は、塩化コバルトの水和により、ピンク色に変化する。これにより、本実施形態の時間表示薬保持部610を実際の製品に適用した場合には、時間表示薬保持部610が含む時間表示薬を空気雰囲気中に暴露することによって反応を生じさせ、検査開始からの経過時間を時間表示薬保持部610の色で計時できる場合がある。
【0065】
また、時間表示薬保持部610が含む時間表示薬に体温によって色変化が開始する試薬を用いた場合を示す。時間表示薬保持部610は、温度に応じて色が変化する液晶を保持する。本実施例においては、時間表示薬保持部610は、摂氏32度で色が深青色から黄色に変化する液晶を保持する。検査シート60は、透明支持体100および保護部630に図9と同様の物質および構成を用いる。
【0066】
なお、透明支持体100および保護部630は、気密性および水密性において厳密でなくともよい。時間表示薬保持部610は、保護部630を剥がした後、肌から伝わる体温による色変化が観察される。
【0067】
検査シート60を肌に貼る前において、時間表示薬保持部610は、深青色であった。検査シート60を肌に貼り、5分経過後において、時間表示薬保持部610は黄色味を帯びた。これにより、本実施形態の時間表示薬保持部610を実際の製品に適用した場合には、時間表示薬保持部610が含む時間表示薬に体温による反応を生じさせ、検査開始からの経過時間を時間表示薬保持部610の色で計時できる場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】検査シート10の上面図および側面図を示す。
【図2】検査システム1000のシステム構成を示す。
【図3】第2物質保持部120の色変化の模式図を示す。
【図4】第2物質保持部120における検査開始からの光学濃度の変化を示す。
【図5】第2物質保持部120における検査開始からの光学濃度の変化を示す。
【図6】検査シート60の上面図および側面図を示す。
【図7】検査システム2000のシステム構成を示す。
【図8】時間表示薬保持部610の変化の模式図を示す。
【図9】時間表示薬を酸化させた場合の反射光学濃度の変化を示す。
【図10】時間表示薬に光を照射した場合の反射光学濃度の変化を示す。
【符号の説明】
【0069】
10 検査シート
20 撮像装置
30 解析装置
40 皮膚
50 ネットワーク
60 検査シート
100 透明支持体
104 試薬保持部
110 第1物質保持部
115 反応液保持フィルム
120 第2物質保持部
130 保護部
140 粘着部
150 保護シート
160 時間表示部
170 第1色見本
180 第2色見本
610 時間表示薬保持部
630 保護部
640 粘着部
660 第1色見本
1000 検査システム
2000 検査システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚から発生する検査対象物の量を検査する検査シートであって、
皮膚から発生する検査対象物の量に応じて色が変化する試薬を保持する試薬保持部と、
前記検査シートの使用が開始されてからの経過時間を可視的に示す時間表示部と、
を備える検査シート。
【請求項2】
前記時間表示部は、前記検査シートの使用が開始されてからの経過時間を、色変化によって示す請求項1に記載の検査シート。
【請求項3】
前記試薬の上に設けられ、前記試薬が外部と接触することを防ぐ保護部、
をさらに備え、
前記時間表示部は、前記保護部が除去されてからの経過時間を、色変化によって示す請求項2に記載の検査シート。
【請求項4】
前記時間表示部は、
第1物質を保持する第1物質保持部と、
前記第1物質と接触した時間長さに応じて色が変化する第2物質を保持する第2物質保持部と、
前記第1物質保持部と前記第2物質保持部との間に設けられ、前記第1物質と前記第1物質とが接触することを防ぐ接触防止部と、
を有する請求項3に記載の検査シート。
【請求項5】
前記接触防止部は、前記保護部が前記試薬から除去されるとともに、前記第1物質保持部と第2物質保持部との間から除去され、前記第1物質と前記第2物質とを接触させる請求項4に記載の検査シート。
【請求項6】
前記接触防止部は、前記保護部と一体的に設けられ、前記保護部が前記試薬から除去されることで前記第1物質保持部と前記第2物質保持部との間から除去される
請求項5に記載の検査シート。
【請求項7】
前記時間表示部は、
外気と接触することによって、外気と接触した時間長さに応じて色が変化する時間表示薬を保持する時間表示薬保持部と、
前記時間表示薬の上に設けられ、前記時間表示薬が外気と接触することを防ぐ接触防止部と、
を有する請求項3に記載の検査シート。
【請求項8】
前記接触防止部は、前記保護部が前記試薬から除去されるとともに、前記時間表示薬から除去され、前記時間表示薬を外気と接触させる請求項7に記載の検査シート。
【請求項9】
前記接触防止部は、前記保護部と一体的に設けられ、前記保護部が前記試薬から除去されることで前記時間表示薬から除去される請求項8に記載の検査シート。
【請求項10】
前記時間表示薬は、外気中の酸素と接触することによって、酸素と接触した時間長さに応じて色が変化する請求項7に記載の検査シート。
【請求項11】
前記時間表示薬は、外気中の水分と接触することによって、水分と接触した時間長さに応じて色が変化する請求項7に記載の検査シート。
【請求項12】
前記時間表示部は、
光が照射されることによって、光が照射された時間長さに応じて色が変化する光指示薬を保持する光指示薬保持部と、
前記光指示薬の上に設けられ、前記光指示薬への光の照射を遮蔽する光遮蔽部と、
を有する請求項3に記載の検査シート。
【請求項13】
前記光遮蔽部は、前記保護部が前記試薬から除去されるとともに、前記光指示薬から除去され、前記光指示薬に光を照射させる請求項12に記載の検査シート。
【請求項14】
前記光遮蔽部は、前記保護部と一体的に設けられ、前記保護部が前記試薬から除去されることで前記光指示薬から除去される請求項13に記載の検査シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−20026(P2009−20026A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−183679(P2007−183679)
【出願日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】