説明

検査用磁気ヘッド

【課題】 衝突せずに磁気記録媒体の表面の突起等の凹凸の検出を行うことを課題とする。
【解決手段】 浮動式の磁気ヘッドスライダ1を備え、この磁気ヘッド用スライダ1に、他物体の接近により周波数変動を生じる水晶振動素子2を装備した。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、検査用磁気ヘッドに係り、特に、磁気記録媒体表面上の凹凸の検出を行う検出用磁気ヘッドに関する。
【0002】
【従来の技術】近年、マルチメディア情報時代に向けたギガクラスの磁気記録媒体の開発が進められている。特に、磁気抵抗効果素子(MR素子)の開発によりトラック高密度化(TPI)が急激に増加し、高記憶容量(TPI×線密度(BPI))化に至っている。また、ヘッド浮上量の低浮上量化に伴い、磁気記録媒体表面の突起物と磁気ヘッドとのインターフェースが磁気ディスク装置の信頼性に大きく左右されている。
【0003】従来の磁気記録媒体(磁気ディスク)Dの表面の突起物Tを検出する検出用磁気ヘッド50を図3に示す。この検出用磁気ヘッド50は、磁気ヘッドスライダ51の上面にAE(アコステック・エミッション)素子52又はピエゾ素子が接着装備され、磁気ヘッドコアスライダ51の後端面にMR(磁気抵抗効果)素子53が装備されている。
【0004】かかる検出用磁気ヘッド50では、回転する磁気ディスクDの表面上に、磁気ヘッドスライダ51を一定の高さで浮動させ、磁気ディスクDの表面に一定の高さ以上の突起Tが存在する場合に、かかる突起Tと磁気ヘッドスライダ51とが衝突し、その際に生じる接触エネルギー及び衝撃熱エネルギーをAE素子52及びMR素子53によって検出を行う構成となっている。
【0005】図4は、AE素子52の出力状態を示している。この図によれば、上述した検出用磁気ヘッド50では、0.04[μm]以上の突起Tが検出用磁気ヘッド50の進行方向にある場合に磁気ヘッドスライダ51に衝突し、AE素子52は、通常よりも高い数値で出力電圧を生じるようになっている。観測者は、高い電圧で出力された場合に突起Tを認識することが可能となっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来例は、磁気ヘッドスライダ51が突起Tに衝突しなければ検出が不可能であり、衝突しない高さの突起や傷及びへこみ等は検出することができなかった。また、衝突によって検出を行うため、検出用磁気ヘッド50又は磁気ディスクに破損や故障を生じる場合があり、装置の保守性や信頼性を損なうという不都合があった。
【0007】
【発明の目的】本発明は、磁気記録媒体表面の凹凸の検出ができると共に、磁気ヘッドスライダと磁気ディスクの表面との接触を要しない検出用磁気ヘッドを提供することをその目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本願発明は、浮動式の磁気ヘッドスライダを備え、この磁気ヘッド用スライダに、他物体の接近により周波数変動を生じる水晶振動素子を装備するという構成を採っている。
【0009】上記の構成では、水晶振動素子に所定周波数の電流が流された状態で、磁気記録媒体の表面上を浮動して走行する磁気ヘッドスライダに対して、突起やへこみ等により当該磁気ヘッドスライダと磁気記録媒体との距離変化が生じると、これにより水晶振動素子の発振周波数に変化が生じ、かかる変化によって磁気記録媒体の表面の凹凸の検出が行われる。
【0010】上述の水晶振動素子は、磁気ヘッドスライダの後部,望ましくは、後端面に装備しても良い。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明の一実施形態を図1及び図2R>2に基づいて説明する。
【0012】本実施形態は、図1に示す如く、浮動式の磁気ヘッドスライダ1を備え、この磁気ヘッド用スライダ1に、当該スライダ1と磁気記録媒体(磁気ディスクD)表面との離間距離検出用の水晶振動素子2を装備する検出用磁気ヘッド10を示している。
【0013】上述の磁気ヘッドスライダ1は、磁気ディスクに対して読み出し書き込みを行う通常のものと同じものが使用される。即ち、磁気ヘッドスライダ1は、通常の磁気ヘッドと同様にして図示を省略した板バネ状のアーム先端に支持されており、かかるアームは、回転駆動を自在に装備された磁気ディスクDの略半径方向に沿って自在に回動する。このため、回転する磁気ディスクDの表面上のほぼ全域に対して磁気ヘッドスライダ1を案内することが可能である。
【0014】また、この磁気ヘッドスライダ1は、アームにより磁気ディスクDの表面に向かって押圧されており、このため、磁気ヘッドスライダ1は、磁気ディスクDが静止状態にある場合には当該磁気ディスクDに接触しており、回転を開始すると、その空気流に乗って磁気ディスクDの表面から浮上し浮動を開始するようになっている。かかる浮動状態にある磁気ヘッドスライダ1は、磁気ディスクDに対する相対的な進行方向の下流側部分(後部)は、上流側部分に比べて磁気ディスクDに近接した状態で浮動する。
【0015】磁気ヘッドスライダ1の後部側の後端面1aには、前述したように、水晶振動素子2が接着等により装備されている。この水晶振動素子2は、水晶板とこの水晶板に付設された二つの電極とから主に構成されており、これらの電極を介して所定周波数の電流が流されると共に発振周波数の検出が行われる。即ち、かかる水晶振動素子2は、振動状態(ここでは10[MHz]程度とするが、特にこれに限定されず1〜25[MHz]程でも良い)にある場合、物体が近づくか或いは離間すると、水晶振動素子の共振インピーダンスが変化し、固有周波数から発信周波数の変動が生じる性質を有しており(物体の素材は、何でも良く、例えば液体に対しても周波数の変動が生じる)、かかる性質を利用して、磁気ディスクDの表面全体に渡ってその凹凸の検出を行うものである。
【0016】図2は、水晶振動素子2と磁気ディスクDの表面との距離Hと、水晶振動素子の振動周波数Sとの関係を示している。これによれば、距離Hが0.04〜0.01[μm]まで変化する場合に、振動周波数Sが140〜700[Hz]にほぼ一様な割合で変動する。このため、磁気ディスクDの表面に突起或いは傷等がある場合には、その大きさに応じて水晶振動素子2の振動周波数に変動が生じ、かかる変動の観測により磁気ディスクDの表面の突起、傷等を発見することができる。
【0017】上述した検出用磁気ヘッド10は、回転する磁気ディスクDに対してアームにより磁気ディスクDの半径方向に徐々に送られ、これにより磁気ディスクDの表面全体に対して凹凸の検出が行われる。即ち、磁気ヘッドスライダ1は、その後端面1aを磁気ディスクD側に傾斜させた状態で浮動し、水晶振動素子2は、この後端面1aにおいて一定の周波数で振動を行う。
【0018】そして、磁気ディスクDの表面に突起等がある場合に、水晶振動素子2では、周波数変動を生じ、これが水晶振動素子2の電極から磁気ヘッドスライダ1を支持するアームに設けられた配線を介して観測装置に検出される。
【0019】以上のように、本実施形態によれば、磁気ヘッドスライダ1を衝突させることなく磁気ディスクDの凹凸,即ち突起Tや傷等の検出を行うことが可能である。このため、浮動状態にある磁気ヘッドスライダ1に届かない高さの突起や凹みの検出も可能であると共に、衝突による検出用磁気ヘッド10又は磁気ディスクDに破損を生じることがなく、保守性の向上を図ることが可能となっている。
【0020】また、水晶振動素子の周波数は、図2に示すように当該水晶振動素子と磁気ディスクとの距離に応じてほぼ一定の割合で変動するため、周波数の検出しにより磁気ディスクの突起又は傷等の高さ,深さまで検出することが可能である。
【0021】なお、上述した磁気ヘッドスライダ1は、寸法,形状,又は重量等の変更により、その浮上量を変更しても良い。上述のように、磁気ディスクDの表面から離れた位置から凹凸の検出が可能であるため、磁気ヘッドスライダ1の浮上量を、高めに設定し、磁気ディスクDの表面上の突起Tと磁気ヘッドスライダ1との衝突を必ず回避する構成としても良い。
【0022】
【発明の効果】本発明では、水晶振動素子の振動周波数の変動により磁気記録媒体の表面上の突起や傷等の凹凸の検出を行うため、従来のように磁気ヘッドスライダを衝突させる必要がない。このため、浮動状態にある磁気ヘッドスライダに届かない高さの突起や凹みの検出も可能であると共に、衝突による検出用磁気ヘッド又は磁気記録媒体に破損を生じることがなく、保守性の向上を図ることが可能となっている。
【0023】また、水晶振動素子を磁気ヘッドスライダの後部,特に後端面に装備した場合には、磁気ヘッドスライダの他の部分と比較して、磁気記録媒体の表面に近接した位置から検出を行うことが可能となる。
【0024】以上のように、本発明により従来にない優れた検出用磁気ヘッドを提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(A)は本発明の一実施形態の斜視図であり、図1(B)は側面図である。
【図2】水晶振動素子と磁気ディスクの表面との距離と、水晶振動素子の変動周波数との関係を示す線図である。
【図3】従来例の斜視図である。
【図4】衝突によるAE素子からの出力電圧の変化を示す線図である。
【符号の説明】
1 磁気ヘッドスライダ
1a 後端面
2 水晶振動素子
10 検出用磁気ヘッド
D 磁気ディスク(磁気記録媒体)
T 突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】 浮動式の磁気ヘッドスライダを備え、この磁気ヘッド用スライダに、他物体の接近により周波数変動を生じる水晶振動素子を装備したことを特徴とする検査用磁気ヘッド。
【請求項2】 前記水晶振動素子は、磁気ヘッドスライダの後部に装備したことを特徴とする請求項1記載の検査用磁気ヘッド。
【請求項3】 前記水晶振動素子は、磁気ヘッドスライダの後端面に装備したことを特徴とする請求2記載の検査用磁気ヘッド。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【公開番号】特開平10−302202
【公開日】平成10年(1998)11月13日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平9−113194
【出願日】平成9年(1997)4月30日
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)