説明

検査装置及び方法

【課題】欠陥が発生している微小領域を好適に特定する。
【解決手段】検査装置(1)は、検査対象となる半導体素子(10)に対して、当該半導体素子を駆動させるための駆動電流を供給する駆動手段(13)と、半導体レーザチップの内部の複数の微小領域に対して、当該微小領域の電子の挙動状態を変化させるためのエネルギーを、微小領域毎に順に付与する付与手段(11)と、付与手段によって各微小領域にエネルギーが付与される都度、半導体素子の誘電率を検出する検出手段(14)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体レーザチップ等の半導体素子の検査装置及び方法の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な半導体レーザチップは、数種類の半導体の積層構造から構成されている。半導体レーザチップの内部には、積層された半導体の一部により構成され、レーザ光を閉じ込め、共振(共鳴)によりレーザ光を増幅させる導波路(言い換えれば、発振器ないしはストライプ)が設けられている。このような半導体レーザチップの検査方法(例えば、欠陥個所の特定方法や欠陥個所の解析方法等)については、従来から、多くの技術が開発されてきた。
【0003】
半導体レーザチップの検査方法の一例として、電気的特性又は光学的特性を測定する方法がある。電気的特性としては、例えば、電流−スロープ効率特性や、電流−電圧特性等が例示される。同様に、光学的特性としては、例えば、電流−光出力特性が挙げられる。これらの特性図より、半導体レーザチップが所定の電気的特性又は光学的特性を満たしているかどうかが判定される。
【0004】
また、半導体レーザチップの検査方法の他の一例として、半導体レーザチップの端面部のレーザ光発光位置における発光状態を2次元的に赤外カメラ等で捉え、その発光形状を良品の発光形状と比較することによって、半導体レーザチップの検査を行うニアフィールドパターン(NFP:Near Field Pattern)観察法がある。この検査方法では、半導体レーザチップを発光させた状態でレーザ光発光位置が光学顕微鏡等によって拡大され、赤外線カメラによってその近視野像(即ち、NFP)が捉られ、当該近視野像がモニタ画面に映し出される。その後、映し出された近視野像に対する画像処理が施され、半導体レーザチップの検査が行われる。
【0005】
しかしながら、電気的特性又は光学的特性を測定する検査方法では、当初より設計上の要求仕様を満足しない不良品は検出することができるが、半導体レーザチップ内部(例えば、上述した導波路等)にある結晶欠陥等に起因して時間経過と共に劣化する不良品は検出されないという技術的な問題点がある。また、NFP観察法では、レーザ光を反射する端面のみを観察するため、端面に光学情報として現れているCOD(Catastrophic Optical Damage:光学損傷)破壊の損傷跡しか検出されないという技術的な問題点がある。従って、半導体レーザチップ内部にある結晶欠陥等の異常を確認することは難しい。
【0006】
一方で、半導体レーザチップの内部にある結晶欠陥等の異常を検出する一つの手法として、EL(Electro Luminescence:エレクトロルミネッセンス)やSEM(Scanning Electron Microscope:走査型電子顕微鏡)やTEM(Transmission Electron Microscope:透過型電子顕微鏡)等を用いた破壊検査がある。しかしながら、検査を行うためには半導体レーザチップを破壊する必要があるため、非破壊検査の用途に用いることができない。
【0007】
そこで、例えば特許文献1に開示されているように、半導体レーザチップの外部から半導体レーザチップの欠陥個所に対してレーザ光が照射されることで生ずる熱に起因した熱起電力を検出することで、半導体レーザチップ内部にある結晶欠陥等の異常を検出する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4136832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した熱起電力を検出する技術では、欠陥が発生している微小領域に発生した熱が、当該微小領域の周辺の微小領域に拡散してしまう。つまり、熱起電力は、欠陥が発生している微小領域のみならず、当該微小領域の周辺の欠陥が発生していない微小領域においても生じてしまいかねない。このため、半導体レーザチップの欠陥個所にレーザ光が照射されることで生ずる熱に起因した熱起電力を高精度に検出することが困難であるという技術的な問題点が生じてしまう。
【0010】
また、上述した技術的問題点は、半導体レーザチップに限らず、任意の半導体素子においても同様に生ずる。
【0011】
本発明が解決しようとする課題には上記のようなものが一例として挙げられる。本発明は、欠陥が発生している微小領域を好適に特定することが可能な検査装置及び方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、検査装置は、検査対象となる半導体素子に対して、当該半導体素子を駆動させるための駆動電流を供給する駆動手段と、前記半導体素子の内部の複数の微小領域に対して、当該微小領域の電子の挙動状態を変化させるためのエネルギーを、微小領域毎に順に付与する付与手段と、前記付与手段によって各微小領域に前記エネルギーが付与される都度、前記半導体素子の誘電率を検出する検出手段とを備える。
【0013】
上記課題を解決するために、検査方法は、検査対象となる半導体素子に対して、当該半導体素子を駆動させるための駆動電流を供給する駆動工程と、前記半導体素子の内部の複数の微小領域に対して、当該微小領域の電子の挙動状態を変化させるためのエネルギーを、微小領域毎に順に付与する付与工程と、前記付与手段によって各微小領域に前記エネルギーが付与される都度、前記半導体素子の誘電率を検出する検出工程とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施例の検査装置の構成を示すブロック図である。
【図2】半導体レーザチップの構造を示す断面図である。
【図3】検査装置の動作の流れを示すフローチャートである。
【図4】半導体レーザチップの光出力−電流特性を示すグラフである。
【図5】駆動回路から供給される駆動電流とコンフォーカルレーザ顕微鏡から照射されるエネルギー印加用レーザ光との組み合わせを示すグラフである。
【図6】駆動回路から供給される駆動電流とコンフォーカルレーザ顕微鏡から照射されるエネルギー印加用レーザ光との組み合わせを示すグラフである。
【図7】駆動回路から供給される駆動電流とコンフォーカルレーザ顕微鏡から照射されるエネルギー印加用レーザ光との組み合わせを示すグラフである。
【図8】駆動回路から供給される駆動電流とコンフォーカルレーザ顕微鏡から照射されるエネルギー印加用レーザ光との組み合わせを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、検査装置及び方法の実施形態について順に説明する。
【0016】
(検査装置の実施形態)
本実施形態の検査装置は、検査対象となる半導体素子に対して、当該半導体素子を駆動させるための駆動電流を供給する駆動手段と、前記半導体素子の内部の複数の微小領域に対して、当該微小領域の電子の挙動状態を変化させるためのエネルギーを、微小領域毎に順に付与する付与手段と、前記付与手段によって各微小領域に前記エネルギーが付与される都度、前記半導体素子の誘電率を検出する検出手段とを備える。
【0017】
本実施形態の検査装置によれば、半導体素子を検査する(例えば、欠陥箇所が存在するか否かを判定したり、欠陥個所を特定したりする)際には、駆動手段は、半導体素子に対して駆動電流を供給する。
【0018】
駆動手段による駆動電流の供給と合わせて、付与手段は、半導体素子に対して、所定のエネルギーを付与する。付与手段は、半導体素子の内部の複数の微小領域(つまり、半導体素子の内部の全体の領域又は任意の領域若しくは特定の領域を疑似的に又は仮想的に細分化することで得られる複数の微小領域)の夫々に対して順に、所定のエネルギーを付与していく。言い換えれば、半導体素子(或いは、半導体素子の内部の複数の微小領域)を順次走査するように、半導体素子に対して所定のエネルギーを付与する。尚、付与手段が付与する所定のエネルギーは、例えば、半導体素子内の電子の挙動を変化させることができる。
【0019】
付与手段による所定のエネルギーの付与と合わせて、検出手段は、半導体素子の誘電率を検出する。検出手段は、付与手段によって各微小領域に所定のエネルギーが付与される都度、半導体素子の誘電率を検出する。言い換えれば、特に、検出手段は、付与手段によるエネルギーの付与が行われる際の走査単位毎に、半導体素子の誘電率を検出する。
【0020】
ここで、半導体素子の内部の一の微小領域に欠陥(例えば、結晶欠陥等)が発生している場合について説明する。欠陥が発生している一の微小領域にエネルギーが付与されることで生ずる当該一の微小領域内での電子の挙動状態は、欠陥が発生していない他の微小領域にエネルギーが付与されることで生ずる当該他の微小領域内での電子の挙動状態と異なってくる。このような電子の挙動状態の相違は、一の微小領域における屈折率と他の微小領域における屈折率の差異が一つの要因と言える。更に、このような屈折率の差異は、一の微小領域における誘電率と他の微小領域における誘電率の差異が一つの要因と言える。従って、本実施形態の検出装置によれば、検出装置自身が又は検出装置を取り扱うオペレータは、検出手段によって検出された誘電率を解析することで、欠陥が発生している微小領域が存在するか否かを判定することができると共に、欠陥が発生している微小領域を特定することができる。
【0021】
特に、本実施形態の検査装置は、微小領域にエネルギーが付与されたときの熱起電力を検出することに代えて、微小領域にエネルギーが付与されたときの誘電率を検出することで、半導体素子の検査を行う。熱起電力を検出することで検査が行われる場合には、エネルギーが付与された微小領域に発生した熱が周囲の微小領域に拡散してしまうため、熱起電力の検出精度が相対的に低下してしまう。結果、検査の精度もまた相対的に低下してしまう。しかるに、本実施形態の検査装置は、周囲の微小領域に影響が拡散しにくい又は拡散することのない誘電率を検出することで検査を行うことができる。つまり、本実施形態の検査装置は、熱が拡散する要因である伝導体電子の動き(つまり、熱起電力の変化)を検出することに代えて、価電子帯と伝導帯との間の電子の遷移に起因する電子の挙動(つまり、誘電率の変化)を検出することで、半導体素子の検査を行うことができる。従って、本実施形態の検査装置は、検査の精度の低下を好適に抑制することができる。
【0022】
本実施形態の検査装置の一の態様では、前記半導体素子は、半導体レーザチップを含み、前記供給手段は、前記半導体レーザチップによるレーザ発振が開始しないように、前記半導体レーザチップの閾値電流値未満の電流値を有する前記駆動電流を供給する。
【0023】
この態様によれば、検査対象となる半導体レーザチップがレーザ発振することがないため、半導体レーザチップがレーザ発振している場合と比較して、半導体レーザチップにおける熱の発生を相対的に抑制することができる。このため、誘電率を検出する動作が、半導体レーザチップ自身の熱によって妨げられてしまうことは殆ど或いは全くなくなる。このため、誘電率の検出精度の低下を好適に抑制することができる。
【0024】
本実施形態の検査装置の他の態様では、前記付与手段は、前記半導体素子の内部の各微小領域に対して前記半導体素子の外部からレーザ光を照射することで、当該微小領域の電子の挙動状態を変化させるための前記エネルギーを付与する。
【0025】
この態様によれば、付与手段は、レーザ光の照射によって、半導体素子の内部の微小領域に対して好適にエネルギーを付与することができる。
【0026】
上述の如く付与手段がレーザ光を照射することでエネルギーを付与する検査装置の態様では、前記供給手段が供給する前記駆動電流は、時間と共に変動する所定電流値に対して周期的に大きさと正負が切り替わる電流値を有する交流電流であり、前記照射手段は、固定パワーを有する前記レーザ光を照射するように構成してもよい。
【0027】
このように構成すれば、駆動手段は、時間と共に変動する所定電流値(例えば、時間に対して単調増加する所定電流値)に対して周期的に大きさと正負が切り替わる電流値を有する交流電流を、駆動電流として供給することができる。また、付与手段は、固定パワーを有するレーザ光を照射することで、エネルギーを付与することができる。このため、ある微小領域へのレーザ光の照射によって、当該微小領域における半導体劣化特性を蓄積させる(言い換えれば、履歴印加する)ことができる。従って、レーザ光を照射した微小領域の特性(例えば、上述した誘電率)を、当該微小領域の周囲の影響を考慮した状態で好適に検出することができる。
【0028】
上述の如く付与手段がレーザ光を照射することでエネルギーを付与する検査装置の態様では、前記供給手段が供給する前記駆動電流は、固定された所定電流値に対して周期的に大きさと正負が切り替わる電流値を有する交流電流であり、前記照射手段は、固定パワーを有する前記レーザ光を照射するように構成してもよい。
【0029】
このように構成すれば、駆動手段は、固定された所定電流値(例えば、時間に対して変動しない所定電流値)に対して周期的に大きさと正負が切り替わる電流値を有する交流電流を、駆動電流として供給することができる。また、付与手段は、固定パワーを有するレーザ光を照射することで、エネルギーを付与することができる。このため、レーザ光を照射した微小領域の特性(例えば、上述した誘電率)を好適に検出することができる。
【0030】
上述の如く付与手段がレーザ光を照射することでエネルギーを付与する検査装置の態様では、前記供給手段が供給する前記駆動電流は、直流電流であり、前記照射手段は、時間と共に変動する所定パワーに対して周期的に大きさと正負が切り替わる交流パワーを有する前記レーザ光を照射するように構成してもよい。
【0031】
このように構成すれば、付与手段は、時間と共に変動する所定パワー(例えば、時間に対して単調増加する所定パワー)に対して周期的に大きさと正負が切り替わる交流パワーを有するレーザ光を照射することで、エネルギーを付与することができる。また、駆動手段は、固定電流値を有する直流電流を、駆動電流として供給することができる。このため、ある微小領域へのレーザ光の照射によって、当該微小領域における半導体劣化特性を蓄積させる(言い換えれば、履歴印加する)ことができる。従って、レーザ光を照射した微小領域の特性(例えば、上述した誘電率)を、当該微小領域の周囲の影響を考慮した状態で好適に検出することができる。
【0032】
上述の如く付与手段がレーザ光を照射することでエネルギーを付与する検査装置の態様では、前記供給手段が供給する前記駆動電流は、直流電流であり、前記照射手段は、固定された所定パワーに対して周期的に大きさと正負が切り替わる交流パワーを有する前記レーザ光を照射するように構成してもよい。
【0033】
このように構成すれば、付与手段は、固定された所定パワー(例えば、時間に対して変動しない所定パワー)に対して周期的に大きさと正負が切り替わる交流パワーを有するレーザ光を照射することで、エネルギーを付与することができる。また、駆動手段は、固定電流値を有する直流電流を、駆動電流として供給することができる。このため、レーザ光を照射した微小領域の特性(例えば、上述した誘電率)を好適に検出することができる。
【0034】
上述の如く付与手段がレーザ光を照射することでエネルギーを付与する検査装置の態様では、前記供給手段が供給する前記駆動電流は、(i)固定された所定電流値に対して周期的に大きさと正負が切り替わる電流値を有する交流電流、又は(ii)時間と共に変動する所定電流値に対して周期的に大きさと正負が切り替わる電流値を有する交流電流であり、前記照射手段は、(i)固定された所定パワーに対して周期的に大きさと正負が切り替わる交流パワーを有する前記レーザ光、又は(ii)時間と共に変動する所定パワーに対して周期的に大きさと正負が切り替わる交流パワーを有する前記レーザ光を照射するように構成してもよい。
【0035】
このように構成すれば、レーザ光を照射した微小領域の特性(例えば、上述した誘電率)を、当該微小領域の周囲の影響を考慮した状態で好適に検出することができるという効果と、レーザ光を照射した微小領域の特性(例えば、上述した誘電率)を好適に検出することができるという効果の双方の実現率の割合を調整することができる。つまり、双方の効果を相応に享受することができる。
【0036】
本実施形態の検査装置の他の態様では、前記検出手段によって検出された前記誘電率と当該誘電率が検出された微小領域の位置とを対応付けて表示する表示手段を更に備える。
【0037】
この態様によれば、検出装置自身が又は検出装置を取り扱うオペレータは、表示手段に表示された誘電率と微小領域の位置との関係を示す画像を解析することで、欠陥が発生している微小領域が存在するか否かを判定することができると共に、欠陥が発生している微小領域を特定することができる。
【0038】
本実施形態の検査装置の他の態様では、他の微小領域に前記エネルギーが付与された場合に検出される前記誘電率と比較して、前記エネルギーが付与された場合に異なる誘電率が検出された前記微小領域を、前記結晶欠陥が発生している前記微小領域として特定する特定手段を更に備える。
【0039】
この態様によれば、検出装置自身が又は検出装置を取り扱うオペレータは、誘電率の検出結果を解析することで、欠陥が発生している微小領域が存在するか否かを判定することができると共に、欠陥が発生している微小領域を特定することができる。
【0040】
(検査方法の実施形態)
本実施形態の検査方法は、検査対象となる半導体素子に対して、当該半導体素子を駆動させるための駆動電流を供給する駆動工程と、前記半導体素子の内部の複数の微小領域に対して、当該微小領域の電子の挙動状態を変化させるためのエネルギーを、微小領域毎に順に付与する付与工程と、前記付与手段によって各微小領域に前記エネルギーが付与される都度、前記半導体素子の誘電率を検出する検出工程とを備える。
【0041】
本実施形態の検査方法によれば、上述した本実施形態の検査装置が享受することができる各種効果と同様の効果を好適に享受することができる。
【0042】
尚、上述した本実施形態の検査装置における各種態様に対応して、本実施形態の検査方法も各種態様を採ることが可能である。
【0043】
本実施形態のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施例から更に明らかにされる。
【0044】
以上説明したように、本実施形態の検査装置は、駆動手段と、付与手段と、検出手段とを備える。本実施形態の検査方法は、駆動工程と、付与工程と、検出工程とを備える。従って、欠陥が発生している微小領域を好適に特定することができる。
【実施例】
【0045】
以下、図面を参照しながら、検査装置及び方法の実施例について説明する。
【0046】
(1)検査装置の構成
図1を参照して、本実施例の検査装置1の構成について説明する。ここに、図1は、本実施例の検査装置1の構成を示すブロック図である。
【0047】
図1に示すように、検査装置1は、「付与手段」の一具体例であるコンフォーカルレーザ顕微鏡11と、ステージ12と、「駆動手段」の一具体例である駆動回路13と、「検出手段」の一具体例である誘電率測定回路14と、「表示手段」又は「特定手段」の一具体例であるディスプレイ15と、「特定手段」の一具体例である解析回路16とを備えている。
【0048】
コンフォーカルレーザ顕微鏡11は、ステージ12に対して(より具体的には、ステージ12上に搭載される半導体レーザチップ10に対して)、エネルギー印加用レーザ光LBを照射する。エネルギー印加用レーザ光LBの一例として、例えば波長が1300ナノメートルとなるレーザ光があげられる。
【0049】
コンフォーカルレーザ顕微鏡11は、エネルギー印加用レーザ光LBの焦点を、半導体レーザチップ10の内部の任意の微小領域に合わせることができる。コンフォーカルレーザ顕微鏡11から照射されるエネルギー印加用レーザ光LBは、半導体レーザチップ10の内部の電子に対してエネルギーを与える(言い換えれば、挙動状態を変化させる)ためのレーザ光である。
【0050】
コンフォーカルレーザ顕微鏡11は、半導体レーザチップ10上でエネルギー印加用レーザ光LBを走査させることができる。つまり、コンフォーカルレーザ顕微鏡11は、半導体レーザチップ10内部の任意の微小領域に対してエネルギー印加用レーザ光LBの焦点を合わせることができるように、エネルギー印加用レーザ光LBを走査しながら照射することができる。このとき、コンフォーカルレーザ顕微鏡11は、エネルギー印加用レーザ光LBに加えて、半導体レーザチップ10内部のいずれの微小領域にエネルギー印加用レーザ光LBを照射しているかを特定する(言い換えれば、エネルギー印加用レーザ光LBの照射位置を特定する)ための位置出し用レーザ光を照射してもよい。但し、コンフォーカルレーザ顕微鏡11は、エネルギー印加用レーザ光LBを、位置出し用レーザ光としても用いてもよい。つまり、コンフォーカルレーザ顕微鏡11は、エネルギー印加用レーザ光LBと位置出し用レーザ光とを兼用してもよい。
【0051】
ステージ12は、検査装置1による検査の対象となる半導体レーザチップ10を搭載する台である。尚、ステージ12は、半導体レーザチップ10そのものを搭載してもよいし、半導体レーザチップ10が切り分けられる前のウエハ(つまり、複数の半導体レーザチップ10が集積されたウエハ)を搭載してもよい。
【0052】
ここで、図2を参照して、検査対象となる半導体レーザチップ10の構造について説明する。ここに、図2は、半導体レーザチップ10の構造を示す断面図である。
【0053】
図2に示すように、半導体レーザチップ10は、n型オーミック電極101と、n型基板102と、n型クラッド層103と、導波路(言い換えれば、発振器ないしはストライプ)104と、p型クラッド層105と、電流狭窄層106と、p型クラッド層107と、p型基板108と、p側オーミック電極109とが、厚さ方向に沿って積層された構造を有している。n型オーミック電極101とp型オーミック電極109との間に駆動電流が印加されることで、半導体レーザチップ10は発光するか又はレーザ光を出力する。具体的には、駆動電流が半導体レーザチップ10の閾値電流値Ith未満である場合には、半導体レーザチップ10は、発光しないこともあるし発光することもある。他方で、駆動電流が半導体レーザチップ10の閾値電流値Ith以上である場合には、半導体レーザチップ10は、レーザ光を出力する(つまり、レーザ発振する)。
【0054】
本実施例では、エネルギー印加用レーザ光LBは、導波路104に照射されることが好ましい。言い換えれば、エネルギー印加用レーザ光LBの焦点は、導波路104の内部の任意の微小領域に合わせられることが好ましい。つまり、検査装置1による検査対象は、導波路104に設定されることが好ましい。このため、エネルギー印加用レーザ光LBは、半導体レーザチップ10を構成する材料よりもバンドギャップエネルギーが小さいことが好ましい。加えて、エネルギー印加用レーザ光LBは、p型クラッド層105、電流狭窄層106及びp型クラッド層107を含むダブルヘテロ構造を透過することができる程度の大きさのエネルギーを有していることが好ましい。
【0055】
但し、エネルギー印加用レーザ光LBは、導波路104以外の任意の積層構造物に照射されてもよい。この場合、検査装置1は、導波路104以外の任意の積層構造物を検査することができる。
【0056】
再び図1において、駆動回路13は、半導体レーザチップ10に対して駆動電流を供給する。尚、エネルギー印加用レーザ光LBは、駆動回路13によって半導体レーザチップ10に対して駆動電流が供給されている状態で、半導体レーザチップ10(特に、導波路104)に照射されることが好ましい。
【0057】
誘電率測定回路14は、半導体レーザチップ10の誘電率を測定するための回路である。また、誘電率測定回路14は、駆動回路13によって半導体レーザチップ10に対して駆動電流が供給され且つコンフォーカルレーザ顕微鏡11によって半導体レーザチップ10に対してエネルギー印加用レーザ光LBが照射されている状態で、誘電率を測定することが好ましい。
【0058】
誘電率測定回路14は、任意の手法を用いて、誘電率を測定してもよい。具体的には、誘電率測定回路14は、例えば、n型オーミック電極101とp型オーミック電極109との間に流れる電流ないしは信号を監視することで、半導体レーザチップ10の誘電率を測定してもよい。或いは、誘電率測定回路14は、コンフォーカルレーザ顕微鏡11から照射されるエネルギー印加用レーザ光LBの半導体レーザチップ10からの反射光(例えば、駆動電流等に起因した高周波成分が重畳された反射光)を監視することで、半導体レーザチップ10の誘電率を測定してもよい。或いは、誘電率測定回路14は、コンフォーカルレーザ顕微鏡11から照射されるエネルギー印加用レーザ光LBによって半導体レーザチップ10の内部の微小領域に生ずる熱を監視することで、半導体レーザチップ10の誘電率を測定してもよい。
【0059】
誘電率測定回路14は、誘電率そのものを直接的に検出してもよい。或いは、誘電率測定回路14は、誘電率そのものを間接的に示し得る他のパラメータを検出することで、誘電率を間接的に検出してもよい。
【0060】
加えて、誘電率測定回路14は、コンフォーカルレーザ顕微鏡11によるエネルギー印加用レーザ光LBの走査の単位に合わせて、誘電率を測定することが好ましい。より具体的には、誘電率測定回路14は、コンフォーカルレーザ顕微鏡11によるエネルギー印加用レーザ光LBの走査が1回行われる都度、誘電率を測定することが好ましい。
【0061】
ディスプレイ15は、誘電率測定回路14によって検出された誘電率と、当該誘電率が検出されたときにエネルギー印加用レーザ光LBが照射されていた位置とが対応付けられた画像情報を表示する。
【0062】
解析回路16は、ディスプレイ15に表示された画像情報に基づいて、半導体レーザチップ10に欠陥が生じているか否か及び欠陥が生じている位置を解析する。
【0063】
(2)検査装置の動作
続いて、図3を参照して、検査装置1の動作について説明する。ここに、図3は、検査装置1の動作の流れを示すフローチャートである。
【0064】
図3に示すように、駆動回路13は、半導体レーザチップ10に対して駆動電流を供給する(ステップS11)。尚、ステップS11の動作は、後述するステップS12からステップS14の動作が行われている間は継続して行われていることが好ましい。
【0065】
ここで、駆動回路13から供給される駆動電流の電流値について、図4を参照して説明する。ここに、図4は、半導体レーザチップ10の光出力−電流特性を示すグラフである。
【0066】
図4に示すように、半導体レーザチップ10は、半導体レーザチップ10の閾値電流値Ith未満の駆動電流が供給された場合には、LED発光領域での動作を行う。言い換えれば、半導体レーザチップ10は、閾値電流値Ith未満の駆動電流が供給された場合には、レーザ発振領域での動作を行わない。従って、半導体レーザチップ10は、閾値電流値Ith未満の駆動電流が供給された場合には、レーザ光を出射することなく、単なる発光のみを行う。
【0067】
他方で、図4に示すように、半導体レーザチップ10は、閾値電流値Ith以上の駆動電流が供給された場合には、レーザ発光領域での動作を行う。言い換えれば、半導体レーザチップ10は、閾値電流値Ith以上の駆動電流が供給された場合には、LED発光領域での動作を行わない。従って、半導体レーザチップ10は、閾値電流値Ith以上の駆動電流が供給された場合には、レーザ光を出射する。
【0068】
本実施例では、検査装置1による検査が行われる場合には、検査精度の向上という観点から見て、半導体レーザチップ10によるレーザ発振が行われないことが好ましい。従って、駆動回路13は、半導体レーザチップ10の閾値電流値Ith未満の電流値を有する駆動電流を供給することが好ましい。
【0069】
尚、図4に示す例は、駆動電流が、半導体レーザチップ10における順方向電流である場合の例を示している。しかしながら、駆動回路13は、半導体レーザチップ10における逆方向電流を、駆動電流として供給してもよい。尚、逆方向電流の電流値は、その絶対値の大小にかかわらず、常に閾値電流値Ith未満となるため、上述した条件を満たしている。
【0070】
また、駆動回路13は、直流電流となる駆動電流を供給してもよいし、交流電流となる駆動電流を供給してもよい。尚、駆動電流が具体的にどのような交流電流又はどのような直流電流であることが好ましいかについての説明は、後に詳述する(図5から図8参照)。
【0071】
再び図3において、ステップS11の動作と並行して、コンフォーカルレーザ顕微鏡11は、半導体レーザチップ10の導波路104内の各微小領域に対して、エネルギー印加用レーザ光LBを順に照射する(ステップS12)。つまり、コンフォーカルレーザ顕微鏡11は、導波路104内部の各微小領域に対してエネルギー印加用レーザ光LBの焦点を合わせることができるように、エネルギー印加用レーザ光LBを走査しながら照射する。このとき、コンフォーカルレーザ顕微鏡11は、エネルギー印加用レーザ光LBの照射位置を測定しながら、エネルギー印加用レーザ光LBを照射する。測定された照射位置は、不図示のメモリ等に格納されてもよい。
【0072】
ここで、駆動回路13から供給される駆動電流とコンフォーカルレーザ顕微鏡11から照射されるエネルギー印加用レーザ光LBとの組み合わせについて、図5から図8を参照して説明する。ここに、図5から図8は、夫々、駆動回路13から供給される駆動電流とコンフォーカルレーザ顕微鏡11から照射されるエネルギー印加用レーザ光LBとの組み合わせを示すグラフである。
【0073】
図5に示すように、駆動電流が交流電流であって且つエネルギー印加用レーザ光LBのレーザパワーが固定値Po1であってもよい。特に、駆動電流は、時間と共に変動する所定電流値Iop1(但し、Iop1は、Iop1<Ithという条件を満たす)を基準としてその電流値の大きさ及び正負の符号が周期的に切り替わる交流電流であってもよい。より具体的には、駆動電流は、所定電流値Iop1=A1×t(但し、A1は所定の定数)であるとすると、A1×t+B1×sin(ω1×t+δ1)という数式によって示されてもよい(但し、B1は所定の定数であり、ω1は交流の周期に対応する角周波数であり、δ1は位相である)。但し、駆動電流の電流値A1×t+B1×sin(ω1×t+δ1)は、A1×t+B1×sin(ω1×t+δ2)<Ithという条件を満たす。
【0074】
図6に示すように、駆動電流が交流電流であって且つエネルギー印加用レーザ光LBのレーザパワーが固定値Po2であってもよい。特に、駆動電流は、時間によらずに固定された所定電流値Iop2(但し、Iop2は、Iop2<Ithという条件を満たす)を基準としてその電流値の大きさ及び正負の符号が周期的に切り替わる交流電流であってもよい。より具体的には、駆動電流は、Iop2+B2×sin(ω2×t+δ2)となってもよい(但し、B2は所定の定数であり、ω2は交流の周期に対応する角周波数であり、δ2は位相である)。但し、駆動電流の電流値Iop2+B2×sin(ω2×t+δ2)は、Iop2+B2×sin(ω2×t+δ2)<Ithという条件を満たす。
【0075】
図7に示すように、駆動電流の電流値が固定値Iop3(但し、Iop3は、Iop3<Ithという条件を満たす)となる直流電流であって且つエネルギー印加用レーザ光LBのレーザパワーが時間と共に変動する所定パワーPo3を基準としてそのレーザパワーの大きさ及び正負の符号が周期的に切り替わるレーザ光であってもよい。より具体的には、駆動電流は、所定パワーPo3=A3×t(但し、A3は所定の定数)であるとすると、A3×t+B3×sin(ω3×t+δ3)となってもよい(但し、B3は所定の定数であり、ω3はレーザパワーの交流変化に対応する角周波数であり、δ3は位相である)。
【0076】
図8に示すように、駆動電流の電流値が固定値Iop4(但し、Iop4は、0≦Iop4≦Ithという条件を満たす)となる直流電流であって且つエネルギー印加用レーザ光LBのレーザパワーが時間よらずに固定された所定パワーPo4を基準としてそのレーザパワーの大きさ及び正負の符号が周期的に切り替わるレーザ光であってもよい。より具体的には、駆動電流は、Po4+B4×sin(ω4×t+δ4)となってもよい(但し、B4は所定の定数であり、ω4はレーザパワーの交流変化に対応する角周波数であり、δ4は位相である)。
【0077】
再び図3において、続いて、誘電率測定回路14は、コンフォーカルレーザ顕微鏡11によるエネルギー印加用レーザ光LBの走査の単位に合わせて、誘電率を測定する(ステップS13)。より具体的には、誘電率測定回路14は、コンフォーカルレーザ顕微鏡11によるエネルギー印加用レーザ光LBの走査が1回行われる都度、誘電率を測定する。このとき、測定された誘電率は、不図示のメモリ等に格納されてもよい。特に、測定された誘電率は、ステップS12で測定されたエネルギー印加用レーザ光LBの照射位置と対応付けられながら、不図示のメモリ等に格納されてもよい。
【0078】
以上のステップS11からステップS13までの動作が、導波路104内の全ての微小領域にエネルギー印加用レーザ光LBが照射されるまで繰り返される。言い換えれば、以上のステップS11からステップS13までの動作が、導波路104内の各微小領域にエネルギー印加用レーザ光LBが照射されたときに行われる誘電率の測定が、導波路104内の全ての微小領域を対象として完了するまで繰り返される。
【0079】
続いて、ディスプレイ15は、誘電率測定回路14によって検出された誘電率と、当該誘電率が検出されたときにエネルギー印加用レーザ光LBが照射されていた位置とが対応付けられた画像情報を表示する(ステップS14)。例えば、ディスプレイ15は、z軸が誘電率を示し且つx軸及びy軸の少なくとも一方が位置(つまり、走査方向に沿った面内における、エネルギー印加用レーザ光LBが照射されていた位置)を示す2次元的な又は3次元的なグラフを表示してもよい。但し、ディスプレイ15は、誘電率測定回路14によって検出された誘電率を任意の態様で表示してもよい。
【0080】
続いて、解析回路16は、ディスプレイ15に表示された画像情報に基づいて、半導体レーザチップ10に欠陥が生じているか否か及び欠陥が生じている位置を解析する(ステップS15)。つまり、解析回路16は、画像情報が示す誘電率と当該誘電率が検出されたときにエネルギー印加用レーザ光LBが照射されていた位置との対応関係に基づいて、半導体レーザチップ10に欠陥が生じているか否か及び欠陥が生じている位置を解析する。このとき、解析回路16は、他の位置と比較して、誘電率が高くなっている又は低くなっている位置に欠陥が生じていると解析してもよい。このような解析回路16による解析は、ディスプレイ15に表示された画像情報を画像処理することで実現されてもよい。
【0081】
ここで、誘電率を測定することで半導体レーザチップ10を検査することができる技術的理由について説明する。例えば、導波路104内の一の微小領域に欠陥(例えば、結晶欠陥等)が発生している場合を想定して説明を進める。欠陥が発生している一の微小領域にエネルギー印加用レーザ光LBが照射されることで生ずる当該一の微小領域内での電子の挙動状態は、欠陥が発生していない他の微小領域にエネルギー印加用レーザ光LBが照射されることで生ずる当該他の微小領域内での電子の挙動状態と異なってくる。このような電子の挙動状態に関する特性を呈する物性的な要因として、一の微小領域における屈折率と他の微小領域における屈折率の差異が一例としてあげられる。更に、このような屈折率の差異は、一の微小領域における誘電率と他の微小領域における誘電率の差異が原因となって生ずることが、マクスウェルの電磁方程式から導かれる。従って、検出装置1は、誘電率測定回路14によって検出された誘電率を解析することで、半導体レーザチップ10に欠陥が生じているか否か及び欠陥が生じている位置を解析することができる。
【0082】
より具体的には、例えば、欠陥が発生している一の微小領域におけるエネルギーギャップは、欠陥が発生していない他の微小領域におけるエネルギーギャップよりも小さくなることがある。その結果、欠陥が発生している一の微小領域にエネルギー印加用レーザ光LBを照射したときに測定される誘電率は、欠陥が発生していない他の微小領域にエネルギー印加用レーザ光LBを照射したときに測定される誘電率よりも大きくなる傾向を有する。或いは、欠陥が発生している一の微小領域におけるエネルギーギャップは、欠陥が発生していない他の微小領域におけるエネルギーギャップよりも大きくなることがある。その結果、欠陥が発生している一の微小領域にエネルギー印加用レーザ光LBを照射したときに測定される誘電率は、欠陥が発生していない他の微小領域にエネルギー印加用レーザ光LBを照射したときに測定される誘電率よりも小さくなる傾向を有する。従って、検出装置1は、誘電率測定回路14によって検出された誘電率を解析することで、半導体レーザチップ10に欠陥が生じているか否か及び欠陥が生じている位置を解析することができる。
【0083】
加えて、本実施例の検査装置1は、微小領域にエネルギーが付与されたときの熱起電力を検出することに代えて、微小領域にエネルギーが付与されたときの誘電率を検出することで半導体レーザチップ10の検査を行うことができる。熱起電力を検出することで検査が行われる場合には、エネルギーが付与された微小領域に発生した熱が周囲の微小領域に拡散してしまうため、熱起電力の検出精度が相対的に低下してしまう。結果、検査の精度もまた相対的に低下してしまう。しかるに、本実施例の検査装置1は、周囲の微小領域に影響が拡散しにくい又は拡散することのない誘電率を検出することで検査を行うことができる。つまり、本実施例の検査装置1は、熱が拡散する要因である伝導体電子の動き(つまり、熱起電力の変化)を検出することに代えて、価電子帯と伝導帯との間の電子の遷移に起因する電子の挙動(つまり、誘電率の変化)を検出することで、半導体レーザチップ10の検査を行うことができる。従って、本実施例の検査装置1は、検査の精度の低下を好適に抑制することができる。
【0084】
加えて、本実施例の検査装置1は、検査を行う際には、図4に示すように、半導体レーザチップ10の閾値電流値Ith未満の電流値を有する駆動電流を、半導体レーザチップ10に供給している。従って、検査対象となる半導体レーザチップ10がレーザ発振することがないため、半導体レーザチップ10がレーザ発振している場合と比較して、半導体レーザチップ10における熱の発生を相対的に抑制することができる。このため、誘電率を検出する際に、半導体レーザチップ自身の熱による影響を受けることは殆ど或いは全くなくなる。このため、本実施例の検査装置1は、誘電率の検出精度の低下を好適に抑制することができる。
【0085】
加えて、本実施例の検査装置1は、図5に示すように、時間と共に変動する所定電流値Iop1に対して周期的に大きさと正負が切り替わる電流値を有する交流電流を、駆動電流として供給すると共に、固定パワーPo1を有するエネルギー印加用レーザ光LBを照射することができる。このため、ある微小領域へのエネルギー印加用レーザ光LBの照射によって、当該微小領域における半導体劣化特性を蓄積させる(言い換えれば、履歴印加する)ことができる。従って、エネルギー印加用レーザ光LBを照射した微小領域の特性(例えば、上述した誘電率)を、当該微小領域の周囲の影響を考慮した状態で好適に検出することができる。
【0086】
加えて、本実施例の検査装置1は、図6に示すように、固定された所定電流値Iop2に対して周期的に大きさと正負が切り替わる電流値を有する交流電流を、駆動電流として供給すると共に、固定パワーPo2を有するエネルギー印加用レーザ光LBを照射することができる。このため、エネルギー印加用レーザ光LBを照射した微小領域の特性(例えば、上述した誘電率)を好適に検出することができる。
【0087】
加えて、本実施例の検査装置1は、図7に示すように、時間と共に変動する所定パワーPo3に対して周期的に大きさと正負が切り替わる交流パワーを有するエネルギー印加用レーザ光LBを照射すると共に、固定電流値Iop3を有する直流電流を、駆動電流として供給することができる。このため、ある微小領域へのエネルギー印加用レーザ光LBの照射によって、当該微小領域における半導体劣化特性を蓄積させる(言い換えれば、履歴印加する)ことができる。従って、エネルギー印加用レーザ光LBを照射した微小領域の特性(例えば、上述した誘電率)を、当該微小領域の周囲の影響を考慮した状態で好適に検出することができる。
【0088】
加えて、本実施例の検査装置1は、図8に示すように、固定された所定パワーPo4に対して周期的に大きさと正負が切り替わる交流パワーを有するエネルギー印加用レーザ光LBを照射すると共に、固定電流値Iop4を有する直流電流を、駆動電流として供給することができる。このため、エネルギー印加用レーザ光LBを照射した微小領域の特性(例えば、上述した誘電率)を好適に検出することができる。
【0089】
尚、上述した説明では、半導体レーザチップ10の導波路104にエネルギーを付与するための手段として、エネルギー印加用レーザ光LBを照射するコンフォーカルレーザ顕微鏡11を用いている。しかしながら、半導体レーザチップ10の導波路104にエネルギーを付与するための手段として、導波路104内の電子の挙動状態に影響を与える任意のエネルギーを付与することができる任意の手段を用いてもよい。例えば、半導体レーザチップ10の導波路104にエネルギーを付与するための手段として、半導体レーザチップ10に対して振動又は応力を付与する圧電素子を用いてもよい。この場合は、圧電素子から付与される振動又は応力が、導波路104内の電子の挙動状態に影響を与えるエネルギーとなり得る。
【0090】
また、コンフォーカルレーザ顕微鏡11は、赤外線受光機能を備えていてもよい。より具体的には、コンフォーカルレーザ顕微鏡11は、赤外線カメラを備えていてもよい。赤外線受光機能ないしは赤外線カメラは、半導体レーザチップ10の発光状況(例えば、発光スペクトル)を測定ないしは検出することができる。この場合、検査装置1は、コンフォーカルレーザ顕微鏡11によって測定される発光スペクトルを分析することで、半導体レーザチップ10に欠陥が生じているか否か及び欠陥が生じている位置をより高精度に解析することができる。
【0091】
但し、赤外線カメラ等に代表される赤外線受光機能を追加することによって生ずる費用的なコストを抑制するという視点を重視するのであれば、コンフォーカルレーザ顕微鏡11は、赤外線受光機能を備えていなくともよい。
【0092】
また、図3のステップS15において、解析回路16は、ディスプレイ15に表示された画像情報を用いることなく、誘電率測定回路14によって検出された誘電率と、当該誘電率が検出されたときにエネルギー印加用レーザ光LBが照射されていた位置とに基づいて、半導体レーザチップ10に欠陥が生じているか否か及び欠陥が生じている位置を解析してもよい。この場合、検査装置1は、ディスプレイ15を備えていなくともよい。また、検査装置1は、図3のステップS14の動作(つまり、画像情報の表示動作)を行わなくともよい。
【0093】
或いは、解析回路16に代えて、検査装置1のオペレータが、ディスプレイ15に表示された画像情報に基づいて、半導体レーザチップ10に欠陥が生じているか否か及び欠陥が生じている位置を解析してもよい。この場合、検査装置1は、解析回路16を備えていなくともよい。
【0094】
また、上述した説明では、半導体レーザチップ10が検査装置1の検査対象となる例について説明している。しかしながら、半導体レーザチップ10以外の任意の半導体素子が、検査装置1の検査対象となってもよい。任意の半導体素子の一例として、例えば、任意の集積回路(例えば、IC(Integrated Circuit)やLSI(Large Scale Integration)等)や任意のダイオードや任意のトランジスタ等があげられる。この場合であっても、上述した各種効果を好適に享受することができる。
【0095】
また、本発明は、請求の範囲及び明細書全体から読み取るこのできる発明の要旨又は思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う検査装置及び方法もまた本発明の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0096】
1 検査装置
10 半導体レーザチップ
104 導波路
11 コンフォーカルレーザ顕微鏡
12 ステージ
13 駆動回路
14 誘電率測定回路
15 ディスプレイ
16 解析回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象となる半導体素子に対して、当該半導体素子を駆動させるための駆動電流を供給する駆動手段と、
前記半導体素子の内部の複数の微小領域に対して、当該微小領域の電子の挙動状態を変化させるためのエネルギーを、微小領域毎に順に付与する付与手段と、
前記付与手段によって各微小領域に前記エネルギーが付与される都度、前記半導体素子の誘電率を検出する検出手段と
を備えることを特徴とする検査装置。
【請求項2】
前記半導体素子は、半導体レーザチップを含み、
前記供給手段は、前記半導体レーザチップによるレーザ発振が開始しないように、前記半導体レーザチップの閾値電流値未満の電流値を有する前記駆動電流を供給する
ことを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記付与手段は、前記半導体素子の内部の各微小領域に対して前記半導体素子の外部からレーザ光を照射することで、当該微小領域の電子の挙動状態を変化させるための前記エネルギーを付与する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記供給手段が供給する前記駆動電流は、時間と共に変動する所定電流値に対して周期的に大きさと正負が切り替わる電流値を有する交流電流であり、
前記照射手段は、固定パワーを有する前記レーザ光を照射する
ことを特徴とする請求項3に記載の検査装置。
【請求項5】
前記供給手段が供給する前記駆動電流は、固定された所定電流値に対して周期的に大きさと正負が切り替わる電流値を有する交流電流であり、
前記照射手段は、固定パワーを有する前記レーザ光を照射する
ことを特徴とする請求項3に記載の検査装置。
【請求項6】
前記供給手段が供給する前記駆動電流は、直流電流であり、
前記照射手段は、時間と共に変動する所定パワーに対して周期的に大きさと正負が切り替わる交流パワーを有する前記レーザ光を照射する
ことを特徴とする請求項3に記載の検査装置。
【請求項7】
前記供給手段が供給する前記駆動電流は、直流電流であり、
前記照射手段は、固定された所定パワーに対して周期的に大きさと正負が切り替わる交流パワーを有する前記レーザ光を照射する
ことを特徴とする請求項3に記載の検査装置。
【請求項8】
前記供給手段が供給する前記駆動電流は、(i)固定された所定電流値に対して周期的に大きさと正負が切り替わる電流値を有する交流電流、又は(ii)時間と共に変動する所定電流値に対して周期的に大きさと正負が切り替わる電流値を有する交流電流であり、
前記照射手段は、(i)固定された所定パワーに対して周期的に大きさと正負が切り替わる交流パワーを有する前記レーザ光、又は(ii)時間と共に変動する所定パワーに対して周期的に大きさと正負が切り替わる交流パワーを有する前記レーザ光を照射する
ことを特徴とする請求項3に記載の検査装置。
【請求項9】
前記検出手段によって検出された前記誘電率と当該誘電率が検出された微小領域の位置とを対応付けて表示する表示手段を更に備える
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項10】
他の微小領域に前記エネルギーが付与された場合に検出される前記誘電率と比較して、前記エネルギーが付与された場合に異なる誘電率が検出された前記微小領域を、欠陥が発生している前記微小領域として特定する特定手段を更に備える
ことを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項11】
検査対象となる半導体素子に対して、当該半導体素子を駆動させるための駆動電流を供給する駆動工程と、
前記半導体素子の内部の複数の微小領域に対して、当該微小領域の電子の挙動状態を変化させるためのエネルギーを、微小領域毎に順に付与する付与工程と、
前記付与手段によって各微小領域に前記エネルギーが付与される都度、前記半導体素子の誘電率を検出する検出工程と
を備えることを特徴とする検査方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−4567(P2013−4567A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131152(P2011−131152)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】