説明

検査装置

【課題】熱収縮性フィルムで包装された容器下部の状態を検査する検査装置を提供する。
【解決手段】本発明の検査装置は、熱収縮性フィルムで包装された容器の下部に対して光ビームを投光し、容器の下部で反射した光を受光する検出器5と、検出器の出力に基づいて容器の下部における熱収縮性フィルムの有無を判定する判定器6と、を備える。検出器は、複数のセンサを含み、容器の下部のほぼ同一高さに位置する複数の箇所における熱収縮性フィルムの有無を検出するものでありうる。また、検出器により検出される容器の下部は、前記熱収縮性フィルムが包装されるべき高さ位置の範囲の下限高さ位置より高く設定されることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱収縮性フィルムで包装された容器の包装状態を検査する検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ビールが充填された瓶容器、清涼飲料水等が充填されたボトル等の飲料容器の外周に筒状の熱収縮性フィルムをかぶせて、それを収縮させて包装することが広く行われている。熱収縮性フィルムの収縮は、シュリンクトンネル内で行われる。シュリンクトンネル内は80℃前後と高温に維持される。シュリンクトンネル内の温度条件の変動等によって熱収縮性フィルムの収縮状況が変動し、熱収縮性フィルムによる包装が不良な状態の飲料容器が発生することがある。
【0003】
シュリンク包装を終了した飲料容器は、コンベアによって検査セクションへと搬送される。その搬送途上において、検査員が目視によって容器の包装状態を検査し、包装状態が不良な飲料容器を除去していた。
【特許文献1】特開2000−326934号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図2に熱収縮性フィルムによる包装状態が不良である飲料容器をビール瓶で示す。(a)はビール瓶側面の頂部から下端部にわたって熱収縮性フィルムで均一に覆われた包装状態が正常なビール瓶である。(b)は熱収縮性フィルム4の上端部で折れ込みが発生したビール瓶であり、(c)は熱収縮性フィルム4の上端部で角出しが発生したビール瓶である。(d)は熱収縮性フィルムが上部の過収縮等によって上方にずれあがり、ビール瓶の下部、すなわち下端部近傍の側面に熱収縮性フィルムで覆われない領域が生じているいわゆる裾あがりが発生しているビール瓶である。(e)は熱収縮性フィルムの下部側面に皺が発生したビール瓶である。
【0005】
(b)〜(e)に示される不良な包装状態のうち、(b)、(c)及び(e)の状態は不良箇所が形状、構造の違いとして確認できるので、検査員が目視でも不良な包装状態を検査することが可能である。しかしながら、(d)に示される裾上がりの状態は、熱収縮性フィルムが容器に密着しているため形状の違いとしては容易に認識できず、また、裾上がり部分の上下で色の違いもほとんどないため、検査員が裾上がりの状態を目視で検査することは困難であった。
【0006】
本発明は、熱収縮性フィルムで包装された容器下部の状態を検査する検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の検査装置は、熱収縮性フィルムで包装された容器の下部に対して光ビームを投光し、容器の下部で反射した光を受光する検出器と、検出器の出力に基づいて容器の下部における熱収縮性フィルムの有無を判定する判定器と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の実施形態によれば、検出器は、複数のセンサを含み、容器の下部のほぼ同一高さに位置する複数の箇所における熱収縮性フィルムの有無を検出するものでありうる。また、検出器により検出される容器の下部は、前記熱収縮性フィルムが包装されるべき高さ位置の範囲の下限高さ位置より高く設定されることが好ましい。
【0009】
本発明の実施形態によれば、容器は、複数のセンサにより計測されるとき、容器を搬送するコンベアに対して静止しており、複数のセンサは、コンベアの進行方向に沿って間隔をおいてコンベアの両側に配置されうる。または、容器は、複数のセンサにより計測されるとき、容器を搬送するコンベアによって回転されており、複数のセンサは、コンベアの進行方向に沿って間隔をおいてコンベアの片側に配置されうる。
【0010】
本発明の実施形態によれば、判定器が容器の下部に熱収縮性フィルムが無いと判定したときに、エラー処理を実行するユニットをさらに備えることができ、当該ユニットは、下部に前記熱収縮性フィルムが無いと判定された容器をコンベアの搬送経路外に排斥する排斥器を含むことが好ましい。
【0011】
本発明の実施形態によれば、容器は、飲料が充填された容器でありうる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、熱収縮性フィルムで包装された容器下部の状態を検査する検査装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の検査装置の検査対象である熱収縮性フィルムで包装された容器として、ビール等の瓶容器、清涼飲料水等が充填されたPETボトル等の飲料容器等が挙げられる。実施形態では、熱収縮性フィルムで包装されたビール瓶3を検査する場合について説明する。
【0014】
ビールが充填されたビール瓶3は、駆動部により駆動されるコンベア1によって図1の右方向に搬送される。ビール瓶3は、シュリンクトンネル2の上流側で熱収縮性フィルム4をかぶせられる。熱収縮性フィルム4をかぶせられたビール瓶3はシュリンクトンネル2の中で例えば80℃前後の水蒸気によって加熱される。そうすると、熱収縮性フィルム4は収縮しビール瓶3に密着し、ビール瓶3が熱収縮性フィルム4で包装される。熱収縮性フィルム4としては、厚さ10〜100μmの例えばポチエチレンテレフタレート(PET)や共重合ポリエステル等の熱収縮性のポリエステルフィルムからなるものを使用することが好ましい。熱収縮性フィルム4は、片面に文字や図柄等が印刷されたフィルムを印刷面が内側になるように両端部を重ね合わせ、重ね合わせ部が接着されて筒状に形成され得る。
【0015】
熱収縮性フィルム4で正常に包装されたビール瓶3では、図3の(a)に示すように、熱収縮性フィルム4がビール瓶の側面下端部まで覆っている。裾上がりが発生したビール瓶3では、図3の(b)に示すように、熱収縮性フィルム4の下端がビール瓶の側面下端部より上方に引き上げられ、ビール瓶の下部、すなわち下端部近傍の側面が熱収縮性フィルム4で覆われていない状態となっている。本実施形態では、正常に包装されたビール瓶3では熱収縮性フィルム4が覆っているはずのビール瓶下部すなわち側面下端部近傍において、熱収縮性フィルム4の有無を検出することによって、裾上がり状態が発生しているか否かを判定する。熱収縮性フィルム4の有無を検出する検出器として、ビール瓶に対して光ビームを投光し、ビール瓶で反射した光を受光するセンサを使用する。図3の(a)に示されるように、熱収縮性フィルム4で正常に包装されたビール瓶3では、センサ5から投光された光ビームは熱収縮性フィルム4の表面で反射され、その反射光をセンサ5は受光する。一方、熱収縮性フィルム4が裾上がり状態で包装されたビール瓶3では、光ビームが投光されたビール瓶の表面に熱収縮性フィルム4が存在せず、光ビームはビール瓶を透過するので、センサ5は反射光をほとんど受光しない。したがって、センサ5による反射光の受光量を測定することで、光ビームを投光した箇所に熱収縮性フィルムが有るか否かすなわち裾上がり状態にあるか否かを判定することができる。光ビームが投光される箇所の高さ位置は、熱収縮性フィルム4が包装されるべき高さ位置の範囲の下限高さ位置より高い位置、例えば瓶底より5mm上の位置に設定される。
【0016】
図3の(b)に示した裾上がりの状態は、裾上がりが瓶の周面にわたって均一に生じている状態である。しかし、熱収縮性フィルム4が例えば瓶3の上部で不均一に過収縮すると、裾上がりが瓶の周面にわたって均一には生じないことがある。その場合、熱収縮性フィルムの下端高さ位置は瓶の周面部位によって変化し、図4に示すように、斜めの裾上がりが生じる。このような斜めの裾上がり状態を検出するには、ビール瓶下部近傍の少なくとも2箇所において熱収縮性フィルム4の有無の状態を検出する必要があり、複数のセンサ5a,5bによって熱収縮性フィルムの有無を検出することが好ましい。
【0017】
複数のセンサ5a,5bを使用するとき、ビール瓶3がそれを搬送するコンベアに対して静止しているか回転しているかによって、複数のセンサの配置が異なる。
【0018】
以下、図1、図6を用いてセンサの配置に関する2つの例について説明する。
【0019】
図1に第1のセンサ配置例を示す。この配置例において、熱収縮性フィルム4で包装されたビール瓶3に対して投光された光ビームの反射光を複数のセンサ5a,5bによって計測されるとき、ビール瓶3はコンベア1に対して静止している。2つのセンサ5a,5bは、コンベア1の進行方向(図1の右方向)に沿って間隔をおいてコンベア1の両側に、コンベア1の進行方向に対し直交方向に光ビームを投光するように配置されている。ビール瓶3はコンベア1に対して静止しているので、センサ5aとセンサ5bとは、ビール瓶3の周面のほぼ同一高さに位置し、互いに略180度ずれた2箇所の裾上がりの状況を検出する。すなわち、図4に示した斜め裾上がり状態をも検出することができる。裾上がり状態をより確実に検出するために、光ビームの投光方向を互いに変化させ、センサの設置台数を3台以上に増加させることも可能である。複数のセンサをコンベアの進行方向に沿って間隔をおいて配置するのは、センサから投光される光ビームが相互に干渉しないように設けるためである。
【0020】
図5に、判定器6がビール瓶の包装状態を判定するフローを示す。ステップ1において、判定器6は、センサ5a,5bの出力である反射光受光結果を取得する。ステップ2において、判定器6は、センサ5aの受光量が予め定められたしきい値より大きいか否かを判断する。しきい値は、熱収縮性フィルムに対する反射光の受光量より小さく、熱収縮性フィルムが存在しないガラスに対する反射光の受光量より大きい値に設定する。センサ5aの受光量がしきい値より大きくないと判断されれば、判定器6は、センサ5aによる投光部に熱収縮性フィルムは無く、ビール瓶の包装状態は、裾上がりが発生している不良状態であると判定する。ステップ2において、センサ5aの受光量がしきい値より大きいと判断されれば、ステップ3に進む。ステップ3において、判定器6は、センサ5bの受光量がしきい値より大きいか否かを判断する。センサ5bの受光量がしきい値より大きくないと判断されれば、判定器6は、センサ5bによる投光部に熱収縮性フィルムは無く、ビール瓶の包装状態は、裾上がりが発生している不良な包装状態であると判定する。センサ5bの受光量がしきい値より大きいと判断されれば、判定器6は、ビール瓶の包装状態は、センサ5a,5bの投光部に熱収縮性フィルムが有り、裾上がりが発生していない正常な包装状態であると判定する。
【0021】
図6に第2のセンサ配置例を示す。この配置例では、シュリンクトンネル2を出た熱収縮性フィルムで包装されたビール瓶3は、一対のコンベア1b,1cに乗り移る。コンベア1b,1cはともにビール瓶3を図6上で右方向に搬送するよう進行するが、コンベア1cの進行速度がコンベア1bの進行速度より大きいように設けられている。ビール瓶3は、進行速度の異なるコンベア1b、1cに跨っているので、2つのコンベア1b、1cの速度差によって回転させられた状態で搬送される。この場合、図6に示すとおり、ビール瓶3は上方からみた状態で反時計回りに回転する。この配置例において、複数のセンサ5a,5bは、コンベアの進行方向に沿って間隔をおいてコンベアの片側、具体的には、図6上でコンベア1bの下側に配置されている。第1の配置例とは異なり、ビール瓶3が回転しながら搬送されるので、互いに間隔を有するセンサ5a,5bは、コンベアに対して同じ側に配置されていてもビール瓶3の異なった箇所の包装状態を検出しうる。この配置例においても、裾上がり状態をより確実に検出するように、ビール瓶3の回転速度、センサ相互間の間隔に基づいて、センサを3つ以上に設けることも可能である。
【0022】
判定器6が裾上がり状態のビール瓶が存在すると判定器6が判定するとき、そのことを検査員に知らせる警報器9a又は表示器9bを設置することができる。
【0023】
また、裾上がり状態のビール瓶が存在すると判定器6が判定したときに、エラー処理を実行するユニットをさらに設けることができる。エラー処理を実行するユニットは、該当するビール瓶3を正規の搬送経路から排斥させる排斥器7を含むことができる。図1では、排斥器7は、裾上がり状態のビール瓶3を搬送経路外の分岐コンベア8に押し出して回収している。しかし、分岐コンベア8を設けることなく、コンベア1上から裾上がり状態のビール瓶3をコンベア1の側方下部に配置された裾上がりビール瓶回収箱に押し出して回収するようにしてもよい。エラー処理を実行するユニットは、判定器6が、裾上がり状態のビール瓶が存在すると判定器6が判定するときに、コンベア1を駆動する駆動部に指令を送り、コンベア1の駆動を停止させるような機構であってもよい。検査員は、コンベア1の停止を発見すると、裾上がり状態のビール瓶3をコンベア上から除き、次いでコンベア1の駆動を再起動させればよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】検査装置の構成の一例を示す図。
【図2】熱収縮性フィルムで包装された容器の様々な包装状態を示す図。
【図3】裾上がり状態を検査する手法の原理を示す図。
【図4】斜め裾上がり状態を示す図。
【図5】判定器の判定フローを示す図。
【図6】検査装置の構成の他例を示す図。
【符号の説明】
【0025】
1,1a〜1d:コンベア、2:シュリンクトンネル、3:ビール瓶(容器)、
4:熱収縮性フィルム、5a,5b:センサ(検出器)、6:判定器、7:排斥器、
8:分岐コンベア、9a:警報器、9b:表示器9b

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱収縮性フィルムで包装された容器の下部に対して光ビームを投光し、前記容器の下部で反射した光を受光する検出器と、
前記検出器の出力に基づいて前記容器の下部における前記熱収縮性フィルムの有無を判定する判定器と、
を備えることを特徴とする検査装置。
【請求項2】
前記検出器は、複数のセンサを含み、前記容器の下部のほぼ同一高さに位置する複数の箇所における前記熱収縮性フィルムの有無を検出することを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記検出器により検出される前記容器の下部は、前記熱収縮性フィルムが包装されるべき高さ位置の範囲の下限高さ位置より高く設定されることを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項4】
前記容器は、前記複数のセンサにより計測されるとき、前記容器を搬送するコンベアに対して静止しており、
前記複数のセンサは、前記コンベアの進行方向に沿って間隔をおいて前記コンベアの両側に配置されることを特徴とする請求項2に記載の検査装置。
【請求項5】
前記容器は、前記複数のセンサにより計測されるとき、前記容器を搬送するコンベアによって回転されており、
前記複数のセンサは、前記コンベアの進行方向に沿って間隔をおいて前記コンベアの片側に配置されることを特徴とする請求項2に記載の検査装置。
【請求項6】
前記判定器が前記容器の下部に前記熱収縮性フィルムが無いと判定したときに、エラー処理を実行するユニットをさらに備えることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の検査装置。
【請求項7】
前記ユニットは、下部に前記熱収縮性フィルムが無いと判定された容器を前記コンベアの搬送経路外に排斥する排斥器を含むことを特徴とする請求項6に記載の検査装置。
【請求項8】
前記容器は、飲料が充填された容器であることを特徴とする請求項1乃至請求項7に記載の検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−213906(P2008−213906A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−56359(P2007−56359)
【出願日】平成19年3月6日(2007.3.6)
【出願人】(000000055)アサヒビール株式会社 (535)