説明

検査領域の領域設定データの作成方法および基板外観検査装置

【課題】基板設計データを用いなくとも、各部品の検査領域の領域設定データを自動作成できるようにする。
【解決手段】部品実装前の基板のモデルを撮像し(S1)、生成された画像からランド、シルク印刷パターン、配線パターンをそれぞれ個別に検出して2値画像を生成する(S2〜S3)。つぎに、各2値画像の対応関係に基づき、シルク印刷パターンおよび配線パターンが介在していないランドの集合が同じグループに含まれるように、各ランドをグループ分けする(S5〜S8)。つぎに、部品種毎の標準ランドパターンを1または複数のグループに対応づけて照合することにより、基板上の各部品につき、それぞれ部品種、部品対応領域、部品の向きを特定し(S9)、特定された部品種の標準検査データを、特定された部品対応領域および部品の向きに合わせてあてはめ、検査領域を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、部品実装基板を撮像手段により撮像することにより生成された画像を用いて、基板上の各部品の実装状態を自動検査する技術分野に属する。特にこの発明は、この種の自動検査に用いられる検査データを、コンピュータを用いて作成する方法およびこの方法が適用された基板外観検査に関する。
【背景技術】
【0002】
基板外観検査では、検査対象の基板の各部品について、部品の有無、位置および姿勢の適否、はんだ付け状態の適否など、種々の検査を実施する。この種の検査を自動で行うには、あらかじめ各部品の位置、検査領域の設定データ、被検査部位の検出に用いるパラメータ(たとえば2値化しきい値)、判定用のしきい値などの検査データを登録する必要がある。
【0003】
上記の検査データを自動的に作成する従来の方法として、CADデータや製造工程で使用されるデータ(マウントデータやガーバデータなど)を用いたものが知られている。たとえば、下記の特許文献1には、基板にチップを搭載するのに使用されるマウントデータと、各チップの外観形状を表すチップデータとを用いて、カメラの視野の位置およびその視野におけるチェックエリア(検査領域)の位置を求めることが記載されている。
【0004】
また特許文献2には、マスク開口データ(ガーバデータ)から印刷により形成される要素半田印刷部(クリームはんだの印刷部位)の形状および位置を表す情報を取得するとともに、この情報が表す幾何学的範囲を、部品の実装データや各種部品の部品データライブラリと対応づけることが記載されている。
【0005】
【特許文献1】特許第2940213号公報
【特許文献2】特開2007−218925号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年の生産現場では、EMS(Electronics Manufacture Services)業者に基板の実装を外注するケースが増えているが、このような外注先の業者は、CADデータのような機密性の高い情報の提供を受けられないケースが多く、検査データを作成するのが困難な状況になっている。
【0007】
この発明は上記の点に着目してなされたもので、CADデータ等の基板設計データを用いなくとも、各部品の検査領域の領域設定データを自動作成できるようにすることを、課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明による検査領域の領域設定データの作成方法は、部品実装基板を対象にした自動外観検査において画像中の各部品に対する検査領域の設定に用いられる領域設定データを、コンピュータにより作成するもので、以下の第1〜第5のステップを実行することを特徴とする。
【0009】
第1ステップでは、複数の部品種について、それぞれ部品電極に対応するランド領域の標準配置パターンと標準の領域設定データとをコンピュータのメモリに登録する。第2ステップでは、部品実装前または部品実装後のモデル基板の画像から基板上のランド領域およびシルク印刷パターンならびに配線パターンをそれぞれ個別に検出し、各検出結果を表す3種類の2値画像を生成する。
【0010】
第3ステップでは、シルク印刷パターンまたは配線パターンが介在する関係にあるランド領域の組を同じグループに分類しないことを条件として、3種類の2値画像の対応関係に基づき各ランド領域をグループ分けする。
【0011】
第4ステップでは、上記のグループ分けの終了後に、ランド領域の2値画像を部品種毎のランド領域の標準配置パターンと照合する処理を、同一グループ内のランド領域を同一の部品種に対応づけることを条件として実行することにより、基板に実装される各部品の部品種、実装範囲、および部品の向きを特定する。
【0012】
第5ステップでは、第4ステップにより特定された部品に対し、それぞれ特定された実装範囲に特定された部品の向きに基づき特定された部品種の標準の領域設定データを適用することによって、当該部品に設定する検査領域を特定し、この検査領域の設定にかかる領域設定データをコンピュータのメモリに登録する。
【0013】
上記の第2ステップにおいて、部品実装前のモデル基板の画像を処理する場合には、ランドの全範囲をランド領域として検出するのが望ましい。一方、部品実装後のモデル基板の画像を処理する場合には、ランドのはんだ付けされた範囲をランド領域として検出することになる。
【0014】
基板設計データを用いなくとも、モデル基板の画像から作成したランド領域の2値画像を、各種部品種にかかるランド領域の標準配置パターンと対応づけることができれば、基板上の各部品の部品種、実装範囲、部品の向きを特定し、その特定結果に部品種毎の標準の領域設定データを適用して検査領域を定めることが可能である。ただし、ランド領域の2値画像と標準配置パターンとを単純に照合したのでは、同じ部品に対応づけるべき複数のランド領域が別々の部品に対応づけられたり、それぞれ異なる部品に対応づけるべき複数のランド領域が同一の部品に対応づけられるなど、ランド領域と部品との対応づけに誤りが生じる可能性がある。
【0015】
そこで、この発明による方法では、シルク印刷パターンまたは配線パターンが介在する関係にあるランド領域の組を同じグループに分類しないことを条件として各ランド領域をグループ分けすることにより、同じ部品に対応するランド領域のみを集めたグループを設定することが可能になる(1つの部品について複数のグループが設定されてもよい。)。また、グループ分けの後は、同一グループ内のランド領域を同一の部品種に対応づけることを条件として、各種部品種の標準の領域設定データとの照合を行うことにより、ランド領域と部品との対応づけの誤りを防止でき、各部品の部品種、実装範囲、および部品の向きを精度良く特定することが可能になる。
【0016】
上記方法の好ましい一態様では、第3ステップにおいて、シルク印刷パターンに囲まれた状態で配置されているランド領域により1つのグループを設定する。シルク印刷パターンにより囲まれた領域は、1つの部品の実装範囲を表すから、同じ部品に対応するランド領域によるグループを容易に特定することが可能になる。
【0017】
他の好ましい態様では、第3ステップにおいて、面積および形状が整合する複数のランド領域がシルク印刷パターンおよび配線パターンのいずれも介在させずに一定の方向に沿って並んでいる複数のランド領域を、同一のグループに分類する。この方法によれば、部品パッケージの一辺に沿って配列される複数のリードに対応するランド領域の集合を、同じグループに含めることが可能になる。
【0018】
他の好ましい領域では、第3ステップにおいて、面積および形状が整合し、シルク印刷パターンおよび配線パターンのいずれも介在させずに配置されている複数のランド領域を、同一のグループに分類する。この方法によれば、チップ部品やトランジスタなど、電極の数が比較的少ない部品に対応するランド領域の集合を、同じグループに含めることが可能になる。
【0019】
つぎに、他の好ましい態様では、第4ステップにおいて、1つの部品種の標準パターンを1または複数のグループのランド領域の分布パターンに対応づけて、ランド領域の数および配置の一致度を求める。このようにすれば、第3ステップのグループ分けの段階で、1つの部品に対応するランド領域がすべて同じグループに分類されている場合でも、複数のグループに分割されて分類されている場合でも、これらのグループが該当部品種に正しく対応づけられたときの一致度を他の場合より高くすることができ、部品の特定を精度良く行うことができる。
【0020】
上記の領域設定データの作成方法は、基板を撮像するための撮像手段と、この撮像手段が検査対象の基板を撮像することにより生成された検査対象画像中の各部品に設定する検査領域の領域設定データを作成する領域設定データ作成手段と、作成された領域設定データを保存するためのメモリと、メモリに登録された領域設定データに基づき検査対象画像に検査領域を設定して、各検査領域内の画像を処理することにより基板上の各部品の実装状態を判別する検査実行手段と、検査実行手段による判別結果を出力する出力手段とを具備する基板外観検査装置に適用することができる。
【0021】
上記の検査装置では、メモリには、複数の部品種について、それぞれ部品電極に対応するランド領域の標準配置パターンと検査領域の標準の領域設定データを含む標準検査データとが登録される。また領域設定データ作成手段には、以下の2値画像生成手段、グルーピング手段、部品特定手段、および登録手段が設けられる。
【0022】
2値画像生成手段は、部品実装前または部品実装後のモデル基板の画像から基板上のランド領域およびシルク印刷パターンならびに配線パターンをそれぞれ個別に検出し、各検出結果を表す3種類の2値画像を生成する。グルーピング手段は、シルク印刷パターンまたは配線パターンが介在する関係にあるランド領域の組を同じグループに分類しないことを条件として、3種類の2値画像の対応関係に基づき各ランド領域をグループ分けする。部品特定手段は、グループ分けの終了後に、ランド領域の2値画像を部品種毎のランド領域の標準配置パターンと照合する処理を、同一グループ内のランド領域を同一の部品種に対応づけることを条件として実行することにより、基板に実装される各部品の部品種、実装範囲、および部品の向きを特定する。登録手段は、部品特定手段により特定された各部品に対し、それぞれ特定された実装範囲に特定された部品の方向に基づき特定された部品種の標準の領域設定データを適用することによって、当該部品に設定する検査領域を特定し、この検査領域の設定にかかる領域設定データをメモリに登録する。
【発明の効果】
【0023】
上記の領域設定データの作成方法および基板外観検査装置によれば、モデル基板の画像から生成された3種類の2値画像の対応関係と部品種毎のランド領域の標準配置パターンとを用いて、画像中のランド領域の分布パターンから各部品の部品種、実装範囲、および部品の向きを正しく特定することが可能になる。よって、基板設計データを用いなくとも、各部品に、それぞれ該当部品種の標準の領域設定データを正しく対応づけて、検査領域を定めることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
(1)装置構成
図1は、この発明が適用された基板外観検査装置の電気的構成を示す。
この基板外観検査装置(以下、単に「検査装置」という。)は、はんだ付け後のプリント基板を対象に、各部品の位置および姿勢、はんだ付け状態などの適否を検査するためのもので、カメラ1、照明装置2、Xステージ部3、Yステージ部4、およびコンピュータによる制御部5を含む制御処理装置50などにより構成される。このほか、図1には示していないが、この検査装置には、検査対象の基板を支持するための基板支持テーブルや、基板の搬出入機構などが設けられる。
【0025】
カメラ1および照明装置2は、「カラーハイライト方式」と呼ばれる光学系を構成するものである。カメラ1は、カラー静止画像を生成するタイプのもので、基板の上方に受光面を真下に向けて配置される。照明装置2は、カメラ1の光軸を囲む各方位からそれぞれ赤、緑、青の各色彩光を異なる入射角をもって照射する。
【0026】
Xステージ部3は、カメラ1および照明装置2を基板支持テーブルの上方で支持し、Yステージ部4は基板支持テーブルを支持する。いずれのステージ部3,4とも、その支持対象を、一軸に沿って移動させることが可能である。また一方のステージ部による移動の方向は、他方のステージ部による移動の方向に直交する関係にある。
【0027】
制御処理装置50は、各ステージ部3,4やカメラ1および照明装置2の動作を制御して検査のためのカラー画像を生成し、各種検査を実行するもので、制御部50のほか、メモリ6、画像入力部7、撮像制御部8、照明制御部9、Xステージ駆動部10,Yステージ駆動部11、入力部12、表示部13、通信用インターフェース14などが含まれる。
【0028】
画像入力部7には、カメラ1から出力されたR,G,Bの各画像信号を受け付けるインターフェース回路や、これらの画像信号をディジタル変換するA/D変換回路などが含まれる。撮像制御部8は、カメラ1の撮像タイミングを制御し、照明制御部9は、照明装置2の光量、発光色、点灯タイミングなどを制御する。
【0029】
入力部12は、ティーチングの際の設定操作などを行うためのもので、専用の操作ボタン、またはマウスやキーボードにより構成される。表示部13は、検査用の画像や検査結果などを表示するためのもので、液晶パネルなどにより構成される。通信用インターフェース14は、検査結果を外部の装置に送信する目的に使用される。
【0030】
メモリ6は、ハードディスク等の大容量の記憶装置であって、制御および検査に関するプログラムのほか、検査データファイル61、ランドパターン登録部62、標準検査データ登録部63などが格納される。
【0031】
検査データファイル61には、画像中の各部品に検査領域を設定するための設定データ(各種領域の位置や大きさを示すデータ)のほか、被検査部位の色彩を検出するための2値化しきい値、被検査部位を計測して得た特徴量の適否を判定するための判定用のしきい値などが登録される。
【0032】
ランドパターン登録部62には、複数の部品種のランドの標準の配置パターン(以下、「標準ランドパターン」という。)が登録されており、標準検査データ登録部63には、各部品種の標準検査データが登録されている。これらのデータベース62,63は、検査データファイル61に登録する検査データの作成に用いられるもので、いずれの登録情報も部品種の識別情報(部品種名)に対応づけられている。
【0033】
制御部5は、メモリ6内のプログラムや検査データファイル61に基づき、カメラ1から入力した画像を用いて、部品毎に検査のための画像処理や判定処理を実行し、最終的に各検査結果をまとめて、基板が良品基板であるか不良基板であるかを判定する。各検査の結果は基板毎にまとめられて表示部13に表示されるほか、通信用インターフェース14を介して図示しない外部機器に出力される。
【0034】
(2)検査データの作成処理
上記検査装置では、検査に先立ち、検査対象の基板のモデル(以下、「モデル基板」という。)の画像(以下、「モデル画像」という。)と、ランドパターン登録部62および標準検査データ登録部63の登録情報とを用いて、検査対象の基板の検査データを作成して、検査データファイル61に登録するようにしている。検査データの作成および登録に関する一連の処理も、メモリ6に格納されたプログラムにより動作する制御部5が実行するものである。
【0035】
図2は、検査データの自動作成処理に関する概略フローチャートである。以下、この図2の各ステップ(S1〜S11)に沿って、制御部5により実行される一連の処理を説明する。
【0036】
(a)モデル基板の撮像(ステップS1)
この実施例では、1枚のモデル基板を、クリームはんだの塗布、部品実装、はんだ付けの各工程を実行する前および各工程を実行した後の2回にわたって、それぞれ撮像することにより、部品実装前の基板のモデル画像と、部品実装後の基板のモデル画像とを生成する。以下、前者を「実装前モデル画像」、後者を「実装後モデル画像」という。
これら2枚のモデル画像のうち、検査データの作成処理において主要な役割を果たすのは、実装前モデル画像である。
【0037】
図3は、実装前モデル画像の一例を示す。この図では、ランドの色彩を塗りパターンで表現し、シルク印刷パターンを太黒線で表し、配線パターンを塗りパターン入りの線または一本線で表している。実際のランドは黄土色に近く、シルク印刷パターンは白色に近い。また配線パターンは、基板のレジストの色彩(緑色)に近い色彩(深緑色)である。
【0038】
各ランドの形成位置は、実装される部品の位置および向きに応じて決定される。シルク印刷パターンは、1つの部品の実装範囲を取り囲む枠状のパターンと、隣接する部品間の境界線を表す線状のパターンとに大別される。塗りパターンで表した配線パターンは、主要な信号経路を形成し、一本線の配線パターンは、隣接するランド間を接続するものである。
【0039】
なお、図3中の領域P,Qは、後記する図13の例示に対応する。また、領域Sは、図16および図18の例示に対応し、領域Tは、図11および図19の例示に対応する。
【0040】
この実施例では、上記の実装前モデル画像から、ランド、シルク印刷パターン、配線パターンをそれぞれ個別に検出し、それぞれの検出結果を示す2値画像を生成する。以下、各2値画像を、「ランドパターン画像」「シルクパターン画像」「配線パターン画像」と呼ぶことにする。
【0041】
(b)ランドパターン画像の生成・およびランドの認識(ステップS2)
ステップS2では、実装前モデル画像を、ランドの色彩を有する画素が「1」、その他の色彩の画素が「0」となるように2値化し、2値化後の画像にノイズ除去処理等を施すことによって、図4に示すようなランドパターン画像を生成する。
【0042】
さらにステップS2では、上記のランドパターン画像の値が「1」の画素を対象に、ラベリング処理を行うことによって、ランドパターン画像に含まれる各ランドを個別に認識し、それぞれに識別番号を設定する。また各ランドの代表点の座標(たとえばランドに外接矩形を設定し、その各頂点を代表点とする。)を計測し、これらの座標と識別番号とを対応づけて作業用メモリ(RAM)内に保存する。これらの保存データは、以後、処理対象のランドを特定したり、グループに入る対象のランドを検索する処理(図10,12)などにおいて使用される。
【0043】
なお、ラベリング処理とは、データが同一で連続する関係にある画素に同一のラベルを設定することにより、着目するデータを有する画素群を、それぞれ個別の領域として検出するものである。
【0044】
(c)シルクパターン画像・配線パターン画像の生成(ステップS3,S4)
つぎに、ステップS3では、実装前モデル画像を、シルク印刷パターンの色彩を有する画素が「1」になり、その他の色彩の画素が「0」になるように2値化を行い、ノイズの除去や直線パターンを補完する処理などを実行することによって、図5に示すようなシルクパターン画像を生成する。
【0045】
つぎにステップS4では、実装前モデル画像を、配線パターンの色彩を有する画素が「1」になり、その他の色彩の画素が「0」になるように2値化を行い、ノイズの除去や直線パターンを補完する処理などを実行する。なお、この場合のノイズ除去処理では、配線パターンの色彩がレジストの色彩に近く、レジストの一部がノイズとして検出される可能性がある点を考慮して、2値化により検出された領域のうち直線状のパターンでないものをノイズとして除去する。
【0046】
(d)ランドのグルーピングに関する処理(ステップS5〜S8)
これらのステップでは、ステップS2で生成されたランドパターン画像をベースに、シルクパターン画像や配線パターン画像との対応関係に基づき、各ランドをグループ分けする。この一連のグループ分けでは、シルク印刷パターンに挟まれたり、配線パターンにより接続されているランドが同じグループに含まれないようにすることを条件とする。シルク印刷パターンは、1つ1つの部品の実装範囲の境界を表すものであるから、同じ部品に対応するランド間にシルク印刷パターンが介在することはあり得ず、また同じ部品に対応するランドが配線パターンを介して短絡することもあり得ないからである。
【0047】
さらに、この実施例では、グルーピング処理の過程で、設定されたグループ(以下、「ランドグループ」という。)に対応する部品種を推定し、その推定結果に基づき各ランドグループを、コネクタ・トランジスタグループ、ICグループ、一般ランドグループの3種類に分類する。各ランドグループの情報は、グループの識別番号に、グループの種別を示す情報と、グループの構成要素のランドの識別番号とを対応づけたものとなる。
【0048】
図6は、図4のランドパターン画像を対象にグルーピング処理を実行した結果を示す。
この図では、相互に線種の異なる矩形枠や塗りパターンを用いて、各グループとランドとの関係を表している。
【0049】
図6の例によれば、ICグループには、幅狭形状のランドをその幅方向に沿って並べた配列が2組以上含まれている。コネクタ・トランジスタグループや一般ランドグループでは、同じ形状のランドを複数含むタイプのものが多いが、1個のランドのみで形成されたグループも存在する。
【0050】
以下、図2のステップS5〜S8について、それぞれ詳細なフローチャートや説明図を用いて説明する。
【0051】
(d)−1 シルク包含領域に基づくランドのグルーピング(ステップS5)
この処理は、シルクパターン画像を用いて、シルク印刷パターンにより囲まれて独立している領域(これを「シルク包含領域」という。)を検出し、シルク包含領域毎にランドグループを設定するもので、図7に詳細な手順を、図8に具体例を、それぞれ示してある。
【0052】
図7,8を参照して説明すると、まずシルクパターン画像の背景画素(シルク印刷パターンの色彩を持たない画素、すなわち値が「0」の画素である。)を対象に、ラベリング処理を実行する(ステップ501)。これにより、シルク印刷パターンによって周囲から分断された状態にある領域(図8のR1〜R13)が検出される。また、領域R1〜R13以外の場所にある背景画素は、いずれかの位置で連続した状態になっているため、これらの背景画素の集合が1つの領域R14として検出される。
【0053】
この実施例では、上記の処理結果を利用して、ラベリング処理により検出された領域のうちで最も面積が大きい領域R14を除外し、残りの領域R1〜R13をシルク包含領域として特定する(ステップ502,図8の(2))。この後は、特定されたシルク包含領域R1〜R13をランドパターン画像に対応づけて(ステップ503)、各シルク包含領域R1〜R13に順に着目し(ステップ504)、着目領域に含まれるランドを検出して1つのランドグループを設定する(ステップ505,506)。また、ランドの数が2個以下のグループを一般ランドグループとし、ランドの数が3個以上のグループをコネクタ・トランジスタグループとする(ステップ507,508,509)。
【0054】
図8(C)の例によれば、シルク包含領域R1〜R13のうち、領域R6を除く各領域には、それぞれランドが含まれているので、これらの領域に対して、それぞれランドグループが形成される。そのうち領域R1,R3,R12がコネクタ・トランジスタグループとして設定され、残りの領域は一般ランドグループとして設定される。
【0055】
(d)−2シルク包含領域外のランドの振り分け(ステップS6)
この処理では、シルク包含領域の外側に位置するランドを対象に、各ランドを、リード部品用の電極(リード)を接続するためのランド(以下、「リード用ランド」という。)と、リード部品以外の部品の電極を接続するためのランド(以下、「一般ランド」という。)とに分類する。図9は、この振り分け処理の詳細な手順を示すものである。
【0056】
図9を参照して説明すると、まず未分類のランドの1つに着目し(ステップ601)、このランドの面積および外接矩形の各辺の長さを計測する(ステップ602)。つぎに、外接矩形の長辺に対する短辺の長さの比(短辺の長さ/長辺の長さ)を求め、この比の値が所定のしきい値以上であれば着目ランドを一般ランドとして特定し、上記の比の値がしきい値より小さい場合には、着目ランドをリード用ランドとして特定する(ステップ603,604,605)。さらに、ステップ602で得た各計測値を、着目ランドの識別番号に対応づけて一時保存する(ステップ606)。以下も、未分類のランドに順に着目して(ステップ607)、同様の処理を実行する。
【0057】
(d)−3 リード用ランドのグルーピング(ステップS7)
この処理では、上記の振り分け処理によりリード用ランドとして特定されたランドを対象に、グルーピングを行う。図10はその詳細な手順を示す。
【0058】
図10を参照して説明すると、まず未分類のリード用ランドの1つに着目して、このランドを構成要素とする新規グループを設定する(ステップ701)。
【0059】
つぎに、着目ランドの幅方向(ランドに外接する矩形の短辺の方向)に沿って、当該ランドと大きさや形状が近似するランドを検索する(ステップ702)。具体的には、外接矩形の各辺や面積の計測値の着目ランドに対する差が所定の許容値以内であり、長さ方向における位置ずれが所定の許容範囲にあるランドを、検出の対象とする。ただし、検索の範囲は着目ランドから所定距離以内に限定され、シルク印刷パターンや配線パターンをまたぐ検索を実行することはできない。
【0060】
上記の条件を満たすランドが見つかると、検出したランドをグループに加え(ステップ703,704)、検索を続行する。以下も、検出対象のランドが見つかれば、そのランドを処理中のグループに加える。
【0061】
なお、上記の検索では、第1回目は、着目ランドを挟んで反転する2方向に対して検索を行い、これらの一方で検出対象のランドが見つかれば、以後はその方向に限定して検索を実行する。ただし、最初の検索で、いずれの方向でも条件を満たすランドが見つかった場合には、以下も、各方向を検索対象にする。
【0062】
ステップ701〜704のループが終了すると、この処理により設定されたグループに含まれるランドの数に応じて、グループの種別を決定する。具体的には、ランドの数が2個以上のグループをICグループとして設定し、ランドの数が1つのグループをコネクタ・トランジスタグループとして設定する(ステップ705,706,707)。
【0063】
以下も、グループが定められていないリード用ランドを対象にして、上記の処理を実行することにより、各リード用ランドを所定数のグループに分類する(701〜708)。さらにこの後は、ICグループを対象に、グループの統合処理(ステップ709)を実行することにより、1つの部品毎にICグループが形成されるようにする。
【0064】
ここで上記の統合処理については、図11を参照して説明する。
この図11の例は、図3の領域Tに設定された4つのICグループG1〜G4を統合するものである。ここでは、まず設定されたICグループの1つ(G1)に着目して、このグループG1と対向する関係にあり、同様のランド配列を有するグループを検索する(図11の(1)(2))。具体的には、着目グループのランドの配列の方向に直交する方向に沿って、当該グループとランドの数が同一で、各ランドの大きさおよび形状が近似するグループを探すことになる。なお、図11には示していないが、この場合の検索も、着目グループの配列を挟んで反転する2方向に対して行われ、検索の範囲も限定される。
【0065】
上記の処理により条件を満たすICグループG2が見つかると、さらに、グループG1,G2に対して配列方向が90度回転しているグループを検索する(図11(3))。なお、この場合の検索では、一方のグループから他方のグループに向かう方向に、検索対象方向を限定する。
【0066】
このようにして、各グループG1,G2と配列方向が直交するグループG3,G4が見つかると、検出された各グループG2,G3,G4を着目グループに統合する(図12(4))。
【0067】
なお、リード部品の実装範囲では、各リードの配列の間やランドに囲まれる範囲内にシルク印刷パターンが形成される場合がある(図3の領域T内のパターン、および図8の領域R6に対応するシルク印刷パターンを参照。)ので、ICグループを統合する際には、例外的に、シルク印刷パターンをまたぐ検索を認めるようにしている。
【0068】
また、図11の例では、統合された各配列に囲まれる範囲に、4つの未分類のランド101〜104が含まれている。これらのランド101〜104は、部品のパッケージの下面の電極を接続するためのもので、部品が実装されると、隠されて外観検査の対象にならない。この点に鑑み、この実施例では、統合されたグループに囲まれる範囲に未分類のランドが存在する場合には、そのランドを無効化して、以後の処理対象から外すようにしている。
【0069】
図11の例によれば、パッケージの4辺すべてにリードが配列された構成の部品(QFP)について、各辺のリードの配列に対応するランドグループを、1つのグループに統合することができる。また、図示していないが、パッケージの対向する2辺のみにリードが配備された構成の部品(SOP)についても、図12の(1)(2)と同様の方法により、各辺のリードの配列に対応するランドグループを特定し、これらを1つのグループに統合することができる。
【0070】
(d)−4 一般ランドのグルーピング(ステップS8)
このグルーピングは、ステップS6で一般ランドに振り分けられたランドを対象に、実行される。図12は、その詳細な手順を示す。
【0071】
図12を参照して説明すると、この処理でも、未分類の一般ランドの1つに着目して、着目ランドを構成要素とする新規のグループを設定する(ステップ801)。つぎに、着目ランドの周囲を検索して、着目ランドに隣接する一般ランドを検出する(ステップ802)。ここで検出された一般ランドは、着目ランドと同じグループに入る可能性のある候補のランドとして位置づけられる。
【0072】
この後は、大きさおよび形状が着目ランドに近似する点、および着目ランドとの間にシルク印刷パターンや配線パターンが存在しない点を、検出の条件として、候補のランドがこれらの条件を満たすかどうか確認する。そして、これらの条件を満たす候補が見つかれば、その候補のランドを処理中のグループに加える(ステップ803〜806)。
【0073】
なお、図12では煩雑化を避けるために、検索に関する処理手順をステップ802〜806のように簡易に表したが、実際には、ステップ802で検出された候補をチェックする処理のほか、これらの候補から新たにグループに加えられたランドに対しても、上記の検索条件を満たすランドがないかどうかをチェックする。
【0074】
このようにして、処理中のグループに所定数のランドが加えられて1つのグループが形成されると、図7の例と同様に、ランドの数が2以下のグループを一般ランドグループに設定し、ランドの数が3個以上のグループをコネクタ・トランジスタグループに設定する(ステップ807,808,809)。
【0075】
以下、グループが設定されていないランドがなくなるまで上記の処理を繰り返すことによって(ステップ801〜810)、一般ランドを、所定数の一般ランドグループおよびコネクタ・トランジスタグループに分類する。
【0076】
図13(1)(2)は、図3の領域P,Qに含まれるランドの1つに着目して、このランドと同じグループに属するランドを検出した例を示す。いずれの例も、左側に3種類のパターン画像を重ね合わせた模式図を示し、右側に、ランドパターン画像に対するグループ設定の結果を示す。
【0077】
図13(1)は、領域P内のランド200に着目してグループの設定を行う例である。
ランド200に着目した場合には、その左隣のランド201および下方のランド202が候補として検出されるが、ランド201は、配線パターン205により着目ランド200に接続されているので、グループに入る条件を満たさない。一方、ランド202は、配線パターンやシルク印刷パターンを挟むことなく着目ランド200の隣に配置されているので、グループに入る条件を満たしている。
【0078】
つぎに、ランド202をグループに入れることに伴い、その左隣のランド203が新たな候補となるが、このランド203は配線パターン206によりランド202に接続されているので、グループに入る条件を満たさない。よって、この場合には、ランド200およびランド203による一般ランドグループが設定される。
【0079】
図13(2)は、領域Q内のランド210に着目してグループの設定を行ったものである。このランド210については、左隣のランド211および上下のランド212,214が候補として検出されるが、ランド212,214は、ランド210との間に配線パターン215やシルク印刷パターン216,217が介在するため、グループに入る条件を満たさない。一方、ランド211は、配線パターンやシルク印刷パターンを挟むことなく着目ランド210の隣に配置されているので、グループに入る条件を満たしている。
【0080】
つぎに、ランド211をグループに入れることに伴い、その上にあるランド213が新たな候補となるが、このランド213とランド211との間にはシルク印刷パターン216が介在するので、グループに入る条件を満たさない。よって、この場合には、ランド210およびランド211による一般ランドグループが設定される。
【0081】
(e)部品特定処理(ステップS9)
この処理は、上記の各種グルーピングにより設定されたランドグループに、各部品種の標準ランドパターンを用いたマッチング処理を実行することによって、基板上の各部品の部品種、実装範囲、および部品の向きを特定し、ランドを対応づけるものである。具体的には、コネクタ・トランジスタグループを対象に図14の処理を実行した後に、ICグループおよび一般ランドグループについて、図15に示す処理をグループ毎に実行するようにしている。
【0082】
(e)−1 コネクタ・トランジスタグループ用の部品特定処理
まず、図14を参照して、コネクタ・トランジスタグループ用の部品特定処理を説明する。まず、未処理のコネクタ・トランジスタグループの1つに着目し(ステップ901)、ランドパターン登録部62からコネクタまたはトランジスタの標準ランドパターンを1つ読み出す(ステップ902)。
【0083】
つぎに、読み出した標準ランドパターンと着目グループのランドパターンとの一致度を算出する(ステップ903)。この一致度が所定のしきい値以下であれば、着目グループの隣にあるグループを含む範囲を対象に、再度、一致度を算出する。この場合の隣のグループは、対応する部品が特定されていないものに限るが、コネクタ・ランドグループに限らず、一般ランドグループまたはICグループであっても良い。
【0084】
なお、ステップ903,905とも、最初に照合対象のグループのランドの数を標準ランドパターンのランドの数とを比較し、両者が一致しない場合には、一致度を0とする。これにより、グループに全く対応していない標準パターンによるマッチングを、実質的にスキップすることができる。
【0085】
ランドの数が一致した場合には、ランドパターン画像中の照合対象のグループに対応する範囲に標準ランドパターンを対応づけ、ランドパターン画像中のランド構成画素の中で標準ランドパターン側のランドに合致した画素の数を計数する。この演算は1回に限らず、標準ランドパターンの位置や向きを変更しながら、計数処理を繰り返し、その中の最大値を一致度として、しきい値と比較する。
【0086】
上記の処理において、着目グループのみによる一致度、または隣のグループを加えた一致度が所定のしきい値を超えた場合には、ステップ907を実行する。このステップでは、上記のしきい値を超えた一致度を標準ランドパターンの識別コードに対応づけて一時保存する。また、上記の一致度が算出されたときの標準ランドパターンの位置および回転角度を示す情報(たとえば、標準ランドパターンの各ランドの座標および基準の姿勢に対する回転角度)も一時保存する(ステップ907)。
【0087】
以下、各種コネクタに対応する標準ランドパターンおよび各種トランジスタに対応する標準ランドパターンを順に読み出して、それぞれに対する一致度を算出する(ステップ902〜908)。一連の処理が終了すると、しきい値を超える一致度の中の最大値を抽出し、その最大の一致度を得たときの保存データに基づき、着目グループに対応する部品の部品種を特定し(ステップ909,910)、さらにこの部品に対応する領域および部品の向きを特定する(ステップ911)。
【0088】
具体的には、ステップ910では、最大の一致度を得たときの標準パターンに対応する部品種を着目グループに対応するものとして特定する。ステップ911では、最大の一致度を得たときに標準ランドパターンに対応づけられた各ランドの分布範囲を含む矩形領域を、部品対応領域として特定するとともに、そのときの標準ランドパターンの回転角度を、部品の向きを示す情報とする。
【0089】
以下、同様に、全てのコネクタ・ランドグループに順に着目して上記の処理を実行し、未処理のグループがなくなったところで、処理を終了する(ステップ913)。ただし、いずれの標準ランドパターンを用いても、しきい値を超える一致度を得ることができなかったグループについては、処理済みとせずに、グループ種別を一般ランドグループに変更する(ステップ909,912)。よって、このグループには、再度、一般ランドグループ用の部品特定処理が実行されることになる。
【0090】
(e)−2 ICグループ/一般ランドグループ用の部品特定処理
ICグループや一般ランドグループについては、それぞれ図15の手順をグループ別に実行する。
【0091】
図15を参照して説明すると、この処理でも、未処理の1グループに着目し(ステップ920)、着目グループに対応する標準ランドパターンを読み出す(ステップ921)。たとえば、ICグループに着目している場合には、SOP,QFPなどリード部品に関する標準ランドパターンを読み出し、一般ランドグループに着目しているときには、チップ部品やダイオードなど一対の電極を具備する部品の標準ランドパターンを読み出すことになる。
【0092】
つぎに、読み出した標準ランドパターンに対する着目グループのランドパターンの一致度を算出する(ステップ922)。ここでは、コネクタ・トランジスタグループに対する処理と同様に、標準ランドパターンの位置や向きを変更して、一致が認められた画素数の計数を複数回行い、そのうちの最大値を一致度として採用する。また、ランドの数が標準ランドパターンと異なる場合には一致度算出をスキップする。
【0093】
算出された一致度がしきい値を上回る場合には、その一致度、および一致度を得たときの標準ランドパターンの位置および回転角度を一時保存する(ステップ924)。この点も、コネクタ・トランジスタグループにおける処理と同様である。
【0094】
着目グループに対応するすべての標準パターンにより一致度を算出すると、しきい値を超えた一致度の中の最大値を特定し、その最大の一致度を得たときの保存データに基づき、着目グループに対応する部品種、部品対応領域、および部品の向きを特定する(ステップ925〜928)。これらの処理に関しても、コネクタ・トランジスタグループにおける処理と同様である。
【0095】
以下も、同様に、ICグループまたは一般ランドグループを対象に、対応する部品を特定し、未処理のグループがなくなったところで(ステップ930)、処理を終了する。
【0096】
また、あるグループに対する処理において、対応する標準ランドパターンのいずれを用いても、しきい値を超える一致度が得られなかった場合には、そのグループに特定不能フラグを設定する(ステップ929)。このグループには、次の検査データの設定処理が不可能になるので、別途、ユーザの手動操作により検査データを設定する必要がある。ただし、ステップ929に移行するのは、着目グループに対応する部品種のデータがなかった場合と考えられるから、十分な数の部品種について標準ランドパターンや標準検査データを登録しておけば、手動設定が行われる頻度をごくわずかにできると考えられる。
【0097】
図16は、1つのコネクタ・トランジスタグループG11と、3つの一般ランドグループG12,G13,G14とを含む範囲(図3の領域Sに対応するもの)を例に、上記図14,15の処理を行った例を示す。
【0098】
この領域については、まずコネクタ・トランジスタグループに対する部品特定処理(図14)によって、3個のグループG11,G12,G13の組み合わせがトランジスタTの標準ランドパターンに対応するものとして特定されている。また残りの一般ランドグループG14は、一般ランドグループ用の部品特定処理(図15)によって、チップ部品Cの標準ランドパターンに対応するものとして特定されている。
【0099】
上記のコネクタ・トランジスタグループG11は、図9のランドの振り分け処理においてリード用ランドに分類された後に、図10のグルーピング処理によってコネクタ・トランジスタグループに分類されたものである。一方、グループG12,G13は、一般ランドに分類された後に、図12のグルーピング処理によって一般ランドグループに分類されたものである。このように、同じ部品に対応する複数のランドが異なるグループに分割され、またその中に実際の部品に対応しないランドグループが存在する場合でも、それぞれのグループに他の部品に対応するランドが含まれることがなければ、最終的に標準ランドパターンとの照合によって、各グループを対応づけて、これらのグループが示すランドパターンに適合する部品種を特定することが可能になる。
【0100】
なお、上記のトランジスタT用の3つのランドに関しても、中央のランドがリード用ランドではなく、一般ランドとして分類されるように、ランドの振り分けの基準を設定するなどすれば、グルーピングの段階で、3つのランドを1つのグループにまとめることができる。
【0101】
(f)検査データの設定処理(ステップS10)
この処理は、上記の部品特定処理の結果に基づき、実装後モデル画像に標準検査データを適用し、検査領域の設定データをはじめとする各種検査データを定めるものである。図17は、その詳細な手順を示す。
【0102】
図17を参照して説明すると、まず特定された部品の1つに着目し、部品特定処理において保存された情報(部品種、部品対応領域、部品の向き)を読み出す(ステップ1001)。つぎに、読み出した部品種について、標準検査データ登録部63から該当する標準検査データを読み出す(ステップ1002)。
【0103】
つぎに、実装後モデル画像およびランドパターン画像について、それぞれステップ1001で読み出した部品対応領域の画像を切り出し、これらを対応づけることにより、実装後モデル画像中のはんだ付け部位を検出する(ステップ1003,1004)。さらに、実装後モデル画像について、検出されたはんだ付け部位に囲まれている範囲を対象にエッジ抽出などの処理を行うことによって、着目部品の部品本体を抽出する(ステップ1005)。
【0104】
このようにして、着目部品のはんだ付け部位や部品本体が特定されると、これらの位置および大きさ、ならびに先に読み出された部品の向きに基づき、標準検査データをあてはめて検査領域を設定し(ステップ1006)、これらの設定用データ(設定位置や領域の大きさを示すもの)を検査データファイル61に登録する(ステップ1007)。
【0105】
さらに、各検査領域に適用される検査用のパラメータ(被検査部位を検出するための2値化しきい値や判定用しきい値など)など、検査領域以外の検査データについても、標準検査データを適用して設定し、検査データファイル61に登録する(ステップ1008)。
【0106】
以下も、部品特定処理により特定された各部品に対し、上記と同様の処理を実行することにより、各部品の検査データを設定し、登録する。これをもって、図2に示した一連の処理が全て実行されたことになり、検査の実行が可能になる。
【0107】
図18は、図16に示した部品特定処理により特定された2つの部品について、検査領域を設定した例を示す。
この図において、301〜306は、はんだ検査用の検査領域である。これらの検査領域301〜306は、いずれもはんだ付け部位毎に設定されたものであるが、検査領域302と304とは、同一のランド(グループG11のランド)に対応する。また、検査領域402,404は、部品の有無を判別するための検査領域であって、部品本体の中央部に設定される。また、検査領域401,403は、部品の位置や姿勢の適否の検査に用いられるもので、部品本体全体を含むように設定される。
【0108】
図19は、図11で説明したグルーピングにより設定されたICランドグループに対して部品特定処理を実行した後に、その結果に基づき検査領域を設定した例を示す。この例においては、はんだ検査用の検査領域310〜319は、複数本のリードおよびこれらに対応するはんだ付け部位を含む範囲に設定される。また、部品の位置や姿勢の検査用の検査領域410は、図18の例と同様に、部品本体全体を含むように設定されるが、部品の有無検査のための検査領域411は、部品本体の中央ではなく、右上の角部近くに設定されている。
【0109】
図18,19の各例に示した検査領域は、いずれも該当する部品種の標準検査データ中の定義を、実装後モデル画像から抽出された部品本体やはんだ付け部位に適用することにより、設定されたものである。これらの検査領域については、いずれも図17のステップ1007で、領域の設定位置や大きさを示す情報が登録されるので、検査の際にも、同様の位置に同様の大きさの検査領域を設定することが可能になる。
【0110】
(3)検査データの作成に関する他の実施例
上記の実施例では、コネクタ・トランジスタグループにのみ、着目グループに隣のグループを含めた範囲を対象にしたマッチング処理を行ったが、ICグループについても、各配列毎に設定されたグループを統合せずに、コネクタ・トランジスタグループと同様の処理を行ってもよい。
【0111】
また、上記の実施例では、はんだ塗布前の基板のモデル画像から生成した3種類の2値画像を用いてランドのグルーピングを行ったが、モデル画像は上記に限らず、クリームはんだ塗布後の基板の画像を用いてもよい。
【0112】
またはんだ付け後の基板の画像であっても、画像中の輝度の高い領域をはんだ付け部位として検出することができ、シルク印刷パターンや配線パターンの検出も可能である。したがって、実装前モデル画像のランドに代えて、実装後モデル画像の高輝度領域を検出し、これらを上記実施例と同様の方法で処理することによっても、部品を特定することができる。ただし、この場合には、ランドの部品で隠されていない部分のみがグルーピングの対象となるので、グループの種類の設定や部品特定処理のアルゴリズムが若干変更される可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】基板外観検査装置のブロック図である。
【図2】検査データの自動作成処理に関する概略フローチャートである。
【図3】実装前モデル画像の例を示す図である。
【図4】ランドパターン画像の例を示す図である。
【図5】シルクパターン画像の例を示す図である。
【図6】ランドのグルーピング結果を示す図である。
【図7】シルク包含領域に基づくランドのグルーピングに関するフローチャートである。
【図8】図7の処理の具体例を示す図である。
【図9】ランドの振り分け処理に関するフローチャートである。
【図10】リード用ランドのグルーピングに関するフローチャートである。
【図11】ICグループの統合処理の具体例を示す図である。
【図12】一般ランドのグルーピングに関するフローチャートである。
【図13】図12の処理の具体例を示す図である。
【図14】コネクタ・トランジスタグループ用の部品特定処理に関するフローチャートである。
【図15】ICグループ、および一般ランドグループ用の部品特定処理に関するフローチャートである。
【図16】部品特定処理の例を示す図である。
【図17】検査データの設定・登録処理に関するフローチャートである。
【図18】検査領域の設定例を示す図である。
【図19】検査領域の設定例を示す図である。
【符号の説明】
【0114】
1 カメラ
5 制御部
6 メモリ
7 画像入力部
61 検査データファイル
62 ランドパターン登録部
63 標準検査データ登録部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品実装基板を対象にした自動外観検査において画像中の各部品に対する検査領域の設定に用いられる領域設定データを、コンピュータにより作成する方法であって、
複数の部品種について、それぞれ部品電極に対応するランド領域の標準配置パターンと標準の領域設定データとを前記コンピュータのメモリに登録する第1ステップと、
部品実装前または部品実装後のモデル基板の画像から基板上のランド領域およびシルク印刷パターンならびに配線パターンをそれぞれ個別に検出し、各検出結果を表す3種類の2値画像を生成する第2ステップと、
シルク印刷パターンまたは配線パターンが介在する関係にあるランド領域の組を同じグループに分類しないことを条件として、前記3種類の2値画像の対応関係に基づき各ランド領域をグループ分けする第3ステップと、
前記グループ分けの終了後に、前記ランド領域の2値画像を部品種毎のランド領域の標準配置パターンと照合する処理を、同一グループ内のランド領域を同一の部品種に対応づけることを条件として実行することにより、前記基板に実装される各部品の部品種、実装範囲、および部品の向きを特定する第4ステップと、
第4ステップにより特定された各部品に対し、それぞれ特定された実装範囲に特定された部品の向きに基づき特定された部品種の標準の領域設定データを適用することによって、当該部品に設定する検査領域を特定し、この検査領域の設定にかかる領域設定データを前記コンピュータのメモリに登録する第5ステップと、
を実行することを特徴とする検査領域の領域設定データの作成方法。
【請求項2】
前記第3ステップでは、シルク印刷パターンに囲まれた状態で配置されているランド領域により1つのグループを設定する、請求項1に記載された検査領域の領域設定データの作成方法。
【請求項3】
前記第3ステップでは、面積および形状が整合する複数のランド領域がシルク印刷パターンおよび配線パターンのいずれも介在させずに一定の方向に沿って並んでいる複数のランド領域を、同一のグループに分類する、請求項1に記載された検査領域の領域設定データの作成方法。
【請求項4】
前記第3ステップでは、面積および形状が整合し、シルク印刷パターンおよび配線パターンのいずれも介在させずに配置されている複数のランド領域を、同一のグループに分類する、請求項1に記載された検査領域の領域設定データの作成方法。
【請求項5】
前記第4ステップでは、1つの部品種の標準パターンを1または複数のグループのランド領域の分布パターンに対応づけて、ランド領域の数および配置の一致度を求める、請求項1に記載された検査領域の領域設定データの作成方法。
【請求項6】
基板を撮像するための撮像手段と、この撮像手段が検査対象の基板を撮像することにより生成された検査対象画像中の各部品に設定する検査領域の領域設定データを作成する領域設定データ作成手段と、作成された領域設定データを保存するためのメモリと、前記メモリに登録された領域設定データに基づき検査対象画像に検査領域を設定し、各検査領域内の画像を処理することにより基板上の各部品の実装状態を判別する検査実行手段と、前記検査実行手段による判別結果を出力する出力手段とを具備する基板外観検査装置において、
前記メモリには、複数の部品種について、それぞれ部品電極に対応するランド領域の標準配置パターンと検査領域の標準の領域設定データを含む標準検査データとが登録されており、
前記領域設定データ作成手段は、
部品実装前または部品実装後のモデル基板の画像から基板上のランド領域およびシルク印刷パターンならびに配線パターンをそれぞれ個別に検出し、各検出結果を表す3種類の2値画像を生成する2値画像生成手段と、
シルク印刷パターンまたは配線パターンが介在する関係にあるランド領域の組を同じグループに分類しないことを条件として、前記3種類の2値画像の対応関係に基づき各ランド領域をグループ分けするグルーピング手段と、
前記グループ分けの終了後に、前記ランド領域の2値画像を部品種毎のランド領域の標準配置パターンと照合する処理を、同一グループ内のランド領域を同一の部品種に対応づけることを条件として実行することにより、前記基板に実装される各部品の部品種、実装範囲、および部品の向きを特定する部品特定手段と、
前記部品特定手段により特定された各部品に対し、それぞれ特定された実装範囲に特定された部品の方向に基づき特定された部品種の標準の領域設定データを適用することによって、当該部品に設定する検査領域を特定し、この検査領域の設定にかかる領域設定データを前記メモリに登録する登録手段とを、具備する基板外観検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−27964(P2010−27964A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−189740(P2008−189740)
【出願日】平成20年7月23日(2008.7.23)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)