説明

検知装置

【課題】熱が加わったことを示すマーカが誤って移動しまうことを防止する機能を有する検知装置を提供する。
【解決手段】温度変動を検知する検知装置100は、作動部10と、作動部10を第1方向Aに押圧する形状記憶合金からなる第1スプリング20と、作動部10を第1方向Aとは反対の第2方向Bに押圧する第2スプリング30と、作動部10が第1方向Aに移動するときに作動部10の移動に応じて第1位置から第2位置に移動するマーカ40と、屈曲又は湾曲した経路に沿ってマーカ40をガイドするガイド部50とを備える。当該経路は、第1スプリング20が加熱されることによって作動部10が第1方向Aに移動するときには作動部10の移動に応じてマーカ40が第1位置から第2位置に移動することを許す一方で第1スプリング20が冷えることによって作動部10が第2方向Bに移動してもマーカ40が第1位置に戻らないように規定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度変動を検知する検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料などの食品の製造工場では、工場の設備、例えば、タンクや管などが湯殺菌される。湯殺菌とは、加熱された水(例えば、80℃以上の水)を使って殺菌を行うことを意味する。水には、殺菌を助ける薬品が添加されることもありうる。ここで、長く引き回された管の端から端までが完全に湯殺菌されたことを保証するためには、各部において熱が加わったことを確認する必要がある。そのために、示温テープが使われうる。この示温テープとして可逆的な示温テープを使う場合には、湯殺菌時に作業者が各部に立ち会う必要がある。一方、示温テープとして非可逆な示温テープを使う場合には、湯殺菌の度に示温テープを貼りかえる必要がある。
【0003】
特許文献1には、湯殺菌時以外は通常位置に位置し、湯殺菌時は熱によって上方に移動する弁棒と、該弁棒が上方に移動したときには上方位置に移動し、その後、該弁棒が下方に移動しても該上方位置に留まるマーカとを有する作動確認装置が記載されている。
【特許文献1】実開平6−84082号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、弁棒が下方に移動したときにマーカがそれにともなって下方に移動してしまうことを防止するための手段については開示も示唆もされていない。また、仮に作業者等が誤ってマーカに触れてしまうと、マーカが移動してしまう可能性もある。
【0005】
本発明は、上記の課題認識に基づいてなされたものであり、例えば、熱が加わったことを示すマーカが誤って移動しまうことを防止する機能を有する検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の検知装置は、温度変動を検知する検知装置であって、作動部と、前記作動部を第1方向に押圧する形状記憶合金からなる第1スプリングと、前記作動部を前記第1方向とは反対の第2方向に押圧する第2スプリングと、前記作動部が前記第1方向に移動するときに前記作動部の移動に応じて第1位置から第2位置に移動するマーカと、屈曲又は湾曲した経路に沿って前記マーカをガイドするガイド部とを備える。前記経路は、前記第1スプリングが加熱されることによって前記作動部が前記第1方向に移動するときには前記作動部の移動に応じて前記マーカが前記第1位置から前記第2位置に移動することを許す一方で前記第1スプリングが冷えることによって前記作動部が前記第2方向に移動しても前記マーカが前記第1位置に戻らないように規定されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、例えば、熱が加わったことを示すマーカが誤って移動しまうことを防止する機能を有する検知装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明する。
【0009】
図1〜図3は、本発明の好適な実施形態の検知装置の構成を示す側面図である。図4は、本発明の好適な実施形態の検知装置の断面図であり、図1に示す状態に対応する。図1〜図4において、鉛直上方がz軸として示され、そのz軸を基準としてxyz座標系が定義されている。
【0010】
本発明の好適な実施形態の検知装置100は、例えば、飲料などの食品の製造工場において、管70、80が湯殺菌されたことを確認するために使用されうる。図1〜図4に示す例では、検知装置100は、管70と管80との間に配置されている。なお、検知装置100は、管以外の設備、例えば、タンクなどに取り付けられてもよい。その場合、取り付け対象の設備に応じて形状に変更が加えられうる。
【0011】
工場の設備が湯殺菌される場合、当該設備は、加熱された水(例えば、80℃以上の水)によって加熱され、その後に自然冷却等によって冷える、という温度サイクル(温度変動)を受ける。検知装置100は、設備の湯殺菌が終了して当該設備が冷えてしまった後においても湯殺菌が適正になされたことを作業者が確認することを可能にする。
【0012】
検知装置100は、温度変動を検知するように構成され、作動部10と、作動部10を第1方向Aに押圧する形状記憶合金からなる第1スプリング20と、作動部10を第1方向Aとは反対の第2方向Bに押圧する第2スプリング30と、作動部10が第1方向Aに移動するときに作動部10の移動に応じて第1位置(”SET”と記載された位置)43から第2位置(”OK”と記載された位置)44に移動するマーカ40と、屈曲又は湾曲した経路に沿ってマーカ40をガイドするガイド部50とを備える。
【0013】
ここで、形状記憶合金からなる第1スプリング20は、バネ定数が温度によって変化する。より具体的には、第1スプリング20は、常温では第1バネ定数を有し、常温より高く湯殺菌の温度よりも若干低い温度を超えると第1バネ定数よりも大きい第2バネ定数を有する。第2スプリング30としては、常温から湯殺菌の温度までの範囲においてほぼ一定のバネ定数を有するか、或いは、第1スプリング20よりもバネ定数の変動が小さいものが使用される。
【0014】
作動部10は、例えば、検知装置100の管壁90の周囲に配置され、例えば、リング形状を有する。作動部10は、第1スプリング20と第2スプリング30とによって挟まれて、双方から押圧される。よって、作動部10の位置は、第1スプリング20から受ける復元力と第2スプリング30から受ける復元力、換言すると、第1スプリング20のバネ定数と第2スプリング30のバネ定数とによって決定される。
【0015】
常温時は、作動部10は、第1スプリング20の第1バネ定数と第2スプリング30のバネ定数とによって決まる位置に位置決めされる。一方、湯殺菌のために管70、検知装置100の管壁90、および管80で構成される流路を湯が通ると、この湯によって検知装置100が加熱される。これにより形状記憶合金からなる第1スプリング20のバネ定数が第1バネ定数から第2バネ定数に変化する。よって、湯殺菌時は、作動部10は、第1スプリング20の第2バネ定数と第2スプリング30のバネ定数とによって決まる位置に位置決めされる。
【0016】
作動部10は、図4に例示的に示すように、マーカ40を第1方向Aにのみ移動させることができるように配置されている。マーカ40が移動する経路は、前述のように、ガイド部50によって規定される。この経路は、第1スプリング20が加熱されることによって作動部10が第1方向Aに移動するときには作動部10の移動に応じてマーカ40が第1位置42から第2位置44に移動することを許す一方で第1スプリング20が冷えることによって作動部10が第2方向Bに移動してもマーカ40が第1位置42に戻らないように規定されている。
【0017】
具体的には、ガイド部50がマーカ40をガイドする経路は、鉛直上方(z軸の正方向)に向かって凸をなす形状を含みうる。湯殺菌によって第1スプリング20が加熱されてそのバネ定数が第1バネ定数から第2バネ定数に変化すると、図1、図2に示すように、作動部10が第1方向Aに移動する。これに応じて、ガイド部50によってガイドされながらマーカ40が第1位置42から第2位置に移動する。
【0018】
その後、自然冷却等によって第1スプリング20の温度が低下すると、図3に示すように、作動部10が第2方向Bに移動する。しかしながら、マーカ40は、作動部10の第2方向Bへの移動の影響は受けず、第2位置44に留まる。マーカ40は、作業者によって意図的に第1位置42に戻されるまで第2位置44に留まる。
【0019】
上記のように規定された屈曲又は湾曲した経路に沿ってマーカ40をガイドするガイド部50を設けることにより、湯殺菌の終了後にマーカ40が第2位置44から第1位置42に戻ってしまうことを防止することができる。特に、ガイド部50によるガイドの経路を鉛直上方に向かって凸をなす形状とすることによって、作業者がマーカ40に軽く触れた程度でマーカ40が第2位置44から第1位置42に戻ってしまう可能性を著しく低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の好適な実施形態の検知装置の構成を示す側面図である。
【図2】本発明の好適な実施形態の検知装置の構成を示す側面図である。
【図3】本発明の好適な実施形態の検知装置の構成を示す側面図である。
【図4】本発明の好適な実施形態の検知装置の断面図である。
【符号の説明】
【0021】
10 作動部
20 第1スプリング
30 第2スプリング
40 マーカ
42 第1位置
44 第2位置
50 ガイド部
70、80 管
90 管壁
100 検知装置
A 第1方向
B 第2方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度変動を検知する検知装置であって、
作動部と、
前記作動部を第1方向に押圧する形状記憶合金からなる第1スプリングと、
前記作動部を前記第1方向とは反対の第2方向に押圧する第2スプリングと、
前記作動部が前記第1方向に移動するときに前記作動部の移動に応じて第1位置から第2位置に移動するマーカと、
屈曲又は湾曲した経路に沿って前記マーカをガイドするガイド部とを備え、
前記経路は、前記第1スプリングが加熱されることによって前記作動部が前記第1方向に移動するときには前記作動部の移動に応じて前記マーカが前記第1位置から前記第2位置に移動することを許す一方で前記第1スプリングが冷えることによって前記作動部が前記第2方向に移動しても前記マーカが前記第1位置に戻らないように規定されている、
ことを特徴とする検知装置。
【請求項2】
前記経路は、鉛直上方に向かって凸をなす形状を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−25203(P2009−25203A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−189925(P2007−189925)
【出願日】平成19年7月20日(2007.7.20)
【出願人】(000000055)アサヒビール株式会社 (535)
【Fターム(参考)】