説明

業務用ロール仕上機および加熱シリンダのドレン排出方法

【課題】加熱シリンダ内のドレンを速やかに排出できる業務用ロール仕上機および加熱シリンダのドレン排出方法を提供する。
【解決手段】胴部101の内部に突状部140を設けるように構成した。これにより、加熱シリンダ100が回転した際に、加熱シリンダ100の底部に滞留しているドレンを突状部140で煽ってドレンサイフォン管150が設けられている鏡板103側寄せることができるので、加熱シリンダ100内のドレン排出を促して、加熱シリンダ100の表面の温度低下を抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、業務用ロール仕上機および加熱シリンダのドレン排出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
洗濯した後の繊維製品の仕上げ乾燥を行う装置として業務用のロール仕上機が知られている。業務用のロール仕上機では、内部に蒸気が供給されることで加熱された、回転するロール(加熱シリンダ)に繊維製品を巻き掛けることで繊維製品の仕上げ乾燥を行っている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2006−138022号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
業務用のロール仕上機では、繊維製品の仕上げ乾燥を行うことで加熱シリンダ内部に供給した蒸気が冷却されて凝縮し、ドレンとして加熱シリンダの底部に滞留する。このドレンは、新たに供給される蒸気の圧力で加熱シリンダからドレントラップを介して外部に排出されるが、加熱シリンダ表面の温度低下を防止するために、ドレンはできるだけ速やかに排出する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1) 請求項1の発明による業務用ロール仕上機は、内部に導入された蒸気によって加熱される略横型円筒形状の加熱シリンダと、加熱シリンダを円筒の中心軸を中心として回転させる駆動手段と、加熱シリンダに被仕上物を供給する被仕上物供給手段とを備え、加熱シリンダは、駆動手段によって回転駆動されたときに、内部で滞留するドレン水に接触する少なくとも1つの突部が内部に設けられていることを特徴とする。
(2) 請求項13の発明による加熱シリンダのドレン排出方法は、請求項1〜9のいずれか一項に記載の業務用ロール仕上機の加熱シリンダに滞留するドレンを外部に排出する加熱シリンダのドレン排出方法において、制御回路は、加熱シリンダの内部への圧縮空気の供給を許可/禁止する圧縮空気供給バルブに対して、圧縮空気の供給を許可する制御信号(圧縮空気供給許可信号)を出力して、加熱シリンダの内部に前記圧縮空気を供給することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、加熱シリンダ内のドレンを速やかに排出できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1〜19を参照して、本発明による業務用ロール仕上機および加熱シリンダのドレン排出方法の一実施の形態を説明する。図1は、本発明を適用した業務用ロール仕上機1の構造を模式的に示す図である。業務用ロール仕上機(以下、単にロール仕上機と呼ぶ)1は、洗濯した後の繊維製品(被仕上物)の仕上げ乾燥を行う装置であり、本体フレームである仕上機本体1aに、繊維製品の仕上げ乾燥を行うための略横型円筒形状の加熱シリンダ100と、加熱シリンダ100の外周面に繊維製品を押しつけるための圧迫ロール11とが設けられている。本実施の形態のロール仕上機1では、加熱シリンダ100が4本(加熱シリンダ100a〜100d)設けられている。加熱シリンダ100の構造については後に詳述する。
【0008】
説明の便宜上、各加熱シリンダ100について、繊維製品が通過する順に、第1加熱シリンダ100a、第2加熱シリンダ100b、第3加熱シリンダ100c、第4加熱シリンダ100dと呼ぶ。ロール仕上機1は、第1加熱シリンダ100aと第2加熱シリンダ100bとで1つのユニットとして構成され、第3加熱シリンダ100cと第4加熱シリンダ100dとで1つのユニットとして構成されている。本実施の形態のロール仕上機1では、2つのユニットを連結した4段の加熱シリンダ100を備える構造となっているが、さらにユニットを連結して6段以上の加熱シリンダを備える構造とすることもできる。
【0009】
圧迫ロール11は、加熱シリンダ100の後述する胴部101と略同じ長さのロールであり、第1加熱シリンダ100aの上方に設けられており、ロール仕上機1の運転中には、不図示の空気圧シリンダによって第1加熱シリンダ100aに向かって押圧されて、第1加熱シリンダ100aの外周面に押しつけられている。本実施の形態のロール仕上機1では、圧迫ロール11は3本(圧迫ロール11a〜11c)であり、第1加熱シリンダ100aに対してのみ設けられているが、本発明はこれに限定されるものではない。説明の便宜上、各圧迫ロール11について、繊維製品が通過する順に、第1圧迫ロール11a、第2圧迫ロール11b、第3圧迫ロール11cと呼ぶ。圧迫ロール11には、繊維製品を圧迫ロール11と第1加熱シリンダ100aとの間に導くためのガイドテープ51が掛け回されている。図1の例では、ガイドテープ51は、第2圧迫ロール11bと第3圧迫ロール11cに掛け回されており、第2圧迫ロール11bおよび第3圧迫ロール11cと、第1加熱シリンダ100aとの間に繊維製品を導く。ガイドテープ51は、第1圧迫ロール11aに掛け回されていてもよい。
【0010】
52は、ガイドテープに張力を与えるガイドテープテンションブラケットであり、53は、ガイドテープ51が掛け回されるシャフトである。なお、説明の便宜上、各シャフトのうち、最も繊維製品の入口側(図示左側)に配設されたシャフト53をシャフト53aとし、最も繊維製品の出口側(図示右側)に配設されたシャフト53をシャフト53bとする。
【0011】
ロール仕上機1は、加熱シリンダ100を回転駆動させるための駆動モータ20を備えており、駆動モータ20の駆動力はチェーン21〜23を介して各加熱シリンダ100に伝達される。ロール仕上機1の前方(図示左方)は、洗濯した後の繊維製品の入口である品物入口41である。品物入口41の近傍には、洗濯した後の繊維製品を第1加熱シリンダ100aに導く(供給する)ための前送りベルト31と、前送りベルト31を駆動するための前送りモータ30とが設けられている。また、ロール仕上機1は、各加熱シリンダ100に巻き掛けられて加熱シリンダ100とともに回転することで繊維製品を加熱シリンダ100の表面に押し当てる、耐熱性のベルト32〜35が設けられている。後述する図11に示すように、ベルト31は、たとえば幅が10cm程度の耐熱性のベルトであり、図1の奥行き方向(図11の図示左右方向)に複数並べられて掛け回されている。図示はしないが、ベルト32〜35も同様である。
【0012】
繊維製品は、品物入口41の前送りベルト31に載せられると、矢印a〜矢印pの順にロール仕上機1内を搬送される。その間、繊維製品は、蒸気が導入されて加熱された各加熱シリンダ100に接触することで仕上げ乾燥が行われて、ロール仕上機1の後方(図示右方)の品物出口42から排出される。
【0013】
−−−加熱シリンダ100について−−−
図2は、加熱シリンダ100の断面を模式的に示した図であり、図3は、仕上機本体1aに取り付けられた加熱シリンダ100の左右端部近傍の断面を模式的に示した図である。加熱シリンダ100は、円筒形状の胴部101と、胴部101の両端を閉塞する鏡板102,103とを有する。胴部101の内部には、胴部101の内部に導入された蒸気が冷却されて凝縮することで生じる負圧に耐えうるように、および、胴部101の撓み防止のために補強リング130が取り付けられている。また、胴部101の内部には、後述する突状部140が設けられている。鏡板102,103の外側にはそれぞれロール軸110,120が取り付けられている。図3に示すように、加熱シリンダ100は、ロール軸110,120が軸受け1bによって回転可能に支持されて、ロール仕上機1が運転可能に設置されると胴部の中心軸、すなわち加熱シリンダ100の回転軸が略水平になるように仕上機本体1aに取り付けられている。
【0014】
図示右側の鏡板102は胴部101の端部を完全に閉塞しているが、図示左側の鏡板103は、中心近傍に開口部103aが設けられており、開口している。鏡板103に取り付けられるロール軸120にも軸の延在方向に貫通孔121が設けられている。ロール軸120が鏡板103に取り付けられると、貫通孔121および開口103aを介して、胴部101の内部が外部と連通する。ロール軸120には、不図示の配管を介して複式内管固定式の不図示のロータリージョイントのローターが取り付けられる。ロータリージョイントの内管150は、貫通孔121および開口103aに挿通され、胴部101の内部で下方に向かっており、先端(開口端)が胴部101の内壁(内周面)と干渉しない程度に内壁に近づけられている。加熱シリンダ100が回転すると、不図示のローターはロール軸120とともに回転するが、ロータリージョイントの本体や内管150は回転しない。以下、このロータリージョイントの内管150をドレンサイフォン管と呼び、ドレンサイフォン管150の先端の開口をドレン吸い込み口150aと呼ぶ。
【0015】
ロータリージョイントには、加熱シリンダ100の熱源である蒸気を供給するための不図示の蒸気配管と、胴部101内部のドレンを外部に排出するための不図示のドレン配管とが接続されている。加熱シリンダ100の熱源である蒸気は、不図示の蒸気ボイラから供給されて、不図示のロータリージョイントから不図示のローター内部、貫通孔121および開口103aを介して胴部101の内部に吹き込まれる。繊維製品の仕上げ乾燥によって蒸気が冷却されて発生するドレンは、胴部101の内部に供給される蒸気の圧力によって、ドレンサイフォン管150から外部に押し出されて排出される。
【0016】
図4は、図3(a)のIV−IV断面図である。補強リング130は、胴部101の内周に沿って取り付けられるリング状の部材であり、外周部には、胴部101内部で加熱シリンダ100の回転軸方向に移動するドレンの流れを妨げないように、複数の穴131が設けられている。
【0017】
−−−ドレン排出について−−−
加熱シリンダ100が、図2に示すように回転軸方向に長いため、加熱シリンダ100の両端の一端側に設けられたドレンサイフォン管150からドレンが排出される際に、ドレン吸い込み口150aの近傍のドレンがサイフォン管150に流れ込んでも、ドレン吸い込み口150aから離れた位置に溜まっているドレンがドレン吸い込み口150aの近傍に到達するまでには時間がかかる。加熱シリンダ100内のドレンの水位が低い場合には、ドレン吸い込み口150aの近傍のドレンがドレンサイフォン管150に流れ込むことでドレン吸い込み口150aの近傍のドレン水位が下がると、ドレン吸い込み口150aから離れた位置に溜まっているドレンがドレン吸い込み口150aに到達する前にドレンサイフォン管150には蒸気が流れ込んでしまう。このドレンサイフォン管150に流れ込んだ蒸気がドレントラップに到達すると、ドレントラップはドレン排出動作を終了させてしまう。そのため、ドレントラップの作動時にドレンサイフォン管150に十分にドレンが流れ込まないことになり、ドレンを効率的に排出できない。
【0018】
ドレンを効率的に排出させるために、ドレンサイフォン管150が設けられている鏡板103側へドレンを積極的に移動させることが考えられる。その一つとして胴部101の内周面に螺旋状の部材を取り付けることで、加熱シリンダ100とともに回転する当該螺旋状の部材でドレンを鏡板103側に移動させることが考えられる。しかし、この方法では、螺旋状の部材を胴部101の内周面に設けるためのコスト負担が大きい。また、胴部101の内部をテーパ状に加工することも考えられるが、胴部101の製造コストが大幅に増加してしまう。加熱シリンダ100の回転軸を傾斜させることも考えられるが、ロール仕上機1自体を傾斜させることや、仕上機本体1aに対して加熱シリンダ100の回転軸を傾斜させことでは、加熱シリンダ100のスラスト方向への移動防止対策や、ロール軸120側の負担増に対応する軸受けの変更など、製造コストが増えてしまう。
【0019】
そこで、本実施の形態の加熱シリンダ100では、加熱シリンダ100の円筒状部分である胴部101に対して、その内周面に突状部140を設けることで、これらの問題点を解決している。図5は、突状部140の斜視図である。突状部140は平板状の部材による胴部101内周面の突部であり、本実施の形態では、鏡板102の近傍に、加熱シリンダ100の回転方向と突状部140の厚さ方向とが略一致するように胴部101の内周面に立設されている。すなわち、突状部140は、加熱シリンダ100が回転したときに、加熱シリンダ100(胴部101)の下部に滞留しているドレンに対して抵抗となるように配設(形成)されている。別の言い方をすれば、突状部140は、加熱シリンダ100が回転したときに面積の大きい部位でドレンを胴部101の軸方向にかき分けてドレンを煽るように配設されている。
【0020】
このように突状部140を設けることで、加熱シリンダ100が回転した際に、加熱シリンダ100の底部に滞留しているドレンを突状部140が煽る。このとき、突状部140は、鏡板102の近傍に配設されていることから、主に鏡板103側に向かってドレンを煽ることとなる。その結果、図6に示すように、加熱シリンダ100下部に滞留しているドレンが鏡板102側からドレンサイフォン管150が設けられている鏡板103側へと移動する。このように、ドレンを鏡板103側に寄せて、鏡板102側よりも鏡板103側のドレンの水位が高くなるようにしておくことで、上述したようなドレンサイフォン管150への蒸気の流れ込みを抑制して、不図示のドレントラップが作動した際のドレン排出量を増やすことができる。これにより、加熱シリンダ100内のドレン排出を促して、加熱シリンダ100の表面の温度低下を抑制できる。
【0021】
このような作用効果を得るためには、加熱シリンダ100の回転による突状部140の移動方向に対する投影面積は、ある程度の大きさが必要である。本実施の形態のロール仕上機1では、たとえば加熱シリンダ100の直径が0.7m程度であり、長さが3m程度であるが、突状部140の寸法は、たとえば、幅が25mm程度であり、高さが30mm程度であり、厚さが3mm程度である。なお、胴部101の内周面とドレン吸い込み口150aとの離間距離は、たとえば15〜20mm程度である。
【0022】
ここで、突状部140は、鏡板102の近傍に1箇所だけ設けられているが、図7に示すように、鏡板102から離れた位置に設けられていてもよい。また、突状部140は、1箇所だけ設けられているが、胴部101の円周方向に複数設けられていてもよい。図8の例では、突状部140は、胴部101の円周方向に3つ設けられている。また、図9に示すように、複数の突状部140を、胴部101の軸方向にずらしながら胴部101の円周方向に複数設けてもよい。
【0023】
ここで、図10に示すように、胴部101の回転方向に対して斜めに傾斜するように突状部140を設けてもよい。また、突状部140の形状は、平板状でなくてもよく、加熱シリンダ100が回転したときに、胴部101の下部に滞留しているドレンを鏡板103側に寄せる効果があればよいので、加熱シリンダ100の中心軸の延在方向に幅を持たせ、胴部101の内側に向かって高さを持たせて形成されていればよいので、たとえば、角柱状の形状であってもよい。
【0024】
なお、加熱シリンダ100が回転駆動されたときに、滞留しているドレンに接触してドレンを鏡板103側に寄せてドレン吸い込み口150aの近傍のドレン水位を上げることができればよいので、突状部140は、胴部101の内周面ではなく、図19に示すように、鏡板102に取り付けられていてもよい。また、ドレンサイフォン管150(ドレン吸い込み口150a)が加熱シリンダ100内で鏡板103側に位置するように設けられているのであれば、突状部140は、少なくともドレン吸い込み口150aよりも鏡板102側に設けられて、加熱シリンダ100が回転駆動されたときに、滞留しているドレンに接触してドレンを鏡板103側に寄せてドレン吸い込み口150aの近傍のドレン水位を上げることができればよい。
【0025】
−−−ガイドテープ51について−−−
上述したように、ガイドテープ51は、繊維製品を圧迫ロール11と第1加熱シリンダ100aとの間に導くためのものである。図11は、ロール仕上機1を上から見たときの図であり、第1加熱シリンダ100aの近傍のみを示す図である。ガイドテープ51は、たとえば幅が1.5cm程度で厚さが0.2mm程度と、幅が細く厚さが薄い帯状の部材である。上述したように、ガイドテープ51は、繊維製品を圧迫ロール11と第1加熱シリンダ100aとの間に導くためものであるため、圧迫ロール11の軸方向に所定の間隔で複数掛け回されており、ガイドテープテンションブラケット52によって張力が与えられている。
【0026】
図12は、ガイドテープテンションブラケット52の斜視図である。ガイドテープテンションブラケット52は、2枚のガイド板52aが離間して設けられている。2枚のガイド板52aのそれぞれ一端側には、外周面にガイドテープ51が巻き掛けられる、円筒状の端部52bが設けられている。端部52bの内周面は、シャフト53aが挿通される貫通穴52である。2枚のガイド板52aの他端には、ループ状のガイドテープ51の内側から当接する円柱または円筒状の部位であって、ガイドテープ51に張力を与えるための錘を兼ねた端部52dが設けられている。
【0027】
図1に示すように、ガイドテープテンションブラケット52は、貫通穴52cにシャフト53aが挿通されてシャフト53aに回動可能に支持される。ガイドテープ51が各シャフト53および端部52b,52dに掛け回されると、ガイド板52aの他端側に設けられた端部52dの重さ(およびガイド板52aの重さ)によって、ガイドテープテンションブラケット52は、シャフト53aを中心として図示時計方向に回動する。その際、掛け回されているガイドテープ51を端部52dが下方に押圧することでガイドテープ51には張力が与えられる。また、2枚のガイド板52aは、ガイドテープ51の側面側に位置することで、ガイドテープ51の幅方向への移動を規制する。
【0028】
なお、ガイドテープテンションブラケット52自体は、図13に示すようなワイヤクリップ60によってシャフト53aの軸方向に対する移動が規制される(図14)。ワイヤクリップ60は、たとえばバネ用のステンレス鋼線製であり、ねじりコイルバネを構成するねじりコイルバネ部61と、ねじりコイルバネ部61のねじりコイルバネを巻き込む方向とは反対の方向(すなわち巻き戻し方向)にねじるための腕部62とを有する。
【0029】
ワイヤクリップ60は、腕部62に外力が与えられない状態では、ねじりコイルバネ部61の内径がシャフト53の外径よりも小さく、巻き戻し方向にねじられると、ねじりコイルバネ部61の弾性変形領域内でねじりコイルバネ部61の内径がシャフト53の外径よりも大きくなるように構成されている。したがって、ワイヤクリップ60は、ねじりコイルバネ部61の内径部分にシャフト53が挿通された状態では、腕部62に外力が与えられなければシャフト53上に固定され、巻き戻し方向にねじられると、シャフト53の軸方向に移動可能となる。
【0030】
図14は、ワイヤクリップ60によってガイドテープテンションブラケット52がシャフト53aの軸方向に対する移動を規制されている状態を示す図である。このように、ガイド板52aの側面からシャフト53aに固定されたワイヤクリップ60がガイド板52aの側面から当接することでガイドテープテンションブラケット52は、シャフト53aの軸方向に対する移動を規制される。すなわち、ガイドテープ51は、このようにワイヤクリップ60で移動が規制されたガイドテープテンションブラケット52のガイド板52aによって、シャフト53aの軸方向に対する移動が規制される。
【0031】
シャフト53bにもガイドテープ51が掛け回されているが、シャフト53bでは、図15,16に示すように、ガイドテープ51の側面にワイヤクリップ60のねじりコイルバネ部61が当接することで、ガイドテープ51は、ワイヤクリップ60によって直接シャフト53aの軸方向に対する移動が規制されている。すなわち、シャフト53bでは、ワイヤクリップ60は、ねじりコイルバネ部61の素線の太さを利用して、ガイドテープ51のシャフト53bの軸方向に対する移動を規制している。ここで、図16は、図15のV−V断面図である。
【0032】
たとえば、ロール仕上機1で仕上げ乾燥を行う繊維製品がシーツのように幅の広いものであったり、枕カバーのように幅の狭いものであったりするなど、ロール仕上機1で仕上げ乾燥を行う繊維製品の種類や大きさは多岐にわたる。そのため、仕上げ乾燥を行う際に、繊維製品の端部がまくれ上がってしまうなどの不具合を防止するためには、繊維製品の幅に応じてガイドテープ51同士の間隔を適宜変更する必要がある。
【0033】
従来のロール仕上機では、たとえば、シャフト53aにガイドテープテンションブラケット52の位置を規定するための凹溝や突条などが設けられているため、ガイドテープテンションブラケット52をシャフト53aの軸方向に対する移動させるのが困難であり、ガイドテープ51同士の間隔を容易に変更できなかった。しかし、本実施の形態のロール仕上機1では、上述したように、ワイヤクリップ60によってガイドテープテンションブラケット52の位置を規定しているため、ワイヤクリップ60を巻き戻し方向にねじるだけで、ワイヤクリップ60およびガイドテープテンションブラケット52を容易にシャフト53の軸方向に移動できる。また、シャフト53b側については、ワイヤクリップ60を巻き戻し方向にねじるだけで、ワイヤクリップ60を容易にシャフト53の軸方向に移動できる。したがって、本実施の形態のロール仕上機1では、繊維製品の幅に応じてガイドテープ51同士の間隔を容易に変更できる。
【0034】
具体的には、次のような手順でガイドテープ51同士の間隔を変更する。まず、ロール仕上機1の運転を停止させ、不図示の空気圧シリンダによって第1加熱シリンダ100aから浮かせるように圧迫ロール11を移動させる。これにより、ガイドテープ51が胴部101の表面と圧迫ロール11の表面とによる挟み込みから開放される。次いで、ロール仕上機1の上部に上がった作業者が、ガイドテープテンションブラケット52やガイドテープ51に当接している2つのワイヤクリップ60の一方を、ロール仕上機1の上方から巻き戻し方向にねじり、ワイヤクリップ60をシャフト53上の所定の位置に移動させる。そして、ガイドテープテンションブラケット52やガイドテープ51を先に移動させたワイヤクリップ60の近傍まで移動させる。そして、残りの他方のワイヤクリップ60を先に移動させたガイドテープテンションブラケット52やガイドテープ51の近傍まで移動させる。この移動作業をガイドテープテンションブラケット52やガイドテープ51毎に繰り返すことで、ガイドテープ51同士の間隔を任意に変更できる。
【0035】
なお、作業者がロール仕上機1の上部に上がって上述したような作業を行うことができるように、ロール仕上機1には、適宜階段や足場などが取り付けられている。図11において符号71,72で示した部位は、作業用の足場となる部分である。また、仕上げ乾燥の運転時に上方からの異物混入を防止するためや、加熱シリンダ100の放熱抑制のために、通常、ロール仕上機1の上方にはトップカバーと呼ばれる覆い(不図示)が取り付けられている。したがって、上述のようにガイドテープ51同士の間隔を変更するには、当該トップカバーを一旦外し、ガイドテープ51同士の間隔を変更した後は、当該トップカバーを再び取り付ける必要がある。
【0036】
−−−運転開始時のドレンの排出について−−−
ロール仕上機1は、作業者が退勤時にロール仕上機1の運転を停止させ、翌日作業者が出勤すると運転を開始させるというように、運転と停止とを繰り返して運用されることが一般的である。ロール仕上機1の運転停止時には、作業者が手動操作のバルブを操作して蒸気の供給を絶つが、翌日の運転開始前までに加熱シリンダ100が冷えるため、加熱シリンダ100の内部の蒸気は冷却されて凝縮し、ドレンとなる。このドレンは、翌日の運転開始の際に作業者が手動操作のバルブを操作して蒸気の供給を開始することで排出されるが、従来のロール仕上機では次のような点で不都合であった。
【0037】
(A) 作業員が出勤してから手動操作のバルブを操作して蒸気の供給を開始するが、蒸気供給開始からドレンの排出が終わるまでに時間がかかる。これは、溜まっていたドレンや冷えていた加熱シリンダ100自体が蒸気の潜熱を吸収するため、加熱シリンダ100内に供給された蒸気が冷却されて凝縮してしまい、加熱シリンダ100内の圧力がなかなか上がらないためである。したがって、仕上げ乾燥の作業に取りかかるまでに時間を要する。
【0038】
(B) 作業者の退勤時に蒸気発生用のボイラの運転も停止してしまう場合には、翌日の出勤時に上述したドレンの排出を行うために、作業者がまずボイラの運転を開始して蒸気を供給可能な状態としなければならず、ドレン排出を終えるまでさらに時間がかかってしまう。
【0039】
(C) ドレン排出に蒸気を用いるが、本来暖める必要のないドレンに熱が奪われることにもなるため、エネルギー的にも無駄であり、コスト増も招く。
【0040】
そこで、たとえば、エアコンプレッサの電源を入れるだけで供給可能となる、比較的容易に準備可能な圧縮空気を加熱シリンダ100内に導入することで、ロール仕上機1の運転開始前にドレンを排出することが考えられる。しかし、圧縮空気を加熱シリンダ100内に導入することで、次のような不都合が生じる。
(a) 圧縮空気でドレンをドレントラップから排出した後、加熱シリンダ100内には圧縮空気が充満する。ドレントラップは、たとえば、フロート式の構造のものであれば、ドレンが存在する場合には作動してドレンを外部に排出するが、ドレンがなくなると作動しなくなる。したがって、ドレントラップから圧縮空気がなかなか抜けないこととなってしまう。また圧縮空気がドレントラップに至る配管に存在すると、ドレンがドレントラップに到達できず、ドレンの排出も妨げられてしまう。
【0041】
(b) 上記(a)のように圧縮空気が加熱シリンダ100から抜けにくくなることで、加熱シリンダ100内部の圧力が圧縮空気の供給圧力に略等しくなってしまう。そのため、蒸気を供給しようとしても、加熱シリンダ100内部の圧力が高いため、加熱シリンダ100内に蒸気が入り難くなってしまう。
【0042】
そこで、本実施の形態のロール仕上機1では、次のようにしてロール仕上機1の運転開始前のドレン排出を行うようにしている。図17は、ロール仕上機1に接続される蒸気配管およびドレン配管について示す図である。図11および図17において、81は蒸気入口であり、82はドレン出口である。蒸気入口81の下流の蒸気配管(仕上機内蒸気配管)は、各ロータリージョイントに接続されている。ドレン出口82の上流のドレン配管(仕上機内ドレン配管)は、各ロータリージョイントのドレンサイフォン管150と連通している。
【0043】
不図示のボイラから蒸気入口81に至る蒸気の供給配管を蒸気配管Sと呼び、不図示のエアコンプレッサから供給される圧縮空気の供給配管を圧縮空気配管PAと呼び、ドレン出口82の下流のドレンを排出するための配管をドレン配管DRと呼ぶ。蒸気配管Sには、メインバルブ211と、サブバルブ212とが設けられている。メインバルブ211は、手動操作のバルブであり、ロール仕上機1に蒸気を供給するための主たるバルブである。サブバルブ212は、手動操作のバルブであり、ロール仕上機1の暖機を行う際に開くなど、少量の蒸気をロール仕上機1に供給する際に用いられるバルブである。そのため、サブバルブ212はメインバルブ211と並列に設けられるとともに、メインバルブ211よりも小さな口径(呼び径)のものが用いられる。
【0044】
圧縮空気配管PAには、電磁弁213が設けられている。電磁弁213は、圧縮空気の各加熱シリンダ100への供給を許可/遮断するバルブであり、制御回路201の制御信号によって開閉が制御される。電磁弁213の下流の圧縮空気配管PAは、メインバルブ211およびサブバルブ212の下流の蒸気配管Sに接続されている。なお、制御回路201は、たとえば、加熱シリンダ100を任意の回転速度を回転させるためのインバータなど、ロール仕上機1の各部を制御するための制御回路である。
【0045】
ドレン配管DRには、ドレントラップ221と、手動バイパスバルブ222と、電磁弁223とが並列に配設されている。ドレントラップ221には、たとえばフロート式のドレントラップが用いられるが、他の方式のドレントラップであってもよい。手動バイパスバルブ222は、ロール仕上機1の保守点検時などに手動操作でドレンを排出させる際などに操作されるバルブである。電磁弁223は、後述するようにロール仕上機1の運転開始前のドレン排出を行う際に、加熱シリンダ100のドレンおよび圧縮空気を排出させるためのバルブであり、制御回路201の制御信号によって開閉が制御される。
【0046】
ロール仕上機1の運転中、メインバルブ211およびサブバルブ212は開かれている。なお、サブバルブ212は閉じられていてもよい。ロール仕上機1の運転中、電磁弁213,223および手動バイパスバルブ222は閉じられている。
【0047】
その日の仕上げ乾燥作業が終了して、ロール仕上機1の運転を停止する際、作業者は、メインバルブ211およびサブバルブ212を閉止する。すなわち終業後には全てのバルブ211〜213,221〜223が閉じられた状態となる。
【0048】
制御回路201では、翌日の始業前の所定の時刻に電磁弁213,223を開くように設定されている。そのため、当該時刻(以下、設定開弁時刻と呼ぶ)になると、制御回路201から電磁弁213,223を開とする制御信号(圧縮空気供給許可信号およびドレン排出許可信号)が出力される。その結果、設定開弁時刻に電磁弁213,223が開く。作業員が出勤してきて不図示のエアコンプレッサの電源を投入すると、電磁弁213が開いているので、エアコンプレッサからの圧縮空気が圧縮空気配管PA、メインバルブ211およびサブバルブ212の下流の蒸気配管S、各ロータリージョイントを介して加熱シリンダ100内に供給される。また、電磁弁223が開いているので、加熱シリンダ100内に導入された圧縮空気の圧力で、加熱シリンダ100内のドレンがドレンサイフォン管150、ドレン配管DR、電磁弁223を介して外部に排出される。
【0049】
制御回路201では、所定の時刻に電磁弁213,223を閉じるように設定されている。そのため、当該時刻(以下、設定閉弁時刻と呼ぶ)になると、制御回路201から電磁弁213,223を閉とする制御信号(圧縮空気供給禁止信号およびドレン排出禁止信号)が出力される。設定閉弁時刻は、上述したようにエアコンプレッサからの圧縮空気によって加熱シリンダ100内のドレンが外部に排出され終わった頃の時刻とされる。なお、設定閉弁時刻に電磁弁213だけが先に閉じ、その後、電磁弁223が閉じるように、圧縮空気供給禁止信号の出力タイミングと、ドレン排出禁止信号の出力タイミングとをずらしてもよい。
【0050】
不図示のボイラの暖機運転完了後、作業員は、メインバルブ211およびサブバルブ212を操作して加熱シリンダ100内に蒸気を供給させる。その際、ウォータハンマ防止のため、サブバルブ212を徐々に開いて、加熱シリンダ100内に蒸気を供給する必要がある。そのため、作業員は、サブバルブ212を徐々に開くように操作をする必要がある。このようにして加熱シリンダ100に蒸気を供給し始めることで、ウォータハンマが起こらない程度に各部が暖まると、メインバルブ211を開いて蒸気を供給してもよい状態となる。作業員は、ウォータハンマが起こらない程度に各部が暖まった後、メインバルブ211を開く。その後、加熱シリンダ100が所望の温度まで上昇すれば、ロール仕上機1の仕上げ乾燥作業が開始できる状態となる。ここで、作業員がロール仕上機1の不図示の操作スイッチを操作すると、ロール仕上機1の運転が開始される。
【0051】
制御回路201は、作業員がロール仕上機1の不図示の操作スイッチを操作することで操作スイッチから出力される運転開始の操作信号を受信すると、当該操作信号の受信後、所定時間(排出側電磁弁開時間T1)だけ電磁弁223を開とする制御信号を出力する。その結果、電磁弁223は、作業員がロール仕上機1の不図示の操作スイッチを操作してから排出側電磁弁開時間T1が経過するまでの間だけ再び開く。上述したように、メインバルブ211およびサブバルブ212が開かれているので、排出側電磁弁開時間T1が経過する間に、加熱シリンダ100に供給される蒸気によって加熱シリンダ100内に残った空気と、加熱シリンダ100を暖めることで再び発生したドレンとが電磁弁223を介して外部に排出されることになる。本実施の形態のロール仕上機1では、このようにして、前日の運転で溜まってしまったドレンの排出、および、このドレン排出のために導入された圧縮空気(空気)の排気を仕上げ乾燥作業の開始前に実施できる。
【0052】
図18は、上述したドレン排出および圧縮空気排気に関する各バルブの開閉状態が時間の経過とともにどのように変化するのかを示したタイムチャートである。加熱シリンダ100内のドレンは、設定開弁時刻から設定閉弁時刻までの間に圧縮空気によって外部に排出されることとなる。また、加熱シリンダ100内の空気は、作業者がロール仕上機1の不図示の操作スイッチを操作してから、排出側電磁弁開時間T1が経過するまでの間に、蒸気によって外部に排出されることとなる。
【0053】
上述したロール仕上機1では、次の作用効果を奏する。
(1) 胴部101の内部に突状部140を設けるように構成した。これにより、加熱シリンダ100が回転した際に、加熱シリンダ100の底部に滞留しているドレンを突状部140で煽ってドレンサイフォン管150が設けられている鏡板103側に寄せることができるので、加熱シリンダ100内のドレン排出を促して、加熱シリンダ100の表面の温度低下を抑制できる。
【0054】
(2) 加熱シリンダ100が回転したときに、加熱シリンダ100の下部に滞留しているドレンに対して抵抗となるように突状部140を形成した。これにより、加熱シリンダ100が回転した際に、加熱シリンダ100の底部に滞留しているドレンを効果的に煽ることができるので、加熱シリンダ100の表面の温度低下を効果的に抑制できる。
【0055】
(3) 突状部140を板状の部材で形成した。これにより、板状の部材を胴部101の内周面に溶接して取り付けるなどすることで突状部140を設けることができるので、突状部140を安価に設けることができる。
【0056】
(4) シャフト53に容易に固定可能であり、かつ、容易にシャフト53の軸方向に移動可能なワイヤクリップ60を用いて、ガイドテープテンションブラケット52やガイドテープ51の位置を規定するように構成した。これにより、仕上げ乾燥を行う繊維製品に応じてガイドテープ51同士の間隔を任意の間隔に容易に変更できるので、多様な繊維製品の仕上げ乾燥を行う場合であっても、繊維製品が圧迫ロール11と第1加熱シリンダ100aとの間に正常に導かれないという不具合を容易に防止できる。
【0057】
(5) ねじりコイルバネを構成するねじりコイルバネ部61をワイヤクリップ60に設け、腕部62に外力が与えられない状態では、ねじりコイルバネ部61の内径がシャフト53の外径よりも小さく、巻き戻し方向にねじられると、ねじりコイルバネ部61の内径がシャフト53の外径よりも大きくなるように構成した。したがって、ねじりコイルバネ部61の内径部分にシャフト53が挿通された状態では、腕部62に外力が与えられなければワイヤクリップ60がシャフト53上に固定され、巻き戻し方向にねじられると、ワイヤクリップ60がシャフト53の軸方向に移動可能となる。これにより、ワイヤクリップ60が簡単で安価な構成となるので、低コストであり、ワイヤクリップ60の耐久性も高い。
【0058】
(6) ねじりコイルバネ部61の素線の太さを利用して、ガイドテープ51のシャフト53bの軸方向に対する移動を規制するように構成した。これにより、ガイドテープ51の位置規制および位置の変更を簡単な構成で実現でき、低コストである。
【0059】
(7) 仕上げ乾燥運転前のロール仕上機1に対して加熱シリンダ100内のドレンを圧縮空気を利用して排出するように構成した。したがって、蒸気発生用のボイラが暖機されるまで待たなくてはならないことや、加熱シリンダ100に供給した蒸気が凝縮されてしまって、ドレンをなかなか排出できないなどといった、ドレン排出を終えるまでに時間を要してしまうこととなる要因をなくすことができる。これにより、始業時のドレン排出を迅速に行うことができる。また、本来暖める必要のない冷えたドレンに蒸気の熱が奪われることがなく、蒸気を無駄に使用しないので、エネルギーコストを低減できる。
【0060】
(8) 作業者がロール仕上機1の不図示の操作スイッチを操作してから、排出側電磁弁開時間T1が経過するまでの間に加熱シリンダ100に供給される蒸気で加熱シリンダ100内の空気を排出できるので、加熱シリンダ100内に蒸気が入り難くなってしまうといった不具合や、空気の存在によるドレントラップの動作不良を防止できる。
【0061】
−−−変形例−−−
(1) 上述の説明では、ガイドテープ51やガイドテープテンションブラケット52の位置規制にワイヤクリップ60を用いているが、本発明はこれに限定されない。たとえば、図20に示すように、シャフト53に挿通されて、ボルト65a等でシャフト53に固定可能なカラー65を用いてガイドテープ51やガイドテープテンションブラケット52の位置規制を行うように構成してもよい。
【0062】
(2) 上述の説明では、メインバルブ211およびサブバルブ212は手動操作バルブであったが、本発明はこれに限定されない。たとえば、少なくともメインバルブ211およびサブバルブ212のいずれか一方を制御回路201の制御信号によって開閉が制御される自動操作バルブとしてもよい。そして、従業員がメインバルブ211およびサブバルブ212を操作して加熱シリンダ100内に蒸気を供給させる時間帯に、制御回路201が当該自動操作バルブを徐々に開くように制御信号を出力することで、加熱シリンダ100内に残った空気が蒸気で排気されるように構成してもよい。
【0063】
(3) 上述の説明では、突状部140によるドレンの水位変化に関する発明と、ガイドテープ51の位置規制に関する発明と、ドレンを圧縮空気で排出させる発明とについて説明しているが、これらの発明はそれぞれ独立して実施可能発明である。
(4) 上述した各実施の形態および変形例は、それぞれ組み合わせてもよい。
【0064】
なお、本発明は、上述した実施の形態のものに何ら限定されず、内部に導入された蒸気によって加熱される略横型円筒形状の加熱シリンダと、加熱シリンダを円筒の中心軸を中心として回転させる駆動手段と、駆動手段で回転駆動される加熱シリンダに被仕上物を供給する被仕上物供給手段とを備え、加熱シリンダは、円筒状部分の内周面に少なくとも1つの突部が設けられていることを特徴とする各種構造の業務用ロール仕上機を含むものである。
また、本発明は、上述した実施の形態のものに何ら限定されず、制御回路が、加熱シリンダの内部への圧縮空気の供給を許可/禁止する圧縮空気供給バルブに対して、圧縮空気の供給を許可する制御信号を出力して、加熱シリンダの内部に圧縮空気を供給することを特徴とする各種の加熱シリンダのドレン排出方法を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明を適用した業務用ロール仕上機(ロール仕上機)1の構造を模式的に示す図である。
【図2】加熱シリンダ100の断面を模式的に示した図である。
【図3】仕上機本体1aに取り付けられた加熱シリンダ100の左右端部近傍の断面を模式的に示した図である。
【図4】図3のIV−IV断面図である。
【図5】突状部140の斜視図である。
【図6】突状部140でドレンが煽られることによるドレンの水位変化を説明する図である。
【図7】突状部140の配設例を示す図である。
【図8】突状部140の配設例を示す図である。
【図9】突状部140の配設例を示す図である。
【図10】突状部140の配設例を示す図である。
【図11】ロール仕上機1を上から見たときの図であり、第1加熱シリンダ100aの近傍のみを示す図である。
【図12】ガイドテープテンションブラケット52の斜視図である。
【図13】ワイヤクリップ60を示す図である。
【図14】ワイヤクリップ60がガイドテープテンションブラケット52の位置を規制する様子を示す図である。
【図15】ワイヤクリップ60がガイドテープ51の位置を規制する様子を示す図である。
【図16】図15のV−V断面図である。
【図17】ロール仕上機1に接続される蒸気配管およびドレン配管について示す図である。
【図18】ドレン排出および圧縮空気排気に関する各バルブの開閉状態が時間の経過とともにどのように変化するのかを示したタイムチャートである。
【図19】突状部140の配設例を示す図である。
【図20】変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0066】
1 業務用ロール仕上機(ロール仕上機) 11 圧迫ロール
51 ガイドテープ 52 ガイドテープテンションブラケット
53 シャフト 60 ワイヤクリップ
100 加熱シリンダ 101 胴部
110,120 ロール軸 130 補強リング
140 突状部 150 内管(ドレンサイフォン管)
201 制御回路 213,223 電磁弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に導入された蒸気によって加熱される略横型円筒形状の加熱シリンダと、
前記加熱シリンダを円筒の中心軸を中心として回転させる駆動手段と、
前記加熱シリンダに被仕上物を供給する被仕上物供給手段とを備え、
前記加熱シリンダは、前記駆動手段によって回転駆動されたときに、前記内部で滞留するドレン水に接触する少なくとも1つの突部が内部に設けられていることを特徴とする業務用ロール仕上機。
【請求項2】
請求項1に記載の業務用ロール仕上機において、
前記加熱シリンダは、滞留する前記ドレン水を外部に排出するための排出管を有し、
前記排出管は、前記ドレン水が流入する流入口を有し、前記駆動手段によって前記加熱シリンダが回転駆動されても前記流入口が前記加熱シリンダの内部で略下方に向くように配設され、
前記突部は、前記駆動手段によって前記加熱シリンダが回転駆動されたときに、前記ドレン水に接触して前記流入口近傍に滞留する前記ドレン水の水位を上昇させるように形成されていることを特徴とする業務用ロール仕上機。
【請求項3】
請求項2に記載の業務用ロール仕上機において、
前記排出管は、前記流入口が略横型円筒形状を呈する前記加熱シリンダの一方端部側に位置するように配設され、
前記突部は、前記流入口よりも略横型円筒形状を呈する前記加熱シリンダの他方端部側に位置するように設けられていることを特徴とする業務用ロール仕上機。
【請求項4】
請求項3に記載の業務用ロール仕上機において、
前記排出管は、前記流入口が前記一方端部近傍に位置するように配設され、
前記突部は、前記他方端部近傍に位置するように設けられていることを特徴とする業務用ロール仕上機。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか一項に記載の業務用ロール仕上機において、
前記突部は、板状部材であることを特徴とする業務用ロール仕上機。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の業務用ロール仕上機において、
前記加熱シリンダの外周面に押しつけられて前記加熱シリンダとともに回動して、被仕上物を前記加熱シリンダの外周面に押しつける圧迫ロールと、
前記圧迫ロールに掛け回されて、前記圧迫ロールの軸方向に所定の間隔で複数設けられていて、前記加熱シリンダと前記圧迫ロールとの間に被仕上物を導くためのガイドテープと、
前記圧迫ロールとの間で前記ガイドテープが掛け回される軸状部材と、
前記軸状部材の軸方向に前記所定の間隔で設けられて前記ガイドテープ同士の間隔を規定するガイドテープ間隔規定手段をさらに備え、
前記ガイドテープ間隔規定手段は、前記軸状部材に固定可能であり、かつ、前記軸状部材への固定を解除すると前記軸状部材の軸方向に沿って移動可能であることを特徴とする業務用ロール仕上機。
【請求項7】
請求項6に記載の業務用ロール仕上機において、
前記ガイドテープ間隔規定手段は、ねじりコイルバネからなるねじりコイルバネ部を有し、
前記ねじりコイルバネ部の内径は、外力が加わらない状態では前記軸状部材の外径よりも小さく、ねじりコイルバネを巻き込む方向とは反対の方向に前記ねじりコイルバネ部に外力が加わると前記ねじりコイルバネ部の弾性変形領域内で前記軸状部材の外径よりも大きくなることを特徴とする業務用ロール仕上機。
【請求項8】
請求項7に記載の業務用ロール仕上機において、
前記ガイドテープ間隔規定手段は、前記ねじりコイルバネ部の内側に前記軸状部材が挿通されるように、前記軸状部材に取り付けられ、前記ガイドテープの側面から当接して前記ガイドテープが前記軸状部材の軸方向にずれないように前記ガイドテープの位置を規定していることを特徴とする業務用ロール仕上機。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか一項に記載の業務用ロール仕上機において、
前記軸状部材に挿通されて、前記ガイドテープに張力を付与する張力付与手段をさらに備え、
前記ガイドテープ間隔規定手段は、前記軸状部材に挿通された前記張力付与手段が前記軸状部材の軸方向にずれないように前記張力付与手段の位置を規定することを特徴とする業務用ロール仕上機。
【請求項10】
請求項2〜9のいずれか一項に記載の業務用ロール仕上機において、
前記加熱シリンダは、前記加熱シリンダに蒸気を導入する蒸気入口部を有し、
前記蒸気入口を介して前記加熱シリンダ内への圧縮空気の供給を許可/禁止する圧縮空気供給バルブと、
前記排出管から排出される前記ドレンをドレントラップを介さずに直接外部に排出することを許可/禁止するドレンバイパスバルブと、
前記圧縮空気供給バルブおよびドレンバイパスバルブへ制御信号を出力するバルブ制御手段とをさらに備え、
前記バルブ制御手段は、圧縮空気の供給を許可する制御信号(圧縮空気供給許可信号)を前記圧縮空気供給バルブに対して出力して、前記加熱シリンダの内部に圧縮空気を供給するとともに、前記ドレンをドレントラップを介さずに直接外部に排出することを許可する制御信号(ドレン排出許可信号)を前記ドレンバイパスバルブに対して出力して、前記加熱シリンダの内部に供給された圧縮空気の圧力によって押し出される前記ドレンをドレントラップを介さずに直接外部に排出させることを特徴とする業務用ロール仕上機。
【請求項11】
請求項10に記載の業務用ロール仕上機において、
前記バルブ制御手段は、圧縮空気供給許可信号を前記圧縮空気供給バルブに対して出力した後、一定の時間が経過すると前記圧縮空気供給バルブに対して、圧縮空気の供給を禁止する制御信号(圧縮空気供給禁止信号)を出力し、
前記バルブ制御手段は、前記ドレン排出許可信号を前記ドレンバイパスバルブに対して出力した後、前記一定の時間が経過すると前記ドレンバイパスバルブに対して、前記ドレンをドレントラップを介さずに直接外部に排出することを禁止する制御信号(ドレン排出禁止信号)を出力することを特徴とする業務用ロール仕上機。
【請求項12】
請求項11に記載の業務用ロール仕上機において、
前記バルブ制御手段は、業務用ロール仕上機の運転開始を示す信号を受信すると、前記ドレンバイパスバルブに対して前記ドレン排出許可信号を出力し、その後所定時間経過後に前記ドレンバイパスバルブに対して前記ドレン排出禁止信号を出力することを特徴とする業務用ロール仕上機。
【請求項13】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の業務用ロール仕上機の前記加熱シリンダに滞留する前記ドレンを外部に排出する加熱シリンダのドレン排出方法において、
制御回路は、前記加熱シリンダの内部への圧縮空気の供給を許可/禁止する圧縮空気供給バルブに対して、圧縮空気の供給を許可する制御信号(圧縮空気供給許可信号)を出力して、前記加熱シリンダの内部に前記圧縮空気を供給することを特徴とする加熱シリンダのドレン排出方法。
【請求項14】
請求項13に記載の加熱シリンダのドレン排出方法において、
制御回路は、前記圧縮空気供給バルブに対して圧縮空気供給許可信号を出力するとともに、前記加熱シリンダから排出される前記ドレンがドレントラップを介さずに直接外部に排出されることを許可/禁止するドレンバイパスバルブに対して、前記ドレンがドレントラップを介さずに直接外部に排出されることを許可する制御信号(ドレン排出許可信号)を出力することを特徴とする加熱シリンダのドレン排出方法。
【請求項15】
請求項14に記載の加熱シリンダのドレン排出方法において、
制御回路は、圧縮空気供給許可信号を前記圧縮空気供給バルブに対して出力した後、一定時間が経過すると前記圧縮空気供給バルブに対して、圧縮空気の供給を禁止する制御信号(圧縮空気供給禁止信号)を出力し、
制御回路は、前記ドレン排出許可信号を前記ドレンバイパスバルブに対して出力した後、前記一定の時間が経過すると前記ドレンバイパスバルブに対して、前記ドレンをドレントラップを介さずに直接外部に排出することを禁止する制御信号(ドレン排出禁止信号)を出力することを特徴とする加熱シリンダのドレン排出方法。
【請求項16】
請求項15に記載の加熱シリンダのドレン排出方法において、
制御回路は、業務用ロール仕上機の運転開始を示す信号を受信すると、前記ドレンバイパスバルブに対して前記ドレン排出許可信号を出力し、その後所定時間経過後に前記ドレンバイパスバルブに対して前記ドレン排出禁止信号を出力することを特徴とする加熱シリンダのドレン排出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2010−115240(P2010−115240A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−288714(P2008−288714)
【出願日】平成20年11月11日(2008.11.11)
【出願人】(592176055)株式会社アサヒ製作所 (7)