説明

極低温冷凍機

【課題】より効果的に冷凍の効率を高めることができる極低温冷凍機を提供すること。
【解決手段】本発明による極低温冷凍機1は、第一ディスプレーサ2と、第一ディスプレーサ2との間に第一膨張空間3を形成する第一シリンダ4と、第一ディスプレーサ2に連結される第二ディスプレーサ5と、第二ディスプレーサ5との間に第二膨張空間6を形成する第二シリンダ7と、第二ディスプレーサ5の外周面に形成されて第二膨張空間6から螺旋状に延びる螺旋溝8とを含み、螺旋溝8は第一膨張空間3に連通するとともに、螺旋溝8の断面積は第二膨張空間6側よりも第一膨張空間3側の方が小さいことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮装置から供給される高圧の冷媒ガスを用いて、サイモン膨張を発生させて極低温の寒冷を発生する極低温冷凍機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、二段側のディスプレーサの外周面の高温側において、クリアランスシール機構を施すとともに、二段側のディスプレーサの残余部分に螺旋溝を設けることが記載されている。このような構成により、螺旋溝内の冷媒ガスのサーフェイスヒートポンピング作用を冷凍機の冷凍能力に利用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3851929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1に記載の技術においては、螺旋溝内の冷媒ガスによる冷凍効率が十分でない。本発明はより効果的に螺旋溝内の冷媒ガスの冷凍効率を高めることができる極低温冷凍機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の問題を解決するため、本発明による極低温冷凍機は、
第一ディスプレーサと、当該第一ディスプレーサとの間に第一膨張空間を形成する第一シリンダと、前記第一ディスプレーサに連結される第二ディスプレーサと、当該第二ディスプレーサとの間に第二膨張空間を形成する第二シリンダと、前記第二ディスプレーサの外周面に形成されて前記第二膨張空間から螺旋状に延びる螺旋溝とを含み、前記螺旋溝は前記第一膨張空間に連通するとともに、前記螺旋溝の断面積は前記第二膨張空間側よりも前記第一膨張空間側の方が小さいことを特徴とする。
【0006】
ここで、前記断面積は前記第二膨張空間から前記第一膨張空間側に向かうにつれて段階的に小さくなることとしてもよく、最も小さい前記断面積の前記螺旋溝が形成される領域の前記第二ディスプレーサの軸方向における長さは、前記第二ディスプレーサのストロークよりも長いこととしてもよい。
【0007】
また、前記断面積は前記第二膨張空間から前記第一膨張空間に向かうにつれて連続的に小さくなることとしてもよい。
【0008】
さらに、前記断面積は前記螺旋溝の深さにより調整することとしてもよく、前記螺旋溝は前記第一膨張空間側に開口するテーパ部分を含むこととしてよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の極低温冷凍機によれば、螺旋溝内の冷媒ガスの冷凍効率を高めることで、冷凍機全体の冷凍効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る実施例1の極低温冷凍機1の一実施形態について示す模式図である。
【図2】実施例1の極低温冷凍機1の第二ディスプレーサ5における螺旋溝8の一実施形態について示す模式図である。
【図3】実施例1の極低温冷凍機1のサイドクリアランスをパルス冷凍機のパルスチューブと視た場合のフロー図である。
【図4】本発明に係る実施例2の極低温冷凍機1の一実施形態について示す模式図である。
【図5】本発明に係る実施例3の極低温冷凍機1の一実施形態について示す模式図である。
【図6】本発明に係る実施例4の極低温冷凍機1の一実施形態について示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0012】
本実施例1の極低温冷凍機1は、例えば、冷媒ガスとしてヘリウムガスを用いるギフォードマクマホン(GM)タイプの冷凍機である。図1に示すように、極低温冷凍機1は、第一ディスプレーサ2と、第一ディスプレーサ2に長手方向に直列に連結される第二ディスプレーサ5を備える。
【0013】
第一シリンダ4と第二シリンダ7は、一体に形成されており、第一シリンダ4の低温端と第二シリンダ7の高温端が第一シリンダ4底部にて接続されている。第二シリンダ7は第一シリンダ4と同軸に形成され、第一シリンダ4よりも小径の円筒部材である。第一シリンダ4は第一ディスプレーサ2を長手方向に往復移動可能に収容し、第二シリンダ7は第二ディスプレーサ5を長手方向に往復移動可能に収容する。
【0014】
第一シリンダ4、第二シリンダ7には、高い強度、低い熱伝導率、十分なヘリウム遮断能の確保を目的として例えばステンレス鋼が用いられる。第二ディスプレーサ5は、ステンレス鋼などの金属製の筒の外周面上に、フッ素樹脂などの耐摩耗性樹脂の皮膜を構成する。
【0015】
第一シリンダ4の高温端には、第一ディスプレーサ2及び第二ディスプレーサ5を往復駆動するスコッチヨーク機構(図示しない)が設けられており、第一ディスプレーサ2、第二ディスプレーサ5はそれぞれ第一シリンダ4、第二シリンダ7にそって往復移動する。
【0016】
第一ディスプレーサ2は円筒状の外周面を有しており、第一ディスプレーサ2の内部には、第一蓄冷材が充填されている。この第一ディスプレーサ2の内部容積を第一蓄冷器9とも表現できる。第一ディスプレーサ2の高温端には、室温室19から第一ディスプレーサ2に冷媒ガスを流通する第一開口15が形成されている。室温室19は、第一シリンダ4と第一ディスプレーサ2の高温端により形成される空間であり、第一ディスプレーサ2の往復移動に伴い容積が変化する。室温室19には、圧縮機12、サプライバルブ13、リターンバルブ14からなる吸排気系統を相互に接続する配管のうち、給排共通配管が接続されている。また、第一ディスプレーサ2の高温端よりの部分と第一シリンダ4との間にはシール11が装着されている。
【0017】
第一ディスプレーサ2の低温端には、第一膨張空間3に第一熱交換器20を介して冷媒ガスを導入する第二開口16が形成されている。第一膨張空間3は、第一シリンダ4と第一ディスプレーサ2により形成される空間であり、第一ディスプレーサ2の往復移動に伴い容積が変化する。第一シリンダ4外周の第一膨張空間3に対応する位置には、被冷却物に熱的に接続された第一冷却ステージ(図示しない)が配置されており、第一冷却ステージは第一熱交換器20により冷却される。
【0018】
第二ディスプレーサ5は円筒状の外周面を有しており、第二ディスプレーサ5の内部には、第二蓄冷材が充填されている。この第二ディスプレーサ5の内部容積を第二蓄冷器10とも表現できる。第一膨張空間3と第二ディスプレーサ5の高温端とは、連通路17で連通されている。この連通路17を介して第一膨張空間3から第二蓄冷器10に冷媒ガスが流通する。
【0019】
第二ディスプレーサ5の低温端には、第二膨張空間6に第二熱交換器21を介して冷媒ガスを流通させるための第四開口18が形成されている。第二膨張空間6は、第二シリンダ7と第二ディスプレーサ5により形成される空間であり、第二ディスプレーサ5の往復移動に伴い容積が変化する。第二熱交換器21は、第二シリンダ7の低温端部分と第二ディスプレーサ5により形成されるクリアランスであり、このクリアランスは螺旋溝を有する第二ディスプレーサ5と第二シリンダ7の間のクリアランスよりも大きくなるように構成される。
【0020】
第二シリンダ7外周の第二膨張空間6に対応する位置には、被冷却物に熱的に接続された第二冷却ステージ(図示しない)が配置されており、第二冷却ステージは第二熱交換器21により冷却される。
【0021】
第一ディスプレーサ2には、軽い比重と十分な耐摩耗性、比較的高い強度、低い熱伝導率の確保を目的として、例えば布入りフェノール等が用いられる。第一蓄冷材は例えば金網等により構成される。また、第二蓄冷材は、例えば鉛球等の蓄冷材をフェルト及び金網により軸方向に挟持することにより構成されている。
【0022】
さらに第二ディスプレーサ5の外周面には、第二膨張空間6に第二熱交換器21を介して連通する始端を有するとともに、螺旋状に第一膨張空間3側に延びる螺旋溝8が形成されている。この螺旋溝8は、図1中下側(低温側)には断面積の大きい螺旋溝8aを構成し、上側(高温側)には断面積の小さい螺旋溝8bを構成する。螺旋溝8bは第二ディスプレーサ5の上端にて終了する終端を有し、第一膨張空間3に連通している。また、螺旋溝8の断面積は第二膨張空間6から第一膨張空間3側に向かうにつれて段階的に小さくなるように形成されている。より具体的には、図2に示すように、段数を二段として螺旋溝8bの溝を浅く形成することで、螺旋溝8aよりも断面積を小さくしている。また、最も小さい断面積の螺旋溝8bが形成される領域の第二ディスプレーサ5の軸方向における長さは、第二ディスプレーサ5のストロークよりも長くなるように形成し、第二ディスプレーサ5が上死点に位置する状態でも第二シリンダ7内に螺旋溝8bが存在するように形成する。
【0023】
図3は、螺旋溝8aをパルスチューブ型冷凍機のパルス管に見立てた冷媒ガスフロー図である。螺旋溝8bは、第二蓄冷器10と螺旋溝8a(パルスチューブ)の高温側とを連通する連通路に配置されたダブルインレット(オリフィス)に対応する。螺旋溝8a内の冷媒ガスは、軸方向の略中間に位置する部分が仮想的なガスピストン8Pを構成する。つまり、螺旋溝8、第二蓄冷器10はダブルインレット式パルスチューブ冷凍機とみなすことができる。
【0024】
ここで、ガスピストン8Pは、必ず往復運動中螺旋溝8a内に収まり、ガスピストン8Pの高温側に高温側空間8Hが存在し、低温側に低温側空間8Lが存在するようにガスピストン8Pの軸方向の長さと位相が調整される。ガスピストン8Pの軸方向の長さと位相は、位相調整機構として機能するダブルインレット(螺旋溝8bの断面積)により調整される。
【0025】
次に、冷凍機の動作を説明する。冷媒ガス供給工程のある時点においては、第一ディスプレーサ2および第二ディスプレーサ5はそれぞれ第一シリンダ4および第二シリンダ7の下死点に位置する。それと同時、またはわずかにずれたタイミングでサプライバルブ13を開とすると、サプライバルブ13を介して高圧のヘリウムガスが給排共通配管から第一シリンダ4内に供給され、第一ディスプレーサ2の上部に位置する第一開口15から第一ディスプレーサ2の内部(第一蓄冷器9)に流入する。第一蓄冷器9に流入した高圧のヘリウムガスは、第一蓄冷材により冷却されながら第一ディスプレーサ2の下部に位置する第二開口16を介して、第一膨張空間3に供給される。
【0026】
第一膨張空間3に供給された高圧のヘリウムガスは更にその大部分が、連通路17を介して第二蓄冷器10に供給される。ここで、第二蓄冷器10に供給されない残りのヘリウムガスは、螺旋溝8bを通じて螺旋溝8aに高温側から供給される。このガスは図3における高温側空間8Hに存在するヘリウムガスに対応し、ガスピストン8Pが螺旋溝8aから第一膨張空間3に流出することを抑える役割を果たす。
【0027】
第二蓄冷器10に流入した高圧のヘリウムガスは、第二蓄冷材によりさらに冷却されながら、第四開口18、第二熱交換器21を介して第二膨張空間6に供給される。第二膨張空間6に供給された高圧のヘリウムガスのうち一部分は、螺旋溝8a内に低温側から供給される。このガスは、図3における低温側空間8L内に存在するヘリウムガスに対応する。
【0028】
ここで、上述のとおり、螺旋溝8bの断面積は、螺旋溝8aの断面積と比べて小さいため、高温側空間8Hに流入するヘリウムガスが螺旋溝8aに流入する際の流入抵抗は、低温側空間8Lに流入するヘリウムガスが螺旋溝8aに流入する際の流入抵抗に比べて大きい。そのため、高温側空間8Hに流入するヘリウムガスのガス量は、低温側空間8Lに流入するヘリウムガスのガス量よりも小さくなり、高温側空間8Hのガスが第二膨張空間6に抜けることは防止される。
【0029】
このようにして、第一膨張空間3、第二膨張空間6、螺旋溝8aは、高圧のヘリウムガスで満たされ、サプライバルブ13は閉とされる。この時、第一ディスプレーサ2および第二ディスプレーサ5は、第一シリンダ4及び第二シリンダ7内の上死点に位置する。それと同時、またはわずかにずれたタイミングでリターンバルブ14を開とすると、第一膨張空間3、第二膨張空間6、螺旋溝8aの冷媒ガスは減圧され、膨張する。膨張により低温になった第一膨張空間3のヘリウムガスは第一熱交換器20を介して第一冷却ステージの熱を吸収し、第二膨張空間6のヘリウムガスは第二熱交換器21を介して第二冷却ステージの熱を吸収する。
【0030】
第一ディスプレーサ2及び第二ディスプレーサ5は下死点に向けて移動し、第一膨張空間3、第二膨張空間6の容積は減少する。第二膨張空間6のヘリウムガスは、上述した開口18、第二蓄冷器10を介して第一膨張空間3内に回収される。ここで、螺旋溝8a内の低温側空間8Lのヘリウムガスも、第二膨張空間6を介して回収され、螺旋溝8a内の高温側空間8Hのヘリウムガスは、螺旋溝8bを介して第一膨張空間3内に流入される。
【0031】
第一膨張空間3内のヘリウムガスは、第二開口16、第一蓄冷器9を介して圧縮機12の吸入側に戻される。その際、第一蓄冷材、第二蓄冷材は、冷媒ガスにより冷却される。この工程を1サイクルとし、冷凍機はこの冷却サイクルを繰り返すことで、第一冷却ステージ、第二冷却ステージを冷却する。
【0032】
このような本実施例1の極低温冷凍機1によれば、以下のような有利な作用効果を得ることができる。つまり螺旋溝8a内に仮想的なガスピストン8Pを構成して、このガスピストン8Pをサイドクリアランスの低温側と高温側との間のヘリウムガスの通流を防止するシールとして機能させることができる。
【0033】
加えて、この仮想的なガスピストン8Pによりサイドクリアランスをパルスチューブ型冷凍機とみたて、ガスピストン8Pよりも低温側の低温側空間8Lを第三の膨張空間として利用することができるので、これによっても2段冷却ステージを冷凍する能力を高めることができる。
【0034】
上述した実施例1の極低温冷凍機1において、最も小さい断面積の螺旋溝8bが形成される領域の第二ディスプレーサ5の軸方向における長さは、第二ディスプレーサ5のストロークよりも長いこととすることにより、螺旋溝8bにダブルインレットの機能を具備させるにあたって、第二ディスプレーサ5が上支点に位置していてもこの機能を確保することができる。
【0035】
このように本実施例1においては位相調整機能を安定させることができることから、ガスピストン8Pの長さと位相を安定させて、上述したシール機能も安定させるとともに、第三の膨張空間もより冷凍効率を高めることができる。
【0036】
上述したガスピストン8Pを定義した上での冷凍効率を高める効果は以下の側面からも説明することもできる。つまり、第二ディスプレーサ5の外周面上に形成する螺旋溝8について、低温側の螺旋溝8aを高温側の螺旋溝8bよりも大きくすれば、高温側からサイドクリアランスを通して浸入してくる、換言すれば漏れてくる作動流体であるヘリウムガスは、低温側の螺旋溝8aによりトラップつまり捕捉され閉じこめられる。つまり、低温側の螺旋溝8aの断面積を大きくすれば、より多くの作動流体をトラップすることが可能となる。
【0037】
また、高温側から漏れてくる作動流体は低温側の螺旋溝8a内の作動流体と混合すると、作動流体の温度が下がる。温度が下がった作動流体が低温端に流入した場合、エンタルピーは高温側から低温側に貫通する場合よりも少なくなるため、リーク損失を低減することができる。同様に、螺旋溝8を低温端から高温端に貫通することにより、螺旋溝8内の作動流体つまりガスが圧縮されても、高温端に放出される放出熱を少なくすることができる。
【実施例2】
【0038】
上述した実施例1の極低温冷凍機1では、高圧ヘリウムガスは、第一膨張空間3から螺旋溝8aに向けて螺旋溝8bを通流し、低圧ヘリウムガスは、螺旋溝8aから第一膨張空間3に通流する。つまり、冷媒ガスがダブルインレットとして機能する螺旋溝8bを双方向に通流する。ここで、高圧ヘリウムガスは低圧ヘリウムガスよりも密度が高いため、低圧ヘリウムガスと比較して流速が小さく、圧力損失が小さい。そのため、1サイクルに螺旋溝8bを通過するガス量は、高圧ヘリウムガスの方が低圧ヘリウムガスよりもわずかに多く、双方向に通流するガス流量の間にアンバランスが生じる。その結果、冷却サイクルを重ねるごとに螺旋溝8aの高温側から低温側に向けた定常流れが発生しる。この流れは、図2中時計回りの矢印Lに示す二次流れである。
【0039】
本実施例2では、上述した実施例1における第一膨張空間3に開口する部分の螺旋溝8bの断面積を図4(a)に示すように螺旋溝8bの延在方向に一定とすることに換えて、図4(b)に示すように第一膨張空間3に向かうにつれて連続的に大きくなることとして、テーパ部分8bbを構成している。なお、図4においては、テーパ部分8bbにおいて第二ディスプレーサ5の径方向から視た幅方向寸法の調整により断面積を調整しているが、径方向の深さ方向も合わせて調整してもよい。
【0040】
これによれば、図2に示した二次流れLの発生を予め妨げる抵抗をテーパ部分8bbによりヘリウムガスの流れに付与することができる。つまり、第一膨張空間3から螺旋溝8aに向けて螺旋溝8bを通流する際の螺旋溝8bによる流路抵抗を、螺旋溝8aから第一膨張空間3にむけて通流する際の螺旋溝8bによる流路抵抗よりも大きくすることで、二次流れLの発生を抑制することができる。そのため、二次流れLに伴う熱損失を防止して、冷凍効率を高めることができる。
【実施例3】
【0041】
上述した実施例1及び実施例2においては、螺旋溝8の断面積を二段階に変化させる形態を示したが、三段階に変化させることもできる。以下それについての実施例3について述べる。
【0042】
本実施例3の極低温冷凍機1は、螺旋溝8以外の構成は図1に示した実施例1と基本的に同様であるため、共通する構成要素には同一の符号を付し相違点を主に説明する。つまり、図5に示すように、本実施例3の極低温冷凍機1においても、第二ディスプレーサ5の外周面に形成されて第二膨張空間6から螺旋状に延びる螺旋溝8を含む。螺旋溝8は第一膨張空間3に連通するとともに、螺旋溝8の断面積は第二膨張空間6側よりも第一膨張空間3側の方が小さく、断面積は第二膨張空間6から第一膨張空間3側に向かうにつれて三段階的に小さくなる。
【0043】
本実施例3においては、螺旋溝8aは、断面積が大きい順番に螺旋溝8aa、螺旋溝8ab、螺旋溝8bの三段階の形態をなしている。最も断面積の小さい螺旋溝8bはダブルインレットとして機能し、第一シリンダ4の底部つまり第一膨張空間3に対して常に一部が下に位置している。
【0044】
なお、図5においても、螺旋溝8aa、8ab、8bの断面積は第二ディスプレーサ5の中心軸線を通る断面内における断面積として示されており、それぞれ、深さと幅の双方により調整されていて、溝形状は曲面形状とされている。この断面積は螺旋溝8の延在方向に垂直な断面内での断面積としてもよく、溝形状は方形状であってもよい。
【0045】
本実施例3においても、図5に示すように上述した実施例1と同様に、第二ディスプレーサ5の外周面と第二シリンダ7の内周面との間のサイドクリアランスを構成する螺旋溝8aaと螺旋溝8abからなる高温側の螺旋溝8aを、図2に示したようにパルスチューブ型冷凍機と見立てて、螺旋溝8a内に仮想的なガスピストン8Pを構成して、螺旋溝8bをダブルインレットとしてガスピストン8Pの長さと位相を適切に調整することができる。
【0046】
つまりガスピストン8Pにより確実なシール機能を具備させてリーク損失を防止して、冷凍効率を高めることができ、螺旋溝8a内の低温側空間8Lを第三の膨張空間として利用して付加的な冷凍を行いこれによっても冷凍効率を高めることができる。
【実施例4】
【0047】
上述した実施例1〜3においては、螺旋溝8を第二ディスプレーサ5の外周面に対して延在する方向に段階的に断面積を変更する形態としているが、第一膨張空間3に向けて連続的に小さくする形態とすることもできる。以下それについての実施例4について述べる。
本実施例4の極低温冷凍機1は、螺旋溝8が第一膨張空間3に向けて連続的に断面積を小さくする形態とすること以外の構成は図1に示した実施例1と基本的に同様であるため、共通する構成要素には同一の符号を付し相違点を主に説明する。
【0048】
図6に示すように、本実施例4の極低温冷凍機1においては、第二ディスプレーサ5の外周面に形成されて第二膨張空間6から螺旋状に延びる螺旋溝8であって、断面積が第二膨張空間6に連通する始端から第一膨張空間3に連通する終端に向けて連続的に小さくなる形態を有している。
【0049】
本実施例4においても、上述した実施例1と同様に、第二ディスプレーサ5の外周面と第二シリンダ7の内周面との間のサイドクリアランスを構成する螺旋溝8のうち、第二ディスプレーサ5の軸方向の中間の任意の位置、例えば下端から第二ディスプレーサ5の軸方向の全体長さの三分の二程度を境界として低温側に位置する螺旋溝8aと、高温側に位置する螺旋溝8bに区分して、螺旋溝8aを、図2に示したようにパルスチューブ型冷凍機と見立てて、螺旋溝8a内に仮想的なガスピストン8Pを構成し、螺旋溝8bをダブルインレットとして長さと位相と適切に調整することができる。
【0050】
すなわち、リーク損失を防止して冷凍効率を高めることができ、螺旋溝8a内の低温側空間8Lを第三の膨張空間として利用してこれによっても冷凍効率を高めることができる。
【0051】
以上本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明は上述した実施例に制限されることなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形および置換を加えることができる。
【0052】
例えば、上述した極低温冷凍機においては段数が二段である場合を示したが、この段数は三段等に適宜選択することが可能である。
【0053】
また、螺旋溝8a、8bの断面積は、第二ディスプレーサ5の中心軸線を通る断面内における断面積としてもよく、螺旋溝8の延在方向に垂直な断面内での断面積としてもよい。また、それぞれ、断面積は、深さと幅の双方により調整することができ、溝形状は曲面形状、方形状など何れの形状であってもよい。
【0054】
また、実施の形態では、極低温冷凍機がGM冷凍機である例について説明したが、これに限られない。例えば、本発明は、スターリング冷凍機、ソルベイ冷凍機など、ディスプレーサを備える何れの冷凍機にも適用することができる。
【0055】
また、実施の形態では、螺旋溝8が第二ディスプレーサ5の高温側端部まで形成された例について説明したが、これに限られず、第二ディスプレーサ5が下死点に位置するときに第一膨張空間3に螺旋溝8aが到達していれば、同様の効果を奏することができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、サイドクリアランスにおけるリーク損失を低減し、かつ、サイドクリアランスを第三の膨張空間として利用して、冷凍の効率を高める極低温冷凍機に関するものである。
【0057】
本発明によれば、サイドクリアランスをパルスチューブ型冷凍機として利用するにあたり仮想的なガスピストンの軸方向の長さや位相の調整をより容易なものとすることができる。
【符号の説明】
【0058】
1 極低温冷凍機
2 第一ディスプレーサ
3 第一膨張空間
4 第一シリンダ
5 第二ディスプレーサ
6 第二膨張空間
7 第二シリンダ
8 螺旋溝
8a 螺旋溝(低温側)
8b 螺旋溝(高温側)
9 第一蓄冷器
10 第二蓄冷器
11 シール
12 圧縮機
13 サプライバルブ
14 リターンバルブ
15 第一開口
16 第二開口
17 連通路
18 第四開口
19 室温室
20 第一熱交換器
21 第二熱交換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一ディスプレーサと、当該第一ディスプレーサとの間に第一膨張空間を形成する第一シリンダと、前記第一ディスプレーサに連結される第二ディスプレーサと、当該第二ディスプレーサとの間に第二膨張空間を形成する第二シリンダと、前記第二ディスプレーサの外周面に形成されて前記第二膨張空間から螺旋状に延びる螺旋溝とを含み、前記螺旋溝は前記第一膨張空間に連通するとともに、前記螺旋溝の断面積は前記第二膨張空間側よりも前記第一膨張空間側の方が小さいことを特徴とする極低温冷凍機。
【請求項2】
前記断面積は前記第二膨張空間から前記第一膨張空間側に向かうにつれて段階的に小さくなることを特徴とする請求項1に記載の極低温冷凍機。
【請求項3】
最も小さい前記断面積の前記螺旋溝が形成される領域の前記第二ディスプレーサの軸方向における長さは、前記第二ディスプレーサのストロークよりも長いことを特徴とする請求項2に記載の極低温冷凍機。
【請求項4】
前記断面積は前記第二膨張空間から前記第一膨張空間に向かうにつれて連続的に小さくなることを特徴とする請求項1に記載の極低温冷凍機。
【請求項5】
前記断面積は前記螺旋溝の深さにより調整することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の極低温冷凍機。
【請求項6】
前記螺旋溝は前記第一膨張空間側に開口するテーパ部分を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の極低温冷凍機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−68345(P2013−68345A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206442(P2011−206442)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)