説明

極細電線の接続方法及び回路基板の製造方法

【課題】高温での加熱や大きな加圧を必要とせずに、極細電線を回路基板上の微細電極に接続し、高い接続信頼性と低い接続抵抗を得ることができる極細電線の接続方法、及び、この極細電線の接続方法を使用する、極細電線接続回路基板の製造方法を提供する。
【解決手段】極細電線を接着剤層Aに接着して電線接着層を作製する工程、導電性ペースト層及び前記導電性ペースト層に並列して接着する接着剤層Bからなる転写フィルムを作製する工程、及び前記電線接着層と微細電極をその上に有する回路基板との間に前記転写フィルムを挟持して加圧する工程を有し、前記挟持が、前記極細電線と前記導電性ペースト層及び前記導電性ペースト層と前記微細電極がそれぞれ接触するように行われることを特徴とする極細電線の接続方法、及び、前記極細電線の接続方法を使用する、極細電線接続回路基板の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極細電線を、回路基板上の微細な電極に電気的に接続する方法に関する。特に、極細同軸ハーネスの芯線のように、所定の間隔(ピッチ)で並列している複数本の極細電線(極めて細い電線)を、回路基板上の複数の微細な電極のそれぞれに電気的に接続する方法に関する。本発明は、又、この極細電線の接続方法を使用する、極細電線が接続された回路基板(極細電線接続回路基板)の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気信号の伝送用の電線として、導体(芯線)の外周に絶縁層を介してシールド線を被覆した同軸線が用いられている。シールド線は電導性の被覆であり、接地回路と接続することにより伝送信号への電磁波妨害を遮蔽することができる。近年は、電子機器の小型化、軽量化にともない、極めて細い極細同軸線が用いられるようになり、これを複数本並列して束ねた極細同軸ハーネスが電気信号の回路基板間の接続に広く用いられている。
【0003】
極細同軸ハーネスと回路基板との電気的接続は、ハーネスを構成する各極細同軸線の端末の芯線を露出させ、露出した各芯線のそれぞれを、回路基板上に並列して設けられている微細な電極に接続する方法により行われる。又、露出されたシールド線の端末も、回路基板の接地回路と接続される。
【0004】
図1は、極細同軸ハーネスと回路基板との接続の様子を示す斜視図である。図中、1は極細同軸ハーネスを表わし、10は回路基板を表わす。又、2は各極細同軸線を表わし、図1の例では、極細同軸線2が5本並列され、2枚の柔軟なリボン状の絶縁フィルム4の間に挟持されて極細同軸ハーネス1が構成されている。各極細同軸線2は、芯線21、その外周を被覆する絶縁層22、そのさらに外周を被覆するシールド線23、及びシールド線23の外周を被覆する絶縁被覆24からなる。
【0005】
図1が示すように、極細同軸ハーネス1の端末部Bでは、芯線21及びシールド線23等が露出している。又、シールド線23は、導体であるグランドバー3に接続しており、グランドバー3により互いに導通している。
【0006】
回路基板10上には、図示されていない回路とそれぞれ接続している微細電極11が5本並列しており、かつ接地電極12が設けられている。接地電極12は、回路基板10に設けられている接地回路(図示されていない)と接続している。極細同軸ハーネスと回路基板との接続の際には、図中の矢印で示すように、極細同軸ハーネス1の端末部Bを回路基板10上に載せ、各芯線21を各微細電極11のそれぞれと接続させる。同時にグランドバー3と接地電極12を接続することによりシールド線23を接地することができる。
【0007】
従来、芯線と微細電極との接続や、グランドバー(シールド線)と接地回路との接続は、半田付けや異方導電性シート(異方性導電性膜、ACF)を用いる方法等により行われていた。例えば、特許文献1には、データを送受信するための同軸ケーブルと印刷回路基板の接続において、接地パターン上に前記同軸ケーブルのシールドワイヤ(シールド線)を直接半田付けする方法が開示されている。
【0008】
又、特許文献2や特許文献3等に、異方導電性シートを用いる方法が開示されている。例えば特許文献2の段落0012には、異方導電性シートを用いて、極細同軸線ハーネスを配線板(回路基板)へ電気的に接続する方法が記載されている。ここで、異方導電性シートとは、シートの厚さ方向には導電性を有するとともにシートと平行な方向には絶縁性を有し、電線と導体配線間(回路基板)に異方導電性シートを挟持して押付けることにより、電線と導体配線とを電気的に接続するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−13076号公報
【特許文献2】特開2008−97929号公報
【特許文献3】特開2009−29841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、半田付けによる方法は、接続の際に半田の融点以上に加熱する必要があり、極細同軸ハーネスの芯線のような極細電線を接続する際には、電線の変形等の問題が生じやすい。特に近年は、環境問題への配慮から融点の高い鉛フリー半田が使用されるようになり、この問題はより顕著になっている。又、異方導電性シートを用いる方法では、より確実な導通を達成するためには、電線と回路基板間に挟持した異方導電性シートに大きな加圧をする必要がある。極細の電線の場合、この加圧により電線の変形や断線等が生じやすい。
【0011】
そこで、半田付けに必要な高温での加熱や、異方導電性シートを用いる場合に必要な大きな加圧を必要としない、極細電線と回路基板上の微細電極との接続方法の開発が望まれていた。
【0012】
本発明は、高温での加熱や大きな加圧を必要とせずに、極細電線を回路基板上の微細電極に接続し、高い接続信頼性と低い接続抵抗を得ることができる極細電線の接続方法を提供することを課題とする。本発明は、又、この極細電線の接続方法を使用して極細電線接続回路基板を製造する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上記課題を達成するために鋭意検討した結果、接着剤層に極細電線を接着した電線接着層、及び、導電性ペースト層と前記導電性ペースト層に接着する他の(前記とは異なる)接着剤層が接着してなる転写フィルムを作製し、前記電線接着層と微細電極を有する回路基板との間に、前記転写フィルムを、前記極細電線と前記導電性ペースト層及び前記導電性ペースト層と前記微細電極がそれぞれ接触するようにして、挟持し加圧する方法によれば、半田付けの場合に必要な高温での加熱や異方導電性シートを用いる場合に必要な大きな加圧を必要とせずに、前記極細電線及び前記微細電極を接続でき、低い接続抵抗及び高い接続信頼性が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0014】
請求項1の発明は、極細電線を接着剤層Aに接着して電線接着層を作製する工程、導電性ペースト層及び前記導電性ペースト層に接着する接着剤層Bからなる転写フィルムを作製する工程、及び前記電線接着層と微細電極を有する回路基板との間に前記転写フィルムを挟持して加圧する工程を有し、前記挟持が、前記極細電線と前記導電性ペースト層が接触しかつ前記導電性ペースト層と前記微細電極が接触するように行われることを特徴とする極細電線の接続方法である。
【0015】
本発明の接続方法では、極細電線は接着剤層Aに接着され電線接着層が形成される。接着剤層Aと接着されることにより、極細電線はその位置が固定される。特に、複数本の極細電線の束の場合は、極細電線間のピッチが接着剤層Aにより固定され微細電極との接続が容易になる。
【0016】
なお、極細電線(極めて細い電線)の径は、特に限定されないが、通常径(最大幅)2mm以下の金属からなる線に本発明は適用され、好適には径(最大幅)0.5mm以下、より好適には0.2mm以下の金属線に適用される。又、その断面形状も特に限定されず、丸型、平角状、扁平状の線等を挙げることができる。後述のように、極細電線としては極細同軸ハーネスの芯線を挙げることができ、本発明は、この芯線のような径が0.2mm以下の金属線が一定の間隔をおいて並列している金属線束の接続に特に好適に適用されるが、極細電線は、これに限定されず、極細同軸ハーネスのシールド線、シールド線間を接続(導通)するグランドバーや、極細同軸ハーネス以外に用いられている他の極細導体線も、その例として挙げることができる。
【0017】
転写フィルムは、導電性ペースト層と接着剤層Bからなる一層のフィルムを有する層であり、導電性ペースト層と接着剤層Bはその側面間が接着されてフィルムの面方向に並んでいる。従って、導電性ペースト層も接着剤層Bにより、その位置や(複数ある場合は)導電性ペースト層間のピッチが固定され、極細電線との接続(接着)を容易に行うことができる。
【0018】
接着剤層A及び接着剤層Bは、いずれも、一定の形状を保持でき、かつ塑性変形が可能な固形の接着剤からなる層である。接着剤層Aの接着剤と接着剤層Bの接着剤は同じ種類であってもよいし、異なった種類であってもよい。導電性ペースト層は導電性ペーストからなる層であり、導電性ペーストとは、導電性の微小粒子をエポキシ樹脂等の樹脂や必要により溶剤と混練してなり、導電性と、一定形状を保持できる保形性を有しながらも、外力により変形する塑性も有するものである。好ましくは、導電率が1×10S/m以上の導電性ペーストが用いられる。
【0019】
電線接着層及び転写フィルムを作製した後は、電線接着層と回路基板上の微細電極との間に転写フィルムを挟持して加圧する。この挟持、加圧は、電線接着層に接着している極細電線と転写フィルムの導電性ペースト層が接触するように、又、導電性ペースト層と微細電極が接触するようにして行われる。
【0020】
電線接着層と回路基板上の微細電極との間に転写フィルムを挟持して加圧する工程は、一段階で行ってもよいし、二段階で行ってもよい。すなわち
・極細電線、導電性ペースト層及び回路基板上の微細電極が全て重なるように(それぞれ対向するように)、電線接着層、転写フィルム及び回路基板間の位置合わせを行い、加圧する方法(一段階の方法)、及び
・電線接着層と転写フィルムを、極細電線と導電性ペースト層が接触するように(対向するように)重ねて加圧して極細電線上に導電性ペースト層を接着して接着体(接続構造)を作製した後、極細電線上の導電性ペースト層と微細電極が接触するように(対向するように)回路基板をさらに重ねて加圧し、導電性ペースト層と微細電極とを接着させる方法(二段階の方法)
のいずれも採用することができる。接着剤層をホットメルト接着剤で構成した場合等は、加圧とともに接着剤を溶融させるための加熱を行ってもよい。
【0021】
上記の挟持、加圧により、極細電線、導電性ペースト層及び微細電極間が導通され、極細電線と微細電極間の電気的接続が達成される。さらに、転写フィルムの接着剤層Bは、電線接着層(接着剤層A)及び回路基板と強固に接着(固着)する。その結果、極細電線、導電性ペースト層及び微細電極間の位置関係が強固に固定され、かつ導電性ペースト層を構成する導電性ペーストにより極細電線と微細電極間が確実に導通される。すなわち、極細電線−導電性ペースト層−微細電極間の導通が達成されるとともにこれらの位置関係が固定され、電気的接続が安定化される。なお、導電性ペースト層と微細電極が接触するように(対向するように)重ねるとは、導電性ペースト層の露出部と微細電極を向き合わせて、両者が充分接触するように位置合わせをすることを意味する。
【0022】
この加圧は、導電性ペースト層と各微細電極が充分に接触するように、又接着剤層が回路基板に接着するような条件で行われるが、異方導電性シートを用いる接続において必要とされるような大きな圧力は必要としない。又、加圧の際、接着剤層や導電性ペースト層をある程度流動させた方がより強固な接着が得られる場合があり、この場合好ましくは加熱される。しかし、この加熱は、半田付けにおける加熱よりもはるかに低い温度で行われる。すなわち、半田付けに必要な高温での加熱は必要としない。このように、本発明の接続方法では、高温での加熱や大きな圧力を必要としないので、極細電線の変形や断線等の発生が抑制されている。
【0023】
請求項2の発明は、前記極細電線、前記導電性ペースト層及び前記微細電極が、それぞれ、複数本からなり、それぞれ一定のピッチで並列していることを特徴とする請求項1に記載の極細電線の接続方法である。本発明の接続方法は、極細電線が1本の場合も適用できるが、特に、極細電線が一定ピッチで複数本並列して、極細電線束を形成しており、各極細電線を複数の微細電極のそれぞれに接続する場合に好適に適用される。この方法によれば、多数の電線を、同時に、容易に接続でき、低い接続抵抗と高い接続信頼性が得られる。なお、並列とは複数の線が間隔をおいて平行に並んでいることを言う。
【0024】
請求項2の接続方法では、転写フィルムを電線接着層と回路基板間に挟持して加圧する工程が、複数の極細電線と複数の導電性ペースト層がそれぞれ接触し、かつ、前記複数の導電性ペースト層と複数の微細電極がそれぞれ接触するようにして行われる。従って、複数の導電性ペースト層間のピッチ及び複数の微細電極間のピッチは、複数の極細電線間のピッチと同じである。
【0025】
請求項3の発明は、前記複数本の極細電線が、極細同軸ハーネスの芯線であることを特徴とする請求項2に記載の極細電線の接続方法である。請求項2の発明が特に好適に適用される例として、複数本の極細電線が極細同軸ハーネスの芯線である場合、すなわち、極細同軸ハーネスを回路基板に接続する場合を挙げることができる。
【0026】
請求項4の発明は、極細電線を接着剤層Aに接着して電線接着層を作製する工程の前に、前記極細電線の断面を扁平化して扁平部を形成する工程を有し、前記転写フィルムの挟持が、前記極細電線の扁平部と前記導電性ペースト層が接触するように行われることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の極細電線の接続方法である。
【0027】
前記の接続方法において接続信頼性を高めるためには、芯線と導電性ペースト層間の十分な付着、接触が求められる。しかし、実際には、従来の芯線のような断面が円形の極細電線と導電性ペースト層との接着では、接着面積が小さくなり、極細電線と導電性ペースト間の導通が不十分になり接続抵抗が増大する場合がある。又、接着面積が小さい場合は、極細電線と導電性ペースト間の接着力が小さくなるので、その後の工程で、導電性ペーストが芯線から脱離しやすく接続信頼性が低下しやすくなる場合がある。本発明者は、この課題を解決するために鋭意検討した結果、極細電線の端末断面を扁平化し、この扁平化された端末部上に導電性ペースト層を付着する方法によれば、より高い接続信頼性が得られることを見出した。
【0028】
この発明の方法は、複数本所定の間隔(ピッチ)をおいて並列している極細電線と、極細電線と同一の間隔で複数本並列している微細電極を、それぞれ接続する場合(すなわち、請求項2の発明の場合)に適用され、高い接続信頼性と強固な接着が得られる。本請求項の発明が適用される場合は、極細電線の断面形状は丸型に限定されず、平角状の線や撚線にも適用することができる。
【0029】
極細電線の断面を扁平化して扁平部を形成する工程を、極細電線を接着剤層Aに接着して電線接着層を作製する工程の前に設け、形成された扁平部上に導電性ペーストを付着させることにより、偏平化せずに付着させた場合と比べて、付着の際の導電性ペーストの変形が小さくなり、かつ大きな接着面積、大きな接着力が得られる。
【0030】
扁平部は、通常、極細電線の端末部に形成される。極細電線が、極細同軸ハーネスの極細同軸線の場合は、極細同軸線の端末部の絶縁被覆等を剥離、除去して、露出した芯線に前記のような加工を施して扁平部が形成される。扁平部の長さは、回路基板上の微細電極との接続の長さに対応し、通常0.5〜10mmである。
【0031】
請求項5の発明は、扁平部の断面の縦径をX及び横径をYとしたとき、Y/Xで表される扁平率が2〜25であることを特徴とする請求項4に記載の極細電線の接続方法である。ここで、縦径Xとは、極細電線断面を押しつぶして扁平化するときの押しつぶされた方向の径であり、横径Yとは、押しつぶされた方向と垂直方向の径である。扁平率が2以上となるように扁平部を形成するとより優れた接続安定性が得られ、3以上であると特に優れた接続安定性が得られるので好ましい。一方、扁平率が30を超える扁平部を形成すると隣接する極細電線の扁平部間が近接し、線間の耐圧が低下し短絡等が生じやすくなる。従って、扁平部の扁平率は25以下が好ましく、より好ましくは17以下である。
【0032】
請求項6の発明は、扁平部を形成する工程が、複数のV溝が一方向に並列して設けられているプレス定盤、及び前記V溝と咬合するクサビ状突起が一方向に複数並列して設けられているプレスヘッドからなり、前記クサビ状突起の先端、又は前記クサビ状突起の先端及び前記V溝の底面に平面部を有する極細電線扁平化具を用い、前記V溝に、極細電線を落し込んだ後、前記V溝と前記クサビ状突起を咬合させて前記プレスヘッドを加圧する方法により行われることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の極細電線の接続方法である。
【0033】
扁平部の形成は、例えば、前記の極細電線扁平化具を使用して行うことができる。この極細電線扁平化具を用いることにより並列している複数本の極細電線を、同時に容易に扁平化することができる。
【0034】
この極細電線扁平化具を使用して極細電線の扁平化を行うとき、先ず、複数本の極細電線を、前記プレス定盤のV溝の底面に落し込む。その後プレスヘッドのクサビ状突起をV溝に咬合させ加圧すると、極細電線の断面のクサビ状突起の先端に接する部分は、その先端の平面部により加圧されて変形し平面となる。すなわち扁平化される。突起の先端とともに、V溝の底面にも平面部を有する場合は、極細電線の断面のV溝の底面に接する部分も、その底面の平面部により加圧されて変形し平面となる。
【0035】
請求項7の発明は、前記複数本の極細電線が、極細同軸ハーネスの芯線であることを特徴とする請求項4ないし請求項6のいずれか1項に記載の極細電線の接続方法である。請求項4の発明が特に好適に適用される例として、複数本の極細電線が極細同軸ハーネスの芯線である場合、すなわち、極細同軸ハーネスを回路基板に接続する場合(請求項6の発明の場合)を挙げることができる。請求項4の発明は、特に、0.1〜0.5mm程度の線径を有し、芯線径が0.02〜0.2mm程度であり、芯数が2〜100芯程度、間隔が0.1〜1mm程度、芯線長(芯線の扁平化される部分の長さ)が0.5〜10mm程度の、極細同軸ハーネスに好適に適用される。さらに好適に適用されるのは、芯数が10〜100芯程度、芯線長が1〜4mm程度の極細同軸ハーネスである。
【0036】
請求項8の発明は、前記極細電線が、極細同軸ハーネスの複数のシールド線であり、前記微細電極が、接地回路と接続する電極(接地電極)であることを特徴とする請求項1に記載の極細電線の接続方法である。
【0037】
請求項1の接続方法は、極細同軸ハーネスのシールド層と回路基板の接地電極とを接続する方法にも適用できる。請求項8の発明では、極細同軸ハーネスの複数のシールド線を接着剤層Aに接着して電線接着層を作製し、この電線接着層と、接地電極をその上に設ける回路基板間に転写フィルムを挟持して加圧して、複数のシールド線と接地電極間を接続する。複数のシールド線は転写フィルムの導電性ペースト層と接続し、導電性ペースト層は接地電極と接続して、シールド線と接地電極間が導通してシールド線の接地が行われる。又、接着剤層A及び転写フィルムの接着剤層Bにより、複数のシールド線は回路基板上に強固に接着されその位置が固定される。
【0038】
複数のシールド線間は互いに導通していてもよい。そこで、複数のシールド線が、1つの導電性ペースト層、1つの接地電極と接続されてもよい。すなわち、請求項8の発明で使用される転写フィルムは、1つの導電性ペースト層とそれと接着する接着剤層Bからなるものでもよい。
【0039】
請求項9の発明は、前記電線接着層が、その一表面に前記極細電線の一部が露出するように、前記極細電線を接着剤層Aに埋め込んで形成されており、反対側の表面が、離型フィルムAで覆われていることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の極細電線の接続方法である。
【0040】
極細電線を接着剤層Aに接着する方法は、極細電線が接着剤層A上にその位置が固定され、かつ極細電線が複数本からなる場合はそれらが所定のピッチで並列して固定される限りは特に限定されない。しかし、極細電線の断面の一部が、接着剤層Aの1表面上に露出するように、極細電線を接着剤層Aに埋め込む方法によれば、極細電線の位置の固定は強固になり、かつ、接着剤層Aと接着剤層Bとの強固な接着が容易に得られるので好ましい。接着剤層Aの1表面上に露出する極細電線の部分は、導電性ペースト層が接着される部分である。この部分の面積が小さい場合は、導電性ペースト層との接着が不十分になり、充分な導通が得られず接続抵抗が高くなりやすい。従って、導電性ペースト層と接着して充分な導通が得られる面積とすることが望まれるが、請求項4の発明によれば、すなわち極細電線を扁平化する方法によれば、接着される部分の面積を大きくすることができ、導電性ペースト層との十分な接着を得ることができる。
【0041】
電線接着層と回路基板との間に転写フィルムを挟持して加圧する場合、ヒートツール等の加圧手段により電線接着層側から加圧する方法を、好ましい方法として挙げることができる。そこで、加圧手段と電線接着層との接着を防ぐために、電線接着層の加圧される側(極細電線の一部が露出している表面の反対側の表面)を離型フィルムで覆うことが好ましい。離型フィルムAは、容易に剥離できる弱い力で接着剤層Aに接着するフィルムから選択される。
【0042】
請求項10の発明は、導電性ペースト層及び前記導電性ペースト層に接着する接着剤層Bからなる転写フィルムを作製する工程、前記転写フィルムを、極細同軸ハーネスのグランドバーと、回路基板の接地回路と接続する電極間に挟持して加圧する工程を有することを特徴とする極細電線の接続方法である。
【0043】
極細同軸ハーネスとしては、その端末部の複数のシールド線を横断して連結するグランドバーを設けたものも使用されている。この極細同軸ハーネスでは、グランドバーを接地電極に接続してシールド線の接地を行う。請求項1の発明の接続方法は、グランドバーと接地電極の接続にも応用することができ、高い接続信頼性と低い接続抵抗(すなわち、安定した接地)を達成することができる。
【0044】
なお請求項10の発明の場合は、請求項1の発明の場合における電線接着層を作製する工程を省略することができる。そして、導電性ペースト層と接着剤層Bからなる転写フィルムを、グランドバーと接地電極(微細電極)をその上に有する回路基板との間に挟持して加圧することにより、導電性ペースト層によりグランドバーと接地電極間が導通され、接着剤層Bにより、グランドバーと回路基板間が強固に接着、固定される。
【0045】
請求項11の発明は、転写フィルムが、離型フィルムB上に設けられることを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の極細電線の接続方法である。
【0046】
極細電線と微細電極間の接続を前記の二段階の方法により行う場合、すなわち、電線接着層と転写フィルムを重ねて加圧して、先ず、導電性ペースト層を極細電線上に接着させる場合、電線接着層上に転写フィルムを重ねて、ヒートツール等の加圧手段により転写フィルムを加圧する方法が好ましく採用される。この場合、転写フィルムの接着剤層Bと加圧手段の接着を防ぐために、転写フィルムの一表面(電線接着層と接着される側とは反対の表面)は離型フィルムで覆われることが好ましい。
【0047】
離型フィルムBは、容易に剥離できる弱い力で接着剤層Bに接着するフィルムである。離型フィルムAと、同じ材質からなるものであってもよいし、異なる材質からなるものであってもよい。
【0048】
請求項12の発明は、請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載の極細電線の接続方法をその一工程として含むことを特徴とする極細電線接続回路基板の製造方法である。
【0049】
この製造方法によれば、半田付けの場合に必要な高温での加熱や異方導電性シートを用いる場合に必要な大きな加圧を必要とせずに極細電線と回路基板を接続することができ、高い接続信頼性と低い接続抵抗を有する極細電線接続回路基板を製造することができる。
【発明の効果】
【0050】
本発明の極細電線の接続方法によれば、高温での加熱や大きな圧力での加圧を必要とせずに、極細電線と微細電極間を接続でき、低い接続抵抗及び高い接続信頼性を有する接続を形成できる。従って、この接続方法を使用する本発明の極細電線接続回路基板の製造方法によれば、高温での加熱や大きな加圧を必要とせずに、高い接続信頼性と低い接続抵抗を有する極細電線接続回路基板を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】極細同軸ハーネスと回路基板との接続の様子を示す斜視図である。
【図2】本発明の接続方法の一例の一工程を示す図である。
【図3】本発明の接続方法の一例の一工程を示す図である。
【図4】本発明の接続方法の一例の一工程を示す図である。
【図5】本発明の接続方法の一例の一工程を示す図である。
【図6】本発明の接続方法の一例の一工程を示す図である。
【図7】本発明の極細電線の接続方法の一工程の一例を示す図である。
【図8】本発明の極細電線の接続方法の一工程の一例を示す図である。
【図9】本発明の極細電線の接続方法の一工程の一例を示す図である。
【図10】本発明の極細電線の接続方法の一工程の一例を示す図である。
【図11】本発明の極細電線の接続方法の一工程の一例を示す図である。
【図12】本発明の極細電線の接続方法において使用される転写フィルムの作製工程を表わす斜視図である。
【図13】本発明の極細電線の接続方法の一工程の一例を示す図である。
【図14】本発明の極細電線の接続方法の一工程の一例を示す図である。
【図15】従来の極細電線の接続方法の一工程を示す図である。
【図16】本発明の接続方法の他の一例の一工程を示す図である。
【図17】本発明の接続方法の他の一例の一工程を示す図である。
【図18】本発明の接続方法の他の一例の一工程を示す図である。
【図19】本発明の接続方法の他の一例の一工程を示す図である。
【図20】本発明の接続方法の他の一例の一工程を示す図である。
【図21】本発明の接続方法の他の一例の一工程を示す図である。
【図22】実施例における接続抵抗の測定方法を示す模式断面図である。
【図23】実施例における絶縁抵抗の測定方法を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
次に、本発明を実施するための形態について説明するが、本発明の範囲はこの形態に限定されるものではなく本発明の趣旨を損なわない範囲で種々の変更をすることができる。
【0053】
図2〜6は、請求項3の発明に該当する態様、すなわち、極細同軸ハーネスの芯線を回路基板の微細電極に接続する方法を表わす。なお、請求項3の発明は、0.1〜0.5mm程度の径の同軸線が、0.1〜1mm程度のピッチで2〜80本程度並列しており、芯線径が0.02〜0.2mm程度であって、端末部の芯線長(芯線の露出してる部分の長さ)が0.5〜10mm程度の、極細同軸ハーネスに好適に適用される。
【0054】
図2は、請求項3の発明に該当する一態様で使用される転写フィルムの作製工程を表わす斜視図である。図中、5は転写フィルムを表わし、51は離型フィルムB(請求項5の離型フィルムBに該当する)を、52は接着剤層B(請求項1の接着剤層Bに該当する)を、53は導電性ペースト層を表わす。
【0055】
導電性ペースト層は、離型フィルム上に、導電性ペーストを付与する方法により形成することができる。導電性ペーストを付与する方法としては、例えば、孔版印刷、特にスクリーン印刷を挙げることができる。孔版印刷は、孔が開けられた孔版を離型フィルム上に被せ、孔版の上に導電性ペーストを付与し、前記の孔からペーストを擦りつけることで離型フィルム上に導電性ペースト層を形成する方法である。スクリーン印刷の場合は、前記の孔版として、印刷に不要な個所を乳剤等で固めた(ペーストが透過しないようにされた)スクリーン(網)を用い、スキージと呼ばれるゴムのヘラでペーストを擦りつける。スクリーンとしては、絹、ナイロン等からなるスクリーンを用いることができる。
【0056】
図2(a)は、離型フィルムB51上に、導電性ペーストが付与され、導電性ペースト層53が形成された様子を表わす。図2より明らかなように、この例では、5本の導電性ペースト層53が、一定のピッチで並列して形成されている。
【0057】
導電性ペースト層が形成された後、導電性ペースト層の側面に接して接着剤層Bが形成される。図2(b)は、5本の導電性ペースト層53の間及びその両側に接着剤が付与されて接着剤層B52が形成され、転写フィルム5が作製された様子を表わす。図2(b)より明らかなように、導電性ペースト層53の間は接着剤により充填されている。接着剤の付与の方法としても、孔版印刷、特にスクリーン印刷を挙げることができる。
【0058】
導電性ペースト層を構成する導電性ペーストとしては、銀、銅、ニッケルや半田等の金属粒子や黒鉛等のカーボンの粒子をエポキシ樹脂等の樹脂や必要により樹脂を溶解する溶剤とともに混練したものを用いることができる。図2に示す導電性ペースト層53は、直線状(長方形状)の形状で5本設けられているが、導電性ペースト層の形状は、接続される極細電線の方向に沿うように設けられている(すなわち直線状に並んでいる)限りは、これに限定されない。例えば破線状やドットが直線上に並んでいる形状でもよい。
【0059】
導電性ペースト層の大きさは、極細電線や微細電極との接続が容易であり、かつ充分な導通が得られるように選択される。請求項3の発明が好適に適用されるものとして前記で例示された大きさの極細同軸ハーネスの接続に用いられる場合は、導電性ペースト層の大きさを、次に示す範囲とすることが好ましい。
ピッチ:0.2〜1mm、長さ:0.5〜10mm、
高さ:0.01〜0.05mm、幅:0.05〜0.5mm
【0060】
転写フィルムの接着剤層Bを構成する接着剤の種類や接着剤層Bの大きさは、電線接着層や回路基板との強固な接着が達成されるように選択される。使用可能な接着剤としては、熱可塑性樹脂からなるホットメルト接着剤を挙げることができる。接着剤を構成する樹脂としては、ポリアミド系、ポリエステル系等を挙げることができる。
【0061】
又、請求項3の発明が好適に適用されるものとして前記で例示された大きさの極細同軸ハーネスの接続に用いられる場合は、接着剤層Bの大きさを、次に示す範囲とすることが好ましい。
ピッチ:0.2〜1mm、長さ:0.5〜10mm、
高さ:0.01〜0.05mm、幅:0.05〜0.5mm
【0062】
離型フィルムBは、容易に剥離できる弱い力で接着剤層Bに接着するフィルムである。剥離力が80〜800mN/50mmにあるフィルムから選択されることが好ましい。離型フィルムBとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン(PP)、ポリイミド(PI)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(PA)等の材質のフィルムを挙げることができ、シリコン等により離型処理がされているフィルムが好適に用いられる。又、請求項3の発明が好適に適用されるものとして前記で例示された大きさの極細同軸ハーネスの接続の場合は、離型フィルムBの厚さは、0.01〜0.5mm程度が好ましい。
【0063】
図3は、極細同軸ハーネスの端末の芯線が接着剤層Aに接着され、端末部に電線接着層が形成される工程、すなわち、電線接着層を作製する工程を示す。図3(a)は、接着剤層Aを芯線に接着する工程を示す斜視図であり、図3(b)は、図3(a)のl−l断面の断面図であり、図3(c)は、芯線が接着剤層Aに接着され電線接着層が形成された様子を示す(l−l断面の)断面図である。
【0064】
図3中、2、4、21、22、23、24は、図1の同じ番号の符号と同じ部分を表わす。すなわち、図3で示す例の極細同軸ハーネスは、図1中と同じ構成の極細同軸ハーネスであり、5本の芯線21が並列している。図3中の6はヒートツールであり、72は接着剤層Aであり、接着剤層A72は、離型フィルムA71に貼り合わされて接着フィルム7を形成している。
【0065】
接着剤層A72と芯線21の接着は、図3(a)(b)が示すように、接着剤層A72が芯線21側となるように、接着フィルム7を芯線21に重ね、接着フィルム7を、ヒートツール6により図中の矢印の方向に加圧、加熱することにより行われる。図3(c)は、芯線21が接着剤層A72に接着された電線接着層8を表わす。図3(c)に示すように、芯線21は、接着剤層A72中に埋め込まれており、接着剤層A72の一表面側に芯線21の一部が露出している。
【0066】
接着剤層Aを構成する接着剤としては、ポリエステル系、ポリオレフィン系、ポリアミド系等の接着剤を用いることができる。接着剤層Aに貼り合わされる離型フィルムAとしては容易に剥離できる弱い力で接着剤層Aに接着するフィルムであり、前記の離型フィルムBと同様に、剥離力が80〜800mN/50mmにあるフィルムから選択されることが好ましく、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン(PP)、ポリイミド(PI)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(PA)等の材質のフィルムを挙げることができ、シリコン等により離型処理がされているフィルムが好適に用いられる。
【0067】
請求項3の発明が好適に適用されるものとして前記で例示された大きさの極細同軸ハーネスの接続の場合は、離型フィルムBの厚さは0.012〜0.1mm程度、接着剤層Aの厚さは0.01〜0.5mm程度が好ましい。又、この場合、ヒートツールによる接着フィルムの加圧、加熱は、温度100〜180℃程度、荷重0.1〜2.5MPa程度、加圧時間1〜30秒程度の条件で通常行われる。
【0068】
図4は、前記のようにして作製された電線接着層8に、転写フィルム5を接着する工程を示す。図4(a)は、この工程を示す斜視図であり、図4(b)は、図4(a)のm−m断面の断面図である。
【0069】
図4中、6はヒートツールを表わし、2、4、21、22、23、24は、(図3と同様に)図1の場合と同じ部分を表わす。又、5、51、52、53は、図2の場合と同じ部分を表わす。すなわち、図4中の5は、図2における転写フィルムを表わす。
【0070】
図4(a)(b)が示すように、電線接着層8に、転写フィルム5を接着する工程は、転写フィルム5の導電性ペースト層53を、電線接着層8の表面に露出している芯線21を対向させ、転写フィルム5の離型フィルムB51側から、ヒートツール6により図中の矢印の方向に加圧、加熱することにより行われる。加圧、加熱により、各芯線21と各導電性ペースト層53のそれぞれが接着して両者間が導通するとともに、接着剤層A72及び接着剤層B52も塑性変形しながら互いに接着する。
【0071】
請求項3の発明が好適に適用されるものとして前記で例示された大きさの極細同軸ハーネスの接続の場合は、ヒートツールによる転写フィルムの加圧、加熱は、温度100〜180℃程度、荷重0.1〜2.5MPa程度、加圧時間1〜30秒程度の条件で通常行われる。
【0072】
図4(c)は、電線接着層8に転写フィルム5を接着して形成された積層体を表わし、(図4(a)におけるm−m断面の)断面図である。図に示されるように、この積層体は、接着体9と離型フィルムB51からなり、図5(a)に示すように、接着体9は、導体層91及び離型フィルムA71からなる。なお、図4中の円内は、転写フィルム5を反転させた裏面側を表わす。
【0073】
図5(a)は、図4(c)と同じ部分(すなわち図4(a)のm−m断面)の断面図であるが、接着体9と離型フィルムB51からなる積層体から、離型フィルムB51を(図中の矢印のように)剥離する様子を示す。図5(b)は、離型フィルムB51が剥離された後の極細同軸ハーネスの端末部を示す斜視図である。図5により示されるように、接着体9の表面には導電性ペースト層53が露出している。なお、図5中の各符号は、図4中の同じ番号の符号と同じ部分を表わす。
【0074】
なお、接着体9は、極細電線を接着剤Aからなる接着フィルムに接着して電線接着層を作製し、次に、極細電線上に導電性ペーストをスクリーン印刷等により印刷して、その後、導電性ペースト層間に接着剤Bをスクリーン印刷等により印刷して接着剤層を形成する方法等によっても作製することができる。
【0075】
図6は、前記のようにして作製された接着体9の表面に露出する(複数の)導電性ペースト層53を回路基板110(微細電極以外の回路の図示は省略されている)の表面に設けられている微細電極111のそれぞれに接着する工程を示す。図6(a)は、この工程を示す斜視図であり、図6(b)は、接着される部分の断面図である。
【0076】
図6に示されるように、接着体9の表面に露出する各導電性ペースト層53(図5(b)を参照されたい。図6(a)の接着体9は、図5(b)の接着体9を上下反転させたものである)と各微細電極111が対向するように、接着体9と回路基板110を位置合わせした後、ヒートツール6により図中の矢印の方向に加圧、加熱することにより、導電性ペースト層53と微細電極111間が接着される。その結果、芯線21−導電性ペースト層53−微細電極111が導通し、芯線21と微細電極111間が接続される。又、接着体9を構成する接着剤(すなわち、接着剤層A72及び接着剤層B52を構成していた接着剤)により、芯線21、導電性ペースト層53の位置は強固に固定される。加圧、加熱後、離型フィルムA71は除去され、図6(c)で示される接続部が形成される。
【0077】
請求項3の発明が好適に適用されるものとして前記で例示された大きさの極細同軸ハーネスの接続の場合は、回路基板上の微細電極の大きさを次の範囲とすることが、接続操作を容易にする点からは好ましい。
電極幅:0.05〜0.8mm、電極高さ:0.01〜0.05mm、
ピッチ:0.2〜1mm、電極長:0.5〜10mm
【0078】
微細電極は、金等の貴金属でめっきされていることが好ましい。又、導電性ペースト層と微細電極間の接着のために行われるヒートツール6による加圧、加熱は、通常、温度:100〜220℃、荷重0.1〜3MPa、時間1〜30秒程度の条件で行われる。
【0079】
次に、請求項4の発明において行われる極細電線の扁平化について説明する。
【0080】
極細電線の扁平化は、前記のように極細電線扁平化具を使用して行うことが好ましい。この極細電線扁平化具のプレス定盤のV溝とプレスヘッドのクサビ状突起とは、互いに咬合して、極細電線の断面を扁平化できるような位置関係や断面形状にある。すなわち、V溝の間隔及びクサビ状突起の間隔は同一であり、それらの断面形状は、咬合した際には、扁平化後の極細電線の断面の形状に相当する空洞が(V溝の底面部とクサビ状突起の先端部の間に)生じるようにかつ他の部分は互いに密接するような関係にあることが好ましい。
【0081】
V溝間及びクサビ状突起間の間隔は、扁平化される複数の極細電線の間隔(ピッチ)に対応する。又、V溝の深さ及びクサビ状突起の高さは、極細電線の径に比べて充分大きくすることが望ましく、極細電線の径の2倍以上が好ましい。
【0082】
V溝及びクサビ状突起の長さは、極細電線上に付着される導電性ペーストの長さに対応する。極細電線が、極細同軸ハーネスの芯線の場合は、芯線と回路基板上の微細電極との接続の長さに対応するので、通常0.5〜10mm程度である。
【0083】
プレス定盤やプレスヘッドを形成する材料としては、扁平化の際に加えられる加圧に充分耐える材料から選ばれることが好ましく、例えば、炭素鋼、合金鋼、金型用鋼、焼き入れ鋼、ステンレス鋼、超硬合金を挙げることができる。
【0084】
図7〜10は、極細電線の扁平化工程を示す。図7は、極細電線扁平化具300、端末部が扁平化される極細同軸ハーネス310、及び付属の治具を表わす斜視図である。図7中、301はプレス定盤であり、302はプレスヘッドであり、プレス定盤301及びプレスヘッド302により極細電線扁平化具300が構成される。
【0085】
極細同軸ハーネス310は、極細同軸線311が平行に一定間隔で並んでなるものであり、極細同軸線311は、芯線(極細電線)312、その外周を被覆する絶縁体(図示されていない)、絶縁体の外周を被覆するシールド線313からなる。図中の314は、接地回路(図示されていない)と接続しているグランドバーであり、シールド線313がシールド効果(電磁妨害を防ぐ効果)を奏するようにシールド線313と接続している。
【0086】
図7に示されているように、プレス定盤301では、複数のV溝308が一方向に並列して設けられている。又、プレスヘッド302では、複数のクサビ状突起307が一方向に並列して設けられている。図7に示される例では、クサビ状突起307の先端及びV溝308の底部には平面部371及び381がそれぞれ設けられている。
【0087】
又、図7に示される例では、2枚のピッチ保持ガイド303が、プレス定盤301を挟むように密着して設けられている。ピッチ保持ガイド303は、V溝308と同じ大きさで同じ形状のV溝309が同じ間隔で設けられている。なお、ピッチ保持ガイドとは、後述の、極細電線に導電ペーストを付着する工程で、プレス定盤が取り外された後も極細電線間の間隔を一定に保持するために使用される治具である。従って、間隔を一定に保つためのV溝を有しており、このV溝の間隔は、扁平化される複数の極細電線の間隔に対応する。すなわち、プレス定盤のV溝と同一の間隔でV溝が一方向に並列して設けられている。ピッチ保持ガイドは、好ましくは2枚からなり、プレス定盤や後述する転写プレス定盤がこの2枚の間に挟持されるように設けられる。
【0088】
図7中、304は、後述する接着フィルムに扁平化された芯線312を接着するために使用される転写プレス定盤であり、305は、後述する導電ペーストの転写の際に、転写フィルムを加熱、加圧するためのヒートツールである。ヒートツール305は、加熱、加圧をする面である加熱面306とともに、段361を有する。図中の一点破線で示されるように、ヒートツール305の加熱面306、プレス定盤301、プレスヘッド302及び転写プレス定盤304の幅は同一である。
【0089】
次に、図7に示される極細電線扁平化具300を使用して、複数の極細電線(芯線312)を扁平化し、扁平化された極細電線上に、導電ペーストを付着させる方法を説明する。
【0090】
先ず、芯線312のそれぞれを各V溝308に落し込む。図8は、その様子を示す図であり、図8(a)は斜視図、図8(b)は部分断面図である。図中の矢印で示す方向に、芯線312の束を移動させて、芯線312をV溝308の底部(平面部381)に落し込む。
【0091】
次に、芯線312を扁平化する。図9は、その様子を示す図であり、図9(a)は斜視図、図9(b)は部分断面図である。図9に示すようにこの工程では、V溝308にクサビ状突起307が咬み合わされるようにして、プレスヘッド302を図中の矢印で示す方向に移動させてプレス定盤301のV溝308の底部にある芯線312をプレス(扁平プレス)する。芯線312は、(クサビ状突起307の先端の)平面部371と(V溝308の底部の)平面部381の間に挟まれて圧縮され、その断面は扁平化し、扁平部が形成される。極細電線が、径0.1mm以下の極細同軸線の芯線(銅線)の場合、扁平プレスの荷重及びプレス時間は、通常、それぞれ5〜100MPa及び5〜300秒程度である。
【0092】
芯線312が扁平化された後、プレス定盤301及びプレスヘッド302は装置から取り外される。図10は、その様子を示す図であり、図10(a)は斜視図、図10(b)は部分断面図である。プレス定盤1及びプレスヘッド302は、それぞれ図中の矢印で示す方向に移動させて取り外される。図10中の312は、扁平化された(部分を有する)芯線である。図10に示されているように、プレス定盤301が取り外された後も、ピッチ保持ガイド303のV溝309により芯線312間の間隔(ピッチ)は保持される。
【0093】
図11、13は、以上のようにして扁平部が形成された芯線(極細電線)312と、導電性ペースト層及び接着剤層を有する接着体を作製する工程の一例を表わす。
【0094】
先ず、保持ガイド303のV溝309により保持されている芯線312に、接着フィルム341を接触させて、接着フィルム341上に芯線312を保持させる。ここで接着フィルム341は、PET等からなる補強フィルム342上に接着剤層343が設けられているフィルムである。
【0095】
図11は、その様子を示す図であり、図11(a)は斜視図、図11(b)は部分断面図である。接着フィルム341は、転写プレス定盤304上に接着剤層343を上にして設けられている。転写プレス定盤304を図中の矢印で示す方向に移動すると、芯線312が接着剤層343に接着し、接着フィルム341上に保持される。このようにして極細電線(芯線312)の扁平部が接着フィルムに接着している電線接着フィルムが作製され、転写プレス定盤304上に保持される。
【0096】
図12は、前記方法302において使用される転写フィルムの作製工程を表わす斜視図である。図中、320は転写フィルムを表わし、351は離型フィルムを、352は接着剤層を、353は導電性ペースト層を表わす。図12(a)は、離型フィルム351上に、導電性ペーストが付与され、導電性ペースト層353が形成された様子を表わす。図12(a)より明らかなように、この例では、5本の導電性ペースト層353が、一定の間隔で並列して形成されている。導電性ペーストを付与する方法としては、前記図2の説明の場合と同様に、例えば、孔版印刷、特にスクリーン印刷を挙げることができる。導電性ペースト層353の形状や大きさ等も前記図2の説明の場合と同様である。
【0097】
導電性ペースト層353が形成された後、導電性ペースト層の側面に接して熱可塑性樹脂からなる接着剤層352が形成され、離型フィルム351上に、導電性ペースト層353及び接着剤層352が交互に並列して設けられた転写フィルム20が作製される。転写フィルム320の接着剤層352を構成する接着剤の種類や接着剤層の大きさや、離型フィルム351についても、前記図2の説明の場合と同様である。
【0098】
このようにして作製された転写フィルム320を、前記のようにして得られた転写プレス定盤304上(の接着フィルム341上)に保持されている極細電線(芯線312)の束上に、芯線312と導電ペースト層353が接するように被せ、加熱、加圧することにより、導電ペースト353が、芯線312上に付着する。図13は、その様子を示す図であり、図13(a)は斜視図、図13(b)は部分断面図である。すなわち、転写フィルム320は、転写プレス定盤304上の接着フィルム341上に保持させている芯線312の束に、導電性ペースト層353が芯線312の方向に沿うように、被せられ、ヒートツール305の加熱面306により、加熱、加圧される。その結果、各芯線312に導電性ペースト層353が付着し、両者間が導通する。
【0099】
又、転写フィルム320を前記のように加熱、加圧することにより、熱可塑性樹脂からなる接着剤層352及び芯線312を保持する接着フィルム341の接着剤層343も塑性変形して互いに接着する(通常混合もする)。このようにして、各芯線312と導電性ペースト層353の付着及び接着剤層352と接着剤層343の接着がされた後、離型フィルム351は剥離、除去され、接着体321が得られる。図13(c)は、このようにして作製された接着体321を表わす断面図である。なお、接着剤層352と接着剤層343は接着の際に通常一部混合するので、図中では、この一部混合してなる接着剤層を、接着剤層352+343で表す。
【0100】
前記で例示された好ましい大きさの極細同軸ハーネスの接続の場合は、ヒートツール5による転写フィルムの加圧、加熱は、温度100〜180℃程度、荷重0.1〜2.5MPa程度、加圧時間1〜30秒程度の条件で通常行われる。
【0101】
図13(b)(c)に示すように、各芯線312の断面は扁平化されており、この扁平化している部分(扁平部)に導電性ペースト層353が付着される。各芯線312の断面が扁平化していることにより、付着の際の導電性ペーストの変形が小さくなり、又大きな接着面積、大きな接着力が得られ、高い接続信頼性が達成される。
【0102】
一方、各芯線312の断面が扁平化していない場合は、芯線と導電性ペースト層間の接続に種々の問題が発生しやすく、高い接続信頼性が得られ難い。図15は、各芯線312の断面が扁平化していない場合に生じる種々の問題の例を模式的に示す断面図であるが、図15(a)に示すように芯線と導電性ペースト層間の接触が点接触となる、図15(b)に示すように芯線のピッチ乱れが発生する、図15(c)に示すように芯線に押しつぶされて導電性ペースト層が分断する等の問題が発生し、接続が不安定になりやすい。
【0103】
図14は、前記のようにして作製された接着体321の表面に露出する(複数の)導電性ペースト層353を回路基板410(微細電極以外の回路の図示は省略されている)の表面に設けられている微細電極411のそれぞれに接着する工程を示す。図14(a)は、この工程を示す斜視図であり、図14(b)は、接着される部分の断面図である。
【0104】
図14に示されるように、接着体321の表面に露出する各導電性ペースト層353(図13(c)を参照されたい。図14(a)の接着体321は、図13(c)の接着体321を上下反転させたものである)と各微細電極411が対向するように、接着体321と回路基板410を位置合わせした後、ヒートツール405により図中の矢印の方向に加圧、加熱することにより、導電性ペースト層353と微細電極411間が付着される。
【0105】
その結果、芯線312−導電性ペースト層353−微細電極411が導通し、極細同軸ハーネス310と回路基板410間が接続される。又、接着体321を構成する接着剤層352+343により、接着体321と回路基板410間は接着され、芯線312、導電性ペースト層353の位置関係は強固に固定される。図14(c)は、前記のようにして芯線312と微細電極411が導通し接続が達成された後の様子を示す断面図である。
【0106】
図16〜19は、本発明の極細電線の接続方法の他の一態様を示す。この態様は、請求項8の発明に該当するものであり、極細同軸ハーネスのシールド線を回路基板の接地電極に接続する方法である。
【0107】
図16は、この態様で使用される転写フィルムを作製する工程を表わす斜視図である。図中、105は転写フィルムを表わし、151は離型フィルムB(請求項5の離型フィルムBに該当する)を、152は接着剤層B(請求項1の接着剤層Bに該当する)を、153は導電性ペースト層を表わす。
【0108】
図16(a)は、離型フィルム151上に、導電性ペーストが付与され、導電性ペースト層153が形成された様子を表わす。離型フィルム上への、導電性ペースト層153の付与は、図2の例の場合と同様に、孔版印刷等の方法により行うことができる。
【0109】
図16(b)は、導電性ペースト層153の両側に接着剤が付与されて接着剤層B152が形成され、転写フィルム105が作製された様子を表わす。図2の例の場合と異なり、この例では、1本の導電性ペースト層153が形成され、その両側に接して接着剤層B152が形成されている。
【0110】
図17は、極細同軸ハーネスの端末のシールド線23が接着剤層A72に接着される工程を示す。図17(a)は、接着剤層A72をシールド線23に接着する工程を示す斜視図であり、図17(b)は、図17(a)のo−o断面の断面図であり、図17(c)は、シールド線23が接着剤層A72に接着され、電線接着層108が形成された様子を示す(o−o断面の)断面図である。
【0111】
図17中、2、4、21、22、23、24は、図1の場合と同じ部分を表わす。すなわち、図17中の極細同軸ハーネスは、図1中と同じ構成の極細同軸ハーネスであり、5本のシールド線23が並列している。図17中の6はヒートツールであり、72は接着剤層Aであり、接着剤層A72は、離型フィルムA71に接着しており、接着フィルム7を形成している。そして、この工程に関しては、芯線21の代わりにシールド線23を接着させる以外は、図3の例の場合と同様なヒートツール、接着剤層A、離型フィルムAを用い、同様な方法により行われる。
【0112】
図18は、前記のようにして作製された電線接着層108に、転写フィルム105を接着する工程を示す。図18(a)は、この工程を示す断面図である。図18中の105は、図16と同じ転写フィルムを表わす。図18中、6はヒートツールを表わし、23はシールド線であり、151、153は図16の場合と同じ部分を表わし、71は離型フィルムA、72は接着剤層Aである。
【0113】
図18に示されるように、電線接着層108に、転写フィルム105を接着する工程は、図4に示される場合と同様に行われる。そして、ヒートツール6による加圧、加熱がされて、図18(b)(図18(a)と同じ断面における断面図)に示すように、シールド線23と導電性ペースト層153が接着して両者間が導通される。ただし、図4に示される場合と異なり、全てのシールド線23が1本の導電性ペースト層153に接着される。従って、全てのシールド線23間も導通される。又、導電性ペースト層153の両側にある接着剤層B(図18では図示されていない。図16参照。)は、接着剤層A72と接着する。
【0114】
なお、図18(c)に示される、電線接着層108に転写フィルム105を接着して形成された積層体は、接着体109と離型フィルムB151からなり、接着体109は、図19に示すように導体層191及び離型フィルムA71からなる。
【0115】
続いて、電線接着層108に転写フィルム105を接着して形成された積層体から、離型フィルムB151が剥離される。図19は、離型フィルムB151の剥離により露出した導電性ペースト層153を、回路基板210(接地電極以外の回路の図示は省略されている)の表面に設けられている接地電極212に接着する工程を示す断面図である。図19中の各符号は、図16〜18における同じ番号の符号と同じ部分を表わす。
【0116】
図19に示されるように、接着体109の表面に露出する導電性ペースト層153と接地電極212を対向させて、ヒートツール6により図中の矢印の方向に加圧、加熱することにより、導電性ペースト層153と接地電極212間が接着される。その結果、シールド線23−導電性ペースト層153−接地電極212が導通し、シールド線23が接地される。又、接着体109を構成する接着剤(すなわち、接着剤層A72及び接着剤層B152を構成していた接着剤)により、シールド線23、導電性ペースト層153の位置は強固に固定される。加圧、加熱後、離型フィルムA71は除去され接続部が形成される。
【0117】
図20、21は、本発明の極細電線の接続方法の他の一態様における一工程を示す図である。この態様は、請求項6の発明に該当するものであり、極細同軸ハーネスのシールド線を回路基板の接地電極に接続する方法であるが、図16〜19に示された態様と異なり、極細同軸ハーネスのシールド線間がグランドバーにより連結されている場合である。
【0118】
図20(a)は、極細同軸ハーネスのグランドバー3に、転写フィルムを接着する工程を示す斜視図である。図20(b)はこの態様において用いられる転写フィルム205を表わす斜視図である。転写フィルム205は、1つの導電性ペースト層253とその両側面に接着する2つの接着剤層B252からなるが、図16で示されている転写フィルム105と異なり、導電性ペースト層253と接着剤層B252はフィルムの長さ方向に並んで設けられている。なお、導電性ペースト層の形状としては、他の形状でもよく、例えば、フィルムの長さ方向に(丸型、角型の)ドット状に複数の導電性ペースト層を設けることもできる。
【0119】
この態様では、電線接着層を形成する工程はなく、転写フィルムは、電線接着層の代わりに、グランドバー3に接着される。
【0120】
請求項3の発明が好適に適用されるものとして前記で例示された大きさの極細同軸ハーネスの場合は、通常、グランドバーの長さは、1〜50mm程度であり、グランドバー幅は0.1〜1mm程度である。又、このようなグランドバーと接地電極との接続に、図20(b)の転写フィルム205を用いる場合、導電性ペースト層253の面積と接着剤層B252の面積の比は、1:9〜9:1の範囲が好ましい。
【0121】
図20(c)は、グランドバー3に、転写フィルム205を接着する工程を示す断面図である。図20中、6はヒートツールを表わし、2、3、4、21、22、23、24は図1の場合と同じ部分を表わす。
【0122】
図20に示されるように、この工程は、ヒートツール6により、転写フィルム205の導電性ペースト層253をグランドバー3に加圧、加熱することにより行われる。加圧、加熱により、グランドバー3と導電性ペースト層253が接着して両者間(さらには、シールド線23と導電性ペースト層253間)が導通され、又、導電性ペースト層253の両側にある接着剤層B252により、導電性ペースト層253はグランドバー3と接着する。
【0123】
続いて、図21(a)(中の矢印)に示されるように、離型フィルムB251が剥離される。図21(b)は、離型フィルムB251が剥離されて露出した導電性ペースト層253に、回路基板210(接地電極以外の回路の図示は省略されている)の表面に設けられている接地電極212に接着する工程を示す断面図である。
【0124】
図21(b)に示されるように、この工程では、導電性ペースト層253と接地電極212を対向させて、ヒートツール6により図中の矢印の方向に加圧、加熱することにより、導電性ペースト層253と接地電極212間が接着される。その結果、シールド線23−グランドバー3−導電性ペースト層253−接地電極212が導通し、シールド線23が接地される。又、接着剤層B252により、グランドバー3は回路基板210に強固に固定される。
【実施例1】
【0125】
導電性ペーストとしてAgペースト(藤倉化成社製、商品名:FA−333)と、ポリアミド系のホットメルト接着剤(T&K TOKA社製、商品名:トーマイドTXC−232−G)を、シリコンにより離型処理し、剥離力が520mN/50mmである厚さ0.05mmのPETフィルム上に、図2に示すように印刷して、ピッチ:0.3mmで40本の導電性ペースト層と導電性ペースト層間及びその両側に設けられた接着剤層Bを有する転写フィルムを作製した。
【0126】
形成された導電性ペースト層及び接着剤層Bの大きさを以下に示す。
・導電性ペースト層
長さ:2mm、高さ:0.025mm、幅:0.12mm
・接着剤層B
接着剤長:2mm、高さ:0.015mm、幅:0.2mm
【0127】
厚さ0.012mmのPETフィルム上にポリエステル系接着剤(十条ケミカル社製、商品名:AD−HM6)を付与して厚さ0.03mmの接着剤層Aを有する接着フィルムを作製した。この接着フィルムの接着剤層Aに、同軸線径0.25mm、芯線径0.05mmの同軸線が40本、0.3mmのピッチで並列しており、芯線の端末が3mm露出している極細同軸ハーネスの端末部を、図3で示す方法により接着し、電線接着層を作製した。この際の、加圧、加熱の条件を以下に示す。
温度:140℃、荷重:0.5MPa、時間:5秒
【0128】
続いて、作製された電線接着層に、前記で得られた転写フィルムを、図4で示す方法により接着した。この際の、加圧、加熱の条件を以下に示す。
温度:140℃、荷重:0.5MPa、時間:5秒
【0129】
転写フィルムのPETフィルムを剥離した後、図6で示す方法により、幅:0.15mm、高さ:0.018mm、電極長:2mmで金メッキがされた微細電極を、0.3mmのピッチで40本その表面に有する回路基板との接着(実装)を、温度:160℃、荷重1.5MPa、時間:10秒の加圧、加熱条件で行った。接着により形成された極細電線接続回路基板は、芯線と微細電極との接続抵抗が低く、接続信頼性が高いものであった。
【実施例2】
【0130】
間隔300μmで4本並列している径60μmの芯線(極細電線)を表1に示す縦横比(横径Y/縦径X)で扁平化した。扁平化後、扁平部に銀ペーストを付着させた後この銀ペーストを、回路基板上の並列している微細電極に付着させ、芯線と微細電極間を導通させた。導通後、下記の方法で、接続抵抗、絶縁抵抗、接着力を測定した。
【0131】
[接続抵抗の測定]
図22は、接続抵抗の測定方法を模式的に示す断面図である。図に示すように4端子法により一定電流を流して電圧を測定し、電圧の測定値より接続抵抗を求めた。測定は5回行い、その平均値を表1の「接続抵抗(初期)」の欄に示す。
[絶縁抵抗(線間耐圧)の測定]
図23は、絶縁抵抗の測定方法を模式的に示す断面図である。図に示すように隣接する芯線間に500Vの電圧を1分間印加した後の電流を測定し、その測定値より絶縁抵抗を求めた。その結果を表1の「絶縁抵抗(線間耐圧)」の欄に示す。
[接着力の測定]
接着力の測定結果を表1の「接着力」の欄に示す。
【0132】
前記で得られた芯線と微細電極間を導通させた回路を、60℃、95%RHの、高温高湿の環境下で500時間保持した後、前記と同じ方法で接続抵抗を5回測定した。その平均値を表1の「接続抵抗(高温高湿)」の欄に示す。
【0133】
前記で得られた芯線と微細電極間を導通させた回路について、「−40℃で4時間保持−2時間かけて85℃に昇温−85℃で4時間保持−0.5時間かけて25℃まで降温−25℃で1時間保持−0.5時間かけて−40℃まで降温」のヒートサイクルを5回繰り返した後、前記と同じ方法で接続抵抗を5回測定した。その平均値を表1の「接続抵抗(ヒートサイクル)」の欄に示す。
【0134】
【表1】

【0135】
表1に示されている結果から、次が明らかである。
扁平率(縦横比Y/X)が1.0(すなわち扁平化していない)の場合、初期の接続抵抗は低いが、高温高湿環境化での長時間保持後やヒートサイクルの繰返し後では、接続抵抗が、規格(接続抵抗20mΩ以下)をはるかに超えるまで上昇し、接続安定性に劣る。一方、扁平率(縦横比Y/X)が3.0以上の場合は、高温高湿環境化での長時間保持後や、ヒートサイクルの繰返し後でも接続抵抗は変化せず規格範囲内であり、接続安定性が優れている。
【0136】
一方、絶縁抵抗(線間耐圧)は、扁平率(縦横比Y/X)が1.0〜16.2まではほとんど変化がなく規格(1GΩ以上)をはるかに超える値を示しているが、扁平率がさらに増大すると絶縁抵抗(線間耐圧)は低下する。そして、扁平率20程度までは規格を満たすものの、扁平率27では8MΩとなり規格を満たさない。以上の結果より、扁平率(縦横比Y/X)は、2〜25の範囲が好ましく、より好ましくは、3〜17の範囲であることが判る。
【符号の説明】
【0137】
1 極細同軸ハーネス
2 各極細同軸線
21 芯線
22 絶縁層
23 シールド線
24 絶縁被覆
3 グランドバー
4 絶縁フィルム
10、110、210 回路基板
11、111 微細電極
12、212 接地電極
5、105 転写フィルム
51、151、251 離型フィルムB
52、152、252 接着剤層B
53、153、253 導電性ペースト層
6 ヒートツール
7 接着フィルム
72 接着剤層A
71 離型フィルムA
8、108 電線接着層
9、109 接着体
91、191 導体層
301 プレス定盤
302 プレスヘッド
303 ピッチ保持ガイド
304 転写プレス定盤
341 接着フィルム
342 補強フィルム
343、352 接着剤層
305、105 ヒートツール
306 加熱面
361 段
307 クサビ状突起
371 (クサビ状突起の先端の)平面部
308、309 V溝
381 (V溝の底部の)平面部
310 極細同軸ハーネスの端末部
311 極細同軸線
312 芯線
313 シールド線
314 グランドバー
320 転写フィルム
321 接着体
351 離型フィルム
353 導電性ペースト層
410 回路基板
411 微細電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
極細電線を接着剤層Aに接着して電線接着層を作製する工程、導電性ペースト層及び前記導電性ペースト層に接着する接着剤層Bからなる転写フィルムを作製する工程、及び前記電線接着層と微細電極を有する回路基板との間に前記転写フィルムを挟持して加圧する工程を有し、前記挟持が、前記極細電線と前記導電性ペースト層が接触しかつ前記導電性ペースト層と前記微細電極が接触するように行われることを特徴とする極細電線の接続方法。
【請求項2】
前記極細電線、前記導電性ペースト層及び前記微細電極が、それぞれ、複数本からなり、それぞれ一定のピッチで並列していることを特徴とする請求項1に記載の極細電線の接続方法。
【請求項3】
前記複数本の極細電線が、極細同軸ハーネスの芯線であることを特徴とする請求項2に記載の極細電線の接続方法。
【請求項4】
極細電線を接着剤層Aに接着して電線接着層を作製する工程の前に、前記極細電線の断面を扁平化して扁平部を形成する工程を有し、前記転写フィルムの挟持が、前記極細電線の扁平部と前記導電性ペースト層が接触するように行われることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の極細電線の接続方法。
【請求項5】
扁平部の断面の縦径をX及び横径をYとしたとき、Y/Xで表される扁平率が2〜25であることを特徴とする請求項4に記載の極細電線の接続方法。
【請求項6】
扁平部を形成する工程が、複数のV溝が一方向に並列して設けられているプレス定盤、及び前記V溝と咬合するクサビ状突起が一方向に複数並列して設けられているプレスヘッドからなり、前記クサビ状突起の先端、又は前記クサビ状突起の先端及び前記V溝の底面に平面部を有する極細電線扁平化具を用い、前記V溝に、極細電線を落し込んだ後、前記V溝と前記クサビ状突起を咬合させて前記プレスヘッドを加圧する方法により行われることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の極細電線の接続方法。
【請求項7】
前記複数本の極細電線が、極細同軸ハーネスの芯線であることを特徴とする請求項4ないし請求項6のいずれか1項に記載の極細電線の接続方法。
【請求項8】
前記極細電線が、極細同軸ハーネスの複数のシールド線であり、前記微細電極が、接地回路と接続する電極(接地電極)であることを特徴とする請求項1に記載の極細電線の接続方法。
【請求項9】
前記電線接着層が、その一表面に前記極細電線の一部が露出するように、前記極細電線を接着剤層Aに埋め込んで形成されており、反対側の表面が、離型フィルムAで覆われていることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の極細電線の接続方法。
【請求項10】
導電性ペースト層及び前記導電性ペースト層に接着する接着剤層Bからなる転写フィルムを作製する工程、前記転写フィルムを、極細同軸ハーネスのグランドバーと、回路基板の接地回路と接続する電極間に挟持して加圧する工程を有することを特徴とする極細電線の接続方法。
【請求項11】
転写フィルムが、離型フィルムB上に設けられることを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の極細電線の接続方法。
【請求項12】
請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載の極細電線の接続方法をその一工程として含むことを特徴とする極細電線接続回路基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2013−16457(P2013−16457A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−24301(P2012−24301)
【出願日】平成24年2月7日(2012.2.7)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)