説明

構造物外力検知器、構造物外力検知装置、及び構造物の外力検知方法

【課題】地震等の外力による構造物の損傷の箇所等の検知が可能で、システムの断線をも区別し得る構造物外力検知装置等を提供する。
【解決手段】可撓性材料からなる外部容器11と、脆性材料からなり外部容器に収容される封入体12と、薄膜状の導電体からなり封入体12の表面12aに連続した電気的経路を構成する封入体導電膜13を有して構造物の外力検知箇所に配置される外力応答部材1と、導電体からなり一端が第1電極23aに電気的に接続される第1導体部材22aと、導電体からなり一端が第2電極23bに電気的に接続される第2導体部材22bと、第1導体部材22aの他端と第2導体部材22bの他端に接続され第1電極23aと第2電極23bとの間の電気的導通の有無を検出する電気導通検出器41を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の外力が作用した場合に、脆性材料からなる封入体の表面の導電膜が破断して電気的に不導通になるようにし、これにより地震等の外力を検知する構造物外力検知器、この検知器に加えて電気状態検出手段を備えた構造物外力検知装置と、その装置を用いて構造物の外力を検知する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、構造物に外力が作用した場合に、損傷を生じたか否かを検知するための方法としては、破壊試験(破壊検査)と、非破壊試験(非破壊検査)とがある。破壊試験(破壊検査)は、実際の材料を用いて作製した供試体に荷重を加えて破壊し、供試体における損傷の箇所やその状況等を観察又は計測し、実際の構造物の場合に当てはめて判定する方法であり、直接的な方法ということができる。
【0003】
一方、非破壊試験(非破壊検査)は、構造物や供試体等を破壊せず、何らかの物理量を利用して構造物等の内部の状況を推定しようとする方法であり、破壊試験に比べると間接的な方法といえる。非破壊試験において利用する物理量としては、振動、超音波、放射線、磁気、材料破壊時に内部で発生する音(AE:Acoustic Emission)などがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、上記した従来の方法においては、以下に述べるような各種の問題点があった。
【0005】
破壊試験(破壊検査)の場合は、構造物ごとに供試体作製とその破壊試験を行うとすると、そのための時間、供試体作製の手間、費用がかかり、効率的ではない、という問題がある。また、破壊は、作製された供試体の形状、あるいはその寸法の影響が大きく、供試体の形状等が異なると、破壊時の挙動も異なってくる。このため、実際の構造物の場合に当てはめる場合には、破壊試験結果に人間の判断や考察等を加えることになる。このことから、実際の構造物の損傷の状況等を精度よく判定することは困難で、かつ熟練を要する、という問題もあった。
【0006】
また、非破壊試験(非破壊検査)の場合は、構造物の内部で何らかの破壊が発生した事実、あるいは構造物の内部に何らかの損傷が存在する事実までは、検出できること多いが、その損傷の具体的な箇所、損傷の形状や寸法の明確な把握は困難であることが多い、という問題があった。
【0007】
また、場所打ちコンクリート杭のような地下構造物は、地中に構築されるため、地震等の外力により地下構造物の内部で何らかの破壊が発生、又は何らかの損傷が存在する事実は、人間の目視による直接的な確認が非常に困難である。このため、構造物の検査は容易ではない、という問題があった。このような地下構造物の検査については、行った例はあるが、この場合には、場所打ちコンクリート杭等の地下構造物の周囲の掘り返し作業等が伴うため、多大な費用等がかかる、という問題もあった。
【0008】
出願人らは、場所打ちコンクリート杭等に地震等の大きな外力が作用したことを検知するための構造物外力検知装置として、プラスチックスのような可撓性材料からなり真水のような電気的に難導通性の第1液が封入された外側の第1容器と、ガラスのような脆性材料からなり塩水のような電気的に良導通性の第2液が封入され第1容器内に収容される第2容器を有し、杭等の外力検知箇所に配置される外力応答体と、一端が第1液の中に挿入される第1導体部材及び第2導体部材と、これら導体部材の他端に電気的に接続される電気導通検出器を備えたものを開発し、提案した(例えば、特許文献2参照)。
【0009】
上記した構造物外力検知装置においては、杭等の構造物に、地震等の大きな外力が作用していない状態では、外力応答体の内部の脆性材料からなる第2容器は破断せず、内部の第2液(例えば塩水)は第1液(例えば真水)と混合しないから、第1導体部材及び第2導体部材の間は、電気的にはほぼ完全な不導通状態であり、電気導通検出器の計測結果は、電流であれば零アンペア、電圧であれば零ボルト、という状態が検出される。しかしながら、構造物外力検知装置のシステム全体として考えると、外力応答体に電気的に接続されるリード線である第1導体部材、第2導体部材のいずれかが、何らかの原因(例えば設置時の損傷など)により、すでに断線している場合がある。この場合にも、電気導通検出器の計測結果は、電流零アンペア、又は電圧零ボルトという状態が続くことになる。したがって、観測結果の値が常時零である、という計測システムは、「地震等の大きな外力が作用していない」のか、「システムのいずれかに断線がすでに発生している」のかを、区別することは、非常に困難である、という問題を抱えており、その解決が要請されている。
【特許文献1】特開平9−105665号公報
【特許文献2】特開2003−262555号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記の問題を解決するためになされたものであり、本発明の解決しようとする課題は、地震等の外力による構造物の損傷の箇所等の検知が可能で、システムの断線をも区別し得る構造物外力検知装置等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の請求項1に係る構造物外力検知器は、
可撓性材料からなる外部容器と、脆性材料からなり前記外部容器に収容される封入体と、薄膜状の導電体からなり前記封入体の表面に連続した電気的経路を構成する封入体導電膜を有し、構造物の外力検知箇所に配置される外力応答手段と、
導電体からなり一端が第1電極に電気的に接続される第1導体部材と、
導電体からなり一端が第2電極に電気的に接続される第2導体部材を備え、
前記構造物の外力検知箇所に所定値を越える外力が付加された場合には、前記封入体が破損することにより前記封入体導電膜が破断し、前記第1電極と前記第2電極との間が電気的に不導通となること
を特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項2に係る構造物外力検知器は、
請求項1記載の構造物外力検知器において、
前記可撓性材料は、合成樹脂材料を含むこと
を特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項3に係る構造物外力検知器は、
請求項1記載の構造物外力検知器において、
前記外部容器は、円筒状又は多角形断面筒状に形成されること
を特徴とする。
【0014】
また、本発明の請求項4に係る構造物外力検知器は、
請求項1記載の構造物外力検知器において、
前記脆性材料は、ガラス、又は陶磁材料、若しくはセラミックス系材料を含むこと
を特徴とする。
【0015】
また、本発明の請求項5に係る構造物外力検知器は、
請求項1記載の構造物外力検知器において、
前記封入体は、円筒状又は多角形断面筒状、又は円形棒状若しくは多角形棒状に形成されること
を特徴とする。
【0016】
また、本発明の請求項6に係る構造物外力検知器は、
請求項1記載の構造物外力検知器において、
前記封入体導電膜は、金属又は合金の薄膜を前記封入体の表面に接着することにより形成されること
を特徴とする。
【0017】
また、本発明の請求項7に係る構造物外力検知器は、
請求項1記載の構造物外力検知器において、
前記封入体導電膜は、導電性を有する導電物質を前記封入体の表面に薄膜状に蒸着することにより形成されること
を特徴とする。
【0018】
また、本発明の請求項8に係る構造物外力検知器は、
請求項1記載の構造物外力検知器において、
前記封入体導電膜は、導電性を有する導電粒子を含む導電塗料を前記封入体の表面に薄膜状に塗布したのちに乾燥することにより形成されること
を特徴とする。
【0019】
また、本発明の請求項9に係る構造物外力検知器は、
請求項1記載の構造物外力検知器において、
前記封入体導電膜は、前記封入体の一端である封入第1端が前記外部容器の内部の一端である容器第1端に取り付けられ、前記封入体導電膜は前記容器第1端付近に位置する前記第1電極から始まり前記封入第1端とは反対側の前記封入体の端である封入第2端の付近を経たのち前記容器第1端付近に位置する前記第2電極に至るループ状の電気的経路を構成すること
を特徴とする。
【0020】
また、本発明の請求項10に係る構造物外力検知器は、
請求項9記載の構造物外力検知器において、
前記ループ状の電気的経路は、前記封入第1端からはじまり前記封入第2端の付近を経たのち前記封入第1端の付近へ至る略U字状の部分経路を一部に含むこと
を特徴とする。
【0021】
また、本発明の請求項11に係る構造物外力検知器は、
請求項10記載の構造物外力検知器において、
前記ループ状の電気的経路は、前記封入第2端からはじまり前記封入第1端の付近を経たのち前記封入第2端の付近へ至る略逆U字状の部分経路を一部に含むこと
を特徴とする。
【0022】
また、本発明の請求項12に係る構造物外力検知器は、
請求項1記載の構造物外力検知器において、
前記封入体導電膜は、前記封入体の一端である封入第1端が前記外部容器の内部のいずれかの一端又は両端に取り付けられ、前記封入体導電膜は前記容器第1端付近に位置する前記第1電極から始まり前記封入第1端とは反対側の前記封入体の端である封入第2端付近に位置する前記第2電極に至る線状の電気的経路を構成すること
を特徴とする。
【0023】
また、本発明の請求項13に係る構造物外力検知器は、
請求項12記載の構造物外力検知器において、
前記線状の電気的経路は、前記第1電極と前記第2電極を略直線状に結ぶこと
を特徴とする。
【0024】
また、本発明の請求項14に係る構造物外力検知器は、
請求項12記載の構造物外力検知器において、
前記線状の電気的経路は、前記封入第1端からはじまり前記封入第2端の付近を経たのち前記封入第1端の付近を経て前記封入第2端の付近へ至る略S字状の部分経路を一部に含むこと
を特徴とする。
【0025】
また、本発明の請求項15に係る構造物外力検知器は、
請求項12記載の構造物外力検知器において、
前記線状の電気的経路は、前記封入第2端からはじまり前記封入第1端の付近を経たのち前記封入第2端の付近を経て前記封入第1端の付近へ至る略N字状の部分経路を一部に含むこと
を特徴とする。
【0026】
また、本発明の請求項16に係る構造物外力検知器は、
請求項12記載の構造物外力検知器において、
前記線状の電気的経路は、前記第1電極と前記第2電極を略螺旋状に結ぶこと
を特徴とする。
【0027】
また、本発明の請求項17に係る構造物外力検知装置は、
可撓性材料からなる外部容器と、脆性材料からなり前記外部容器に収容される封入体と、薄膜状の導電体からなり前記封入体の表面に連続した電気的経路を構成する封入体導電膜を有し、構造物の外力検知箇所に配置される外力応答手段と、
導電体からなり一端が第1電極に電気的に接続される第1導体部材と、
導電体からなり一端が第2電極に電気的に接続される第2導体部材と、
前記第1導体部材の他端と前記第2導体部材の他端に取り付けられるとともに電気的導通又は電気的不導通を検出する電気状態検出手段を備え、
前記構造物の外力検知箇所に所定値を越える外力が付加された場合には、前記封入体が破損することにより前記封入体導電膜が破断し、前記第1電極と前記第2電極との間が電気的に不導通となったことが前記第1導体部材及び前記第2導体部材を経て前記電気状態検出手段により検出され、前記構造物の外力検知箇所に所定値を越える外力が作用した旨を検知すること
を特徴とする。
【0028】
また、本発明の請求項18に係る構造物外力検知装置は、
請求項17記載の構造物外力検知装置において、
前記電気状態検出手段は、電流計又は電圧計若しくは電気抵抗計を有すること
を特徴とする。
【0029】
また、本発明の請求項19に係る構造物の外力検知方法は、
可撓性材料からなる外部容器と、脆性材料からなり前記外部容器に収容される封入体と、薄膜状の導電体からなり前記封入体の表面に連続した電気的経路を構成する封入体導電膜を有し、構造物の外力検知箇所に配置される外力応答手段と、
導電体からなり一端が第1電極に電気的に接続される第1導体部材と、
導電体からなり一端が第2電極に電気的に接続される第2導体部材と、
前記第1導体部材の他端と前記第2導体部材の他端に取り付けられるとともに電気的導通又は電気的不導通を検出する電気状態検出手段を用い、
前記構造物の外力検知箇所に所定値を越える外力が付加された場合には、前記封入体が破損することにより前記封入体導電膜が破断し、前記第1電極と前記第2電極との間が電気的に不導通となったことが前記第1導体部材及び前記第2導体部材を経て前記電気状態検出手段により検出され、前記構造物の外力検知箇所に所定値を越える外力が作用した旨を検知すること
を特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る構造物外力検知器、構造物外力検知装置、及び構造物の外力検知方法によれば、可撓性材料からなる外部容器と、脆性材料からなり外部容器に収容される封入体と、薄膜状の導電体からなり封入体の表面に連続した電気的経路を構成する封入体導電膜を有し、構造物の外力検知箇所に配置される外力応答手段と、導電体からなり一端が封入体導電膜の一端である第1電極に電気的に接続される第1導体部材と、導電体からなり一端が封入体導電膜の他端である第2電極に電気的に接続される第2導体部材を備えるように構成したので、構造物の外力検知箇所に所定値を越える外力が付加された場合には、封入体が破損することにより封入体導電膜が破断し、第1電極と前記第2電極との間が電気的に不導通となることにより判別することができる、という利点を有している。また、本発明に係る構造物外力検知器、構造物外力検知装置、及び構造物の外力検知方法によれば、常時の測定値は零ではなく、地震等の大きな外力が発生して封入体導電膜が破断した場合に測定値が零になるため、システムのいずれかの断線を容易に区別することができる、という利点も有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下に説明する実施例は、可撓性材料からなる外部容器と、脆性材料からなり外部容器に収容される封入体と、薄膜状の導電体からなり封入体の表面に連続した電気的経路を構成する封入体導電膜を有し、構造物の外力検知箇所に配置される外力応答手段と、導電体からなり一端が封入体導電膜の一端である第1電極に電気的に接続される第1導体部材と、導電体からなり一端が封入体導電膜の他端である第2電極に電気的に接続される第2導体部材を備えるように構成したものであり、構造物の外力検知箇所に所定値を越える外力が付加された場合には、封入体が破損することにより封入体導電膜が破断し、第1電極と前記第2電極との間が電気的に不導通となることにより判別することができるうえ、常時の測定値は零ではなく、地震等の大きな外力が発生して封入体導電膜が破断した場合に測定値が零になるため、システムのいずれかの断線を容易に区別することができ、本発明を実現するための構成として最良の形態である。
【実施例1】
【0032】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の第1実施例である構造物損傷検出システムの構成を示す図である。また、図2は、図1に示す構造物損傷検出システムにおける外力応答部材の設置状態を示す図である。また、図3は、図1及び図2に示す構造物損傷検出システムにおける外力応答部材のさらに詳細な構成を示す図である。また、図4は、図1に示す構造物損傷検出システムにおける外力検出・送信部のさらに詳細な構成を示すブロック図である。
【0033】
図1(A)に示すように、この構造物損傷検出システム101は、鉄道線路300を支持する高架橋200の基礎である場所打ちコンクリート杭203のコンクリート内部に設置されている外力応答部材1と、電気的接続部材2と、外力検出・送信部4と、通信ケーブル5と、構造物管理部6を備えて構成されている。
【0034】
図2に示すように、外力応答部材1は、場所打ちコンクリート杭203内の鉄筋カゴ205を構成する鉛直方向の主鉄筋206に取り付けられている。また、図1及び図2に示すように、電気的接続部材2は、その一部が場所打ちコンクリート杭203のコンクリート内部や、高架橋200のフーチング202等の内部に設置され、その残部が高架橋200の外部に配置されている。
【0035】
また、図3に示すように、電気的接続部材2は、その内部に第1導体部材22a及び第2導体部材22bを有している。また、図示はしていないが、第1導体部材22a及び第2導体部材22bの外側は、電気の不導体、例えば合成樹脂材料又はゴム系材料等からなる絶縁部材によって被覆された構造となっている。また、第1導体部材22a及び第2導体部材22bは、電気の導体(導電体)、例えば銅(Cu)、銅合金等により形成された線状部材である。
【0036】
図4に示すように、第1導体部材22a及び第2導体部材22bの一端は、外力応答部材1に接続され、また、第1導体部材22a及び第2導体部材22bの他端は、図1(A)及び図4に示すように、外力検出・送信部4の電気導通検出器41(後述)に接続されている。また、外力検出・送信部4と構造物管理部6は、通信ケーブル5によって接続されている。なお、外力応答部材1と、電気的接続部材2の一部は、場所打ちコンクリート杭203やフーチング202のコンクリート打設前に所定箇所に配置され、コンクリート中に埋設されて設置される。
【0037】
次に、上記した外力応答部材1のさらに詳細な構成について、図3を参照しながら説明する。図3は、図1及び図2に示す構造物損傷検出システム101における外力応答部材のさらに詳細な構成を示す図であり、図3(A)は全体構成を示す縦断面図を示している。
【0038】
図3(A)に示すように、外力応答部材1は、外部容器11と、封入体12を有して構成されている。
【0039】
外部容器11は、プラスチックス(合成樹脂)系材料やゴム系材料などの可撓性を有する材料(以下、「可撓性材料」という。)からなり、内部が中空状となった円筒形状に形成されている。また、外部容器11の下端と上端は、それぞれ厚い円板状の部材により閉塞されており、後述する封入体12が、ガタつくことなく保持されるようになっている。また、図示はしていないが、外部容器11の略円筒状の外側部には、外側部を環状に取り巻く溝状の凹部などが複数形成されている。これらの複数の環状凹部等により、場所打ちコンクリート杭203の内部に埋設される外力応答部材1の表面部に凹凸が形成され、コンクリートに対する外力応答部材1の付着性を向上させ、杭内の応力が外力応答部材1に伝達される性能を向上させる効果を有している。なお、外部容器11の上端となる肉厚円板には、第1導体部材22a及び第2導体部材22bを挿通するための挿通孔が開設されている。この外部容器11の内部の中空状の容器内空間11aの中には、封入体12が収容されている。
【0040】
外部容器11を形成するためのプラスチックス系材料としては、いわゆる合成樹脂材料のほか、FRP(Fiber Reinforced Plastics:繊維強化プラスチックス)等のプラスチックを用いた複合材料を含む。また、ゴム系材料としては、天然ゴム、人造ゴムのほか、ゴムを用いた複合材料も含む。
【0041】
また、封入体12は、ガラス系材料や陶磁材料やセラミックス系材料などの脆性を有する材料(以下、「脆性材料」という。)からなり、内部が中空状となった円筒形状に形成されている。また、封入体12の上端は、円板状の部材により閉塞されている。封入体12の上端の円板状部材の外表面12cは、円形状になっている。また、封入体12の下端は、半球状の部材により閉塞されている。この封入体12の内部の空間12bには、空気が封入されている。
【0042】
封入体12を形成するためのガラス系材料としては、いわゆるガラスのほか、ガラスを用いた複合材料を含む。また、陶磁材料としては、陶器、磁器のほか、これらを用いた複合材料を含む。また、セラミックス系材料としては、いわゆるセラミックスのほか、これらを用いた複合材料も含む。
【0043】
図3(B)は、封入体12の外側表面12aと、上端外表面12cを、展開図の形式で図示したものである。図3(B)に示すように、封入体12の外側表面12aと上端外表面12cには、封入体導電膜13が形成されている。この封入体導電膜13は、薄膜状の導電体からなり、封入体12の外部の表面12a及び12cに、連続した電気的経路を構成している。すなわち、この電気的回路は、第1電極接続部13a及び13g及び13hと、第2電極接続部13b及び13i及び13kと、第1電極側回路部13cと、第2電極側回路部13dと、底部回路部13eを有して構成されている。これらの封入体導電膜13の電気的経路のうち、第1電極接続部13hと第2電極接続部13kは、略円形状となっている。また、底部回路部13eは、封入体12の底部の外周表面を取り巻くような帯状に形成されている。残りの回路部は、細い線状の導電膜となっている。その中で、第1電極側回路部13cは、線状の導電膜が略「S」字状の図形を描くように配置されている。
【0044】
また、第1電極接続部13hは、第1電極接続部13gに電気的に接続し、第1電極接続部13gは、第1電極接続部13aに電気的に接続し、第1電極接続部13aは、第1電極側回路部13cに電気的に接続し、第1電極側回路部13cは、底部回路部13eに電気的に接続し、底部回路部13eは、第2電極側回路部13dに電気的に接続し、第2電極側回路部13dは、第2電極接続部13bに電気的に接続し、第2電極接続部13bは、第2電極接続部13iに電気的に接続し、第2電極接続部13iは、第2電極接続部13kに電気的に接続している。したがって、第1電極接続部13hから第2電極接続部13kまでは、電気的には、1本の線状の直列回路を構成している。
【0045】
上記した封入体導電膜13は、導電性を有する導電粒子を含む導電塗料を、封入体12の外表面12aと12cに薄膜状に塗布したのちに、乾燥することにより形成される。導電塗料は、塗膜形成ポリマー(絶縁体)の中に、導電性フィラーを分散させたものである。導電性フィラーとしては、金属又は金属酸化物の微粉末(以下、「金属系微粉末」という。)と、導電性カーボンブラック(グラファイト)微粉末が使用可能である。金属系微粉末としては、金(Au)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、酸化スズ、酸化アンチモンなどの微粒子が使用可能である。また、塗料としてのバインダーとしては、「常温乾燥形導電塗料」では、熱可塑性アクリル樹脂、ビニル樹脂、ゴム系バインダーなどが用いられ、「焼き付け形導電塗料」では、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂などが用いられ、2液形ウレタンなども用いられる。
【0046】
図3(A)に示すように、上記した第1導体部材22aは、外部容器11の上端となる肉厚円板に開設された挿通孔により、肉厚円板を挿通し、その先端である円板状の第1電極23aは、封入体12の上端円板の表面12cに密接する。この箇所には、図3(B)に示すように、円板状の導電膜である第1電極接続部13hが配設されているから、第1電極23aは、第1電極接続部13hに電気的に接続する。また、同様に、第2導体部材22bは、外部容器11の上端となる肉厚円板に開設された挿通孔により、肉厚円板を挿通し、その先端である円板状の第2電極23bは、封入体12の上端円板の表面12cに密接する。この箇所には、図3(B)に示すように、円板状の導電膜である第2電極接続部13kが配設されているから、第2電極23bは、第2電極接続部13kに電気的に接続する。
【0047】
次に、上記した場所打ちコンクリート杭203に、大きな外力、例えば地震動による力が作用し、場所打ちコンクリート杭203の内部にき裂等の損傷が発生した場合を例にとって、この第1実施例の構造物損傷検出システム101の詳細な構成とその作用を説明する。
【0048】
上記のように、場所打ちコンクリート杭203の内部にき裂等の損傷が発生するような大きな外力が場所打ちコンクリート杭203に作用すると、そのコンクリートの内部のいずれかの箇所に埋設されている外力応答部材1の外部容器11は、可撓性材料により形成されているため、例えば、弓状に曲がるように変形する。一方、外部容器11の内部に収容されている封入体12は、脆性材料で形成されているため、ある程度以上の変形には耐えられず、破断(破損)する。この結果、封入体12の外部表面に形成されていた封入体導電膜13は、いずれかの箇所で破断(切断)される。
【0049】
図4は、図1に示す構造物損傷検出システム101における外力検出・送信部4のさらに詳細な構成を示すブロック図である。
【0050】
図4に示すように、外力検出・送信部4は、きょう体40と、電気導通検出器41と、増幅器42と、A/Dコンバータ43と、入出力インタフェース44a及び44bと、CPU45と、ROM46と、RAM47と、送信機49を有して構成されている。また、きょう体40は、例えば、図1(A)及び図2に示すように、高架橋200の柱201に取り付けられている。
【0051】
電気導通検出器41は、図示はしていないが、直流電源と電流計を有しており、直流電源の一方の電極(例えば陽極)に第1導体部材22aが電気的に接続され、直流電源の他方の電極(例えば陰極)に電流計の一方の端子が電気的に接続され、電流計の他方の端子に第2導体部材22bが電気的に接続されている。
【0052】
このような構成により、外力応答部材1に外力が作用して封入体12が破断し、封入体12の外部表面の導電膜13が1箇所でも切断されると、図4の第1導体部材22aと第2導体部材22bを流れていた電流iが流れなくなる。
【0053】
この電流iは、電気導通検出器41内の例えば電流計(図示せず)によって検出される。電流iが検出されると、電気導通検出器41は、電流を検出したことを電気信号(例えば電流)として出力する。電気導通検出器41から出力された電流は、増幅器42により増幅される。増幅後の電流は、A/Dコンバータ43により、アナログ量からディジタル量に変換され、入出力インタフェース44aを経てCPU45に送られる。
【0054】
CPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)45は、図示はしていないが、CPU45の内部での電流(信号)の授受を行うための信号線である内部バスを有しており、この内部バスに、演算部と、レジスタと、クロック生成部と、命令処理部等が接続され、各種データに対して、四則演算(加算、減算、乗算、及び除算)を行い、又は論理演算(論理積、論理和、否定、排他的論理和など)を行い、又はデータ比較、若しくはデータシフトなどの処理を実行し、制御を行う。
【0055】
ROM(Read Only Memory:読出し専用メモリ)46は、CPU45を制御するための制御プログラムや、CPU45が用いる各種データ等を格納している部分である。ROMとしては、半導体チップにより構成されるものと、ハードディスク装置等が用いられる。ハードディスク装置は、図示はしていないが、その内部に、円盤状の磁気ディスクを有しており、この磁気ディスクをディスク駆動機構により回転駆動し、磁気ヘッドをヘッド駆動機構によって磁気ディスクの任意位置に移動させ、磁気ディスク表面の磁性膜を磁気ヘッドからの書込電流によって磁化することによりデータを記録し、磁化された磁性膜の上を磁気ヘッドが移動する際に磁気ヘッドのコイル等に流れる電流を検出することにより記録データを読み出す装置である。
【0056】
上記した制御プログラムは、OS(Operating System)等のCPU45の基本ソフトウェアのほか、各種の処理や分析演算等をCPU45に実行させるための命令等の処理手順が、所定のプログラム用言語で記述された文字や記号の集合である。
【0057】
また、RAM(Random Access Memory:随時書込み読出しメモリ)47は、CPU45により演算された途中のデータ等を一時記憶する部分である。RAMは、半導体チップにより構成されるものが主である。
【0058】
上記のような構成により、CPU45は、電気導通検出器41からの電気信号を検出すると、「電気伝導性を示した外力応答部材1の箇所の杭コンクリートに損傷が発生した」と判断し、「杭に損傷発生」を表現するフラグ等のデータに、杭の位置等を特定するための情報(例えば、杭の位置の位置座標等のデータ)を付加してディジタル出力信号を生成する。
【0059】
CPU45によって生成されたディジタル電気信号は、入出力インタフェース44bを経て送信機49に送られる。送信機49は、ディジタル電気信号をそのまま、または他の信号形態(例えば光信号)に変換し、通信ケーブル5によって構造物管理部6へ送信する。通信ケーブル5としては、電流を導通させる導線、光ファイバー等が用いられる。
【0060】
構造物管理部6は、図1(A)に示すような構成を有している。すなわち、構造物管理部6は、ある鉄道線区(例えば、「山手線」や「埼京線」等。)の鉄道線路に関連する構造物を統括して管理する施設であり、中央コンピュータ61と、構造物状態表示盤62と、記憶・出力装置63を有して構成されている。
【0061】
中央コンピュータ61には、この線区の各構造物、例えば高架橋の各杭の外力検出・送信部からの通信ケーブル5a〜5dなどが接続しており、その構造物からのデータが集中するようになっている。構造物状態表示盤62は、図1(B)に示すように、表示パネル部62aと、操作卓62bを有している。表示パネル部62aには、この線区全体が表示され、杭等の構造物がランプ等によって表現されている。このような構成により、損傷が発生した箇所は、図1(B)において62cで図示されるように、操作者(構造物管理者)が視認できる状態、例えばランプの点灯や点滅の状態となる。記憶・出力装置63は、損傷の履歴等を記録媒体に記憶させたり、印字等を行う装置である。
【0062】
上記した第1実施例の構造物損傷検出システム101によれば、以下のような利点がある。
【0063】
a)鉄道の構造物等に大きな外力(例えば地震動等)が付加されて損傷が発生した場合に、損傷した部分の位置等を、容易に、かつリアルタイムで検出することができる。
【0064】
b)杭等の地下構造物のように、地盤Gの内部に構築されているため、そのままでは目視が不可能な箇所の損傷についても、支障なく検出することができる。
【0065】
c)鉄道や道路のように、線状に長い範囲にわたる施設において、各構造物の損傷の有無を集中的に監視することができる。
【0066】
d)電気導通検出器41の常時の測定値は零ではなく、地震等の大きな外力が発生して封入体導電膜13が破断した場合にのみ測定値が零になるため、システムのいずれかの箇所に断線がある場合を容易に区別することができる。
【0067】
上記した第1実施例において、構造物損傷検出システム101は、特許請求の範囲における構造物外力検知装置に相当している。また、外力応答部材1は、特許請求の範囲における外力応答手段に相当している。また、外力検出・送信部4の電気導通検出器41とCPU45は、特許請求の範囲における電気状態検出手段に相当している。また、第1実施例において、構造物損傷検出システム101の部分である外力応答部材1と、第1導体部材22aと、第2導体部材22bは、特許請求の範囲における構造物外力検知器を構成している。
【0068】
なお、上記した封入体12の破断強度を調整して所定強度値に設定することにより、電流iの停止が生じた場合には、CPU45が、「場所打ちコンクリート杭203の当該外力応答部材設置箇所に所定外力値が付加された」と定量的に算定し、その旨を構造物管理部6に送信するように構成することもできる。
【0069】
また、外力応答部材1の配置状態を適宜に工夫することにより、例えば、杭203における鉛直方向の高さ位置が異なる複数の位置に外力応答部材1を配置したり、杭の中心付近とその周囲の異なる位置に外力応答部材1を配置することにより、杭203の内部の損傷状態から逆算することにより、CPU45が、杭203に作用した所定外力値を定量的に算定することも可能である。
【0070】
図3(C)は、封入体12の外側表面12aと、上端外表面12cに形成される封入体導電膜の他の例を、展開図の形式で図示したものである。この場合には、図3(C)に示すように、封入体12の外側表面12aと上端外表面12cには、封入体導電膜13Aが形成されている。この封入体導電膜13Aは、導電塗料で形成された薄膜状の導電体からなり、封入体12の外部の表面12a及び12cに、連続した電気的経路を構成している。すなわち、この電気的回路は、第1電極接続部13a1及び13g1と、第2電極接続部13b1及び13i1と、第1電極側回路部13c1と、第2電極側回路部13d1と、底部回路部13e1を有して構成されている。これらの封入体導電膜13Aの電気的経路のうち、第1電極接続部13g1と第2電極接続部13i1は、略舌状となっている。また、底部回路部13e1は、封入体12の底部の外周表面を取り巻くような帯状に形成されている。残りの回路部は、帯状の導電膜となっている。
【0071】
また、第1電極接続部13g1は、第1電極接続部13a1に電気的に接続し、第1電極接続部13a1は、第1電極側回路部13c1に電気的に接続し、第1電極側回路部13c1は、底部回路部13e1に電気的に接続し、底部回路部13e1は、第2電極側回路部13d1に電気的に接続し、第2電極側回路部13d1は、第2電極接続部13b1に電気的に接続し、第2電極接続部13b1は、第2電極接続部13i1に電気的に接続している。したがって、第1電極接続部13g1から第2電極接続部13i1までは、電気的には、1本の線状の直列回路を構成している。
【0072】
上記した封入体導電膜13Aは、上記した導電塗料を、封入体12の外表面12aと12cに薄膜状に塗布したのちに、乾燥することにより形成される。
【0073】
図3(A)に示すように、上記した第1導体部材22aは、外部容器11の上端となる肉厚円板に開設された挿通孔により、肉厚円板を挿通し、その先端である円板状の第1電極23aは、封入体12の上端円板の表面12cに密接する。この箇所には、図3(C)に示すように、舌状の導電膜である第1電極接続部13g1が配設されているから、第1電極23aは、第1電極接続部13g1に電気的に接続する。また、同様に、第2導体部材22bは、外部容器11の上端となる肉厚円板に開設された挿通孔により、肉厚円板を挿通し、その先端である円板状の第2電極23bは、封入体12の上端円板の表面12cに密接する。この箇所には、図3(C)に示すように、舌状の導電膜である第2電極接続部13i1が配設されているから、第2電極23bは、第2電極接続部13i1に電気的に接続する。
【0074】
図3(C)に示す封入体導電膜13Aが設けられた封入体を有する第1実施例の構造物損傷検出システムによっても、上記した第1実施例の構造物損傷検出システム101の場合と同様な作用が行われ、同様な利点がある。
【実施例2】
【0075】
本発明は、上記した第1実施例以外の構成によっても実現可能である。次に、本発明の第2実施例について、図面を参照しながら説明する。図5は、本発明の第2実施例である構造物損傷検出システムの構成を示す図である。また、図6は、図5に示す構造物損傷検出システムにおける構造物内挿入部材のさらに詳細な構成を示す断面図である。
【0076】
図5に示すように、第2実施例の構造物損傷検出システム102は、鉄道線路300を支持する高架橋200の基礎である場所打ちコンクリート杭203のコンクリート内部に設置された構造物内挿入部材3と、この構造物内挿入部材3の内部に設置されている外力応答部材1Aと、接続部材2と、外力検出・送信部4と、通信ケーブル5と、構造物管理部6を備えて構成されている。
【0077】
この第2実施例の構造物損傷検出システム102が、第1実施例の構造物損傷検出システム101と異なる点は、場所打ちコンクリート杭203のコンクリート内部に外部から構造物内挿入部材3が挿入され、この構造物内挿入部材3の内部に外力応答部材1Aが配置されている点である。したがって、第2実施例の構造物損傷検出システム102は、すでに構築されている場所打ちコンクリート杭203の内部に、後から外力応答部材1Aを設置する場合に好適である。なお、接続部材2と、外力検出・送信部4と、通信ケーブル5と、構造物管理部6の構成と作用については、第1実施例の場合と同様であるので、その説明は省略する。
【0078】
次に、第2実施例の場合の、構造物内挿入部材3と、外力応答部材1Aの設置方法について、図5及び図6を参照しつつ詳細に説明する。
【0079】
まず、削孔機等(図示せず)により、地上から場所打ちコンクリート杭203に向けて、削孔を行い、円柱状の挿入孔204を形成する。次に、挿入孔204の中に挿入管31を挿入する。挿入管31は、プラスチックス系材料やゴム系材料などの可撓性を有する可撓性材料からなり、内部が中空状となった円筒形状に形成されている。これは、場所打ちコンクリート杭203に大きな外力が付加されても、挿入管31を形成する材料の強度や剛性が大きいと、挿入管31の内部の外力応答部材1Aに作用する力が減殺され、外力応答部材1A内部の封入体12が破断せず、封入体導電膜13が切断されない場合があるからである。
【0080】
また、挿入管31の外径は挿入孔204の内径よりもわずかに小さい値に設定されている。この場合、挿入孔204と挿入管31とを接着剤等により接着すれば、挿入孔204と挿入管31との間で「滑り」が生じることが防止され、場所打ちコンクリート杭203に加わった外力に応じた変形が支障なく挿入管31に作用する。
【0081】
次に、挿入管31の内部における外力応答部材1Aの位置を所定箇所に設定するため、挿入管31の内部の空洞部に、位置決め部材32aを挿入し、先端までの長さがあらかじめ計測された所定長さの棒状の定規部材等(図示せず)によって背後から押し込む等の方法で所定箇所まで挿入し、その後、接着剤等により挿入管31の内部に固定する。位置決め部材32aは、挿入管31の強度や剛性をあまり増加させない材料、例えば、発泡性合成樹脂材料などが用いられる。
【0082】
次に、外力応答部材1Aを地上の外部から挿入管31内に挿入し、棒状部材等(図示せず)により背後から押し込むことにより、あらかじめ位置決め部材32aが設置された箇所まで移動させる。その後、接着剤等により、外力応答部材1Aを挿入管31の内部に固定する。次に、挿入管31内の外力応答部材1Aの背後に、上記と同様にして、他の位置決め部材32bを挿入する。この場合、外力応答部材1Aの外表面には、外力応答部材1に設けられていたような環状凹部(11e)は設けられていない。これは、第2実施例においては、外力応答部材1Aの外表面には、杭のコンクリートとの付着性は必要ないからである。なお、外力応答部材1Aの背後(地上に近い方)の位置決め部材32bについては、後述するように、現存の外力応答部材を引き抜いて新たな外力応答部材と交換し、再度挿入する作業が予想されるため、接着剤等による挿入管31への固定は行わない。これにより、外力応答部材1Aが挿入管31の内部の所定箇所に位置決めされて設置される。
【0083】
第2実施例の構造物損傷検出システム102によれば、上記した第1実施例の場合と同様の利点に加え、以下のような利点がある。
【0084】
e)すでに構築された構造物の内部に、外部(例えば地上)から外力応答部材1Aを設置し、その後に構造物に大きな外力(例えば地震動等)が付加されて損傷が発生した場合に、損傷した部分の位置等を、容易に、かつリアルタイムで検出することができる。
【0085】
f)外力応答部材1Aが一度地震を経験して、封入体導電膜13の切断(破断)が済んでしまった場合や、外力応答部材1Aの設置後に外力が作用せずに長期間が経過し外力応答部材1A内の物質(例えば導電塗料膜)の性能劣化が予想される場合などに、外力応答部材1Aの新品との交換を容易に行うことが可能である。
【0086】
なお、挿入管31内の既存の外力応答部材1Aを新品と交換する時には、既存の外力応答部材1Aに取り付けられている接続部材2を引っ張って地上まで引き上げることになる。このため、電気的接続部材2のうち、第1導体部材22aと第2導体部材22bの外側に配置される絶縁部材としては、アラミド樹脂(例えばケブラー繊維)等の引張り強度の高い材料を用いることが望ましい。
【0087】
また、挿入管31の内部の空洞は、外力、変形、挿入管自体の経年変化等により、当初の大きさよりも縮小する可能性がある。このように、挿入管31の内部の空洞が縮小すると、電気的接続部材2の絶縁部材を引っ張っても、外力応答部材1Aを外部に引き出すことができなくなるおそれがある。このため、図6に示すように、挿入管31の内部空洞に、内部空洞保持部材33を挿入し、内部空洞のつぶれを防止する。
【0088】
内部空洞保持部材33の材料としては、プラスチックス系材料やゴム系材料などの可撓性を有する可撓性材料が望ましい。また、挿入管31内の既存の外力応答部材1Aを新品と交換する時には、まず内部空洞保持部材33を引き出す必要があるから、内部空洞保持部材33と挿入管31との間の摩擦は小さいことが望ましい。このため、挿入管31と内部空洞保持部材33との間には、油脂やグリース等の潤滑材を配置するとよい。
【0089】
上記した第2実施例において、構造物損傷検出システム102は、特許請求の範囲における構造物外力検知装置に相当している。
【実施例3】
【0090】
本発明は、上記した第1、2実施例以外の構成によっても実現可能である。次に、本発明の第3実施例について、図面を参照しながら説明する。図7は、本発明の第3実施例である構造物損傷検出システム103における外力応答部材のさらに詳細な構成を示す図であり、図7(A)は全体構成を示す縦断面図を示している。
【0091】
図7(A)に示すように、外力応答部材1Bは、外部容器11Bと、封入体12Bを有して構成されている。
【0092】
図7と図3を比較するとよくわかるが、本発明の第3実施例である構造物損傷検出システム103における外力応答部材1Bが、本発明の第1実施例である構造物損傷検出システム101における外力応答部材1と異なる点は、外力応答部材に電気的に接続する電極(例えば23a1と23b1)が、封入体(例えば12B)の2つの端部(例えば図7(A)における上端と下端)のそれぞれに配設されている点である。これに対し、本発明の第1実施例である構造物損傷検出システム101における外力応答部材1においては、外力応答部材に電気的に接続する電極(例えば23aと23b)の両方ともが、封入体(例えば12)の2つの端部(例えば図3(A)における上端と下端)のうちの片方(例えば図3(A)における上端)に配設されている。
【0093】
その他の構成要素の構成及び作用については、本発明の第3実施例である構造物損傷検出システム103における外力応答部材1Bは、本発明の第1実施例である構造物損傷検出システム101における外力応答部材1と、ほぼ同様である。
【0094】
外部容器11Bは、プラスチックス(合成樹脂)系材料やゴム系材料などの可撓性を有する材料(以下、「可撓性材料」という。)からなり、内部が中空状となった円筒形状に形成されている。また、外部容器11Bの下端と上端は、それぞれ厚い円板状の部材により閉塞されており、後述する封入体12Bが、ガタつくことなく保持されるようになっている。また、図示はしていないが、外部容器11Bの略円筒状の外側部には、外側部を環状に取り巻く溝状の凹部などが複数形成されている。これらの複数の環状凹部等により、場所打ちコンクリート杭203の内部に埋設される外力応答部材1Bの表面部に凹凸が形成され、コンクリートに対する外力応答部材1Bの付着性を向上させ、杭内の応力が外力応答部材1Bに伝達される性能を向上させる効果を有している。なお、外部容器11Bの上端となる肉厚円板には、第1導体部材22aを挿通するための挿通孔が開設されている。また、外部容器11Bの下端となる肉厚円板には、第2導体部材22bを挿通するための挿通孔が開設されている。この外部容器11Bの内部の中空状の容器内空間11a1の中には、封入体12Bが収容されている。
【0095】
外部容器11Bを形成するためのプラスチックス系材料としては、いわゆる合成樹脂材料のほか、FRP(Fiber Reinforced Plastics:繊維強化プラスチックス)等のプラスチックを用いた複合材料を含む。また、ゴム系材料としては、天然ゴム、人造ゴムのほか、ゴムを用いた複合材料も含む。
【0096】
また、封入体12Bは、ガラス系材料や陶磁材料やセラミックス系材料などの脆性を有する材料(以下、「脆性材料」という。)からなり、内部が中空状となった円筒形状に形成されている。また、封入体12Bの上端は、円板状の部材により閉塞されている。封入体12Bの上端の円板状部材の外表面は、円形状になっている。また、封入体12Bの下端は、円板状の部材により閉塞されている。封入体12Bの下端の円板状部材の外表面は、円形状になっている。この封入体12Bの内部の空間12b1には、空気が封入されている。
【0097】
封入体12Bを形成するためのガラス系材料としては、いわゆるガラスのほか、ガラスを用いた複合材料を含む。また、陶磁材料としては、陶器、磁器のほか、これらを用いた複合材料を含む。また、セラミックス系材料としては、いわゆるセラミックスのほか、これらを用いた複合材料も含む。
【0098】
図7(B)は、封入体12Bの外側表面12a1を、展開図の形式で図示したものである。封入体12Bの上端の円板状部材の円形の外表面と、封入体12Bの下端の円板状部材の円形の外表面については、図示は省略されている。図7(B)に示すように、封入体12Bの外側表面12a1には、封入体導電膜13Bが形成されている。この封入体導電膜13Bは、薄膜状の導電体からなり、封入体12Bの外部の表面12a1に、連続した電気的経路を構成している。すなわち、この電気的回路は、第1電極接続部13a2と、第2電極接続部13b2と、両極接続回路部13f1を有して構成されている。これらの封入体導電膜13Bの電気的経路のうち、第1電極接続部13a2は、封入体12Bの上端部の外周表面を取り巻くような帯状に形成されている。また、第2電極接続部13b2は、封入体12Bの下端部の外周表面を取り巻くような帯状に形成されている。残りの両極接続回路部13f1は、細い線状の導電膜、すなわち、線状の導電膜が略「S」字状の図形を描くように配置されている。また、図示はしていないが、封入体12Bの上端の円板状部材の円形の外表面と、封入体12Bの下端の円板状部材の円形の外表面には、全面に略円形状の導電膜が配置されている。
【0099】
また、第1電極接続部13a2は、両極接続回路部13f1に電気的に接続し、両極接続回路部13f1は、第2電極接続部13b2に電気的に接続している。したがって、第1電極接続部13a2から第2電極接続部13b2までは、電気的には、1本の線状の直列回路を構成している。
【0100】
上記した封入体導電膜13Bは、導電性を有する導電粒子を含む導電塗料を、封入体12Bの外部表面12a1等に薄膜状に塗布したのちに、乾燥することにより形成される。導電塗料としては、上記した第1実施例の場合と同様の物質が用いられる。
【0101】
図7(A)に示すように、上記した第1導体部材22aは、外部容器11の上端となる肉厚円板に開設された挿通孔により、肉厚円板を挿通し、その先端である円板状の第1電極23a1は、封入体12Bの上端円板の表面に密接する。この箇所には、図示はしていないが、全面に円板状の導電膜が配設されており、この円板状の導電膜(図示せず)は、封入体12Bの上端の帯状の第1電極接続部13a2に電気的に接続しているから、第1電極23a1は、第1電極接続部13a2に電気的に接続する。また、同様に、第2導体部材22bは、外部容器11の下端となる肉厚円板に開設された挿通孔により、肉厚円板を挿通し、その先端である円板状の第2電極23b1は、封入体12Bの下端円板の表面に密接する。この箇所には、図示はしていないが、全面に円板状の導電膜が配設されており、この円板状の導電膜(図示せず)は、封入体12Bの下端の帯状の第2電極接続部13b2に電気的に接続しているから、第2電極23b1は、第2電極接続部13b2に電気的に接続する。
【0102】
このような構成により、場所打ちコンクリート杭203に、大きな外力、例えば地震動による力が作用し、場所打ちコンクリート杭203の内部にき裂等の損傷が発生した場合には、第3実施例の構造物損傷検出システム103の外力応答部材1Bは、第1実施例の構造物損傷検出システム101の外力応答部材1と同様に、封入体12Bの外部表面に形成されていた封入体導電膜13Bは、いずれかの箇所で破断(切断)され、これを、外力検出・送信部4の電気導通検出器41(例えば電流計)が、それまで流れていた電流iの停止として判別する。
【0103】
上記した第3実施例の構造物損傷検出システム103は、上記した第1実施例の場合と同様な利点を有している。
【0104】
上記した第3実施例において、構造物損傷検出システム103は、特許請求の範囲における構造物外力検知装置に相当している。また、外力応答部材1Bは、特許請求の範囲における外力応答手段に相当している。また、第3実施例において、構造物損傷検出システム103の部分である外力応答部材1Bと、第1導体部材22aと、第2導体部材22bは、特許請求の範囲における構造物外力検知器を構成している。
【0105】
図7(C)は、封入体12Bの外側表面12a1に形成される封入体導電膜の他の例を、展開図の形式で図示したものである。この場合には、図7(C)に示すように、封入体12Bの外側表面12a1には、封入体導電膜13Cが形成されている。この封入体導電膜13Cは、導電塗料で形成された薄膜状の導電体からなり、封入体12Bの外部の表面12a1に、連続した電気的経路を構成している。すなわち、この電気的回路は、第1電極接続部13a3と、両極接続部13f2と、第2電極接続部13b3を有して構成されている。これらの封入体導電膜13Cの電気的経路のうち、第1電極接続部13a3は、封入体12Bの上端部の外周表面を取り巻くような帯状に形成されている。また、第2電極接続部13b3は、封入体12Bの下端部の外周表面を取り巻くような帯状に形成されている。残りの両極接続回路部13f2は、帯状の導電膜が封入体12Bの外側表面12a1を略螺旋状に取り巻きながら第1電極接続部13a3から第2電極接続部13b3に至る図形を描くように配置されている。また、図示はしていないが、封入体12Bの上端の円板状部材の円形の外表面と、封入体12Bの下端の円板状部材の円形の外表面には、全面に略円形状の導電膜が配置されている。
【0106】
また、第1電極接続部13a3は、両極接続回路部13f2に電気的に接続し、両極接続回路部13f2は、第2電極接続部13b3に電気的に接続している。したがって、第1電極接続部13a3から第2電極接続部13b3までは、電気的には、1本の線状の直列回路を構成している。図7(C)において、両極接続回路部13f2のうち、接続端E1は接続端E2に接続し、接続端E3は接続端E4に接続し、接続端E5は接続端E6に接続している。
【0107】
上記した封入体導電膜13Cは、導電性を有する導電粒子を含む導電塗料を、封入体12Bの外部表面12a1等に薄膜状に塗布したのちに、乾燥することにより形成される。導電塗料としては、上記した第1実施例の場合と同様の物質が用いられる。
【0108】
図7(C)に示す封入体導電膜13Cが設けられた封入体を有する第3実施例の構造物損傷検出システムによっても、上記した第1実施例の構造物損傷検出システム101の場合と同様な作用が行われ、同様な利点がある。
【0109】
図7(D)は、封入体12Bの外側表面12a1に形成される封入体導電膜のさらに他の例を、展開図の形式で図示したものである。この場合には、図7(D)に示すように、封入体12Bの外側表面12a1には、封入体導電膜13Dが形成されている。この封入体導電膜13Dは、導電塗料で形成された薄膜状の導電体からなり、封入体12Bの外部の表面12a1に、連続した電気的経路を構成している。すなわち、この電気的回路は、第1電極接続部13a4と、両極接続部13f3と、第2電極接続部13b4を有して構成されている。これらの封入体導電膜13Dの電気的経路のうち、第1電極接続部13a4は、封入体12Bの上端部の外周表面を取り巻くような帯状に形成されている。また、第2電極接続部13b4は、封入体12Bの下端部の外周表面を取り巻くような帯状に形成されている。残りの両極接続回路部13f3は、帯状の導電膜が封入体12Bの外側表面12a1を略直線状に第1電極接続部13a4から第2電極接続部13b4に至る図形を描くように配置されている。また、図示はしていないが、封入体12Bの上端の円板状部材の円形の外表面と、封入体12Bの下端の円板状部材の円形の外表面には、全面に略円形状の導電膜が配置されている。
【0110】
また、第1電極接続部13a4は、両極接続回路部13f3に電気的に接続し、両極接続回路部13f3は、第2電極接続部13b4に電気的に接続している。したがって、第1電極接続部13a4から第2電極接続部13b4までは、電気的には、1本の線状の直列回路を構成している。
【0111】
上記した封入体導電膜13Dは、導電性を有する導電粒子を含む導電塗料を、封入体12Bの外部表面12a1等に薄膜状に塗布したのちに、乾燥することにより形成される。導電塗料としては、上記した第1実施例の場合と同様の物質が用いられる。
【0112】
図7(D)に示す封入体導電膜13Dが設けられた封入体を有する第3実施例の構造物損傷検出システムによっても、上記した第1実施例の構造物損傷検出システム101の場合と同様な作用が行われ、同様な利点がある。
【0113】
なお、本発明は、上記した各実施例に限定されるものではない。上記各実施例は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0114】
例えば、外力応答部材のうちの封入体の上端は、閉塞されなくてもよい。要は、封入体の表面に導電塗料の塗膜により形成された連続的な電気的経路の少なくとも一部が破断(切断)されればよいのである。
【0115】
また、上記した実施例においては、構造部材としてコンクリート構造物(例えば場所打ちコンクリート杭203、204)の内部の主鉄筋206を例に挙げて説明したが、本発明は、この例には限定されず、他の構成の構造部材、例えば、コンクリート構造物の内部に配置される略円柱状又は略円筒状態の鉄骨などであってもよい。
【0116】
また、外力を検出する対象である構造物は、場所打ちコンクリート杭に限定されず、他の基礎構造物、例えば既製コンクリート杭、フーチング、ケーソン基礎等であってもよい。あるいは基礎構造物以外の構造物、コンクリート構造物以外の構造物であってもよい。
【0117】
あるいは、外力応答部材(例えば外力応答部材1)の設置される構造部材(例えば主鉄筋206)の配置方向(例えば外力応答部材1の軸の方向)を適宜に調整することにより、軸方向応力、曲げ応力、せん断応力を検出することも可能である。
【0118】
また、外力応答部材(例えば外力応答部材1)は、可撓性を有する絶縁体からなる被覆部材によって被覆されてもよい。このように構成することにより、外力応答部材の損傷を防止することができる。可撓性を有する絶縁体としては、プラスチックス系材料と、ゴム系材料が含まれる。プラスチックス系材料としては、いわゆる合成樹脂材料のほか、FRP(Fiber Reinforced Plastics:繊維強化プラスチックス)等のプラスチックを用いた複合材料を含む。また、ゴム系材料としては、天然ゴム、人造ゴムのほか、ゴムを用いた複合材料も含む。
【0119】
また、外力応答部材(例えば外力応答部材1)が貼付される構造部材は、主鉄筋(206等)には限定されず、他の鉄筋(フープ鉄筋、配力鉄筋等)であってもよく、コンクリート構造物の鉄筋であれば、どの鉄筋であってもよい。
【0120】
また、電気検出手段としては、上記した電流計のかわりに、検流計、電圧計(電位計)を用いてもよい。要は、第1電極(例えば23a)と第2電極(例えば23b)の間の連続的な電気的経路の少なくとも一部が破断(切断)されて、両者の間に電流が流れなくなったこと、あるいは、第1電極(例えば23a)と第2電極(例えば23b)との間が電気的に不導通となったことを検出できる手段であれば、どのような構成のものであってもよいのである。
【0121】
また、外部容器(例えば11)の外周に環状凹部を設けてもよい。例えば、外部容器の略円筒状の外側部に、外側部を環状に取り巻く溝状の凹部を複数形成しておけば、場所打ちコンクリート杭203の内部に埋設される外力応答部材1等の表面部に凹凸が形成され、コンクリートに対する外力応答部材1等の付着性を向上させ、杭内の応力が外力応答部材1等に伝達される性能を向上させる作用を発揮する。
【0122】
また、外部容器、封入体の形状は、上記した円筒形状には限定されず、他の形状、例えば、多角形断面筒状に形成されてもよい。また、破断する対象である封入体は、丸棒状(円形断面の棒状)、多角形断面の棒状に形成されてもよい。
【0123】
また、外部容器の外表面に形成される凹凸の形状は、環状凹部以外に、環状凸部、螺旋状の凸部又は凹部、多数のイボ状の凸部、多数の穴状の凹部等であってもよい。
【0124】
また、外部容器の可撓性の程度、封入体の脆性の程度は、適宜に設定可能である。これらの値をどのように設定するかにより、検出しようとする構造物の外力、損傷の程度を調整することができる。また、封入体の外径を外部容器の内径よりもわずかに小さく設定しておけば、小さい外力でも容易に封入体を破損させることができる。
【0125】
また、外力を検出する対象である構造物は、杭に限定されず、他の基礎構造物であってもよい。あるいは基礎構造物以外の構造物であってもよい。
【0126】
また、外力応答手段である外力応答部材の配置位置、配置状態は、上記した第1実施例の例、すなわち外力応答部材の長手方向が鉛直上下方向に平行となる状態には限定されない。外力応答部材の長手方向が鉛直上下方向に対して傾斜した状態、外力応答部材の長手方向が水平方向に平行となる状態、あるいは外力応答部材の長手方向が杭の断面における円の接線の方向となる状態などであってもよい。
【0127】
また、封入体導電膜は、導電塗料の塗布によること以外に、金属又は合金の薄膜を、封入体(例えば12等)の外表面に、接着剤等によって接着することにより形成するようにしてもよい。
【0128】
また、封入体導電膜は、導電塗料の塗布によること以外に、導電性を有する導電物質(例えば、金属、合金、金属酸化物、炭素等)を、封入体(例えば12等)の外表面に薄膜状に蒸着することにより形成するようにしてもよい。蒸着の方法としては、スパッタリング法、CVD法等の公知の技術が採用可能である。
【0129】
また、封入体導電膜は、封入体(例えば12等)の外表面だけではなく、内側の表面(内表面)に形成するようにしてもよい。
【0130】
また、封入体導電膜は、封入体(例えば12等)の一端である封入第1端(例えば上端)は、外部容器(例えば11等)の内部の一端である容器第1端(例えば上端)に取り付けられ、封入体導電膜は、容器第1端付近に位置する第1電極(例えば23a)から始まり、封入第1端とは反対側の封入体の端である封入第2端(例えば下端)の付近を経たのちに、容器第1端付近に位置する第2電極(例えば23b)に至るループ状の電気的経路を構成する第1実施例のようにしてもよい。この場合、ループ状の電気的経路には、封入第1端からはじまり封入第2端の付近を経たのち封入第1端の付近へ至る(戻る)略U字状の部分経路を一部に含むようにしてもよい。また、ループ状の電気的経路は、封入第2端からはじまり封入第1端の付近を経たのち封入第2端の付近へ至る略逆U字状の部分経路を一部に含むようにしてもよい。このようにすれば、経路が折り畳まれるため、地震等の大きな外力によって、封入体導電膜のいずれか一部が破断しやすくなる。
【0131】
また、封入体導電膜は、封入体(例えば12等)の一端である封入第1端(例えば上端)が外部容器(例えば11等)の内部のいずれかの一端又は両端に取り付けられ、封入体導電膜は容器第1端付近に位置する第1電極(例えば23a)から始まり封入第1端とは反対側の封入体の端である封入第2端(例えば下端)付近に位置する第2電極(例えば23b)に至る線状の電気的経路を構成するようにしてもよい。
【0132】
また、封入体導電膜においては、線状の電気的経路は、第1電極と第2電極を略直線状に結ぶようにしてもよいし、線状の電気的経路は、封入第1端からはじまり封入第2端の付近を経たのち封入第1端の付近を経て封入第2端の付近へ至る略S字状の部分経路を一部に含むようにしてもよい。あるいは、線状の電気的経路は、封入第2端からはじまり封入第1端の付近を経たのち封入第2端の付近を経て封入第1端の付近へ至る略N字状の部分経路を一部に含むようにしてもよい。このようにすれば、経路が折り畳まれるため、地震等の大きな外力によって、封入体導電膜のいずれか一部が破断しやすくなる。あるいは、線状の電気的経路は、第1電極と第2電極を略螺旋状に結ぶようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明は、構造物や建築物の施工を行う土木・建築業、構造物や建築物の保守を行う保守サービス業、構造物や建築物の外力の計測等を行う計測サービス業、構造物を用いて交通機関等の営業を行う鉄道等の事業などで実施可能であり、これらの産業で利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】本発明の第1実施例である構造物損傷検出システムの構成を示す図である。
【図2】図1に示す構造物損傷検出システムにおける外力応答部材の設置状態を示す図である。
【図3】図1及び図2に示す構造物損傷検出システムにおける外力応答部材のさらに詳細な構成を示す図である。
【図4】図1に示す構造物損傷検出システムにおける外力検出・送信部のさらに詳細な構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の第2実施例である構造物損傷検出システムの構成を示す図である。
【図6】本発明の第2実施例である構造物損傷検出システムにおける構造物内挿入部材のさらに詳細な構成を示す断面図である。
【図7】本発明の第3実施例である構造物損傷検出システムにおける外力応答部材のさらに詳細な構成を示す図である。
【符号の説明】
【0135】
1〜1B 外力応答部材
2 電気的接続部材
3 構造物内挿入部材
4 外力検出・送信部
5〜5d 通信ケーブル
6 構造物管理部
11 外部容器
11a〜11a1 容器内空間
11b〜11b1 保持底部
12、12D 封入体
12a〜12a1 封入体外表面
12b〜12b1 封入体内空間
12c〜12c
13〜13D 封入体導電膜
13a〜13a4 第1電極接続部
13b〜13b4 第2電極接続部
13c〜13c1 第1電極側回路部
13d〜13d1 第2電極側回路部
13e〜13e1 底部回路部
13f1〜13f3 両極接続回路部
13g〜13g1 第1電極接続部
13h 第1電極接続部
13i〜13i1 第1電極接続部
13k 第1電極接続部
22a 第1導体部材
22b 第2導体部材
23a、23a1 第1電極
23b、23b1 第2電極
31 挿入管
32a、32b 位置決め部材
33 内部空洞保持部材
40 きょう体
41 電気導通検出器
42 増幅器
43 A/Dコンバータ
44a、44b 入出力インタフェース
45 CPU
46 ROM
47 RAM
49 送信機
61 中央コンピュータ
62 構造物状態表示盤
62a 表示パネル部
62b 操作卓
62c 損傷発生箇所
63 記憶・出力装置
101〜103 構造物損傷検出システム
200 高架橋
201 柱
202 フーチング
203 場所打ちコンクリート杭
204 挿入孔
300 鉄道線路
E1〜E6 封入体導電膜接続端
G 地盤
i 電流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性材料からなる外部容器と、脆性材料からなり前記外部容器に収容される封入体と、薄膜状の導電体からなり前記封入体の表面に連続した電気的経路を構成する封入体導電膜を有し、構造物の外力検知箇所に配置される外力応答手段と、
導電体からなり一端が第1電極に電気的に接続される第1導体部材と、
導電体からなり一端が第2電極に電気的に接続される第2導体部材を備え、
前記構造物の外力検知箇所に所定値を越える外力が付加された場合には、前記封入体が破損することにより前記封入体導電膜が破断し、前記第1電極と前記第2電極との間が電気的に不導通となること
を特徴とする構造物外力検知器。
【請求項2】
請求項1記載の構造物外力検知器において、
前記可撓性材料は、合成樹脂材料を含むこと
を特徴とする構造物外力検知器。
【請求項3】
請求項1記載の構造物外力検知器において、
前記外部容器は、円筒状又は多角形断面筒状に形成されること
を特徴とする構造物外力検知器。
【請求項4】
請求項1記載の構造物外力検知器において、
前記脆性材料は、ガラス、又は陶磁材料、若しくはセラミックス系材料を含むこと
を特徴とする構造物外力検知器。
【請求項5】
請求項1記載の構造物外力検知器において、
前記封入体は、円筒状又は多角形断面筒状、又は円形棒状若しくは多角形棒状に形成されること
を特徴とする構造物外力検知器。
【請求項6】
請求項1記載の構造物外力検知器において、
前記封入体導電膜は、金属又は合金の薄膜を前記封入体の表面に接着することにより形成されること
を特徴とする構造物外力検知器。
【請求項7】
請求項1記載の構造物外力検知器において、
前記封入体導電膜は、導電性を有する導電物質を前記封入体の表面に薄膜状に蒸着することにより形成されること
を特徴とする構造物外力検知器。
【請求項8】
請求項1記載の構造物外力検知器において、
前記封入体導電膜は、導電性を有する導電粒子を含む導電塗料を前記封入体の表面に薄膜状に塗布したのちに乾燥することにより形成されること
を特徴とする構造物外力検知器。
【請求項9】
請求項1記載の構造物外力検知器において、
前記封入体導電膜は、前記封入体の一端である封入第1端が前記外部容器の内部の一端である容器第1端に取り付けられ、前記封入体導電膜は前記容器第1端付近に位置する前記第1電極から始まり前記封入第1端とは反対側の前記封入体の端である封入第2端の付近を経たのち前記容器第1端付近に位置する前記第2電極に至るループ状の電気的経路を構成すること
を特徴とする構造物外力検知器。
【請求項10】
請求項9記載の構造物外力検知器において、
前記ループ状の電気的経路は、前記封入第1端からはじまり前記封入第2端の付近を経たのち前記封入第1端の付近へ至る略U字状の部分経路を一部に含むこと
を特徴とする構造物外力検知器。
【請求項11】
請求項10記載の構造物外力検知器において、
前記ループ状の電気的経路は、前記封入第2端からはじまり前記封入第1端の付近を経たのち前記封入第2端の付近へ至る略逆U字状の部分経路を一部に含むこと
を特徴とする構造物外力検知器。
【請求項12】
請求項1記載の構造物外力検知器において、
前記封入体導電膜は、前記封入体の一端である封入第1端が前記外部容器の内部のいずれかの一端又は両端に取り付けられ、前記封入体導電膜は前記容器第1端付近に位置する前記第1電極から始まり前記封入第1端とは反対側の前記封入体の端である封入第2端付近に位置する前記第2電極に至る線状の電気的経路を構成すること
を特徴とする構造物外力検知器。
【請求項13】
請求項12記載の構造物外力検知器において、
前記線状の電気的経路は、前記第1電極と前記第2電極を略直線状に結ぶこと
を特徴とする構造物外力検知器。
【請求項14】
請求項12記載の構造物外力検知器において、
前記線状の電気的経路は、前記封入第1端からはじまり前記封入第2端の付近を経たのち前記封入第1端の付近を経て前記封入第2端の付近へ至る略S字状の部分経路を一部に含むこと
を特徴とする構造物外力検知器。
【請求項15】
請求項12記載の構造物外力検知器において、
前記線状の電気的経路は、前記封入第2端からはじまり前記封入第1端の付近を経たのち前記封入第2端の付近を経て前記封入第1端の付近へ至る略N字状の部分経路を一部に含むこと
を特徴とする構造物外力検知器。
【請求項16】
請求項12記載の構造物外力検知器において、
前記線状の電気的経路は、前記第1電極と前記第2電極を略螺旋状に結ぶこと
を特徴とする構造物外力検知器。
【請求項17】
可撓性材料からなる外部容器と、脆性材料からなり前記外部容器に収容される封入体と、薄膜状の導電体からなり前記封入体の表面に連続した電気的経路を構成する封入体導電膜を有し、構造物の外力検知箇所に配置される外力応答手段と、
導電体からなり一端が第1電極に電気的に接続される第1導体部材と、
導電体からなり一端が第2電極に電気的に接続される第2導体部材と、
前記第1導体部材の他端と前記第2導体部材の他端に取り付けられるとともに電気的導通又は電気的不導通を検出する電気状態検出手段を備え、
前記構造物の外力検知箇所に所定値を越える外力が付加された場合には、前記封入体が破損することにより前記封入体導電膜が破断し、前記第1電極と前記第2電極との間が電気的に不導通となったことが前記第1導体部材及び前記第2導体部材を経て前記電気状態検出手段により検出され、前記構造物の外力検知箇所に所定値を越える外力が作用した旨を検知すること
を特徴とする構造物外力検知装置。
【請求項18】
請求項17記載の構造物外力検知装置において、
前記電気状態検出手段は、電流計又は電圧計若しくは電気抵抗計を有すること
を特徴とする構造物外力検知装置。
【請求項19】
可撓性材料からなる外部容器と、脆性材料からなり前記外部容器に収容される封入体と、薄膜状の導電体からなり前記封入体の表面に連続した電気的経路を構成する封入体導電膜を有し、構造物の外力検知箇所に配置される外力応答手段と、
導電体からなり一端が第1電極に電気的に接続される第1導体部材と、
導電体からなり一端が第2電極に電気的に接続される第2導体部材と、
前記第1導体部材の他端と前記第2導体部材の他端に取り付けられるとともに電気的導通又は電気的不導通を検出する電気状態検出手段を用い、
前記構造物の外力検知箇所に所定値を越える外力が付加された場合には、前記封入体が破損することにより前記封入体導電膜が破断し、前記第1電極と前記第2電極との間が電気的に不導通となったことが前記第1導体部材及び前記第2導体部材を経て前記電気状態検出手段により検出され、前記構造物の外力検知箇所に所定値を越える外力が作用した旨を検知すること
を特徴とする構造物の外力検知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−113968(P2007−113968A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−303696(P2005−303696)
【出願日】平成17年10月18日(2005.10.18)
【出願人】(000173784)財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)