説明

模型車両の製造方法及び型枠

【課題】 住宅やビルあるいは市街地の模型を周縁道路と共に製作する上で必要となる車両模型を、車種または縮尺サイズに応じて容易に作成可能とする。
【解決手段】 車両左右側面の底面ラインに沿った外縁を備えた型枠の間に樹脂材を挟み、その外縁をガイドとして電熱線カッタで樹脂材を切断する工程と、車両左右側面の上面ラインに沿った外縁を備えた型枠の間に樹脂材を挟み、その外縁をガイドとして電熱線カッタで樹脂材を切断する工程を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建築物の模型に使用する模型車両の製造方法及び型枠に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅等の建築物の施工においては、まず設計図が作成され、その設計図によって全体像が表されるが、建築に関する専門家であれば設計図によって全体像を把握することが可能である。しかし、建築知識の薄い素人には設計図のみで全体像を把握することは困難である。
そこで、斜視図やパースによるプレゼンテーションが採用されるが、これらも紙面による表現であるため、全体像を直感することは困難である。
そこで、敷地全体を魅力的な立体像で表現した建築物の縮尺模型を作成できれば、より効果的に全体像が直感される。
そして、このような建築物の模型に関する技術として、例えば、特開2000−56677号公報記載の技術が知られている。
【特許文献1】特開2000−56677号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、住宅やビルあるいは市街地の模型の作成に際しては、道路や駐車スペース等への配慮も必要となる。これらは、前面道路や通行方向などが影響するため、具体的に見える形で提示することは、設計意図を理解する上でも重要である。
住宅模型では1/50、1/100、1/200サイズが頻度高く作成されるが、乗用車、スポーツカー、トラック、バス等の多種にわたって、縮尺サイズの異なる必要な台数を確保することは困難である。
また、従来から使用される車両模型は、成形型に金属や樹脂や石膏等の原料を注入して作成するものであり、多くの手間とコストを要する。
一方で、住宅の施主が車の大きさが異なる複数台の乗用車を所有する場合も多く、この状況を反映させた駐車計画に対応することが求められる。
本発明は係る従来の問題点を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、住宅やビルあるいは市街地の模型を周縁道路と共に製作する上で必要となる車両模型を、車種または縮尺サイズに応じて容易に作成可能とした模型車両の製造方法及び型枠を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記目的を達成するための手段として、請求項1記載の模型車両の製造方法では、車両左右側面の外縁を備えた左右一対の型枠を形成し、その型枠の間に樹脂材を挟み、左右の型枠の外縁をガイドとして電熱線カッタで樹脂材を切断することを特徴とする。
【0005】
請求項2記載の模型車両の製造方法では、車両左右側面の底面ラインに沿った外縁を備えた型枠の間に樹脂材を挟み、その外縁をガイドとして電熱線カッタで樹脂材を切断する工程と、車両左右側面の上面ラインに沿った外縁を備えた型枠の間に樹脂材を挟み、その外縁をガイドとして電熱線カッタで樹脂材を切断する工程を有したことを特徴とする。
【0006】
請求項3記載の型枠では、車両左右側面の底面ラインに沿った外縁を備えた左右一対の側面、及びその両側面を支持する型底とによってコの字型に形成された型枠と、車両左右側面の上面ラインに沿った外縁を備えた左右一対の側面、及びその両側面を支持する型底とによってコの字型に形成された型枠とを有し、前記底面ラインに沿った外縁を備えた型枠と、前記上面ラインに沿った外縁を備えた型枠の型底背面同士を接合して一体としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
前記構成を採用したことにより、本発明では次の効果を有する。
電熱線カッタで切断可能の樹脂材を使用するので、発砲スチロール等の廃材を有効利用できる。
車両形状の型枠に沿って樹脂材を切断するので、加工が容易である。
また、底面ライン側型枠と上面ライン側型枠とを備えているので、底面と上面の2面の加工により車両の外縁が正確に再現される。
そして、底面ライン側型枠と上面ライン側型枠を一体としているので、型枠を取り違えることなく同一体の車を作成できる。
また、型枠はコの字型の簡易な構造であるため、予め多様な型枠を作成準備することが容易であり、多様な車種・サイズの車両模型を必要に応じ、即座に作成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面に基づいて本発明の模型車両の製造方法及び型枠を実現する最良の形態を説明する。
【実施例1】
【0009】
本発明の第1実施例に係る模型車両の型枠は、図1に示すように車両の底面ラインを作成するための底面ライン側型枠1と、車両の上面ラインを作成するための上面ライン側型枠2とによって構成されている。そして、これら両方の型枠を使用して一体の車両模型が作成される。
前記底面ライン側型枠1は、左右一対の側面3a、3bと、その側面から直角に折れ曲がった型底4を有して構成され、同一形状の側面3a、3bが平行に車幅を開けて配置されて、全体形状はコの字型に形成されている。また、側面3a、3b及び型底4はいずれも平らに形成され、型底4が両側面を平行に支持している。
また、側面3a、3bの先端部分は車両左右側面の底面ラインに沿った外縁5を備えており、この底面ラインは車両側面の端面のアウトラインに相当し、車底から半円の前後輪が突起した外縁となっている。図中jは型枠上にあらわした波線であり、上面ラインの位置を表示している。
【0010】
上面ライン側型枠2も同様に、左右一対の側面6a、6bと、その側面から直角に折れ曲がった型底7を有して構成され、同一形状の側面6a、6bが平行に車幅を開けて配置されて、全体形状はコの字型に形成されている。また、側面6a、6b及び型底7はいずれも平らに形成され、型底が両側面を平行に支持している。
また、側面6a、6bの先端部分は車両左右側面の上面ラインに沿った外縁8を備えており、この底面ラインは車両側面の端面のアウトラインに相当し、車両の屋根部分が隆起してボディ前後が連続した外縁となっている。図中kは型枠上にあらわした波線であり、底面ラインの位置を表示している。
【0011】
前記底面ライン側型枠1と上面ライン側型枠2は同一体の模型を作成するための型枠であるので、車幅(型底の幅)は同一となる。そして、同一幅の型底4,7の背面同士が貼り合わされて一体とされている。これらの両型枠は車別に用意するが、一体となっているために、作成時に型枠を取り違えるおそれはない。
【0012】
前記型枠1,2の長さは車長に相当し、両側面の間隔が車幅に相当し、型底の深さが車高に相当する。
本実施例では、上面ライン側型枠2の深さを車高と同一とし、底面ライン側型枠1の深さを車高よりもやや深めに設定している。この底面ライン側型枠が深いことにより、型底部部に余分な切断しろhを残すが、この切断しろhを設けることにより、車両の上面ラインを切り取る際に、連続的になめらかなラインを持って切り取ることが可能となっている。
【0013】
前記型枠1,2の素材は特に限定されるものではないが、電熱線カッタの熱によって損傷しない強度を備えた紙、木、金属、耐熱性樹脂等を使用する。
型枠は鋼材によって強度をもって構成することも可能であるが、側面3a、3b及び側面6a、6bは内外へ多少撓むように構成することにより、型枠内の樹脂材を外側から指で挟みながら加工することが可能となる。
車両の前面、後面の形状については、垂直に切断することも可能であるが、バンパー等の形状に沿って底面ラインと上面ラインとに分けて、型枠の側面の前後縁に反映、加工することにより、それをガイドとしてバンパー等の形状を作成することができる。
【実施例2】
【0014】
次に第2実施例に係る型枠を説明する。
本実施例の型枠は、図2に示すように第1実施例の型枠を縦列に連続した構成である。
この型枠は第1実施例と同様に底面ライン側型枠1と上面ライン側型枠2を備え、底面ライン側型枠1が車高よりもやや深く形成され、同一幅の型底4,7の背面同士が貼り合わされて一体とされている。そして、その一体となった型枠が前後に3台連続した構成である。
このように3連とすることにより、型枠1,2に連続材料を挿入すると、一回の加工によって、3台が縦に連なった連続模型の作製が可能となる。また、車幅が同一の異なる車種を同時に作成することができる。
この型枠を使用して模型車両を作成すると、3台が一連として作成されながら模型は一台ごとに切り離されることになる。この切り離し作業は、上面ライン側型枠の側面に電熱線カッタの通過路9を確保することにより、型枠上で分離される。また、保管の為に電熱線カッタ通過路9を経ないで型枠から3連のままで取り出した後、必要的にそれぞれ使用する方法もある。
【実施例3】
【0015】
次に、図3は模型車両の製造方法の説明図である。
模型車両本体の素材は発砲スチロール、EPS、FS、フォームスチレン等の樹脂材を使用するが、これらの素材に限定されるものではなく、電熱線カッタで切断可能な素材であれば使用可能である。
発砲スチロールは小粒気泡塊が集合密着した構造となっているため、鋭利な刃物でも滑らかな曲面を切断することは困難であり、美しく切断するのに熟練技術を要することもある。そのため、本発明では、熟練技術を要しない電熱線カッタによる熱切断法を採用する。
【0016】
この切断法は、電熱線よりなる熱刃(ヒートカッタ)を用い、この熱刃に通電して加熱し、この加熱した熱刃によって発砲スチロールを溶融切断する方法である。この熱切断法を用いることにより、大きな力を必要としないで、しかも切断された発砲スチロールの切断面を滑らかな面とすることができる。
熱刃は電熱線を電極間に架け渡し、その電熱線に通電することによって熱を発生させ、その熱によって材料を切断する構成である。本実施例では型枠の両端の外縁にそって電熱線をスライドさせて材料を切断する。
【0017】
模型車両の作成に際しては、まず両側面3a、3b間と略同一幅の樹脂材10を形成準備する(図3(a))。そして、その樹脂材10を底面ライン側型枠1に挿入する(b)。
ここでは、樹脂材を型枠1の型底へ突き当たるまで挿入し、型枠内の全域に樹脂材を充填する。そして、樹脂材の外側は型枠からはみ出す程度の幅広面積とする。
樹脂材を挿入した後は、型枠の外縁5をガイドとして熱刃11を通過させ(c)、型枠前後を切り落とすと共に、先端の外縁5の形状に沿って底面ラインを切り落とす。熱刃11は、外縁5の間に架け渡された状態でスライドするので、外縁5に沿った滑らかな底面ラインが形成される。
底面ラインを形成した後は、車形成樹脂材10を取り出し(d)、平行移動させ、上面ライン側型枠2に挿入する。
車両の前後端は側面の前後端に合わせ、上面ライン側型底2へ入れて未加工側の樹脂材10を上へ露出させる。
【0018】
ここでは、底面ライン側型枠1は車高よりも深く形成されているために、切断しろhが上面ライン側型枠2の上側へはみ出すことになる。
そして、型枠の外縁8をガイドとして熱刃11を通過させ、先端の外縁の形状に沿って平面ラインを切り落とす。熱刃11は、外縁8の間に架け渡された状態でスライドし、形状に沿った滑らかな上面ラインが形成される(e)。
ここでは切断しろhが確保されていることにより、上面ラインを連続的になめらかなラインイで切断することが可能となっている。
上面ラインが切断されることにより、車両側面の外形を備えた模型車両12が形成される(f)。
車両の前後端については、垂直に切断することも可能であるが、バンパー等の形状に沿って、型枠側面の前後縁の外縁に反映させることにより、それをガイドとしてバンパー等の形状を形成することもできる。
【0019】
第2実施例に係る3連の型枠による製造方法は、前記と同様の方法によるが、3連の型枠に相応する幅広面積の一連の樹脂材を使用する。
樹脂材を型枠に挿入して電熱線カッタにより切断すると、一回の加工によって、同一車幅の車両が同時に3台作成される。
この切り離し作業は、上面ライン側型枠の側面に電熱線カッタの通過路9を確保することにより、型枠上で分離される。また、保管の為に電熱線カッタ通過路9を経ないで、型枠から取り出した後、必要的にそれぞれ分離、使用する方法もある。
【0020】
以上、実施例を説明したが、本発明の具体的な構成は前記実施例に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。
例えば、第2実施例では、3連構造の型枠について説明したが、型枠については2連、4連以上とすることも可能である。
また、前記実施例では底面ライン側型枠を車高よりも深く設定したが、底面ライン側に代えて平面ライン側型枠を深く設定する構成であっても本発明に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1実施例に係る型枠の斜視図である。
【図2】第2実施例に係る型枠の斜視図である。
【図3】模型車両の製造方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0022】
1 底面ライン側型枠
2 上面ライン側型枠
3a 側面
3b 側面
4 型底
5 外縁
6a 側面
6b 側面
7 型底
8 外縁
9 電熱カッタ通過路
10 樹脂材
11 熱刃
12 模型車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両左右側面の外縁を備えた左右一対の型枠を形成し、その型枠の間に樹脂材を挟み、左右の型枠の外縁をガイドとして電熱線カッタで樹脂材を切断することを特徴とする模型車両の製造方法。
【請求項2】
車両左右側面の底面ラインに沿った外縁を備えた型枠の間に樹脂材を挟み、その外縁をガイドとして電熱線カッタで樹脂材を切断する工程と、
車両左右側面の上面ラインに沿った外縁を備えた型枠の間に樹脂材を挟み、その外縁をガイドとして電熱線カッタで樹脂材を切断する工程を有したことを特徴とする模型車両の製造方法。
【請求項3】
車両左右側面の底面ラインに沿った外縁を備えた左右一対の側面、及びその両側面を支持する型底とによってコの字型に形成された型枠と、
車両左右側面の上面ラインに沿った外縁を備えた左右一対の側面、及びその両側面を支持する型底とによってコの字型に形成された型枠とを有し、
前記底面ラインに沿った外縁を備えた型枠と、前記上面ラインに沿った外縁を備えた型枠の型底背面同士を接合して一体としたことを特徴とする型枠。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−206228(P2007−206228A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−23109(P2006−23109)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(000198787)積水ハウス株式会社 (748)
【Fターム(参考)】