説明

樹木の枝打ち方法及び同方法において使用する鋸収納用ケース

【課題】 杉、桧等の枝打ちを鋸を使用して行う場合、鋸の歯部に付着する樹液(やに)の除去が困難で、枝打ち作業能率を悪化させていた。
【解決手段】 鋸を収納するケースを一端を水密にして、同ケースに水を留めておき、枝打ち作業が終る都度、鋸を同ケースに納めて、鋸の歯部を水に接触させ、つまり鋸の歯部に水分が付着するようにして、次の枝打ち作業を行うことを特徴とする枝打ち方法である。この方法によると付着やにが容易にこすりとられ作業能率が倍増した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杉又は桧等の樹木の枝打ちを鋸を用いて行う方法及び同方法において使用する鋸収納用ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
杉、桧等の枝打ちは、不要な小枝を切り落すことであるが、この枝打ち作業は曲りのない節のない立木を得るために必要なことである。この枝打ち作業は、従前より、なた又は鋸を用いて行うことが一般的で、その中で鋸を使用した枝打ちの場合、鋸の歯部及びその周辺に樹液(以下、やにということあり。)が付着し、長時間の作業においてはやにの付着が多く、又連続作業中はともかく、一旦作業を休み、しばらくそのまま放置すると、付着したやにが固まり、次の枝打ち作業を行うとき鋸の通りが良くなく作業能率が極めて悪化した。
従来は、鋸に付着したやにを取り除くべく、例えば小枝でもってやにをこすり取ることが行われていた。又一般的に、鋸の板面にやにが付着しにくいような鋸が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−179702号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
枝打ち作業は、樹の上に昇って行うことが多いので、一旦樹上に昇ったときは出来るだけ多くの枝打ちを行うことが望ましく、樹上でのやにとりのため鋸の歯部を一々小枝等でこすり取ることは作業能率を大きく低下させるものであったが、それ以外に適切なやにとり方法がなかったのも現実である。
本発明者は、山林業を営み永年枝打ち作業を行ってきたが、前述の小枝で鋸に付着したやにをこすり取る方法より良い方法がなかったもので、同じ方法を繰り返しながらも、日々その改善に頭を悩ましていた。そして、以下に述べるような方法によって極めて簡便に付着したやにの除去に成功したのである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明請求項1に記載の発明は、杉又は桧等の樹木の枝打ちを鋸を使用して行うに際し、前記鋸を収納する一端が水密に閉塞された筒状ケースに水を入れておき、前記鋸を用いて枝打ち作業をする第1段階と、前記第1段階の終了後、前記鋸を前記筒状ケースに収納して前記鋸の歯部を前記水の中に浸す第2段階と、前記第2段階の後、次の枝打ちに先立ち前記鋸を取り出す第3段階とを備え、前記第1段階、前記第2段階及び前記第3段階を複数回繰り返すことを特徴とする樹木の枝打ち方法である。
【0005】
上述のように、鋸を収納するケースの一端を水密にして、同ケース内に水を予め入れておき、鋸使用の都度鋸をケースに納めることにより、鋸の歯部が水に接し、つまり鋸の歯部に水分が付着し、次にそのまま鋸を出して作業を行うと、歯部に付着したやにが従前よりも容易にこすりとられ落下したり又挽き離された木枝又は残した立木の切断面にくっついてしまうことが判った。
【0006】
このように付着やにが簡単にとれるのは、やにと水分との相互作用と鋸の往復運動によるこすり取りがうまく作用している結果と推測される。
【0007】
本発明請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の方法の実施において使用する筒状ケースであって、一端が水密に閉塞され他端が鋸の出入自在に開放されたことを特徴とする
鋸収納用ケースである。
【0008】
従前より鋸収納用のケースはあるが、例外なくと云っていいほど、底の部分も比較的大きな開口があった。これはゴミの除去又は水はけを良くすることであると思われるが本発明はむしろケース内に水を留めることに特徴がある。
【0009】
本発明請求項3に記載の発明は、少なくとも一外面がほぼ平坦面である筒状ケースの平坦面側であって、かつ鋸の出入自在に開放された側に巾広のベルト通しを設けたことを特徴とする請求項2に記載の鋸収納用ケースである。
【0010】
一般に鋸収納用ケースはズボンベルトに通して保持するが、本発明においては水を留めているので作業時出来るだけ安定に保たれることが必要で、そのため、同上ケースのズボンに接する側の一面をほぼ平坦面とし、かつベルト通しも巾広にしてケースが回転するようなことを回避するものである。
【発明の効果】
【0011】
以上の説明からわかるように、本発明は杉又は桧等の樹木の枝打ちを鋸を使用して行う場合に、鋸の歯部に付着するやにを効率よく取り除くことができ、枝打ち作業の能率を倍程度に上げることができた。又そのための解決手段も、従前の鋸収納用ケースを少し改良するだけで十分であり、本発明の効果は極めて大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の一実施例につき、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明方法の実施において使用する鋸収納用ケース及び鋸の一例の斜視図、図2は同ケース及び鋸の一部切欠した状態の側面図、図3は同ケースの一部拡大斜視図、図4は同ケースの他の例の一部拡大斜視図、図5、図6はそれぞれ同ケースの断面形状の一例を示す図である。
【0013】
図1、図2において、1は鋸収納用ケース本体、2は鋸、3は鋸を出入れするケース本体1の開口端、4は開口端とは反対側の水密に閉塞された一端、5はベルト通し、6はベルトである。
【0014】
枝打ち作業が終る毎に鋸2をケース本体1に収納するが、ケース本体1内には適量の水12が、例えばケース内の半分程度に入れられているので、収納した鋸2の歯部7を含むほぼ下半分が水に浸される。その場合鋸2の歯部7及びその周辺にはやにが付着している。
【0015】
次に、鋸2をケース本体1より取り出して次の枝打ち作業を行うのであるが、そのとき鋸2の歯部7及びその周辺に付着したやにが、鋸の往復運動とともに容易にこすり取られ、鋸の通りが非常に良くなった。
【0016】
このようにやにが除去されるのはやにと水分との相互作用と鋸の往復運動によるこすり取りがうまく作用している結果と推測される。
【0017】
図3、図4は、それぞれベルト通し5とケースの開口端3側との装着例を示す斜視図で、図3はベルト通しの端部8をテープ9等で開口端3側にしっかりと接着している例、図4は同端部8を開口端3側にリベット10で止めている例を示す。ただし、リベットで止める場合は、鋸の歯部の損傷を防止するため、リベットの金具がケース本体の内部に露出しないようにする。また、図示はしていないが、ベルト通しとケース本体を一体に成型で作ることも可能である。
【0018】
図5、図6は、それぞれケース本体1の横断面図の例を示すもので、図5ではズボンに接する側11を平坦にしており、図6では同じくズボンに接する側11をやや弯曲させている。
【0019】
これらはいずれもほぼ平坦で、ズボンにケースを装着したとき、回転などを防止し、できるだけケース本体1を安定に保持しうるようにしたものである。
【0020】
尚、ケース本体1内に入れる水の量には特に限定はないが、ケースの高さにしてほぼ半分程度まで水を入れるのが好都合だった。又、ケース本体1の形状も図示例に限らず種々の形状を採用しうるし、鋸が出入りする開口端はその出入りを容易にするため広く、閉塞端は狭めた形にすることも良い。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明方法の実施において使用する鋸収納用ケース及び鋸の一例の斜視図である。
【図2】同上鋸収納用ケース及び鋸の一例の一部切欠側面図である。
【図3】同上鋸収納用ケースの一部拡大斜視図である。
【図4】同上鋸収納用ケースの他の例の一部拡大斜視図である。
【図5】同上鋸収納用ケースの断面形状の一例を示す図である。
【図6】同上鋸収納用ケースの断面形状の他の例を示す図である。
【符号の説明】
【0022】
1 ケース本体
2 鋸
3 開口端
4 閉塞された一端
5 ベルト通し
6 ベルト
7 歯部
8 ベルト通しの端部
9 テープ
10 リベット
12 水


【特許請求の範囲】
【請求項1】
杉又は桧等の樹木の枝打ちを鋸を使用して行うに際し、前記鋸を収納する一端が水密に閉塞された筒状ケースに水を入れておき、前記鋸を用いて枝打ち作業をする第1段階と、前記第1段階の終了後、前記鋸を前記筒状ケースに収納して前記鋸の歯部を前記水の中に浸す第2段階と、前記第2段階の後、次の枝打ちに先立ち前記鋸を取り出す第3段階とを備え、前記第1段階、前記第2段階及び前記第3段階を複数回繰り返すことを特徴とする樹木の枝打ち方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法の実施において使用する筒状ケースであって、一端が水密に閉塞され他端が鋸の出入自在に開放されたことを特徴とする鋸収納用ケース。
【請求項3】
少なくとも一外面がほぼ平坦面である筒状ケースの平坦面側であって、かつ鋸の出入自在に開放された側に巾広のベルト通しを設けたことを特徴とする請求項2に記載の鋸収納用ケース。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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