説明

樹脂成形金属腐食防止剤、金属腐食防止性樹脂組成物及び樹脂成形金型腐食防止方法

本発明は、樹脂成形金属の腐食防止剤、それを含有する金属腐食防止性樹脂組成物及びそれを用いた樹脂成形金型腐食防止方法を提供すること、より具体的には成形金型、成形機、インサート成形金属等の樹脂成形金属の腐食を防止することを目的として、ポリフェニレンサルファイド100重量部に対して、アミノアルコキシシラン0.2〜2.0重量部、及び必要に応じて酸化亜鉛等の亜鉛化合物を、アミノアルコキシシラン化合物1重量部に対して4重量部以下を加えたペレットを使用することにより解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、アミノアルコキシシラン化合物、特にアミノアルコキシシラン化合物と酸化亜鉛等の亜鉛化合物とからなる樹脂成形金属腐食防止剤、それを含有する金属腐食防止性樹脂組成物及び樹脂成形金型腐食防止方法に関する。
【背景技術】
ポリフェニレンサルファイド(PPS)などの樹脂、又はハロゲン系難燃剤などの添加剤を含む樹脂組成物では、金型で成形する場合に、金型が腐食する場合があり、金型メンテナンスを頻繁に行うので生産性が低い、金型寿命が短い、又は高価な材質の金型を使用しなければならない等という問題があった。
特開平11−100505号公報(請求項1〜5、段落番号[0006]参照)には、PPSが、樹脂構造や製造原料により、金属腐蝕性ガスを発生するという問題点を持っているので、金属腐蝕性ガス捕捉のために、酸化亜鉛ウィスカまたは燐酸、もしくは次亜燐酸、又はそれらの塩を配合する技術が開示されている。
しかし、上記技術は、燐酸、次亜燐酸、又はそれらの塩を使用する場合には、樹脂成形品の機械的物性の低下を生じ、導電性が問題になったりする場合には使用しにくく、金属腐食防止効果も十分ではなかった。
一方、PPSにアミノシラン化合物を加え溶融粘度を上昇させる方法が知られており、例えば特開平11−158280号公報(請求項5、段落番号[0012]〜[0013]参照)には、ビニルアルコキシシラン、エポキシアルコキシシラン、アミノアルコキシシランおよびメルカプトアルコキシシランから選ばれる少なくとも1種のシラン化合物と共に、分岐構造を有するポリフェニレンサルファイド樹脂と線状ポリフェニレンサルファイド樹脂を溶融混練するポリフェニレンサルファイド樹脂の製造方法が開示されている。
しかし、上記技術は、溶融粘度を上昇させ、バリを発生させないようにすることが目的であり、金属腐食防止については、何も教えていない。
本発明の目的は、樹脂成形金属の腐食防止剤、それを含有する金属腐食防止性樹脂組成物及びそれを用いた樹脂成形金型腐食防止方法を提供することである。
【発明の開示】
本発明者らは、アミノアルコキシシラン化合物を、特にアミノアルコキシシラン化合物と酸化亜鉛等の亜鉛化合物を、樹脂に添加することにより、成形金属の腐食等が防止できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の第1は、アミノアルコキシシラン化合物からなる樹脂成形金属腐食防止剤を提供する。
本発明の第2は、アミノアルコキシシラン化合物100重量部に対して、さらに酸化亜鉛、炭酸亜鉛及びこれらの混合物からなる群から選ばれる亜鉛化合物400重量部以下を含む本発明の第1に記載の樹脂成形金属腐食防止剤を提供する。
本発明の第3は、アミノアルコキシシラン化合物が、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、又はこれらの混合物である本発明の第1又は2に記載の樹脂成形金属腐食防止剤を提供する。
本発明の第4は、樹脂成形金属が、樹脂成形金型、樹脂射出成形機、樹脂押出成形機、インサート成形金属、アウトサート成形金属、フープ成形金属、樹脂メッキ金属および樹脂蒸着金属からなる群から選ばれる一種以上である本発明の第1〜3のいずれかに記載の樹脂成形金属腐食防止剤を提供する。
本発明の第5は、金属腐食性樹脂100重量部及びアミノアルコキシシラン化合物0.2〜2.0重量部からなる金属腐食防止性樹脂組成物を提供する。
本発明の第6は、アミノアルコキシシラン化合物100重量部に対して、さらに酸化亜鉛、炭酸亜鉛及びこれらの混合物からなる群から選ばれる亜鉛化合物400重量部以下を含む本発明の第5に記載の金属腐食防止性樹脂組成物を提供する。
本発明の第7は、金属腐食性樹脂が、ポリフェニレンサルファイド、ポリスルフォン、これらの混合物、又はこれらと他の樹脂とのアロイである本発明の第5又は6に記載の金属腐食防止性樹脂組成物を提供する。
本発明の第8は、金属腐食性樹脂が、金属腐食性樹脂添加物を含むものである本発明の第5又は6に記載の金属腐食防止性樹脂組成物を提供する。
本発明の第9は、金型を用いて成形する際に、樹脂にアミノアルコキシシラン化合物、及び必要に応じてアミノアルコキシシラン化合物100重量部に対して、酸化亜鉛、炭酸亜鉛及びこれらの混合物からなる群から選ばれる亜鉛化合物400重量部以下を添加する樹脂成形金型腐食防止方法を提供する。
本発明によれば、PPS樹脂などの金属腐食性樹脂を成形する際に、成形金型などの金属の腐食を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
以下に本発明の実施の形態を説明する。
アミノアルコキシシラン化合物
本発明に係るアミノアルコキシシラン化合物としては、例えばγ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
これらのアミノアルコキシシラン化合物は各単独で使用できる他、2種以上を混合して使用することができる。
また、これらのアルコキシシラン化合物は単体でもよいが、予め、上記単体が重合された構造に相当するポリマー、二種以上が共重合された構造に相当するコポリマー、又はこれらのオリゴマーも使用することができる。
アミノアルコキシシラン化合物の配合割合としては、樹脂100重量部に対して、アミノアルコキシシラン化合物0.2〜2.0重量部、好ましくは0.3〜1.5重量部、さらに好ましくは0.5〜1.2重量部である。
アミノアルコキシシラン化合物の配合割合が上記範囲より少なすぎると金型金属等の腐食防止効果が十分に得られず、上記範囲より多すぎると発生ガスが多くなったり、不経済である。
亜鉛化合物
上記アミノアルコキシシラン化合物には、必要に応じて、アミノアルコキシシラン化合物100重量部に対して亜鉛化合物400重量部以下、好ましくは20〜200重量部、さらに好ましくは30〜150重量部を配合することができる。
本発明に係る亜鉛化合物としては、酸化亜鉛、ZnとZnOの固溶体である亜酸化亜鉛ZnO、炭酸亜鉛、ヒドロオキシ炭酸亜鉛(スイアエン鉱を含む)、水酸化亜鉛、これらを含む複塩等、及びこれらの混合物が挙げられる。好ましくは酸化亜鉛、炭酸亜鉛又はこれらの混合物である。
アミノアルコキシシラン化合物に対して上記範囲内で亜鉛化合物を添加することにより、相乗的に金属の腐食防止効果が得られる。
亜鉛化合物の形態には特に制限はなく、粉末状、針状、ウィスカなどのものが使用でき、好ましくは針状又はウィスカが使用できる。
酸化亜鉛ウィスカは、顕微鏡法によって測定した針状部での平均繊維径(短径)が0.1〜5μm、平均繊維長(長径)が2〜100μmであり、かつ平均アスペクト比が5以上であるものが好ましい。市販品の中には三次元的にテトラポット形状をした酸化亜鉛があり、前述の形状を有するウィスカとして好適な化合物の一つであるが、これに限定されるものではない。
更に、酸化亜鉛ウィスカの表面を予めエポキシアルコキシシラン等で処理することが、分散性及び機械的物性の保持の点から好ましい。エポキシアルコキシシランとしては、1分子中にエポキシ基を1個以上有し、アルコキシ基を2個あるいは3個有するシラン化合物であればいずれのものでも有効で、例えばγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
本発明に係る樹脂成形金属腐食防止剤は、金属腐蝕性物質発生樹脂又は樹脂組成物に対して効果を示す。
腐食原因物質としては、酸性物質が推定され、例えば、ハロゲン、ハロゲン原子、ハロゲンイオン、ハロゲン化物イオンまたはハロゲン化水素のようなハロゲン化合物(ここで、ハロゲンはフッ素、塩素又は臭素である。)、硫黄、硫化水素、硫黄酸化物、硫黄酸化物イオン、及びこれらの混合物などが挙げられる。
このような腐食原因物質を発生する樹脂としては、脱塩化ナトリウムにより重合させるポリマー又はハロゲン含有ポリマーなどが挙げられる。
脱塩化ナトリウムにより重合が生じるポリマーとしては、ポリフェニレンサルファイド(PPS)などのポリアリーレンサルファイド(PAS)、ポリスルフォン(PSF)、ポリチオエーテルスルフォン(PTES)のようなイオウ系樹脂;界面重合ポリカーボネートや界面重合ポリアリレートなどが挙げられる。
例えば、PASとしては、架橋型、直鎖型、高靭性架橋型などいずれのタイプでもよいし、分子量や融点などにも特に制限はない。
PASは、繰返し単位として−(Ar−S)−(ただしArはアリーレン基)で主として構成されたものである。アリーレン基としては、例えば、p−フェニレン基、m−フェニレン基、o−フェニレン基、置換フェニレン基、p,p’−ジフェニレンスルフォン基、p,p’−ビフェニレン基、p’p’−ジフェニレンエーテル基、p,p’−ジフェニレンカルボニル基、ナフタレン基などが使用できる。この場合、前記のアリーレン基から構成されるアリーレンサルファイド基の中で、同一の繰返し単位を用いたポリマー、すなわちホモポリマーの他に、組成物の加工性という点から、異種繰返し単位を含んだコポリマーが好ましい場合もある。ホモポリマーとしては、アリーレン基としてp−フェニレン基を用いた、p−フェニレンサルファイド基を繰返し単位とするものが特に好ましく用いられる。又、コポリマーとしては、前記のアリーレン基からなるアリーレンサルファイド基の中で、相異なる2種以上の組み合わせが使用できるが、中でもp−フェニレンサルファイド基とm−フェニレンサルファイド基を含む組み合わせが特に好ましく用いられる。この中で、p−フェニレンサルファイド基を70モル%以上、好ましくは80モル%以上含むものが、耐熱性、成形性、機械的特性等の物性上の点から適当である。又、これらのPASの中で、2官能性ハロゲン芳香族化合物を主体とするモノマーから縮重合によって得られる実質的に直鎖状構造の高分子量ポリマーが、特に好ましく使用できるが、直鎖状構造のPAS以外にも、縮重合させるときに、3個以上のハロゲン置換基を有するポリハロ芳香族化合物等のモノマーを少量用いて、部分的に分岐構造または架橋構造を形成させたポリマーも使用できるし、低分子量の直鎖状構造ポリマーを酸素又は酸化剤存在下、高温で加熱して、酸化架橋又は熱架橋により溶融粘度を上昇させ、成形加工性を改良したポリマーも使用可能である。又、PASは、直鎖状PAS(310℃、ズリ速度1200/secにおける粘度が10〜300Pa・s)を主体とし、その一部(1〜30重量%、好ましくは2〜25重量%)が、比較的高粘度(300〜3000Pa・s、好ましくは500〜2000Pa・s)の分岐又は架橋PASとの混合系も好適である。
又、本発明に用いるPASは重合後、酸洗浄、熱水洗浄、有機溶剤洗浄(或いはこれらの組合せ)等の脱イオン処理を行って副生不純物等を除去精製することによって、アルカリ金属及びハロゲン含有量を夫々500ppm以下、好ましくは300ppm以下にしたものが好適に用いられる。
上記樹脂は、混合物やアロイ等であってもよい。例えばPASのアロイとしては、他の樹脂としてポリオレフィン、フッ素樹脂、ナイロン系、ポリエーテルイミド、環状オレフィン系樹脂、ポリフェニレンエーテル等が挙げられる。
また、金型腐食原因物質としては、難燃剤などのハロゲン系樹脂添加剤(ここで、ハロゲンはフッ素、塩素又は臭素である。)、カチオン系帯電防止剤、充填剤、その他の添加剤、及びこれらの混合物が挙げられ、このような金型腐食原因物質含有樹脂組成物に対しても、本発明に係る樹脂成形金型腐食防止剤は、効果を示す。
金属腐食防止性樹脂組成物
本発明に係る金属腐食防止性樹脂組成物は、上記金属腐蝕性物質発生樹脂又は樹脂組成物に、アミノアルコキシシラン化合物を又はアミノアルコキシシラン化合物と亜鉛化合物を配合して得られる。
金属腐食防止性樹脂組成物は、例えば、樹脂、アミノアルコキシシラン化合物、及び必要に応じて加えられる亜鉛化合物を、予備混合したのち、溶融混練して、ストランドに押出し、ペレットにされる。溶融混練条件は樹脂の種類等によって選定される。
例えば、PPSの場合には、溶融混練温度としては、290〜350℃、好ましくは310〜330℃であり、溶融混練時間は、混練温度、溶融樹脂が受ける剪断力にもよるが、0.5〜3.0分である。
溶融混練機としては、一軸または多軸スクリュ押出機、ニーダー、ミキサー等が用いられる。
また、樹脂成分を溶融押出する場合に、亜鉛化合物やガラス繊維などの無機成分を押出機の途中からサイドフィードさせることもできる。
本発明に係る金型腐食防止性樹脂組成物には、樹脂添加剤等が配合されていてもよい。
本発明で使用する樹脂添加剤としては、可塑剤、熱安定剤、滑剤、ブロッキング防止剤、結晶化核剤、光分解促進剤、生分解促進剤、自動酸化剤、酸化防止剤、紫外線安定剤、帯電防止剤、難燃剤、流滴剤、耐水化剤、抗菌剤、防臭剤、脱臭剤、充填材(無機添加剤又は有機添加剤)、増量剤、着色剤又はこれらの混合物が挙げられる。
充填剤としては、ガラス繊維、カーボン繊維、ボロン繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、アモルファス繊維、シリコン・チタン・炭素系繊維;ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、フッ素繊維;チタン酸カリウィスカ、シリコンカーバイドウィスカ、グラファイトウィスカー、窒化シリコンウィスカ、アルミナ−酸化ホウ素ウィスカ;軽質炭酸カルシウム、重質ないし微粉化炭酸カルシウム、特殊カルシウム系充填剤などの炭酸カルシウム粉末;霞石閃長岩微粉末;モンモリロナイト、ベントナイト等のクレー、焼成クレー、シラン改質クレーなどのクレー(ケイ酸アルミニウム粉末);タルク;溶融シリカ、結晶シリカなどのシリカ(二酸化ケイ素)粉末;ケイ藻土、ケイ砂などのケイ酸含有化合物;軽石粉、スレート粉、マイカ、雲母粉、アスベストなどの天然鉱物、及びその粉砕品;アルミナ、アルミナコロイド(アルミナゾル)、アルミナ・ホワイト、硫酸アルミニウムなどのアルミナ含有化合物;硫酸バリウム、リトポン、硫酸カルシウム、二硫化モリブデン、グラファイト(黒鉛)などの鉱物;ガラスビーズ、ガラスフレーク、発泡ガラスビーズなどのガラス系フィラー;フライアッシュ球、火山ガラス中空体、軽石バルーン、合成無機中空体、炭素中空球;無煙炭粉末、人造氷晶石(クリオライト)、酸化チタン、酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、ドロマイト、亜硫酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、アルミニウム粉、硫化モリブデン、チタン酸カリウムなどの粉末等が挙げられる。
樹脂100重量部に対する充填剤の配合量は、400重量部以下、好ましくは0〜250重量部である。
成形
このようにして得たペレットは、射出成形、押出し成形、真空成形、圧縮成形等、一般に公知の熱可塑性樹脂の成形法を用いて成形することができるが、最も好ましいのは射出成形である。
本発明に係る射出成形機、押出成形機および金型等の金属としては、アズ・ロールド鋼(SC系、SCM系)、プリハードン鋼(SC系、SCM系、SUS系、SKD系)、焼入れ・焼戻し鋼(SUS系、SKD系)、時効処理鋼(マルエージング鋼、非磁性鋼、SKD系)、又はアルミやZASなどの非鉄系等が挙げられる。金属表面をCrメッキ、Niメッキ等の表面処理を行い、焼け、腐食防止、剥離向上効果を持たせてもよい。一般的には、押出成形機材質としては、例えばSCM440などが、金型材質としては、例えばSKD−11やSKD−11改などが用いられる。腐蝕性ガスの発生が問題になる場合にはSUS系のプリハードン鋼や時効処理鋼などが好ましく用いられる。
インサートもしくはアウトサート成形又はフープ成形に使用される金属としては、特に制限はなく、鉄、銅、アルミ、金、銀、錫、クロム、ニッケル、チタン、各種合金などが挙げられ、その形状としては特に制限はないが、ナット、ローレット、スプライン、シャーシ、帯鋼、箔等が挙げられる。
メッキ、蒸着、膜形成などに使用される金属としては、アルミ、銅、亜鉛、錫、銀、クロム、鉛、金、白金、チタン等;ニッケル−クロム、コバルト−ニッケル、ITOなどの合金または金属酸化物導電材料やMO半導体などが挙げらる。
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものでない。
・金属腐食性樹脂
樹脂1−1:ポリフェニレンサルファイド樹脂(呉羽化学工業(株)製、フォートロンKPS、直鎖型、溶融粘度30Pa・s(310℃、ズリ速度1200/sec))
樹脂1−2:ポリスルフォン(ソルベイアドバンストポリマーズ(株)製、ユーデルP−1700、MFR:7g/10分(ASTM D−1238))
・アミノアルコキシシラン化合物
アミノアルコキシシラン化合物2−1:γ−アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学(株)製)
アミノアルコキシシラン化合物2−2:γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学(株)製)
・亜鉛化合物
酸化亜鉛3−1(松下アムテック社製、ウィスカ、平均繊維径(短径)=0.3μm、平均繊維長(長径)=4μm)
酸化亜鉛3−2(三井金属鉱業社製、乾式法粉末、平均粒径=0.7μm)
酸化亜鉛3−3(堺化学社製、湿式法粉末、平均粒径=0.02μm)
炭酸亜鉛3−4(関西触媒化学(株)製、白色粉末、平均粒径=16μm)
・ガラスファイバー4−1(日本電気ガラス(株)製 ECS03T−717、13mmφ、チョップドストランド)
金属腐食量の測定
内径18mm、高さ200mmのガラス製試験管の底部に、以下で得られるペレット4gを入れ、金型用金属材料SKD−11(主組成:鉄、クロム、炭素)の試験片15×160×2mmを試験管の中間部分に吊した。試験管の上部に栓をし、試験管を350℃、3時間加熱した後、空冷して、試験片を取り出した。その後、23℃、相対湿度95%以上の環境下に24時間放置し、試験片の重量を測定した。試験片の重量増加量を腐食量とした。
腐食ガス発生量の測定
理研計器(株)製、高感度毒性ガスモニター(FP300、検知テープFC−005)を用い、セラミック製ボートに、ペレット0.2ないし2.0gを精秤し、350℃に設定された加熱炉内に置き、発生するガス状の塩化水素量を測定した。塩化水素量は、350℃、40分間に発生する塩化水素発生量(μg)を仕込みサンプル重量(g)で除した濃度(単位ppm)で表した。
[実施例1〜6及び比較例1〜3]
上記樹脂1−1または樹脂1−2の100重量部に対し、表1に示す重量比率で、アミノアルコキシシラン化合物2−1〜2−2、及び必要に応じて亜鉛化合物3−1〜3−4を加えて、ヘンシェルミキサーで2〜5分間予備混合した。さらに必要に応じて上記ガラスファイバーを、表1に示す重量比率で加えて2分間混合し、これをシリンダー温度320℃の二軸押出機にフィードし、ストランド状に押出し、カットしてペレットとした。得られたペレットを用い、上記金属腐食量および腐食ガス発生量の測定を行った。
結果を表1に纏めて示す。

【産業上の利用可能性】
本発明に係る金属腐食防止性樹脂組成物では、該原料ペレットを射出成形した場合に、金型の腐食が著しく少ないため、金型の清掃頻度が少なくて済むし、寿命が延びる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノアルコキシシラン化合物からなる樹脂成形金属腐食防止剤。
【請求項2】
アミノアルコキシシラン化合物100重量部に対して、さらに酸化亜鉛、炭酸亜鉛及びこれらの混合物からなる群から選ばれる亜鉛化合物400重量部以下を含む請求項1に記載の樹脂成形金属腐食防止剤。
【請求項3】
アミノアルコキシシラン化合物が、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、又はこれらの混合物である請求項1又は2に記載の樹脂成形金属腐食防止剤。
【請求項4】
樹脂成形金属が、樹脂成形金型、樹脂射出成形機、樹脂押出成形機、インサート成形金属、アウトサート成形金属、フープ成形金属、樹脂メッキ金属および樹脂蒸着金属からなる群から選ばれる一種以上である請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂成形金属腐食防止剤。
【請求項5】
金属腐食性樹脂100重量部及びアミノアルコキシシラン化合物0.2〜2.0重量部からなる金属腐食防止性樹脂組成物。
【請求項6】
アミノアルコキシシラン化合物100重量部に対して、さらに酸化亜鉛、炭酸亜鉛及びこれらの混合物からなる群から選ばれる亜鉛化合物400重量部以下を含む請求項5に記載の金属腐食防止性樹脂組成物。
【請求項7】
金属腐食性樹脂が、ポリフェニレンサルファイド、ポリスルフォン、これらの混合物、又はこれらと他の樹脂とのアロイである請求項5又は6に記載の金属腐食防止性樹脂組成物。
【請求項8】
金属腐食性樹脂が、金属腐食性樹脂添加物を含むものである請求項5又は6に記載の金属腐食防止性樹脂組成物。
【請求項9】
金型を用いて成形する際に、樹脂にアミノアルコキシシラン化合物、及び必要に応じてアミノアルコキシシラン化合物100重量部に対して、酸化亜鉛、炭酸亜鉛及びこれらの混合物からなる群から選ばれる亜鉛化合物400重量部以下を添加する樹脂成形金型腐食防止方法。

【国際公開番号】WO2005/037924
【国際公開日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【発行日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−514894(P2005−514894)
【国際出願番号】PCT/JP2004/015957
【国際出願日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(390006323)ポリプラスチックス株式会社 (302)
【Fターム(参考)】