説明

樹脂用充填剤組成物及びその製法

【発明の詳細な説明】
(産業上の利用分野)
本発明は、樹脂用充填剤組成物及びその製法に関するもので、より詳細には、非晶質シリカ、非晶質シリカ−アルミナ或いはアルミノケイ酸塩から成る充填剤が著しく少ない量の有機結合媒質を介して造粒されていながら、樹脂中への分散性、組成の均一性、耐粉塵飛散性及び流動性に優れることから、配合樹脂の衝撃強度等の機械的強度を向上させ、しかもフィルム成形において配合樹脂フィルムの透明性やアンチブロッキング性にも優れている樹脂用充填剤組成物及びその製法に関するものである。
(従来の技術)
フィルム等の樹脂成形品は、これらを積み重ねた状態におくと互いにブロッキングする傾向があり、これを防止するために、樹脂中に種々の無機配合剤を配合することが古くから行われている。
ゼオライトがこのような特性に優れていることも既に知られており、例えば特公昭52−16134号公報には、ポリプロピレンに対し平均粒子径20ミクロン以下のゼオライト粉末を0.01乃至5重量%添加することにより、二軸延伸ポリプロピレンフィルムの耐ブロッキング性を向上させることが示されている。また、特開昭54−34356号公報には、イオン交換性を有するゼオライト結晶のアルミノケイ酸塩を塩素含有重合体に0.01乃至10重量%の量で配合することによって熱安定性を改善すること、及びこの際付加的利点として外部滑性が著しく改善されることが開示されている。
更に特開昭58−213031号公報には、Al2O3:SiO2のモル比が1:1.8乃至1:5の範囲にある組成を有する一辺の長さが5ミクロン以下の立方体一次粒子から成り、該粒子はX−線回折学的に実質上非晶質で且つ100m2/g以下のBET比表面積を有することを特徴とするアルミナ−シリカ系樹脂配合剤が記載されている。
更には無機充填剤を樹脂に添加するに際し、充填剤と樹脂との親和性を良くし樹脂成形品に所望の特性を賦与するために、該充填剤を有機シラン、界面活性剤、ワックス等で処理し、無機充填剤と樹脂との相容性を良くしようとする手段がとられている。
(発明が解決しようとする問題点)
前述したゼオライトや非晶質シリカ−アルミナ系充填剤は、粒子形状及び粒子径が一定しており、配合したフィルム成形品に良好なスリップ特性及びアンチブロッキング性を付与するものであるが、配合フィルム成形品の透明性や更には、フィルムを含む樹脂成形品全般において充填剤の樹脂への配合及び分散に関しては、未だ解決すべき問題点を有している。
先ず、前述した立方体乃至球体の充填剤は、樹脂マトリックスへの分散性は比較的良好ではあるが、充填剤粒子表面と樹脂マトリックスとの接着性が比較的低いことから、例えばフィルムの延伸に際して両者の界面でボイドを発生し易く、これがフィルムの透明性を損なう原因と考えられる。また、上記充填剤は、多くのケイ酸塩化合物と同様に研摩剤、琢摩剤としての特性を有している。かくして、この配合剤と樹脂類とをヘンシエルミキサー等で乾式混合し、或いはニーダー、ロール、或いは押出機等で溶融混練する際、混合装置や混練装置の器壁や、撹拌翼やスクリュー等の部材を摩耗する傾向が認められる。
前述した充填剤は、通常の充填剤が微細な一次粒子が凝集して機械的に破壊の容易な二次粒子を形成しているのとは全く異なり、一次粒子そのものが最終粒子(二次粒子)であり、しかもその形状も立方体のような明確なものであるために、混合乃至混練装置における摩耗傾向が顕著に表われるものと思われる。
更に、一般に樹脂中における無機充填剤の分散状態と成形品の物性との関係では、充填剤の分散状態が均一且つ一様である程、伸びや耐衝撃性等の機械的性質が良好となり、またスリップ性、アンチブロッキング性等の特性も良好となることが知られており、かかる見地から用いる充填剤は樹脂中に比較的短時間の内に均一且つ一様に分散するものであることが望ましい。
したがって、本発明の目的は、従来のシリカ、シリカ−アルミナ、或いはアルミノケイ酸塩からなる充填剤における上記欠点を解消し、樹脂との混合乃至混練時における摩耗傾向を防止し、樹脂成形品に所望の特性を賦与させるため樹脂中への均一、かつ一様に分散する特性を有し、しかもフィルム成形においては最終フィルムに優れた透明性及び良好なアンチブロッキング性を付与しうる樹脂用充填剤組成物を提供することにある。
本発明の他の目的は、非晶質シリカ、非晶質シリカ−アルミナ或いはアルミノケイ酸塩から成る充填剤が著しく少ない量を有機結合媒質を介して造粒されていながら、樹脂中への分散性、組成の均一性、耐粉塵飛散性及び流動性に優れ、しかも配合樹脂フィルムの透明性やアンチブロッキング性にも優れている樹脂用充填剤組成物及びその製法を提供することにある。
(問題点を解決するための手段)
本発明によれば、明確な立方体乃至球体の一次粒子形状と、5ミクロン以下の電子顕微鏡法一次粒子直径と非晶質シリカ、非晶質シリカ−アルミナ又はアルミノケイ酸塩から成る充填剤と、配合すべき樹脂の成形温度よりも低い温度で溶融する常温で固体の有機結合媒質の充填剤当り5乃至50重量%の量とを摩砕条件下に混合して、前記充填剤の個々の一次粒子を有機結合媒質で表面処理する工程と、この表面処理粒子を、有機結合媒質の融点以上の温度で合体させて、平均粒径0.05乃至3.0mmの粒径に造粒させる工程とから成ることを特徴とする樹脂用充填剤組成物の製法が提供される。
明確な立方体乃至球体の一次粒子形状と、5ミクロン以下の電子顕微鏡法一次粒子直径と、非晶質シリカ、非晶質シリカ−アルミナ又はアルミノケイ酸塩から成る充填剤と、配合すべき樹脂の成形温度よりも低い温度で溶融する常温で固体の有機結合媒質の充填剤当り5乃至50重量%の量とからなる組成を有し、充填剤の個々の一次粒子は有機結合媒質で表面処理されており、該一次粒子は有機結合媒質の表面処理層同士の融着により、平均粒径が0.05乃至3.0mmで且つ内部に多数の微細空隙を含んだ粒子に造粒されていることを特徴とする樹脂用充填剤組成物が提供される。
(作用)
本発明の樹脂用充填剤組成物を一部断面で拡大して示す第1図において、この組成物は、粒径0.05乃至3.0mmの粒子1(この具体例では不定形粒子)として存在するが、その内部には多数の微細空隙2を含有しており、充填剤の個々の一次粒子3が少量の有機結合媒質4で表面処理されており、この表面処理層4同士の融着により多孔質の二次粒子構造を形成している。
この充填剤3は、明確な立方体乃至球体の一次粒子形状と、5ミクロン以下の電子顕微鏡法一次粒子直径と非晶質シリカ、非晶質シリカ−アルミナ又はアルミノケイ酸塩から成っているが、この充填剤粒子は一次粒子の形で存在すると共に、その周囲には、有機結合媒質の表面処理相が存在することが顕著な特徴である。
有機結合媒質の表面処理相は、配合すべき樹脂の成形温度よりも低い温度で溶融する特性を有することから、フィルム形成用樹脂と混練した際、該樹脂中に充填剤を一次粒子の形で分散させる作用を示す。
しかも、充填剤粒子の周囲は、有機結合媒質の連続処理層が存在するため、例えばフィルム成形においてフィルム形成用樹脂とのなじみや接着性が良好であり、フィルム延伸の際にボイドの原因となる接着不良や微小空隙部の発生が抑制される。
第2図は、本発明の充填剤組成物を配合した延伸フィルム7の概念的断面図であって、充填剤粒子3は、有機結合媒質2で被覆された状態で樹脂5中に分散しており、この充填剤粒子3がフィルム表面近傍に分布することによって形成される突部6がフィルムにスリップ性とアンチブロッキング性を与える作用点となる。
本発明の充填剤組成物は、粒径の比較的大きい球状粒子であることから流動性に優れていると共に粉塵飛散がなく取扱いが容易であり、また、その粒径も例えばフィルム成形においては配合すべきフィルム成形用樹脂の粒径はほぼ匹敵する粒径としうるため、両者の混合が容易であり、更に、混練に際し、樹脂へのくい込みも良好であるという利点がある。
本発明はまた、前述した無機充填剤と有機結合媒質とを摩砕条件下に混合すると、結合媒質の量が充填剤当り5乃至50重量%、特に10乃至25重量%のように、著しく少ない量である場合にも、充填剤の個々の一次粒子が有機結合媒質で有効に表面処理されるという知見に基づくものである。
本発明における表面処理とは、いわゆる金属の表面処理とは異なり、粒子の表面処理を意味するものであり、この表面処理の結果として個々の一次粒子の表面には結合媒質の微細な結合乃至は付着を生じているが、表面処理物全体としては、未だ粒状物とは異なった状態のものである。
本発明方法において、充填剤の個々の一次粒子に結合媒質による表面処理を施すと、この粉末の状態においてすでに界面特性や種々の粉末特性の点で改善が行われる。
例えば、非晶質シリカ、非晶質シリカ−アルミナ又はアルミノケイ酸塩からなる充填剤の多くのものは親水性であるのに対して、この充填剤とワックス類とを摩砕条件下に混合すると、表面処理を行うとこのものは性質において撥水性となり、界面特性が大きく変化する。
また、この表面処理粉末は、未処理の粉末に比して安息角が顕著に低下し、流動性が向上している。
この表面処理粉末を造粒し、表面処理層同士を融着させることにより、所定の粒度の粒状体をうることができる。この粒状物においては、結合媒質の量が至って少ないため、最終フィルムにおけるブリードアウト現象が解消され、またフィルムの透明性を損う傾向も至って少ない。
(発明の好適態様)
充填剤 充填剤としては、非晶質シリカ、非晶質シリカ−アルミナ、又はアルミノケイ酸塩のうち、前述した制限を満足したものは全て使用しうる。
アルミノケイ酸塩としては、明確な立方体乃至球体の一次粒子形状を示す各種ゼオライト、例えば、A型ゼオライト、X型ゼオライト、Y型ゼオライト、P型ゼオライト、ソーダライト、アナルサイム等を挙げることができる。
これらのゼオライトは、ナトリウム型、カリウム型、カルシウム型、マグネシウム型、亜鉛型或いはこれらの組合せであってよい。
A−、X−及びY型ゼオライトは立方体ゼオライトの代表であり、P型ゼオライト及びソーダライトは球状ゼオライトの代表例であり、アナルサイムは、それらの中間に位置する多面体(24面体)の例である。
これらのNa型ゼオライトの代表的化学組成を下記に示す。
A型Al2O3 25乃至45%SiO2 30乃至55%Na2O 15乃至25%H2O 25%以下X型Al2O3 20乃至40%SiO2 35乃至60%Na2O 10乃至25%H2O 25%以下Y型Al2O3 15乃至30%SiO2 40乃至65%Na2O 8乃至20%H2O 25%以下P型Al2O3 15乃至35%SiO2 35乃至70%Na2O 8乃至20%H2O 25%以下ソーダライトAl2O3 25乃至50%SiO2 30乃至55%Na2O 15乃至25%H2O 25%以下アナルサイムAl2O3 15乃至30%SiO2 50乃至75%Na2O 5乃至20%H2O 25%以下 上記ゼオライト中のNa2Oは、前述した他の金属成分によって、10乃至100モル%、好ましくは30乃至80モル%の範囲で交換されていることができる。
用いるゼオライトは、そのタイプにより特有のX線回折像を示すが、X型、Y型及びP型ゼオライトは、焼成により非晶質化することが知られており、このような非晶質のアルミノケイ酸塩を本発明の目的に用いることもできる。
非晶質のシリカ−アルミナとしては、前記ゼオライト等を酸処理して、ゼオライトが非晶質化するのに十分な程度のナトリウム分、或いは更にアルミナ分を除去したものが使用され、一方、非晶質のシリカとしては、前記ゼオライトを徹底的に酸処理をして、ゼオライト中のナトリウム分、及びアルミナ分を除去したものが使用される。勿論、非晶質シリカ−アルミナ及び非晶質シリカはゼオライトに特有の粒子形状及び粒度特性を実質上そのまま保有するものでなければならない。
非晶質シリカ−アルミナ又は非晶質シリカの製造に際して用いる酸は、無機酸でも有機酸でも格別の制限なしに使用されるが、経済的には、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の酸が使用される。これらの酸は、希釈水溶液の形で結晶性ゼオライトとの中和反応に用いる。
結晶ゼオライトの水性スラリーに酸を添加すると、酸の添加につれてpHは当然酸性側に移行するが、添加終了後、液のpHは再びアルカリ側に移行し、一定のpH値に飽和する傾向がある。この飽和するpH、即ち安定時pHが7.0乃至3.0、特に6.5乃至4.0の範囲となるように中和を行うことにより非晶質シリカ−アルミナが得られる。得られる非晶質シリカ−アルミナを乾燥乃至焼成した後、更に酸処理を続行することにより非晶質シリカが得られる。使用する酸量は、ゼオライト中のアルカリ分の50%以上、特に70%以上を除去するに足るものでなければならない。
ナトリウム分及びアルミナ分の除去に伴なって粒子の収縮は当然生じるが、その粒径の収縮はせいぜい10乃至20%程度のものであり、粒子形状には殆んど変化がなく、また、粒度分布が比較的シャープであるという特性も失われることがない。
ゼオライトを非晶質シリカ−アルミナ、或いは非晶質シリカに転化する時には、ゼオライト中の塩基性成分が除去されるため、塩基性成分の存在による樹脂成形品の経時的着色が防止されるという利点がある。また、ゼオライトは、一般に沸石水と呼ばれる結晶水を含有しており、この結晶水が樹脂の加工乃至成形条件下に離脱して、所謂発泡の問題を生じるが、非晶質シリカ−アルミナ、及び非晶質シリカではこの様な問題も生じない。特に、焼成された非晶質シリカ−アルミナは吸湿傾向も著しく小さい。
本発明に用いる充填剤においては、この立方体乃至球体の一次粒子は、電子顕微鏡写真により測定した直径の長さが5ミクロン以下、特に1ミクロン以下となる一次粒度を有する。充填剤粒子の凝集を防止するという見地からは、この一次粒度は、0.1ミクロン以上であることが望ましい。
更に、本発明に使用する充填剤粒子は、前述した粒子形状及び粒度特性を有することに関連して、300m2/g、以下、特に100m2/g以下のBET比表面積を有する。即ち本発明のアルミナ−シリカ立方体乃至球体粒子は、比表面積が著しく小であり、樹脂との混練が容易であると共に、一般の樹脂成形は勿論のこと特にフィルム、シート等への成形に際して溶融粘度を高める傾向も少なく、成形作業性に優れている。
更にまた、本発明に用いる配合剤粒子は、立方体乃至球体でしかも比較的大きい一次粒径を有することにも関連して、嵩密度が0.4乃至1.0g/c.c.の比較的大きい範囲にあり、例えば公知のシリカ系アンチブロッキング剤は勿論のこと一般に充填剤として用いられる無機質粒子のそれに比して嵩密度が2倍以上であり、樹脂への配合が著しく容易である。
有機結合媒質 有機結合媒質としては、前述した制限を満足するワックス類や低融点樹脂類が使用される。
ワックス類としては、次のものを用いることができる。
(1) 脂肪酸及びその金属塩高級脂肪酸 動物または植物油脂から得られた脂肪酸およびそれらの脂肪酸を水素添加したもので、炭素数が8〜22のもの高級脂肪酸金属塩 上記脂肪酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、Zn塩、Al塩(2) アマイド、アミン高級脂肪酸アマイドオレイルパルミトアマイドステアリルエルカミド2ステアロミドエチルステアレートエチレンビス脂肪酸アマイドN,N′オレオイルステアリルエチレンジアミンN,N′ビス(2ヒドロキシエチル)アルキル(C12〜C18)アマイドN,N′ビス(ヒドロキシエチル)ラウロアマイドNアルキル(C10〜C18)トリメチレンジアミンと反応したオレイン酸脂肪酸ジエタノールアミンジ(ヒドロキシエチル)ジエチレントリアミンモノアセテートのシステアリン酸エステル(3) 一価、多価アルコールの脂肪酸エステルステアリン酸n−ブチル水添ロジンメチルエステルセバチン酸ジブチル<n−ブチル>セバチン酸ジオクチル<2エチルヘキシル、n−オクチル共>グリセリン脂肪酸エステルペンタエリスリトールテトラステアレートポリエチレングリコール脂肪酸エステルポリエチレングリコールジステアレートポリエチレングリコールジラウレートポリエチレングリコールジオレエートポリエチレングリコールヤシ脂肪酸ジエステルポリエチレングリコールトール油脂肪酸ジエステルエタンジオールモンタン酸ジエステル1・3ブタンジオールモンタン酸ジエステルジエチレングリコールステアリン酸ジエステルプロピレングリコール脂肪酸ジエステル(4) トリグリセライドワックス水添食用油脂12−ヒドロオキシステアリン酸のグリセリンエステルスパームアセチワックスモンタンワックスカルナバワックス蜜蝋木蝋一価脂肪酸アルコールと脂肪酸飽和酸エステル<例:硬化鯨油ラウリルステアレート、ステアリルステアレート>ラノリンポリエチレンワックスポリプロピレンワックス酸化ポリエチレンワックス酸変性ポリオレフィンワックスエポキシ変性ポリエチレンワックス石油系ワックス。
これらのワックス類のうちでも、ワックス類1グラム当り、カルボン酸、カルボン酸無水物、カルボン酸塩、カルボン酸エステル、カルボン酸アミド、ケトン、エーテル、水酸基等の極性基を0.1乃至20ミリモル、特に0.5乃至10ミリモルの濃度で含有し且つ炭素数10以上、特に炭素数12以上の少なくとも1個の長鎖アルキレン鎖を分子内に含むワックス類が好ましい。
低融点樹脂としては、融点或いは軟化点が40乃至200℃、特に70乃至160℃である各種樹脂、例えば、エポキシ樹脂、キシレン−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン系樹脂、クマロン−インデン樹脂、その他の石油樹脂、アルキッド樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、低融点アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、低融点コポリアミド、低融点コポリエステル等を挙げることができる。
これらのワックス類及び低融点樹脂は、単独或いは2種以上の組合せで使用できる。
組成物の製造 本発明の充填剤組成物を製造するには、充填剤と、充填剤当り5乃至50重量%、特に10乃至25重量%の有機結合媒質とを摩砕条件下に混合する。
上述した充填剤粉末と結着媒質との摩砕条件下での混合は種々の方式で行うことができる。例えば、湿式摩砕混合では、充填剤粉末と結合媒質とを溶剤の存在下に摩砕下に混合し、また乾式摩砕混合では、充填剤粉末と結合媒質の粉末とを、溶媒等の不存在下に乾式で摩砕下に混合する。
これら何らの場合にも、充填剤粉末が一次粒子に解されるように摩砕することが重要であり、この目的には、擂潰機、サンドグラインダーミル、アトライター、高速剪断撹拌機、東京アトマイザー、奈良式粉砕機、円板振動ミル、振動ボールミル、回転ボールミル、スーパーミキサー等或いはこれらの組合せが使用される。これらの摩砕混合機においては、充填剤粉末が一次粒子に解されると同時に、結合媒質による表面処理が行われるようになる。
前者の湿式摩砕混合処理では、溶媒中に結合媒質を溶解乃至は分散させ、この液中に充填剤粉末を分散させてスラリーを形成し、このスラリーを前述した摩砕混合機に供給して、良く摩砕混合を行い、次いで混合乃至撹拌条件下に溶媒を留出させて表面処理粉末を得る。
溶媒としては、充填剤粒子の凝集を防止する点で非極性溶媒を用いるのがよく、結合媒質を部分的乃至は完全に溶解するものが好ましく、かかる見地から、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族溶媒、n−ヘキサン、n−ヘプタン、ブタン等の脂肪族溶媒、シクロヘキサン等の脂肪族溶媒等が使用されるが、本発明に使用可能な溶媒は、勿論これに限定されない。この場合、溶媒の使用量は、充填剤粉末100重量部当り15乃至150重量部の範囲とすることができる。
一方、後者の乾式摩砕混合処理では、計量した粉末充填剤と結合媒質の粉末とを、前記摩砕混合機に通し、結合媒質の融点よりも低い温度で摩砕混合を行った後、該混合機より取り出す。
摩砕混合の程度は、摩砕の強さによっても相違するので、一概に規定することが困難であるが、既に述べた如く、その界面的特性や、分散性や流動性或いは粒度特性を試験することで、その表面処理の程度を評価できるので、用いる混合機の種類に応じて、その処理時間を定めればよい。
なお、一般に摩砕混合が進行するにつれて(1)粒径分布が小径方向に偏よる、(2)平均粒径が小径側へ移行する、(3)撥水性が増大する、(4)安息角が小さくなる、(5)樹脂への分散性が著しく向上する、(6)X−線回折強度に殆んど変化が認められないという事実から摩砕混合の程度を知ることができる。
前述した湿式摩砕混合は、一次粒子への結着媒質の被覆が完全なものとなり易いという利点を有する反面、溶媒の使用によるコストの増大及び混合後に溶媒の除去を必要とするという問題があり、また溶媒の除去加熱時に一次粒子が凝結する傾向があるという問題もある。乾式摩砕混合は、被覆の形成がやや不完全なものとなる傾向があるが、処理の簡便さという面では利点も多い。
本発明においては、このように表面処理された粉末を有機固体結合媒質の融点以上の温度で平均粒径0.05乃至3.0mm、特に0.1乃至1.0mmとなるように造粒する。
この造粒には、それ自体公知の種々の造粒手段を用い得るが、表面処理粉末にはかなり少量の結着媒質しか含まれていないことから、転動造粒法が特に有利に使用される。転動造粒には、通常の転動造粒機が使用され他に、ヘンシエルミキサーやスーパーミキサーの如きミキサー型造粒機が使用される。前者の装置では機壁が移動し、後者の装置では粉末が移動するが、粉末と機壁との相対的移動により造粒が行われるという点では軌を一にしている。
この造粒を、結着媒質の融点以上の温度で行うことも極めて重要であり、この温度が融点よりも低いときには、造粒は全く行われないか、或いは行われるとしても粒状物への歩留りが著しく低いものとなり易い。
本発明における造粒においては、生成する粒状物と未粒状化の粉末との間に全く組成上の差異がないため、粒状化工程で生成する所定粒度の粒状物を篩分けにより回収し、一方未粒状化の粉末はこれを造粒機中に循環して、最終的には全ての原料を粒状物として回収し得るという顕著な利点がある。
本発明に用いる有機係合媒質は、充填剤粒子と成形用樹脂との界面での両者の接着性を高め且つ充填剤粒子の樹脂中への分散性を高める作用を行うと共に、その内或る種のものは成形用樹脂に対する安定剤、滑剤等としての作用を兼ねるものがある。例えばワックス類の多くのものは滑剤としての作用を有し、また脂肪酸塩は安定剤としての作用を有するものがある。勿論、本発明の組成物には、それ自体公知の樹脂配合剤、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、他の安定剤、帯電防止剤、着色剤、他の充填剤等の1種又は2種以上を配合して、ワンパッケージ配合剤としての用途に供することもできる。
用 途 本発明の充填剤組成物は、種々の樹脂、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、結晶性プロピレン−エチレン共重合体、イオン架橋オレフィン共重合体等のオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の熱可塑性ポリエステル;6−ナイロン、6,6−ナイロン、6,8−ナイロン等のポリアミド:塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂等の塩素含有樹脂類;ポリカーボネート;ポリスルホン類;ポリアセタール等の熱可塑性樹脂に配合して、形成されるフィルム等の樹脂成形品に、スリップ性乃至はアンチブロッキング性を与えるために使用できる。勿論、重合後の樹脂に配合する代りに、重合前の単量体中に予じめ配合して、重合後の樹脂中に配合剤が含有されるようにしてもよい。
このような用途に対して、本発明の充填剤組成物は、樹脂100重量部当り0.001乃至10重量部、特に0.01乃至3重量部の量で用いられる。
(発明の効果)
本発明によれば、樹脂との混合乃至混練時における摩耗傾向を防止し、樹脂中への均一、かつ、一様に分散する特性を有することから成形樹脂の物性を著しく向上させ、しかもフィルタ成形においては最終フィルムにボイドを発生することなく、優れた透明性を付与しうるアンチブロッキング用充填剤組成物が得られる。
実施例1 ゼオライトの酸処理物である非晶質ケイ酸アルミニウム粒子(水澤化学工業(株)製シルトンAMT−25:平均粒径2.5P)2.5kgとポリエチレンワックス(三井石油化学工業(株)製ハイワックス110P)2.5kgとを水冷下にスーパーミキサーにて500rpmの回転速度で3分間混合した後、アトマイザー粉砕機にて摩砕混合を行ない、次いで150℃の温度でスーパーミキサーによる転動造粒を行ない、シルトンAMT−25の個個の一次粒子が有機結合媒質であるポリエチレンワックスで表面処理された粒子が添付第1図の如く合体された平均粒径2m/mの造粒物を回収した。
実施例2〜7 実施例1で用いたシルトンAMT−25と第1表に示した各種の有機結合媒質を用いて実施例1と同様にして平均粒径1.0〜2.5m/mの造粒物を回収した。
なお使用した有機結合媒質の以下の通りである。
(1) ポリエチレンワックスハイワックス110P(三井石油化学製)
(2) ポリプロピレンワックスビスコール550P(三洋化成)
(3) ステアリン酸カルシウム SC(日本油脂)
(4) エチレンビスステアリン酸アミド EB−F(KAO−WAX)
(5) ポリエチレングリコール PEG4000(日本油脂)
実施例8〜14 シルトンAMT−25と、微粉末シリカ(水澤化学製ミズカシルP−526:平均粒径1.5μ)、炭酸カルシウム(エスカロン1500)、カオリン(NUCLAY)と第2表に示した各種の有機結合媒質を用いて実施例1と同様にして造粒物を回収した。
実施例15〜22 4A型ゼオライト粉末(水澤化学製シルトンM:平均粒径2.5μ)、5A型ゼオライト粉末(水澤化学製シルトンEP:平均粒径3μ)、X型ゼオライト粉末(水澤化学製シルトンCP:平均粒径3μ)、P型ゼオライト粉末(水澤化学製シルトンPC:平均粒径3.5μ)と第3表に表示した各種の有機結合媒質を用いて実施例1と同様にして造粒物を回収した。
実施例23〜27 4A型ゼオライト焼成粉末、(水澤化学製シルトンPT:平均粒径2.3μ、強熱減量(1000℃)2.8%)、5A型ゼオライト焼成粉末(水澤化学製シルトンEPT:平均粒径2.8μ、強熱減量(1000℃)3.1%)、X型ゼオライト焼成粉末(水澤化学製シルトンCPT:平均粒径2.7μ、強熱減量2.6%)と第4表に表示した各種の有機結合媒質を用いて実施例1と同様して造粒物を回収した。
実施例28〜33 ゼオライトを酸処理して得られた立方体状シリカ粒子(水澤化学製AMT−シリカ300A:平均粒径3.0μ)、同じく酸処理して得られた球状シリカ粒子(水澤化学製AMT−シリカ300B:平均粒径3.0μ)及びそれらを500℃で焼成したものと第5表に示した有機結合媒質とを用いて実施例1と同様にして造粒物を回収した。
粉塵飛散率 試料粉体100gを300mlのビーカーに採り、マグネチックスターラー装置の上に置き、ガラス製の長さ40mm、径7mmの棒状の翼を用い、1分間60回転でビーカー中の試料を撹拌し、そのビーカー上15mmの高さの所に学研製粉塵測定装置をセットし、30■/分の風量で5分間吸引することにより、試料撹拌によって発生した粉塵を測定装置に吸引させ、測定装置内の■紙に付着した粉塵をその■紙の重量増から求め、その測定値を用いた試料に換算して、パーセント(%)で示し、粉塵飛散率とした。
細孔容積 下記式にもとずき、本願発明による造粒物の細孔容積(cm3/g,気孔容積)を測定し、造粒物の多孔性を評価した。


PV:細孔容積(cm3/g)
β:空隙率(−)
BD:充填密度(g/cm3
d0:真比重(g/cm3
以上の結果、第1表〜第5表から明らかなように本願発明による造粒物は少ない量の有機結合媒質にもかかわらず、添付第1図に模写した如く、被覆粒子の表面処理層同士の融着により、内部に多数の微細空隙を有することによる高い気孔率を示すと共に安息各及び粉塵飛散率も著しく低い造粒物であることがよく理解される。










応用例1 メルトフローレート1.5g/10分及び密度が0.920g/mlの低密度ポリエチレン4kgに実施例6,15,16,18,31で調製した造粒物及び比較例として合成シリカ(サイロイド244)、珪素土(平均粒径3.1μ)シルトンAMT−25、シルトンEPをそれぞれ固形物換算で0.3%添加したものについてスーパーミキサーで混合し、それぞれ押出機で160℃の温度で溶融混練しチップ化した。
次いでこれらのチップを押出機に供給し溶融部160℃、ダイ170℃の条件下で厚さ30μのフィルムにインフレーション製膜した。
得られたフィルムについて霞度(ヘイズ)、ブロッキング性、外観(表面の状態)、発泡性について調べ、その結果について第6表に示した。
ここで霞度(ヘイズ)は東京電色製デジタルヘーズメーターTC−HDPに依り測定した。ブロッキング性はフィルム2枚を重ね20kgの荷重をかけ40℃のオーブンで24時間放置後、2枚をはがした時、以下の4段階で評価した。
抵抗なくながれるもの 1少し抵抗があるもの 2かなり抵抗があるもの 3非常にはがれにくいもの 4 更らにフィルムの外観については以下の様に目視評価をした。
均一で無添加に近いもの ○少しブツがあるもの △表面がかなり粗なもの × 又発泡性については同様に目視で有無を評価した。
応用例2 〔η〕=1.1ポリテトラメチレンテレフタレート80重量部と実施例2,18,23,31で調製した球状の充填剤組成物(以下組成物Aという)及び比較例としてタルク、炭カル、シルトンAMT−25のそれぞれを5〜30重量部とを50mmφエクストルーダーにてシリンダー温度250℃で熔融混合し、チップ化した。次いでこのチップを射出成型機で成型し、その衝撃強度としてシャルピー衝撃値を測定し第7表に表示した。
応用例3 塩化ビニール樹脂(スミリットSX−11)100重量部、DOP60重量部、カーボン0.05重量部、下記に示す安定剤組成物5重量部及び実施例1,6,18,23,28,31で調製した造粒物及び比較例としてシルトンAMT−25、タルク、炭カルの5〜10重量部を用いて、それぞれ3.5 inchロールで、160〜165℃混練し厚さ0.35〜0.4mm、巾12cmのシートに成形し、下記に示す評価法で本願発明による造粒物の分散性を調べ、その結果を第8表に示した。
上記方法で調製した成形シートの中央部10cm×25cmのシート区間の100μm〜250μm粒子を肉眼した時を分散度B、上記成形シート中央部5cm×6cm区間を顕微鏡観察した時の分散度Aとして下記の方法に従った。
即ち分散度Bにおいては成形シート表面250cm2中の100〜250μm径の白色点を計数して、その白点のケ数を表示した〔ケ/250cm2〕。また分散度Aにおいては25〜100μm径の白色点を60倍率の顕微鏡(日本工学工業(株)EFM型)下シート区間30cm2中を計数し、それぞれ25〜50μm及び50〜100μmの白点ケ数を計数面積で除してその値とした〔ケ/cm2〕。
上記成形シート上の分散不良状態の特徴は分散度A≫同Bの場合及び分散度A≪同Bに大別されるので、A、B両値で分散不良状態が表現され、両値がともにゼロに近い時分散度良好と判断した。
安定剤組成物スタビネックスTc(水澤化学工業(株)製) 100 重量部ルバツクス2191(日本精蝋(株)製) 1.68 〃 スタビネックスN18(水澤化学工業(株)製) 3.04 〃





【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の充填剤組成物の断面構造を示す。
第2図は本発明の充填剤組成物を配合した延伸フィルムの概念的断面図を示す。
第3図は、本発明の球状充填剤組成物の粒子構造を示す電子写真顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】明確な立方体乃至球体の一次粒子形状と、5ミクロン以下の電子顕微鏡法一次粒子直径と、非晶質シリカ、非晶質シリカ−アルミナ又はアルミノケイ酸塩から成る充填剤と、配合すべき樹脂の成形温度よりも低い温度で溶融する常温で固体の有機結合媒質の充填剤当り5乃至50重量%の量とを摩砕条件下に混合して、前記充填剤の個々の一次粒子を有機結合媒質で表面処理する工程と、この表面処理粒子を、有機結合媒質の融点以上の温度で合体させて、平均粒径0.05乃至3.0mmの粒子に造粒させる工程とから成ることを特徴とする樹脂用充填剤組成物の製法。
【請求項2】明確な立方体乃至球体の一次粒子形状と、5ミクロン以下の電子顕微鏡法一次粒子直径と非晶質シリカ、非晶質シリカ−アルミナ又はアルミノケイ酸塩から成る充填剤と、配合すべき樹脂の成形温度よりも低い温度で溶融する常温で固体の有機結合媒質の充填剤当り5乃至50重量%の量とからなる組成を有し、充填剤の個々の一次粒子は有機結合媒質で表面処理されており、該一次粒子は有機結合媒質の表面処理層同士の融着により、平均粒径が0.05乃至3.0mmで且つ内部に多数の微細空隙を含んだ粒子に造粒されていることを特徴とする樹脂用充填剤組成物。

【第1図】
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【第2図】
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【第3図】
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【特許番号】第2540554号
【登録日】平成8年(1996)7月25日
【発行日】平成8年(1996)10月2日
【国際特許分類】
【出願番号】特願昭62−190280
【出願日】昭和62年(1987)7月31日
【公開番号】特開平1−36632
【公開日】平成1年(1989)2月7日
【出願人】(999999999)水澤化学工業株式会社
【参考文献】
【文献】特開昭61−258829(JP,A)
【文献】特開昭62−20537(JP,A)