説明

樹脂組成物

【課題】本発明は、機械的強度に優れる樹脂組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】エチレン由来の重合単位と、ビニルエステル、不飽和カルボン酸、及びそれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種の共重合化合物由来の重合単位とを含むエチレン系共重合体であって、エチレン系共重合体に対する共重合化合物由来の重合単位の割合が5〜50重量%であるエチレン系共重合体に、平均粒子径が3μm以上20μm以下であるセルロース系高分子が、エチレン系共重合体100重量部に対して10〜400重量部の割合で分散されている樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物に関するものであり、特に、セルロース系高分子が分散されたエチレン系共重合体からなる樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレン系共重合体樹脂は、適度な柔軟性と、優れた機械的特性及び成形性により、各種容器、包装材料に広く使用されている。
【0003】
エチレン系共重合体樹脂の機械的特性を向上させる為、様々な充填剤や添加剤の配合が検討され、利用されているが、環境負荷、リサイクル性などの観点から、共重合体樹脂使用量の低減化、充填剤や添加剤の環境対応が望まれている。
【0004】
一方、セルロースは、強度に優れると共に、地上に存在するバイオマスの約5割を占めるほぼ無尽蔵に存在する資源であり、その生産と廃棄過程に環境破壊を伴わずに持続的発展を実現する材料である事からも、エチレン系共重合体樹脂の機械的特性を向上させる充填剤としての利用が検討されている。
【0005】
例えば、特開昭61−225234号、及び特公平7−72237号では、繊維化されたセルロースを主体とする植物繊維を配合してなるポリオレフィン系樹脂組成物が提案されている。
しかしながら、上記組成物で用いられた繊維化されたセルロースを主成分とした植物繊維は、古紙、紙屑などを解繊して繊維化したものであり、その平均粒子径が大きいために、機械的特性を向上させるには不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭61−225234号公報
【特許文献2】特公平7−72237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記に鑑み、機械的特性に優れる樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、エチレン系共重合体に平均粒子径が3μm以上20μm以下である、微細なセルロース系高分子を凝集すること無く分散させると、機械的特性が飛躍的に向上する事を発見し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
[1] エチレン由来の重合単位と、ビニルエステル、不飽和カルボン酸、及びそれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種の共重合化合物由来の重合単位とを含むエチレン系共重合体であって、エチレン系共重合体に対する共重合化合物由来の重合単位の割合が5〜50重量%であるエチレン系共重合体に、平均粒子径が3μm以上20μm以下であるセルロース系高分子が、エチレン系共重合体100重量部に対して10〜400重量部の割合で分散されている樹脂組成物、
[2] エチレン系共重合体がエチレン−酢酸ビニル共重合体である、上記[1]に記載の樹脂組成物、
である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、加重時の変形により中身が損なわれる恐れのある各種容器、及び加重時の伸び変形が生じない高い剛性が求められる包装材に好適に用いられる樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の樹脂組成物は、エチレンと、5〜50重量%の、ビニルエステル、不飽和カルボン及びそれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種とを共重合して得られるエチレン系共重合体に、平均粒子径が3μm以上20μm以下のセルロース系高分子が、エチレン系共重合体100重量部に対して10〜400重量部の割合で分散されている樹脂組成物である。
本発明のエチレン系共重合体は、エチレンと、ビニルエステル、不飽和カルボン酸又はそれらの誘導体から選ばれる少なくとも1種とを共重合した共重合体である。ここで、ビニルエステル、不飽和カルボン酸及びそれらの誘導体のことを共重合化合物と称することにする。エチレン系共重合体の例としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体(以下、EVAと記す。)、エチレン−アクリル酸共重合体(以下、EAAと記す。)、エチレン−メタクリル酸共重合体(以下、EMAAと記す。)、エチレン−アクリル酸メチル共重合体(以下、EMAと記す。)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(以下、EEAと記す。)、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体(以下、EMMAと記す。)が挙げられる。この中でもEVAがセルロースの分散性と発現する物性の観点から、好ましい。共重合化合物であるビニルエステル、不飽和カルボン酸及びそれらの誘導体由来の重合単位が、エチレン系共重合体に含まれる割合(含有率)は5〜50重量%が好ましく、10〜35重量%であるとより好ましい。5重量%以上であればセルロースの分散が良好になり、50重量%以下であれば樹脂が過度に柔軟にならず、材料として好ましい。
【0012】
また、本発明で使用されるエチレン系共重合体のメルトマスフローレイト(MFR、JIS−K−7210:1999、190℃、荷重2.16kg)は、0.1〜100g/10minが好ましく、より好ましくは1.0〜100g/10minである。0.1g/10min以上では、セルロースの混合分散がしやすくなると共に、良好な流動性により成形加工がしやすくなる。100g/10min以下では、分子量が小さくなりすぎず、良好な機械的特性が得られる。
【0013】
エチレン系共重合体の重合方法は、高圧法、中低圧法等の公知の方法により行なうことができる。また、エチレン系共重合体の一次構造はランダム、ブロックなど、いずれの構造の共重合体も使用することができる。
【0014】
本発明のセルロース系高分子は、ホモポリマー、その誘導体又はそれらの混合物からなり、具体的には、木材パルプおよび/または非木材パルプおよび/またはバクテリアおよび/または藻類および/またはホヤ由来のセルロースからなる。セルロース系高分子は通常、硫酸や塩酸などの酸を用いた酸加水分解による化学的方法、もしくは高圧ホモジナイザー、リファイナー、グラインダー、ボールミル、ロッドミル、石臼などの機械的エネルギーを与えて、セルロースの解繊や微細化を行う物理的方法によって得られるが、これらに限定されるものではない。また、化学的、物理的方法による処理を施した市販のセルロース系高分子を利用することもできる。上記の処理によって、セルロース系高分子は最終的に平均粒子径が通常3μm以上20μm以下に調整される。平均粒子径が20μm以下であれば、得られる樹脂組成物の機械的強伸度が改良され、3μm以上では粉砕に多くのエネルギーが必要になることはなく、また再凝集が起こりにくいため実用的である。
【0015】
本発明の樹脂組成物は、エチレン系共重合体に対し、セルロース系高分子を分散させた組成物である。エチレン系共重合体とセルロース系高分子の割合は、エチレン系共重合体100重量部に対し、通常10重量部〜400重量部であり、好ましくは30重量部〜300重量部である。10重量部以上では機械的強度が改良され、400重量部以下では、良好な分散状態を得ることができ、好ましい。
【0016】
本発明は、エチレン系共重合体に平均粒子径が通常3μm以上20μm以下、好ましくは5〜15μmのセルロース系高分子を凝集すること無く分散させる。分散方法は、EVA等のエチレン系共重合体をミキサー、二軸押出機等を用いて溶融混練しながらセルロース系高分子を添加する方法や、エチレン系共重合体を溶解した溶液を撹拌しながらセルロース系高分子を加える方法等が適用できるが、分散性を向上させる為に、セルロース系高分子をトルエンなどの有機溶剤と接触させ、ボールミルで破砕する等の力学的処理を施した後で、エチレン系共重合体と混合することが望ましい。
【0017】
また、本発明の樹脂組成物には必要に応じて酸化防止剤、耐光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、難燃剤、防曇剤、顔料、染料、オイル、ワックス、分散剤、発泡剤等を本発明の目的を損なわない範囲で適時配合することができる。
【実施例】
【0018】
本発明について、以下実施例を用いて具体的に説明する。尚、物性測定方法、評価方法は以下の通りである。
(1)平均粒子径測定
(株)島津製作所製、レーザー回折式粒度分布測定装置:SALD2000Jを用いて、セルロース微粒子を水に分散させた状態で測定し、積算値50%の粒度を平均粒子径とした。
(2)セルロース分散状態
日立製作所(株)製、走査型電子顕微鏡:S−4800を用いてセルロースの分散状態を観察した。
(3)弾性率、破断強度、破断伸び
島津製作所製、引張・圧縮材料試験機:EZ Test SM−500N−168を用いて、引張試験を実施した時の応力−歪み曲線から算出した。
【0019】
[実施例1〜4]
エチレン系共重合体として、酢酸ビニル含有量15重量%、MFR=3のエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA−1)、酢酸ビニル含有量30重量%、MFR=30エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA−2)、及びセルロース系高分子として、平均粒子径5.9μmのWhatman社製のCF11(Cell−1)を用いて、表1に示す配合で調製した樹脂組成物によりフィルムを作製し、物性を評価した。樹脂組成物の調製は、トルエンを含浸させた状態でボールミルにより微細化したセルロース系高分子を、トルエンにEVAを100℃で溶解した溶液に加え、攪拌し、セルロース/EVA混合溶液を得た後、得られた混合溶液を常温まで冷却した。その後、アセトンを加えて析出した沈殿物をろ過分離し、真空乾燥して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を(株)東洋精機製作所製ラボプラストミルμを用いて160℃で溶融混練した後、(株)東洋精機製作所製ミニテストプレスMP−2Fを用いてフィルムを作製し、弾性率を測定した。評価結果を表1に併せて示す。
【0020】
[比較例1]
エチレン系共重合体として、酢酸ビニル含有量3重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA−3)を用いた以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を作製し、物性を評価した。配合と評価結果を表2に併せて示す。
【0021】
[比較例2]
セルロース系高分子として、新聞紙をミキサーで解繊した植物繊維(平均粒子径52μm、Cell−2)を用いた以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を作製し、物性を評価した。配合と評価結果を表2に併せて示す。
【表1】


【表2】

【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明の樹脂組成物は、各種容器、包装材料、例えば、射出成形容器、ブロー成形容器、インフレフィルムからなる包装材料、キャストフィルムからなる包装材料に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン由来の重合単位と、ビニルエステル、不飽和カルボン酸、及びそれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種の共重合化合物由来の重合単位とを含むエチレン系共重合体であって、エチレン系共重合体に対する共重合化合物由来の重合単位の割合が5〜50重量%であるエチレン系共重合体に、平均粒子径が3μm以上20μm以下であるセルロース系高分子が、エチレン系共重合体100重量部に対して10〜400重量部の割合で分散されている樹脂組成物。
【請求項2】
エチレン系共重合体がエチレン−酢酸ビニル共重合体である、請求項1に記載の樹脂組成物。

【公開番号】特開2012−180491(P2012−180491A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−46105(P2011−46105)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】