説明

樹脂結合吸着剤

【課題】機械的特性を相殺することなく、高水準の水分吸着性を備えた、改良された多機能性樹脂系組成物を提供する。
【解決手段】ポリアミド、ポリオレフィン、スチレン系ポリマー、ポリエステルなどの熱可塑性樹脂に、モレキューラーシーブ、シリカゲル、活性炭、活性アルミナ及び粘土からなる群から選択される吸着剤を25〜55重量%添加、混合する。これらの吸着剤は樹脂強化材として一般的なガラス繊維、ガラスビーズよりも少量の添加で良好な機械的特性を与え、樹脂組成物自体が水分吸着性を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に成形組成物、さらに詳しく言えば、樹脂ベース中に水分を吸着する添加
剤を含む改良された射出成形組成物、及びそれから製造される製品に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂基剤中への吸着剤又は乾燥剤の混和が、さまざまな状況において明らかにされてい
る。これらの樹脂のさまざまな方法による構造的又は機能的形状への形成が、一部の出願
に記載されている。同様に、構造的成形樹脂に増量剤が添加されている。成形品の目的と
する最終用途のために十分な強度を維持しながら、樹脂を増量し、コストを削減する目的
で、コストの安いミネラル又は他の増量剤が樹脂含有組成物に添加されている。例えば硬
さ、引張変位などの成形樹脂の機械的特性を強化するために、ガラス繊維又はビーズなど
の強化材を加えることも珍しいことではない。強化添加剤にも、増量剤と同様に申し分の
ない射出成形及び機械的特性を維持しながら所望の樹脂増量効果又は成形品強化効果が実
現される範囲があることがわかっている。
【0003】
それでもやはり、多くの最終用途のためには強化添加剤を含む成形組成物は完全に満足
のいくものではなかった。例えば、ガラス繊維及びガラスビーズなどの強化添加剤の添加
レベルの比較的高い成形組成物は、最適な水分吸着性能のためにかかる成形組成物に導入
される可能性のある乾燥剤の負荷率を制限するという影響を及ぼす。しかしながら、強化
添加剤の添加量を見合うように減らし、乾燥剤の添加量を増加させることにより、硬さ、
引張強度及び他の機械的特性などの望ましい機械的特性が低下する可能性もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、組成物及び製品が樹脂の望ましい機械的特性を相殺することなく高い添加レベ
ルの乾燥剤を保持しているような、改良された樹脂系成形組成物、さらに詳しく言えば、
射出成形組成物及びそれから製造される製品が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
従って、本発明の主な目的は、機械的特性を実質的に相殺することなく高水準の水分吸
着性を備えた、改良された多機能性樹脂系成形組成物を提供することである。
【0006】
本発明は、成形品が使用される環境から水分を除去するために、樹脂及び少なくとも十
分な量の吸着剤を含む、「樹脂結合吸着剤」組成物を包含する。すなわち、本発明の主な
態様のひとつは、少なくとも水分を吸収する量の吸着剤と樹脂とを組み合わせて有する多
機能性成形組成物に関する。該吸着剤と樹脂との組み合わせは、樹脂結合吸着剤として該
組成物中に存在している。該成形組成物はさらに、樹脂系成形組成物から製造された製品
を強化するとして一般的に認められた有用性を有する添加剤の不在下での、強化された機
械的特性を特徴とする。
【0007】
本発明はさらに、水分を吸着し機械的特性を高める量の吸着剤を強化添加剤と樹脂と組
み合せて含み、機械的特性を強化するために通常必要とされるよりも少ない量の強化添加
剤を使用することができる、多機能性吸着剤-樹脂系成形組成物に関する。驚くべきこと
に発明者らは、吸着剤/乾燥剤の導入により成形樹脂の機械的特性を強化することができ
、それにより吸着剤により改良された射出成形樹脂の特に機械的特性の強化を意図したガ
ラス繊維及びガラスビースなどの追加の添加剤の導入量を減らせることを発見した。成形
組成物の強化剤添加量が多いほど、実際にはそれをもって製造された成形品の強度に悪影
響を及ぼし品質を低下させるために、このことは特に重要であると考えられている。従っ
て本発明のさらなる目的は、該吸着剤により付与された機械的特性が、特に樹脂系成形組
成物の強化を意図した機械的強度を高める添加剤の使用量の低減を可能にする、吸着剤含
有成形組成物を提供することである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
具体的には、本発明の多機能性成形組成物は、モレキュラーシーブなどの吸着剤を約25
〜約55重量%、通常ホモポリマータイプ又は2以上のコモノマーを有するコポリマーのい
ずれかの熱可塑性物質である樹脂を約45〜約75重量%含んでよい。ひとつの好ましい代表
的な樹脂群は、ポリアミド類である。好ましい量の吸着剤は、約35〜約42重量%の範囲で
あり、より好ましくは、約40重量%である。ひとつの代表的な好ましいモレキュラーシー
ブは、4Aモレキュラータイプであるが、天然及び人工ゼオライト両方から選択される他の
シーブを使用してもよい。
【0009】
本発明の目的のために、明細書及び特許請求の範囲の「樹脂結合吸着剤」という表現は
、該樹脂の結晶性の消失により該吸着剤と該樹脂との間に生じる表面親和性を意味するこ
とを意図しており、それにより表面張力が低下するために吸着剤が湿潤し、樹脂と混和可
能となる。「樹脂結合吸着剤」という表現は、例えば該吸着剤と該樹脂との加熱を介して
生じうる、又は以下に詳細に議論される好適な、品質の良いカップリング剤、界面活性剤
もしくは相溶化剤を介して結合しうる、樹脂と吸着剤の間の結合を包含することを意図す
る。
【0010】
本発明のさらなる主要な目的は、本明細書で開示される該樹脂結合吸着剤組成物から製
造された製品の成形品を提供することであり、さらに詳しく言えば、一般に例えばモレキ
ュラーシーブなどの吸着剤を約25〜約55重量%、及び例えばポリアミドなどの樹脂を約45
〜約75重量%含む成形組成物から作られた、冷凍サイクル及び空調装置構成部品などの成
形された構成部品を提供することである。大部分の可動式冷却装置の場合、性能問題のた
めに、多くの場合、本明細書で定義されたような該樹脂/吸着剤の組み合わせと、他の材
料とを混合しないことが好ましい。
【0011】
さらに本発明のもうひとつの態様は、例えば少なくとも約25〜約55重量%の天然及び人
工ゼオライト両方のモレキュラーシーブなどの吸着剤、並びに約45〜約75重量%の樹脂か
ら構成される組成物を形成し、次いで射出成形法などにより該組成物から構成部品を成形
する工程を包含する冷却システムを含む、従来の乾燥剤の袋を排除しうる自動車の空調シ
ステムのための構成部品などの改良された製品を作るための方法を含む。
【0012】
(発明の詳細な説明)
コストと生産性の理由から、吸着性は保たれ、機械的特性を損なうことなく樹脂の成形
特性は維持されるような方法で、吸着剤を特に射出成形に好適な樹脂中に混和することが
望ましい。驚くべきことに、本発明の新規成形組成物及びそれから製造された部品は、従
来の強化添加剤を必要とせず、構造的、機械的及び吸着能力を有利に組み合わせた多機能
性を有する。その結果として、強化添加剤を加えない本発明の新規成形組成物は、従来の
吸着剤含有成形組成物よりも吸着剤添加率を高くできることによる、より高い水分吸着能
力をさらなる特徴とする。
【0013】
思いがけなくも、本発明の一部として、該「樹脂結合吸着剤」成形組成物の吸着剤は、
ガラスビーズ、ガラス繊維といったものなどの従来の慣習的な補強添加剤を必要としない
が水分吸着能力を保持する一方で、本発明の成形組成物を強化するという有益な効果を有
することが発見された。このことは、該成形組成物の機械的特性を大幅に変えるという観
点から相殺を起こすことなしに、該成形組成物の吸着特性を最大化するために吸着剤添加
剤の添加率をより高くすることを可能にする。
【0014】
本発明は主として、吸着添加剤を含む成形樹脂の機械的特性が、具体的に言えば、ガラ
スビーズ及びガラス繊維などの強化添加剤の従来の必要性を排除できるという発見に関す
るものであるが、本発明はまた、水分吸着性-機械的特性を高める量の吸着剤を強化添加
剤及び樹脂と組み合わせて含み、機械的特性を強化するために通常必要とされるよりも少
ない量の強化添加剤を使用することができる、多機能性吸着剤-樹脂系成形組成物を意図
する。すなわち、本発明はまた、乾燥剤含有成形組成物ではあるが、ガラス繊維及びガラ
スビースなどの強度を高める添加剤の量が減量されている乾燥剤含有成形組成物を提供す
る。これは、該成形品の強度特性を損なう可能性なく、該成形組成物の機械的特性を高め
るであろう。さらに詳しく言えば、吸着剤、強化添加剤及び樹脂の比例範囲は、吸着剤が
約25〜約50重量%;強化添加剤が約5〜約15重量%、及び樹脂が約45〜約70重量%である。
【0015】
本発明の一部として、範囲内で、該樹脂は、最新の高速射出成形加工などのいくつかの
技術により、さまざまなシールド方式及びアセンブリのための部品を含む完全に機能的な
構成部品へと加工し、形成することができることもわかっている。これらの後願において
、例えば加水分解又は腐食といった水分による劣化から、システムもしくはアセンブリの
繊細な構成要素もしくは構成部品を保護するために、環境湿度及び進入した水分は吸着さ
れる一方で、発明概念の構造的及び機能的特性は提供されている。
【0016】
上記に従って、本発明は改良された機械的特性、申し分のない溶融物の取り扱い特性、
及び十分な水分吸着特性を備えた、射出成形に好適な、強化された構造用樹脂組成物を含
む。大部分の熱可塑性樹脂は、本発明の樹脂結合吸着剤組成物の使用のために好適であり
、ホモポリマー及び2以上のモノマーを含むコポリマーを包含する。代表的な例にはナイ
ロン6;ナイロン6,6;ナイロン610などのポリアミド類が含まれる。他の代表的な例には、2
〜3例を挙げると、高密度及び低密度ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィ
ン;エチレン-酢酸ビニルのコポリマー;ポリスチレン;例えばPETなどのポリエステルなど
が挙げられる。
【0017】
先述のように、本発明のひとつの態様によれば、本発明の組成物は、約25〜約55重量%
の吸着剤、及びそれに平衡する量の樹脂、さらに詳しく言えば、約25〜約45重量%の吸着
剤とそれに平衡する量の樹脂を含んでよい。さらに好ましい組成物は、約35〜約42重量%
のモレキュラーシーブなどの吸着剤及びそれに平衡する量の樹脂を含んでよい。最も好ま
しい樹脂結合吸着剤組成物は、W. R. Grace 4A モレキュラーシーブ粉末などのモレキュ
ラーシーブを40%配合された、E.I.duPont社から市販されているZytel(登録商標)101な
どの約60%のナイロン成形樹脂を含んでよい。本発明のモレキュラーシーブは、基準細孔
径が4Åであり、粒子径は約0.4〜約32μの範囲であり得る。しかしながら例えば3Å、5Å
、又は1OÅといった他の細孔径のモレキュラーシーブも同様に用いることができることに
注意すべきである。
【0018】
一般に、本発明において有用で機能的な吸着剤は、先述のように、特別な添加剤を用い
ずに機械的に樹脂に接着する、モレキュラーシーブなどの吸着剤である。さらに他の吸着
剤も、本発明によれば、好適な添加剤の使用を介して、すなわち結合剤又は相溶化剤を援
用して、樹脂に対して接着させることができる。モレキュラーシーブに加えて、本発明の
組成物において有用な他の代表的な吸着剤には、シリカゲル、活性炭、活性アルミナ、粘
土、他の天然ゼオライト類、及びそれらの組み合わせが含まれる。カップリング剤又は相
溶化剤と共に用いられることが分かっている吸着剤には、活性炭及び活性アルミナなどの
メンバーが含まれる。
【0019】
相溶化剤として働く添加剤は、2つのカテゴリー、すなわち樹脂又は吸着剤と接着する
もの、及び樹脂と吸着剤両方に多少の親和性を有し、固体状態の界面活性剤として働くも
ののいずれかに属する。そのような種類の反応性カップリング剤には、マレイン酸エステ
ル、エポキシ及び及びシランがある。さらに詳しく言えば、反応性カップリング剤の代表
的な例には、約2〜約5重量%の範囲の量で用いられる無水マレイン酸グラフトポリマーが
含まれる。特にそれらは、ポリプロピレン又はABS樹脂にグラフトされた無水マレイン酸
のような代表的な例を含み、後者はスチレンポリマーとのカップリング剤として有用であ
る。同様に、さまざまな官能基を付加されたシランも使用してよい。
【0020】
本発明はまた、吸着剤と樹脂の結合において、いわゆる非反応性型相溶化剤の使用も意
図する。この代表的な例には、例えば吸着剤に対して約0.01〜約0.02重量%の範囲のステ
アリン酸亜鉛、ステアリン酸ナトリウムなどの、金属(例えば、亜鉛又はナトリウム)、ア
クリレート、ステアリン酸エステル及びブロックコポリマーなどが含まれる。実際の濃度
は表面積によって決定され、これは同様に粒子径に比例する。ポリアミド樹脂との相溶化
のためには、平均粒子径1Oμのモレキュラーシーブに対して、100ppmのステアリン酸アル
ミニウムが典型的な開始濃度であろう。
【0021】
該樹脂結合吸着剤組成物は、本発明に従って通常の熟練した職人に一般によく知られて
いるプラスチック配合技術を用いて調製することができる。好ましい吸着剤であるモレキ
ュラーシーブは、優れた混合特性を有するプラスチック押出成型機に、粉末状の該吸着剤
を選択された樹脂ビーズと共に注入することにより、例えばポリアミド、ポリオレフィン
、又は同様の樹脂中に混和してよい。一般に、2軸スクリュー押出成型機が使用される。
ここで、樹脂は溶融されて、吸着剤は完全に混合される。溶融混合物がDSC(示差走査熱
量測定法)により決定される樹脂の融点を超えて加熱されることが必要条件である。つま
り、本発明の樹脂結合吸着剤の調製において、該樹脂溶融物中で該吸着剤を完全に混和す
るために、結晶性が完全に消失するポイントまで温度を上げる必要がある。例えば、DuPo
nt社製のZytel(登録商標)101ポリアミド樹脂は262℃を超えるまで加熱する。該押出成
型樹脂は冷却され、次にペレット又は顆粒状に切断されるか押しつぶされる。配合が高温
で行われるために、該吸着剤はこの処理期間中は水分を吸着しない傾向にあるが、構成部
品へと成形され、作業環境に設置された場合にも、その吸着能力を持ち続けている。
【0022】
該樹脂及び吸着剤が密接に結合している本発明の樹脂結合吸着剤システムにより実現さ
れるさらにもうひとつの利点は、袋に入れた吸着剤を使用する吸着剤システムよりもグラ
ムあたりにすると、より効果的であることである。吸着剤を詰めるために袋が用いられて
いた従来の方法によれば、例えば冷媒の流れに入るのを防ぐために、吸着剤を数珠つなぎ
にする必要があった。これには一般に15重量%の粉末の形態などのバインダ樹脂中で該吸
着剤を接着させる必要がある。従って、40グラムの市販の吸着剤を袋に入れた場合、実際
にはシステム中に導入される吸着剤はわずか34グラムである(6グラムのバインダーと共
に)。対照的に、本発明の樹脂結合吸着剤では、吸着剤は構成部品が製造される成形樹脂
中に直接配合されているために、追加のバインダ樹脂を必要としない。有利にも、本発明
では、中間のバインダ樹脂は必要なく、従来の袋に入れた吸着剤により達成されるよりも
吸着剤添加率を高めることが可能となる。
【0023】
上述の、本発明の配合された樹脂混合物は、次に構成部品の形へと射出成形される。典
型的な構成部品は、自動車空調システムの受液器で使用されているような冷媒蒸気液体分
離装置である。ケイ酸塩で強化された樹脂の強度は、結果として構造的にしっかりとした
成形構成部品をもたらす。それ自体、自立し、現在取り付けられている金属又はプラスチ
ック製の冷却構成部品と同様に、取り付けに適している。例えば、U字型アセンブリ100の
それぞれ端面図及び部分側断面図を示す図1及び2を参照のこと。この実施態様は、本発明
の樹脂結合吸着剤を材料とするライナー又はスリーブ110を形成するために本発明の組成
物を使用しており、アキュムレータキャニスタ130の中にU字型チューブ120を包含してい
る。このデザインはライナー110の露出された内表面を乾燥させる手段をもたらす。この
実施態様は、先行技術の「バッフル」型アキュムレータ(図示せず)に代わるものである

【0024】
あるいは、本発明に従って形成された樹脂は、溶融され、機能的吸着剤構成部品に射出
成形される代わりに、破砕されるか、そうでなければ断片状に成形又はペレット化し、次
にフロースルー型一体構造、又はフロースルー型乾燥機の構成部品などの部品へと焼結さ
れてよい。このような場合、該部品は射出成形されるのではなく、配合された吸着剤添加
樹脂から、受液器乾燥機アセンブリにおける用途など、目的とする用途のために十分な多
孔性を有する機能的部品へと成形される。
【0025】
本発明の樹脂結合吸着剤から製造された部品は、特に先行技術の複数要素の構成部品と
の交換に適している。例えば、従来、冷却装置のさまざまな部品中に乾燥剤(容器に入っ
ていない)を取り付けて固定するために、多くの特殊な構造物が開発されてきた。ビーズ
状又は顆粒状のモレキュラーシーブ又は酸化アルミニウムを入れた、溶接又は縫製された
袋が、流路内部に配置される。さらに、また具体的に言えば、据付の冷却用途に対しては
、乾燥ブロック又はパーシャルフィルターとしての機能を果たす硬い成形物を製造するた
めに、ビーズ又は顆粒の乾燥剤は加熱された金型中で好適な熱硬化樹脂又はセラミックバ
インダーと共に接着された。そのような構造物は、ハウジング内に組み込まれる。これら
の解決策は、しかしながら、複雑で複数要素の部品を必要とした。しかしながら、本発明
は、一体型の装置が両方の機能を同時に兼ね備えるように乾燥剤の性能と部品の構造的用
途とを一緒にする。
【0026】
例えば、本発明は、より多くの数の自動車に使われ始めている、一体型受液器/脱水器/
凝縮器のための使用が意図されている。そのような可動式の冷凍サイクル構成部品は、多
くの理由から、基本的には乾燥機能と凝縮器を一体化させている。これはシステム構成部
品の数を少なくするため、ボンネットの下の空間の有効利用を可能にし、また同時に接続
金具及び連結部の数を少なくしてシステムの漏液の可能性を最小限に抑える。また、冷却
効率に関連して多少の性能向上ももたらす。現在の技術を、アルミニウムネジ込みプラグ
300とOリング305及び306、射出成形フィルター310、並びに乾燥剤袋320を示す図3と図4に
例示している。このシステムを図5に示されるような一体成形プラグ/フィルターアセンブ
リに交換することにより、Oリング510を備えた一体プラグ500が利用できる。そのような
場合、プラグ500は、図6で示されるように乾燥剤袋600と組み合わせることができる。図7
は、組み立てられた装置の部分断面図を示す。
【0027】
より詳細には、図7は凝縮器710に隣接して配置された装置700を示す。装置700は受液器
乾燥管730の中に配置された乾燥剤袋720を備えている。装置700の端は一体型ネジ込みプ
ラグ及びフィルター750を格納するフィルター管740である。Oリング705も示されている。
乾燥剤袋720は、一体型ネジ込みプラグ及びフィルター750と、インターフェース760で接
続されている。このデザインは個々の組み立て工程をすべて排除し、上述のアルミニウム
ネジ込みプラグと比較して、部分品数のより少ない部品を作り出すこととなる。
【0028】
本発明を組み込んださらにもうひとつの実施態様が図8に示されており、これは自動車
空調システムの受液器に使用されているような冷媒蒸気/液体分離装置の可動式冷凍アキ
ュムレータの上部800を図示している。図8からわかるように、アキュムレータ上部800の
内部にはJ字管810が組み込まれている。この場合、これらの部分品のひとつ又はいずれも
が本発明の樹脂結合吸着剤組成物から成形されている。図9は、アキュムレータ上部800の
頂部に置かれるキャップ900を図示している。そのようなアキュムレータ装置の好ましい
実施態様では、上部800及びキャップ900の両方を射出成形して次に溶接するか、場合によ
り半分ずつを射出ブロー成形する。該装置を完成させる下部(図示せず)もまた、本発明
の樹脂結合吸着剤組成物から成形することもできる。
【0029】
本発明の樹脂結合吸着剤の利点を説明するために、以下の実験を実施した:
【実施例】
【0030】
(実施例1)
樹脂結合吸着剤の試験試料は、特許請求の範囲に記載されている発明に従って、以下の
プロトコルを用いて調製した。樹脂は、ペレット型のものをサプライヤーから入手する(
最も一般的なのは円筒形(直径0.03〜0.12インチ×長さ0.06〜0.25インチ)であり、他の
型には涙滴型のものが含まれる(0.06〜0.19インチ))。樹脂に対するモレキュラーシー
ブの比率は、構成部品の重量によって決定される。樹脂はポリ袋中で予め手で混合する(
5〜15分)。この予め混合した樹脂をBrabender単軸押出成型機のホッパーに流し込んだ。
樹脂とモレキュラーシーブが押出成型機のバレルを通過している間にスクリューからの動
作がさらにそれらを混合及び溶融する。次に該樹脂結合吸着剤は、押出成型機の最後部か
ら単一ストランド押出型(1つの丸穴)を通って溶融材料のストランド一本を形成しなが
ら出てくる。ナイロンベースの樹脂は、262℃を超えて加熱した。次に該ストランドを空
冷した。該ストランドを細かく砕いた。砕片を射出成形機のホッパーに入れ、部品を成形
した。該部品を細かく砕き、射出成形機に再び導入し、検査のための引張試験片(ドッグ
ボーン型)を成形した。
【0031】
選択された樹脂は、最新の空調システムで使用されている、冷媒に適合することが知ら
れているものであり、具体的には、R-134a及びR-152aである。該樹脂はまた、冷媒流中に
同伴される圧縮器潤滑油とも適合した。乾燥剤は従来のシステムにおいて最も多く用いら
れているものと同じもの、すなわち3A又は4Aモレキュラーシーブであった。
【0032】
比較のために、よく使用される強化ガラスビーズをほぼ同じ添加率で配合した。収縮を
制御し、機械的特性を均一に強化するために、ポリマー溶融物にガラスビーズを添加した
。ガラスビーズは機械的に樹脂と接着し、成形後は等方性の構造が得られるために、この
用途において効果的であった。
【0033】
表Iでは、配合された樹脂の機械的特性が、純粋なポリマー及びガラス強化ポリマーと
比較されている。
【表1】

【0034】
樹脂が強化された場合、硬度が増加し、それに伴って、材料がより金属様になるにつれ
て引張変位及び曲げ変位が急激に減少した。それに応じて、引張及び曲げ係数が著しく増
加した。ガラスと、吸着剤(ガラス強化なし)で強化されたナイロンでは、引張及び曲げ
応力は実質的に維持された。この発見の重要な特性及び意義は、ガラスにより強化された
ナイロンと同様に、該吸着剤により強化されたナイロンの特性は、方向性及び程度の両方
において純粋なナイロンとは異なるものであることである。さらに、熱たわみ温度は上昇
した。熱たわみ温度は、熱耐性の尺度である。この用語は当業者に公知である。それは、
熱による経時的変形に耐える材料の能力の指標である。熱たわみ温度の上昇のさらなる意
味合いは、該吸着剤強化樹脂から成形された部品の使用温度が高くなることであった。
【0035】
いずれの方向の引張及び曲げ係数も実質的に同じであるという事実からも明らかなよう
に、吸着剤強化ナイロン樹脂(ガラス強化なし)から成形された構造物は等方性であるこ
ともわかった。さらなる証拠として、金型からの収縮は最小限かつ対称的である。
【0036】
(実施例2)
さらなる実験は、ポリプロピレン、すなわちHuntsmanポリプロピレン6106を含む組成物
を用いて実施した。この樹脂もまた、冷媒並びに圧縮器潤滑油に適合した。実施例1のナ
イロンと同様の方法、すなわち:60%ポリプロピレン樹脂及び40%モレキュラーシーブ4A
型の割合で配合した。樹脂を174℃を超えて加熱した。配合樹脂は、純粋な樹脂と比較し
て同様の有利な機械的特性を有し、また、構造的にガラス強化樹脂に近い機能を果たす。
その特性は表IIに要約されている。値は、表Iに記載されているものと同じ米国材料試験
協会(ASTM)の基準により測定した。
【表2】

【0037】
ポリプロピレンを強化した結果、硬度の増加及び引張及び曲げ係数の増加がもたらされ
た。これらの各特性に対して、吸着剤単独は、ガラスビーズ強化よりもさらに大きな強化
効果を示した。それに応じて、引張変位及び曲げ変位は材料がより硬くなるにつれて減少
した。重ねて、吸着剤の効果はガラスビーズ強化と方向性は同じであったが、それよりも
大きかった。引張及び曲げ応力は、吸着剤強化でわずかに減少した。しかしながら、その
減少はガラス強化のものがより大きかった。ポリプロピレンに関しては、吸着剤による強
化は一般にガラスビーズによる強化よりも、より効果的であった。熱たわみ温度は上昇し
た。ここで再び、熱たわみ温度の上昇のさらなる意味合いは、該吸着剤強化樹脂から成形
された部品の使用温度が高くなることであった。
【0038】
同様に、いずれの方向の引張及び曲げ係数も実質的に同じであるという事実からも明ら
かなように、吸着剤強化ポリプロピレン樹脂から成形した構造物は等方性であることがわ
かった。さらなる証拠として、金型からの収縮は最小限かつ対称的である。
【0039】
(実施例3)
表IIIからも分かるように、吸着剤強化ナイロンでは、純粋なナイロン(nylon neat)
(純粋なポリマー)又はガラスビーズ強化ナイロンと比較して、メルトフローが減少した
。それにもかかわらず、それは加工可能な範囲であり、ポリプロピレンよりも高かった。
吸着剤強化ポリプロピレンのメルトフローは、純粋なポリプロピレン(polypropylene ne
at)又はガラス強化ポリプロピレンと比較して、改良されていた。
【表3】

【0040】
(実施例4)
部品の重量に占める水分吸着量は重要である。これは表IVに見ることができる。実際に
は、モレキュラーシーブはそれ自体の重量の約25%を吸着する。それならば、添加率40%
のポリマーがそれ自体の重量の10%を吸着すると予想するのは理にかなっている。しかし
ながらナイロンの場合は、吸着は13%に達した。これはおそらく、ナイロン自体による多
少の水分吸着を加味した、吸着剤の作用の結果もたらされたものであろう。本体が、全体
として10%を上回り吸着する事実は、該吸着剤がナイロンの強化に加え、ポリマー中で分
散しているにもかかわらず、吸着剤として十分機能したことを示している。実質的に、該
吸着剤による相乗効果があり、又は該吸着剤が二役をこなした。表IVは36〜38%のモレキ
ュラーシーブ添加での吸着の結果を示す。
【表4】

【0041】
ポリプロピレンは疎水性であり、このため水分を吸着するにはより多くの時間がかかる
。しかし成形樹脂として十分に機能的である一方で、吸着剤として十分に機能的である。
【0042】
本発明のさらなる用途は非常に多い。そのような用途には、空調又は冷却装置で使用さ
れる任意の樹脂接着構成部品又は構造が含まれる。上述のように、実施例には、半々に射
出成形され、溶接されるか又は場合により射出ブロー成形されたJ字管、スリーブライナ
ー、内装品又は外郭構造のためのコーティング、共射出成形複合構造物、及びインサート
成形されたフィルター-乾燥機アセンブリなどが含まれる。診断用途には、試験紙基材、E
-transケースのためのケース又は支持体、診断薬のための容器又は容器の構成部品などが
含まれるであろう。製薬用途には、ベースもしくはクロージャー、又は容器自体の本体な
どの錠剤用容器の部品、底面支持体又は調剤補助のための容器首部分の挿入物などの錠剤
用容器への挿入物、ブリスター包装又は他のコンパートメント包装から一度にひとつずつ
、又は一度に2つずつの用量を投薬するために好適な熱成形シート又は多層構造の熱成形
可能なシートの1つの層などが含まれるであろう。電子工学及び電子光学装置の用途には
、通気口濾過体一式、暗視センサーユニットのための挿入物、又はリアビューカメラ本体
のための挿入物などが含まれる。
【0043】
当然のことではあるが、密閉系及び密封包装用途においては、乾燥剤が添加された射出
成形可能な樹脂のための、多くの他の可能性のある用途がある。また、当然のことながら
、押出成型は射出成形よりも負担の少ない方法であるために、乾燥剤が添加された射出成
形樹脂はまた、棒状又は溝形又は一定の断面を有する任意の他の形状へと押出成型するこ
とも可能である。
【0044】
本発明は特に、具体的な好ましい実施態様に関して述べてきたが、多くの別法、修正、
及び変更が当業者に明らかであることは明白である。従って、添付の特許請求の範囲は、
いかなるそのような別法、修正及び変更を本発明の真の範囲及び精神に含まれるものとし
て包含することが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
新規であると考えられる本発明の特徴、及び本発明の特徴的な要素は、添付の特許請求
の範囲に詳細に説明されている。図面は例示の目的のみのために示され、必ずしも原寸に
比例していない。しかし、本発明自体は、構成及び操作方法の両方に関して、添付図面と
併せて後述の詳細な説明を参照することにより、最もよく理解されるであろう。
【図1】本発明のアキュムレータの端面図である。
【図2】本発明のアキュムレータの部分側断面図である。
【図3】先行技術の冷却装置のフィルター/乾燥剤袋/アルミニウム接続金具構成部品の分解図である。
【図4】図3の構成部品の側面図である。
【図5】本発明の構成部品で作製された一体型フィルター/接続金具である。
【図6】乾燥剤袋と共に図5に示した装置の用途を示す説明図である。
【図7】凝縮器上部に使用されている、図5に示された部品の実施態様の横断面図を示す。
【図8】本発明に従って作られた、自動車空調システムの受液器に使用されているような冷媒蒸気/液体分離装置の可動式冷却アキュムレータバッフル部分を示す。
【図9】図8の分離装置のためのキャップ部分を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも水分を吸着する量の吸着剤を樹脂と組み合わせて含むことを特徴とする多機
能性成形組成物であって、前記吸着剤と樹脂との組み合わせが前記組成物中に樹脂結合吸
着剤として存在し、前記成形組成物がさらに樹脂系成形組成物から製造された製品を強化
するとして一般的に認められた有用性を有する添加剤の不在下において、強化された機械
的特性を特徴とする、前記多機能性成形組成物。
【請求項2】
前記樹脂結合吸着剤が前記吸着剤と前記樹脂との機械的結合を特徴とし、該機械的結合
が該吸着剤が該樹脂中で混和可能となることを含む、請求項1記載の多機能性成形組成物

【請求項3】
前記樹脂の結晶性の消失を経て前記吸着剤が湿潤し、該樹脂中で混和可能となることを
特徴とする、請求項1記載の多機能性成形組成物。
【請求項4】
前記樹脂が熱可塑性樹脂であり、かつ前記吸着剤がモレキュラーシーブ、シリカゲル、
活性炭、活性アルミナ及び粘土からなる群から選択されるメンバーであることを特徴とす
る、請求項1記載の多機能性成形組成物。
【請求項5】
前記吸着剤がモレキュラーシーブであり、かつ前記樹脂がポリアミド、ポリオレフィン
、スチレンポリマー及びポリエステルからなる群から選択されるメンバーであることを特
徴とする、請求項1記載の多機能性成形組成物。
【請求項6】
前記樹脂がエチレン又はプロピレン含有ホモポリマー又はコポリマーであることを特徴
とする、請求項1記載の多機能性成形組成物。
【請求項7】
前記樹脂結合吸着剤がカップリング剤又は相溶化剤を援用して形成されることを特徴と
する、請求項1記載の多機能性成形組成物。
【請求項8】
前記カップリング剤又は相溶化剤が反応型又は非反応型薬剤からなる群から選択される
メンバーであることを特徴とする、請求項7記載の多機能性成形組成物。
【請求項9】
前記反応型薬剤及び非反応型薬剤が金属、アクリレート、ステアリン酸エステル、ブロ
ックコポリマー、マレイン酸エステル、エポキシ及びシランからなる群から選択されるメ
ンバーであることを特徴とする、請求項8記載の多機能性成形組成物。
【請求項10】
前記樹脂結合吸着剤が約25〜約55重量%の吸着剤及び約45〜約75重量%の樹脂を含むこ
とを特徴とする、請求項1記載の多機能性成形組成物。
【請求項11】
前記樹脂結合吸着剤が約35〜約42重量%の吸着剤及び約58〜約65重量%の樹脂を含むこ
とを特徴とする、請求項1記載の多機能性成形組成物。
【請求項12】
少なくとも水分を吸着する量の吸着剤を強化剤及び樹脂と組み合わせて含み、該強化剤
が前記組成物中に、該吸着剤の不在下で導入されるよりも少ない量で存在することを特徴
とする、多機能性成形組成物。
【請求項13】
請求項1記載の多機能性成形組成物から製造される、成形製品。
【請求項14】
冷凍又は空調サイクル構成部品として特徴づけられる、請求項13記載の成形製品。
【請求項15】
前記構成部品がU字管アセンブリ;ライナー又はスリーブ;アキュムレータ、プラグ/フィ
ルターアセンブリ;一体型ネジ込みプラグ及びフィルター、並びにアキュムレータ-J字管
及びキャップからなる群から選択されるメンバーであることを特徴とする、請求項14記
載の成形された冷凍又は空調サイクル構成部品。
【請求項16】
請求項12記載の多機能性成形組成物から製造される、成形製品。
【請求項17】
冷凍又は空調サイクル構成部品として特徴づけられる、請求項16記載の成形製品。
【請求項18】
前記構成部品がU字管アセンブリ;ライナー又はスリーブ;アキュムレータ、プラグ/フィ
ルターアセンブリ;一体型ネジ込みプラグ及びフィルター、並びにアキュムレータ-J字管
及びキャップからなる群から選択されるメンバーであることを特徴とする、請求項17記
載の成形された冷凍又は空調サイクル構成部品。
【請求項19】
冷凍サイクルのための構成部品を製造する方法であって:
(i)少なくとも水分を吸着する量の吸着剤と樹脂を組み合わせて含み、該吸着剤-樹脂の組
み合わせが前記組成物中に樹脂結合吸着剤として存在し、前記成形組成物はさらに樹脂系
成形組成物から製造された製品を強化するとして一般的に認められた有用性を有する添加
剤の不在下での強化された機械的特性を特徴とする、多機能性成形組成物の形成、及び、
(ii)前記多機能性成形組成物からの前記構成部品の成形
を含む工程を特徴とする、前記方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−100537(P2013−100537A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2013−18048(P2013−18048)
【出願日】平成25年2月1日(2013.2.1)
【分割の表示】特願2007−552274(P2007−552274)の分割
【原出願日】平成18年1月20日(2006.1.20)
【出願人】(507245858)ムルチソルブ テクノロギエス インコーポレーテッド (3)
【Fターム(参考)】