説明

樹脂製チェーンコンベヤ

【課題】展板を急傾斜な搬送ラインにおいて搬送させる場合にもチェーンコンベヤの平滑な搬送面から滑落することなく、安定した状態で保持して搬送させることが出来る樹脂製チェーンコンベヤ。
【解決手段】樹脂製チェーンコンベヤ1は、アセタール等の樹脂材料から成る樹脂製チェーンブロック単体2の前後端部2a,2bを、樹脂製の連結ピン及び金属製の連結ピンを介して旋回可能に連結し、所定の長さのエンドレス状の樹脂製のチェーンコンベヤに構成。チェーンコンベヤ1のチェーンブロック単体2は、ブロック本体部4の搬送面4aが前後の連結端部片4xに、樹脂製チェーンコンベヤ1の凹凸状の係合部5a,5bを形成し、前記凹凸状の係合部5a,5bの側面中央には、チェーンブロック単体2の凹部と凸部とを互いに係合させた状態で旋回可能に連結させる前記棒状の連結ピン及びを挿通させるための円形状の貫通穴が形成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、パン,菓子等の食品生地類を載置した金属製の展板を搬送させるための樹脂製チェーンコンベヤに係わり、更に詳しくは,特に急傾斜な搬送ラインにおいても展板等を滑らせて落下させたり、位置をずらすことなく安定した状態で保持して搬送させることが出来る樹脂製チェーンコンベヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、パン,菓子等の食品の製造工程では、食品生地類を載置した金属製の展板を搬送する手段として所定の長さのチェーンコンベヤ,ベルトコンベヤ,ローラコンベヤ等の搬送コンベヤが使用され、この搬送コンベヤを複数台接続させ、その搬送コンベヤ上に金属製の展板を載置して搬送することが行われている。
【0003】
特に、パンの製造工程においては、例えば、食品生地の最終醗酵工程と焼成工程(例えば、トンネルオーブン等)とを結ぶ搬送経路や、その他の搬送経路に食品生地を載置した展板を載せた状態で所定の速度で搬送する複数台のチェーンコンベヤを接続させて平面的に配置したり、急傾斜に配置させ、複数の製造工程へ搬送するようにしている。
【0004】
また、従来のチェーンコンベヤとして、金属製のチェーンコンベヤや、プラスチック製のチェーンコンベヤ(例えば、特許文献1参照)が知られているが、形状や長さ等を任意に設定できる上、また軽量で安価に使用出来、更に安全に使用出来ることから所定幅に成形された多数のプラスチック製のチェーンブロック単体と、このチェーンブロック単体の前後端部を旋回自在に連結する複数本の棒状に形成された樹脂製の連結ピンとから構成される樹脂製チェーンコンベヤが使用される場合が多い。
【0005】
上記樹脂製チェーンコンベヤを構成するプラスチック製のチェーンブロック単体としては、例えば、ブロック本体部の搬送面(上面)が平滑で、かつブロック本体部の前後の連結端部片には、コンベヤの幅方向に交互に着脱可能な凹凸状の係合部を備えており、この凹凸状の係合部の側面中央には、チェーンブロック単体を互いに係合させた状態で旋回自在に連結させる樹脂製の連結ピンを挿通させるための貫通穴が形成されている。
【0006】
そして所定幅に形成された多数のプラスチック製のチェーンブロック単体の前後端部を上記のような樹脂製の連結ピンにより連結させて所定の長さのエンドレス状の樹脂製チェーンコンベヤを構成し、この樹脂製チェーンコンベヤを所定の間隔(展板を載置させるため展板の幅に合わせる)を隔てて複数列(例えば、所定の間隔を隔てて二列)配置し、そして樹脂製チェーンコンベヤの搬送面(上面)上に上述したような食品生地類を載置した金属製の展板を載置させて搬送させるものである。
【0007】
しかし、樹脂製チェーンコンベヤを水平状態に設置して展板を搬送させる場合には、樹脂製チェーンコンベヤの搬送面から金属製の展板が滑落したり、位置が移動することも少ないが、樹脂製チェーンコンベヤを急傾斜状態(例えば、傾斜角度が30度〜60度)に設置する場合には、金属製の展板がチェーンコンベヤの平滑な搬送面(上面)から滑って樹脂製チェーンコンベヤ上から落下することがあり、このため、複数列に配置する樹脂製チェーンコンベヤの間に金属製の展板を吸着保持するための強力な吸着力を有する板状の磁石を所定の間隔で配置している。
【0008】
しかしながら、板状の磁石を樹脂製チェーンコンベヤの間に配設するには、磁石の重量が大きい上に設置に多くの手間と時間がかかり、また設備や、板状の磁石が高価になると言う問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7−309417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この発明はかかる従来の課題に着目し、従来のような重量が大きく、高価で板状の磁石を使用することなく、また例えば、食品生地類を載置した金属製の展板を急傾斜な搬送ラインにおいて搬送させる場合にもチェーンコンベヤの平滑な搬送面から滑落することなく、安定した状態で保持して搬送させることが出来る樹脂製チェーンコンベヤを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は上記目的を達成するため、各樹脂製チェーンブロック単体は、ブロック本体部の搬送面が平滑で、かつブロック本体部の前後の連結端部片に、チェーンコンベヤの幅方向に交互に着脱可能な凹凸状の係合部を形成し、前記凹凸状の係合部の側面中央に、各チェーンブロック単体を互いに係合させた状態で旋回可能に連結させる棒状の連結ピンを挿通させるための貫通穴を形成し、前記各貫通穴に着脱可能に挿通させる複数本の連結ピンのうちの一部を、チェーンコンベヤ上を搬送する金属製の搬送材料を吸着可能な磁性材料により構成したことを要旨とするものである。
【0012】
ここで、前記棒状の連結ピンは、樹脂製の連結ピンと磁性材料により構成した連結ピンとの複数本により構成し、前記磁性材料により構成した連結ピンは、多数の樹脂製チェーンブロック単体を連結するチェーンコンベヤの長手方向に所定の間隔で配設し、前記磁性材料により構成した連結ピンは、径方向2極の永久磁石を使用するものである。
【0013】
また、前記樹脂製チェーンブロック単体の凹凸状の係合部の側面中央に形成した貫通穴の一端側内部に、連結ピンの脱落防止用のストッパを埋設し、前記チェーンブロック本体の搬送面の裏面側に、チェーンコンベヤのガイド用突起を形成するものである。
【発明の効果】
【0014】
この発明は上記のように、樹脂製チェーンブロック単体の前後端部を連結ピンを介して旋回自在に多数連結し、所定の長さのチェーンコンベヤに構成する樹脂製チェーンコンベヤにおいて、前記各樹脂製チェーンブロック単体は、ブロック本体部の搬送面が平滑で、かつブロック本体部の前後の連結端部片に、チェーンコンベヤの幅方向に交互に着脱可能な凹凸状の係合部を形成し、前記凹凸状の係合部の側面中央に、各チェーンブロック単体を互いに係合させた状態で旋回可能に連結させる棒状の連結ピンを挿通させるための貫通穴を形成し、前記各貫通穴に着脱可能に挿通させる複数本の連結ピンのうちの一部を、チェーンコンベヤ上を搬送する金属製の搬送材料を吸着可能な磁性材料により構成したので、以下のような優れた効果を奏するものである。
(a).例えば、食品生地類を載置した金属製の展板を急傾斜な搬送ラインにおいて搬送させる場合にもチェーンコンベヤの平滑な搬送面から滑落することなく、安定した状態で保持して搬送させることが出来る。
(b).従来のような重量が大きく、高価で板状の磁石を使用することなく、食品類の搬送に安価で安全に使用することが出来る。
(c).チェーンコンベヤの設置や、搬送に多くの手間と時間がかからず、またチェーンコンベヤの長さを任意に調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明を実施した樹脂製チェーンコンベヤの一部正面図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】図2のA−A矢視拡大側面図である。
【図4】図2のX部の拡大平面図である。
【図5】この発明を実施した樹脂製チェーンコンベヤの一部拡大斜視図である。
【図6】樹脂製チェーンコンベヤを構成する樹脂製チェーンブロック単体の連結状態を示す平面説明図である。
【図7】図6の背面図である。
【図8】樹脂製チェーンブロック単体の貫通穴に埋設した連結ピンの脱落防止用のストッパの説明図である。
【図9】樹脂製チェーンブロック単体の貫通穴に埋設した連結ピンの脱落防止用のストッパの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面に基づき、この発明の実施形態を説明する。
【0017】
図1は、この発明を実施した樹脂製チェーンコンベヤの一部正面図、図2は図1の平面図、図3は図2のA−A矢視拡大側面図を示し、この発明の実施形態では、樹脂製チェーンコンベヤ1を急傾斜状態(例えば、傾斜角度が30度〜60度)に設置して急傾斜チェーンコンベヤとして使用する場合について説明するが、急傾斜状態に限定されず、水平な状態に設置して実施することも可能である。
【0018】
前記樹脂製チェーンコンベヤ1は、図5〜図7に示すようにアセタール等の樹脂材料から成る樹脂製チェーンブロック単体2の前後端部2a,2bを、複数本の樹脂製の連結ピン3a(例えば、ナイロン製で断面円形状の棒状連結ピン)及び金属製の連結ピン3b(この実施形態では磁性材料、例えば、径方向2極のネオジム磁石により形成した断面円形状の棒状連結ピン)を介して旋回可能に多数連結し、所定の長さのエンドレス状の樹脂製のチェーンコンベヤに構成するものである。
【0019】
前記樹脂製チェーンコンベヤ1の各樹脂製チェーンブロック単体2は、ブロック本体部4の搬送面4a(上面)が平滑で、かつブロック本体部4の前後の連結端部片4xに、樹脂製チェーンコンベヤ1の幅方向Hに交互に着脱可能な凹凸状の係合部5a,5bを形成し、更に前記凹凸状の係合部5a,5bの側面中央には、各チェーンブロック単体2の凹凸状の係合部5a,5bの凹部と凸部とを互いに係合させた状態で旋回可能に連結させる前記棒状の連結ピン3a及び3bを挿通させるための円形状の貫通穴6が形成してある。
【0020】
例えば、図6に示すように、各チェーンブロック単体2の凹凸状の係合部5a,5bを互いに凹部と凸部とを係合させた状態で、貫通穴6内に直径6mm前後の棒状の連結ピン3a及び3bを樹脂製チェーンコンベヤ1の片側から挿入し、各チェーンブロック単体2を順次接続させて連結させる。
【0021】
このように構成した所定幅(この実施形態のチェーンコンベヤの幅は80mm〜90mmのものを使用しているが、特にチェーン幅には限定されず、任意のものを使用することが可能である)で、所定長さのエンドレス状の樹脂製チェーンコンベヤ1を、コンベヤフレーム7の前後部に設置された駆動スプロケット8aと従動スプロケット8aに所定の間隔(食品生地等を載置する金属製の展板Wに対応させる)を隔てて二列並列に掛け回し、図2及び図4に示すように、駆動スプロケット8aの駆動軸9に設けた駆動モータ10により回転駆動させてエンドレス状の樹脂製チェーンコンベヤ1上に載置された金属製の展板Wを搬送するものである。
【0022】
前記チェーンブロック本体3の搬送面4aの裏面側には、図7に示すように、樹脂製チェーンコンベヤ1の長手方向に沿って断面コ字状のガイド用突起11が相対向させて形成してある。また、前記樹脂製チェーンブロック単体2の凹凸状の係合部5a,5bの側面中央に形成した貫通穴6の一端側内部には、図8及び図9に示すように、連結ピン3a及び3bの脱落防止用のストッパ12が埋設してある。
【0023】
このストッパ12は、前記各チェーンブロック単体2の幅方向の一端側内部に、前記連結ピン3a及び3bを挿通させるための貫通穴6と直交する向きにスライド穴13を形成し、このスライド穴13内にストッパピン14をスライド可能に挿入させ、ストッパピン14を押圧して図8及び図9に示すように貫通穴6内に出没させることで、連結ピン3a及び3bを貫通穴6内に保持させて脱落するのを防止したり、また抜き取ることで、樹脂製チェーンブロック単体2を分離させ、樹脂製チェーンコンベヤ1の長さ等を簡便に調整出来るようにしてある。
【0024】
この発明の樹脂製チェーンコンベヤ1を急傾斜状態(例えば、傾斜角度が30度〜60度)に設置して急傾斜チェーンコンベヤとして使用する場合、上記のように、予め樹脂製チェーンブロック単体2を連結するための複数本の連結ピン3a及び3bのうちの一部を磁性材料で構成した連結ピンを使用すると共に、この磁性材料で構成した連結ピン3aまたは3bを樹脂製チェーンコンベヤ1の長手方向に所定の間隔(金属製の展板Wの長さに対応させる)で配設して使用する。
【0025】
このようにして使用することで、例えば、食品生地等を載置する金属製の展板Wを急傾斜チェーンコンベヤ上を搬送する場合でも金属製の展板Wを磁性材料で構成した連結ピン3aまたは3bによりブロック本体部4を通して吸着保持させることにより、展板Wが樹脂製チェーンコンベヤ1上から滑り落ちたり、配置や向き等が変更されることなく目的とする製造工程位置まで安全に、しかも確実に搬送させることが出来るのである。
【0026】
また、金属製のチェーンコンベヤ及び板状の磁石等を使用しないので、食品類を搬送する場合にも衛生上及び品質保持上安心して使用することが出来る。
【0027】
以上のように、各樹脂製チェーンブロック単体2に形成した各貫通穴6に着脱可能に挿通させる複数本の連結ピン3a及び3bのうちの一部を、樹脂製チェーンコンベヤ1上を搬送する金属製の搬送材料(金属製の展板W)の吸着可能な磁性材料により構成したので、食品生地類を載置した金属製の展板Wを急傾斜な搬送ラインにおいて搬送させる場合にも展板Wが樹脂製チェーンコンベヤ1上から滑り落ちることなく、安定した状態で保持して搬送させることが出来る。
【0028】
また、従来のような重量が大きく、高価で板状の磁石を使用することなく、食品類の搬送に安価で安全に使用することが出来、更にチェーンコンベヤの設置や、搬送に多くの手間と時間がかからず、またチェーンコンベヤの長さを任意に調整できるものである。
【0029】
なお、上記の実施形態では、この発明の樹脂製チェーンコンベヤ1を食品類を搬送するチェーンコンベヤについて説明したが、この食品類を搬送するチェーンコンベヤに限定されず、他の物品類を搬送する場合にも適用出来るものである。
【産業上の利用可能性】
【0030】
この発明では、例えば、パン,菓子等の食品生地類を載置した金属製の展板を搬送させるための樹脂製チェーンコンベヤにおいて、急傾斜な搬送ラインにおいても展板を滑らせて落下させたり、位置をずらすことなく安定した状態で保持して搬送させることが出来る樹脂製チェーンコンベヤである。
【0031】
なお、この発明の樹脂製チェーンコンベヤは、食品類を搬送するチェーンコンベヤに限定されず、他の物品類を搬送する場合にも適用出来るものである。
【符号の説明】
【0032】
1 樹脂製チェーンコンベヤ
2 樹脂製チェーンブロック単体
2a,2b 樹脂製チェーンブロック単体の前後端部
3a 樹脂製の連結ピン
3b 金属製の連結ピン
4 ブロック本体部
4a 搬送面
4x 連結端部片
5a,5b 係合部
6 貫通穴
7 コンベヤフレーム
8a 駆動スプロケット
8b 従動スプロケット
9 駆動軸
10 駆動モータ
11 ガイド用突起
12 脱落防止用のストッパ
13 スライド穴
14 ストッパピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製チェーンブロック単体の前後端部を連結ピンを介して旋回自在に多数連結し、所定の長さのチェーンコンベヤに構成する樹脂製チェーンコンベヤにおいて、 前記各樹脂製チェーンブロック単体は、ブロック本体部の搬送面が平滑で、かつブロック本体部の前後の連結端部片に、チェーンコンベヤの幅方向に交互に着脱可能な凹凸状の係合部を形成し、前記凹凸状の係合部の側面中央に、各チェーンブロック単体を互いに係合させた状態で旋回可能に連結させる棒状の連結ピンを挿通させるための貫通穴を形成し、前記各貫通穴に着脱可能に挿通させる複数本の連結ピンのうちの一部を、チェーンコンベヤ上を搬送する金属製の搬送材料を吸着可能な磁性材料により構成したことを特徴とする樹脂製チェーンコンベヤ。
【請求項2】
前記棒状の連結ピンは、複数本の樹脂製の連結ピンと複数本の磁性材料により構成した連結ピンとにより構成し、前記磁性材料により構成した連結ピンは、多数の樹脂製チェーンブロック単体を連結するチェーンコンベヤの長手方向に対して、所定の間隔で配設する請求項1に記載の樹脂製チェーンコンベヤ。
【請求項3】
前記磁性材料により構成した連結ピンは、径方向2極の永久磁石を使用する請求項1または2に記載の樹脂製チェーンコンベヤ。
【請求項4】
前記樹脂製チェーンブロック単体の凹凸状の係合部の側面中央に形成した貫通穴の一端側内部に、連結ピンの脱落防止用のストッパを埋設した請求項1、2または3に記載の樹脂製チェーンコンベヤ。
【請求項5】
前記チェーンブロック本体の搬送面の裏面側に、チェーンコンベヤのガイド用突起を形成した請求項1、2、3または4に記載の樹脂製チェーンコンベヤ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate