説明

樹脂製機枠部材及びその製造方法

【課題】高発泡層の形成により軽量化を図ることができると共に、全表面へのスキン層の形成及び低発泡層の形成により、機械的強度を向上させることができる樹脂製機枠部材及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】樹脂製機枠部材6は、熱可塑性樹脂を発泡成形してなると共に、四角枠形状の樹脂製機枠7を構成する上枠部6A、下枠部6B又は左右の側枠部6Cとして用いるものである。樹脂製機枠部材6は、その全表面に、未発泡の熱可塑性樹脂からなるスキン層61を有している。樹脂製機枠部材6において、スキン層61に対する内側部分には、熱可塑性樹脂を発泡させた高発泡層621と、高発泡層621よりも発泡率が低く、互いに対向するスキン層61の部分同士を繋ぐ低発泡層622とが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂を発泡成形してなる四角枠形状の樹脂製機枠の各枠部を構成する樹脂製機枠部材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パチンコ遊技機等の遊技機の枠体を構成する機枠としては、木製のものが多いが、製造工程の簡略化、自然保護に対応した樹脂への転換、軽量化、リサイクル性等を考慮して、樹脂発泡成形体を用いて構成することが行われている。例えば、特許文献1の遊技機の枠体においては、遊技機の機体を構成する合成樹脂製の枠体を、枠体の表面層を形成する表面スキン層と、その内部の発泡層とを有する状態で形成している。そして、表面スキン層の内部に、良好な発泡層が形成された複雑な形状の枠体を形成している。
【0003】
また、固定型と可動型との間に設けたキャビティ内に溶融樹脂を充填し、固定型に対して可動型を後退させることによって、所定の発泡倍率の樹脂発泡成形体を成形することが行われている。例えば、特許文献2の熱可塑性樹脂発泡成形体の製造方法においては、キャビティ容積を可変する可動コアを有する金型内に、予め不活性ガスを注入する工程と、化学発泡剤を混練した溶融樹脂に超臨界流体を浸透させてこの溶融樹脂を金型内に充填する工程と、溶融樹脂の金型内充填時に可動コアをキャビティ容積が増大する方向に後退させる工程とを行って、熱可塑性樹脂発泡成形体を成形している。これにより、成形体の表面外観品質に優れ、均一性の高い発泡セル径を安定的に得ることができる。
【0004】
【特許文献1】特開2007−15231号公報
【特許文献2】特許第2939000号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1においては、表面スキン層と発泡層とのみで枠体を形成しているため、表面スキン層以外に枠体の機械的強度(剛性)を向上させるためには、更なる工夫が必要とされる。
また、特許文献2においては、キャビティ内へ溶融樹脂を充填しているときに、可動コアをキャビティが増大する方向に後退させている。これにより、成形する熱可塑性樹脂発泡成形体の全表面、特に可動コアの可動方向に直交する方向の側面に、溶融樹脂を半硬化させた未発泡のスキン層を形成することが困難である。そのため、成形する熱可塑性樹脂発泡成形体の機械的強度(剛性)を向上させるためには十分ではない。
【0006】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、高発泡層の形成により軽量化を図ることができると共に、全表面へのスキン層の形成及び低発泡層の形成により、機械的強度を向上させることができる樹脂製機枠部材及びその製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、熱可塑性樹脂を発泡成形してなると共に、四角枠形状の樹脂製機枠を構成する上枠部、下枠部又は左右の側枠部のいずれかとして用いる樹脂製機枠部材であって、
該樹脂製機枠部材は、その全表面に、未発泡の熱可塑性樹脂からなるスキン層を有しており、
該スキン層に対する内側部分には、熱可塑性樹脂を発泡させた高発泡層と、該高発泡層よりも発泡率が低く、互いに対向する上記スキン層の部分同士を繋ぐ低発泡層とが形成されていることを特徴とする樹脂製機枠部材にある(請求項1)。
【0008】
本発明の樹脂製機枠部材は、機枠の上枠部、下枠部又は左右の側枠部のいずれかを構成するものであり、その機械的強度(剛性)を向上させる工夫を行っている。
具体的には、樹脂製機枠部材の全表面には、未発泡の熱可塑性樹脂からなるスキン層が形成されている。また、スキン層に対する内側部分には、熱可塑性樹脂を発泡させた高発泡層と、高発泡層よりも発泡率が低い低発泡層とが形成されている。そして、低発泡層は、互いに対向するスキン層の部分同士を繋ぐ状態で形成されている。
【0009】
それ故、本発明の樹脂製機枠部材によれば、高発泡層の形成により軽量化を図ることができると共に、全表面へのスキン層の形成及び低発泡層の形成により、その機械的強度を向上させることができる。
【0010】
第2の発明は、上記樹脂製機枠部材を、第1型部と、該第1型部に対して相対的に可動する第2型部とを用い、該第2型部と上記第1型部との間に形成したキャビティ内に、化学発泡剤を熱可塑性樹脂に混練してなる溶融樹脂を充填し、上記第1型部と上記第2型部とを上記キャビティの容積が拡大する離隔方向に相対的に可動させて製造する方法であって、
上記第2型部には、上記第1型部に設けたキャビティ形成凹部内に配置するキャビティ形成凸部を設け、
上記キャビティ形成凹部の底面と上記キャビティ形成凸部の先端面との少なくとも一方には、成形する上記樹脂製機枠部材の長手方向に直交する断面の中央部分に、上記長手方向に沿って長尺状突起を形成し、
上記キャビティ形成凹部において上記第1型部と上記第2型部との可動方向に平行に形成した内側面と、上記キャビティ形成凸部において上記可動方向に平行に形成した外側面との間には、上記溶融樹脂を充填するための充填用隙間を上記キャビティと連通して形成しておき、
上記キャビティ内及び上記充填用隙間に充填した上記溶融樹脂を半硬化させて未発泡のスキン層を形成し、
次いで、上記第1型部と上記第2型部とを上記離隔方向に相対的に可動させて、上記スキン層に対する内側部分に、溶融樹脂を発泡させた高発泡層と、該高発泡層よりも発泡率が低く、上記スキン層の部分同士を繋ぐ低発泡層とを形成し、該低発泡層は、上記長尺状突起に対応する部分に形成すると共に、上記高発泡層は、他の部分に形成することを特徴とする樹脂製機枠部材の製造方法にある(請求項6)。
【0011】
本発明の樹脂製機枠部材の製造方法は、上記軽量化を図ることができると共に機械的強度(剛性)を向上させることができる樹脂製機枠部材を発泡成形するのに適した方法である。
具体的には、第1型部のキャビティ形成凹部における内側面と、第2型部のキャビティ形成凸部における外側面との間に、溶融樹脂を充填するための充填用隙間をキャビティと連通して形成しておく。また、キャビティ形成凹部の底面とキャビティ形成凸部の先端面との少なくとも一方には、成形する樹脂製機枠部材の長手方向に直交する断面の中央部分に、長手方向に沿って長尺状突起を形成しておく。
【0012】
本発明の製造方法において、樹脂製機枠部材を発泡成形するに当たっては、溶融樹脂をキャビティ内に充填すると共に充填用隙間に充填する。このとき、第1型部におけるキャビティ形成凹部の底面及び内側面と、第2型部におけるキャビティ形成凸部の先端面及び外側面とに接触する溶融樹脂は、通常30〜100℃に温度調整されている金型(第1型部、第2型部)に接しているため、キャビティの中心部分(内側部分)における溶融樹脂よりも先に硬化を始める。そして、キャビティにおける接触表面だけでなく、充填用隙間における接触表面にも、溶融樹脂が半硬化して未発泡のスキン層が形成される。
ここで、半硬化とは、溶融樹脂が、もはや発泡層を形成することはできないが、第1型部に対する第2型部の相対的な可動に伴って流動することができる程度に硬化していることをいう。
【0013】
次いで、キャビティ及び充填用隙間にスキン層を形成した後、第1型部と第2型部とを離隔方向に相対的に可動させる。このとき、充填用隙間に形成されたスキン層に対してキャビティ形成凸部の外側面がスライドし、充填用隙間に形成されたスキン層の内側部分に溶融樹脂が流動する。
そして、第1型部と第2型部とを所定位置まで相対的に可動させ、樹脂製機枠部材を成形したときには、樹脂製機枠部材の全表面には、溶融樹脂がほとんど未発泡で硬化したスキン層を形成することができる。また、樹脂製機枠部材の内部(内側部分)においては、キャビティ形成凹部の底面とキャビティ形成凸部の先端面との少なくとも一方に形成した長尺状突起に対応する部分には、互いに対向するスキン層の部分同士を繋ぐ状態で発泡倍率が低い低発泡層が形成され、その他の部分には、低発泡層よりも発泡倍率が高くなった高発泡層が形成される。
【0014】
それ故、本発明の樹脂製機枠部材の製造方法によれば、高発泡層の形成により軽量化を図ることができると共に、全表面へのスキン層の形成及び低発泡層の形成により、機械的強度を向上させることができる樹脂製機枠部材を容易に製造することができる。
なお、低発泡層が形成される理由は、キャビティ形成凹部の底面とキャビティ形成凸部の先端面との少なくとも一方において、長尺状突起を形成した部分において溶融樹脂の冷却が早く進んで溶融樹脂の粘度が高くなり、溶融樹脂が発泡し難い状態が形成されるためであると考える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
上述した第1、第2の発明における好ましい実施の形態につき説明する。
第1の発明において、上記低発泡層は、上記高発泡層を2つに仕切る状態で上記樹脂製機枠部材の長手方向に平行に連続して形成されていることが好ましい(請求項2)。
この場合には、低発泡層によって互いに対向するスキン層の部分同士を、長手方向に連続して繋ぐことができ、樹脂製機枠部材の機械的強度をより確実に向上させることができる。
【0016】
また、上記低発泡層は、上記四角枠形状の内周側に位置する上記スキン層の部分と、上記四角枠形状の外周側に位置する上記スキン層の部分とを繋ぐ状態で形成されていることが好ましい(請求項3)。
この場合には、枠体の機械的強度を効果的に向上させることができる。
【0017】
また、上記樹脂製機枠部材は、上記四角枠形状の内外周方向における厚み寸法が、上記四角枠形状の奥行き方向における奥行き寸法よりも小さく形成してあると共に、該奥行き方向における中間部には、上記内外周方向に厚みが縮小した厚み縮小部を当該樹脂製機枠部材の長手方向に沿って形成してなり、上記低発泡層は、互いに対向する上記スキン層の部分同士を上記厚み縮小部において繋ぐ状態で形成されていることが好ましい(請求項4)。
この場合には、樹脂製機枠部材を発泡成形する際に、厚み縮小部において、互いに対向するスキン層の部分同士を繋ぐ低発泡層を容易に形成することができる。
【0018】
また、上記樹脂製機枠部材における上記高発泡層及び上記低発泡層の発泡倍率は、1.1〜2.0倍であることが好ましい(請求項5)。
この場合には、発泡倍率が適切であり、発泡によるセル径が均一で外観に優れ、さらに機械的強度にも優れる枠体を得ることができる。
なお、樹脂製機枠部材の発泡倍率が1.1倍未満である場合には、発泡による軽量化等の効果があまり得られない。一方、樹脂製機枠部材の発泡倍率が2.0倍を超える場合には、樹脂製機枠部材を発泡成形する際に、表面に波打ちが生じるおそれがある。
また、樹脂製機枠部材の発泡倍率は、より好ましくは1.2〜1.6倍とすることができる。
【0019】
第2の発明において、上記キャビティ内に上記溶融樹脂を注入するための樹脂注入口は、上記長尺状突起の形成位置において、該長尺状突起の形成方向に沿って複数個が形成してあることが好ましい(請求項7)。
この場合には、樹脂注入口を形成した部分の周辺の圧力が、他の部分に比べて高いことにより、樹脂注入口を形成した部分の周辺に、溶融樹脂が発泡し難い状態を形成して、長尺状突起の形成位置に低発泡層をより形成し易くすることができる。
【0020】
また、上記第2型部は、上記第1型部に対して上記離隔方向に相対的に可動させるときには、樹脂製機枠部材を発泡成形するキャビティの全体に対応する部分を可動させて、キャビティ全体の容積を拡大させることができる。
これ以外にも、第2型部は、キャビティの一部に対応する部分のみを、第1型部に対して相対的に可動させて、スキン層及び発泡層を含む部分と、スキン層(未発泡層)のみからなる部分とが結合された樹脂製機枠部材を成形することもできる。
【0021】
化学発泡剤の含有量は、所望の発泡倍率が得られるように、用いる化学発泡剤や樹脂の種類に応じて適宜選択されるものであるが、熱可塑性樹脂100質量部に対して化学発泡剤0.05〜5質量部であり、好ましくは0.1〜4質量部、更に好ましくは0.3〜3質量部である。化学発泡剤の含有量が0.05質量部未満である場合には、化学発泡剤の含有量が少なくて、発泡の各セル径を均一にすることが困難になる。一方、化学発泡剤の含有量が5質量部を超える場合には、化学発泡剤の含有量が多くて、化学発泡剤の残渣による金型汚染が生じ、外観に優れた発泡成形体を得ることが困難になる。
溶融状態可塑性樹脂への化学発泡剤の配合方法としては、熱可塑性樹脂組成物のペレットと発泡剤マスターバッチペレットをドライブレンドした後、成形機に供給し、成形機内で樹脂を可塑化させ、金型内で発泡させる方法が好ましく用いられる。また、物理発泡剤を併用してもよい。物理発泡剤としては、具体的には、プロパン、ブタン、水、炭酸ガス等が挙げられる。
【0022】
上記熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、ABS樹脂、AES樹脂、ASA樹脂等のゴム強化ビニル系樹脂、AS樹脂、MAS樹脂等のスチレン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂(PA)、ポリエステル系樹脂、オレフィン系樹脂、エチレン系共重合体等が挙げられる。これらは一種を単独で用いることができ、二種以上を組み合わせて用いることもできる。この中でも、ポリカーボネート樹脂とゴム強化ビニル系樹脂とを混合してなるものを用いることが好ましい。
【0023】
上記樹脂製機枠部材の成形温度は、熱可塑性樹脂の配合等によって適宜選択されるが、本発明においては通常220〜260℃である。
本発明の樹脂製機枠部材は、パチンコ遊技機等の遊技機の機枠として用いることができる他、文房具、家具、間仕切り、玩具等の日用雑貨用品、建築関連資材その他の機枠部材として用いることができる。
【実施例】
【0024】
以下に、本発明の樹脂製機枠部材及びその製造方法にかかる実施例につき、図面を参照して説明する。
本例の樹脂製機枠部材6は、図6、図7に示すごとく、熱可塑性樹脂を発泡成形してなると共に、四角枠形状の樹脂製機枠7を構成する上枠部6A、下枠部6B又は左右の側枠部6Cのいずれかとして用いるものである。樹脂製機枠部材6は、その全表面に、未発泡の熱可塑性樹脂からなるスキン層61を有している。
そして、図5に示すごとく、樹脂製機枠部材6において、スキン層61に対する内側部分には、熱可塑性樹脂を発泡させた高発泡層621と、高発泡層621よりも発泡率が低く、互いに対向するスキン層61の部分同士を繋ぐ低発泡層622とが形成されている。
【0025】
以下に、本例の樹脂製機枠部材6の製造方法につき、図1〜図7を参照して詳説する。
図6、図7に示すごとく、本例の樹脂製機枠7は、パチンコ遊技機において最外形を形成する外枠を構成する機枠として用いる。本例の樹脂製機枠7は、樹脂製機枠部材6によって、上枠部6A、下枠部6B及び左右の側枠部6Cのすべてを形成してなる。上枠部6A、下枠部6B又は左右の側枠部6Cをそれぞれ構成する樹脂製機枠部材6は、4つの内側の角部に配置した金具65によって、四角枠形状を形成する状態に組み付けてある。
【0026】
図5に示すごとく、樹脂製機枠部材6は、四角枠形状の内外周方向Cにおける厚み寸法が、四角枠形状の奥行き方向Dにおける奥行き寸法よりも小さく形成してある。奥行き方向Dにおける中間部(本例では中心部分)には、内外周方向Cに厚みが縮小した厚み縮小部63が樹脂製機枠部材6の長手方向Lに沿って形成してある。本例の厚み縮小部63は、樹脂製機枠部材6の内周方向及び外周方向のいずれにも形成されている。
そして、低発泡層622は、互いに対向するスキン層61の部分同士を厚み縮小部63において繋ぐ状態で形成されている。
【0027】
樹脂製機枠部材6において、低発泡層622は、厚み縮小部63に対応する位置において、高発泡層621を2つに仕切る状態で樹脂製機枠部材6の長手方向Lに平行に連続して形成されている。また、樹脂製機枠部材6において、低発泡層622は、四角枠形状の内周側に位置するスキン層61の部分と、四角枠形状の外周側に位置するスキン層61の部分とを繋ぐ状態で形成されている。
【0028】
本例の製造方法においては、図1〜図4に示すごとく、第1型部2と、第1型部2に対して相対的に可動する第2型部3とを備えた製造装置1を用いて、樹脂製機枠部材6の発泡成形を行う。
図1に示すごとく、第2型部3は、第1型部2に設けたキャビティ形成凹部21内に配置するキャビティ形成凸部31を設けてなる。第1型部2及び第2型部3においては、キャビティ形成凹部21において第1型部2と第2型部3との可動方向Dに平行に形成した内側面211と、キャビティ形成凸部31において可動方向Dに平行に形成した外側面311との間には、溶融樹脂60を充填するための充填用隙間42がキャビティ41Aと連通して形成されている。
【0029】
また、キャビティ形成凹部21の底面212とキャビティ形成凸部31の先端面312との両方には、成形する樹脂製機枠部材6の長手方向Lに直交する断面の中央部分に、長手方向Lに沿って長尺状突起24が形成されている。また、樹脂製機枠部材6における厚み縮小部63は、長尺状突起24に対応する位置に形成される。また、本例の樹脂注入口22は、長尺状突起24の形成位置において長尺状突起24の形成方向に沿って複数個が形成してある。
本例の製造装置1は、化学発泡剤を熱可塑性樹脂に混練してなる溶融樹脂60をキャビティ41A内に充填すると共に充填用隙間42に充填した後、第2型部3を第1型部2に対して離隔方向Rに可動させるよう構成してある。
【0030】
本例の製造装置1を用いた樹脂製機枠部材6の製造方法は、溶融樹脂60を充填したキャビティ41Aの容積を拡大させて、溶融樹脂60を発泡させる方法であり、発泡成形する樹脂製機枠部材6の全表面に、溶融樹脂60がほとんど発泡せずに硬化したスキン層61を効果的に形成することができるものである。
図1、図4に示すごとく、本例の第1型部2は、キャビティ41内に溶融樹脂60を充填するための樹脂注入口22を設けた固定型部である。また、本例の第2型部3は、第1型部2に対して離隔方向Rに可動する可動型部である。
【0031】
また、本例の第2型部3は、第1型部2との間に形成するキャビティ41の容積を1.1〜2.0倍に拡大させるように、第1型部2に対して離隔方向Rへ後退するよう構成してある。そして、本例において発泡成形する樹脂製機枠部材6の発泡倍率は、1.1〜2.0倍である。
図2、図3に示すごとく、本例の製造装置1は、第1型部2に設けた樹脂注入口22に接続して、上記キャビティ41A内に溶融樹脂60を注入するための注入ノズル25を有している。本例の第2型部3は、油圧、空気圧、電力等によって動作する駆動源によって、第1型部2に対して進退する(可動方向Dに移動する)よう構成してある。
【0032】
本例においては、第1型部2及び第2型部3を用いて、略直方体形状であって、四角形状断面を有し、一方向(長手方向L)に長い板形状の樹脂製機枠部材6を発泡成形する。
図4に示すごとく、本例の第2型部3は、キャビティ形成凸部31の先端面312が充填用隙間42の可動方向Dの端部まで移動するまで第1型部2に対して離隔方向Rに可動するよう構成してある。
第2型部3が第1型部2に対する原位置301にあるときには、キャビティ41に連通して、溶融樹脂60を充填するための充填用隙間42が形成される。そして、図1、図2に示すごとく、第2型部3が離隔方向Rに可動する前の原位置301にあるときには、第2型部3と第1型部2との間には、容積が縮小したキャビティ41A及び充填用隙間42が形成されると共に、図4に示すごとく、第2型部3が離隔方向Rに可動した可動位置302にあるときには、第2型部3と第1型部2との間には、容積が拡大したキャビティ41Bが形成される。
【0033】
図1に示すごとく、本例の第1型部2は、キャビティ41における樹脂注入側の表面212(樹脂製機枠部材6の固定側表面を成形するキャビティ形成凹部21の底面)、及び樹脂注入側の表面に直交する全周の側面211(内側面211、樹脂製機枠部材6の全側面を成形する面)を形成するためのキャビティ形成凹部21を有している。本例の第2型部3は、キャビティ41における樹脂受け側の表面312(樹脂製機枠部材6の可動側表面を成形するキャビティ形成凸部31の先端面)、及び樹脂注入側の表面に直交する全周の側面311(外側面311)を形成するためのキャビティ形成凸部31を有している。
第1型部2のキャビティ形成凹部21における内側面211、及び第2型部3のキャビティ形成凸部31における外側面311は、可動方向Dに平行に形成してある。
【0034】
また、同図に示すごとく、本例の第1型部2においてキャビティ形成凹部21を形成する型壁部の開口先端部23の全周には、開口先端部23と第2型部3における外側面311との間を閉塞する閉塞型部5が設けてある。
そして、製造装置1は、第1型部2に対して第2型部3を離隔方向Rに可動させるときには、第2型部3における外側面311が閉塞型部5における内周面51と摺動することにより、充填用隙間42を形成した状態を維持して、キャビティ41Aの容積を拡大させるよう構成してある。
【0035】
また、図4に示すごとく、製造装置1は、第1型部2に対して第2型部3を離隔方向Rに相対的に可動させたときには、第2型部3における先端面312と閉塞型部5における内側端面52とが一致するよう構成してある。そして、上記可動工程において、第1型部2に対して第2型部3を離隔方向Rに可動させたときには、樹脂製機枠部材6の全周の表面にスキン層61を形成すると共に、スキン層61の内側部分に発泡層62を形成することができる。
【0036】
なお、成形する樹脂製機枠部材6の形状によっては、第2型部3における先端面312と閉塞型部5における内側端面52とが一致するまでは第2型部3を離隔方向Rに可動させずに、樹脂製機枠部材6からスキン層61による突出部が突出した形状を形成することもできる。
また、本例の充填用隙間42の幅は適宜変更することができ、充填用隙間42に形成するスキン層61の厚みを適宜変更することができる。
【0037】
次に、上記製造装置1を用いて、樹脂製機枠部材6を製造する方法を詳説する。
本例においては、まず、充填工程として、図2、図3に示すごとく、注入ノズル25に保持する溶融樹脂60を、第1型部2における樹脂注入口22から縮小した状態のキャビティ41A内に注入する。このとき、溶融樹脂60は、キャビティ41Aから充填用隙間42へと流入し、縮小した状態のキャビティ41A及び充填用隙間42の全体に溶融樹脂60が充填される。そして、第1型部2のキャビティ形成凹部21の底面212及び内側面211と、第2型部3のキャビティ形成凸部31の先端面312及び外側面311に接触する溶融樹脂60の部分は、他の溶融樹脂60の部分(キャビティ41の内部(内側部分)における溶融樹脂60の部分)よりも早く冷却硬化して半硬化状態のスキン層61が形成される。そのため、キャビティ41における接触表面だけでなく、充填用隙間42における接触表面にも、溶融樹脂60が半硬化して未発泡のスキン層61が形成される。
【0038】
次いで、可動工程として、図4に示すごとく、第1型部2に対して第2型部3を離隔方向Rに可動させる。このとき、充填用隙間42内に充填されて硬化した溶融樹脂60によるスキン層61に対して、第2型部3のキャビティ形成凸部31における外側面311が摺動し、このスキン層61の内側部分に溶融樹脂60が流入して発泡する。また、第1型部2のキャビティ形成凹部21における樹脂注入側の表面212、及び第2型部3のキャビティ形成凸部31における樹脂受け側の表面312に形成されたスキン層61の内側部分にも溶融樹脂60が流入して発泡する。
【0039】
こうして、樹脂製機枠部材6の内部(内側部分)に溶融樹脂60が発泡した発泡層62を形成すると共に、樹脂製機枠部材6の全表面にスキン層61を形成することができる。そのため、全表面に安定してスキン層61を形成することができ、発泡成形した樹脂製機枠部材6の機械的強度を効果的に向上させることができる。
また、樹脂製機枠部材6の内部(内側部分)においては、キャビティ形成凹部21の底面212とキャビティ形成凸部31の先端面312とに形成した長尺状突起24に対応する部分には、互いに対向するスキン層61の部分同士を繋ぐ状態で発泡倍率が低い低発泡層622が形成され、その他の部分には、低発泡層622よりも発泡倍率が高くなった高発泡層621が形成される。
【0040】
成形した樹脂製機枠部材6においては、低発泡層622がスキン層61の部分同士を支えることができ、低発泡層622の形成により、樹脂製機枠部材6の機械的強度を向上させることができる。
なお、低発泡層622が形成される理由は、キャビティ形成凹部21の底面212とキャビティ形成凸部31の先端面312とにおいて、長尺状突起24を形成した部分のキャビティ41の可動方向Dの幅(厚み方向の幅)が狭くなって、溶融樹脂60の冷却が早く進み、溶融樹脂60の粘度が高くなるため、溶融樹脂60が発泡し難い状態が形成されるためであると考える。
また、複数個の樹脂注入口22を長尺状突起24の形成方向に沿って形成したことにより、複数個の樹脂注入口22を形成した部分の周辺は、他の部分に比べて圧力が高く、溶融樹脂60が発泡し難いため、長尺状突起24の形成部位に低発泡層622をより形成し易くできると考える。
【0041】
それ故、本例の樹脂製機枠部材6の製造方法によれば、高発泡層621の形成により軽量化を図ることができると共に、全表面へのスキン層61の形成及び低発泡層622の形成により、機械的強度を向上させることができる樹脂製機枠部材6を容易に製造することができる。
【0042】
本例の熱可塑性樹脂としては、芳香族ポリカーボネート樹脂とゴム強化スチレン系樹脂とを混合してなるものを用いた。
そして、本例においては、樹脂成形を行う所定の温度において、粘度が高い芳香族ポリカーボネート樹脂の存在により、発泡によるセル径をできるだけ均一にすることができ、樹脂製機枠部材6の外観を向上させることができる。また、樹脂成形を行う所定の温度において、芳香族ポリカーボネート樹脂よりも粘度が低いゴム強化スチレン系樹脂の存在により、樹脂製機枠部材6の表面に安定してスキン層61を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】実施例における、第1型部及び第2型部を有する製造装置を示す断面説明図。
【図2】実施例における、充填工程において、キャビティ及び充填用隙間内に溶融樹脂を充填した状態を示す断面説明図。
【図3】実施例における、充填工程において、キャビティ及び充填用隙間内に溶融樹脂を充填した状態を、図2と直交する方向から見た状態で示す断面説明図。
【図4】実施例における、可動工程において、第1型部に対して第2型部を可動させて、キャビティ内に樹脂製機枠部材を成形した状態を示す断面説明図。
【図5】実施例における、樹脂製機枠部材を示す断面説明図。
【図6】実施例における、樹脂製機枠を正面から見た状態で示す説明図。
【図7】実施例における、樹脂製機枠部材を示す斜視説明図。
【符号の説明】
【0044】
1 製造装置
2 第1型部
21 キャビティ形成凹部
211 内側面
212 底面
22 樹脂注入口
24 長尺状突起
3 第2型部
31 キャビティ形成凸部
311 外側面
312 先端面
41A、B キャビティ
42 充填用隙間
6 樹脂製機枠部材
60 溶融樹脂
61 スキン層
62 発泡層
621 高発泡層
622 低発泡層
7 樹脂製機枠
L 長手方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂を発泡成形してなると共に、四角枠形状の樹脂製機枠を構成する上枠部、下枠部又は左右の側枠部のいずれかとして用いる樹脂製機枠部材であって、
該樹脂製機枠部材は、その全表面に、未発泡の熱可塑性樹脂からなるスキン層を有しており、
該スキン層に対する内側部分には、熱可塑性樹脂を発泡させた高発泡層と、該高発泡層よりも発泡率が低く、互いに対向する上記スキン層の部分同士を繋ぐ低発泡層とが形成されていることを特徴とする樹脂製機枠部材。
【請求項2】
請求項1において、上記低発泡層は、上記高発泡層を2つに仕切る状態で上記樹脂製機枠部材の長手方向に平行に連続して形成されていることを特徴とする樹脂製機枠部材。
【請求項3】
請求項2において、上記低発泡層は、上記四角枠形状の内周側に位置する上記スキン層の部分と、上記四角枠形状の外周側に位置する上記スキン層の部分とを繋ぐ状態で形成されていることを特徴とする樹脂製機枠部材。
【請求項4】
請求項3において、上記樹脂製機枠部材は、上記四角枠形状の内外周方向における厚み寸法が、上記四角枠形状の奥行き方向における奥行き寸法よりも小さく形成してあると共に、該奥行き方向における中間部には、上記内外周方向に厚みが縮小した厚み縮小部を当該樹脂製機枠部材の長手方向に沿って形成してなり、
上記低発泡層は、互いに対向する上記スキン層の部分同士を上記厚み縮小部において繋ぐ状態で形成されていることを特徴とする樹脂製機枠部材。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項において、上記各枠体における上記高発泡層及び上記低発泡層の発泡倍率は、1.1〜2.0倍であることを特徴とする樹脂製機枠部材。
【請求項6】
請求項1〜5に記載の樹脂製機枠部材を、第1型部と、該第1型部に対して相対的に可動する第2型部とを用い、該第2型部と上記第1型部との間に形成したキャビティ内に、化学発泡剤を熱可塑性樹脂に混練してなる溶融樹脂を充填し、上記第1型部と上記第2型部とを上記キャビティの容積が拡大する離隔方向に相対的に可動させて製造する方法であって、
上記第2型部には、上記第1型部に設けたキャビティ形成凹部内に配置するキャビティ形成凸部を設け、
上記キャビティ形成凹部の底面と上記キャビティ形成凸部の先端面との少なくとも一方には、成形する上記樹脂製機枠部材の長手方向に直交する断面の中央部分に、上記長手方向に沿って長尺状突起を形成し、
上記キャビティ形成凹部において上記第1型部と上記第2型部との可動方向に平行に形成した内側面と、上記キャビティ形成凸部において上記可動方向に平行に形成した外側面との間には、上記溶融樹脂を充填するための充填用隙間を上記キャビティと連通して形成しておき、
上記キャビティ内及び上記充填用隙間に充填した上記溶融樹脂を半硬化させて未発泡のスキン層を形成し、
次いで、上記第1型部と上記第2型部とを上記離隔方向に相対的に可動させて、上記スキン層に対する内側部分に、溶融樹脂を発泡させた高発泡層と、該高発泡層よりも発泡率が低く、上記スキン層の部分同士を繋ぐ低発泡層とを形成し、該低発泡層は、上記長尺状突起に対応する部分に形成すると共に、上記高発泡層は、他の部分に形成することを特徴とする樹脂製機枠部材の製造方法。
【請求項7】
請求項6において、上記キャビティ内に上記溶融樹脂を注入するための樹脂注入口は、上記長尺状突起の形成位置において、該長尺状突起の形成方向に沿って複数個が形成してあることを特徴とする樹脂製機枠部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−35903(P2010−35903A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−203961(P2008−203961)
【出願日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(396021575)テクノポリマー株式会社 (278)
【Fターム(参考)】