説明

橋形クレーン

【課題】輸送時にAフレームを倒伏させることができ、かつ設置後においてAフレームの支持強度が低下することがない橋形クレーンを提供する。
【解決手段】橋形クレーンは、一対の前脚3と一対の後脚4とからなる脚部5の上部にガーダ6を配設し、前記一対の前脚3の上端にAフレーム9を立設した橋形クレーンにおいて、前記Aフレーム9の頂部と後脚4の上端とを支柱を介して接続し、Aフレーム9と支柱との接続を回動自在にすると共に、後脚4の上端と支柱との接続を着脱可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は橋形クレーンに関し、更に詳しくは輸送時における高さ制限を満たすようにAフレームを倒伏可能にした橋形クレーンに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、物流の合理化のためにコンテナを用いた輸送が盛んに行われており、埠頭などに設けられたコンテナヤードにおいては、大型のコンテナ用クレーンを用いてのコンテナの荷役作業が頻繁に行われている。このうちコンテナ船と陸上との間におけるコンテナの荷役作業には、ポーテーナ(パセコ社の登録商標)などのコンテナクレーン(橋形クレーン)が用いられている。橋形クレーンは、図7に示すように、岸壁24に沿って走行する走行装置8の上に設置された脚部5の上部に、先端に上下に回動可能なブーム7が取り付けられたガーダ6を略水平に配設した構造を有しており、コンテナ船26の接岸時にはブーム7を水平位置に保持することで、トロリー25をコンテナ船26の上方まで横行させてコンテナ27の吊り上げ/吊り下げを行うものである。このブーム7は、脚部5の上に立設されたAフレーム9によりフォアステー10を介して水平に保持される。
【0003】
ところで、このような橋形クレーンを岸壁24に設置する際には、現地作業の簡素化及び納期の短縮化の観点から、組み立て済みの橋形クレーンを製造工場から設置場所へ船舶で直接輸送するのが一般的である。しかし、海上輸送において船舶が橋梁の下を通過するような場合には、衝突を防止するため輸送物は規定の高さ制限を満たす必要がある。そのため、橋形クレーンの高さが、この高さ制限を超えてしまう場合には、船舶による橋形クレーンの輸送が不可能になってしまうという問題がある。
【0004】
このような問題を解決するためには、図8のように橋形クレーンの上部構造物であるAフレーム9を倒伏可能な構造にして、輸送時にはAフレーム9を倒して橋形クレーンの高さを低くできるようにすることが考えられる。例えば、非特許文献1は、Aフレーム9と脚部5の接続部の構造を、図9のようなピン結合構造にすることで、Aフレーム9をブーム7へ向けて倒れるようにすることを提案している。
【0005】
しかし、上記のようなピン結合構造を用いると、橋形クレーンの設置後においてはピン28のみを介してAフレーム9と脚部5とが接続されることになるため、Aフレーム9を支持する強度が低下してブーム7を保持することができなくなり、コンテナ27の荷役作業に支障をきたすおそれがある。
【非特許文献1】Container Crane Transport. [online]. Liftech Consultants Inc., May 12, 2006. 16th Biennial Marine Seminar. [retrieved on 2008-01-22]. Retrieved from the Internet:<URL:http://www.liftech.net/LiftechPublications/cranetransport.pdf>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、輸送時にAフレームを倒伏させることができ、かつ設置後においてAフレームの支持強度が低下することがない橋形クレーンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成する本発明の橋形クレーンは、一対の前脚と一対の後脚とからなる脚部の上部にガーダを配設し、前記一対の前脚の上端にAフレームを立設した橋形クレーンにおいて、前記Aフレームの基端部を前記前脚の上端にヒンジを介して倒伏可能に接続したことを特徴とするものである。
【0008】
上記の橋形クレーンにおいては、Aフレームの頂部と後脚の上端とを支柱を介して接続し、Aフレームと支柱との接続を回動自在にすると共に、後脚の上端と支柱との接続を着脱可能にすることが望ましい。更に、支柱における後脚との接続部近傍に、ガーダ上を走行可能な車輪を設置し、その車輪が走行可能なレールをガーダの上面に敷設することが望ましい。
【0009】
ガーダの端部にブームを枢着し、そのブームがガーダと連続するようにブームの先端部とAフレームの頂部とを直列に連結された複数のステーを介して接続するのがよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の橋形クレーンによれば、脚部の前脚の上端とAフレームの基端部とをヒンジを介して接続したので、橋形クレーンの輸送時にはヒンジを開くことによりAフレームを倒伏させることができ、設置後においてはヒンジを閉じることでAフレームと前脚とをヒンジの羽根板を介して面接触した状態で接続して固定することができるため、Aフレームの支持強度が低下することはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0012】
図1〜3は、本発明の実施形態からなる橋形クレーンの例を示す。
この橋形クレーンは、水平材1及び脚斜材2により連結補強された一対の前脚3と一対の後脚4からなる鉄骨製の脚部5の上部に、2本のガーダ6を略水平になるように配設し、それらガーダ6の一端部にブーム7を上下に回動自在となるように接続したものである。前脚3と後脚4の基端部には、橋形クレーンを走行させるための走行装置8がそれぞれ設置されている。なお、ここでは橋形クレーンを岸壁に設置する際に、海側に位置するのを前脚3、陸側に位置するのを後脚4と呼んでいる。
【0013】
前脚3の上端には、Aフレーム9が立設され、そのAフレーム9の頂部9aには、ブーム7を保持するフォアステー10と、ガーダ6の他端部を保持するバックステー11とが接続されている。これらフォアステー10とバックステー11は、複数本の長尺の鋼材をリンクを介して直列に接続して構成されている。
【0014】
また、Aフレーム9の頂部9aと後脚4の上端とは、それぞれガーダ6の上方に位置する2本の支柱12を介して接続されている。それらの支柱12とAフレーム9の頂部9aとの接続部13は、支柱12がAフレーム9に対して回動可能となるようにピン結合構造となっている。また、後脚4と支柱12との接続部14は、支柱12から後脚4を切り離せるような構造、例えばピンを着脱可能にしたピン結合構造となっている。更に、ガーダ6上には橋形クレーン各部のワイヤ等を操作するための動力を供給する機械室15が設置されている。
【0015】
このような橋形クレーンにおいて、前脚3の上端部とAフレーム9の基端部とは、図4に示すように、ヒンジ16を介して接続されている。ヒンジ16は2枚の羽根板17a、17bの端縁部を心棒18により回動自在に接続した構造を有しており、心棒18がブーム7側に位置するようにして、一方の羽根板17aにはAフレームの基端部が、他方の羽根板17bには前脚の上端部が、それぞれ溶接により接続固定されている。従って、ヒンジ16を開閉することで、Aフレーム9を起立させたり、ブーム7側に倒したりすることが可能となる。
【0016】
このように、脚部5の前脚3の上端とAフレーム9の基端部とをヒンジ16を介して接続するようにしたので、橋形クレーンの輸送時には、ヒンジ16を開くことによりAフレーム9をブーム7側に倒すことができ、それにより橋形クレーンの高さを低くすることができる。また、橋形クレーンの設置後においては、ヒンジ16を閉じることでAフレーム9と前脚3とをヒンジ16の羽根板17a、17bを介して面接触した状態で接続し、それら羽根板17a、17b同士をボルトや溶接などにより接続固定することができるため、Aフレーム9の支持強度が低下することはない。
【0017】
この橋形クレーンのAフレームの倒伏作業の手順の一例を、図5及び6に基づき以下に説明する。
【0018】
まず、準備作業として、図5に示すように、後脚4の近傍の適当な位置にウィンチ19を設置して、ドラムに巻き回したワイヤロープ20の先端をAフレーム9の頂部9aに固定する。また、支柱12の下端部に車輪21を設置すると共に、ガーダ6上に後脚4から前脚3へ向けて延びるレール22を敷設し、その端部にストッパ23を設ける。なお、フォアステー10及びバックステー11(図示せず)については、必要に応じてリンクを切り離して分解して適当な場所に収納しておく。また、ブーム7はガーダ6から取り外しておくか、輸送用船舶上や橋形クレーン上に新たに設置した固定柱でブーム7の自重を受けるなどの手段により保持するようにする。
【0019】
まず、後脚4と支柱12との接続部14においてピンを抜き取るなどして支柱12を後脚4から切り離す。そして、ウィンチ19からワイヤロープ20を徐々に繰り出すと、図6に示すように、Aフレーム9がブーム7側へ向けて倒れ始める。このとき支柱12についても、下端部の車輪21がレール22上を走るようにすることで、Aフレーム9に追随させてスムーズに傾けることができる。このようにして、支柱12の下端部の車輪21がストッパ23に当たるまでワイヤロープ20を繰り出すことで、Aフレーム9をブーム7側へ所定の角度まで傾けることができる。
【0020】
橋形クレーンの岸壁等への設置後においては、上記と逆の手順によりAフレーム9を起立させ、ヒンジ16の羽根板17a、17b同士をボルトや溶接などにより接続固定した後に、支柱12を後脚4に接続してからフォアステー10及びバックステー11を取り付けるようにする。
【0021】
なお、本実施形態においては、ガーダ6及び支柱12の本数をそれぞれ2本としているが、これらの本数は橋形クレーンの大きさや要求性能により1本又は3本以上に適宜変更され得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態からなる橋形クレーンの側面図である。
【図2】本発明の実施形態からなる橋形クレーンの正面図である。
【図3】本発明の実施形態からなる橋形クレーンの上面図である。
【図4】図1に示すX部の拡大図である。
【図5】図1に示すY部の拡大図であって、Aフレームを倒伏する手順のうち準備段階を示す説明図である。
【図6】図1に示すY部の拡大図であって、Aフレームを倒伏する手順のうち作業段階を示す説明図である。
【図7】従来の橋形クレーンによるコンテナ荷役作業を説明する側面図である。
【図8】従来の橋形クレーンにおけるAフレームの倒伏を示す側面図である。
【図9】図8に示すZ部の拡大図である。
【符号の説明】
【0023】
1 水平材
2 脚斜材
3 前脚
4 後脚
5 脚部
6 ガーダ
7 ブーム
8 走行装置
9 Aフレーム
10 フォアステー
11 バックステー
12 支柱
13 支柱とAフレームの結合部
14 支柱と後脚の結合部
15 機械室
16 ヒンジ
17 羽根板
18 心棒
19 ウィンチ
20 ワイヤロープ
21 車輪
22 レール
23 ストッパ
24 岸壁
25 トロリー
26 コンテナ船
27 コンテナ
28 ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の前脚と一対の後脚とからなる脚部の上部にガーダを配設し、前記一対の前脚の上端にAフレームを立設した橋形クレーンにおいて、
前記Aフレームの基端部を前記前脚の上端にヒンジを介して倒伏可能に接続した橋形クレーン。
【請求項2】
前記Aフレームの頂部と前記後脚の上端とを支柱を介して接続し、前記Aフレームと前記支柱との接続を回動自在にすると共に、前記後脚の上端と前記支柱との接続を着脱可能にした請求項1に記載の橋形クレーン。
【請求項3】
前記支柱における前記後脚との接続部近傍に、前記ガーダ上を走行可能な車輪を設置した請求項2に記載の橋形クレーン。
【請求項4】
前記車輪が走行可能なレールを前記ガーダの上面に敷設した請求項3に記載の橋形クレーン。
【請求項5】
前記ガーダの端部にブームを枢着し、該ブームが該ガーダと連続するように該ブームの先端部と前記Aフレームの頂部とを直列に連結された複数のステーを介して接続した請求項1〜4のいずれかに記載の橋形クレーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−242051(P2009−242051A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−90278(P2008−90278)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)