説明

機器の搬出及び搬入方法

【課題】施設内の高さや幅の制限がある空間に固設された機器の取外し及び搬出や新たな機器の搬入及び据付けを、多くの装置や高い技術を要することなく、施設や機器に損傷を与えずに効率よく短時間で作業する機器の搬出及び搬入方法を提供する。
【解決手段】熱交換器110の取外し及び搬出作業は、先ず第1の工程で基礎100の固定を解除してから、熱交換器110を昇降手段16で上昇させる。次に、第2の工程でランウエイ12を熱交換器110の下に設置して、第3の工程でランウエイ12上にエアパレット14,14を配置して固定部材34,34で熱交換器110の下面に固定する。次に、第4の工程で熱交換器110を下降させてから、エアパレット14を駆動させてランウエイ12上で走行させる。次に、第5の工程で熱交換器110を昇降手段16で上昇させてランウエイ12を撤去して、第6の工程で熱交換器110を下降させて搬出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は機器の搬出及び搬入方法及び装置に係り、特に発電所等の高さ規制のある施設内の入り組んだ箇所に基礎に固設された大型重量物である機器を取外し及び搬出を行ない、該入り組んだ箇所に大型重量物である機器を搬入及び据付けを行なうための機器の搬出及び搬入方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発電所等の施設において、加熱器やタービンユニット等の重量が数10トン〜100トン程度に達する大型重量物である機器を老朽化により交換する場合や新たに設置する場合に、施設内の設備や機器等に対して損傷を与えないように考慮しながら行なう必要がある。
【0003】
従来、この種の大型重量物である機器の搬出及び搬入方法としては、機器の設置箇所から搬入及び搬出を行なう搬送経路にレールを敷設し、レール上にコロを介して載置された受け台に機器を搭載して走行移動させる方法が一般的である。このとき、レールの敷設は、床盤スラブ上に足場板を敷いて、形鋼レールを設置固定し、レール上に板敷をして行なわれる。又、受け台としては、上面に台座を形成して搬送する機器を安定して搭載可能なものが使用され、複数のコロを下部に敷き、受け台に固定された機器をウインチ等によって牽引することにより搬送作業が行なわれる。
【0004】
又、特許文献1〜3のように、エア吹出を下方に向けてエア層を形成させる空気袋を複数備えたエアパレットを用いて機器の搬送を行なう搬送方法も提案されている。これにより、搬送される機器はエアパレットによってエア浮上した状態となるため、少ない荷重で搬送作業を行なうことができる。
【特許文献1】特開昭52−88916号公報
【特許文献2】特開平6−171727号公報
【特許文献3】特開平10−310247号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、発電所等の施設における機器の設置箇所は、スペースの効率よく利用するために狭く入り組んだ空間に設置されている場合が多いため、施設内の老朽化した機器を新しい機器に交換する場合に、その搬出及び搬入作業を行なうための高さや幅に制限が生じる。従って、上述した従来の機器搬送方法では搬出及び搬入に多くの工数が必要とされる上に、搬送によって施設や機器等が損傷する可能性が高いという問題があった。
【0006】
特許文献1〜3では、高さの低いエアパレットを用いているので、搬送に要する高さや幅を低減できるので、上述した問題を解消することができる。しかしながら、機器の設置箇所には、機器を安定した状態で固設するための基礎が床面から突出しているのが一般的である。そのため、特許文献1〜3では、その基礎によって機器の搬出及び搬入作業が妨げられてしまい、機器の搬出及び搬入作業に多くの工数を要するという欠点があった。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、施設内の高さや幅の制限がある空間に固設された機器の取外し及び搬出作業及び新たな機器の搬入及び据付け作業を、多くの装置や高い技術を要することなく、施設や機器に損傷を与えずに効率よく短時間で行なうことができる機器の搬出及び搬入方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は前記目的を達成するために、施設内の基礎に固設されている機器の取外し及び搬出作業を行なうと共に、前記機器が取り外されて搬出された位置又は前記施設内の所定の位置に、新たな機器の搬入及び据付け作業を行なう機器の搬出及び搬入方法において、前記機器の取外し及び搬出作業は、前記機器に対する前記基礎の固定を解除すると共に、前記機器を昇降可能な昇降手段を用いて所望する高さまで上昇させる第1の工程と、前記基礎との干渉を防止した機能を有し、且つ所望する位置まで搬送可能な長さを有すると共に平坦な板材で構成されるランウエイを前記機器の下方に設置する第2の工程と、前記ランウエイと前記機器との間に、上面から下面へエアを吹き出すことによってエア浮上可能な構造を有するエアパレットを前記機器の下面に固定する第3の工程と、前記昇降手段によって上昇している機器を下降させた後、前記エアパレットを駆動させて前記機器を前記ランウエイ上で前記所望する位置まで滑走させる第4の工程と、前記所望する位置に到達した機器を前記昇降手段により所望する高さに上昇させて、前記機器の下側に設置されたランウエイを撤去する第5の工程と、前記昇降手段により上昇した機器を下降させて、前記施設内から搬出する第6の工程と、の順で行なわれ、前記新たな機器の搬入及び据付け作業は、前記第6の工程から第1の工程の順で行なわれることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、施設内の高さや幅に制限のある位置に基礎を介して固設されている機器を取り外して搬出する場合に、先ず、第1の工程では、機器に対する基礎の固定を解除すると共に、昇降手段を用いて所望する高さまで機器を安定した状態で上昇させる。この昇降手段によって機器を上昇させて安定して保持する際に、後述するランウエイ及びエアパレットを挿入可能な高さにすることが好ましい。
【0010】
次に、第2の工程では、平坦な板材から構成されるランウエイが機器の下に所望する位置まで搬送可能な長さまで設置される。ここで述べる所望する位置まで搬送可能な長さとしては、機器が設置された位置から、機器を搬出可能なスペースがある施設内の通路等までの位置までの長さのことをいう。このとき、第1の工程において床面と機器との隙間が形成されているため、ランウエイをスムーズに設置することができる。又、設置されたランウエイは、平坦な板材から構成されている上に基礎との干渉を防止した機能を有しているので、段差や障害物のない搬送経路を機器の下側に形成することができる。
【0011】
次に、第3の工程では、ランウエイと機器との間にエアパレットを配置して、このエアパレットを固定部材で機器の下面に固定する。ここで使用されるエアパレットは、外部から圧縮エアを供給することで下面からエアを吹き出してエア浮上可能な構造を有したものが使用される。
【0012】
次に、第4の工程では、昇降手段によって上昇している機器を下降させてランウエイ上に着地させる。次に、エアパレットの駆動によりエアパレットへ圧縮エアを供給することでエアパレットが浮上する。その後、エアパレットの圧縮エアの供給量を調整して機器を水平にしてランウエイ上の所望する位置まで滑走させる。このエア浮上によって、エアパレット上の質量に対する数%の牽引力又は押出力で移動させることができるので、牽引装置等の特殊な装置等を使用せずに手作業で簡易に滑走させることができる。又、エアパレットの下方は、ランウエイによって基礎との干渉がない平坦な搬送経路が形成されているため、効率のよいエア浮上が可能となる上、機器の滑走時に基礎との接触を防止することができる。
【0013】
次に、第5の工程で、所望する位置(即ち、ランウエイの一端までの位置)に到達した機器を昇降手段で所望する高さ(即ち、ランウエイの撤去可能な高さ)に上昇させて、機器の下側に設置されたランウエイを撤去する。こうして、施設内の通路等の搬送可能な位置で機器を受け台及びエアパレットを介して床面に下ろすことができる。従って、第6の工程で昇降手段により上昇した機器を下降させて、機器を施設内から搬出すれば、全作業が完了する。このとき、機器はエアパレットのエア浮上によって施設内の床面上を滑走可能であるため、特殊な装置等を用いることなく施設内の通路等を使用して搬出することができる上、機器を搬送させる通路等が入り組んだ構造であっても簡易に方向転換が可能となるため、搬出時の損傷を防止することができる。
【0014】
一方、機器が取り外されて搬出された位置又は施設内の所定の位置に、新たな機器の搬入及び据付けを行なう場合にも、上述した機器の撤去及び搬出作業を逆の手順で行なわれる。このとき、設置する機器の位置決めを行なう際に、エアパレットは従来の機器搬送方法で使用されるコロ類と異なり、縦、横、斜め方向に対して位置の微調整を手作業による力で行なうことができるため、基礎側ボルト位置に機器の固定位置を合わせる微調整を簡易且つ正確に行なうことができる。
【0015】
従って、本発明を採用することにより、高さや幅に制限がある位置に設置された機器の取外し及び搬出を行なう作業や、新たな機器を高さや幅に制限がある位置への搬入及び据付け作業を施設や機器に損傷を与えることなく簡易且つ短時間で行なうことができる。
【0016】
又、本発明において、請求項1に記載のランウエイは、長さ方向及び幅方向に対して隙間なく着脱可能な構造を有し、且つ前記基礎に該当する箇所が該基礎の形状に沿って形成される複数のランウエイ・ユニットから構成され、該ランウエイ・ユニットは、引き込み式の車輪を有すると共に、上方からのエア漏れを防止する機能を備えた走行自在な車輪部が下面に設けられていることが好ましい。
【0017】
本発明では、ランウエイを形成する複数のランウエイ・ユニットが隙間なく平坦に着脱可能な構造を有しているため、ランウエイを所望する長さや幅に自在に調整することができる。このとき、エアパレットから吹き出されたエアがランウエイ・ユニット同士の連結部から漏れることを防止できるので、エアパレットによるエア浮上を安定化させることができる。その上、基礎の位置に該当する箇所のランウエイ・ユニットは、基礎の形状に沿って形成されているため、ランウエイを形成することによって基礎と干渉させることのない平坦な滑走経路を提供することができる。又、ランウエイは、ランウエイ・ユニットの下面に設けられた車輪部によって床面上を走行させることができると共に、この車輪部は車輪をランウエイ・ユニットの下面に引き込ませる構造を有している所定の位置まで速やかに移動させて安定した状態で設置することができる。これにより、第2及び第5の工程におけるランウエイの設置及び撤去作業を効率よく行なうことができる。又、この車輪部は、上面がエア漏れを防止する機能を有しているため、エアパレットから吹き出されたエアを車輪部の箇所から漏れることを効果的に防止できるので、エアパレットによるエア浮上を安定化させることができる。
【0018】
更に、本発明において、請求項1に記載の昇降手段は、前記機器の下面に着脱可能に固定でき、該下面の形状に対応する形状を有する複数のビーム部材と、前記ビーム部材を介して前記機器をシリンダによる垂直方向への伸縮によって所望する高さに昇降させるジャッキと、から構成されることが好ましい。これにより、機器を安定した状態で昇降可能な上、昇降作業の省スペース化を図ることができるので、機器の昇降に特に複雑な設備等を要することなく高さや幅に制限のある位置での作業性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように本発明に係る機器の搬出及び搬入方法によれば、従来では熟練度が要求される上に、多くの工数や人手を要する作業を複雑な装置や部材を用いることなく短時間で簡易に実施できるので、作業の行なう設備の運転停止時間を大幅に削減することができる。又、作業空間に高さや幅に制限がある場合でも、搬送時に設備や機器を損傷することも防止できる上、短時間で正確な位置に機器を設置することができるので、作業後の設備や機器の不具合を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下添付図面に従って本発明に係る機器の搬出及び搬入方法の好ましい実施の形態について詳説する。
【0021】
図1は、本発明の機器の搬出及び搬入方法を好適に用いた機器搬出搬入装置10の構成を説明する透明斜視図であり、本発明の第3の工程において施設内の基礎100,100…に固設された機器110に対して装着した状態を示している。
【0022】
同図の如く、機器搬出搬入装置10は、ランウエイ12と、2台のエアパレット14,14と、昇降手段16, 16…と、から構成される。ランウエイ12は、施設内に基礎100,100…を介して固定される機器110の下側に配置され、機器110の設置箇所から施設内の比較的広いスペースの距離まで設置される。一方、エアパレット14,14は、ランウエイ12の上で機器110の下に配置され、機器110の長手方向に対して機器110の重心に合わせてバランスよく配置することが好ましい。昇降手段16, 16…は、機器110の下側のエアパレット14,14とは異なる位置に配置され、機器110の下側の形状に対応した形状を有し、機器110の外周に懸け渡されたワイヤ36,36を介して固定されているビーム部材18,18…と、そのビーム部材18,18…の両端の下側に配置され、垂直方向に伸縮自在のシリンダ19から構成されるジャッキ20,20…と、から構成される。尚、この昇降手段16,16は、機器110の重心バランスを考慮して配置する必要があるが、特に図示した配置、形状、及び個数に限定されるものではない。
【0023】
図2は、図1に示したランウエイ12の一部の構成を示した説明図であり、図2Aはランウエイ12の上面図を示し、図2Bはランウエイ12をB−B線に沿って切断した断面図を示し、図3Cはランウエイ12を構成するランウエイ・ユニット22に設けられた車輪部24の構造を拡大した側面断面図を示している。
【0024】
同図の如く、ランウエイ12は、複数のランウエイ・ユニット22, 22…を必要とする長さ及び幅に連結することによって構成される。
【0025】
ランウエイ・ユニット22は、所定の長さ及び幅を有する平坦な矩形状の板材であり、その側面部はランウエイ・ユニット22,22同士を隙間なく着脱可能な構造を有している。その構造としては、ランウエイ・ユニット22を上方から見たときの縦及び横方向において、例えば長さが同一な側面同士を図示しない固定用ロッドで側面又は上面から簡易に固定可能な構造を有することが好ましく、その側面表面がゴムでコーティングされているものが好ましいが、特に限定するものではない。
【0026】
又、基礎100,100…の位置に該当する箇所のランウエイ・ユニット22’,22’…は、基礎100,100…の形状に沿って形成されている。即ち、図3Bに示すように、基礎100,100…の位置に該当する箇所が基礎100,100…の形状に沿って凹んだ形状を備えている。
【0027】
又、各ランウエイ・ユニット22,22…は、下面の四隅に滑走自在な車輪部24,24…が設けられている。図3Cに示すように、この車輪部24は、ランウエイ・ユニット22の下面に形成された凹部24a内に、車輪24bを水平方向に回転自在に支持するシャフト24cによって設置されており、そのシャフト24cが伸縮することにより、車輪24bをランウエイ・ユニット22の底面から内部に引き込む構造を有している。又、シャフト24cが設置されたランウエイ・ユニット22の上面には、エア漏れ防止可能な機密性の高いシール部材24dが貼付されている。上記の如く構成される車輪部24は、貼付されたシール部材24dを取り外して、シャフト24cの固定を緩めて上下に移動させることによって、車輪24bの凹部24aへの引き出し又は引き込みを行なう。この作業が終了した後は、必ずシール部材24dを取り付けてエアの漏出を防止する。
【0028】
図3は、図1のエアパレット14の詳細な構造を示した説明図であり、図3Aはエアパレットの上面図を示し、図3Bは側面図を示している。
【0029】
同図の如く、エアパレット14は、矩形状を有するフレーム26の下方に、中央に孔28aが形成された空気袋28,28…が4つ配置されている。フレーム26の側面には、コンプレッサ等の圧縮エア供給手段(不図示)と接続するエア配管30が周回して設けられ、このエア配管30から各空気袋28,28…へ接続する接続管32,32…が分岐されている。これにより、エアパレット14を駆動すると、図示しない圧縮エア供給手段からの圧縮エアの供給が開始され、空気袋28,28…の孔28a,28a…から下方に向かって圧縮エアが吹き出されるので、図3Bから見て当初ハ字状に浮き上がる構造を有している。尚、各空気袋30にアキュームレータ30aを設けてエアの脈動を抑制すると共に、接続管32に流量調整弁32aを設けて各空気袋30,30…の水平度を調整できる構造であることが好ましいが、特に限定するものではない。又、フレーム26上には、積載する機器110に対してワイヤ36,36を懸け渡してエアパレット14上に固定するための固定部材34,34…が設けられ、その形状は積載する機器110の下面に対応する形状を有している。尚、この固定部材34,34…は、搭載する機器110との接触面をゴム等の保護材で構成することが好ましい。
【0030】
次に、上記の如く構成された機器搬出搬入装置10を使用して発電設備100の熱交換器110を搬出及び搬入する場合を例に挙げて、本発明における機器110の搬出及び搬入方法の工程について図4を用いて説明する。
【0031】
従来、発電設備のような施設では、内部のスペースを有効利用するために熱交換器110等の各機器の間隔等を人が通過可能な程度の必要最低限のスペースで配置されることが多い上に、図4Aに示すように各機器110等は施設の床面に設けられた基礎100,100…に安定して固設されている。しかしながら、長期運転による老朽化や故障した機器や、定期交換が義務付けられている機器110を交換する必要が生じてしまうと、機器の撤去や交換を行なうための作業空間に制限が生じてしまうため、特に機器が大型の重量物である場合に、老朽化した機器を取り外して搬出する作業や、新しい機器を搬入して据え付ける作業に要する労力や時間が増大するばかりでなく、その作業に携わる作業者に高い熟練度が要求される。その上、従来のコロ類を用いたりクレーン等で吊り上げたりして実施する方法では、搬送中の機器110が基礎100,100…や他の機器110、施設の基礎100,100…や側壁等に接触して損傷する可能性が高い。従って、機器110の損傷を確実に防止するためには、従来では機器110を分解して搬出及び搬入を行なわなければならず、多くの工数や時間を要してしまい、施設の運転停止時間が増大するという問題があった。
【0032】
そこで本発明では、発電設備内において、高さや幅に制限のある位置に基礎100,100…を介して固設されている熱交換器110を取り外して搬出する場合に、以下に示す工程を経て作業が行なわれる。
【0033】
先ず、第1の工程において、熱交換器110に対する基礎100,100…の固定を解除すると共に、昇降手段16,16…を用いて熱交換器110をランウエイ12、及びエアパレット14を挿入可能な高さまで上昇させると、図4Bに示した状態となる。このとき、昇降手段16,16…は、上述した構造を有しているため、熱交換器110を水平のまま安定した状態で上昇させて所定の高さで保持することができる。尚、昇降手段16,16は、図1で示した昇降部材16の構成の一部であるビーム部材18,18…を、図4Bに示すように熱交換器110の下面にワイヤ36,36…を用いて固定すれば、安定した昇降を行なうことができる。
【0034】
次に、第2の工程において、熱交換器110が設置された位置から熱交換器110を搬出可能なスペースがある施設内の通路等までの長さのランウエイ12を組立てて、熱交換器110の下に設置する。このとき、第1の工程において床面と熱交換器110との隙間が形成されているため、ランウエイ12をスムーズに設置することができる。又、設置されたランウエイ12は、平坦な板材から構成されている上に基礎100,100…との干渉を防止した機能を有しているので、段差や障害物のない搬送経路を熱交換器110の下側に形成することができる。
【0035】
次に、第3の工程において、ランウエイ12と熱交換器110との間に、2台のエアパレット14、14を熱交換器110の重量バランスを考慮して配置する。そして、このエアパレット14を固定部材34,34で熱交換器110の下面に固定すると、図4Cの状態となる。尚、この固定部材34,34…と熱交換器110との固定は、図4Cに示すようにワイヤ36,36を用いる方法でもよい。このとき、固定部材34,34…は、熱交換器110の下面形状に対応した形状を有しているため、エアパレット14の上面に熱交換器110の下面に安定した状態で固設することができる。
【0036】
次に、第4の工程において、昇降手段16,16…によって上昇している熱交換器110をランウエイ12上に下降させてから、エアパレット14を駆動させて、熱交換器110をランウエイ12上で滑走させる。昇降手段16,16…で熱交換器110を下降させてから、エアパレット14を駆動させると、エアパレット14の下面へ圧縮エアが吹き付けられることにより、熱交換器110の下面にエア層を形成させて、エア浮上による滑走が可能となる。このとき、ランウエイ12は、図2に示すように、基礎100,100…の箇所も含めて上面が平坦に形成されている上に、シール部材24dにより車輪部24上面からのエア漏れを防止しているため、効率よくエア層を形成することができる。従って、このエア浮上により熱交換器110の重力負荷を大幅に低減することができるので、特殊な装置等を用いることなく、手作業又は簡易な牽引手段で重量物である熱交換器110を簡易に牽引又は押出することができる。又、エアパレット14の下方は、ランウエイ12によって基礎100,100…との干渉がない平坦な搬送経路が形成されているため、効率のよいエア浮上が可能となる上に熱交換器110の滑走時に基礎100,100…との接触を防止することができる。尚、このエアパレット14,14は、図3で示した流量調整弁32aを操作して水平度を調整することが可能であるため、熱交換器110をバランスよく滑走させることができる。
【0037】
次に、第5の工程で、ランウエイ12の一端までの位置に滑走させた熱交換器110を昇降手段16,16…でランウエイ12の撤去可能な高さに上昇させて、熱交換器110の下側に設置されたランウエイ12を撤去すると、図4Dに示す状態となる。ランウエイ12は、図2に示した構造により各ランウエイ・ユニット22,22に分解して、付属する車輪部24,24…で床面を滑走させることができるので、短時間で熱交換器110の下方から撤去することができる。又、上述したように昇降手段16,16…を用いて昇降を行なうため、エアパレット14を固定した状態の熱交換器110に対して損傷を与えることなく簡易に床面へ降ろすことができる。
【0038】
最後に、第6の工程において、昇降手段16,16…により上昇した熱交換器110を床面まで下降させて、熱交換器110を施設内の床面を滑走させて搬出すれば、全作業が完了する。
【0039】
このように、本発明で使用される機器搬出搬入装置10の全体高さは、エアパレット14の高さ寸法と多少の上昇スペースとを合わせた寸法に過ぎず、しかも滑走面がランウエイ12を敷設するのみにより形成されるため、搬出及び搬入作業に要する全体高さを著しく低くできる。このため、施設内の上部に障害物があっても、この障害物を避けるために搬送経路(搬出及び搬入を行なう経路)を迂回させる必要がなくなる上、しかも従来のコロやウインチ等を用いた方法のように走行レールを敷設するのとは異なって、組立て自在であり、且つ引き込み式の車輪部24,24…で走行可能なランウエイ12を敷くだけでエアパレット14が滑走可能な経路を形成することができるので、搬出経路の設定が極めて簡単かつ低コストで実現できる。
【0040】
又、エアパレット14によるエア層によってランウエイ12上や床面上を滑走するため、熱交換器110などの大型重量物である機器110の荷重を分散して低減することができる。これにより、重量対策としてスラブや梁の補強作業が殆ど不要となる上に、ウインチなど特別な装置等を用いて牽引しなくてすむため、作業に要する人数や時間、設備を大幅に低減することができる。その上、搬送時における方向転換を簡易に小回りで行なうことができるので、施設内を搬送するための通路が入り組んだ構造であっても、施設や機器に損傷を与えることなく短時間で行なうことができる。従って、本発明を採用することにより、高さや幅に制限のある箇所に設置された機器を高い技術や多くの装置等を必要とせずに、施設の基礎100等や機器110に損傷を与えることなく短時間で効率よく行なうことができる。
【0041】
一方、熱交換器(機器)110が取り外されて搬出された位置や、施設内の任意の位置に、新たな熱交換器110(機器)の搬入及び据付けを行なう場合にも、上述した各工程を逆の手順で作業を行なえばよい。このとき、搬入された設置する熱交換器(機器)110は、従来のコロ類を使用する方法と異なり、エアパレット14,14によって荷重が大幅に低減されているため、特に機器を手作業で縦、横、及び斜め方向への微調整が手作業の力で可能である。従って、基礎100,100側のボルト位置に機器の固定位置を合わせる微調整を容易且つ正確に行なうことができる。これにより、従来では多くの作業時間や熟練した技術を要する機器を設置する位置決め作業において、特に高い技術を要することなく短時間で正確に行なうことができる。
【0042】
尚、上述した機器搬出搬入装置10において、使用される各装置及び部材の個数、形状、及び材質等は、特に限定するものではない。
【0043】
ランウエイ12の構成としては、一般的な矩形筒状の角材を所定の長さで平坦になるように連結させたものをランウエイ・ユニット22,22…として用いれば、材料コストを低減できる。
【0044】
又、機器搬出搬入装置10では、2台のエアパレット14,14を使用した例で示したが、特に限定するものではない。積載する機器110の重量バランスを考慮して、安定して積載して滑走可能であるものであればよく、複数台を連結した構造のものでもよい。
【0045】
更に、図1において、全ての昇降手段16にジャッキ20,20…を設けていたが、特に限定するものではない。別個にビーム部材18を使用して対になるジャッキ20,20で機器(熱交換器)110を昇降させて、各ビーム部材18の下方にスペーサーを介在させて保持するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の機器の搬出及び搬入方法を好適に用いた機器搬出搬入装置の構成を説明する透明斜視図
【図2】本発明で使用されるランウエイの構造を示した説明図
【図3】本発明で使用されるエアパレットの構造を示した側面断面図
【図4】本発明の機器の搬出及び搬入方法の各工程の流れを説明する側面図
【符号の説明】
【0047】
10…機器搬出搬入装置、12…ランウエイ、14…エアパレット、16…昇降手段、18…ビーム部材、19…シリンダ、20…ジャッキ、22…ランウエイ・ユニット、24…車輪部、24a…凹部、24b…車輪、24c…シャフト、24d…シール部材、26…フレーム、28…空気袋、30…エア配管、32…接続管、34…固定部材、36…ワイヤ、100…基礎、110…機器(熱交換器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
施設内の基礎に固設されている機器の取外し及び搬出作業を行なうと共に、前記機器が取り外されて搬出された位置又は前記施設内の所定の位置に、新たな機器の搬入及び据付け作業を行なう機器の搬出及び搬入方法において、
前記機器の取外し及び搬出作業は、
前記機器に対する前記基礎の固定を解除すると共に、前記機器を昇降可能な昇降手段を用いて所望する高さまで上昇させる第1の工程と、
前記基礎との干渉を防止した機能を有し、且つ所望する位置まで搬送可能な長さを有すると共に平坦な板材で構成されるランウエイを前記機器の下方に設置する第2の工程と、
前記ランウエイと前記機器との間に、上面から下面へエアを吹き出すことによってエア浮上可能な構造を有するエアパレットを前記機器の下面に固定する第3の工程と、
前記昇降手段によって上昇している機器を下降させた後、前記エアパレットを駆動させて前記機器を前記ランウエイ上で前記所望する位置まで滑走させる第4の工程と、
前記所望する位置に到達した機器を前記昇降手段により所望する高さに上昇させて、前記機器の下側に設置されたランウエイを撤去する第5の工程と、
前記昇降手段により上昇した機器を下降させて、前記施設内から搬出する第6の工程と、の順で行なわれ、
前記新たな機器の搬入及び据付け作業は、前記第6の工程から第1の工程の順で行なわれることを特徴とする機器の搬出及び搬入方法。
【請求項2】
前記ランウエイは、長さ方向及び幅方向に対して隙間なく着脱可能な構造を有し、且つ前記基礎に該当する箇所が該基礎の形状に沿って形成される複数のランウエイ・ユニットから構成され、
該ランウエイ・ユニットは、引き込み式の車輪を有すると共に、上方からのエア漏れを防止する機能を備えた走行自在な車輪部が下面に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の機器の搬出及び搬入方法。
【請求項3】
前記昇降手段は、
前記機器の下面に着脱可能に固定でき、該下面の形状に対応する形状を有する複数のビーム部材と、
前記ビーム部材を介して前記機器をシリンダによる垂直方向への伸縮によって所望する高さに昇降させるジャッキと、から構成されることを特徴とする請求項1に記載の機器の搬出及び搬入方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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