機器仮置きプールを開放する方法及び炉内機器の移送方法
【課題】構造が単純化でき、原子炉建屋内のレイダウン作業に要する時間を短縮できる機器仮置きプールにおけるプールカバーの配置方法を提供する。
【解決手段】沸騰水型原子力プラントの運転が停止された後、レイダウン作業が実施される。このレイダウン作業において、機器仮置きプール8を覆ってこのプール8を封鎖している一部のプールカバー21C〜21Gを天井クレーンで移送し、機器仮置きプール8の側の運転床6上に積み重ねる。原子炉ウェル7の反対側に配置されたプールカバー21Aは、移送せずに機器仮置きプール8を覆った状態にしておく。プールカバー21B,21Cは90°回転させ、機器仮置きプールの対向する各側面付近に別々に配置し、両端部に設けたそれぞれの支持ハンガー部材22を、運転床6に形成された突起部に引っ掛ける。プールカバー21A,21B,21Cの上を作業員が歩行できる。
【解決手段】沸騰水型原子力プラントの運転が停止された後、レイダウン作業が実施される。このレイダウン作業において、機器仮置きプール8を覆ってこのプール8を封鎖している一部のプールカバー21C〜21Gを天井クレーンで移送し、機器仮置きプール8の側の運転床6上に積み重ねる。原子炉ウェル7の反対側に配置されたプールカバー21Aは、移送せずに機器仮置きプール8を覆った状態にしておく。プールカバー21B,21Cは90°回転させ、機器仮置きプールの対向する各側面付近に別々に配置し、両端部に設けたそれぞれの支持ハンガー部材22を、運転床6に形成された突起部に引っ掛ける。プールカバー21A,21B,21Cの上を作業員が歩行できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器仮置きプールを開放する方法及び炉内機器の移送方法に係り、特に、沸騰水型原子力プラントに適用するのに好適な機器仮置きプールを開放する方法及び炉内機器の移送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
沸騰水型原子力プラントでは、原子炉が、原子炉建屋内に設置された原子炉格納容器内に据え付けられている。運転床が、原子炉建屋内で原子炉格納容器の上方に形成されている。運転床に取り囲まれた原子炉ウェルが、原子炉の真上で原子炉格納容器の上方に形成されている。運転床に取り囲まれている機器仮置きプール及び燃料貯蔵プールが、原子炉ウェルに隣り合わせでそれぞれ配置される。機器仮置きプール、原子炉ウェル及び燃料貯蔵プールは、この順に一列に配置されている。機器仮置きプール及び燃料貯蔵プールはゲートを介して原子炉ウェルに連通される。
【0003】
原子炉の運転時では、機器仮置きプールと原子炉ウェル、及び燃料貯蔵プールと原子炉ウェルは、それぞれゲートで仕切られており、互いに連通していない。原子炉の運転時においては、機器仮置きプールと原子炉ウェルには冷却水が充填されていない。燃料貯蔵プールには冷却水が充填されており、多数の使用済み燃料集合体が燃料貯蔵プール内の冷却水中に保管されている。原子炉の運転中、両端部が運転床で支持された複数のプールカバーが、機器仮置きプールの上面を覆って機器仮置きプールを封鎖しており、両端部が運転床で支持された複数の遮へいプラグが原子炉ウェルの上面を覆っている。
【0004】
沸騰水型原子力プラントでは、定期検査が定期的に実施される。この定期検査は、原子炉の運転を停止した後に行われる。定期検査の期間中において、原子炉内の炉心に装荷されている一部の燃料集合体の交換、及び炉内構造物に対する保守点検も行われる。燃料集合体の交換、及び炉内構造物に対する保守点検を行う場合には、原子炉を開放する必要がある。原子炉開放の作業は以下のように行われ、このときには、レイダウン作業も併せて行われる。レイダウン作業において、運転床の床面及び機器仮置きプールの底面がレイダウンエリアになる。
【0005】
原子炉建屋内でのレイダウン作業について説明する。原子炉ウェルを覆っている各遮へいプラグが、原子炉建屋の天井に設置された天井クレーンを用いて運転床面上の所定の位置まで搬送される。原子炉格納容器から取り外された上蓋が、天井クレーンを用いて原子炉ウェル内を通って運転床面上の所定の位置まで搬送される。原子炉圧力容器の上蓋も、原子炉圧力容器から取り外され、天井クレーンを用いて持ち上げられる。この上蓋は、原子炉ウェル内を上昇し、運転床面上の所定の位置に置かれる。機器仮置きプールを覆っている複数のプールカバーは、天井クレーンで搬送され、機器仮置きプール付近の運転床面上に積み重ねられる。
【0006】
原子炉圧力容器の上蓋が取り外された後、原子炉ウェル及び機器仮置きプール内に冷却水が充填される。機器仮置きプールと原子炉ウェルを仕切っているゲートが取り外されて運転床面上に置かれている。原子炉圧力容器内に設置された蒸気乾燥器が、取り外され、天井クレーンによって原子炉ウェルを通して機器仮置きプール内まで移送される。この蒸気乾燥器は、冷却水を充填した機器仮置きプールの底面に置かれる。原子炉圧力容器内で炉心の上方に配置された気水分離器も、機器仮置きプール内まで移送され、機器仮置きプールの底面に置かれる。以上で、レイダウン作業が終了する。
【0007】
定期検査が終了するまで、蒸気乾燥器及び気水分離器が機器仮置きプールの水中に保管される。炉心に装荷されている燃料集合体のうち、寿命になった一部の燃料集合体が、運転床上を移動する燃料交換機によって把持され、燃料貯蔵プールまで移動される。
【0008】
機器仮置きプールのプールカバーの例が、特開2007−271405号公報、特開昭62−64995号公報及び特開昭60−202393号公報に記載されている。
【0009】
特開2007−271405号公報に記載された、機器仮置きプールを覆うプールカバーは、2つに折り畳むことが可能な構成を有する。ウインチが設けられ、ウインチに巻きつけられたワイヤがプールカバーに取り付けられる。プールカバーの折り曲げによる収納及び引き伸ばしによる機器仮置きプール上面の封鎖は、ウインチの駆動によるワイヤの巻き取り及び巻き戻しによって行われる。
【0010】
特開昭62−64995号公報に記載されたプールカバーは、運転床上を移動する台車、リンク機構を用いてプールの両側に配置された折りたたみ式連結機、これらの連結機をつなぐ複数の軸、及びこれらの軸を覆って取り付けられたシート状カバーを有する。台車を移動させることによって連結機が、伸びたり、縮んだりする。これにより、機器仮置きプールがシート状カバーで覆われたり、シート状カバーが畳まれて機器仮置きプールが開放されたりする。
【0011】
特開昭60−202393号公報に記載されたプールカバーは、複数のシートカバーが連結されており、ハンドルを回転させることによってドラムに巻き取られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2007−271405号公報
【特許文献2】特開昭62−64995号公報
【特許文献3】特開昭60−202393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
運転床、すなわち、レイダウンエリアが狭いので、複数の遮へいプラグ、原子炉格納容器の上蓋及び原子炉圧力容器の上蓋等がレイダウン作業によって運転床上面に並べられたとき、運転床での作業員の通行に支障が生じ、定期検査時における炉内構造物等の原子炉圧力容器内の保守点検に要する時間が長くなる可能性がある。
【0014】
特開2007−271405号公報に記載されたプールカバーが機器仮置きプールの上面を覆っているとき、このプールカバーを作業床として使用することができる。しかしながら、機器仮置きプールに蒸気乾燥器および気水分離器を搬入するときには、ウインチを駆動させて機器仮置きプールを覆っているプールカバーを、2つに折り畳むように、機器仮置きプールに面する原子炉建屋の側壁の内面に向って移動させ、収納する。機器仮置きプールが開放されるので、原子炉圧力容器から取り出した蒸気乾燥器及び気水分離器が機器仮置きプール内に天井クレーンにより順次搬入される。その後、2つに折り畳まれたプールカバーが引き伸ばされて機器仮置きプールを覆うので、作業床となるプールカバー上を作業員が通行することができる。
【0015】
原子炉圧力容器内の炉内構造物の保守点検が終了した後、燃料貯蔵プール内の新燃料集合体が、燃料交換機によって炉心内に装荷される。新燃料集合体の装荷後に、機器仮置きプール内の気水分離器及び蒸気乾燥器が、この順に、原子炉圧力容器の所定の各位置まで搬入され、これらの位置で原子炉圧力容器に設置される。運転床上に置かれた各上蓋が原子炉圧力容器及び原子炉格納容器にそれぞれ取り付けられる。気水分離器及び蒸気乾燥器が搬出された機器仮置きプールの上面がプールカバーで覆われる。このプールカバーは原子炉の運転中でも機器仮置きプールの上面を覆っている。原子炉の運転中では、機器仮置きプール及び原子炉ウェル内の冷却水は、排出されており、空の状態になっている。
【0016】
このように、特開2007−271405号公報に記載されたプールカバーは、機器仮置きプールへの蒸気乾燥器等の搬入時に開け閉めされ、機器仮置きプールからの蒸気乾燥器等の搬出時にも開け閉めされる。特開2007−271405号公報に記載されたプールカバーでは、蒸気乾燥器等の搬入時及び搬出時における開け閉め操作がそれぞれ2回必要になる。プールカバーの開閉操作時には、作業員はプールカバー上を通行することができない。特開昭62−64995号公報及び特開昭60−202393号公報に記載された各プールカバーでも、同様に、蒸気乾燥器等の搬入時及び搬出時における開け閉め操作がそれぞれ2回必要になる。特開昭62−64995号公報及び特開昭60−202393号公報は、機器仮置きプールを覆っているプールカバーの上面を作業員の通路として使用することを考慮していない。
【0017】
また、特開2007−271405号公報に記載されたプールカバーは、ウインチ等のプールカバーを開閉する機構が必要になり、構造が複雑化している。特開昭62−64995号公報及び特開昭60−202393号公報に記載された各プールカバーでも、同様に、構造が複雑化している。
【0018】
本発明の目的は、構造が単純化でき、原子炉建屋内のレイダウン作業に要する時間を短縮することができる機器仮置きプールを開放する方法及び炉内機器の移送方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、原子力プラントの運転停止後に、原子炉建屋内の運転床に形成された機器仮置きプールの上方を封鎖している複数のプールカバーを、少なくとも1枚のプールカバーを残して除去し、
少なくとも1枚の第1のプールカバーが機器仮置きプールを跨いで配置されてこの第1のプールカバーの両端部が機器仮置きプールの対向する2つの側面を形成している運転床に保持された状態で、原子炉内から取り出されて機器仮置きプール内に搬入される機器を吊っているワイヤが水平方向に移動する領域を、第1のプールカバーと、機器仮置きプールの側面の間に形成することにある。
【0020】
少なくとも1枚のプールカバーが機器仮置きプールを跨いで配置されているので、作業員がこのプールカバーの上を歩行することができる。このため、レイダウン作業時における作業員の移動がより迅速に行うことができ、レイダウン作業に要する時間を短縮することができる。機器仮置きプールの上方に作業員の歩行通路を形成した状態で、原子炉内の機器を機器仮置きプール内の移送することができるので、レイダウン作業に要する時間をさらに短縮することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、プールカバーの構造が単純化でき、原子炉建屋内のレイダウン作業に要する時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の好適な一実施例である実施例1の機器仮置きプールを開放する方法を実現することができる、沸騰水型原子力プラントの運転中における機器仮置きプールをプールカバーで封鎖した状態を示す説明図である。
【図2】実施例1の機器仮置きプールを開放する方法により配置した、機器仮置きプールでのプールカバーの配置状態を示す説明図である。
【図3】沸騰水型原子力プラントの原子炉建屋内での運転床付近の縦断面図である。
【図4】図3のIV−IV断面図である。
【図5】実施例1で用いられるプールカバーの側面図である。
【図6】図2のVI−VI断面図である。
【図7】図2のVII−VII断面図である。
【図8】本発明の他の実施例である実施例2の機器仮置きプールを開放する方法を実現することができる、沸騰水型原子力プラントの運転中における機器仮置きプールをプールカバーで封鎖した状態を示す説明図である。
【図9】実施例2の機器仮置きプールを開放する方法により配置した、機器仮置きプールでのプールカバーの配置状態を示す説明図である。
【図10】本発明の他の実施例である実施例3の機器仮置きプールを開放する方法を実現することができる、沸騰水型原子力プラントの運転中における機器仮置きプールをプールカバーで封鎖した状態を示す説明図である。
【図11】実施例3の機器仮置きプールを開放する方法により配置した、機器仮置きプールでのプールカバーの配置状態を示す説明図である。
【図12】隣り合うプールカバーの係合構造の他の例を示す構成図である。
【図13】隣り合うプールカバーの係合構造の他の例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施例を以下に説明する。
【実施例1】
【0024】
本発明の好適な一実施例である実施例1の機器仮置きプールを開放する方法を、図1及び図2を用いて説明する。本実施例のプールカバーを開放する方法は、沸騰水型原子力プラントに適用される。
【0025】
この沸騰水型原子力プラントの原子炉が配置される原子炉建屋内の構造を、運転床付近を中心に、図3及び図4を用いて説明する。沸騰水型原子力プラントは、原子炉格納容器4を原子炉建屋1内に配置しており、原子炉圧力容器2を原子炉格納容器4内に設置している。原子炉圧力容器上蓋(以下、RPV上蓋という)3が、原子炉圧力容器2の上端部に配置され、原子炉圧力容器2のフランジに着脱可能に取り付けられている。蒸気乾燥器(図示せず)及び気水分離器(図示せず)が原子炉圧力容器2内に設置されている。気水分離器が原子炉圧力容器2内に設けられた炉心(図示せず)の上方に配置され、蒸気乾燥器が気水分離器の上方に配置される。原子炉圧力容器保温材が原子炉圧力容器2の周囲に取り付けられる。
【0026】
原子炉格納容器上蓋(以下、PCV上蓋という)5が、原子炉格納容器4の上端部に配置され、取り外し可能に原子炉格納容器4の上端部に取り付けられる。運転床6が、原子炉建屋1内で原子炉格納容器4の上方に形成されている。運転床6に囲まれて形成された機器仮置きプール8、原子炉ウェル7及び燃料貯蔵プール9が、原子炉格納容器4の上方に配置されている。原子炉ウェル7は原子炉圧力容器2の真上に位置しており、機器仮置きプール8、原子炉ウェル7及び燃料貯蔵プール9がこの順に一列に配置されている。機器仮置きプール8の横断面は矩形であり、機器仮置きプール8の長手方向が機器仮置きプール8、原子炉ウェル7及び燃料貯蔵プール9の並びに一致している。
【0027】
キャスクピット10が燃料貯蔵プール9の側に配置される。運転床6の床面が、機器仮置きプール8、原子炉ウェル7及び燃料貯蔵プール9を間に挟んで、第1領域20Aと第2領域20Bに分かれている。運転床6の第2領域20Bには大物搬出口11が形成されており、この大物搬入口11が燃料貯蔵プール9の側に存在する。新燃料集合体貯蔵庫12が、運転床6の第1領域20Aに設けられ、燃料貯蔵プール9の側に配置されている。
【0028】
燃料交換機13が、原子炉ウェル7を跨ぐように配置されて、運転床6上に設けられたレール(図示せず)上に移動可能に設置される。この燃料交換機13は、原子炉ウェル7及び燃料貯蔵プール9の上方を運転床6に設けられたレールに沿って移動する。天井クレーン14が、燃料交換機13の上方に配置されて、原子炉建屋1内で原子炉建屋1の天井付近に設置される。天井クレーン14は、原子炉建屋1内に敷設されたレール上を移動する走行台車15、及び走行台車15に設置されて走行台車15上を移動する横行台車16を有する。運転室17が、走行台車15に設けられ、走行台車15から下方に向って伸びている。
【0029】
沸騰水型原子力プラントの運転中、原子炉ウェル7は、運転床7上に置かれた複数の遮へいプラグ18で覆われている(図4参照)。本実施例では、5個の遮へいプラグ18、すなわち、1個の遮へいプラグ18A、1個の遮へいプラグ18B、及び3個の遮へいプラグ18Cが存在する。沸騰水型原子力プラントの運転中において、原子炉ウェル7と機器仮置きプール8を連絡する通路30は、この内部に配置された複数のゲート19によって仕切られている。機器仮置きプール8は、沸騰水型原子力プラントの運転中、複数のプールカバー21、例えば、7枚のプールカバー21A〜21Gによって覆われて封鎖されている。プールカバー21A〜21Gのそれぞれの長さはL1である(図1参照)。長さL1は機器仮置きプール8の幅に等しい。プールカバー21A〜21Gのそれぞれの幅はL1/6である。プールカバー21Aの幅は、機器仮置きプール8の長手方向の長さL2からプールカバー21B〜21Gの各幅の合計値L1を引いた値(L2−L1)である。プールカバー21Aが、機器仮置きプール8の領域で原子炉ウェル7から最も遠い位置に配置されて、原子炉ウェル7と反対側に位置する、機器仮置きプール8の1つの側面に接触している。プールカバー21Gが、原子炉ウェル7に最も近い位置に配置され、原子炉ウェル7側の、機器仮置きプール8の側面に接触している。本実施例では、機器仮置きプール8を覆っている6枚のプールカバー21B,21C,21D,21E,21F及び21Gが占有している領域の形状は、L1×L1の正方形をしている(図1参照)。各プールカバー21A〜21Gは、両端部に複数の支持ハンガー部材22を設けている(図1及び図5参照)。各プールカバー21A〜21Gが機器仮置きプール8を覆っている状態で、縦断面がコの字状になっている各支持ハンガー部材22が、運転床6の、機器仮置きプール8に面する部分の上面に形成された突起部(図6に示す突起部23と同じ構成)に引っ掛けられている。このようにして、各プールカバー21A〜21Gが運転床6に保持される。プールカバー21Aは、機器仮置きプール8の、原子炉ウェル7とは反対側の側面に面する側端に、長手方向において間隔を置いて、複数(例えば、4個)の支持ハンガー部材22Aを設けている(図1参照)。これらの支持ハンガー部材22Aは、運転床6の、機器仮置きプール8の、原子炉ウェル7とは反対側の側面に面する部分の上面に形成された突起部23に引っ掛けられている(図6参照)。
【0030】
以上のプールカバー21の移送によって機器仮置きプール8の上方が開放される。すなわち、機器仮置きプール8がプールカバー21A,21B,21Cで取り囲まれた領域33で開放されている。この領域33は、後述する炉内機器である蒸気乾燥器及び気水分離器を移送する際において、この炉内機器を天井クレーン14に吊っているワイヤが水平方向に移動する領域になる。
【0031】
定期検査を行うために沸騰水型原子力プラントの運転が停止された後、レイダウン作業が実施される。このレイダウン作業の詳細を以下に説明する。レイダウン作業には、天井クレーン14が用いられ、天井クレーン14に設けられた運転室18が運転床6の第1領域20Aの上方を移動する。この運転室18は運転床6の第2領域20Bの上方を移動しない。第2領域20Bは、機器仮置きプール8、原子炉ウェル7及び燃料貯蔵プール9を間に挟んで第1領域20Aの向かい側の位置に存在する。
【0032】
まず、機器仮置きプール8を覆っている一部のプールカバー21が取り外されて移送される。機器仮置きプール8を覆っている各プールカバー21のうちプールカバー21D〜21Gを、天井クレーン14で順次吊り上げて、機器仮置きプール8の原子炉ウェル7とは反対側の端と原子炉建屋1の側壁との間に形成されたカバー仮置きスペース25まで移送する。プールカバー21D〜21Gは、カバー仮置きスペース25に積み重ねて置かれる。プールカバー21A(第1のプールカバー)は、移動されずに沸騰水型原子力プラントの運転中の状態のまま、機器仮置きプール8の端部を覆っている。プールカバー21Aは、原子炉ウェル7側の側端で上面に、長手方向に伸びる突起部24が形成されている(図1、図6及び図7参照)。プールカバー21A上を歩く作業員が機器仮置きプール8内に落ちるのを防止するために、手すり28がプールカバー21Aの突起部24に取り付けられる。
【0033】
プールカバー21B(第2のプールカバー)が、天井クレーン14で吊り上げられて90°回転されて、機器仮置きプール8の、第1領域20A側の側面に接触して配置され(図2参照)、機器仮置きプール8の一部を覆っている。この状態で、プールカバー21Bの一端に設けられた一対の支持ハンガー部材22がプールカバー21Aの突起部24上に置かれる(図7参照)。これらの支持ハンガー部材22の先端が突起部24に引っ掛けられている。プールカバー21Bの他端に設けられた一対の支持ハンガー部材22が、機器仮置きプール8の、原子炉ウェル7側の端に面する運転床6の床面に形成された突起部(図示せず)の上に置かれ、これらの支持ハンガー部材22の先端がこの突起部に引っ掛けられる。
【0034】
プールカバー21C(第2のプールカバー)も、天井クレーン14で吊り上げられて90°回転される。プールカバー21Cは、機器仮置きプール8の、第2領域20B側の側面に接触して配置され(図2参照)、機器仮置きプール8の一部を覆っている。この状態で、プールカバー21Cの一端に設けられた一対の支持ハンガー部材22がプールカバー21Aの突起部24上に置かれる(図7参照)。これらの支持ハンガー部材22の先端が突起部24に引っ掛けられている。プールカバー21Cの他端に設けられた一対の支持ハンガー部材22が、プールカバー21Bと同様に、機器仮置きプール8の、原子炉ウェル7側の端に面する運転床6の床面に形成された突起部(図示せず)の上に置かれ、これらの支持ハンガー部材22の先端がこの突起部に引っ掛けられる。
【0035】
図示されていないが、手すり28が、機器仮置きプール8を覆って上記のように配置されたプールカバー21B,21Cの機器仮置きプール8側の側端に、長手方向に沿って取り付けられる。プールカバー21B,21Cがプールカバーと直交して配置されている。
【0036】
プールカバー21A〜21Cが図2に示すように配置された後、原子炉ウェル7を覆っている遮へいプラグ17のうち、機器仮置きプール8側に位置する遮へいプラグ17A、及び燃料貯蔵プール9側に位置する遮へいプラグ17Bが、順番に天井クレーン14によって吊り上げられて運転床6の上まで移動される。遮へいプラグ17A,17Bは、機器仮置きプール8側で運転床6の第1領域20Aの床面上に、側面が対向するように近接して置かれる。遮へいプラグ17のうち、残りの3個の遮へいプラグ17Cも、原子炉ウェル7の側で運転床6の第1領域20Aの床面上に置かれる。機器仮置きプール8と原子炉ウェル8を仕切っている各ゲート19が、天井クレーン14によって順次移送されて運転床6の第1領域20Aの床面上に置かれる。
【0037】
原子炉格納容器4から取り外されたPCV上蓋5は、天井クレーン14に吊り下げられて原子炉ウェル7内を上昇し、運転床6の第2領域20Bの床面上に置かれる。RPV上蓋3を覆ってRPV上蓋3に取り付けられているRPV保温材(図示せず)が、RPV上蓋3から取り外される。このRPV保温材が、天井クレーン14によって吊り上げられ、機器仮置きプール8の側で運転床6の第1領域20Aの床面上に置かれる。RPV保温材は、運転床6の第1領域20Aの床面上に置かれた遮へいプラグ17Cの隣りで機器仮置きプール8の側に置かれる。RPV上蓋3が、原子炉圧力容器2のフランジから取り外され、天井クレーン14によって吊り上げられる。吊り上げられたRPV上蓋3が、大物搬入口11側で既に置かれているPCV上蓋5に近接して、運転床6の第2領域20Bの床面上に置かれる。
【0038】
RPV上蓋3が移送された後、原子炉圧力容器2内に設置されている炉内機器である蒸気乾燥器が、取り外され、天井クレーン14に吊り下げられる。この蒸気乾燥器が、天井クレーン14の駆動によって、原子炉圧力容器2から取り出され、原子炉ウェル7内を上昇する。この蒸気乾燥器は、原子炉ウェル7から通路30を経て機器仮置きプール8内に移送される。このとき、プールカバー21A〜21Cが図2のように配置されて機器仮置きプール8を覆っている。吊り天秤(図示せず)を用いて蒸気乾燥器を天井クレーン14に吊っているので、蒸気乾燥器を機器仮置きプール8内に搬入するとき、プールカバー21A〜21Cが、天井クレーン14に掛けられて吊り天秤に取り付けられたワイヤ(図示)の水平方向への移動の障害にはならない。ワイヤは、蒸気乾燥器の移送時に水平方向に移動する際に、領域33内を移動する。蒸気乾燥器は、機器仮置きプール8の底面上に置かれる。蒸気乾燥器が機器仮置きプール8の底面上に置かれたとき、吊り天秤及びワイヤは、前述したように機器仮置きプール8の端部を覆っているプールカバー21Aよりも原子炉ウェル7側に位置している。蒸気乾燥器の機器仮置きプール8への移送が終了した後、原子炉ウェル7及び機器仮置きプール8内に冷却水が充填される。さらに、原子炉圧力容器2から取り外された気水分離器が、天井クレーン14に吊り下げられて原子炉ウェル7内の水中を上昇し、通路30を通って冷却水が充填された機器仮置きプール8内に搬入される。この気水分離器が機器仮置きプール8の底面上に置かれる。機器仮置きプール8の底面もレイダウンエリアである。気水分離器が機器仮置きプール8の底面上に置かれたとき、レイダウン作業が終了する。
【0039】
蒸気乾燥器26及び気水分離器27は、沸騰水型原子力プラントの定期検査が行われる間、機器仮置きプール8内に保管される。気水分離器27も炉内機器である。
【0040】
以上により、沸騰水型原子力プラントの原子炉建屋1内でのレイダウン作業が終了する。
【0041】
本実施例では、沸騰水型原子力プラントの運転中に、機器仮置きプール8の幅L1を長さとするプールカバー21A〜21Gが機器仮置きプール8を覆っており、プールカバー21B〜21Gのそれぞれの幅がL1/6であり、プールカバー21Aの幅が(L2−L1)になっている。このため、機器仮置きプール8を覆っているプールカバー21D〜21Gを取り外し、プールカバー21B及び21Cを90°回転させて機器仮置きプール8の対向する長手方向のそれぞれの側面に別々に接触するように配置することによって、機器仮置きプール8の、原子炉ウェル7側の側面を除いた他の3つの側面付近で、機器仮置きプール8の上方に、プールカバー21A,21B,21Cの上面に作業員が通行できる通路を形成することができる。このため、レイダウン作業によって運転床6の床面上に遮へいプラグ18及びPCV上蓋5等が置かれて運転床6の床面が狭くなり、作業員が運転床6の床面上を通行することが困難になってきた場合には、作業員は、上記の3つの側面付近で機器仮置きプール8を覆って配置されたプールカバー21A,21B,21Cの上面に形成された通路を歩行することができる。レイダウン作業時においてPCV上蓋5等のレイダウン対象物を運転床6の床面上の所定の位置に置くとき、作業員は、運転床6上を移動し、レイダウン対象物を置く所定の位置で作業を補助する必要がある。このため、作業員がプールカバー21A,21B,21Cの上面を歩行できるので、作業員が、形成された通路上を移動し、その所定の位置までより迅速に到達することができる。また、必要な工具を広げて置けるスペースが増大する。これらにより、原子炉建屋内のレイダウン作業に要する時間を短縮することができる。
【0042】
本実施例では、機器仮置きプール8を覆って配置されたプールカバー21A,21B,21Cの上面に通路を形成した状態で、炉内機器(蒸気乾燥器及び気水分離器)を吊っているワイヤを領域33内を移動させることにより、炉内機器を機器仮置きプール8内に搬入することができるので、レイダウン作業に要する時間をさらに短縮することができる。
【0043】
本実施例では、プールカバー21の取り外しによる機器仮置きプール8の開放、及びプールカバー21による機器仮置きプールの封鎖は、一回の定期検査につき、それぞれ一回ずつ行えば良い。このため、特開2007−271405号公報、特開昭62−64995号公報及び特開昭60−202393号公報に比べて、一回の定期検査における、機器仮置きプール8の開放、及びプールカバー21による機器仮置きプールの封鎖の各作業がそれぞれ1回ずつ低減できる。
【0044】
本実施例では、プールカバーに、プールカバーを開け閉めする駆動装置を取り付ける必要が無いので、プールカバーの構造が、特開2007−271405号公報、特開昭62−64995号公報及び特開昭60−202393号公報に記載されたプールカバーよりも単純化することができる。
【0045】
プールカバー21B,21Cを機器仮置きプール8の上に配置しないで、プールカバー21Aのみを配置した場合でも、レイダウン作業に要する時間を短縮することができる。プールカバー21Aは、炉内機器を吊っているワイヤの水平方向への移動に支障が生じない範囲で、突起部23が設けられている側の、機器仮置きプール8の側面から離して配置しても良い。
【実施例2】
【0046】
本発明の他の実施例である実施例2の機器仮置きプールを開放する方法を、図8及び図9を用いて説明する。本実施例の機器仮置きプールを開放する方法は、沸騰水型原子力プラントに適用される。
【0047】
本実施例の機器仮置きプールを開放する方法は、実施例1において沸騰水型原子力プラントの運転中に機器仮置きプール8を覆っているプールカバー21A以外の各プールカバー21の形状を変え、沸騰水型原子力プラント運転中に機器仮置きプール8を覆っているこれらのプールカバー21を対象に行われる。沸騰水型原子力プラント運転中において、機器仮置きプール8は、9枚のプールカバー21で覆われている。これらのプールカバー21は、プールカバー21A,21B,21C及び21Hである。プールカバー21A,21B,21Cはそれぞれ1枚であり、プールカバー21Hは6枚である。
【0048】
プールカバー21A(第1のプールカバー)は、実施例1と同様に、機器仮置きプール8の、原子炉ウェル7側の側面と対向する他の側面に接するように配置され、機器仮置きプール8の一部を覆っている。プールカバー21Aに設けられた支持ハンガー部材22,22Aが、実施例1と同様に、運転床6の上面に形成された突起部に引っ掛けられている。プールカバー21B(第2のプールカバー)は、機器仮置きプール8の、長手方向に伸びる1つの側面に沿って配置され、この側面に接している。プールカバー21Bの一端部に設けられた一対の支持ハンガー部材22がプールカバー21Aの上面に形成された突起部24上に置かれ、これらの支持ハンガー部材22の先端がその突起部24に引っ掛けられている。プールカバー21Bの他端に設けられた一対の支持ハンガー部材22が、機器仮置きプール8の、原子炉ウェル7側の端に面する運転床6の床面に形成された突起部(図示せず)の上に置かれ、これらの支持ハンガー部材22の先端がこの突起部に引っ掛けられる。複数の支持ハンガー部材22Bがプールカバー21Bの長手方向に伸びる1つの側面部に設けられる。これらの支持ハンガー部材22Bが、プールカバー21Bが接する側面付近で、運転床6の床面に形成された突起部(図示せず)の上に置かれ、これらの支持ハンガー部材22Bの先端がこの突起部に引っ掛けられる。
【0049】
プールカバー21C(第2のプールカバー)は、プールカバー21Bが接している側面に対向する、機器仮置きプール8の他の側面に沿って配置され、この側面に接している。プールカバー21Cの一端部に設けられた一対の支持ハンガー部材22がプールカバー21Aの上面に形成された突起部24上に置かれ、これらの支持ハンガー部材22の先端がその突起部24に引っ掛けられている。プールカバー21Cの他端に設けられた一対の支持ハンガー部材22が、機器仮置きプール8の、原子炉ウェル7側の端に面する運転床6の床面に形成された突起部(図示せず)の上に置かれ、これらの支持ハンガー部材22の先端がこの突起部に引っ掛けられる。複数の支持ハンガー部材22Cがプールカバー21Cの長手方向に伸びる1つの側面部に設けられる。これらの支持ハンガー部材22Cが、プールカバー21Cが接する側面付近で、運転床6の床面に形成された突起部(図示せず)の上に置かれ、これらの支持ハンガー部材22Cの先端がこの突起部に引っ掛けられる。
【0050】
複数(例えば、6枚)のプールカバー21Hが、機器仮置きプール8の長手方向に並べられて配置されている。各プールカバー21Hの一端部に設けられた一対の支持ハンガー部材22が、プールカバー21Bの長手方向に伸びる1つの側面部の上面に形成された突起部24A上に置かれ、これらの支持ハンガー部材22の先端が突起部24Aに引っ掛けられている。各プールカバー21Hの他端部に設けられた一対の支持ハンガー部材22が、プールカバー21Cの長手方向に伸びる1つの側面部の上面に形成された突起部24B上に置かれ、これらの支持ハンガー部材22の先端が突起部24Bに引っ掛けられている。
【0051】
上記のように配置されたプールカバー21A,21B,21C及び21Hは、沸騰水型原子力プラントの運転中に、機器仮置きプール8を覆って機器仮置きプール8を封鎖している。
【0052】
定期検査を行うために沸騰水型原子力プラントの運転が停止された後、実施例1と同様に、レイダウン作業が実施される。このレイダウン作業の詳細を以下に説明する。このレイダウン作業において、機器仮置きプール8を覆っている全てのプールカバー21Hが、天井クレーン14で順次吊り上げられて移送され、運転床6の床面上のカバー仮置きスペース25に積み重ねられる。機器仮置きプール8では、各プールカバー21Hで覆われていた領域が開放される。機器仮置きプール8は、プールカバー21A、プールカバー21B及びプールカバー21Cで囲まれた領域33Aで開放される。
【0053】
その後、実施例1と同様に、PCV上蓋5等の運転床6の床面上への移送、及び蒸気乾燥器等の機器仮置きプール8の底面への移送が行われる。蒸気乾燥器及び気水分離器の機器仮置きプール8内への移送時には、蒸気乾燥器等を吊るしているワイヤが領域33A内を移動する。このため、蒸気乾燥器及び気水分離器の機器仮置きプール8内への移送が容易に行われる。
【0054】
レイダウン作業等において、作業員がプールカバー21A,21B,21Cの上を歩行することができる。本実施例は、実施例1で生じる各効果を得ることができる。
【0055】
プールカバー21B,21Cを配置せず、プールカバー21Aのみを配置しても、レイダウン作業に要する時間を短縮することができる。
【実施例3】
【0056】
本発明の他の実施例である実施例3の機器仮置きプールを開放する方法を、図10及び図11を用いて説明する。本実施例の機器仮置きプールを開放する方法は、沸騰水型原子力プラントに適用される。
【0057】
本実施例の機器仮置きプールを開放する方法は、実施例2において、沸騰水型原子力プラントの運転中に機器仮置きプール8を覆っているプールカバー21Aをプールカバー21Iとし、プールカバー21B、21Cをプールカバー21J,21Kとしたものである。プールカバー21Iはプールカバー21Hと同じ長さを有し、プールカバー21J,21Kの長さはプールカバー21B、21Cよりも長くなっている。本実施例では、機器仮置きプール8は、沸騰水型原子力プラント運転中において、6枚のプールカバー21H、1枚のプールカバー21I、1枚のプールカバー21J及び1枚のプールカバー21Kで覆われている。
【0058】
プールカバー21Jは、機器仮置きプール8の、長手方向に伸びる1つの側面に沿って配置され、この側面に接している。プールカバー21Jの一端部に設けられた一対の支持ハンガー部材22が、運転床6の床面に形成された突起部23上に置かれ、これらの支持ハンガー部材22の先端がその突起部23に引っ掛けられている。プールカバー21Jの他端に設けられた一対の支持ハンガー部材22が、機器仮置きプール8の、原子炉ウェル7側の端に面する運転床6の床面に形成された突起部(図示せず)の上に置かれ、これらの支持ハンガー部材22の先端がこの突起部に引っ掛けられる。複数の支持ハンガー部材22Eがプールカバー21Jの長手方向に伸びる1つの側面部に設けられる。これらの支持ハンガー部材22Eが、プールカバー21Jが接する側面付近で、運転床6の床面に形成された突起部(図示せず)の上に置かれ、これらの支持ハンガー部材22Eの先端がこの突起部に引っ掛けられる。
【0059】
プールカバー21Kは、プールカバー21Jが接している側面に対向する、機器仮置きプール8の他の側面に沿って配置され、この側面に接している。プールカバー21Kの一端部に設けられた一対の支持ハンガー部材22が運転床6に形成された突起部23上に置かれ、これらの支持ハンガー部材22の先端がその突起部23に引っ掛けられている。プールカバー21Kの他端に設けられた一対の支持ハンガー部材22が、機器仮置きプール8の、原子炉ウェル7側の端に面する運転床6の床面に形成された突起部(図示せず)の上に置かれ、これらの支持ハンガー部材22の先端がこの突起部に引っ掛けられる。複数の支持ハンガー部材22Fがプールカバー21Kの長手方向に伸びる1つの側面部に設けられる。これらの支持ハンガー部材22Fが、プールカバー21Kが接する側面付近で、運転床6の床面に形成された突起部(図示せず)の上に置かれ、これらの支持ハンガー部材22Fの先端がこの突起部に引っ掛けられる。
【0060】
プールカバー21Iが、突起部23が存在する側の、機器仮置きプール8の側面に沿って配置され、この側面に接している。プールカバー21Iの一端部に設けられた一対の支持ハンガー部材22がプールカバー21Jの1つの側面部上に形成された突起部24C上に置かれ、これらの支持ハンガー部材22の先端がその突起部24Cに引っ掛けられている。プールカバー21Iの他端部に設けられた一対の支持ハンガー部材22がプールカバー21Kの1つの側面部上に形成された突起部24D上に置かれ、これらの支持ハンガー部材22の先端がその突起部24Dに引っ掛けられている。プールカバー21Iの1つの側面部に設けられた複数の支持ハンガー部材22Dが、運転床6上の突起部23に引っ掛けられている。
【0061】
6枚のプールカバー21Hが原子炉ウェル7からプールカバー21Iに向って並んで配置されている。プールカバー21Hの一端部に設けられた一対の支持ハンガー部材22がプールカバー21Jに形成された突起部24C上に置かれ、これらの支持ハンガー部材22の先端がその突起部24Cに引っ掛けられている。プールカバー21Hの他端部に設けられた一対の支持ハンガー部材22がプールカバー21Kに形成された突起部24D上に置かれ、これらの支持ハンガー部材22の先端がその突起部24Dに引っ掛けられている。
【0062】
定期検査を行うために沸騰水型原子力プラントの運転が停止された後、実施例1と同様に、レイダウン作業が実施される。このレイダウン作業の詳細を以下に説明する。このレイダウン作業において、機器仮置きプール8を覆っている全てのプールカバー21Hが、天井クレーン14で順次吊り上げられて移送され、運転床6の床面上のカバー仮置きスペース25に積み重ねられる。機器仮置きプール8では、各プールカバー21Hで覆われていた領域が開放される。機器仮置きプール8は、プールカバー21I、プールカバー21J及びプールカバー21Kで囲まれた領域33Bで開放される。
【0063】
その後、実施例1と同様に、PCV上蓋5等の運転床6の床面上への移送、及び蒸気乾燥器等の機器仮置きプール8の底面への移送が行われる。蒸気乾燥器及び気水分離器の機器仮置きプール8内への移送時には、蒸気乾燥器等を吊るしているワイヤが領域33B内を移動する。このため、蒸気乾燥器及び気水分離器の機器仮置きプール8内への移送が容易に行われる。
【0064】
レイダウン作業等において、作業員がプールカバー21I,21J,21Kの上を歩行することができる。本実施例は、実施例2で生じる各効果を得ることができる。
【0065】
プールカバー21Iを配置せず、プールカバー21J及びプールカバー21Kのいずれかを配置しても、レイダウン作業に要する時間を短縮することができる。
【0066】
各実施例では、プールカバー21に設けた支持ハンガー部材を隣りのプールカバー21に形成した突起部に引っ掛けているが、図12または図13に示す係合構造を採用することによって、あるプールカバー21を隣りのプールカバー21で保持することができる。図12に示す係合構造について説明する。一方のプールカバー21の端部に下方に向かって折れ曲った保持部31を設け、このプールカバー21に隣接する他のプールカバー21の端部に上方に向って折れ曲がった保持部32を設ける。保持部32を保持部31で支持することによって、保持部32を有するプールカバー21を保持部31を有するプールカバー21によって支持することができる。
【0067】
図13に示す係合構造について説明する。一方のプールカバー21の端部に上方に向かって折れ曲った保持部32を設ける。この保持部32を、隣り合う他のプールカバー21の端部の上面に重ねることによって、保持部32を有するプールカバー21を他のプールカバー21で保持することができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、沸騰水型原子力プラントに適用できる。
【符号の説明】
【0069】
1…原子炉建屋、2…原子炉圧力容器、3…原子炉圧力容器上蓋、4…原子炉格納容器、5…原子炉格納容器上蓋、6…運転床、7…原子炉ウェル、8…機器仮置きプール、14…天井クレーン、18…遮へいプラグ、21,21A,21B,21C,21D,21E,21F,21G,21H,21I,21J,21K…プールカバー、22,22A,22B,22C,22D,22E,22F…支持ハンガー部材、23,24,24A,24B,24C,24D…突起部、28…手すり、30…通路、33,33A,33B…領域。
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器仮置きプールを開放する方法及び炉内機器の移送方法に係り、特に、沸騰水型原子力プラントに適用するのに好適な機器仮置きプールを開放する方法及び炉内機器の移送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
沸騰水型原子力プラントでは、原子炉が、原子炉建屋内に設置された原子炉格納容器内に据え付けられている。運転床が、原子炉建屋内で原子炉格納容器の上方に形成されている。運転床に取り囲まれた原子炉ウェルが、原子炉の真上で原子炉格納容器の上方に形成されている。運転床に取り囲まれている機器仮置きプール及び燃料貯蔵プールが、原子炉ウェルに隣り合わせでそれぞれ配置される。機器仮置きプール、原子炉ウェル及び燃料貯蔵プールは、この順に一列に配置されている。機器仮置きプール及び燃料貯蔵プールはゲートを介して原子炉ウェルに連通される。
【0003】
原子炉の運転時では、機器仮置きプールと原子炉ウェル、及び燃料貯蔵プールと原子炉ウェルは、それぞれゲートで仕切られており、互いに連通していない。原子炉の運転時においては、機器仮置きプールと原子炉ウェルには冷却水が充填されていない。燃料貯蔵プールには冷却水が充填されており、多数の使用済み燃料集合体が燃料貯蔵プール内の冷却水中に保管されている。原子炉の運転中、両端部が運転床で支持された複数のプールカバーが、機器仮置きプールの上面を覆って機器仮置きプールを封鎖しており、両端部が運転床で支持された複数の遮へいプラグが原子炉ウェルの上面を覆っている。
【0004】
沸騰水型原子力プラントでは、定期検査が定期的に実施される。この定期検査は、原子炉の運転を停止した後に行われる。定期検査の期間中において、原子炉内の炉心に装荷されている一部の燃料集合体の交換、及び炉内構造物に対する保守点検も行われる。燃料集合体の交換、及び炉内構造物に対する保守点検を行う場合には、原子炉を開放する必要がある。原子炉開放の作業は以下のように行われ、このときには、レイダウン作業も併せて行われる。レイダウン作業において、運転床の床面及び機器仮置きプールの底面がレイダウンエリアになる。
【0005】
原子炉建屋内でのレイダウン作業について説明する。原子炉ウェルを覆っている各遮へいプラグが、原子炉建屋の天井に設置された天井クレーンを用いて運転床面上の所定の位置まで搬送される。原子炉格納容器から取り外された上蓋が、天井クレーンを用いて原子炉ウェル内を通って運転床面上の所定の位置まで搬送される。原子炉圧力容器の上蓋も、原子炉圧力容器から取り外され、天井クレーンを用いて持ち上げられる。この上蓋は、原子炉ウェル内を上昇し、運転床面上の所定の位置に置かれる。機器仮置きプールを覆っている複数のプールカバーは、天井クレーンで搬送され、機器仮置きプール付近の運転床面上に積み重ねられる。
【0006】
原子炉圧力容器の上蓋が取り外された後、原子炉ウェル及び機器仮置きプール内に冷却水が充填される。機器仮置きプールと原子炉ウェルを仕切っているゲートが取り外されて運転床面上に置かれている。原子炉圧力容器内に設置された蒸気乾燥器が、取り外され、天井クレーンによって原子炉ウェルを通して機器仮置きプール内まで移送される。この蒸気乾燥器は、冷却水を充填した機器仮置きプールの底面に置かれる。原子炉圧力容器内で炉心の上方に配置された気水分離器も、機器仮置きプール内まで移送され、機器仮置きプールの底面に置かれる。以上で、レイダウン作業が終了する。
【0007】
定期検査が終了するまで、蒸気乾燥器及び気水分離器が機器仮置きプールの水中に保管される。炉心に装荷されている燃料集合体のうち、寿命になった一部の燃料集合体が、運転床上を移動する燃料交換機によって把持され、燃料貯蔵プールまで移動される。
【0008】
機器仮置きプールのプールカバーの例が、特開2007−271405号公報、特開昭62−64995号公報及び特開昭60−202393号公報に記載されている。
【0009】
特開2007−271405号公報に記載された、機器仮置きプールを覆うプールカバーは、2つに折り畳むことが可能な構成を有する。ウインチが設けられ、ウインチに巻きつけられたワイヤがプールカバーに取り付けられる。プールカバーの折り曲げによる収納及び引き伸ばしによる機器仮置きプール上面の封鎖は、ウインチの駆動によるワイヤの巻き取り及び巻き戻しによって行われる。
【0010】
特開昭62−64995号公報に記載されたプールカバーは、運転床上を移動する台車、リンク機構を用いてプールの両側に配置された折りたたみ式連結機、これらの連結機をつなぐ複数の軸、及びこれらの軸を覆って取り付けられたシート状カバーを有する。台車を移動させることによって連結機が、伸びたり、縮んだりする。これにより、機器仮置きプールがシート状カバーで覆われたり、シート状カバーが畳まれて機器仮置きプールが開放されたりする。
【0011】
特開昭60−202393号公報に記載されたプールカバーは、複数のシートカバーが連結されており、ハンドルを回転させることによってドラムに巻き取られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2007−271405号公報
【特許文献2】特開昭62−64995号公報
【特許文献3】特開昭60−202393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
運転床、すなわち、レイダウンエリアが狭いので、複数の遮へいプラグ、原子炉格納容器の上蓋及び原子炉圧力容器の上蓋等がレイダウン作業によって運転床上面に並べられたとき、運転床での作業員の通行に支障が生じ、定期検査時における炉内構造物等の原子炉圧力容器内の保守点検に要する時間が長くなる可能性がある。
【0014】
特開2007−271405号公報に記載されたプールカバーが機器仮置きプールの上面を覆っているとき、このプールカバーを作業床として使用することができる。しかしながら、機器仮置きプールに蒸気乾燥器および気水分離器を搬入するときには、ウインチを駆動させて機器仮置きプールを覆っているプールカバーを、2つに折り畳むように、機器仮置きプールに面する原子炉建屋の側壁の内面に向って移動させ、収納する。機器仮置きプールが開放されるので、原子炉圧力容器から取り出した蒸気乾燥器及び気水分離器が機器仮置きプール内に天井クレーンにより順次搬入される。その後、2つに折り畳まれたプールカバーが引き伸ばされて機器仮置きプールを覆うので、作業床となるプールカバー上を作業員が通行することができる。
【0015】
原子炉圧力容器内の炉内構造物の保守点検が終了した後、燃料貯蔵プール内の新燃料集合体が、燃料交換機によって炉心内に装荷される。新燃料集合体の装荷後に、機器仮置きプール内の気水分離器及び蒸気乾燥器が、この順に、原子炉圧力容器の所定の各位置まで搬入され、これらの位置で原子炉圧力容器に設置される。運転床上に置かれた各上蓋が原子炉圧力容器及び原子炉格納容器にそれぞれ取り付けられる。気水分離器及び蒸気乾燥器が搬出された機器仮置きプールの上面がプールカバーで覆われる。このプールカバーは原子炉の運転中でも機器仮置きプールの上面を覆っている。原子炉の運転中では、機器仮置きプール及び原子炉ウェル内の冷却水は、排出されており、空の状態になっている。
【0016】
このように、特開2007−271405号公報に記載されたプールカバーは、機器仮置きプールへの蒸気乾燥器等の搬入時に開け閉めされ、機器仮置きプールからの蒸気乾燥器等の搬出時にも開け閉めされる。特開2007−271405号公報に記載されたプールカバーでは、蒸気乾燥器等の搬入時及び搬出時における開け閉め操作がそれぞれ2回必要になる。プールカバーの開閉操作時には、作業員はプールカバー上を通行することができない。特開昭62−64995号公報及び特開昭60−202393号公報に記載された各プールカバーでも、同様に、蒸気乾燥器等の搬入時及び搬出時における開け閉め操作がそれぞれ2回必要になる。特開昭62−64995号公報及び特開昭60−202393号公報は、機器仮置きプールを覆っているプールカバーの上面を作業員の通路として使用することを考慮していない。
【0017】
また、特開2007−271405号公報に記載されたプールカバーは、ウインチ等のプールカバーを開閉する機構が必要になり、構造が複雑化している。特開昭62−64995号公報及び特開昭60−202393号公報に記載された各プールカバーでも、同様に、構造が複雑化している。
【0018】
本発明の目的は、構造が単純化でき、原子炉建屋内のレイダウン作業に要する時間を短縮することができる機器仮置きプールを開放する方法及び炉内機器の移送方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、原子力プラントの運転停止後に、原子炉建屋内の運転床に形成された機器仮置きプールの上方を封鎖している複数のプールカバーを、少なくとも1枚のプールカバーを残して除去し、
少なくとも1枚の第1のプールカバーが機器仮置きプールを跨いで配置されてこの第1のプールカバーの両端部が機器仮置きプールの対向する2つの側面を形成している運転床に保持された状態で、原子炉内から取り出されて機器仮置きプール内に搬入される機器を吊っているワイヤが水平方向に移動する領域を、第1のプールカバーと、機器仮置きプールの側面の間に形成することにある。
【0020】
少なくとも1枚のプールカバーが機器仮置きプールを跨いで配置されているので、作業員がこのプールカバーの上を歩行することができる。このため、レイダウン作業時における作業員の移動がより迅速に行うことができ、レイダウン作業に要する時間を短縮することができる。機器仮置きプールの上方に作業員の歩行通路を形成した状態で、原子炉内の機器を機器仮置きプール内の移送することができるので、レイダウン作業に要する時間をさらに短縮することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、プールカバーの構造が単純化でき、原子炉建屋内のレイダウン作業に要する時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の好適な一実施例である実施例1の機器仮置きプールを開放する方法を実現することができる、沸騰水型原子力プラントの運転中における機器仮置きプールをプールカバーで封鎖した状態を示す説明図である。
【図2】実施例1の機器仮置きプールを開放する方法により配置した、機器仮置きプールでのプールカバーの配置状態を示す説明図である。
【図3】沸騰水型原子力プラントの原子炉建屋内での運転床付近の縦断面図である。
【図4】図3のIV−IV断面図である。
【図5】実施例1で用いられるプールカバーの側面図である。
【図6】図2のVI−VI断面図である。
【図7】図2のVII−VII断面図である。
【図8】本発明の他の実施例である実施例2の機器仮置きプールを開放する方法を実現することができる、沸騰水型原子力プラントの運転中における機器仮置きプールをプールカバーで封鎖した状態を示す説明図である。
【図9】実施例2の機器仮置きプールを開放する方法により配置した、機器仮置きプールでのプールカバーの配置状態を示す説明図である。
【図10】本発明の他の実施例である実施例3の機器仮置きプールを開放する方法を実現することができる、沸騰水型原子力プラントの運転中における機器仮置きプールをプールカバーで封鎖した状態を示す説明図である。
【図11】実施例3の機器仮置きプールを開放する方法により配置した、機器仮置きプールでのプールカバーの配置状態を示す説明図である。
【図12】隣り合うプールカバーの係合構造の他の例を示す構成図である。
【図13】隣り合うプールカバーの係合構造の他の例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施例を以下に説明する。
【実施例1】
【0024】
本発明の好適な一実施例である実施例1の機器仮置きプールを開放する方法を、図1及び図2を用いて説明する。本実施例のプールカバーを開放する方法は、沸騰水型原子力プラントに適用される。
【0025】
この沸騰水型原子力プラントの原子炉が配置される原子炉建屋内の構造を、運転床付近を中心に、図3及び図4を用いて説明する。沸騰水型原子力プラントは、原子炉格納容器4を原子炉建屋1内に配置しており、原子炉圧力容器2を原子炉格納容器4内に設置している。原子炉圧力容器上蓋(以下、RPV上蓋という)3が、原子炉圧力容器2の上端部に配置され、原子炉圧力容器2のフランジに着脱可能に取り付けられている。蒸気乾燥器(図示せず)及び気水分離器(図示せず)が原子炉圧力容器2内に設置されている。気水分離器が原子炉圧力容器2内に設けられた炉心(図示せず)の上方に配置され、蒸気乾燥器が気水分離器の上方に配置される。原子炉圧力容器保温材が原子炉圧力容器2の周囲に取り付けられる。
【0026】
原子炉格納容器上蓋(以下、PCV上蓋という)5が、原子炉格納容器4の上端部に配置され、取り外し可能に原子炉格納容器4の上端部に取り付けられる。運転床6が、原子炉建屋1内で原子炉格納容器4の上方に形成されている。運転床6に囲まれて形成された機器仮置きプール8、原子炉ウェル7及び燃料貯蔵プール9が、原子炉格納容器4の上方に配置されている。原子炉ウェル7は原子炉圧力容器2の真上に位置しており、機器仮置きプール8、原子炉ウェル7及び燃料貯蔵プール9がこの順に一列に配置されている。機器仮置きプール8の横断面は矩形であり、機器仮置きプール8の長手方向が機器仮置きプール8、原子炉ウェル7及び燃料貯蔵プール9の並びに一致している。
【0027】
キャスクピット10が燃料貯蔵プール9の側に配置される。運転床6の床面が、機器仮置きプール8、原子炉ウェル7及び燃料貯蔵プール9を間に挟んで、第1領域20Aと第2領域20Bに分かれている。運転床6の第2領域20Bには大物搬出口11が形成されており、この大物搬入口11が燃料貯蔵プール9の側に存在する。新燃料集合体貯蔵庫12が、運転床6の第1領域20Aに設けられ、燃料貯蔵プール9の側に配置されている。
【0028】
燃料交換機13が、原子炉ウェル7を跨ぐように配置されて、運転床6上に設けられたレール(図示せず)上に移動可能に設置される。この燃料交換機13は、原子炉ウェル7及び燃料貯蔵プール9の上方を運転床6に設けられたレールに沿って移動する。天井クレーン14が、燃料交換機13の上方に配置されて、原子炉建屋1内で原子炉建屋1の天井付近に設置される。天井クレーン14は、原子炉建屋1内に敷設されたレール上を移動する走行台車15、及び走行台車15に設置されて走行台車15上を移動する横行台車16を有する。運転室17が、走行台車15に設けられ、走行台車15から下方に向って伸びている。
【0029】
沸騰水型原子力プラントの運転中、原子炉ウェル7は、運転床7上に置かれた複数の遮へいプラグ18で覆われている(図4参照)。本実施例では、5個の遮へいプラグ18、すなわち、1個の遮へいプラグ18A、1個の遮へいプラグ18B、及び3個の遮へいプラグ18Cが存在する。沸騰水型原子力プラントの運転中において、原子炉ウェル7と機器仮置きプール8を連絡する通路30は、この内部に配置された複数のゲート19によって仕切られている。機器仮置きプール8は、沸騰水型原子力プラントの運転中、複数のプールカバー21、例えば、7枚のプールカバー21A〜21Gによって覆われて封鎖されている。プールカバー21A〜21Gのそれぞれの長さはL1である(図1参照)。長さL1は機器仮置きプール8の幅に等しい。プールカバー21A〜21Gのそれぞれの幅はL1/6である。プールカバー21Aの幅は、機器仮置きプール8の長手方向の長さL2からプールカバー21B〜21Gの各幅の合計値L1を引いた値(L2−L1)である。プールカバー21Aが、機器仮置きプール8の領域で原子炉ウェル7から最も遠い位置に配置されて、原子炉ウェル7と反対側に位置する、機器仮置きプール8の1つの側面に接触している。プールカバー21Gが、原子炉ウェル7に最も近い位置に配置され、原子炉ウェル7側の、機器仮置きプール8の側面に接触している。本実施例では、機器仮置きプール8を覆っている6枚のプールカバー21B,21C,21D,21E,21F及び21Gが占有している領域の形状は、L1×L1の正方形をしている(図1参照)。各プールカバー21A〜21Gは、両端部に複数の支持ハンガー部材22を設けている(図1及び図5参照)。各プールカバー21A〜21Gが機器仮置きプール8を覆っている状態で、縦断面がコの字状になっている各支持ハンガー部材22が、運転床6の、機器仮置きプール8に面する部分の上面に形成された突起部(図6に示す突起部23と同じ構成)に引っ掛けられている。このようにして、各プールカバー21A〜21Gが運転床6に保持される。プールカバー21Aは、機器仮置きプール8の、原子炉ウェル7とは反対側の側面に面する側端に、長手方向において間隔を置いて、複数(例えば、4個)の支持ハンガー部材22Aを設けている(図1参照)。これらの支持ハンガー部材22Aは、運転床6の、機器仮置きプール8の、原子炉ウェル7とは反対側の側面に面する部分の上面に形成された突起部23に引っ掛けられている(図6参照)。
【0030】
以上のプールカバー21の移送によって機器仮置きプール8の上方が開放される。すなわち、機器仮置きプール8がプールカバー21A,21B,21Cで取り囲まれた領域33で開放されている。この領域33は、後述する炉内機器である蒸気乾燥器及び気水分離器を移送する際において、この炉内機器を天井クレーン14に吊っているワイヤが水平方向に移動する領域になる。
【0031】
定期検査を行うために沸騰水型原子力プラントの運転が停止された後、レイダウン作業が実施される。このレイダウン作業の詳細を以下に説明する。レイダウン作業には、天井クレーン14が用いられ、天井クレーン14に設けられた運転室18が運転床6の第1領域20Aの上方を移動する。この運転室18は運転床6の第2領域20Bの上方を移動しない。第2領域20Bは、機器仮置きプール8、原子炉ウェル7及び燃料貯蔵プール9を間に挟んで第1領域20Aの向かい側の位置に存在する。
【0032】
まず、機器仮置きプール8を覆っている一部のプールカバー21が取り外されて移送される。機器仮置きプール8を覆っている各プールカバー21のうちプールカバー21D〜21Gを、天井クレーン14で順次吊り上げて、機器仮置きプール8の原子炉ウェル7とは反対側の端と原子炉建屋1の側壁との間に形成されたカバー仮置きスペース25まで移送する。プールカバー21D〜21Gは、カバー仮置きスペース25に積み重ねて置かれる。プールカバー21A(第1のプールカバー)は、移動されずに沸騰水型原子力プラントの運転中の状態のまま、機器仮置きプール8の端部を覆っている。プールカバー21Aは、原子炉ウェル7側の側端で上面に、長手方向に伸びる突起部24が形成されている(図1、図6及び図7参照)。プールカバー21A上を歩く作業員が機器仮置きプール8内に落ちるのを防止するために、手すり28がプールカバー21Aの突起部24に取り付けられる。
【0033】
プールカバー21B(第2のプールカバー)が、天井クレーン14で吊り上げられて90°回転されて、機器仮置きプール8の、第1領域20A側の側面に接触して配置され(図2参照)、機器仮置きプール8の一部を覆っている。この状態で、プールカバー21Bの一端に設けられた一対の支持ハンガー部材22がプールカバー21Aの突起部24上に置かれる(図7参照)。これらの支持ハンガー部材22の先端が突起部24に引っ掛けられている。プールカバー21Bの他端に設けられた一対の支持ハンガー部材22が、機器仮置きプール8の、原子炉ウェル7側の端に面する運転床6の床面に形成された突起部(図示せず)の上に置かれ、これらの支持ハンガー部材22の先端がこの突起部に引っ掛けられる。
【0034】
プールカバー21C(第2のプールカバー)も、天井クレーン14で吊り上げられて90°回転される。プールカバー21Cは、機器仮置きプール8の、第2領域20B側の側面に接触して配置され(図2参照)、機器仮置きプール8の一部を覆っている。この状態で、プールカバー21Cの一端に設けられた一対の支持ハンガー部材22がプールカバー21Aの突起部24上に置かれる(図7参照)。これらの支持ハンガー部材22の先端が突起部24に引っ掛けられている。プールカバー21Cの他端に設けられた一対の支持ハンガー部材22が、プールカバー21Bと同様に、機器仮置きプール8の、原子炉ウェル7側の端に面する運転床6の床面に形成された突起部(図示せず)の上に置かれ、これらの支持ハンガー部材22の先端がこの突起部に引っ掛けられる。
【0035】
図示されていないが、手すり28が、機器仮置きプール8を覆って上記のように配置されたプールカバー21B,21Cの機器仮置きプール8側の側端に、長手方向に沿って取り付けられる。プールカバー21B,21Cがプールカバーと直交して配置されている。
【0036】
プールカバー21A〜21Cが図2に示すように配置された後、原子炉ウェル7を覆っている遮へいプラグ17のうち、機器仮置きプール8側に位置する遮へいプラグ17A、及び燃料貯蔵プール9側に位置する遮へいプラグ17Bが、順番に天井クレーン14によって吊り上げられて運転床6の上まで移動される。遮へいプラグ17A,17Bは、機器仮置きプール8側で運転床6の第1領域20Aの床面上に、側面が対向するように近接して置かれる。遮へいプラグ17のうち、残りの3個の遮へいプラグ17Cも、原子炉ウェル7の側で運転床6の第1領域20Aの床面上に置かれる。機器仮置きプール8と原子炉ウェル8を仕切っている各ゲート19が、天井クレーン14によって順次移送されて運転床6の第1領域20Aの床面上に置かれる。
【0037】
原子炉格納容器4から取り外されたPCV上蓋5は、天井クレーン14に吊り下げられて原子炉ウェル7内を上昇し、運転床6の第2領域20Bの床面上に置かれる。RPV上蓋3を覆ってRPV上蓋3に取り付けられているRPV保温材(図示せず)が、RPV上蓋3から取り外される。このRPV保温材が、天井クレーン14によって吊り上げられ、機器仮置きプール8の側で運転床6の第1領域20Aの床面上に置かれる。RPV保温材は、運転床6の第1領域20Aの床面上に置かれた遮へいプラグ17Cの隣りで機器仮置きプール8の側に置かれる。RPV上蓋3が、原子炉圧力容器2のフランジから取り外され、天井クレーン14によって吊り上げられる。吊り上げられたRPV上蓋3が、大物搬入口11側で既に置かれているPCV上蓋5に近接して、運転床6の第2領域20Bの床面上に置かれる。
【0038】
RPV上蓋3が移送された後、原子炉圧力容器2内に設置されている炉内機器である蒸気乾燥器が、取り外され、天井クレーン14に吊り下げられる。この蒸気乾燥器が、天井クレーン14の駆動によって、原子炉圧力容器2から取り出され、原子炉ウェル7内を上昇する。この蒸気乾燥器は、原子炉ウェル7から通路30を経て機器仮置きプール8内に移送される。このとき、プールカバー21A〜21Cが図2のように配置されて機器仮置きプール8を覆っている。吊り天秤(図示せず)を用いて蒸気乾燥器を天井クレーン14に吊っているので、蒸気乾燥器を機器仮置きプール8内に搬入するとき、プールカバー21A〜21Cが、天井クレーン14に掛けられて吊り天秤に取り付けられたワイヤ(図示)の水平方向への移動の障害にはならない。ワイヤは、蒸気乾燥器の移送時に水平方向に移動する際に、領域33内を移動する。蒸気乾燥器は、機器仮置きプール8の底面上に置かれる。蒸気乾燥器が機器仮置きプール8の底面上に置かれたとき、吊り天秤及びワイヤは、前述したように機器仮置きプール8の端部を覆っているプールカバー21Aよりも原子炉ウェル7側に位置している。蒸気乾燥器の機器仮置きプール8への移送が終了した後、原子炉ウェル7及び機器仮置きプール8内に冷却水が充填される。さらに、原子炉圧力容器2から取り外された気水分離器が、天井クレーン14に吊り下げられて原子炉ウェル7内の水中を上昇し、通路30を通って冷却水が充填された機器仮置きプール8内に搬入される。この気水分離器が機器仮置きプール8の底面上に置かれる。機器仮置きプール8の底面もレイダウンエリアである。気水分離器が機器仮置きプール8の底面上に置かれたとき、レイダウン作業が終了する。
【0039】
蒸気乾燥器26及び気水分離器27は、沸騰水型原子力プラントの定期検査が行われる間、機器仮置きプール8内に保管される。気水分離器27も炉内機器である。
【0040】
以上により、沸騰水型原子力プラントの原子炉建屋1内でのレイダウン作業が終了する。
【0041】
本実施例では、沸騰水型原子力プラントの運転中に、機器仮置きプール8の幅L1を長さとするプールカバー21A〜21Gが機器仮置きプール8を覆っており、プールカバー21B〜21Gのそれぞれの幅がL1/6であり、プールカバー21Aの幅が(L2−L1)になっている。このため、機器仮置きプール8を覆っているプールカバー21D〜21Gを取り外し、プールカバー21B及び21Cを90°回転させて機器仮置きプール8の対向する長手方向のそれぞれの側面に別々に接触するように配置することによって、機器仮置きプール8の、原子炉ウェル7側の側面を除いた他の3つの側面付近で、機器仮置きプール8の上方に、プールカバー21A,21B,21Cの上面に作業員が通行できる通路を形成することができる。このため、レイダウン作業によって運転床6の床面上に遮へいプラグ18及びPCV上蓋5等が置かれて運転床6の床面が狭くなり、作業員が運転床6の床面上を通行することが困難になってきた場合には、作業員は、上記の3つの側面付近で機器仮置きプール8を覆って配置されたプールカバー21A,21B,21Cの上面に形成された通路を歩行することができる。レイダウン作業時においてPCV上蓋5等のレイダウン対象物を運転床6の床面上の所定の位置に置くとき、作業員は、運転床6上を移動し、レイダウン対象物を置く所定の位置で作業を補助する必要がある。このため、作業員がプールカバー21A,21B,21Cの上面を歩行できるので、作業員が、形成された通路上を移動し、その所定の位置までより迅速に到達することができる。また、必要な工具を広げて置けるスペースが増大する。これらにより、原子炉建屋内のレイダウン作業に要する時間を短縮することができる。
【0042】
本実施例では、機器仮置きプール8を覆って配置されたプールカバー21A,21B,21Cの上面に通路を形成した状態で、炉内機器(蒸気乾燥器及び気水分離器)を吊っているワイヤを領域33内を移動させることにより、炉内機器を機器仮置きプール8内に搬入することができるので、レイダウン作業に要する時間をさらに短縮することができる。
【0043】
本実施例では、プールカバー21の取り外しによる機器仮置きプール8の開放、及びプールカバー21による機器仮置きプールの封鎖は、一回の定期検査につき、それぞれ一回ずつ行えば良い。このため、特開2007−271405号公報、特開昭62−64995号公報及び特開昭60−202393号公報に比べて、一回の定期検査における、機器仮置きプール8の開放、及びプールカバー21による機器仮置きプールの封鎖の各作業がそれぞれ1回ずつ低減できる。
【0044】
本実施例では、プールカバーに、プールカバーを開け閉めする駆動装置を取り付ける必要が無いので、プールカバーの構造が、特開2007−271405号公報、特開昭62−64995号公報及び特開昭60−202393号公報に記載されたプールカバーよりも単純化することができる。
【0045】
プールカバー21B,21Cを機器仮置きプール8の上に配置しないで、プールカバー21Aのみを配置した場合でも、レイダウン作業に要する時間を短縮することができる。プールカバー21Aは、炉内機器を吊っているワイヤの水平方向への移動に支障が生じない範囲で、突起部23が設けられている側の、機器仮置きプール8の側面から離して配置しても良い。
【実施例2】
【0046】
本発明の他の実施例である実施例2の機器仮置きプールを開放する方法を、図8及び図9を用いて説明する。本実施例の機器仮置きプールを開放する方法は、沸騰水型原子力プラントに適用される。
【0047】
本実施例の機器仮置きプールを開放する方法は、実施例1において沸騰水型原子力プラントの運転中に機器仮置きプール8を覆っているプールカバー21A以外の各プールカバー21の形状を変え、沸騰水型原子力プラント運転中に機器仮置きプール8を覆っているこれらのプールカバー21を対象に行われる。沸騰水型原子力プラント運転中において、機器仮置きプール8は、9枚のプールカバー21で覆われている。これらのプールカバー21は、プールカバー21A,21B,21C及び21Hである。プールカバー21A,21B,21Cはそれぞれ1枚であり、プールカバー21Hは6枚である。
【0048】
プールカバー21A(第1のプールカバー)は、実施例1と同様に、機器仮置きプール8の、原子炉ウェル7側の側面と対向する他の側面に接するように配置され、機器仮置きプール8の一部を覆っている。プールカバー21Aに設けられた支持ハンガー部材22,22Aが、実施例1と同様に、運転床6の上面に形成された突起部に引っ掛けられている。プールカバー21B(第2のプールカバー)は、機器仮置きプール8の、長手方向に伸びる1つの側面に沿って配置され、この側面に接している。プールカバー21Bの一端部に設けられた一対の支持ハンガー部材22がプールカバー21Aの上面に形成された突起部24上に置かれ、これらの支持ハンガー部材22の先端がその突起部24に引っ掛けられている。プールカバー21Bの他端に設けられた一対の支持ハンガー部材22が、機器仮置きプール8の、原子炉ウェル7側の端に面する運転床6の床面に形成された突起部(図示せず)の上に置かれ、これらの支持ハンガー部材22の先端がこの突起部に引っ掛けられる。複数の支持ハンガー部材22Bがプールカバー21Bの長手方向に伸びる1つの側面部に設けられる。これらの支持ハンガー部材22Bが、プールカバー21Bが接する側面付近で、運転床6の床面に形成された突起部(図示せず)の上に置かれ、これらの支持ハンガー部材22Bの先端がこの突起部に引っ掛けられる。
【0049】
プールカバー21C(第2のプールカバー)は、プールカバー21Bが接している側面に対向する、機器仮置きプール8の他の側面に沿って配置され、この側面に接している。プールカバー21Cの一端部に設けられた一対の支持ハンガー部材22がプールカバー21Aの上面に形成された突起部24上に置かれ、これらの支持ハンガー部材22の先端がその突起部24に引っ掛けられている。プールカバー21Cの他端に設けられた一対の支持ハンガー部材22が、機器仮置きプール8の、原子炉ウェル7側の端に面する運転床6の床面に形成された突起部(図示せず)の上に置かれ、これらの支持ハンガー部材22の先端がこの突起部に引っ掛けられる。複数の支持ハンガー部材22Cがプールカバー21Cの長手方向に伸びる1つの側面部に設けられる。これらの支持ハンガー部材22Cが、プールカバー21Cが接する側面付近で、運転床6の床面に形成された突起部(図示せず)の上に置かれ、これらの支持ハンガー部材22Cの先端がこの突起部に引っ掛けられる。
【0050】
複数(例えば、6枚)のプールカバー21Hが、機器仮置きプール8の長手方向に並べられて配置されている。各プールカバー21Hの一端部に設けられた一対の支持ハンガー部材22が、プールカバー21Bの長手方向に伸びる1つの側面部の上面に形成された突起部24A上に置かれ、これらの支持ハンガー部材22の先端が突起部24Aに引っ掛けられている。各プールカバー21Hの他端部に設けられた一対の支持ハンガー部材22が、プールカバー21Cの長手方向に伸びる1つの側面部の上面に形成された突起部24B上に置かれ、これらの支持ハンガー部材22の先端が突起部24Bに引っ掛けられている。
【0051】
上記のように配置されたプールカバー21A,21B,21C及び21Hは、沸騰水型原子力プラントの運転中に、機器仮置きプール8を覆って機器仮置きプール8を封鎖している。
【0052】
定期検査を行うために沸騰水型原子力プラントの運転が停止された後、実施例1と同様に、レイダウン作業が実施される。このレイダウン作業の詳細を以下に説明する。このレイダウン作業において、機器仮置きプール8を覆っている全てのプールカバー21Hが、天井クレーン14で順次吊り上げられて移送され、運転床6の床面上のカバー仮置きスペース25に積み重ねられる。機器仮置きプール8では、各プールカバー21Hで覆われていた領域が開放される。機器仮置きプール8は、プールカバー21A、プールカバー21B及びプールカバー21Cで囲まれた領域33Aで開放される。
【0053】
その後、実施例1と同様に、PCV上蓋5等の運転床6の床面上への移送、及び蒸気乾燥器等の機器仮置きプール8の底面への移送が行われる。蒸気乾燥器及び気水分離器の機器仮置きプール8内への移送時には、蒸気乾燥器等を吊るしているワイヤが領域33A内を移動する。このため、蒸気乾燥器及び気水分離器の機器仮置きプール8内への移送が容易に行われる。
【0054】
レイダウン作業等において、作業員がプールカバー21A,21B,21Cの上を歩行することができる。本実施例は、実施例1で生じる各効果を得ることができる。
【0055】
プールカバー21B,21Cを配置せず、プールカバー21Aのみを配置しても、レイダウン作業に要する時間を短縮することができる。
【実施例3】
【0056】
本発明の他の実施例である実施例3の機器仮置きプールを開放する方法を、図10及び図11を用いて説明する。本実施例の機器仮置きプールを開放する方法は、沸騰水型原子力プラントに適用される。
【0057】
本実施例の機器仮置きプールを開放する方法は、実施例2において、沸騰水型原子力プラントの運転中に機器仮置きプール8を覆っているプールカバー21Aをプールカバー21Iとし、プールカバー21B、21Cをプールカバー21J,21Kとしたものである。プールカバー21Iはプールカバー21Hと同じ長さを有し、プールカバー21J,21Kの長さはプールカバー21B、21Cよりも長くなっている。本実施例では、機器仮置きプール8は、沸騰水型原子力プラント運転中において、6枚のプールカバー21H、1枚のプールカバー21I、1枚のプールカバー21J及び1枚のプールカバー21Kで覆われている。
【0058】
プールカバー21Jは、機器仮置きプール8の、長手方向に伸びる1つの側面に沿って配置され、この側面に接している。プールカバー21Jの一端部に設けられた一対の支持ハンガー部材22が、運転床6の床面に形成された突起部23上に置かれ、これらの支持ハンガー部材22の先端がその突起部23に引っ掛けられている。プールカバー21Jの他端に設けられた一対の支持ハンガー部材22が、機器仮置きプール8の、原子炉ウェル7側の端に面する運転床6の床面に形成された突起部(図示せず)の上に置かれ、これらの支持ハンガー部材22の先端がこの突起部に引っ掛けられる。複数の支持ハンガー部材22Eがプールカバー21Jの長手方向に伸びる1つの側面部に設けられる。これらの支持ハンガー部材22Eが、プールカバー21Jが接する側面付近で、運転床6の床面に形成された突起部(図示せず)の上に置かれ、これらの支持ハンガー部材22Eの先端がこの突起部に引っ掛けられる。
【0059】
プールカバー21Kは、プールカバー21Jが接している側面に対向する、機器仮置きプール8の他の側面に沿って配置され、この側面に接している。プールカバー21Kの一端部に設けられた一対の支持ハンガー部材22が運転床6に形成された突起部23上に置かれ、これらの支持ハンガー部材22の先端がその突起部23に引っ掛けられている。プールカバー21Kの他端に設けられた一対の支持ハンガー部材22が、機器仮置きプール8の、原子炉ウェル7側の端に面する運転床6の床面に形成された突起部(図示せず)の上に置かれ、これらの支持ハンガー部材22の先端がこの突起部に引っ掛けられる。複数の支持ハンガー部材22Fがプールカバー21Kの長手方向に伸びる1つの側面部に設けられる。これらの支持ハンガー部材22Fが、プールカバー21Kが接する側面付近で、運転床6の床面に形成された突起部(図示せず)の上に置かれ、これらの支持ハンガー部材22Fの先端がこの突起部に引っ掛けられる。
【0060】
プールカバー21Iが、突起部23が存在する側の、機器仮置きプール8の側面に沿って配置され、この側面に接している。プールカバー21Iの一端部に設けられた一対の支持ハンガー部材22がプールカバー21Jの1つの側面部上に形成された突起部24C上に置かれ、これらの支持ハンガー部材22の先端がその突起部24Cに引っ掛けられている。プールカバー21Iの他端部に設けられた一対の支持ハンガー部材22がプールカバー21Kの1つの側面部上に形成された突起部24D上に置かれ、これらの支持ハンガー部材22の先端がその突起部24Dに引っ掛けられている。プールカバー21Iの1つの側面部に設けられた複数の支持ハンガー部材22Dが、運転床6上の突起部23に引っ掛けられている。
【0061】
6枚のプールカバー21Hが原子炉ウェル7からプールカバー21Iに向って並んで配置されている。プールカバー21Hの一端部に設けられた一対の支持ハンガー部材22がプールカバー21Jに形成された突起部24C上に置かれ、これらの支持ハンガー部材22の先端がその突起部24Cに引っ掛けられている。プールカバー21Hの他端部に設けられた一対の支持ハンガー部材22がプールカバー21Kに形成された突起部24D上に置かれ、これらの支持ハンガー部材22の先端がその突起部24Dに引っ掛けられている。
【0062】
定期検査を行うために沸騰水型原子力プラントの運転が停止された後、実施例1と同様に、レイダウン作業が実施される。このレイダウン作業の詳細を以下に説明する。このレイダウン作業において、機器仮置きプール8を覆っている全てのプールカバー21Hが、天井クレーン14で順次吊り上げられて移送され、運転床6の床面上のカバー仮置きスペース25に積み重ねられる。機器仮置きプール8では、各プールカバー21Hで覆われていた領域が開放される。機器仮置きプール8は、プールカバー21I、プールカバー21J及びプールカバー21Kで囲まれた領域33Bで開放される。
【0063】
その後、実施例1と同様に、PCV上蓋5等の運転床6の床面上への移送、及び蒸気乾燥器等の機器仮置きプール8の底面への移送が行われる。蒸気乾燥器及び気水分離器の機器仮置きプール8内への移送時には、蒸気乾燥器等を吊るしているワイヤが領域33B内を移動する。このため、蒸気乾燥器及び気水分離器の機器仮置きプール8内への移送が容易に行われる。
【0064】
レイダウン作業等において、作業員がプールカバー21I,21J,21Kの上を歩行することができる。本実施例は、実施例2で生じる各効果を得ることができる。
【0065】
プールカバー21Iを配置せず、プールカバー21J及びプールカバー21Kのいずれかを配置しても、レイダウン作業に要する時間を短縮することができる。
【0066】
各実施例では、プールカバー21に設けた支持ハンガー部材を隣りのプールカバー21に形成した突起部に引っ掛けているが、図12または図13に示す係合構造を採用することによって、あるプールカバー21を隣りのプールカバー21で保持することができる。図12に示す係合構造について説明する。一方のプールカバー21の端部に下方に向かって折れ曲った保持部31を設け、このプールカバー21に隣接する他のプールカバー21の端部に上方に向って折れ曲がった保持部32を設ける。保持部32を保持部31で支持することによって、保持部32を有するプールカバー21を保持部31を有するプールカバー21によって支持することができる。
【0067】
図13に示す係合構造について説明する。一方のプールカバー21の端部に上方に向かって折れ曲った保持部32を設ける。この保持部32を、隣り合う他のプールカバー21の端部の上面に重ねることによって、保持部32を有するプールカバー21を他のプールカバー21で保持することができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、沸騰水型原子力プラントに適用できる。
【符号の説明】
【0069】
1…原子炉建屋、2…原子炉圧力容器、3…原子炉圧力容器上蓋、4…原子炉格納容器、5…原子炉格納容器上蓋、6…運転床、7…原子炉ウェル、8…機器仮置きプール、14…天井クレーン、18…遮へいプラグ、21,21A,21B,21C,21D,21E,21F,21G,21H,21I,21J,21K…プールカバー、22,22A,22B,22C,22D,22E,22F…支持ハンガー部材、23,24,24A,24B,24C,24D…突起部、28…手すり、30…通路、33,33A,33B…領域。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子力プラントの運転停止後に、原子炉建屋内の運転床に形成された機器仮置きプールの上方を封鎖している複数のプールカバーを、少なくとも1枚を残して除去し、
少なくとも1枚の第1の前記プールカバーが前記機器仮置きプールを跨いで配置されて前記第1のプールカバーの両端部が前記機器仮置きプールの対向する2つの側面を形成している前記運転床に保持された状態で、原子炉圧力容器内から取り出されて前記機器仮置きプール内に搬入される機器を吊っているワイヤが水平方向に移動する領域を、前記第1のプールカバーと前記機器仮置きプールの側面の間に形成することを特徴とする機器仮置きプールを開放する方法。
【請求項2】
2枚の第2の前記プールカバーが前記第1のプールカバーと交差する方向に配置され、各前記第2のプールカバーの一端部が前記第1のプールカバーに保持され、前記第2のプールカバーの他端部が前記運転床に保持された状態で、前記領域を、前記2枚の第2のプールカバーのそれぞれ及び前記第1のプールカバーで取り囲んで形成する請求項1に記載の機器仮置きプールを開放する方法。
【請求項3】
前記第2のプールカバーを90°旋回し、前記第2のプールカバーの前記一端部を前記第1のプールカバーに、前記第2のプールカバーの前記他端部を前記運転床にそれぞれ保持する請求項2記載の機器仮置きプールを開放する方法。
【請求項4】
前記第1のプールカバーを、前記第1のプールカバーの長手方向に伸びている、前記機器仮置きプールの1つの側面に接触させて配置する請求項1に記載の機器仮置きプールを開放する方法。
【請求項5】
前記第1のプールカバーを、前記第1のプールカバーの長手方向に伸びている、前記機器仮置きプールの1つの側面に接触させて配置し、1つの前記第2のプールカバーを、この第2のカバーの長手方向に伸びている、前記機器仮置きプールの1つの側面に接触させて配置し、他の前記第2のプールカバーを、この第2のカバーの長手方向に伸びている、前記機器仮置きプールの他の側面に接触させて配置する請求項2または3に記載の機器仮置きプールを開放する方法。
【請求項6】
2枚の前記第1のプールカバーが前記機器仮置きプールを覆って配置され、第2のプールカバーが前記第1のプールカバーと交差する方向に配置され、前記第2のプールカバーの一端部が1枚の前記第1のプールカバーに保持され、前記第2のプールカバーの他端部が他の前記第1のプールカバーに保持された状態で、前記領域を、各前記第1のプールカバー及び前記第2のプールカバーで取り囲んで形成する請求項1に記載の機器仮置きプールを開放する方法。
【請求項7】
1枚の前記第1のプールカバーを、この第1のプールカバーの長手方向に伸びている、前記機器仮置きプールの第1側面に接触させて配置し、他の第1のプールカバーを、前記第1側面に対向している、前記機器仮置きプールの第2側面に接触させて配置し、1つの前記第2のプールカバーを、この第2のカバーの長手方向に伸びている、前記機器仮置きプールの第3側面に接触させて配置する請求項6に記載の機器仮置きプールを開放する方法。
【請求項8】
原子力プラントの運転停止後に、原子炉圧力容器の上蓋を取り外し、
原子炉建屋内の運転床に形成された機器仮置きプールの上方を封鎖している複数のプールカバーを、少なくとも1枚を残して除去し、
少なくとも1枚の第1の前記プールカバーが、原子炉建屋内の運転床に形成された機器仮置きプールを跨いで配置されて前記第1のプールカバーの両端部が前記機器仮置きプールの対向する2つの側面を形成している前記運転床に保持された状態で、原子炉圧力容器内から取り出されて前記機器仮置きプール内に搬入される機器を吊っているワイヤが水平方向に移動する領域を、前記第1のプールカバーと、前記機器仮置きプールの側面の間に形成し、
前記機器を前記ワイヤで吊って前記原子炉圧力容器から取り出し、
前記ワイヤを前記領域内を移動させて、前記ワイヤで吊った前記機器を前記機器仮置きプール内に搬入することを特徴とする炉内機器の移送方法。
【請求項9】
2枚の第2の前記プールカバーが前記第1のプールカバーと交差する方向に配置され、それぞれの前記第2のプールカバーの一端部が前記第1のプールカバーに保持され、前記第2のプールカバーの他端部が前記運転床に保持された状態で、前記領域を、前記2枚の第2のプールカバーと前記第1のプールカバーの間に形成する請求項8に記載の炉内機器の移送方法。
【請求項10】
2枚の前記第1のプールカバーが前記機器仮置きプールを覆って配置され、第2のプールカバーが前記第1のプールカバーと交差する方向に配置され、前記第2のプールカバーの一端部が1枚の前記第1のプールカバーに保持され、前記第2のプールカバーの他端部が他の前記第1のプールカバーに保持された状態で、前記領域を、前期2枚の第1のプールカバーと前記第2のプールカバーの間に形成する請求項8に記載の炉内機器の移送方法。
【請求項1】
原子力プラントの運転停止後に、原子炉建屋内の運転床に形成された機器仮置きプールの上方を封鎖している複数のプールカバーを、少なくとも1枚を残して除去し、
少なくとも1枚の第1の前記プールカバーが前記機器仮置きプールを跨いで配置されて前記第1のプールカバーの両端部が前記機器仮置きプールの対向する2つの側面を形成している前記運転床に保持された状態で、原子炉圧力容器内から取り出されて前記機器仮置きプール内に搬入される機器を吊っているワイヤが水平方向に移動する領域を、前記第1のプールカバーと前記機器仮置きプールの側面の間に形成することを特徴とする機器仮置きプールを開放する方法。
【請求項2】
2枚の第2の前記プールカバーが前記第1のプールカバーと交差する方向に配置され、各前記第2のプールカバーの一端部が前記第1のプールカバーに保持され、前記第2のプールカバーの他端部が前記運転床に保持された状態で、前記領域を、前記2枚の第2のプールカバーのそれぞれ及び前記第1のプールカバーで取り囲んで形成する請求項1に記載の機器仮置きプールを開放する方法。
【請求項3】
前記第2のプールカバーを90°旋回し、前記第2のプールカバーの前記一端部を前記第1のプールカバーに、前記第2のプールカバーの前記他端部を前記運転床にそれぞれ保持する請求項2記載の機器仮置きプールを開放する方法。
【請求項4】
前記第1のプールカバーを、前記第1のプールカバーの長手方向に伸びている、前記機器仮置きプールの1つの側面に接触させて配置する請求項1に記載の機器仮置きプールを開放する方法。
【請求項5】
前記第1のプールカバーを、前記第1のプールカバーの長手方向に伸びている、前記機器仮置きプールの1つの側面に接触させて配置し、1つの前記第2のプールカバーを、この第2のカバーの長手方向に伸びている、前記機器仮置きプールの1つの側面に接触させて配置し、他の前記第2のプールカバーを、この第2のカバーの長手方向に伸びている、前記機器仮置きプールの他の側面に接触させて配置する請求項2または3に記載の機器仮置きプールを開放する方法。
【請求項6】
2枚の前記第1のプールカバーが前記機器仮置きプールを覆って配置され、第2のプールカバーが前記第1のプールカバーと交差する方向に配置され、前記第2のプールカバーの一端部が1枚の前記第1のプールカバーに保持され、前記第2のプールカバーの他端部が他の前記第1のプールカバーに保持された状態で、前記領域を、各前記第1のプールカバー及び前記第2のプールカバーで取り囲んで形成する請求項1に記載の機器仮置きプールを開放する方法。
【請求項7】
1枚の前記第1のプールカバーを、この第1のプールカバーの長手方向に伸びている、前記機器仮置きプールの第1側面に接触させて配置し、他の第1のプールカバーを、前記第1側面に対向している、前記機器仮置きプールの第2側面に接触させて配置し、1つの前記第2のプールカバーを、この第2のカバーの長手方向に伸びている、前記機器仮置きプールの第3側面に接触させて配置する請求項6に記載の機器仮置きプールを開放する方法。
【請求項8】
原子力プラントの運転停止後に、原子炉圧力容器の上蓋を取り外し、
原子炉建屋内の運転床に形成された機器仮置きプールの上方を封鎖している複数のプールカバーを、少なくとも1枚を残して除去し、
少なくとも1枚の第1の前記プールカバーが、原子炉建屋内の運転床に形成された機器仮置きプールを跨いで配置されて前記第1のプールカバーの両端部が前記機器仮置きプールの対向する2つの側面を形成している前記運転床に保持された状態で、原子炉圧力容器内から取り出されて前記機器仮置きプール内に搬入される機器を吊っているワイヤが水平方向に移動する領域を、前記第1のプールカバーと、前記機器仮置きプールの側面の間に形成し、
前記機器を前記ワイヤで吊って前記原子炉圧力容器から取り出し、
前記ワイヤを前記領域内を移動させて、前記ワイヤで吊った前記機器を前記機器仮置きプール内に搬入することを特徴とする炉内機器の移送方法。
【請求項9】
2枚の第2の前記プールカバーが前記第1のプールカバーと交差する方向に配置され、それぞれの前記第2のプールカバーの一端部が前記第1のプールカバーに保持され、前記第2のプールカバーの他端部が前記運転床に保持された状態で、前記領域を、前記2枚の第2のプールカバーと前記第1のプールカバーの間に形成する請求項8に記載の炉内機器の移送方法。
【請求項10】
2枚の前記第1のプールカバーが前記機器仮置きプールを覆って配置され、第2のプールカバーが前記第1のプールカバーと交差する方向に配置され、前記第2のプールカバーの一端部が1枚の前記第1のプールカバーに保持され、前記第2のプールカバーの他端部が他の前記第1のプールカバーに保持された状態で、前記領域を、前期2枚の第1のプールカバーと前記第2のプールカバーの間に形成する請求項8に記載の炉内機器の移送方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−127906(P2011−127906A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−283774(P2009−283774)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
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