説明

機械的な戻り防止装置

【課題】イベントの作用点を超えてボタン又はレバーのストロークを行うようにイベントを開始させることだけが行えるように、機械的な戻り防止装置を提供する。
【解決手段】作用点に達する前、ボタン又はレバーを停止させたり、方向を変えることは、保持手段4によって、レバー又はボタンが元の開始点まで戻る前に、第1方向でのさらなる移動を防ぐようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械的な戻り防止装置に関し、さらに、このような機械的な戻り防止装置を組み込んだ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
戻り防止装置は、さまざまな目的のために利用することができる。
例えば、窓やドアを開かれた位置に保つための、戻り防止装置の例として、特許文献1の開示例がある。この開示例のうち、特に、第2の実施形態では、ハウジングの内部につめ車を配置している。また、ハウジングのスリットを介して、第2の移動可能な部材を装着させている。この移動可能部材は、つめ車と係合できるように、係合区間を有している。そして、第2部材が第1方向に移動する際、つめ車の三角形状によって、逆方向の移動が防がれるようにしている。また、第2部材がつめ車の端部に至ると、ばねの影響を受けて、下方に付勢されて、つめ車の下で反対方向に移動できるようにしている。そして、第2のばね部材をさらに備えることによって、第2部材をつめ車の開始側に向って上方に案内させて、再度、前方への移動が可能になるようにしている。しかし、この構成には幾つかの短所があり、例えば、全構造をハウジング内に配置させるため、ごみや他の異物がハウジング内につまると、最終的に、装置の正常な作用を妨害するおそれがあった。具体例を示すと、第2のばね装置と、装置の底部の間に異物が詰め込まれる場合には、係合区間を第2トラック上で後退させるように押込むことが不可能になる。さらに、つめ車の下方、即ち、第2トラックと第1トラックの間に異物が詰まると、同様に、装置の正常な作用が妨害されるおそれがあった。また、本発明のさらなる実施形態から明らかになるように、この装置では、移動可能な部材を元の開始側の位置まで後退させるためには、移動可能部材をつめ車を通る途中から、第1位置まで戻すことができず、むしろ、移動可能部材を端部までずっと押し続けて、つめ車の下方に備えられた第1トラックまで下降させる必要があった。さらに、装置を正常に作用させることは、つめ車手段のレベルまで、係合区間を後退させるように付勢する、第2ばね部材の性能に全く依存しており、この機能が阻害される場合には、装置は全く使用することができなくなっていた。
【特許文献1】米国特許第2129412号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、本発明は、上述した短所を克服すると共に、さらなる多くの長所を提供して、上記特許文献1に従う装置では適切に用いられない分野においても利用可能となるように、利用分野を広げた、機械的な戻り防止装置を提供することを目的としている。
【0004】
多くの利用分野では、ボタン又はレバーを手動的に押し下げることで、所定の働きを行わせたり、実行させて、この結果、1つ又は複数のイベントを生じさせている。
これら利用分野の多くでは、問題とされるイベントを生じさせるため、ボタン又はレバーのストロークを行わせるか、あるいは、少なくともボタン又はレバーのストロークを十分であるようにすることが望まれている。
以下、この状況が重要となる装置の例として、喘息用の吸入装置について説明する。
【0005】
このようなタイプの喘息用の吸入装置は、利用者/患者が薬の吸入を必要とする時、喘息用の吸入装置をマウスピースと共に患者の口の中に入れた後、ボタンを作動させるように機能している。ボタンを押し下げることで、装置内のキャニスタが作動して、キャニスタ内のバルブシステム内に保管されていた薬の一回分の用量が、マウスピースを介して、患者の内部に投薬されるようにしている。
【0006】
通常、このようなタイプの装置は、用量のカウンタを備えており、装置内に残されている用量がどの程度なのか、患者が確認できるようにしており、この結果、新しい装置やキャニスタを必要な時に設けられるようにしている。従って、患者が薬の用量を投薬する時、一回分の用量だけが投薬されると同時に、一回分の用量だけがカウントされることが重要になる。
【0007】
しかし、場合によっては、このようなタイプの装置の製造コストを出来るだけ低く抑えるために生じる製造時の固有の公差や、さらに複数の相対的に作用する部品から生じるあそびの結果として、押圧されていない状態や、押圧途中の状態から、ボタンを作用することが可能になることがあり、このため、実際に用量が投薬されていないのにカウンタが作用されたり、または、カウンタが作用することなく用量が投薬されることがあった。
【0008】
このようなタイプの装置では、他の多くのタイプの装置と同様に、ボタン/レバーを押し下げることで、例えばイベントを生じさせるように、機能を行わせて、この機能により1つ又は複数の結果を得られるようにして、例えば、上述の例では、ボタンを作用させることで、一回分の用量を投薬させるとともに、この用量のカウントを行ったり/記録することは、望ましくなかった。即ち、ボタンを押し下げることで、上記2つのイベントを行わせることを信頼性があるように行わせて、予期しない、あるいは、予期して装置を誤作動させるおそれがないように働かせることが最良とされていた。
【0009】
従って、本発明は、また、ボタン/レバーの押し下げによって生じる1つ又は複数のイベントが信頼性があるように実行され、及び/又は、同時に、つまり同期した手法によって割当てられるように、利用者により、ボタン又はレバーのストロークによって、イベントだけを生じさせることができる、機械的な戻り防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
従って、本発明は、次のように、2つの協働し、相対的に変位可能な部品を含む、機械的な戻り防止装置を提供する。この際、
第1の部品は、長手方向軸と平行であり、第1トラックと第2トラックを含むトラックのセットを少なくとも1つ備え、第2トラックには、1つ又は複数の保持部材と、第2トラックの一方の端部に配置されるようにスライド案内部を備え、
第2の協働する部品は、第1部品に備えられるトラックと係合するように係合区間を備えた脚部材(作用部材)を含み、この脚部材を第1部品に向って付勢させて、係合区間を長手方向軸の方向に移動可能なように適用させ、
さらに、保持部材によって、脚部材の係合区間をスライド案内部に向う第1方向に移動させると共に、反対の第2方向への移動を防ぐようにし、脚部材の係合区間がスライド案内部上でスライドして、係合区間と、この結果、脚部材が、第2トラックから第1トラックまで方向付けられるようにした。
【0011】
この構成では、上記装置は、係合手段が制約されないように一方向で移動できるように、第1トラックを提供する。さらなる装置に組付けられる際、完全なボタンのストロークを提供することが望ましいので、係合区間が制約されないように完全に第1トラック上をスライドできるようにする。第1方向での移動中、脚部材の係合区間は、係合区間に及ぼされる付勢力によって、1つ又は複数の保持部材から構成される第2トラックの側部と当接する。そして、一度、係合区間が、ボタン/レバーのストロークに相当する、意図された移動用ストロークの底部に達すると、付勢力によって係合区間を第2トラック上に押し付けて、係合区間がこの開始位置に向うように第2方向に移動して、1つ又は複数の保持部材を通過するようにする。
【0012】
係合手段の第2方向での移動中、利用者が方向を変えることを望む場合、例えば、ボタン/レバーを再度押し下げる場合、係合区間は保持部材と係合して、二つの協働する部品の相対的な移動が不可能になるようにする。
【0013】
係合区間を第1トラック上で移動させることに相当するボタンの押し下げ中、利用者が方向を変える、つまり、第1から第2方向まで、係合区間を反対方向に移動させ始めると、付勢力によって係合区間は第2トラック上に強制されて、1つ又は複数の保持部材が備えられている第2トラック上の係合区間の位置によって、さらなる前方移動が防がれて、この結果、第1方向でのさらなる移動を不可能にする。
【0014】
ボタン又はレバーの再度の押し下げ/作用に相当して、係合区間を第1方向で再度移動させるためには、係合区間を戻さなくてはならず、また、係合区間をスライド案内部と当接させなくてはならず、この結果、さらなる前方への移動中に、再度、係合区間は、ボタン/レバーによりイベントの生じさせる途中に、保持部材と当接しながら、第1トラック上でスライドする。
【0015】
このように、ボタン/レバーの作用により生じるイベントが、1つ又は複数の保持部材が第1方向に通過したときに限り生じるように、1つ又は複数の保持部材を構成することで、ボタン/レバーの押し下げが行われた時に、信頼性のあるように作用させることを保証できる。また、ボタン/レバーの押し下げが移動中に外れた場合、上述したように、係合区間は第2トラック上に強制されて、第1方向でのさらなる移動は、保持部材と係合して、この方向での移動ができなくなるようにする。
【0016】
従って、保持部材を正確に配置することによって、装置内のあそびと、公差を打ち消すようにして、イベントを生じさせたり、開始させるためのボタン/レバーの移動が、この装置によって信頼性があるように行われるようにする。従って、装置内の公差とあそびは、第1方向での係合区間の初期の移動によって吸収され、一度係合区間が作用領域に侵入すると、装置の構造によって、元に戻り、開始位置まで完全に戻ることなく、逆に作用することが不可能になる。このことは、次に、ボタン/レバーの比較的に短い移動によって、作用が行われることを意味する。
【0017】
本発明に係るさらなる実施形態では、保持部材の各々は、所定の長さを有する傾斜したスライド面を有し、これに沿って係合区間をスライドさせるようにし、また、このスライド面に対して鋭角で配置された表面形状のステップを有し、このステップによって、傾斜したスライド面の一方の頂部と、次の傾斜面の底部とを接続して、のこぎりの歯状の形状を生じさせて、このステップによって、脚部材の係合区間の一方向での移動を維持させるようにする。
【0018】
この構成は、製造するのが比較的に簡単であり、さらに、この構成では、利用者は、ボタンが戻りの移動を行うことを示唆する、のこぎりの歯状の構造の歯を感知することができる。また、装置を構成するとき、スライド面の長さを構成することは比較的に容易なので、ボタン/レバーを望ましいように移動させるため、正確に構成することができる。
【0019】
尚、本明細書と、添付した特許請求の範囲の記載において、"スライド面に対して鋭角で配置された表面形状のステップ"の構成では、この表面は、傾斜したスライド面上をのぼるように移動する脚部材の係合区間は、下降して、ステップにより保持されると、この結果、一方向での移動が防がれ、そして、近接してスライド面が備えられていると、係合区間はこのスライド面をのぼることだけが可能になるような角度の表面であることを意味することを理解されたい。
【0020】
本発明に係るさらなる実施形態では、保持部材の各々の第1トラックに面する側面の少なくとも一部は、装置の長手方向軸に対して浅い角度で配置されて、係合区間の前方への移動方向の端部では、傾斜したスライド面は狭くなるようにする。
【0021】
この実施形態では、第2トラックの側面は、これに対して係合手段が第1方向での移動中に当接するようにし、保持部材を浅い角度で配置することによる不均一性や同様のものによって、係合手段がつまらないように形成され、この側部と当接する係合部材がトラックでの移動中に外側に押され続けられるようにする。
【0022】
本発明に係るさらなる実施形態では、傾斜したスライド面は、近接する傾斜したスライド面と重なり、また、傾斜したスライド面は、長手方向軸に対して垂直にテーパ付けられ、スライド面の頂部は底部と比べてより狭まるようにして、底部のステップは近接するスライド面と比べて、これらの接合点においてより狭められるようにする。
【0023】
この構成では、傾斜したスライド面のくさび形状部は、近接する保持手段に対して露出される。そして、係合区間が保持手段と係合する、逆方向での移動中、テーパ付けられた側部区間によって露出される、くさび形状の区間は、係合区間が保持手段に対し移動することを容易にする。
【0024】
本発明に係るさらなる実施形態では、脚部材は、係合区間と反対の端部にピボット可能なように取付けられ、トラックのセットの少なくとも1つを有する第1部分は、一定の距離で配置されるように対応した弧状の構成を有し、係合区間がトラックと係合できるようにする。
【0025】
自明ではあるが、上述した装置は、第1と第2の部品の間の相対的な移動が線形なときに機能する。しかしながら、脚部材がピボット可能なように取付けられて、係合区間が部分的に円形状の移動に対応するように移動することも、本発明の範囲内に含まれることを思料されたい。また、脚部の係合区間から一定の距離で保持手段を備えるため、保持手段をまた円形(弧)状の部材上に配置して、この円の半径が、脚部材のピボット状の取付け点と、係合区間の外側の端部の間の距離に相当するようにしてもよい。この構成では、レバー又はボタンの作用が脚部の移動に伝えられる時、脚部の係合区間は、第1部品上に配置された2つのトラックと当接されたままになる。この場合、上述したものと同様の長所を得ることができる。
【0026】
本発明に係るさらなる実施形態では、スライド案内部のこの最も幅の広い区間での長手方向軸に対して垂直な幅は、少なくとも保持部材のステップと同じ幅である。
【0027】
本発明に係るさらなる実施形態では、装置の全部分はプラスチック材料、好ましくは、成形加工可能な材料から形成され、より好ましくは、射出成形加工によって形成される。
【0028】
材料の選択は、装置を形成する適用分野に常に基づくことになる。プラスチック材料の材料特性を鑑みて、特に、ほとんどのプラスチックが可撓性、軽重量、及び比較的に良好な強度を提供することを鑑みて、プラスチックは好適な材料であり、この場合、脚部の付勢特性を脚部自身に割当てることができ、別体の付勢部材やばね等のさらなる部品を備える必要がなくなる。さらに、プラスチックと、特に射出成形加工は、大規模に部品を大量生産するにあたり、経済的で、信頼性がある。
【0029】
本発明に係るさらなる実施形態では、相対的に変位可能な部品の1つ又は双方は、例えば、ばね手段によって、相対的に付勢され、このため、装置が使用されない時、係合手段はスライド案内部上の点で係合する。
【0030】
1つの部材を1方向に常に付勢させることで、脚部材を第1方向に移動させる状態、即ち、側部を保持手段と当接させながらスライドさせるように、装置を保つことが確保される。これはまた、ボタン又はレバーのゼロ位置、つまり、ここからストロークが開始される位置と組み合わせられていてもよい。
【0031】
本発明に係る機械的な防止装置は多くの様々な装置に適用することができるが、例えば、本発明に係る好適な実施形態では、この装置は、手動的に操作される吸入装置であって、ボタン又はレバーの押し下げによって、装置内に配置されたキャニスタから薬の用量を投薬するようにし、ボタン又はレバーは、機械的な戻り防止装置とさらに接続されており、この装置は、2つの協働し、相対的に変位可能な部品を含み、この際、
第1の部品は、長手方向軸と平行であり、第1トラックと第2トラックを含むトラックのセットを少なくとも1つ備え、第2トラックには、1つ又は複数の保持部材と、第2トラックの一方の端部に配置されるようにスライド案内部を備え、
第2の協働する部品は、第1部品に備えられるトラックと係合するように係合区間を備えた脚部材を含み、この脚部材を第1部品に向って付勢させて、係合区間を長手方向軸の方向に移動可能なように適用させ、
さらに、保持部材によって、脚部材の係合区間をスライド案内部に向う第1方向に移動させると共に、反対の第2方向への移動を防ぐようにし、脚部材の係合区間がスライド案内部上でスライドして、係合区間と、この結果、脚部材が、第2トラックから第1トラックまで方向付けられるようにした。
【0032】
このタイプの装置内に機械的な戻り防止装置を組み込み、利用形態に従って、保持部材の大きさと配置を構成することによって、一度、利用者がボタン又はレバーを作用させて、作用点を超えて進ませると、一回分の用量が投薬され、また、選択的に、用量のカウント用装置を作用させるが、この際、利用者が方向を変えることができないようにする。方向を変化させることは、新しいストロークが開始される前に、ボタン/レバーを最初の開始位置に戻すことを必要とする。
【0033】
本発明に係る装置のさらなる実施形態では、相対的に変位可能な部品は、装置と一体の部品として形成されて、例えば、第1又は第2の部品がボタン構成の一部と一体に形成され、他方の部品が装置の非可動部分と一体に形成されるようにする。
【0034】
このように製造することで、本発明に係る装置の長所として、機械的な戻り防止装置を形成するために必要な2つの部品とともに、最初から装置の部品を成形できるので、非常に低コストで装置を提供できる。さらに、装置を射出成形する場合には、射出成形用の工具を修正するだけで、装置自身に上述したさらなる長所を組み込むように成形することを、非常に簡単で、このため安価に行うことができる。
【0035】
本発明に係る機械的な戻り防止装置のさらなる実施形態では、薬の用量の投薬及び/又は用量のカウント装置への入力である、イベントの1つを生じさせることに相当する、少なくとも2つの近接する保持手段の間、又は、保持手段とスライド案内部の間での、係合区間の移動形態を形成し、構成することによって、製造、組立及び生産時の環境から装置内に生じるあそびと公差を取り除くようにする。
【0036】
係合区間が第1トラック上の最後の保持手段を通過した後に限って、イベントが生じるように装置を構成することで、ボタン/レバーの押し下げが完全でない場合には、この結果、用量の投薬と、用量のカウントが生じないようにすることを保証でき、又は、ボタン/レバーが一度の移動で作動用の1つ又は複数の点を超えて完全に進む場合には、正確な投薬と薬の用量のカウントを行うことを保証できる。
【0037】
以上、吸入装置に関して本発明の装置について説明したが、基本的に、ボタンを完全に押し下げること、又は、少なくともボタンの押し下げについて保証することで、上記ボタンの押し下げに基づいて、所望のイベントを生じさせるようにする。この基本は、勿論、多くの装置に対して適用し、実行することができるが、この際、ボタン/レバーのストロークに関する同様の事項が適用されるものとする。
以下、本発明の好適な実施形態について、添付した図を参照しながら説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
図1を参照すると、2つの協働作用する部品、即ち、第1部品1と第2部品2が示されている。これら2つの部品1、2は、相対的に変位可能なように構成されており、例えば、第1部品1は、第2部品2に対して、矢印3に示す、第1方向にスライドすることができる。
この際、いずれの部品を他方の部品に対してスライドさせることは、装置を適切に作用させる上で問題ではない。
【0039】
第1部品1上には、複数の保持手段4が備えられており、図示した実施形態では、各保持手段は、傾斜したスライド面5を含み、これは、図2及び3に示すように、ステップ(階段)6と接続されている。ステップは、一方の傾斜面5の頂部を、近接された保持手段上の近くに配置された傾斜面の底部と接続させている。さらに、保持手段は、テーパ付けられた表面7を備えている。
【0040】
保持手段4の正面の一番先には、スライド案内部8が備えられている。このスライド案内部は、第1方向にテーパ付けられており、この結果、スライド案内部の後方端部9は、矢印3に示すように、第1方向に対して垂直な方向で、傾斜面5の幅と同じ幅を有している。この際、テーパは、幅をほぼ0にさせる。このテーパ付けられたスライド案内部は、図3により明瞭に示されている。
【0041】
第2部品2は脚部10を有しており、これは、第1部品1に向って付勢されて、この係合区間11が保持手段4と係合できるようにしている。
【0042】
2つの部品1、2が相対的に変位するに従い、例えば、図1に示した位置から、係合区間11は、第1部品に対して、左側にだけ移動することができ、この際、保持手段4は、係合区間と、この結果、第2部品を、右側に向っていかなる移動も防ぐようにしている。係合区間がスライド案内部8の端部に至ると、係合区間は、表面12に示される第1トラック上に案内される。例示した実施形態では、保持手段4の列から第2トラックが構成されている。
【0043】
係合区間11がトラック、つまり、保持手段4の列と表面12に向って係合するにつれて、第1部品1が脚部材10に対し左側に移動する時、係合手段は表面12上をスライドする。但し、脚部材10は付勢されるため、係合区間11は保持手段のスライド面9と当接する。2つの区間の相対的な移動が停止して、方向が変えられる場合には、係合区間11は保持手段上の傾斜面の露出部をのぼるようにスライドし、係合区間は図1に示したものと同等の位置にスライドして、この結果、右側に向うさらなる移動を不可能にする。
【0044】
しかしながら、2つの部品1、2の相対的な移動が開始点から続いて、つまり、第2トラック上のスライド案内部8の端部から、スライド状のトラックの反対側の端部にある最初の傾斜面まで、全移動は、保持手段4から何ら制約されることなく完了することができる。戻り(帰り)の移動では、係合区間はスライド案内部8に達するまで、保持手段4の列上をスライドし、係合手段用に再度自由になる第1トラックに再度アクセスできるようにする。
【0045】
図2−4を参照すると、第2トラックの断面が示されており、この際、保持手段4はのこぎりの歯の形態で示されている。
【0046】
図5及び6を参照すると、保持手段4を円形(弧)状部材13の部分に配置させた、他の実施形態が示されている。例えば、図10に示されているように、脚部10をピボット点に関してピボット可能なように配置させて、脚部10の係合区間11はこの移動中、円の一部を描くようにする。保持手段4を弧状部材13上に配置して、ピボット点と弧状部材13の間の距離を一定に保つことにより、機械的な防止装置は、図1を参照して説明した実施形態と全く同様に機能する。
【0047】
さらに、図5に示した実施形態では、2つのトラックを有する2つの平行なセットが備えられている。この実施形態では、中央の分離部14は、図6には示されていないが、中央の分離部14の双方の側にある、対応するトラックの分離したセットの上に脚部10を保持させる。
【0048】
幾つかの実施形態では、大きな力を吸収できるようにすることが長所となるが、部材の大きさを拡げることができない場合には、保持手段4と第1トラック12のさらなるセットを加えて、脚部の二重のセットと協働させるように備えてもよい。
【0049】
図7、8及び9を参照すると、本発明に係る特定の実施形態が示されている。この実施形態では、機械的な防止装置は、1つの保持手段4と1つのスライド状の傾斜部8を備えている。この実施形態は、上述したものと全く同様に機能するが、特に、この構造物によって、1つのイベントが正確に生じることを保証させることを目的としている。この実施形態では、上述したように、中央の分離部14のいずれの側にもトラックの2つのセットを備えてもよいが、あるいは、単一の保持手段と単一のスライド案内部と第1トラック12だけを備えるように製造してもよい。
【0050】
図10を参照すると、機械的な戻り防止装置を吸入装置15内に組み込んだ場合について例示している。
典型的な吸入装置は、マウスピース16、作動用ボタン17、キャニスタ18を備えており、キャニスタ内には、マウスピースを介して投薬されるように薬が含まれている。つまり、ボタン17を押し下げると、キャニスタ18は下方に向うように強制されて、そして、バルブ装置19を介して、マウスピースから一回分の用量が投薬されるようにしている。この実施形態には、機械的な戻り防止装置が配置されており、つまり、ボタン17と一体に脚部10が設けられている。ボタン17は、ピボット点20に関してピボットするように構成されている。この移動によって、第2部品の係合区間11は、吸入装置と一体に設けられた第1部品1と当接する。
【0051】
図10に示した一体型の機械的な戻り防止装置は、図1を参照して説明したものと全く同様に機能し、つまり、係合区間11は弧状の第1部品1に沿って移動して、この移動に従って、保持手段4の側部と当接するか、これらと係合するが、これは、移動に基づいて行われる。
【0052】
上記装置は、吸入用装置に関して説明されているが、本発明の機械的な戻り防止装置の基本構成は、他の装置に対しても組み込むことは可能であり、この際、望ましくは同様に戻りの防止効果が行われるようにする。
【0053】
また、上記説明では、保持手段は、図1に示したようにのこぎりの歯の構成について説明したが、本発明の範囲内で、保持手段はV字形状のカムや、相互に関係する円形状のディスクであって、非ステップ状に保持手段と係合するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係る実施形態の斜視図である。
【図2】本発明に係る第1部品を示す図である。
【図3】本発明に係る第1部品を示す図である。
【図4】本発明に係る第1部品を示す図である。
【図5】本発明に係る湾曲した第1部品の実施形態を示す図である。
【図6】本発明に係る湾曲した第1部品の実施形態を示す図である。
【図7】1つの保持手段を有する本発明に係る特定の実施形態を示す図である。
【図8】1つの保持手段を有する本発明に係る特定の実施形態を示す図である。
【図9】1つの保持手段を有する本発明に係る特定の実施形態を示す図である。
【図10】本発明に係る機械的な戻り防止装置を含む装置を示す図である。
【符号の説明】
【0055】
1 第1部品
2 第2部品
4 保持手段
5 スライド面
6 ステップ
7 テーパ面
8 スライド案内部
10 脚部
11 係合区間
12 表面(第1トラック)
13 円(弧)形状の部材
14 中央の分離部
15 吸入装置
16 マウスピース
17 ボタン
18 キャニスタ
19 バルブ装置
20 ピボット点


【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの協働し、相対的に変位可能な部品を含む、機械的な戻り防止装置であり、
第1の部品は、長手方向軸と平行であり、第1トラックと第2トラックを含むトラックのセットを少なくとも1つ備え、前記第2トラックには、1つ又は複数の保持部材と、前記第2トラックの一方の端部に配置されるようにスライド案内部を備え、
第2の協働する部品は、前記第1部品に備えられるトラックと係合するように係合区間を備えた脚部材を含み、この脚部材を前記第1部品に向って付勢させて、前記係合区間を前記長手方向軸の方向に移動可能なように適用させ、
さらに、前記保持部材によって、前記脚部材の前記係合区間を前記スライド案内部に向う第1方向に移動させると共に、反対の第2方向への移動を防ぐようにし、前記脚部材の前記係合区間が前記スライド案内部上でスライドして、前記係合区間と、この結果、前記脚部材が、前記第2トラックから前記第1トラックまで方向付けられるようにしたことを特徴とする戻り防止装置。
【請求項2】
前記保持部材の各々は、所定の長さを有する傾斜したスライド面を有し、これに沿って前記係合区間をスライドさせるようにし、また、前記スライド面に対して鋭角で配置された表面形状のステップを有し、このステップによって、前記傾斜したスライド面の一方の頂部と、次の傾斜面の底部とを接続して、のこぎりの歯状の形状を生じさせて、前記ステップによって、前記脚部材の前記係合区間の一方向での移動を維持させるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の戻り防止装置。
【請求項3】
前記保持部材の各々の第1トラックに面する側面の少なくとも一部は、前記装置の前記長手方向軸に対して浅い角度で配置されて、前記係合区間の第1の移動方向の端部では、前記傾斜したスライド面は狭くなるようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の戻り防止装置。
【請求項4】
前記傾斜したスライド面は、近接する傾斜したスライド面と重なり、また、前記傾斜したスライド面は、前記長手方向軸に対して垂直にテーパ付けられ、前記スライド面の頂部は底部と比べてより狭まるようにして、前記底部の前記ステップは近接するスライド面と比べて、これらの接合点においてより狭められるようにしたことを特徴とする請求項2又は3に記載の戻り防止装置。
【請求項5】
前記脚部材は、前記係合区間と反対の端部にピボット可能なように取付けられ、トラックのセットの少なくとも1つを有する前記第1部品は、一定の距離で配置されるように対応した弧状の構成を有し、前記係合区間が前記トラックと係合できるようにしたことを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載の戻り防止装置。
【請求項6】
前記スライド案内部のこの最も幅の広い区間での前記長手方向軸に対して垂直な幅は、少なくとも前記保持部材の前記ステップと同じ幅であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の戻り防止装置。
【請求項7】
前記装置の全部分はプラスチック材料、好ましくは、成形加工可能な材料から形成され、より好ましくは、射出成形加工によって形成されることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の戻り防止装置。
【請求項8】
前記相対的に変位可能な部品の1つ又は双方は、例えば、ばね手段によって相対的に付勢され、このため、前記装置が使用されない時、前記係合手段は前記スライド案内部上の点で係合することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の戻り防止装置。
【請求項9】
手動的に操作される吸入装置のような装置であって、ボタン又はレバーの押し下げによって、前記装置内に配置されたキャニスタから薬の用量を投薬するようにし、前記ボタン又はレバーは、機械的な戻り防止装置とさらに接続されており、この装置は、2つの協働し、相対的に変位可能な部品を含み、この際、
第1の部品は、長手方向軸と平行であり、第1トラックと第2トラックを含むトラックのセットを少なくとも1つ備え、前記第2トラックには、1つ又は複数の保持部材と、前記第2トラックの一方の端部に配置されるようにスライド案内部を備え、
第2の協働する部品は、前記第1部品に備えられるトラックと係合するように係合区間を備えた脚部材を含み、この脚部材を前記第1部品に向って付勢させて、前記係合区間を前記長手方向軸の方向に移動可能なように適用させ、
さらに、前記保持部材によって、前記脚部材の前記係合区間を前記スライド案内部に向う第1方向に移動させると共に、反対の第2方向への移動を防ぐようにし、前記脚部材の前記係合区間が前記スライド案内部上でスライドして、前記係合区間と、この結果、前記脚部材が、前記第2トラックから前記第1トラックまで方向付けられるようにしたことを特徴とする装置。
【請求項10】
前記相対的に変位可能な部品は、前記装置と一体の部品として形成されて、例えば、前記第1又は第2の部品が前記ボタン構成の一部と一体に形成され、他方の部品が前記装置の非可動部分と一体に形成されるようにしたことを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項11】
少なくとも2つの近接する前記保持手段の間、又は、前記保持手段と前記スライド案内部の間での、前記係合区間の移動は、前記薬の用量の投薬及び/又は用量のカウント装置への入力である、イベントの1つを生じさせることに相当することを特徴とする請求項9又は10に記載の装置。
【請求項12】
前記機械的な戻り防止装置は、前記装置と同時に成形されることを特徴とする請求項9、10又は11に記載の装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2007−506475(P2007−506475A)
【公表日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−519770(P2006−519770)
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【国際出願番号】PCT/DK2004/000499
【国際公開番号】WO2005/004960
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(505163992)バング アンド オルフセン メディコム エー/エス (2)
【氏名又は名称原語表記】BANG & OLUFSEN MEDICOM A/S