説明

機能性微粒子放出装置

【課題】機能性物質が親水性を有するものであっても、これを効率的に経皮吸収させることのできる機能性微粒子放出装置を提供する。
【解決手段】本発明は、機能性微粒子を放出する機能性微粒子放出装置である。ここで放出する機能性微粒子は、アミノ酸等の機能性物質を脂溶化し、これを液体に混合させて成る溶液1を、静電霧化等の手段によって微粒子化したものである。機能性物質を脂溶化する手段としては、化学結合や、非結合性の分子間相互作用を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性微粒子を放出するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
生体に対して美容・健康等の作用を及ぼす機能性物質を、皮膚等を経由して吸収させようとするものが、従来から提案されている。特許文献1等には、これら機能性物質を効率的に吸収させるために、種々の経皮吸収促進剤を配合することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−16401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、皮膚の最外層である角質層には疎水性の脂質が存在し、これがバリア機能を発揮するため、特に機能性物質が親水性である場合には、吸収性が得られにくいという問題がある。
【0005】
本発明は前記問題点に鑑みて発明したものであり、機能性物質が親水性を有するものであっても、これを効率的に経皮吸収させることのできる機能性微粒子放出装置を提供することを、課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、機能性微粒子を放出する機能性微粒子放出装置であって、前記機能性微粒子は、脂溶化された機能性物質を液体と混合させたものであることを特徴とする。
【0007】
前記機能性物質は、化学結合によって脂溶化されたものであることが好適である。
【0008】
また、前記機能性物質は、非結合性の分子間相互作用によって脂溶化されたものであることも好適である。
【0009】
また、前記機能性物質は、化学結合と非結合性の分子間相互作用の両方を用いて脂溶化されたものであることも好適である。
【0010】
また、前記液体は、pH制御されたものであることが好適である。
【0011】
また、前記機能性物質は、帯電されたものであることが好適である。
【0012】
また、前記機能性微粒子は、帯電されたものであることが好適である。
【0013】
また、前記機能性物質は、分子間距離又は分子量を制御されたものであることが好適である。
【0014】
また、前記機能性微粒子は、粒径を制御されたものであることが好適である。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、機能性物質が親水性を有するものであっても、これを効率的に経皮吸収させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態1の機能性微粒子放出装置を示す概略図である。
【図2】同上の機能性微粒子放出装置で用いる機能性物質のミセル化を説明する概略図である。
【図3】他の界面活性物質でミセル化された機能性物質を示す概略図である。
【図4】脂溶化された機能性物質が液体中に混合された状態を示す概略図である。
【図5】液体のpH制御を説明する概略図である。
【図6】架橋形成を説明する概略図である。
【図7】分子量制御を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を、添付図面に示す実施形態に基づいて説明する。図1には、本発明の実施形態1の機能性微粒子放出装置を示している。以下においては、まず、本実施形態の機能性微粒子放出装置の基本的な構造について説明する。
【0018】
本実施形態の機能性微粒子放出装置は、溶液1が供給される筒型の液体搬送部2と、液体搬送部2の先端部分である放電電極3と、放電電極3の先端と対向して位置する対向電極7と、溶液1に圧力を作用させて液体搬送部2の先端部分である放電電極3の先端にまで溶液1を搬送する加圧手段と、放電電極3と対向電極7との間に電圧を印加する電圧印加部5とを備えている。
【0019】
本実施形態では、前記加圧手段として、液体搬送部2内の水頭圧により溶液1に圧力を作用させ、放電電極3の先端にまで溶液1を搬送するように設けている。液体搬送部2の内径は、放電電極3の先端孔3aを除いては毛細管現象が発生しない大きさに設けている。先端孔3aの孔径は、その先端において溶液1が表面張力により液玉状態を保持するように設けている。
【0020】
図中の符号6は、液体補給用のタンクである。このタンク6内に溜められる溶液1を、マイクロポンプ等のポンプ8により液体搬送部2に補給し、この補給された溶液1の液位を、放電電極3の先端よりも高く保つようにしている。
【0021】
本実施形態の機能性微粒子放出装置においては、液体搬送部2先端の放電電極3に溶液1が供給され、液玉が形成される状態で、電圧印加部5によって放電電極3に対して電圧を印加する。ここでの電圧印加は、放電電極3がマイナス電極となって電荷が集中するように、放電電極3と対向電極7との間で高電圧を印加する。
【0022】
この電圧印加により、放電電極3の先端に保持された液玉状の溶液1が帯電し、静電霧化現象を生じることによって、微粒子として放出される。ここで放出される微粒子が、本実施形態の機能性微粒子放出装置において生成及び放出される機能性微粒子である。この機能性微粒子は、主としてナノメータサイズの粒径を有し、マイナス帯電された状態で放出される。
【0023】
なお、ここでは対向電極7を備えているが、対向電極7を備えずとも溶液1に電圧を印加することで、これを静電霧化により微粒子化することが可能である。また、液体搬送部2も前記した構成に限定されず、タンク6中の溶液1を毛細管現象により搬送する構成等の、他の構成を用いてもよい。
【0024】
また、溶液1を微粒子化して放出するための構成も、静電霧化を利用する方式に限定されない。つまり、超音波振動によって溶液1を微粒子化する方式、発泡により溶液1を微粒子化する方式等の、他の方式も採用可能である。
【0025】
次に、溶液1について説明する。ここでの溶液1は、親水性の機能性物質10を脂溶化したものを、さらに液体11と混合させたものである(図4参照)。機能性物質10は、前記したように、生体に対して美容・健康の作用を及ぼす物質であり、具体的には、アミノ酸、ペプチド、タンパク等に加えて、バナジウム、亜鉛等の金属が挙げられる。液体11としては、疎水性の液体を用いる。
【0026】
以下においては、機能性物質10としてアミノ酸を例に挙げて説明する。
【0027】
機能性物質10であるアミノ酸の脂溶化は、化学結合を用いて行うことや、非結合性の分子間相互作用を用いて行うことや、或いはその両方を用いて行うことができる。
【0028】
下記の式1には、機能性物質10である親水性のアミノ酸に、化学結合(ペプチド結合)によって疎水性部位を追加し、これによりアミノ酸を脂溶化する場合の反応を示している。ここでの−(CH−のnを増減することにより、疎水化(脂溶化)の強度が制御される。
【0029】
【化1】

【0030】
図2には、機能性物質10である親水性のアミノ酸を、界面活性物質12を用いてミセル化し、これによりアミノ酸を脂溶化する場合を概略的に示している。界面活性物質12は親水部12aと疎水部12bを有し、親水性であるアミノ酸と親水部12aとの間に分子間相互作用が働くことによって、親水部12aを内側、疎水部12bを外側としたミセルが形成される。このミセル形成によって、アミノ酸が疎水化(脂溶化)される。
【0031】
界面活性物質12の疎水部12bは、アルキル基の結合、重合等の化学結合によってその長さが調整自在である。図3には、疎水部12bの長さを図2のものと比較して増大させたものを示している。疎水部12bの長さが増大するほどに、界面活性物質12ひいてはこれら界面活性物質12によってミセル化される機能性物質10の疎水性が増大する。これは、化学結合と分子間相互作用の両方を用いて、機能性物質10を脂溶化する場合の例である。
【0032】
同様の脂溶化は、アミノ酸以外の機能性物質10においても可能である。例えば、機能性物質10が、バナジウム等の親水性(水溶性)の金属である場合、これの金属カチオンを疎水性のクラウンエーテルに取り込ませることで、疎水化(脂溶化)することが可能となる。これは、金属である機能性物質10を化学結合的に脂溶化する場合の例である。
【0033】
以上のように、本実施形態の機能性微粒子放出装置では、親水性のアミノ酸である機能性物質10を脂溶化し、これを疎水性の液体11に混合させたうえで、静電霧化により微粒子化して放出することができる。放出された機能性微粒子は、空気中を漂ったうえで人体の肌表面に付着し、脂溶化された機能性物質10を、肌表面に供給する。前記したように、皮膚の最外層である角質層には疎水性の脂質が存在するが、この機能性物質10は脂溶化されているため、皮膚を経由して効率的に吸収される。
【0034】
ところで、溶液1の溶媒である液体11のpHは、脂溶化された機能性物質10即ちアミノ酸の等電点に応じて、制御することが好適である。図5に概略的に示すように、液体11中の酸性成分とアルカリ成分のバランス調整を、前記等電点を基準として行う。これにより、液体11中でのアミノ酸の陽イオン性、非イオン性、陰イオン性を、吸収される生体部位に適したものに調整することができる。
【0035】
また、前記したように、静電霧化により生成される機能性微粒子は、ナノメータサイズ(100〜3nm程度)の非常に微小な粒径であり且つマイナス帯電されたものとなる。したがって、放出された機能性微粒子は互いに反発しながら拡散し、空気中を漂いながら生体の皮膚表面等に万遍なく行きわたる。また、微小径であることから、空気中を長時間漂わせることもできる。機能性微粒子の粒径制御は、この粒径が100nmより小さいことが好ましいが、これに限定されるわけではない。また、粒径制御の手段は、前記したように超音波振動等の他の手段であってもよい。
【0036】
また、機能性微粒子のみならず、これに溶解される機能性物質10も静電霧化に伴ってマイナス帯電される。帯電により反発力が働くことで、機能性物質10の分子間の凝集が防止され、分散状態が維持されやすくなる。つまり、機能性物質10は吸収されやすいサイズに維持されやすくなり、経皮吸収が一層促進されることになる。機能性物質10を帯電させる手段としては、静電霧化に加えて又はこれの代わりに、イオン照射等の帯電手段を用いることも好適である。
【0037】
また、機能性物質10のサイズ(分子間距離や分子量)も、経皮吸収がより高効率となるように制御することが好適である。ここでのサイズ制御の手段としては、図6に概略的に示すように、化学結合の架橋13を形成することで分子間距離を制御する手段や、図7に概略的に示すように、機能性物質10やこれの疎水部の数や長さを制御して分子量を制御する手段がある。また、凝集阻害剤によって分子の凝集抑制を行う手段もある。
【0038】
物質が細胞に吸収される場合、吸収に適したサイズがその吸収部位の構造によって異なることが知られている。前記手段を用いることにより、狙いの吸収部位に適したサイズに機能性物質10を制御することが可能となる。
【0039】
以上、説明したように、本発明の実施形態1の機能性微粒子放出装置は、機能性微粒子を放出する機能性微粒子放出装置であって、前記機能性微粒子は、脂溶化された機能性物質10を液体11と混合させたものである。
【0040】
したがって、この機能性微粒子放出装置によれば、脂溶化された機能性物質10を液体11中に混合させた状態で放出し、生体の皮膚を通じて、この脂溶化された機能性物質10を効率的に吸収させることが可能となる。
【0041】
機能性物質10は、化学結合によって脂溶化することや、非結合性の分子間相互作用によって脂溶化することや、その両方を用いて脂溶化することができる。
【0042】
また、液体11は、pH制御されるものである。このpH制御を行うことで、吸収される生体部位に応じて機能性物質10の陽イオン性、非イオン性、陰イオン性を調整することができる。
【0043】
また、機能性物質10は帯電されたものであり、これにより、この機能性物質10の経皮吸収が一層促進される。
【0044】
また、前記機能性微粒子は帯電されたものであり、これにより、この機能性微粒子を空気中に万遍なく拡散させることや、長期間漂わせることが可能となる。
【0045】
また、機能性物質10は、分子間距離又は分子量を制御されたものであり、これにより、狙いの吸収部位に適したサイズに機能性物質10を制御し、吸収性を向上させることができる。
【0046】
また、前記機能性微粒子は、粒径を制御されたものであり、これにより、この機能性微粒子を空気中に拡散させることや、長期間漂わせることが可能となり、また、角質表面の奥にまで供給することも可能となる。
【0047】
以上、本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて説明したが、本発明は実施形態に限定されるものではなく、本発明の意図する範囲内であれば、適宜の設計変更を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 溶液
2 液体搬送部
3 放電電極
3a 先端孔
5 電圧印加部
6 タンク
7 対向電極
8 ポンプ
10 機能性物質
11 液体
12 界面活性物質
12a 親水部
12b 疎水部
13 架橋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能性微粒子を放出する機能性微粒子放出装置であって、前記機能性微粒子は、脂溶化された機能性物質を液体と混合させたものであることを特徴とする機能性微粒子放出装置。
【請求項2】
前記機能性物質は、化学結合によって脂溶化されたものであることを特徴とする請求項1に記載の機能性微粒子放出装置。
【請求項3】
前記機能性物質は、非結合性の分子間相互作用によって脂溶化されたものであることを特徴とする請求項1に記載の機能性微粒子放出装置。
【請求項4】
前記機能性物質は、化学結合と非結合性の分子間相互作用の両方を用いて脂溶化されたものであることを特徴とする請求項1に記載の機能性微粒子放出装置。
【請求項5】
前記液体は、pH制御されたものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の機能性微粒子放出装置。
【請求項6】
前記機能性物質は、帯電されたものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の機能性微粒子放出装置。
【請求項7】
前記機能性微粒子は、帯電されたものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の機能性微粒子放出装置。
【請求項8】
前記機能性物質は、分子間距離又は分子量を制御されたものであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の機能性微粒子放出装置。
【請求項9】
前記機能性微粒子は、粒径を制御されたものであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の機能性微粒子放出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−70767(P2013−70767A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210855(P2011−210855)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)