説明

機能性農産物及びその栽培方法

本発明は、機能性農産物及びその栽培方法に関するものである。本発明は、農産物内に金属ナノ粒子が粒子形態で吸収されていることを特徴とする機能性農産物を提供する。また、本発明は、水又は電解液中に金属ナノ粒子が分散している金属ナノ粒子コロイドを農産物に供給することを特徴とする機能性農産物の栽培方法を提供する。本発明によれば、イオン化しにくい金属を含有する農産物を安価に生産することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性農産物及びその栽培方法に関し、より詳細には、人体に有益な様々な効能を発揮するものとしてよく知られている白金、金、及び/又は銀などの金属を含有する機能性農産物及びその栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
白金、金、銀は、各種病気の治療に用いられてきた。8世紀からインドでは金粉末(gold ash)をいくつかの臨床症状に用いてきた。アーユルヴェーダの医師たち(ayurvedic physician)は、金粉末を気管支喘息、関節リウマチ、糖尿病、神経障害の治療に用いてきた。
【0003】
現代では、抗原とアジュバントとからなる免疫強化するための標準スキームと比較して、コロイド状の金が、さらに速く、高い効率で抗体を得ることを可能にすることが研究されてきた。このような効果により、金は、免疫を改善し、血液中のリゾチーム濃度を高め、タンパク質の相補系活動を向上させ、そして殺菌活性など免疫力を向上できると期待されている。ウサギ、マウスなどの実験動物に金コロイドとハプテン又は完全抗原とを共に投与した結果、高い活性を有する抗体の創製を引き起こすことを確認した。また、恒常的な服用は、関節リウマチの治療に効果があるという研究結果が刊行されている。近年、金コロイドが、記憶力減退、視力減退、不妊、早期老化、無気力症などに作用することが明らかになり、したがって各種食品や医薬品に添加されて使用されている。
【0004】
白金は、近年盛んに研究されており、特異な粒子表面のイオン特性により抗癌剤として使用されてきた。日本の研究結果によれば、モデルマウスを使用した試験で代謝症候群による心血管障害の治療における白金超微粒子の有用性が見いだされた。福岡市で開催された第21回国際高血圧学会(ISH2006)で刊行された論文によれば、東京大学病院腎臓内分泌内科研究チームは、生体外実験(インビトロ)で白金超微粒子が触媒作用により活性酸素種(ROS)を除去することを確認した。この研究チームは、肥満モデルマウス(db/dbマウス)に、血圧を上げる作用をするアンジオテンシンIIと高塩分食を与えて、高血圧を発症させることで、代謝症候群モデルを作製した。その代謝症候群モデルに、水と共に白金ナノ粒子を毎日与えて、そのモデルに生じた変化を4週間観察した。その結果、正常なマウスの収縮期血圧(n=6)は113mmHgであったが、白金ナノ粒子を投与していないモデルマウスの収縮期血圧(n=6)は136mmHgに上昇し、白金ナノ粒子を投与したモデルマウスの収縮期血圧(n=6)は129mmHgに低下した。コレステロール値は、正常なマウスでは150mg/dL、非投与マウスでは151mg/dLと同程度であった。しかし、白金ナノ粒子を投与したマウスでは、コレステロール値は、140mg/dLに下がった。さらに、白金超微粒子の投与により、酸化ストレスマーカーとしての尿中の8−iso−PGF2αの量が著しく低下したこと、および組織学的に、冠動脈の繊維化が50%減少したことを確認した。研究者らは、以上の研究結果から、白金超微粒子が臓器損傷を起こす活性酸素を除去する抗酸化物質であったと結論づけた。
【0005】
このように、金、白金、銀などを医療分野に効果的に適用できるという研究結果が続々と明らかになっている。そうした物質を人体に投与するための方法は、日本などで広く用いられているように、そうした金属を金箔等の微細粉末に加工し、そして食物に加えて直接摂取する方法、前記金属をナノ粒子化してコロイド化し、そしてそうしたコロイド粒子を皮膚塗布、飲用、または注射により人体に入れる方法、前記金属ナノ粒子のコロイドを他の医薬品や食品と混合して人体に適用する方法を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、金属を直接人体に適用、又はそうした金属を直接摂取する上記の方法は、未だ一般人には違和感があり、大衆化していない。
そこで、我々が摂取している農産物にそうした金属を含有させようとする様々な試みがなされてきた。
【0007】
貴金属、特に、様々な効能のあることが知られている前述の金、銀、白金などを農産物に含有させることが可能な場合、貴金属を有する農産物に容易にアプローチして摂取することができ、そしてまた各種農産物の既知の効能に前記貴金属の効能が付加されてそこからのシナジー効果が期待される。さらに、前記貴金属を含有する農産物の栽培が高い利益を生むことは自明である。
【0008】
しかしながら、そうした金、銀、白金はイオン化しにくく、農作物を栽培するための土壌にそうした金属を適用しても、前記金属成分が水と共に農作物の根から吸収されることは不可能であるという問題がある。
【0009】
植物は根から水と無機物質を吸収する。水は浸透圧により吸収され、そして無機養分の吸収は植物の必要に応じた能動輸送により吸収される。能動輸送は、生体内で(アデノシン三リン酸)ATPタイプのエネルギーの使用により濃度勾配に対して、粒子を移動させる媒介プロセスを意味する。植物によって吸収される無機物質は、例えば、鉄、カリウム、カルシウム、リン、硫黄、マグネシウム、マンガン、亜鉛などを含む。これらの物質は、通常、水に非常に溶解でき水と伴に吸収され、その後、植物により選択的に能動輸送される。しかし、前述のように、イオン化しにくい金属成分は、水と共に容易に吸収できないため、前記貴金属を含有する農産物は自然には存在しないことが知られている。
【0010】
貴金属成分を植物に含有させるための試みとして、植物を使用して金を抽出するために、1997年にニュージーランドのマッセイ大学のC.Andersonは、金を溶かすように強酸などの化学物質を廃金鉱にかけた後で、そうした金を吸収するように、キャベツ、カリフラワー、カブを植えた。その結果、1ヘクタール中の植物が1kgの金を吸収した。Andersonの着目点は、化学物質を使用して金をイオン化して、植物がそうしたイオン化した金を水とともに吸収できるようにしたことである。しかし、イオン化に用いた化学物質の毒性により、植物は枯れてしまうかもしれないことを、彼は見落していた。金が王水によってのみイオン化することは、良く知られてきた。Andersonの方法を用いると、強酸によりイオン化した金が、植物に吸収されることは少し可能であったが、強酸の毒性により、植物は、正常に生育しなかった。結果として、植物によって吸収された金属成分は、植物と共に人体に摂取できなかった。
【0011】
そのうちに、銀を植物に含有させるための方法が、韓国登録特許第10−0533252号において提案され、これは、銀イオンをキトサンオリゴ糖リガンドにキレート結合させて、銀をキトサンオリゴ糖と共に植物に吸収させる方法を開示する。前述のような強酸を利用した方法とは異なり、この方法は、人体に摂取できる状態に植物を少し生育させることができた。しかしながら、そうした方法は複雑な工程を必要とし、それによって農産物の生産コストを高くする。さらに、処理溶液の製造のために硝酸銀溶液が使用され、銀イオンがキトサンオリゴ糖にキレートされた後に毒性を含む硝酸が残留する。さらに、銀自体が農産物に含有されるのではなく、銀イオンがキトサンオリゴ糖にキレートする。したがって、農産物を実際に摂取した場合、活性の高い銀イオンが他の物質と化学反応した化合物の状態で吸収され、それにより銀自体のそのままの効能や特性は、それほど発揮できなかった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、従来技術による金属を含有する機能性農産物の栽培方法の欠点の認識から生じた。そうした欠点を解決するために、本発明の一つの目的は、活性イオン状態ではなく、貴金属がそのまま農産物に含有されることにより、人体に摂取された場合に、含有される貴金属の効能及び特性を効果的に発揮できる、金属を含有する機能性農産物および、その栽培方法を提供することである。
【0013】
本発明の他の目的は、農家で容易に適用でき、かつ貴金属を含有する農産物を安価に生産できるようにすることにある。
本発明の上記の目的を達成するために、本発明は、金属ナノ粒子が粒子形態で農産物中に吸収されていることを特徴とする機能性農産物を提供する。
【0014】
ここで、好ましくは、前記金属ナノ粒子のそれぞれは10nm以下の粒径を有することができる。
前記金属ナノ粒子は、その表面上にポリソルベートがコーティングされていてもよい。
【0015】
本発明の別の形態において、水又は電解液中に金属ナノ粒子が分散している金属ナノ粒子コロイドを、農産物に供給することを特徴とする、機能性農産物の栽培方法を提供する。
ここで、この金属ナノ粒子コロイドは、金属塩が溶解してポリソルベートが添加された電解水溶液(電解液)を攪拌しながら、この電解水溶液中に相互に対向して配置された1対の金属電極棒に電流を印加して、この電解水溶液中においてこの金属電極棒からイオン化した金属イオンを還元させて金属ナノ粒子を析出させ、この析出した金属ナノ粒子のそれぞれの外側をポリソルベートでコーティングすることにより得ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明において、例えば、野菜、キノコ類、薬草、果物、茶葉、穀類、高麗人参類などを含む農産物中に、白金、金、及び/又は銀コロイドを供給して吸収及び貯蔵させることにより、白金、金、及び/又は銀の効能を有する付加価値のある農産物を栽培することができる。
【0017】
さらに、本発明は、そうした栽培方法を農家で容易に適用すること、およびまた貴金属を含有する農産物を安価に生産することを可能にし、その結果、イオン化しにくい貴金属を含有する機能性農産物の実用的な使用を可能にする。
【0018】
また、本発明により栽培されたそうした農産物は、抽出物、茶、飲料などの白金、金、及び/又は銀の効能を有する関連製品を製造するために使用できる。したがって、前記貴金属を含有する製品は、不快感なく取ることができる。さらに本発明により、薬草などの薬理作用を有する植物を栽培することで、より薬効が増強された製品を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、植物が養分を吸収する経路を示す植物の根の内部を示すために根の一部を切開した植物の根を示す斜視図である。
【図2】図2は、レーザ粒径分析器で分析したサンプル1の粒度分布を示す図である。
【図3】図3は、レーザ粒径分析器で分析したサンプル2の粒度分布を示す図である。
【図4】図4は、レーザ粒径分析器で分析したサンプル3の粒度分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
金属をイオン化して、その後に植物に吸収させる従来の方法とは異なり、本発明は、イオン化されていない金属超微粒子、詳細には、金属ナノ粒子(以下、「金属ナノ粒子」という)が、金属ナノ粒子のコロイドが使用された場合に、微粒子の形態で植物中に吸収されることができるであろうという概念、およびそれを裏付ける長時間の実験から得られたものである。つまり、本発明は、金属ナノ粒子が粒子の形態で吸収されている機能性農産物を提供する。
【0021】
ここで、前記金属ナノ粒子は、金、白金、及び銀を含む群から選択される少なくとも1種であることができる。しかし、本発明はこれらに限定されるものではない。
前記農産物は、野菜、キノコ類、薬草、果物、茶葉、穀類、及び高麗人参類などを含む群から選択されるいずれか1種であることができるが、本発明はこれらの群に限定されるものではない。
【0022】
植物の養分吸収経路を示す図1を参照すると、植物に必要とされる各種成分は、浸透圧により、水と共に植物に吸収される。すなわち、水は、浸透圧により根毛→表皮→外皮→内皮→導管の経路で吸収される。水は、根細胞の細胞質および細胞壁の孔に沿って流れる。水が中心部に入る前に、まず外皮に到達すると、水は、内皮の細胞壁にあるカスパリー線と呼ばれるワックス部分によって、内皮組織の細胞質を通過して流れる。そこから次に細胞壁に沿って移動して導管に到達する。そうした複雑な細胞構造により、水およびイオン化した無機物質は通過するが、炭水化物やブドウ糖などの分子量の大きい物質は通過することができない。
【0023】
本発明者は、微細で安定した金属ナノ粒子コロイドの製造方法を開発し、韓国特許出願第10−2007−0025423号明細書中に開示した。その開発と並行して、本発明者は開発した技術を多角的にどう利用するかについて研究してきた。本発明者は、前述のような植物の養分吸収の原理及び経路を研究した結果に注目した。その結果、本発明者は、金属が水中に安定に分散しているので、そうした金属は、水と共に植物の導管に吸収されることができ、さらに細胞壁を通過することができる程度に粒子が小さいという条件を満たされれば、イオン化されていなくても、そうした粒子は植物に吸収され、そして含有されることができることを認識した。本発明者により開発された金属ナノ粒子コロイドは、10nm以下のサイズを有するそれぞれの金属ナノ粒子が水又は電解液中に均一に分散しているコロイド状態にある。本発明者は、前記条件が満たされることができることに基づいて多くの試験(実験)を行った。その結果、金属ナノ粒子コロイドを農産物に供給した場合、イオン化しにくい金属でさえ、植物に吸収された金属成分が植物と共に人体に摂取できるように、農産物に効果的に吸収されて含有されることができることを確認した。
【0024】
金属ナノ粒子コロイドを植物に供給するために、吸収効率、作業の利便性、人件費などを実質的に考慮して、コロイドを根に供給する方法が様々な作物に対して最も実用的であると判断し、このようにそのような方法に基づいて実験を行なった。あるいは、金属ナノ粒子コロイドを農産物に注射(例えば、導管注射)するか、又はそれぞれの作物の特性に応じて水耕溶液と同じものを直接使用した場合、ある程度まで吸収効率が向上することに気がついた。また、金属ナノ粒子コロイドを農産物の果実部などの食べられる部分に直接散布(例えば、葉面散布)した場合も、ある程度まで吸収が可能であることに気がついた。
【0025】
本発明のいくつかの実施例においては、金属ナノ粒子コロイドを植物に供給して代表的な農産物を栽培し、金属ナノ粒子の含有量を測定することにより、栽培に成功したか否かを判断した。また、粒子の粒径によって内容物を比較し、粒子の粒径が植物の吸収に与える影響を調べた。根にコロイドを供給する方法を適合させて、最も困難な条件下で植物が金属ナノ粒子を吸収するか否かを調べた。
【0026】
前述のように、本発明者が先出願(韓国特許出願第10−2007−0025423号明細書)で提唱した金属ナノ粒子コロイドの製造方法において、金属塩が溶解してポリソルベートが添加された電解液を攪拌しながら、前記電解液中に相互に対向して配置された1対の金属電極棒に電流を印加する。従って前記電解液中で金属イオンは還元されて、金属ナノ粒子を析出させ、その析出した金属ナノ粒子のそれぞれの外側がポリソルベートでコーティングされることにより、金属ナノ粒子の沈降を防止する。好ましくは、アルカリ金属塩を前記水溶液中に溶解する金属塩として使用できる。アルカリ金属塩は、例えば、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、及び/又はアスコルビン酸ナトリウムを含むことができる。前記1対の金属電極棒に電流を印加すると、少なくとも一方の金属電極棒(例えば、陽極)からイオン化した金属イオンが水溶液中に存在する。一方、水溶液中に溶解しているアルカリ金属塩の陽イオンは、陰極から電子を受け取って、その電子を前記金属電極棒からイオン化した金属イオンに移動させる。その結果、前記電解水溶液中で前記金属イオンが還元されて、金属ナノ粒子が析出する。このように還元された金属ナノ粒子のそれぞれの表面がポリソルベートでコーティングされて、金属ナノ粒子間の凝集が防止された金属ナノ粒子コロイドが得られる。前記方法は、電解水溶液中で金属ナノ粒子を安定的に分散させることができ、長期間保管しても金属ナノ粒子間の凝集によって金属ナノ粒子が粗くなることを防止し、10nm以下のサイズをそれぞれ有する金属ナノ粒子が安定的に分散したままであることができる金属ナノ粒子コロイドを提供することができる。本発明は、前記方法により製造された金属ナノ粒子コロイドを例示的に用いる。しかし本発明は、所定の粒径以下(好ましくは、10nm以下)をそれぞれ有する超微粒子が分散している任意のコロイドは、前記方法により製造されたものに限定されず、本発明に適用可能である。
【実施例】
【0027】
実施例1
クエン酸ナトリウムを含む電解水溶液(電解液)を、攪拌しながら電極として金を使用して、電解液の温度を90℃未満に保持した状態で、金の超ナノ粒子コロイドが調製されるように、20Vの電流を印加した。ここで、0.1%のポリソルベートを添加して平均粒度0.8nmを有する金コロイド(以下、「サンプル1」と呼ぶ)を調製し、0.005%のポリソルベートを添加して、平均粒径5nmを有する金コロイド(以下、「サンプル2」と呼ぶ)を調製した。
【0028】
一方、10nm以上の粒径を有する金コロイドとして、Sigma社によって調製された「Gold Colloid 20 NM Colloidal Gold」(以下、「サンプル3」と呼ぶ)を使用した。
【0029】
図2は、レーザ粒径分析器で分析したサンプル1が、0.5〜2nmの粒度範囲を有するサンプル1の粒度分布図を示す。図3は、レーザ粒径分析器で分析したサンプル2が、1〜10nmの粒度範囲を有するサンプル2の粒度分布図を示す。図4は、レーザ粒径分析器で分析したサンプル3が、11〜30nmの粒度範囲を有するサンプル3の粒度分布図を示す。
【0030】
9本の梨の木を3グループに分け、それぞれのグループの梨の木の根に、それぞれ前記サンプル1、サンプル2、サンプル3の金コロイド(濃度10ppm)を供給し、それぞれのグループの木の根が対応する金コロイドを吸収するか否かを分析した。金コロイドを、8月上旬と9月上旬に2回供給し、9月20日頃に梨を集めた。前記それぞれの金コロイドは5リットルずつ枝根に均一に供給された。集めた梨の金の含有量をICP−MSで分析した。
【0031】
表1は、実施例1による金コロイドを供給することによって成長し、集められた、梨中の金の含有量を示す。
【表1】

表1に示すように、サンプル1とサンプル2では梨への金の吸収に成功したのに対して、サンプル3では梨に金が吸収されていないことが分かる。したがって、サンプル3において吸収が不成功だったのは、粒子の粒径が10nm以上であることを考慮すると、粒子の粒径が梨の木の根細胞を通過できないほど大きいからであることが分かる。つまり、粒径10nm以下のサイズを有する金コロイドは、浸透圧による水分吸収時に、根の細胞壁を円滑に通過できると報告できる。
【0032】
実施例2
実施例2においては、サンプル1の金コロイドをエリンギに供給し、キノコが金コロイドを吸収するか否かを分析した。10ppmの金超微粒子コロイドを実施例1と同様に調製した。キノコ栽培者がエリンギを栽培するにあたって、発芽誘導段階でキノコ1瓶当たり金コロイド30mlを注入した。注入15日後にキノコを集めてキノコ中の金の含有量をICP−MSで分析した。
【0033】
実施例3
実施例3においては、サンプル1の金コロイドを供給して緑茶を栽培した。10ppmの金ナノ粒子コロイドを実施例1と同様に調製した。3月中旬に1週当り3リットルの金コロイドを供給し、4月下旬に緑茶葉を集めて金の含有量をICP−MSで分析した。
【表2】

表2は、実施例2のエリンギ及び実施例3の緑茶葉中の金含量をICP−MSで分析した結果を示す。エリンギでは平均2ppmの金が検出された。緑茶葉では平均0.4ppmの金が検出された。この結果から、1種の菌類であるキノコおよび緑茶が金を吸収できることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ナノ粒子が、粒子形態で吸収されている、機能性農産物。
【請求項2】
前記金属ナノ粒子のそれぞれの粒径が、10nm以下である、請求項1に記載の農産物。
【請求項3】
前記金属ナノ粒子のそれぞれが、その表面においてポリソルベートでコーティングされている、請求項1に記載の農産物。
【請求項4】
前記金属ナノ粒子が、金、白金、及び銀を含む群から選択された少なくとも1種である、請求項1に記載の農産物。
【請求項5】
前記農産物が、野菜、キノコ、薬草、果物、茶葉、穀類、及び高麗人参類を含む群から選択された1種である、請求項1に記載の農産物。
【請求項6】
前記金属ナノ粒子が、前記農産物の導管を介して吸収される、請求項1に記載の農産物。
【請求項7】
水又は電解液中に金属ナノ粒子が分散されている金属ナノ粒子コロイドが、農産物に供給されることを特徴とする、機能性農産物の栽培方法。
【請求項8】
前記金属ナノ粒子コロイド中に分散している金属ナノ粒子のそれぞれの粒径が、10nm以下である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記金属ナノ粒子コロイドが、前記農産物の根によって吸収されるように、前記金属ナノ粒子コロイドが、前記農産物の根近くの土壌上に供給される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記金属ナノ粒子コロイドが、葉面散布によって前記農産物上に散布される、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記金属ナノ粒子コロイドが、導管注射によって前記農産物中に供給される、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
金属塩が溶解してポリソルベートが添加された電解水溶液(電解液)を攪拌しながら、前記電解水溶液中に相互に対向して配置された1対の金属電極棒に電流を印加して、前記電解水溶液中において前記金属電極棒からイオン化した金属イオンを還元させて金属ナノ粒子を析出させ、そして前記析出した金属ナノ粒子のそれぞれの外側をポリソルベートでコーティングすることにより、前記金属ナノ粒子コロイドが、得られる、請求項7に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2011−505133(P2011−505133A)
【公表日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−535893(P2010−535893)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【国際出願番号】PCT/KR2008/007227
【国際公開番号】WO2009/072845
【国際公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(510152471)
【出願人】(510152770)
【Fターム(参考)】