説明

機能性食品

【課題】吸水膨潤性が発揮できるバジルシードの開発
【解決手段】吸水膨潤したシソ科メボウキ属(Ocimum)に属する植物の種子であるバジルシードを凍結乾燥したことを特徴とする機能性食品

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バジルシードを用いた機能性食品に関する。
【背景技術】
【0002】
バジルシードは、シソ科メボウキ属(Ocimum)に属する植物の種子として知られている。タイ、カンボジア、ミャンマー、ベトナム、台湾などの東南アジアを中心に生産され、食品として利用されている。バジルシードは、水の中にいれると膨潤しゲル状の物質 (ハイドロコロイド) を生成する。そのため、特に東南アジア諸国においてはバジルシードの種子は食物繊維として頻用されている。これまでに数種類のバジルシードのハイドロコロイドに関して研究がなされており、Ocimum basilicum 、 Ocimum canum および Ocimum gratissimum では酸可溶成分中に (1,4)-結合し C-2 と C-3 で分岐したキシランが存在し、Ocimum adescendens では (1,2)-結合したラムノガラクツロナンの骨格が存在していることが報告されている。ハイドロコロイドを限定分解し、Ocimum basilicum および Ocimum canumからそれぞれグルコースとマンノースの比が 10:2 および 10:3 の酸に対して安定なグルコマンナンのコアが得られている。
また、バジルシードの種子は、タイやミャンマー、ベトナムなどの東南アジアにおいては、ダイエット効果や便通改善効果があるとされ、この種子をココナッツミルクや砂糖水などに加えてデザートとして、一般的に食されている。
日本では、ダイエット食品として注目され、利用されている。保存状態が悪いと発がん性を有するカビ毒(アスペルギルス属等の真菌により産生される)が発生するので注意を要する。
乾燥したバジルシードの種子と吸水膨潤した状態を図13に示す。(a)は乾燥種子、(b)は吸水膨潤状態である。
【0003】
特許文献1(特開平11−32727号公報)には、吸水膨潤させずに摂取し消化器内で膨潤させるためにバジルシードを、カプセル内に封入したものが開示されている。
【0004】
特許文献2(特開2005−295968号公報)には、バジルシードを噛みつぶすことによりα−リノレン酸を摂取し得るよう構成する。これにより、オシマムの果実及び/又は種子の内部に含まれるα−リノレン酸を効率的に吸収し、健康の増進を図る発明が
開示されている。具体的には、バジルシードをグミ、アメ、ソフトキャンディ、クッキー、チョコレート、錠菓等の食品形態が提案されている。この特許文献には、バジルシードの例として、オシマムは、Ocimum属に属する、メボウキ(Ocimumbasilicum Linn.)、カミメボウキ(Ocimum sanctum Linn.)、オシマム・ビリデ(Ocimum viride Willd.)、シラゲメボウキ(Ocimum graveolens A.Br.)、オシマム・ミクランツム(Ocimum micranthum Willd.)、オシマム・キリマンジャリクム(Ocimum kilimandscharicum Gurke.)等の植物であり、その代表的なものは、ケメボウキと呼ばれるオシマム・カヌム(Ocimumcanum Sims)であり、これはシソ科に属するアジア、アフリカ熱帯原産の草本である。
【0005】
【特許文献1】特開平11−32727号公報
【特許文献2】特開2005−295968号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在市販されているバジルの種子の商品は、種子をそのまま袋に詰め、食する際に水などの飲料を加えて吸水させた状態の種子を食するタイプ、あるいは種子を飴やクッキーなどにくわえたタイプのものがある。
しかし、種子をそのまま袋に詰めたタイプの商品は、食する際に水などの飲料を加えて吸水させ膨潤させるのが一般的であるが、水では完全に吸水膨潤するまでに5〜7分も掛かってしまう。また、ココナッツミルクや砂糖水のような水以外に他の添加成分が混ざった溶液に混合した場合は、添加成分がバジルの種子の水分吸収を阻害してしまうことから、完全に膨潤しないという問題点がある。
一方、バジルの種子は胃液や腸液では同様に完全には膨潤しないことから、種子を飴やクッキーなどにくわえたタイプの商品では摂取してもダイエット効果や便通改善効果が得られにくいという問題点もある。
本願発明は、吸水膨潤性が発揮できるバジルシードの開発を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、吸水膨潤性が発揮できる形態として、一旦吸水膨潤したバジルシードを凍結乾燥処理すると、良好な再膨潤性を発揮することを見出した。さらに、多糖類を併用して賦形処理を施すことにより、取扱い性を向上することができた。
【0008】
本発明の主な構成は次のとおりである。
(1)吸水膨潤したシソ科メボウキ属(Ocimum)に属する植物の種子であるバジルシードを凍結乾燥したことを特徴とする機能性食品。
(2)吸水膨潤したメボウキ属(Ocimum)に属する植物であるバジルシードに多糖類を添加した後凍結乾燥種子に成形したことを特徴とする機能性食品。
(3)多糖類がプルラン又はローカストビーンガムであることを特徴とする(2)記載の機能性食品。
(4)バジルシードの種子に対して多糖類を0.3〜100重量%添加したことを特徴とする(2)又は(3)記載の機能性食品。
(5)シソ科メボウキ属(Ocimum)に属する植物がOcimum canum又はOcimum basilicumであることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載された機能性食品。
(6)(1)〜(5)のいずれかに記載された機能性食品を添加した固形状、ゲル状あるいは液状食品。
(7)(1)〜(5)のいずれかに記載された機能性食品を含むインスタント食品の具材。
(8)メボウキ属(Ocimum)に属する植物の種子であるバジルシードを水に浸して吸水させ、多糖類を添加した後、凍結乾燥し、賦形処理したことを特徴とする機能性食品の製造方法。
(9)メボウキ属(Ocimum)に属する植物がOcimum canum又はOcimum basilicumであることを特徴とする(8)記載の機能性食品の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
1.凍結乾燥したバジルシードは、吸水膨潤性が良好である。短時間に吸水膨潤し、他の成分が混合されている溶液や胃液や腸液でも十分な膨潤性を発揮する。
2.凍結乾燥したバジルシードをプルランやローカストビーンガムなどの多糖類を添加することにより吸水膨潤性を阻害することなく成型することができ、取扱い性を向上させることができる。
3.摂取後も吸水膨潤性を発揮するのでダイエット機能食品素材として有効である。
4.凍結乾燥するので、種子そのものよりも衛生的に処理、管理することができ、カビ毒のような問題は発生せず、安全である。
5.本発明の凍結乾燥バジルシードは、他の溶分が溶けている液状飲料に後添しても短時間に十分な吸水膨潤性を示す。また、ヨーグルトやゼリー等のゲル状食品中でも同様である。あるいは、ケーキやクッキーなどの固形状食品に配合した場合も、摂取後の吸水膨潤性を発揮することができる。短時間に吸水膨潤するのでカップラーメンやカップスープなどのインスタント食品の具材として、他の具材と調理時間が調和するので適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、一旦吸水膨潤したバジルシードを凍結乾燥処理した凍結乾燥バジルシードである(以下「凍結乾燥バジルシード」と使用した場合は、この、一旦吸水膨潤したバジルシードを凍結乾燥処理したものを指す)。さらに、多糖類を併用して賦形処理を施すことにより、取扱い性に優れた成型剤として提供できる。凍結乾燥処理されたバジルシードは、良好な再膨潤性を発揮する。水以外にココナッツミルクやジュース類、ヨーグルト類などの液状の食品に添加しても、優れた再膨潤性を示す。また、胃液や腸液においても膨潤するので、水分の少ない食品や乾燥状態の食品に添加しても、胃腸での膨潤性が確保でき、ダイエットなどの機能食品として有効である。
【0011】
本発明の原材料として用いられるシソ科メボウキ属(Ocimum)に属する植物の種子は、背景技術に紹介されている主に東南アジアで栽培され、利用されている植物の種子(以下「バジル植物の種子」と言うことがある。)が用いられる。シソ科メボウキ属(Ocimum)に属する植物として、Ocimum canum及びOcimum basilicumが一般的に用いることができる。
凍結乾燥処理は、バジル植物の種子を十分に吸水させて膨潤させた後に、通常の凍結乾燥処理を施す。例えば、-80℃のフリーザー内で一晩凍結した後、トラップ温度-82℃、バキューム6.0Paにて3日間、凍結乾燥させ処理する。図13に示すように、植物から採取された種子は、コムギの種のようであり、これを吸水させると、膨潤しゲル状の物質 (ハイドロコロイド) を生成する状態となる。この十分に吸水膨潤した状態で、凍結乾燥処理を施すと、図9や図12の左端に示される写真のように、黒いゴマの回りに綿毛がついた状態となる。図9や図12の左端に示された写真は、賦形処理を試みたが、成型困難な状態を示しており、凍結乾燥処理されたバジルシードは、個々に分離性がつよく、嵩高なので個分け分封等をしないと、適量を取り出すことは難しい。
食品工場や総菜屋など一度に大量に使用する場合は、成型せずに、重量計測によって活用できる。個々人や少量使用する場合は、小さく成形されているほうが、取扱いが容易である。無論、大量使用でも、成形品を使用することは可能である。
【0012】
凍結乾燥バジルシードは、30秒程度で再膨潤するが、バジル植物の種子では6分を要し、汁物やインスタント食品に後添加する場合に乾燥バジルシードは特に適していることが分かる。さらに、膨潤量(水分含有量)は、バジル植物の種子よりも大きくなっており、膨潤性能も乾燥バジルシードが優れている。
吸水膨潤したバジル植物の種子自体は、カエルの卵状を呈するので、単に水に浮遊させた状態で飲食するよりは、他の食品に添加して用いることが好ましい。乾燥菓子に添加することも可能である。乾燥状態で摂取した場合に、胃腸での膨潤が期待されるところであって、凍結乾燥バジルシードは、バジル植物の種子に比べて、10分あるいは40分経過しても、胃では5〜6倍膨潤し、腸では2.5倍の膨潤が観察され、期待に応えうることができる。他の液状食品に添加した場合でも、凍結乾燥バジルシードは、バジル植物の種子因りも高い膨潤性を示している。そして、凍結乾燥バジルシードは短時間で膨潤する。
【0013】
凍結乾燥バジルシードは、個々に綿毛に包まれた状態で、そのままでは成形性が悪い。そこで、賦形処理して成形し、取扱い性の向上を試みた結果、多糖類を添加することにより吸水膨潤性を犠牲にすることなく成形することが可能となった。多糖類は、プルラン、ローカストビーンガム、ペクチン、イオタ−カラギーナン、カッパ−カラギーナン、グルコマンナン、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、グアーガムなどである。特に、プルランとローカストビーンガムが優れている。
多糖類の添加は、凍結乾燥する前の吸水膨潤状態において添加することが好ましく、凍結乾燥バジルシードに対して0.1〜300重量%が好ましく、さらには、100重量%以上では効果が頭打ちとなり増進しない。0.3重量%以上で十分に機能を発揮し、10重量%以上で優れた吸水性を示す。成形性も0.3重量%以上にて十分な保形性がある。
【0014】
食事の用途としては種々のものを挙げることができるが、例えば、雑炊、リゾット、厚焼きたまご、更紗焼き、野菜サラダ、カレーやチャーハン、もずく酢、ポップライス、フレーク、もち、入込煮、ひじき煮、ポタージュスープ、シャーベット(スイカ、キウイ、オレンジなど)、ムース、ゼリー、プリン、青汁などの野菜ジュースや果物ジュース等が最も好ましく、更にオムライス、豆腐、お好み焼き、ハンバーグ、華風和え、茄子の旨煮、筑前煮等が好ましい。トマト、コーン、みそ汁、ミート、コールドスープ等のスープ類、ジャム、ゼリー、プリン、生クリーム、バニラクリーム、チョコクリーム、カスタードクリーム、チーズクリーム、ヨーグートクリーム等のデザート類、スポンジ、チョコ、ゼリー等のケーキ類、トマトソース、ミートソース、チーズソース等のパスタソース類、シリアル、トッピングやドレシング、ジュース、のむヨーグート、カルピス、ミルク、フルーツミルク、コーヒ、カプチーノ、カフェラッテ、ココアミルク、コンポート(果物の甘者)、カレーライス、ハヤシライス、オムライス、シチュー、ラーメン、そば、うどん、インスタント食品等多様な食品に利用できる。
またヨーグルト、フルーツみつまめ、お汁粉、ココナッツミルク等のいわゆるデザートや間食用食品としても好ましい。この場合には、本発明に係る凍結乾燥バジルシードは0.5〜10%加えるのがよい。
本発明の適用に当たっては、必要に応じて甘味料や色素を添加することができる。
本発明に係る凍結乾燥バジルシードは長期保存が可能であり、食べたい時に水を添加するだけで直ちに食べることが可能となる。従って、インスタント食品や非常食としての形が最も理想的である。
本発明に係る凍結乾燥バジルシードは、食前、食後、食間のいずれであってもその効果が発現することが判っている。
【0015】
[凍結乾燥バジルシードの吸水試験]
バジル植物の種子を十分な水量に投入し、十分に吸水膨潤させた後に、-80℃のフリーザー内で一晩凍結した後、トラップ温度-82℃、バキューム6.0Paにて3日間、凍結乾燥させ処理して、凍結乾燥バジルシードを得た。
試験.:凍結乾燥バジルシードが吸水膨潤に要する時間の測定
1.測定方法
凍結乾燥バジルシード(2.7g:種子3gに相当)あるいはバジル植物の種子3gに蒸留水100mLを加え、それぞれが完全に膨潤するまでに要する時間を測定した。0.5分、6分、10分及び40分後に膨らんだ際の水分含有量(g H20/gバジルシード)を計測した。
【0016】
2.測定結果
0.5分、6分、10分及び40分経過後に吸水し膨潤した水分含有量(Water Content(膨潤度、degree of swelling in water))を測定した結果を表1、図1に示す。
(1)水分含有量
40分後の水分含有量は、凍結乾燥バジルシードがバジル植物の種子よりも20%以上多いことが示されている。
(2)吸水速度
凍結乾燥バジルシードは0.5分(30秒)には、バジル植物の種子40分後と同程度の吸水量を示しており、短時間に吸水し膨潤することが確認できる。0.5分(30秒)分後の吸水量は、40分後のそれぞれ80%、30%である。
(3)80%吸水膨潤
バジル植物種子の40分後の吸水量は凍結乾燥バジルシードでは0.5分後に実現され、それは凍結乾燥バジルシード40分後の80%以上に相当することは上記したとおりである。そこでバジル植物種子が80%の吸水膨潤に至る時間を別途測定すると、5.8±2.9分であった。80%吸水に着目すると、凍結乾燥バジルシードの方が1/10以上短時間に膨潤し、非常に優れていることがわかる。この膨潤に要する時間30秒間は、インスタント食品に用いられる乾燥具材として適している。また、スープやみそ汁、トッピングとして用いても食べ頃な時間内に膨潤状態となる。したがって、この短時間吸水膨潤は、実用上優れた作用効果である。
【0017】
【表1】

【0018】
[胃液、腸液下の吸水試験]
試験:胃液、腸液環境条件における水分含有量、Water Content(膨潤度、degree of swelling in water)の測定
1.測定方法
1−1 乾燥状態での試験
ビーカー中にバジル植物の種子(3g)あるいは凍結乾燥バジルシード(2.7g:種子3gに相当)と蒸留水、胃液あるいは腸液100mLを加えて、10分あるいは40分間膨らませた後、篩いにとり、水を切り膨潤によって含有されている水分量(膨潤度、degree of swelling in water)(g H2O/g バジルシード)を測定する 。
1−2 事前吸水処理試験
バジル植物の種子(3g)あるいは凍結乾燥バジルシード(2.7g:種子3gに相当)を10分間蒸留水を吸水させ水切りをして事前吸水処理したバジル植物の種子及び凍結乾燥バジルシードを準備する。その事前吸水したバジル植物の種子及び凍結乾燥バジルシードを胃液、腸液に浸して10分あるいは40分間後の水分含有量、Water Content(膨潤度、degree of swelling in water)(g H2O/g バジルシード)を測定する 。
2.胃液及び腸液の調製
胃液:塩化ナトリウム2.0gに塩酸7.0mL及び水を加えて溶かし1000mLとする。この液は無色透明で、そのpHは約1.2である。
腸液:0.2mol/Lリン酸水素カリウム溶液250mLに0.2mol/L水酸化ナトリウム溶液118mL及び水を加えて1000mLとする。この液は無色透明で、そのpHは約6.8である。
【0019】
3.試験結果
1−1 乾燥状態での試験結果
水、胃液、腸液に10分間あるいは40分間浸して膨らんだ後の水分含有量(Water Content(膨潤度、degree of swelling in water))(g H20/gバジルシード)の結果を表2、図2に示す。なお、図2中「H2O」の表記は、「水」を表している(以下、図4、6、8、11も同様である)。
凍結乾燥バジルシードの方がバジル植物の種子より水分含有量が多いことがわかる(分散分析、p値<0.0001)。
(1)胃液中では、凍結乾燥バジルシードの方がバジル植物の種子より、6.4倍吸水膨潤している。
(2)腸液中では、凍結乾燥バジルシードの方がバジル植物の種子より、2.4倍吸水膨潤している。
(3)水との比較では、凍結乾燥バジルシードは、胃液中で43%、腸液中では55%の吸水膨潤を示す。バジル植物の種子はそれぞれ9%、29%に留まり、乾燥したバジル植物の種子そのものを飲食摂取しても、体内での吸水膨潤は期待できないことが分かる。
【0020】
【表2】

【0021】
1−2 事前吸水処理試験の結果
胃液、腸液に10分間あるいは40分間浸して膨らんだ後の水分含有量(Water Content(膨潤度、degree of swelling in water))(g H20/gバジルシード)の結果を表3、図3に示す。
凍結乾燥バジルシードの方がバジル植物の種子より多く吸水していることがわかる(分散分析、p値<0.0001)。これにより、あらかじめ吸水した状態で摂取しても、体内での膨潤に差があることが明確となっている。
(1)10分経過後において、胃液中では凍結乾燥バジルシードの方がバジル植物の種子より、35%多く吸水膨潤し、腸液中では31%多く吸水膨潤している。
(2)40分経過後において、胃液中では凍結乾燥バジルシードの方がバジル植物の種子より、77%多く吸水膨潤し、腸液中では55%多く吸水膨潤している。
(3)10分、40分経過後とも腸液中の方吸水膨潤が大きくなっている。
【0022】
【表3】

【0023】
[他の媒質との併用吸水膨潤試験]
試験: 凍結乾燥バジルシードのベリー粉末ミックスで味付けされた溶液中の吸水膨潤測定
【0024】
1.ベリー粉末ミックス溶液の調製:
次の成分に蒸留水33mLを加えてベリーミックス溶液を調整した。
1. スクロース 0.1 g
2. ストロベリーパウダー 0.25 g
3. 赤色着色料 0.05 g
4. ストロベリー香料 0.98 g
5. ラズベリー香料 0.2 g
6. マスキング剤 0.4 g
1.98 g

【0025】
2.試験方法
100mL のビーカー中にバジル植物の種子1gあるいは凍結乾燥バジルシード(0.9g:種子1gに相当)を入れ、さらにそれぞれのビーカーに蒸留水33mLあるいはベリーミックス溶液33mLを加え、1分あるいは10分間放置して膨らませた後、篩いにとり、水を切り膨潤によって含有されている水分量(膨潤度、degree of swelling in water)(g H2O/g バジルシード)を測定する 。
【0026】
3.試験結果
測定した結果を図4に示す。
図4に示したように、水中で吸水したと同様、ベリーミックス溶液中に浸した場合も、凍結乾燥バジルシードがバジル植物の種子に比べ、吸水量が多く、よく膨潤していることがわかる。特に、1分経過後で凍結乾燥バジルシードは十分に吸水が進み、10分経過後と遜色ないことが分かる。バジル植物の種子は、10分後の1/3程度しか吸水していない。
この結果、ジュース、ミルク、スープなどの既に調整済みの飲食品に後添しても、十分な吸水と膨潤を計ることができる。したがって、トッピングなど好みに応じて添加して飲食することに適している。また、工場などでも、後調整材として使用することができる。
【0027】
[多糖類添加吸水試験]
1.試験方法
50mL の試験管中に、バジル植物の種子1gを蒸留水30mL(H2O)に浸して30分間膨らませた後、次の多糖類を0.03g添加し、混合した後、30分間室温に放置した後凍結乾燥処理をして凍結乾燥バジルシードを得た。多糖類は、プルラン、ローカストビーンガム、ペクチン、イオタ−カラギーナン、カッパ−カラギーナン、グルコマンナン、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、グアーガムを使用した。
試験管に凍結乾燥バジルシードと蒸留水を添加して(試験管の上まで)、18時間室温で吸水させて、バジルシード量「SwellingVolume (mL)」を測った(図5)。
それを篩いにとって水を切り、吸水膨潤によって含有されている水分量(膨潤度、degree of swelling in water)(g H2O/g バジルシード)を測定した(図6)。
統計解析は多糖類とControl(何も入れてないバジルシード)との間でt−検定で行った。
【0028】
2.試験結果
(1)バジルシード量(図5参照)について見ると、いずれの多糖類もコントロールに比較して多くなっており、特にプルラン、ローカストビーンガム、ペクチン、カッパ−カラギーナン、グルコマンナンについて有意差が認められている。多糖類を添加することによって、吸水膨潤が強化されることが判明した。
(2)これを篩いにとって水を落とした膨潤によって含有されている水分量(図6参照)を見ると、特に大きな有意差がプルラン、ローカストビーンガムに見られ、次いでペクチン、イオタ−カラギーナン、グルコマンナン、キサンタンガム、グアーガムついて有意差が認められる。
【0029】
[プルラン添加吸水及び成形試験]
1.試験方法
(1)50mL の試験管中に、バジル植物の種子1gと蒸留水30mL(H2O)を入れて30分間放置して膨らませた後、プルランを0.003g、0.005g、0.01g、0.03g、0.05g、0.1g、1g及び3g添加して、混ぜた後、更に30分間室温で放置した後、凍結乾燥処理を施して、プルラン添加凍結乾燥バジルシードを得た。
このプルラン添加凍結乾燥バジルシードを試験管に入れ、蒸留水を添加して(試験管の上まで)、18時間室温に放置して、バジルシード量「SwellingVolume (mL)」を測った(図7)。
(2)上記(1)を篩いにとって水を切り、吸水膨潤によって含有されている水分量(膨潤度、degree of swelling in water)(g H2O/g バジルシード)を測定した(図8)。
(3)比較として、あらかじめ製造した凍結乾燥バジルシードにプルランをそれぞれ濃度添加して、18時間室温で放置して、バジルシード量「SwellingVolume (mL)」及び水分含量(g H2O/g バジルシード)を測定した。また、(2)と同様にして含有水分量を測定した。それぞれの結果を図7及び図8に併記した。
表記はC 0.003g、C 0.005g、C 0.01g、C 0.03g、C 0.05g、C 0.1g、C 1g及びC 3gとする。
(4)統計解析はそれぞれ同量の添加量間についてt−検定で行った。
(5)プルラン添加した凍結乾燥バジルシードの成形は次のように行った。その賦形の状態を図9に示す。
1gのバジルシードを50mlのプラスチック製円筒容器(IWAKI製、遠沈管)に入れ、これに30mlの水を加えて40分間、室温にて膨潤させる。次いで、これに各濃度に調製したプルラン又はローカストビーンガムを添加、混合した後、室温にて1時間放置した後、-80℃のフリーザー内で一晩凍結させた。その後、凍結乾燥機(トラップ温度:-82℃、バキューム圧:6.0Pa)にて96時間、凍結乾燥させた。凍結乾燥終了後、成型された凍結乾燥バジルシードを、カッターを用いて適宜の大きさにカットした。
【0030】
2.試験結果
(1)図7及び図8に示されるように、プルランを添加しないコントロールに比べて、凍結乾燥前後にプルランを添加したかに係わらず、吸水膨潤は大きくなっていることがわかる。そして、凍結乾燥処理をする前にプルランを添加しその後凍結乾燥処理をしたものが、凍結乾燥処理後にプルランを添加したものよりも吸水膨潤は大きくなっている。
(2)特に、図8に示す水分含有量では、凍結乾燥前にプルランを添加したプルラン添加凍結乾燥バジルシードが、凍結乾燥バジルシードにプルランを添加したものよりも、全範囲で明らかに上回っている。
(3)賦形処理を施した結果を表示した図9についてみると、プルランを添加しない凍結乾燥バジルシード(コントロール)は固めることができず、成形されないが、0.003g以上添加した物では成形性が認められた。したがって、0.3重量%以上プルランを添加した凍結乾燥バジルシードでは成形性が認められる。なお、図7を参照すると、プルラン添加量1gと3gでは差は認められないので、現実的に有効な添加量は1g、即ち凍結乾燥バジルシードに対して100重量%である。
【0031】
[ローカストビーンガム添加吸水及び成形試験]
1.試験方法
(1)50mL の試験管中に、バジル植物の種子1gと蒸留水30mL(H2O)を入れて30分間放置して膨らませた後、ローカストビーンガムを0.005g、0.01g、0.03g、0.05g及び0.1g、添加して、混ぜた後、更に30分間室温で放置した後、凍結乾燥処理を施して、ローカストビーンガム添加凍結乾燥バジルシードを得た。
この、ローカストビーンガム添加凍結乾燥バジルシードを試験管に入れ、蒸留水を添加して(試験管の上まで)、18時間室温に放置して、バジルシード量「SwellingVolume (mL)」を測った(図10)。
(2)上記(1)を篩いにとって水を切り、吸水膨潤によって含有されている水分量(膨潤度、degree of swelling in water)(g H2O/g バジルシード)を測定した(図11)。
(3)比較として、あらかじめ製造した凍結乾燥バジルシードにローカストビーンガムをそれぞれ濃度添加して、18時間室温で放置して、バジルシード量「SwellingVolume (mL)」及び水分含量(g H2O/g バジルシード)を測定した。また、(2)と同様にして含有水分量を測定した。それぞれの結果を図10及び図11に併記した。
表記はC 0.005g、C 0.01g、C 0.03g、C 0.05g及びC 0.1gとする。
(4)統計解析はそれぞれ同量の添加量間についてt−検定で行った。
(5)プルラン添加した凍結乾燥バジルシードの成形は次のように行った。その賦形の状態を図12に示す。
1gのバジルシードを50mlのプラスチック製円筒容器(IWAKI製、遠沈管)に入れ、これに30mlの水を加えて40分間、室温にて膨潤させる。次いで、これに各濃度に調製したプルラン又はローカストビーンガムを添加、混合した後、室温にて1時間放置した後、-80℃のフリーザー内で一晩凍結させた。その後、凍結乾燥機(トラップ温度:-82℃、バキューム圧:6.0Pa)にて96時間、凍結乾燥させた。凍結乾燥終了後、成型された凍結乾燥バジルシードをカッターを用いて適宜の大きさにカットした。
【0032】
2.試験結果
(1)図10及び図11に示されるように、ローカストビーンガムを添加しないコントロールに比べて、凍結乾燥前後にローカストビーンガムを添加したかに係わらず、吸水膨潤は大きくなっていることがわかる。そして、凍結乾燥処理をする前にローカストビーンガムを添加しその後凍結乾燥処理をしたものが、凍結乾燥処理後にローカストビーンガムを添加したものよりも吸水膨潤は大きくなっている。これらはプルランと同様の傾向を示している。
(2)特に、図11に示す水分含有量では、凍結乾燥前にローカストビーンガムを添加したローカストビーンガム添加凍結乾燥バジルシードが、凍結乾燥バジルシードにローカストビーンガムを添加したものよりも、ほぼ全範囲で明らかに上回っている。
(3)賦形処理を施した結果を表示した図12についてみると、ローカストビーンガムを添加しない凍結乾燥バジルシード(コントロール)は固めることができず、成形されないが、0.005g以上添加した物では成形性が認められた。したがって、0.5重量%以上ローカストビーンガムを添加した凍結乾燥バジルシードでは成形性が認められる。
【0033】
[処方1]
〔ドリンク(ジュース)の製造〕
水 52.95(重量%)
レモン果汁 25(重量%)
凍結乾燥バジルシード 12(重量%)
砂糖 9(重量%)
緑茶フレーバー 1(重量%)
クエン酸 0.05(重量%)
【0034】
[処方2]
〔バジルシード入り発芽米ポップライスクラッカーの製造〕
発芽米 38.3(重量%)
凍結乾燥バジルシード 28.7(重量%)
大麦 10.0(重量%)
はと麦 10.0(重量%)
もちきび 5.0(重量%)
もちあわ 5.0(重量%)
ごま 3.0(重量%)
【0035】
[処方3]
〔青汁ムースの製造〕
(8.5センチの型 4個分)
卵白 1個
グラニュー糖 15g
粉ゼラチン 5g
生クリーム 100cc
牛乳 50cc
ミント 適量
粉末青汁 70g
凍結乾燥バジルシード 10g
【0036】
[処方4]
〔鰻オムライス〕
(1人前)
卵 1個
鰻 60g
ご飯 茶碗1/2
凍結乾燥バジルシード 5g
きゅうり 1/4本
枝豆 10個
紅しょうが 少々
実山椒 少々
きび砂糖 小さじ1
塩・こしょう 少々
サラダ油 小さじ1
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】凍結乾燥バジルシードの吸水量を示すグラフ
【図2】水中、胃液中、腸液中における水分含量の比較グラフ
【図3】胃液、腸液環境における水分含量を示すグラフ
【図4】ベリー粉末ミックス水溶液における水分含量を示すグラフ
【図5】多糖類を含むバジルシードの量「Swelling Volume」
【図6】多糖類を含むバジルシードの水分含量を示すグラフ
【図7】プルランを含むバジルシードの量「Swelling Volume」を示すグラフ
【図8】プルランを含むバジルシードの水分含量を示すグラフ
【図9】プルラン添加賦形剤例を示す写真
【図10】ローカストビーンガムを含むバジルシードの量「Swelling Volume」を示すグラフ
【図11】ローカストビーンガムを含むバジルシードの水分含量を示すグラフ
【図12】ローカストビーンガム添加賦形剤例を示す写真
【図13(a)】通常乾燥の種子の写真
【図13(b)】吸水膨潤した状態の種子の写真

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸水膨潤したシソ科メボウキ属(Ocimum)に属する植物の種子であるバジルシードを凍結乾燥したことを特徴とする機能性食品。
【請求項2】
吸水膨潤したメボウキ属(Ocimum)に属する植物であるバジルシードに多糖類を添加した後凍結乾燥種子に成形したことを特徴とする機能性食品。
【請求項3】
多糖類がプルラン又はローカストビーンガムであることを特徴とする請求項2記載の機能性食品。
【請求項4】
バジルシードの種子に対して多糖類を0.3〜100重量%添加したことを特徴とする請求項2又は3記載の機能性食品。
【請求項5】
シソ科メボウキ属(Ocimum)に属する植物がOcimum canum又はOcimum basilicumであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載された機能性食品。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載された機能性食品を添加した固形状、ゲル状あるいは液状食品。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載された機能性食品を含むインスタント食品の具材。
【請求項8】
メボウキ属(Ocimum)に属する植物の種子であるバジルシードを水に浸して吸水させ、多糖類を添加した後、凍結乾燥し、賦形処理したことを特徴とする機能性食品の製造方法。
【請求項9】
メボウキ属(Ocimum)に属する植物がOcimum canum又はOcimum basilicumであることを特徴とする請求項8記載の機能性食品の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13(a)】
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【図13(b)】
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