説明

機能的リガンドの同時合成方法

本発明は、機能的生体分子、特に複数の標的分子に対する複数の機能的核酸を同時に合成する方法に関する。さらに、本発明は、機能的生体分子、特に機能的活性を伴って、受容体分子などの他の生体分子へ結合する機能的核酸を合成する方法に関する。本発明の一つの説明的態様において、機能的生体分子の合成は、単一反応容量内における機能的核酸の合成のように、単一システム内で複数の標的に対して同時に行われ得る。一般的に複数の標的は、単一反応容量中に配置され得て、核酸ライブラリーのような生体分子ライブラリーが前記反応ボリュームに適用され得る。その結果、所定の条件下で複数の標的と結合しないライブラリーのメンバーが、洗浄などによって分離され得る。こうして、ライブラリーの残りのメンバーは、例えばライブラリーのメンバーが結合する特定の標的(単数・複数)を同定するためにマーク付けされ、及び/またはタグ付けされ得る。その結果、ライブラリーの結合メンバーは、単離され、マーク付けまたはタグ付けによって特定の標的(単数・複数)に適合され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2009年3月23日に出願された「機能的リガンドの同時合成方法」と題する米国仮特許出願番号第61/162,394号、及び、2008年6月6日に出願された「分子検出方法」と題する米国仮特許出願番号を第61/059,435号を基礎とする2009年6月6日に出願された「分子検出方法」と題する米国特許出願番号第12/479,806号から優先権の利益を主張する。上記出願全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(配列表)
デオキシリボ核酸配列は、2010年1月6日に作成されたサイズ9.11キロバイトの「P1011US01_ST25.txt」と題するASCIIテキストファイルを参照することにより、本明細書に組み込まれる。
【0003】
(発明の属する技術分野)
本発明は、機能的生体分子を合成する方法に関し、特に、複数の異なる標的分子に対して複数の機能的核酸を同時に合成する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
分子標的に結合可能な核酸リガンドであるアプタマーは、生物学、生命工学の多領域におけるその潜在的用途に関して、近年ますます注目を集めている。かかるアプタマーは、センサや治療手段として、細胞プロセスを調節するためならびに特定の細胞内標的(単数・複数)に薬剤を導入するために使用され得る。
実際の遺伝物質とは異なり、その特異性及び特徴は、一次配列によって直接的に決定されるのではなく、三次構造によって決定される。近年、アプタマーは、マイクロアレイフォーマットの固定捕捉エレメントとして研究されてきた。あるいは、近年、アプタマーは全細胞及び複合的な生物学的混合物に対峙するものとして選択されてきた。
【0005】
一般的に、アプタマーは、ときに指数関数的な増幅によるリガンドの系統的進化法、すなわち「SELEX」と呼ばれるインビトロでの選択方法によって同定される。SELEXは、典型的には、ランダムに選ばれたポリヌクレオチドの極めて大きなプールから開始して、その後通常、1の分子標的に対して1のアプタマーリガンドとなるよう絞り込まれる。複数ラウンド(典型的には10〜15)のSELEXが終了すると、核酸配列が、従来的なクローニングとシークエンシングによって同定される。アプタマーは、その親和性と特異性に関して、抗生物質と競合する重要なタンパク質に対するリガンドとして開発されてきたことが最も有名であり、アプタマーベースの初の治療薬も登場している。しかし、より最近では、アプタマーは、小さな有機分子や細胞毒素、ウイルス、及び重金属イオンなどの小さな標的に対しても結合するよう、開発されてもいる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、例えば複数の異なる機能的分子を同時に合成する方法に関し、特に、複数の標的分子に対する複数の異なる機能的核酸を同時に合成する方法に関する。さらに、本発明は、例えば機能的分子を合成する方法に関し、特に機能的活性を伴って、例えば受容体分子など、他の生体分子に結合する機能的核酸を合成する方法に関する。本明細書で使用される1を超える、すなわち複数の標的は、通常、異種の標的を含み得て、及び/または、例えば温度、pH、化学環境、及び/またはその他適切な条件などの異なる条件下の単
一種の標的を複数含み得る。
【0007】
一般的に、機能的生体分子を合成する方法は、例えば多様な、またはランダムに選ばれた生体分子のライブラリーを得るステップを含む。生体分子は、一般的には核酸、特に、一本鎖核酸、ペプチド、その他の生体高分子及び/またはこれらの組み合わせもしくは修飾を含み得る。生体分子のライブラリーは、例えばリボ核酸(RNA)、デオキシリボ核酸(DNA)、人工的に修飾された核酸及び/またはこれらの組み合わせなどの核酸配列を含み得る。機能的生体分子を合成する方法は、生体分子のライブラリーと、例えば分子標的、分子材料及び/または分子性物質などの1を超える標的とを接触させるステップをさらに含む。通常、その親和性では複数の標的と結合しないライブラリーのメンバーは、ライブラリーの残りのメンバーから洗浄されるか、そうでなくても分離される結果、1を超える標的に対する所定レベルの結合親和性が確保される。かかるプロセスが反復されて、ライブラリーのなかで最強のメンバーが分離され得る。後続の反復及び前記プロセスの最終生成物の単離及び/または精製用にライブラリーの結合メンバー数を増加させるために生体分子の増幅も利用され得る。SELEX法による実施形態は、一般的に所定レベルの結合親和性を有する機能的生体分子の合成を達成するために利用され得て、かかる生体分子は一般的にアプタマーまたはリガンドと呼ばれる。
【0008】
本発明の説明的な一態様において、機能的生体分子の合成は、例えば単一反応容量における機能的核酸リガンドの合成など、単一システム中、1を超えるすなわち複数の標的に対して同時に行われ得る。一般的に1を超える、すなわち複数の標的は、単一反応容量内に配置され、核酸ライブラリーなどの生体分子のライブラリーが前記反応容量へ適用され得る。所定の条件で複数の標的のいずれにも結合しないライブラリーのメンバーは、ここで洗浄などによって分離される。例えば、標的に対して所定の親和性を有するライブラリーの残りのメンバーを得るために、ライブラリーのメンバーを結合し、分離する1つまたは複数のラウンドが行われ得る。その結果、ライブラリーの複数の標的に結合する残りのメンバーは、例えば前記ライブリーのメンバー(単数・複数)が結合すべき特定の1つまたは複数の標的を同定するためにマーク付け及び/またはタグ付けされ得る。こうして、ライブラリーのメンバーは、単離されて、マーク付けまたはタグ付けによって特定の1つまたは複数の標的に適合され得る。大容量、多重化同定手段を用いたこのプロセスは、単一標的同定プロセスに比べて時間、費用、物理的空間の節約が可能であるため、望ましい。また、かかる方法は、複数の標的に結合するか、または結合する傾向にある生体分子を同定し、及び/または除去するために利用され得るため、望ましい。
【0009】
説明的な一態様において、複数の標的分子は、単一反応容量中、標的をアレイの基質に付着させることなどによって取り付けられる。一般的には、単一反応容量とは、離散的または準離散的液滴のような複数反応サブ容量を指し、またはこれを含むと認識されている。一般的に、標的は、各標的が基質上の特定スポットに位置することから同定可能となる状態で所定のアレイが基質上に秩序だった配置を有するように、各標的の複数の複製と1塊になって、または「スポット状に」に配置される。その結果、核酸のライブラリーは、アレイと接触し、またはアレイへ適用されて、ライブラリーの非結合メンバーがアレイから分離され、または洗浄され得る。結合と洗浄のステップは、反復され得て、さらに、ライブラリーの残りの結合メンバーの追加的複製を行うために増幅ステップの利用ができる。その結果、前記アレイは、例えば、ワトソン・クリック相互作用によって、広く核酸ライブラリーのメンバーに結合する複数のオリゴヌクレオチドなどの複数の識別子によってマーク付けされ、またはタグ付けされ得る。かかるマーク付けまたはタグ付けは、例えば、ピペット操作作業や、ミクロ接触ピンの使用、識別子の皮膜/膜への使用、インクジェット印刷などの印刷、及び/または識別子を含んだ溶液をタグ付けする方法など、その他類似の手作業でアレイに取り付けるタグ付け作業によって行われ得る。識別子は、スポットしたがってアレイの標的に対応するために利用され得るユニークまたはセミユニーク識
別子配列をさらに含むことができる。例えば各特定の標的スポットなど、アレイ上の各空間的位置を識別する、ユニーク識別子またはセミユニーク識別子が利用され得る。かかる識別子は、その結果、特定の標的スポットに結合する核酸メンバーに結び付けられ及び/または付着される。このようにして、例えば特定の標的スポットに結合した核酸は、結合された識別子配列によって同定され得る。いくつかの実施形態においては、さらに、かかる識別子はプライマーであってよく、また、結合された核酸の複製を追加的に合成するために、アレイ上で核酸増幅反応とともに利用されてもよい。また、ユニーク識別子またはセミユニーク識別子は、増幅されたライブラリーのメンバーに組み込まれてもよい。これは、メンバーの特定配列を位置的同定配列として維持することがライブラリーメンバーの配列に追加されつつ、所定のメンバーと単数または複数の標的とを結合するうえで、望ましいであろう。これは、複数のバインダーを単数標的または複数の標的に結合するメンバーに分解させるために、特に望ましいであろう。
【0010】
一般的に、例えば核酸などの生体分子の開始ライブラリーは、前述のSELEXの手続きを少なくとも1ラウンド行って得られる生成物とすることができる。例えば、SELEXの少なくとも1ラウンドが、例えば溶液中の複数の標的に対する生体分子のライブラリーについて行われ得る。溶液中の標的は、アレイ上に配置された標的と実質的に同一である。これは、選択の複数ラウンドが、マーク付け/タグ付けのために残りのメンバーをアレイへ適用前に、ライブラリーに対して行われ得るため、望ましいであろう。一般的に、複合標的アレイは、標的分子の溶液よりも作製または利用に際して高コスト及び/または困難を伴うため、アレイ上で最終的な結合及びマーク付け/タグ付け手続きのみを行うことが望ましいであろう。
【0011】
その他の実施形態において、識別子は、アレイ基質上で、前記識別子が、例えば標的スポットに結合された核酸に結合できるように、スポットに対して実質的に近位置に予め配置され得る。例えば、識別子は、基質に共有結合され得る。いくつかの実施形態において、かかる結合は、識別子がスポット上で結合された核酸に、より容易に結合できるよう、前記識別子が基質から切り離されるべく、制御可能に壊れやすい、または開裂可能とすることができる。
【0012】
さらなる実施形態において、識別子は、アレイ上の原位置で、例えば原位置の核酸合成光によって合成され得る。適切に配列された識別子は、その結果、新たに合成された識別子が標的スポットに結合された核酸に結合し得るように特定のスポットに近接して合成され得る。
【0013】
さらに他の実施形態において、識別子は、アレイ上のスポットの空間的配置と実質的に適合する空間的配置の皮膜などの別個の基質上に配置され、及び/または合成され得る。すなわち、前記識別子は、アレイ上の標的スポットに容易に重なるよう配置され得る。その結果、識別子基質は、スポットと識別子との位置が適合するアレイと接触し得る。識別子は、こうして標的スポットに結合された核酸に結合し得る。結合を容易にするために適切な任意の方法が利用され得るが、かかる方法は例えば、毛細現象、電気泳動法、圧力、重力沈降など、識別子をアレイへ移動させる作用及び/またはその他適切な方法またはそれらの組み合わせがある。また、個別の基質は、識別子に対して溶解性、侵食性、実質的に透過性であってよく、及び/または、上記以外でも、識別子のアレイへの移動を容易にするためにその他の適応がなされてもよい。
【0014】
さらにその他の実施形態において、アレイ基質は、例えばスポットに結合された核酸を個別に回収するために物理的に分割及び/または分離されてもよい。かかるスポットは、それらが個別に回収され、仕分けされるよう、例えば制御可能に基質から除去され得る。
【0015】
さらにその他の実施形態において、識別子は、アレイ上のスポットの空間的配置と実質的に適合する空間的配置において、皮膜などの個別の基質上に配置され及び/または合成され得る。すなわち、識別子は、アレイ上の標的スポットに容易に重なるように配置され得る。スポットに結合された核酸を個別に回収するために、アレイ基質が物理的に分割され、及び/または分離される一方で、別個の基質が個別に保持され得る。このようにして、位置付けに価値がある場合に、異なる核酸の位置付けが、アレイ基質が損傷を受ないときでも維持され得る。識別子は、アレイ上、選択的に特定の位置へと適用されることもでき、及び/または特定の順番またはグループにも適用され得る。
【0016】
いくつかの実施形態において、識別子は、結合された核酸を有するスポットにのみ適用され得る。前記結合された核酸を有するスポットは、例えばSYBR染料、エチジウムブロマイド及び/またはその他適切な染料などの核酸結合染料を使用することによって、核酸の存在を検出することで検出され得る。核酸ライブラリーのメンバーは、例えば蛍光部、放射性タグ及び/またはその他の適切な検出可能部など、検出可能な部分を含むこともできる。
【0017】
いくつかの実施形態において、識別子は、例えば核酸増幅反応成分、核酸ライゲーション反応成分、フォトリンカー、及び/または識別子を結合された核酸に付着させ、または結合することを容易にするその他の適切な材料などのその他材料とともに、結合された核酸に適用され得る。
【0018】
さらにその他の実施形態において、識別子は、例えば結合された核酸へライゲーションが可能である。例えば、核酸リガーゼは、識別子配列と結合された核酸とを共有結合するために利用され得る。さらに核酸フラグメントは、リガーゼ作用を容易にするために利用され得る。かかる核酸フラグメントには、例えば、リガーゼと実質的に互換性を有する二本鎖核酸複合体の形成を助けるうえで適切な相補フラグメントがある。その他の例としては、識別子と、例えば結合された核酸とを結合するために、光ライゲーションが使用され得る。光ライゲーションは、例えばマクロ多孔性材料など、特定の基質が使用されるときに、特に有用である。
【0019】
一般的に、識別子と、例えばスポットに結合された核酸との結合またはその他の相互作用を容易にする方法が適用され得る。例えば、核酸をスポットから分離するために温度を上昇させることができる。その後、温度を下げて例えば塩基対合が核酸と識別子との間で起き得るようにすることもできる。さらに、一般的には、識別子の拡散/移動によるクロスマークが最小限となるように、個別の標的スポットを物理的に分離/単離するように識別子を適用するのが望ましいであろう。例えば、識別子は、個別の液滴中、識別子を含む個別の流体間で流体の継続的接触がないように適用され得る。さらに、例えば、アレイの基質は、識別子が基質材料に吸収されるように吸収性及び/または多孔性とすることもできる。前記基質材料は、例えば他の標的スポットへの拡散など基質表面への拡散を最小限に抑えつつ、識別子が基質に適用され吸収されるように、鉛直拡散を可能としつつも側方拡散を阻止するようにしてもよい。
【0020】
さらなる実施形態において、機能的生体分子を合成する方法は、ペプチド配列のライブラリーを得るステップと、前記ライブラリーを複数の標的に接触させるステップとを含む。いくつかの説明的な実施形態において、ペプチド配列は、核酸配列にタグ付けされ、結び付けられ、マーク付けされ、及び/またはそれ以外にも結合され得る。前記核酸配列は、例えば、ペプチドの配列の代表的なものであってよい。例えば、核酸は、ペプチド配列を実質的にコードし得る。また、例えば、核酸は、ユニークまたはセミユニーク識別子配列であってよい。その結果、上記のように、核酸配列は、標的と結合されたペプチドがどの標的と結合すべきかタグ付けされマーク付けされるように、その他の識別子と結合する
ために利用され得る。
【0021】
説明的な実施形態において、そのタンパク膜に、件のペプチド配列を含むバクテリオファージ(ファージ)が合成され得る。かかるファージは、ファージの核酸内のペプチド配列の代表たり得る核酸配列をさらに含み得る。その結果、前記ファージは、上記のように複数の標的と接触し得る。これは通常、ファージディスプレイと呼ばれる。上記のように結合ファージが識別子でタグ付けされ、またはマーク付けされる一方、非結合ファージは洗浄により除去され、及び/または分離され得る。通常、ファージ核酸は、ファージのタンパク膜内に含まれるため、核酸は通常、識別子と結合して曝され得る。例えば、ファージは、核酸が曝されるようにタンパク膜が変性し、及び/または分解するよう、加熱され得る。また、識別子は、電気穿孔法、電気泳動法、及び/またはその他適切な方法によってファージに導入されることもできる。
【0022】
ペプチド選択のその他の方法は、mRNAディスプレイ、リボソームディスプレイ、及び/またはその他適切なペプチドディスプレイ方法またはこれらの組み合わせを含むことができるが、これらに限定されない。
【0023】
本発明のその他の態様において、多重化結合プロセスの結果生成した配列を取り扱い、仕分けする方法が提供される。いくつかの実施形態において、前記配列は、識別子配列によって仕分けされ、配列がどの1つまたは複数の標的に結合されるべきかを決定する。かかる配列は、さらに、比較され、並べられ、及び/またはそれ以外にも処理されて、特徴、特性及び/またはその他有用な性質、互いの関係性、及び/または標的の特性が同定されるようにすることができる。
【0024】
本発明のさらなる態様において、生体分子のライブラリーの多様性を観測し、及び/または制御する方法が利用され得る。例えば、選択ラウンド数が少なすぎると、生体分子のプールには、弱い結合メンバーが多くなりすぎることになり、一方、選択ラウンド数が多すぎると、現存する標的全てに対応するメンバーではなく、ごく僅かの結合メンバーにしか対応できない結合メンバーが少数存在することとなる。一実施形態において、Cot解析が、選択の複数ラウンドを通して生体分子のライブラリーの多様性を測定し、及び/または観測するために採用され得る。Cot、すなわち濃度(C)×時間(t)による解析法は、生体分子のライブラリーのメンバーなど、その他の核酸とともに溶液中にある特定のオリゴヌクレオチドのアニール時間を測定する。一般的に、アニール時間は、ライブラリーの多様性が低いほど速くなる。
【0025】
本発明は、上記の及びその他の有利な点とともに、図面に示した以下の発明の実施形態の詳細な説明によって、最もよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、複数の標的アレイの実施形態を示す。
【図2】図2は、生体分子のライブラリーの標的アレイへの適用を示す。
【図2a】図2aは、生体分子のライブラリーのメンバーの標的スポットへの結合を示す。
【図3】図3は、生体分子のライブラリーメンバーの実施形態を示す。
【図3a】図3aは、生体分子のライブラリーメンバーの実施形態を示す。
【図3b】図3bは、識別子の実施形態を示す。
【図4】図4は、識別子を用いた標的に結合するライブラリーメンバーのタグ付けを示す。
【図4a】図4aは、タグ付けされたライブラリーメンバーの生成物を示す。
【図5】図5は、基質上のその近傍に識別子がある標的スポットを示す。
【図5a】図5aは、識別子シートの標的アレイへの適用を示す。
【図6】図6は、識別子の実施形態と識別子のライブラリーメンバーへのライゲーションを示す。
【図6a】図6aは、識別子の実施形態と識別子のライブラリーメンバーへのライゲーションを示す。
【図6b】図6bは、識別子の実施形態と識別子のライブラリーメンバーへのライゲーションを示す。
【図6c】図6cは、識別子の実施形態と識別子のライブラリーメンバーへのライゲーションを示す。
【図7】図7は、標的用のファージディスプレイを示す。
【図7a】図7aは、標的用のファージディスプレイを示す。
【図7b】図7bは、mRNAディスプレイ融合生成物を示す。
【図7c】図7cは、リボソームディスプレイ融合生成物を示す。
【図8】図8は、組織切片標的の一例を示す。
【0027】
以下に記載する詳細な説明は、本発明の態様にしたがって提供される、現在例示される方法、装置、及び構成の説明として意図されるものであり、本発明が実施され、または利用され得る形態のみを表すことが意図されるものではない。しかしながら、同一、または均等の機能及び構成要素が、本発明の精神及び範囲内に包含されると意図される限りは、異なる実施形態によっても達成されることができる旨、理解されるべきである。
【0028】
特に、異なる定義がされない限り、本明細書で使用される全ての技術用語ならびに科学用語は、本発明の属する分野の通常の知識を有する者に共通に理解される用語と同義である。本明細書に記載された内容と類似のまたは均等の任意の方法、装置及び材料が本発明の実施または試行に際して使用され得るが、ここでは例示の方法、装置及び材料を記載する。
【0029】
本発明は、異なる機能的生体分子を同時に合成する方法に関し、特に、複数の標的分子に対する複数の機能的核酸を同時に合成する方法に関する。さらに、本発明は、異なる機能的生体分子を同時に合成する方法に関し、特に機能的活性を伴って、例えば受容体分子など、他の生体分子に結合する機能的核酸を合成する方法に関する。
【0030】
一般的に、機能的生体分子を合成する方法は、生体分子の多様な、または、ランダムに選ばれたライブラリーなどのライブラリーを得るステップを含む。生体分子は、一般的に核酸、特に一本鎖核酸、ペプチド、その他の生体高分子及び/またはそれらの組み合わせもしくはそれらの修飾を含み得る。生体分子のライブラリーは、リボ核酸(RNA)、デオキシリボ核酸(DNA)、人工的に修飾された核酸及び/またはこれらの組み合わせなどの核酸配列を含み得る。一般的に、修飾核酸塩基が利用され得て、かかる修飾核酸塩基は、2’−デオキシ−P−ヌクレオシド−5’−三リン酸、2’−デオキシイノシン−5’−三リン酸、2’−デオキシプソイドウリジン−5’−三リン酸、2’−デオキシウリジン−5’−三リン酸、2’−デオキシゼブラリン−5’−三リン酸、2−アミノ−2’−デオキシアデノシン−5’−三リン酸、2−アミノ−6−クロロプリン−2’−デオキシリボシド−5’−三リン酸、2−アミノプリン−2’−デオキシリボース−5’−三リン酸、2−チオ−2’−デオキシシチジン−5’−三リン酸、2−チオチミジン−5’−三リン酸、2’−デオキシ−L−アデノシン−5’−三リン酸、2’−デオキシ−L−シチジン−5’−三リン酸、2’−デオキシ−L−グアノシン−5’−三リン酸、2’−デオキシ−L−チミジン−5’−三リン酸、4−チオチミジン−5’−三リン酸、5−アミノアリル−2’−デオキシシチジン−5’−三リン酸、5−アミノアリル−2’−デオキシウリジン−5’−三リン酸、5−ブロモ−2’−デオキシシチジン−5’−三リン酸、5−ブロモ−2’−デオキシウリジン−5’−三リン酸、5−フルオロ−2’−デオキシ
ウリジン−5’−三リン酸及び/またはその他の適切な修飾された核酸塩基を含み得るが、これらに限定されない。一般的には、上記掲載したヌクレオシドトリホスフェート(NTPs)は通常、例えば、追加的に塩基の一リン酸塩(NMPs)または二リン酸塩(NDPs)などの修飾塩基の任意の適切なリン酸塩を指す旨、理解され得る。機能的生体分子を合成する方法は、生体分子のライブラリーと、例えば分子標的、分子材料及び/または分子性物質などの少なくとも1つの標的とを接触させるステップをさらに含む。通常、その親和性では標的と結合しないライブラリーのメンバーは、ライブラリーの残りのメンバーから洗浄により除去されるか、そうでなくても分離される結果、標的に対する所定レベルの結合親和性が確保される。かかるプロセスが反復されて、ライブラリーのなかで最強の結合メンバーが分離される。後続の反復及び前記プロセスの最終生成物の単離及び/または精製のために、生体分子の増幅もライブラリーの結合メンバー数を増加させるために利用され得る。SELEX法による実施形態が、所定レベルの結合親和性を有する機能的生体分子を合成する目的を達成するために一般的に利用される。基本的なSELEX法の手順は、「核酸リガンドを同定する方法」という表題の米国特許番号第5,270,163号に記載されており、その全体の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0031】
本発明の説明的な一態様において、機能的生体分子の合成は、例えば単一反応容量における機能的核酸リガンドの合成など、単一系において複数の標的に対して同時に行われ得る。一般に、複数の標的は、単一反応容量中に配置され、核酸ライブラリーなどの生体分子のライブラリーが前記反応容量へ適用され得る。標的は、例えば、タンパク質、細胞、小分子、生体分子、及び/またはそれらの組み合わせもしくは部分であってよい。所定の条件で、複数の標的のいずれにも結合しないライブラリーのメンバーは、ここで洗浄などによって分離される。その後、ライブラリーの複数の標的に結合する残りのメンバーは、例えば前記ライブリーのメンバーが結合すべき特定の1つまたは複数の標的を同定するためにマーク付け及び/またはタグ付けされる。ライブラリーの結合メンバーはその後単離され、マーク付けまたはタグ付けによって、特定の1つまたは複数の標的に適合され得る。大容量、多重化同定手段を用いたこの手段は、単一標的同定プロセスに比べて時間、費用、物理的空間の節約が可能であるため、望ましいであろう。また、かかる方法は、複数の標的に結合するか、または結合する傾向にある生体分子を同定し、及び/または除去するために利用され得るため、望ましいであろう。
【0032】
本発明の説明的な一態様において、複数の標的分子は、単一反応容量中、標的をアレイの基質に添付することなどによって取り付けられる。図1に例示するように、標的は、所定のアレイ100の基質102上で標的が秩序だって配置され、各標的が前記基質102上の特定のスポット110に位置していることから同定可能となるよう、各標的の複製と1塊となって、または「スポット」110になって、配置され得る。各スポット110は、ユニーク標的であってよく、または、所定のアレイ100の上で少なくとも1つの標的の複数スポット110であってもよい。一般的に、高含量タンパク質または抗生物質アレイなどの高含量標的アレイが利用され得る。例えば、核酸202のライブラリー200は、図2に示すようにアレイ100へ適用される(A)。こうしてライブラリー200の特定のメンバー204が、例えば図2aに示すように標的スポット110へ結合する。ライブラリー200の非結合メンバー206は、アレイ100から分離され、または洗浄され得る。結合及び洗浄ステップは、反復され得て、前記ステップは、ライブラリー200の残りの結合メンバー204の追加的な複製を行うために増幅ステップを利用し得る。こうして、前記アレイ100は、例えば、ワトソン・クリック相互作用によって、広く核酸などのライブラリーのメンバーに結合する複数のオリゴヌクレオチドなどの複数の識別子によってマーク付けされ、またはタグ付けされることができる。一実施形態において、ライブラリー200の各メンバー202は、潜在的な結合配列202a及び、図3に示すように識別子オリゴヌクレオチドを結合し得る少なくとも1つの保存領域202bを含み得る。また、図3aで示すように、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの増幅反応のプライ
ミングを容易にするために、さらなる保存領域202cも含み得る。一般的に、前記保存領域202b、202cは、例えば、増幅のためのプライミングを容易にするために、潜在的な結合配列202aの側面に位置し得る。識別子302は、図3bに示すように、ユニーク配列またはセミユニーク配列302aを含み得て、これは、スポット110、したがって、基質102上のスポット110の位置によってアレイ100の標的に対応するために利用され得る。識別子302は、さらに、ワトソン・クリック塩基対合によってライブラリーメンバー202の保存領域202bに結合し得る保存領域302bを含むことができる。識別子302は、さらに、増幅のためのプライミングを容易にし得るための保存領域302cを含むこともできる。前記識別子302は、例えばインクジェット印刷などの印刷によって、ミクロ接触ピンの使用によって、及び/またはその他、例えばスポット110へピペット操作するなど、識別子302を含む溶液をアレイ100の基質102に適用することなどで適用され得る。その結果、標的スポット110に結合したライブラリーメンバー202は、図4に示すように領域202b、302bにて、塩基対合(B)を介して識別子302によってタグ付けされる。したがって、特定の標的スポット110に結合した核酸202は、識別子302の配列302aによって同定されることができる。説明的な一形態において、PCRのような核酸の増幅が、図4aに示すように識別子配列302a(またはその相補配列)を生成物203に組み入れつつ、スポット110に結合したメンバー202の複製を合成するために利用され得る。これは、メンバー202の特定配列を維持しながら、所定のメンバー202と、1つまたは複数の標的110とを結びつけるうえで望ましいであろう。また、これは、複数のバインダーを単数標的または複数の標的に結合するライブラリーのメンバーに分解させるうえで特に望ましいであろう。後続の増幅において、配列202aと302aの両方を含む生成物203のみが増幅され得るように、配列202c、302cのプライマーを利用することができる。上記のような核酸配列への参照は、一般的に特定の配列か、対応する相補的核酸配列を指すと理解され得る。一般的には、誤ったタグ付けの可能性が減るように、単一液滴及び/または、それ以外でも、アレイ100上の各スポット110に関して識別子302を含む溶液の個別容積が望ましいであろう。
【0033】
一態様において、識別子は、全標的上に印刷され得る。その他の態様において、かかる識別子は、生体分子に結合する標的上にのみ印刷されることもできる。
【0034】
その他の実施形態において、図8に示す組織スライド100”の基質102”上の切片110”などの組織切片が、標的セットとして利用され得る。かかる切片110”は、例えば、組織の切片、細胞集団、及び/または通常組織的に重要な特性を有する任意のその他適切な生体サンプルとすることができる。アレイ100と同様に、切片110”上の特定位置に結合し得る核酸などの生体分子のライブラリーが適用され得るが、かかる位置上には、親和結合核酸を合成するために、例えば、別個の標的が載せられる。こうして識別子が、上記のように、または以下の実施形態のようにスライド100”上に配置されて、識別子が切片110”の特性に対応するために利用され得るようにする。
【0035】
その他の実施形態において、識別子は、標的スポットに結合される核酸に結合するように、図5における基質102上でスポット110の近位置に配置される識別子302で示すようなスポットの実質的な近位置のアレイ基質上に予め配置されることができる。識別子は、例えば基質に共有結合することができる。いくつかの実施形態においては、かかる結合は、識別子が、例えばスポット上の結合された核酸により容易に結合できるように基質から解放されるよう、制御可能に壊れやすいまたは開裂可能とすることができる。
【0036】
さらにその他の実施形態において、識別子は、原位置の核酸合成光などによってアレイ上で原位置にて合成される。適切に配列された識別子は、新たに合成された識別子が、スポットに結合された核酸に結合するよう、特定のスポットの近位置で合成され得る。
【0037】
さらにその他の実施形態において、識別子は、空間的配置においてアレイ上のスポットと適合する皮膜のように、別個の基質上に配置され、及び/または合成され得る。図5aは、アレイ100の標的スポット110に実質的に対応し得る識別子スポット110’を含み得る皮膜102’を有する識別子シート100’の一例を示す。識別子シート100’は、標的スポット110と識別子スポット110’との位置の適合を伴ってアレイ100と接触し得る(C)。こうして、識別子は、標的スポットに結合された核酸に結合することができる。かかる結合を容易にする任意の適切な方法が利用され得て、かかる方法には、例えば、毛細現象、電気泳動法、圧力、重力沈降、及び/またはその他適切な方法またはそれらの組み合わせなど、識別子をアレイへ移動させる作用がある。
【0038】
いくつかの実施形態において、皮膜は、溶解性、及び/または実質的に侵食性であってよい。例えば、前記皮膜は膜形成及び/または溶解性材料を含み得る。膜が所望の物質を含有して形成されるように、識別子及び/または核酸増幅成分やライゲーション反応成分などのその他材料を含めることができる。こうして皮膜が基質に適用されて、水やエタノールなどの好適な溶媒が、膜を溶解し、及び/または侵食して、識別子などの含有物質が基質へと解放されるために利用され得る。膜として好適な材料は、カラギーナン、コンドロイチン硫酸、グルコサミン、プルランなどの多糖類を含む親水性材料、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンオキシド(PEO)、エチレンオキシド−プロピレンオキシド共重合体、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリカプロラクトン、ポリオルトエステル、ポリホスファゼン、ポリ酢酸ビニル、ポリイソブチレンなどの水溶性セルロース誘導体などを含むことができる。
【0039】
皮膜は、所望の侵食速度及び/または溶解速度を有するように、さらに調整され得る。かかる速度は疎水性の、及び/またはより溶解しにくい添加剤を含めることで変更され得る。好適な材料として、第4級アンモニウムアクリレート/メタクリレート共重合体の族(Eudragit RS)、ブチルセルロース、ヒドロキシブチルセルロース及びエチルヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース及びより低溶解性の誘導体、高分子量PEGまたはPEOもしくはこれらの組み合わせを含めることができるが、これらに限定されない。
【0040】
さらにその他の実施形態において、アレイ基質は、例えばスポットに結合された核酸を個別に回収するために物理的に分割及び/または分離されていてもよい。かかるスポットは、それらが個別に回収され仕分けされるよう、例えば制御可能に基質から除去可能であってよい。アレイそのものは、穿孔した、及び/または、そうでなければ、容易に及び/または利便性をもって分離可能とすることもできる。
【0041】
さらに他の実施形態において、識別子は、結合された核酸にライゲーションすることができる。例えば、識別子配列を結合された核酸へ共有結合するために、核酸リガーゼが利用され得る。一般的に、核酸リガーゼは、核酸のリン酸骨格の両末端でリン酸ジエステル結合の形成を触媒することによって2つの核酸を共有結合する酵素である。適切な核酸リガーゼの例として、E.coli DNAリガーゼ、T4 DNAリガーゼ、T4 RNAリガーゼ、鎖切断DNA修復酵素、及び/またはその他の適切なリガーゼ、修飾酵素、ならびに/若しくはそれらの組み合わせを含むことができるが、これらに限定されない。一般的に、利用されるリガーゼは、平滑末端ライゲーション、互換性のあるオーバーハング(「粘着」)末端ライゲーション、一本鎖DNAライゲーション、一本鎖RNAライゲーション及び/またはその他のライゲーションの形態など、行われるライゲーションの形態に基づいて選択され得る。さらに、一般的に、2つの核酸をライゲーションするステップは、室温で、または室温に近い温度で行われ得る1つのステップからなるプロセスであ
る。さらに、リガーゼと互換性のある実質的に二本鎖核酸の形成を補助し得る適切な相補フラグメントなどの核酸フラグメントが、リガーゼ作用を容易にするために利用され得る。一般的に二本鎖ライゲーションが採用され得て、かかるライゲーションを容易にするために、実質的に互換性のあるオーバーハングフラグメントを利用し得る。また、核酸末端またはリン酸化された末端を有し、一方ではライゲーション用の非リン酸化末端も有する平滑末端ライゲーションも利用され得る。一本鎖ライゲーションも採用され得る。
【0042】
光ライゲーションも、採用され得る。例えば、かかる光ライゲーションは、隣接する核酸を紫外線または可視光線などの電磁エネルギーの使用によって共有結合することを含み得る。共有結合の形成を容易にするために、結合剤が使用されることもできる。
【0043】
いくつかの実施形態において、染料を識別子に含めることができる。一態様において、識別子に染料を塗布してもよい。その他の態様では、識別子の溶液を染料と混合してもよい。一実施形態によれば、染料は感光性かつ蛍光性とすることができる。別の実施態様によれば、前記染料は感光性かつリン光性とすることができる。
【0044】
使用される基質は、その表面が基質と標的との接着を促進する限り、ガラス、セラミック、または高分子であってよい。高分子は、合成高分子ならびに精製生体高分子を含むことができる。基質は無孔性または多孔性の任意の膜とすることもできる。
【0045】
基質は、一般的には平面で、例えば、長方形、正方形、円形、楕円形、三角形、その他多角形、不規則な及び/またはその他適切な形状などの任意の適切な形状とすることができる。前記基質は、例えば、円筒形、球形、不規則な及び/またはその他適切な形状などのその他の形状とすることもできる。
【0046】
適切なセラミックは、例えば、ヒドロキシアパタイト、アルミナ、グラファイト及び熱分解カーボンを含むことができる。
【0047】
適切な合成材料は、ポリアミド(例えば、ナイロン)、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアクリル酸塩、ビニルポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン及び塩化ポリビニル)、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリジメチルシロキサン、酢酸セルロース、ポリメチルメタクリレート、エチレン酢酸ビニル、ポリスルホン、ニトロセルロース及び類似の共重合体などの高分子を含むことができる。これらの合成高分子は、メッシュ状に織り込まれ、または、編み込まれて、マトリックスか、これに類似した構造を形成し得る。あるいは、前記合成ポリマー材料は、適切な形状へと成形または成型される。
【0048】
生体高分子は、自然発生、もしくは発酵など、または遺伝子組み換えによってインビトロで作製されたものを含み得る。実質的に任意のポリペプチド配列を操作し、その後増幅して細菌性細胞か哺乳類細胞のいずれかにて発現させるために、組み換えDNA技術が使用され得る。精製生体高分子は、織り込み、編み込み、成型、成形、押し出し成形、細胞整列及び磁気整列などの技術によって適切に基質へと形成されることができる。好適な生体高分子は、限定されないが、コラーゲン、エラスチン、絹、ケラチン、ゼラチン、ポリアミノ酸、多糖類(例えばセルロースや、デンプン)及びこれらの共重合体を含む。
【0049】
任意の好適な基質は、標的によって接着、付着、または吸着を起こしやすいものであってよい。かかる影響の受けやすさは、固有のものでも修正されたものでもよい。一実施例において、基質表面は、タンパク質への接着、付着、または吸着を起こしやすいものでよい。その他の例において、基質表面は、タンパク質への接着、付着、または吸着を起こしやすいが、核酸に対してはかかる性質を有しないものでよい。
【0050】
一つの説明的実施形態において、ガラス基質は、標的材料を結合するために、タンパク質などの標的、すなわちプラスに帯電する材料など帯電可能な材料との接着を促進する、材料を覆う層または被覆コートを有することができる。帯電材料の例は、例えばニトロセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース系材料;エポキシ、PVDF(ポリフッ化ビニリデン);部分的にまたは完全加水分解されたポリ(ビニルアルコール);ポリ(ビニルピロリドン);ポリ(エチルオキサゾリン);ポリ(エチレンオキシド)−コポリ(プロピレンオキシド)ブロック共重合体;ポリアミン;ポリアクリルアミド;ヒドロキシプロピルメタクリル酸塩;ポリスクロース;ヒアルロン酸;アルギン酸塩;キトサン;デキストラン;ゼラチン及びこれらの混合物ならびに共重合体を含む。
【0051】
その他の説明的な実施形態において、基質が帯電材料によって接着を起こしやすくない場合、または、誤って帯電された材料に対してのみ接着を起こしやすい場合、基質のいくつかの領域は接着剤、結合剤、または、基質の表面にこれに類似する接着、吸着、または被覆がなされてもよい。接着剤の例として、帯電材料を結合する任意の好適な接着剤を含み得る。
【0052】
標的は、基質上に別々に、または塊で存在することができる。別々の標的間の距離は、近くても、遠くに離れていてもよく、標的ごとに異なっていてもよい。前記の塊は単一標的の複数スポットに使用され得る。
【0053】
一実施形態において、基質は多孔性であってもよい。多孔性基質は、例えば異なる標的が非常に近位置にある場合に望ましい。標的同士が近い場合、異なる標的間の距離が不十分であり、生体分子がどちらの標的に結合し得るか見分けることができないおそれがある。密に詰まった標的は、生体分子の合成効率を高め得る。多孔性基質は、かかる効率と距離間隔との均衡をとるうえで好適な可能性がある。多孔性基質に対しては、孔が十分大きく孔の中で結合プロセスがなされ得るなら、密に詰まった標的であっても、これらを隔てる孔の壁があれば十分であろう。
【0054】
また、多孔性基質に対しては、標的材料が孔に進入し、または一部進入して固定するように、孔はその平均直径を標的材料の平均大きさより大きくすることができる。ヒドロゲルも、標的を孔に結合し、または固定するうえで有用である。前記ヒドロゲルは、また、流体にて孔を満たすことができ、流体が孔を通過して流れる状態を維持しつつ、同時に流体フローのための平滑な表面を提供し得る。
【0055】
複数の標的は、例えば、円形スポットや楕円形スポット、正方形または長方形スポット、縞模様、同心円及び/またはその他の任意の適切な配置にて、任意の適切な方法で被検体上に配置され得る。
【0056】
一の説明的な実施形態によれば、基質は終始大気温度とすることができる。
【0057】
その他の説明的な実施形態によれば、基質は、一般的に基質表面上及び隣接する流体に対して少なくとも1つの所望の温度を作り出す、温度に影響を与えるシステムを含み得る。前記所望の温度は、生体分子を合成するプロセスを容易化できる。
【0058】
さらなる説明的な実施形態によれば、基質は、基質表面上及び隣接する流体に対して所望の温度範囲を作り出す、温度に影響を与えるシステムを含み得る。前記システムは、例えば、重要範囲のTmsすなわち融解温度を有する標的セットを採用する際に特に有用で
ある。一実施形態において、前記のシステムは、基質に熱を伝達する、温度に影響を与える複数の装置を含むことができる。前記複数の装置は、一般的に、かかる装置が基質表面上の所定の場所で各々所望の温度を作り出せるように配置され得る。標的セットは、標的の場所における温度が実質的に標的の融解温度となるように、基質表面上に分散され得る。
【0059】
温度に影響を与える装置は、基質上に所望の温度を実質的に作り出す任意の適切な装置でよい。かかる装置は、ペルチェ接合装置、半導体加熱装置、抵抗加熱装置、誘導加熱装置、加熱/冷却ポンプなどの熱電装置、電磁放射線源、及び/またはその他の適切な装置を含み得るが、これらに限定されない。温度は、例えば、液体フロー、気体フロー、及び/またはその他の適切な流体フローなどを含むがこれらに限定されない流体フローなどのその他のシステムによっても影響を受け得る。
【0060】
説明的な一実施形態において、基質表面上の場所で所望の温度を作り出すために、複数のペルチェ接合装置が利用され得る。かかるペルチェ接合装置は、電流を用いて加熱、冷却ともに可能なため、特に有用である。このため、ペルチェ接合装置は、システムの大気温度より高温も低温も作り出せる。かかる装置は、必要に応じてシステムから加熱し、冷却することにより、定常状態で所定の温度条件を維持するうえで有用でもある。
【0061】
一般的に、温度に影響を与える装置の配置は、基質表面上とチャンバー内の隣接する流体の温度プロファイルを決定し得る。したがって、かかる温度に影響を与える装置は、所定の温度が作り出され、かつ、これが基質上の既知の位置で維持される、適切な位置に配置され得る。
【0062】
一般的に、基質は、少なくとも1つの温度に影響を与える装置の使用により、基質の表面上に温度勾配を実質的に生じせしめるように、所定の熱伝導性を有し得る。一般的に、基質表面上の温度は、少なくとも1つの温度に影響を与える装置の位置からの距離の作用として変化し得る。一般的に、比較的低い熱伝導性を有する基質材料は、温度に影響を与える装置の周囲に高度に局所的な温度変化を生じさせ得る。一般的に、比較的高い熱伝導性を有する基質材料は、温度に影響を与える装置からの所定の距離にわたり、より穏やかな温度変化を作り出し得る。定常状態では、基質の熱伝導性の効果はシステムの温度プロファイルに寄与し得ない旨、理解されるであろう。
【0063】
いくつかの実施形態においては、少なくとも1つの温度に影響を与える装置は、基質表面上に特定の温度勾配プロファイルを作り出すために利用され得る。一般的に、温度勾配は、システムの大気温度と異なる温度を作り出す、少なくとも1つの温度に影響を与える装置を利用することによって、生じ得る。システムの大気温度に依存することなく温度勾配を生じさせるためには、少なくとも2つの異なる温度を生じさせる複数の温度に影響を与える装置が利用され得る。
【0064】
複数の温度に影響を与える装置の位置及び温度は、標準熱伝導方程式を用いて、結果生じた基質表面上の温度勾配プロファイルを計算するために利用され得る。その際、アルゴリズムが利用され得て、複数の温度に影響を与える装置が基質表面上に所望の温度勾配プロファイルを作り出すための最適位置及び/または温度が計算される。かかるアルゴリズムは、例えばコンピュータやその他の計算装置などのコンピュータによるアシストシステムを用いて応用され得る。これは、温度勾配プロファイルを、既知の及び/または計算された融解温度を有する標的の既知の配置を有する特定の基質に合わせて調整することによって行われる。同様に、温度勾配プロファイルに基づいて既知の及び/または計算された融解温度を有する標的セットが基質上に配置されることができる。これは、温度勾配プロファイルを基質上の標的の既存の場所に合わせて調整する場合と比較して、基質上の所定
の位置に標的を配置することがより容易に達成され得るため、望ましいであろう。一般的に標的は、温度プロファイル内の温度アドレスの基質上に配置され得る。前記温度アドレスは、例えば、分子のハイブリダイゼーションシステム動作中は、実質的に標的の融解温度及び/またはその他適切な温度たり得る。
【0065】
その他の態様において、分子のハイブリダイゼーションシステムは、温度プロファイルを作り出すための調整可能なシステムを含む。前記の調整可能なシステムは、一般的に、基質の特定の場所で温度にそれぞれ影響する、複数の温度に影響を与える装置を含む。
【0066】
温度に影響を与えるシステムの詳細は、例えば2008年10月10日に出願された「分子集合と画像化のための方法ならびに装置」と題する米国特許出願番号第12/249,525号に見出すことができ、その全体の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0067】
図6は、識別子配列302及び相補識別子配列402の一例を示す。前記相補配列402は、塩基対合が可能なように識別子領域302aに対して実質的に相補的な相補識別子領域402aを含むことができる。相補配列402は、識別子302のプライマー領域302cに対しても相補的であるプライマー領域402cをさらに含み得る。さらに、相補配列402は、別の核酸の末端に対するライゲーションと互換性を有する互換性末端402bを含むことができる。図6aに示すように、核酸ライブラリーメンバー202は、スポット110に結合され得る。その結果、識別子302及び相補配列402は、識別子302が領域202b、302bでメンバー202と結合するようにメンバー202に適用され得る。相補配列402は、識別子302に対して領域302a/402a、302c/402cにて結合し得る。その後、互換性末端402bは、適切なリガーゼ及び/またはその他の適切な方法でメンバー202の末端Dへライゲーションされ得る。図6bに示すように、生成物203’が、プライマー領域202c、結合配列202a、領域202b、相補識別子領域402a、及び相補プライマー領域402cを含んで合成され得る。その後、生成物203’は、例えば図4aにて上記議論した生成物203とともに増幅され得る。生成物203’は、メンバー202と相補配列402の一本鎖ライゲーションによっても合成され得るが、その場合、一般的に、末端同士のライゲーションにつき、前記メンバー202または相補配列402の一方がリン酸化された末端を有し、他方が非リン酸化された末端を有し得る。
【0068】
その他の実施例において、図6cに示すように、核酸ライブラリーメンバー202の相補領域202dに塩基対合し得る、さらなる相補フラグメント502が含まれていてもよい。核酸リガーゼには、一般的に二本鎖核酸に結合するものがあるため、かかる態様は望ましいであろう。相補フラグメント502を追加すると、例えば、領域302cから相補フラグメント502の末端にわたって例示されているように、通常、実質的に二本鎖核酸が合成され得る。ポイントD及びEにおいては、さらに二本鎖の「切断」があり得る。一般的にフラグメントの大きさ形成は、リガーゼ作用に鑑み、二本鎖核酸の好適な長さ範囲が生じるように調整され得る。一般的に、相補領域202dは、例えば利便性、費用及び/または使用容易性のため、同じ相補フラグメント502が利用され得るよう、ライブラリー200の全メンバー202と同じ大きさとすることができる。
【0069】
一般的には、識別子と、スポットに結合された核酸との結合またはその他の相互作用を容易にする方法が適用され得る。例えば、核酸をスポットから分離させるために温度を上昇させ得る。前記温度は、例えば核酸と識別子の間で塩基対合が起きるように、その後低下させることができる。温度変化は、例えば、核酸が標的に対して結合しない、及び/または低い親和性でしか標的に結合しないようにするなど、標的を変性させるものであってもよい。これは、核酸が識別子と結合するうえで助けとなり得るため、望ましいであろう。
【0070】
本発明のさらなる態様において、生体分子のライブラリーの多様性を観測し、及び/または制御する方法が利用され得る。例えば、選択のラウンド数が少なすぎると、生体分子のプールに、弱い結合メンバーが多く集まりすぎ、一方、選択のラウンド数が多すぎると、結合メンバーは、存在する全標的に応答せずに、僅かな標的にしか応答しない少数のメンバーしか存在し得ない。一実施形態において、Cot解析が、選択の複数ラウンドを通して生体分子のライブラリーの多様性を測定し、及び/または観測するために採用され得る。Cot、すなわち濃度(C)×時間(t)による解析法は、生体分子のライブラリーのメンバーなど、その他の核酸とともに溶液中に存在する特定のオリゴヌクレオチドのアニール時間を測定する。一般的に、アニール時間は、ライブラリーの多様性が低いほど速くなる。
【0071】
一実施態様において、多重化SELEXのプロセス中の任意の時点でアプタマーライブラリーの配列多様性を測定するためのCot−標準曲線が利用され得る。例えば、初期SELEXライブラリーと同一の、〜20塩基の5’−、3’−定常領域を有するDNAオリゴヌクレオチドのグループが利用され得る。オリゴは、標準的な方法でdsDNAに変換される。要するに、プライマーをアニールしてオリゴとした後は、dsDNAまたはその混合物作製用にssDNAを満たすため、エキソ−マイナスクレノウTaqポリメラーゼ(ウィスコンシン州、マジソン、エピセンター)がdNTPsと併用され得る。標準的定量PCR熱循環装置を用いて、各DNA混合物を融解し、制御アニールする温度プロファイルがプログラミングされ得る。再度アニールされたdsDNA量を報告するために、二本鎖DNA(dsDNA)に対して特異的な標準SYBR Green Iが利用され得る。一つの極端な例として、単一配列のアニール時間が測定されるであろう。別の極端な例として、例えば約1nmolの配列多様性を含む初期SELEXプールのアニール時間が測定され得る。SELEXライブラリーに極めて特異的なCot標準曲線を決定するために、中間多様性のアニール時間も測定され得る。かかる標準曲線を用いて、SELEX実施中の任意の時点において、アプタマーの進化するライブラリーの配列多様性が前記曲線との比較によって決定され得る。
【0072】
さらなる実施形態において、機能的生体分子を合成する方法は、ペプチド配列のライブラリーを得るステップと、前記ライブラリーを複数の標的に接触させるステップとを含む。いくつかの実施形態において、前記ペプチド配列は、核酸配列にタグ付けされ、結び付けられ、マーク付けされ、及び/または、それ以外でも結合され得る。核酸配列は、例えば、ペプチドの配列を代表するものでよい。例えば、核酸は、ペプチド配列を実質的にコードし得る。また、例えば、核酸は、ユニーク識別子配列またはセミユニーク識別子配列たり得る。こうして、上記のように、核酸配列は、標的と結合されたペプチドが、どの標的と結合すべきかタグ付けされ、マーク付けされるよう、その他の識別子と結合するために利用され得る。
【0073】
説明的な一実施形態において、そのタンパク膜に関連するペプチド配列を含むバクテリオファージ(ファージ)が合成され得る。ファージは、ファージの核酸内のペプチド配列の代表となり得る核酸配列をさらに含むことができる。その結果、前記ファージは、上記のように複数の標的と接触し得る。これは通常、ファージディスプレイと呼ばれる。採用されるファージは、M13ファージ、fd糸状ファージ、T4ファージ、T7ファージ、λファージ、及び/またはその他任意の適切なファージを含むことができるが、これらに限定されない。結合ファージが上記のように識別子によってタグ付けまたはマーク付けされる一方で、非結合ファージは洗浄され、及び/または分離され得る。通常、ファージ核酸は、ファージのタンパク膜内に含まれているため、核酸は通常、結合のため識別子に曝され得る。例えば、ファージは、核酸が曝されるように、タンパク膜が変性し、及び/または分解するよう、加熱され得る。また、識別子は、電気穿孔法、電気泳動法、及び/ま
たはその他の適切な方法によってファージに導入されることもできる。
【0074】
図7において、ファージ600の例は、通常、なかんずくタンパク膜核602をコードし、前記タンパク膜によって封入される、標的110の結合領域を含み得る核酸610を含むことができる。前記核酸610は、さらにファージを同定し、及び/または標的の結合領域をコードする領域612を含むことができる。結合されたファージ600は、図7及び図7aに示すように、識別子302が領域612と接触(F)するようにその後加熱され、破断され、及び/または処理され得る。例えば、識別子302が進入できるようにタンパク膜602が破断され、及び/または分離され得る。一般的に、上記議論した増幅反応及び/またはその他の方法は、識別子情報を領域612の配列へとタグ付けし、マーク付けし、及び/または導入するために利用され得る。さらに、通常、識別子302及び領域612は、核酸ライブラリーメンバー、識別子、及び/またはその他の核酸フラグメントに関して上記議論したエレメントの任意のもの、全て、またはそれらの組み合わせを組み入れることができる。また上記議論したように、ファージ600は、ファージ600が結合した標的110の同定を維持できるよう、物理的に除去され、及び/または分離され得る。
【0075】
その他の実施形態において、核酸をペプチドへ組み入れ、及び/または結び付けるその他の方法、例えば、mRNAディスプレイ、リボソームディスプレイ、及び/またはその他の適切な方法が利用され得る。通常、mRNAディスプレイにおいては、図7bに示すように、メッセンジャーRNA(mRNA)610’の融合生成物600’は、例えば、通常リボソーム内でmRNA610’が新生ペプチド602’との融合を生ずるピューロマイシンを末端にもつmRNA612’によってmRNA610’がコードするペプチド602’に結び付くことができ、これがファージディスプレイを有する、上記議論した標的と接触し得る。また、通常、リボソームディスプレイにおいては、図7cに示すように、ペプチド602”をコードするがストップコドンを欠く修飾mRNA610”の融合生成物600”が利用され得て、翻訳時にリボソーム620”のチャネルを占めることができ、前記リボソーム620”に集合したペプチド602”を折りたたみ、その結果ペプチド602”がリボソーム620”に結合するとともにmRNA610”にも結合するスペーサ配列612”を組み込むこともできる。この生成物600”は、その後ファージディスプレイを有する上記の標的と接触し得る。その他の方法には、酵母ディスプレイ、細菌性ディスプレイ、及び/又はその他任意の適切な方法を含み得るが、これらに限定されない。
【0076】
本発明のその他の態様においては、多重化結合プロセスの結果生成した配列を取り扱い、及び仕分けする方法が提供される。いくつかの実施形態において、前記配列は、識別子配列によって仕分けされ、配列がどの1つまたは複数の標的に結合されるべきかを決定する。かかる配列は、さらに、比較され、並べられ、及び/またはそれ以外にも処理されて、特徴、特性及び/またはその他有用な性質、互いの関係性、及び/または標的の特性が同定されるようにすることができる。例えば、単一標的に結合した複数のアプタマー配列は、配列モチーフ及び/または配列仕分け及び/または比較によって少なくとも部分的に解明されたと考えられるその他共通の特徴を潜在的に共有すると思われる。結果生じた配列の具体的な結合親和性も、親和性分析によって決定され得る。いくつかの実施形態において、表面プラズモン共鳴が、アプタマーの標的への結合力を測定するために利用され得る。例えば、標的に結合した、表面屈折率を測定するセンサが利用され得る。かかる表面屈折率は、アプタマーが標的に結合した結果、変化し得るからである。通常、標準配列方法以外では、例えば454クローンシーケンシング(コネチカット州、ブランフォード、ロシュ)などの超並列配列、ソレクサシーケンシング(カリフォルニア州、サンディエゴ、イルミナ)などの超並列クローンアレイ配列などの並列配列方法及び/またはその他任意の適切な配列方法が採用され得る。
【0077】
(多重化SELEX処理の実施例)
複数の標的に対するアプタマーの並行、デノボ選択を示すものとして、各20ntの2つの保存プライマー結合部が横に配置されている、ランダムに選ばれた40ntsのコア配列を含む組み合わせDNAライブラリーが、アプタマープールの開始点として使用される。Vetor NTI(インビトロゲン)のオリゴ分析モジュールを使用して、プライマー配列が設計され最適化される。典型的には、かかるライブラリーはおよそ1015のユニーク配列を含むと考えられる。SELEXプロセス中にコア配列を増幅するためにプライマー結合部が使用される。結合緩衝液中に溶解された一本鎖DNAプールが95℃にて5分間の加熱により変性され、その後10分間氷上で冷却され、ニトロセルロースで被覆したガラススライド(例えばワットマン)上に固定した複数のタンパク質標的に曝される。
【0078】
(DNAライブラリーSELEXの実施例)
一実施例としてのDNAライブラリーは、以下の配列を有する、保存プライマーが横に配置された40のヌクレオチドがランダムに配置された配列から構成される:(順シーケンス):5’−ATACCAGCTTATTCAATT−3’及び逆方向プライマー(RP):5’−AGATTGCACTTACTATCT−3’。SELEXの第一ラウンドにおいて、ssDNAプール500pmolが結合緩衝液(0.1mg/ml酵母tRNA及び1mg/mlBSAのPBS)中の各スライドとともに37℃にて30分間インキュベートされる。前記スライドは、その後、結合緩衝液1mlで1分間洗浄される。特定標的に結合したアプタマーを溶出するため、スライドが結合緩衝液内で95℃まで加熱される。その後、高塩濃度溶液及びエタノールを用いて溶出したssDNAを沈殿させる。沈殿後、アプタマーペレットが水中に再懸濁され、3’−ビオチン標識プライマー及び5’−フルオレセイン(FITC)標識プライマーを有するPCRで増幅される(95℃にて30秒間、52℃にて30秒間、72℃にて30秒間を20サイクル、その後72℃にて10分間延長)。次のラウンドで使用するストレプトアビジン被覆のセファロースビーズ(ウィスコンシン州、マジソン、プロメガ)によって、選択されたFITC標識のついたセンスssDNAがビオチン化アンチセンスssDNAから分離される。SELEX手順におけるPCR生成物の意図する鎖を過剰合成するために、上記方法の代わりに「非対称PCR」を利用してもよい。あるいは、さらに代替的なものとして、例えば、リン酸化PCRプライマーが採用される際に、望ましくない鎖はλ−エクソヌクレアーゼに消化されてもよい。
【0079】
個々のアプタマーをフルオレセインイソチオシアネート(FITC)で標識すると、SELEX手順の観測が容易になる。また、FITCは、標準的なマイクロアレイスキャナのグリーン(cy3)チャネルでの走査と互換性を有する。選択の各ラウンド後のssDNAアプタマーを増幅するために使用されるセンスプライマーは、蛍光標識され、その結果、蛍光標識アプタマーとなる。タンパク質のスポットがついたニトロセルロース被覆のスライドがマイクロアレイスキャナで走査される。あるいは、タンパク質は、エポキシ被覆のガラススライド上にスポットが付けられてもよい。エポキシスライドは、3Dのニトロセルロースパッドよりもタンパク質結合能力が低いが、核酸アプタマープールのスライドのバックグラウンドへの非特定的結合が(ブロックの有無を問わず)少ない旨が、認められている。バックグラウンド蛍光を減らすためにブロックが採用されてもよい。
【0080】
SELEXプロセスの各ラウンドにおいて、アプタマーを標的に結合させるため、スライドが37℃で30分間インキュベートされる。その後、7M尿素で95℃にて加熱することにより特異的に結合するDNAを溶解する前に、スライドは結合緩衝液で洗浄される。溶出液からの核酸は、フェノール−クロロホルムで精製され沈殿した核酸であり、濃縮された一本鎖DNA分子がPCRにより増幅されることとなる。SELEXプロセスを通
して一貫して厳密性を高めるために、洗浄液の容積を(およそ1〜10ml)徐々に増やす。例えば選択の最終ラウンド後など、選択が所定の地点に到達後、アプタマーはタグ付け、マーク付け、及び/または分離される。
【0081】
(識別子の原位置ハイブリダイゼーションの実施例)
短いssDNA配列タグを用いて識別子のタンパク質標的に結合したアプタマーの3’末端へ、アプタマーへの原位置ハイブリダイゼーションの実施例を行った。これらの合成ssDNAタグ・オリゴヌクレオチドは、識別子302を伴う図3bに示した3つの領域から構成される。すなわち、(i)オリゴヌクレオチドの3’末端での識別子302の領域302cであるC2領域は、使用した全アプタマー上の対応領域に相補的な17〜20のヌクレオチド配列から構成され、(ii)オリゴヌクレオチド302の5’末端での領域302bであるC1領域は、17〜20ntのプライマー結合部を含み、配列前にタグの増幅、アプタマーハイブリッド中に使用され、(iii)ガラススライド表面上で各遺伝子座のユニーク識別子としての役割を果たすタグ・オリゴヌクレオチド(v)の中心に存在する可変領域302a。8のヌクレオチドの可変配列により、市場における多くの複合タンパク質アレイ(8000サンプル)に対して十分な48(65,536)のユニーク配列が合成される。
【0082】
以上、概要を記載したように、SELEX手順の最終ラウンド(典型的にはラウンド10)後、特定のアプタマーが、ガラススライドに固定されたタンパク質標的と結合する。各アプタマーの40ntコア配列はユニーク配列であるが、その末端配列は前記SELEX中いかなる種類の選択の影響も受けていなかった。そのタンパク質標的に結合する各ラウンド終了後、その遠位末端(P1、P2)での対応領域の維持を要件として保存プライマーを用いてアプタマーを増幅した。したがって、例えば、各アプタマーの3’−領域は、(標準的なハイブリダイゼーションを介して)提供されたタグ・オリゴヌクレオチドのC2領域の結合部としての役割を果たし得る。各タグ・オリゴヌクレオチドのユニーク可変配列(V)を所与として、各アプタマーはガラススライド上のアプタマーの位置まで、遡及可能な配列にてタグ付けされ、したがって、かかる位置にタンパク質のスポットが付く。
【0083】
(16プレックスのSELEX手順の実施例)
16プレックス(16標的)のSELEX手順の実施例が16のユニーク標的を使用して行われた。すなわち、(1)フィブリノゲン、(2)コラーゲン、(3)フィブロネクチン、(4)アセチルウシ血清アルブミン(BSA)、(5)ヘパラン硫酸、(6)プロラクチン抑制因子(PIF)、(7)リボヌクレアーゼA(RNase A)、(8)ラミニン、(9)インターロイキン−7 cat 200−7(IL−7 cat 200−7)、(10)IL−15 cat 200−15、(11)IL−21 cat 200−21、(12)IL−7R cat 306−IR、(13)IL−15R、(14)IL−21R、(15)IgG cat 2a(抗CD19)及び(16)抗CD20である。かかる16標的は、ブロックされたニトロセルローススライド上にスポットが付いたアレイとして配置された。上記議論したDNAアプタマーライブラリーがスライドに適用された。ライブラリーの非結合メンバーが洗浄され、上記のように、1標的スポットにつき1標識にて、スライドが16のユニーク識別子核酸配列によって標識された。前記識別子は60℃にて短時間インキュベートされて、前記スポット上でアプタマーと37℃で30分間ハイブリダイズされるようにした。エキソ−クレノウTaqポリメラーゼとdNTPが追加され、37℃で1時間、識別子の拡張が行われた。前記Taqは、60℃で10分間かけて不活性化された。dsDNAは、沸点に近い温度にて、7M尿素で溶出され、その後pH5.0の3M酢酸ナトリウムと氷のように冷たいエタノールとで沈殿させた。回収されたdsDNAは標準的方法によって配列決定がなされた。
【0084】
配列決定がなされたDNA中の識別子配列が、アプタマー配列の標的を同定するために利用された。標的に対して以下のアプタマー配列が同定された(識別子配列とプライミング配列を除く):
【0085】
標的1:

【0086】
標的2:

【0087】
標的3:

【0088】
標的4:

【0089】
標的5:

【0090】
標的6:

【0091】
標的7:

【0092】
標的8:

【0093】
標的9:

【0094】
標的10:

【0095】
標的11:

【0096】
標的13:

【0097】
標的14:

【0098】
標的15:

【0099】
標的16:

【0100】
標的12(IL−7R cat 306−IR)に対するアプタマーは回収されなかった。
【0101】
本発明は、その精神または本質的な特徴から逸脱することなく、他の特定の形態でも行われ得る旨、本発明の属する分野の通常の知識を有する者に認識されるであろう。したがって、本明細書の記載事項は、全ての点において例示であって、限定的なものと考えてはならない。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲に示されており、当該範囲内の意味内容及び均等の範囲内にある全ての変更が、ここに包含されることが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の標的に対する複数の異なる生体分子リガンドを同時に合成する方法であって、前記方法が:
結合メンバーと非結合メンバーとを含む生体分子のライブラリーを複数の標的に同時に接触させるステップと;
前記複数の標的に結合しない生体分子の前記ライブラリーのメンバーを分離するステップと;
複数の標的に結合する生体分子のライブラリーのメンバーを各々特定の標的を示す識別子でマーク付けするステップと;
生体分子のライブラリーの結合メンバーを同定し、前記識別子を介して前記メンバーと標的とを相関させるステップとを含む方法。
【請求項2】
前記複数の標的分子が、単一反応容量内の基質上に配置される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数の標的が、少なくとも1つの標的の複数の複製を伴って基質上に配置される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記分離するステップが洗浄するステップを含む、請求項1、2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記接触させるステップを反復するステップと、洗浄するステップとをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記マーク付けするステップが、識別子を含む溶液を基質に接触させるステップを含む、請求項2乃至5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記識別子を含む溶液を接触させるステップが、手作業によるピペット操作、自動ピペット操作、インクジェット印刷、ミクロ接触ピンの使用、または皮膜上に配置された識別子の被膜への適用を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
識別子を前記生体分子へ付着させるステップ、ライゲーションするステップ、光ライゲーションするステップ、または共有結合するステップをさらに含む、請求項1乃至7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記基質上の複数の標的を接触させる前または後に、複数の標的に対する生体分子の前記ライブラリーに関して少なくとも1ラウンドのSELEX処理を行うステップをさらに含む、請求項2乃至8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
生体分子のライブラリーと;
基質上に配置された複数の標的と;
複数の識別子と;
を含む、複数の標的に対する生体分子リガンドを同時に合成するシステムであって、前記複数の識別子が、前記標的に結合される前記ライブラリーの生体分子をタグ付けするために基質に適用されるシステム。
【請求項11】
基質上に配置された複数の標的が空間的配置を有する、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
生体分子の前記ライブラリーが核酸、ペプチド、その他の生重合体、それらの組み合わせまたは修飾を含む、請求項10または11に記載のシステム。
【請求項13】
前記識別子が、複数の標的に対応するユニーク配列またはセミユニーク配列を有する核酸を含む、請求項10、11または12に記載のシステム。
【請求項14】
前記識別子が、結合された生体分子のためのオリゴヌクレオチドプライマーを含む、請求項10、11または12に記載のシステム。
【請求項15】
前記識別子が基質に共有結合され、前記基質上の原位置で合成され、基質上で複数の標的に結合された生体分子にライゲーションされる、請求項10、11、12、13または14に記載のシステム。
【請求項16】
前記識別子が、基質上の標的の配置と同じ空間的配置をとって、別個の基質上に配置される、請求項11、12、13または14に記載のシステム。
【請求項17】
前記識別子が、リガーゼまたは光エネルギーを介して生体分子にライゲーションされる、請求項15に記載のシステム。
【請求項18】
前記ペプチドが、バクテリオファージのタンパク膜の一部を含む、請求項12、13、14、15または16に記載のシステム。
【請求項19】
前記ペプチドに対応する核酸配列をさらに含むシステムであって、前記対応する核酸配列が前記ペプチドに近接する、請求項12、13、14、15または16に記載のシステム。
【請求項20】
前記識別子が、前記ペプチド配列を同定するために、前記基質に適用され、対応する核酸配列に結び付く、請求項19に記載のシステム。


【図1】
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【図2】
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【図2a】
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【図3】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図4a】
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【図5】
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【図5a】
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【図6】
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【図6a】
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【図6b】
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【図6c】
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【図7】
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【図7a】
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【図7b】
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【図7c】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−521563(P2012−521563A)
【公表日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−502023(P2012−502023)
【出願日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際出願番号】PCT/US2010/020287
【国際公開番号】WO2010/110929
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(511228311)バイオテックス,インク. (1)
【氏名又は名称原語表記】Biotex,Inc.
【住所又は居所原語表記】8058 El Rio St.,Houston,Texas 77054,United States of America