説明

檜葉から抽出したフィトンチッドガスを用いる果実・野菜類の鮮度保持剤の製造方法と製造装置。

【課題】蒸し釜に装入した檜葉から水蒸気の供給により抽出したフィトンチッドガスのバイオガスを、ロスがなく効率よくゼオライトに吸着させるようにする。
【解決手段】蒸し釜に、檜葉を充填し水蒸気を供給して生成せしめるフィトンチッドガスを、その蒸し釜に接続せしめた内容積が拡縮する袋状体5内に収集せしめ、その収集したフィトンチッドガスを、袋状体5に填めた状態として、その袋状体5の口50を、ゼオライト石粒を填めた網目袋を装入して真空ポンプPにより真空に脱気した圧力釜7の接続口70に接続し、その接続口70に付設のバルブを開いて袋状体5内と圧力釜7内とを連通させ、袋状体5内のガスを圧力釜7内の負圧によりその釜7内に送給して、その釜7内のゼオライト石粒に吸着させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は檜葉から抽出した芳香物質のバイオガス(フィトンチッドガス)を、粉末状または小塊状のゼオライトに吸着保持せしめて、このバイオガスを吸着させたゼオライトを、果実・野菜類の貯蔵に際して装填しておくようにすることで、果実・野菜類の鮮度を保持せしめるように用いる鮮度保持剤の製造方法と製造装置についての改良に関する。
【背景技術】
【0002】
松・杉のような針葉樹の葉から、水蒸気の供給で抽出されるガス状の芳香物質を、ゼオライト(沸石)に吸着させて、その吸着体であるゼオライトをもって、果実・野菜類の貯蔵・保存に際し、鮮度保持剤として用いる手段は、特公平7−25647号公報により知られている。
【0003】
この手段に用いる鮮度保持剤は、蒸し釜に装入した針葉樹の葉に対し、ボイラーで発生させた水蒸気を供給して、それにより抽出されて水蒸気とともに蒸し釜から排出されるガス状の芳香物質(バイオガス)を、気液分離装置に導き冷却することで、混在している水蒸気を除去して、バイオガスだけに分離し、これを、ゼオライトを装入しておくゼオライトタンク内に供給することで、そのタンク内のゼオライトに吸着させることで造られる鮮度保持剤である。
【0004】
この手段により得られる鮮度保持剤は、果実・野菜類の鮮度の保持に効果のあるものであるが、その得られる鮮度保持の効果が製造された鮮度保持剤の製品によりバラツキがある問題がある。これは製品のゼオライトに吸着させたバイオガスのゼオライトに対する吸着量にバラツキがある、ということである。
【0005】
また、抽出してゼオライトが装入されているゼオライトタンクに送給するバイオガスの、ゼオライトに対する吸着のロスが多く、鮮度保持剤の生産の効率が悪い問題がある。これは、抽出してゼオライトタンクに供給するバイオガスの、タンク内のゼオライトに対する接触が、連続して行なわれていくように、ゼオライトタンクに排気口を設けておくと、バイオガスが吸着したゼオライトに、引き続き送給されてくるバイオガスが接触していくときに、排気口からバイオガスの一部が外部に放出されて飛散するようになることでロスが多くなり、また、排出口をなくして、ゼオライトタンクを密閉しておくと、抽出されて、ゼオライトタンク内に送給されるバイオガスの、ゼオライトタンク内におけるガス圧が高くなってきたときに、蒸し釜の側に逆流するようになって、ゼオライトタンクに対するバイオガスの供給を阻害し、蒸し釜からの外部飛散を生ぜしめ、ゼオライトに対するバイオガスの吸着の効率を低下させるようになることによる。
【特許文献1】特公平7−25647号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明において解決しようとする課題は、蒸し釜に装入した檜葉から水蒸気の供給により抽出したフィトンチッドガスのバイオガスを、ロスがなく効率よくゼオライトに吸着させるようにするとともに、そのフィトンチッドガスを吸着させたゼオライトにより調整する鮮度保持剤の製品に、鮮度保持能力・機能にバラツキが無いものとすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明においては、上述の課題を解決するための手段として、
蒸し釜に、檜葉を充填し水蒸気を供給して生成せしめるフィトンチッドガスを、その蒸し釜に接続せしめた内容積が拡縮する袋状体(5)内に収集せしめ、その収集したフィトンチッドガスを、袋状体5に填めた状態として、その袋状体(5)の口(50)を、ゼオライト石粒を填めた網目袋を装入して真空ポンプ(P)により真空に脱気した圧力釜(7)の接続口(70)に接続し、その接続口(70)に付設のバルブを開いて袋状体(5)内と圧力釜(7)内とを連通させ、袋状体(5)内のガスを圧力釜(7)内の負圧によりその釜(7)内に送給して、その釜(7)内のゼオライト石粒に吸着させる工程を行ない、この工程を終えたところで、圧力釜(7)を開き、ゼオライト石粒を網目袋ごと取り出して、気密性のガスバリヤ袋に装入し、その袋を密封して鮮度保持剤の製品とすることを特徴とする檜葉から抽出したフィトンチッドガスを用いる果実・野菜類の鮮度保持剤の製造方法。
蒸し釜に、檜葉を充填し水蒸気を供給して生成せしめるフィトンチッドガスを、その蒸し釜に接続する抽出管の先端側に設けた接続口に対し吐出口を接続せしめた内容積が拡縮する袋状体(5)内に収集せしめ、その袋状体(5)内に収集せしめた前記ガスを真空ポンプ(P)で引き出してボンベ(B)に詰め換えて保存しておき、別に、焼成して小粒に造成したゼオライト鉱石を、所定単位重量に計量して、その単位重量ごとに対応する容量の網目袋に充填して多数袋用意しておき、このゼオライト石粒を填めた網目袋を、圧力釜(7)の中に適宜数積み重ねて装入し、その圧力釜(7)の蓋を閉じ、その釜(7)内を真空ポンプ(P)により真空に脱気し、次いで、前記ボンベ(B)に填めておいたフィトンチッドガスを袋状体(5)に詰め替えて、その袋状体(5)の口(50)を、この真空に脱気した圧力釜(7)の接続口(70)に、接続し、その接続口(70)に付設のバルブを開いて袋状体(5)内と圧力釜(7)内とを連通させ、袋状体(5)内のガスを圧力釜(7)内の負圧によりその釜(7)内に送給して、その釜(7)内のゼオライト石粒に吸着させる工程を行ない、この工程を終えたところで、圧力釜(7)を開き、ゼオライト石粒を網目袋ごと取り出して、気密性のガスバリヤ袋に装入し、その袋を密封して鮮度保持剤の製品とすることを特徴とする檜葉から抽出したフィトンチッドガスを用いる果実・野菜類の鮮度保持剤の製造方法を提起するものである。
また、これに併せて、上記鮮度保持剤の製造方法の実施に用いる鮮度保持剤の製造装置として、
檜葉を詰めて供給する水蒸気によりフィトンチッドガスを生成せしめる蒸し釜(2)と、蒸し釜(2)に水蒸気を供給するボイラー(1)と、蒸し釜(2)に接続してその釜(2)内に生成してくるフィトンチッドガスを抽き出す抽出管(3)と、その抽出管(3)の先端側に設けた接続口(30)に、口(50)を装脱自在に接続しておく大径の袋状体(5)と、調整して粒状に造成したゼオライト石粒を装填して内部を真空に脱気する圧力釜(7)と、内部を真空に脱気した圧力釜(7)に、フィトンチッドガスが填められた袋状体(5)の口(50)を接続するよう設けておく接続口(70)と、からなる檜葉から抽出したフィトンチッドガスを用いる果実・野菜類の鮮度保持剤の製造装置を提起するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明手段においては、果実・野菜類の鮮度保持に効果のある針葉樹の葉から抽出するバイオガスのフィトンチッドガスを収集するのに、蒸し釜に檜葉を填めて水蒸気を供給して生成せしめる蒸し釜に接続したバイオガスの抽出管の先端側に、大径の風船状に成形した袋状体の口を接続しておいて、この袋状体内に生成してくるバイオガスを収集せしめて、これをボンベに移し換えて保存しておき、このバイオガスを吸着させて、芳香物質の担体とするゼオライトは、その鉱石を、焼成して小径のゼオライト石粒に調整して、これを単位重量に計量して網目袋に装填しておき、これを圧力釜に詰めて、その釜内を真空に脱気したところに、ボンベからバイオガスを移し換えた袋状体を接続して、その袋状体内のバイオガスを、時間をかけてゼオライト石粒に吸着させ、このガスの吸着を終えたゼオライト石粒を網目袋ごと圧力釜から取り出して、その袋ごと気密性の袋に詰めて密封しておき、使用するときに、密封袋から取出し、野菜・果実類を詰めた箱の中に、網目袋ごと装入するようにしていることから、檜葉から抽出したバイオガスを、ロスがなく収集でき、かつ、そのガスをロスのない状態で、担体のゼオライト石粒に対しそれの吸着能力の限度まで吸着させるようになるので、鮮度保持の機能を充分に発揮する鮮度保持剤を、その鮮度保持の機能にバラツキのない製品として製造し得るようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に本発明手段の実施の態様を実施例につき図面に従い詳述する。
【実施例1】
【0010】
図1は、本発明手段の実施に用いるフィトンチッドガスの製造装置の概要を示す展開図で、同図において、1は水蒸気を発生させるボイラー、2は檜葉を釜内に詰め込んで前記ボイラー1から供給する水蒸気により檜葉からフィトンチッドガスを抽出する蒸し釜、3はこの蒸し釜2内に発生する水蒸気およびフィトンチッドガスを抽き出す抽出管、4はその抽出管3の中間部に設けた蛇管状部を包み込んで冷却する冷却器、5は前記抽出管3の先端側に設けた接続口30に接続した大径の風船状の袋状体を示す。
【0011】
ボイラー1は焚口に設けたバーナーによりタンク内の水を沸かして発生させる水蒸気を蒸気導出管10から噴出させる通常のものである。
【0012】
蒸し釜2は、蓋20を取り外すことで上方に開放するドラム状の胴部内に、檜葉を積み重ねて装入し、蓋20を閉じた状態で、底部から供給する高圧の水蒸気により詰め込んで檜葉からフィトンチッドガスのバイオガスを抽出する通常の蒸し釜であり、発生させたバイオガスおよび水蒸気を抽き出す抽出管3が、蓋20の頂部に接続させてある。
【0013】
冷却器4は、前記抽出管3により抽き出されるバイオガス及び水蒸気を、冷却によって、バイオガスと凝結してくる水蒸気とに分ける冷却手段であり、抽出管3の途中に設けた蛇管状部を包み込む水槽に形成してあって、底部には、抽出管3の中間の蛇管状部に凝縮して捕集される凝縮水を抽出管3から取り出し分離する水受け40が装設してある。
【0014】
抽出管3の先端側に設けた接続口30は、袋状体5の口50を、装脱自在に接続するニップル状のもので、抽出管3に対する連通をオン・オフするバルブ31が装備され、かつ、多連に並設してある。
【0015】
袋状体5は、畳まれた状態の周壁が、外側に張り出すことで膨らむ気密な袋であり、この例においては、合成樹脂材のシートを所定形状に型どりして、それらを、はぎ合わせて接着することで、大径の風船状に成形し、それに管状の口50を付設して構成してあり、内容が空のときは、周壁が平らに畳まれて平板状となり、管状の口50から内部に気体を注入すると、畳まれていた周壁が張り出して風船状に膨らむようになる。
【0016】
図2は、上述の製造装置により生成したバイオガスを、ゼオライト石粒に吸着させる装置の概要の展開図で、Wは、前記フィトンチッドガスの製造装置で生成して袋状体5に収集したフィトンチッドガスを、袋状体5に詰め込まれた状態で一時貯留しておく貯留室、Yはフィトンチッドガスのバイオガスを、前述の網目袋に填めたゼオライト石粒に吸着させる作業室、aは貯留室Wに付設の温度計、bは貯留室Wに付設せるヒータ、cは貯留室Wと作業室Yとを仕切る隔壁、dは作業室Yに装備せる換気扇、eは貯留室W内に設置せる袋状体5の懸架用の架枠、5…はこの架枠eに吊り下げたバイオガスが詰められた袋状体、Cは袋状体5に填められたバイオガスをボンベBに填め替えるよう作業室に設置したコンプレッサ、60はそのコンプレッサCの抽き口、61は吐出口、7は、網目袋に詰め込まれたゼオライト石粒を、網目袋ごと詰め込んで、真空状態に曝らすようにするために作業室Yに設置した圧力釜、Pはその圧力釜7内を真空に脱気する真空ポンプ、70はその圧力釜7の接続口、vはその接続口70に付設の開閉バルブ、5’は前記ボンベBからバイオガスが詰め替えられた袋状体を示している。
【0017】
貯留室Wは、温度計aにより検出される室温に制御されて作動するヒータにより、室温が常時36度C〜28度Cの範囲の夏の状態に保持されている。また、作業室Yは、温度計aにより検出される温度によって制御される換気扇dの作動で、室温が20度C前後の常温に保持されている。
【0018】
架枠eは、バイオガスの製造装置により生成したバイオガスを収集せしめた袋状体5を、懸架して貯留・保存しておく架台であり、バイオガスが詰められた袋状体5を、それの口50を緊縛した状態で、ハンガーfにより、この架枠eに吊り下げられる。
【0019】
コンプレッサCは、袋状体5に詰められたバイオガスをボンベBに詰め替えて、そのボンベBにより保存しておくためのもので、作業室Yに設置してある。そして、それの抽き口70は、隔壁cに設けた窓孔を介して貯留室W内に突出させてあり、貯留室Wにおいて、そこに貯留してある袋状体5の口50が接続するようにしてある。また吐出口61は、作業室YにおいてボンベBに接続するようにしている。
【0020】
圧力釜7は、ゼオライト鉱石を約400度C程度に焼成して10ミリ〜5ミリ程の小粒に調整しておいたゼオライト石粒に、バイオガスを吸着させるときに、そのゼオライト石粒を、その周面に接触している機体を除去した状態にしておくためのもので、網目袋に計量して充填しておいたゼオライト石粒を堆積状態に詰め込むドラム状の胴部には、真空ポンプPに接続する抽き口70が付設され、上面には開閉する蓋板71が装着されている通常のものであり、蓋板71を開放して、内部に網目袋に填めたゼオライト石粒を網目袋ごと詰め込み、蓋板71を閉じ密閉して抽き口70に接続した真空ポンプPの作動により内部を真空に脱気して、ゼオライト石粒に接触している空気を排除しておくように使用する。
【0021】
袋状体5’は、脱気した圧力釜7内にバイオガスを注入して、その釜内のゼオライト石粒に接触させるためのもので、ボンベBに詰められているバイオガスを填め替えたものであり、この袋状体5’の口50を抽き口70に嵌着して、抽き口70に設けた開閉バルブvを開放することで、この袋状体5’内のバイオガスを圧力釜7内に送り込み、ゼオライト石粒に吸着させるように用いられる。
【0022】
次に、上述の装置を用いて行うバイオガスの生成・収集およびそれをゼオライト石粒に吸着させて鮮度保持剤を造成する実施例を説明する。
【0023】
まず、採取してきた檜葉を蒸し釜2に詰める。次いで、蒸し釜2の蓋20を閉め、蒸し釜2内に、ボイラー1で生成した高圧の水蒸気を、その蒸し釜2の底から送り込み、蒸し釜2内の檜葉を徐々に蒸す。
【0024】
これにより蒸し釜2の蓋20の頂部に接続した抽管3から噴き出してくる水蒸気および檜葉から生成してくるフィトンチッドガスを、抽出管3の中間部を包み込む冷却器4により冷却して、凝縮してくる水および蒸留液は、抽出管3から引き抜いて分離し、凝縮しないフィトンチッドガスを、抽出管3の先端側に導き、その先端側に接続しておく袋状体5内に詰め込み、これに収集させる。
【0025】
この袋状体5は、周壁が折り畳まれて平らに潰れた状態から、注入されてくるフィトンチッドガスのガス圧で、周壁がひらき、大径の風船状に一杯に膨らんだところで、抽出管3の接続口30から外し、これを真空ポンプPで引き出し、コンプレッサCによりボンベB内に加圧して填め込み、ボンベに移し替えて保存しておく。
【0026】
次にフィトンチッドガスを吸着させるゼオライト石粒を調整する工程について説明する。
400度C程度に焼成して直径5ミリ程度の小粒に造成したゼオライト鉱石を、篩別・精選して石粉・屑を除き、所定の単位重量(約50g)に計量する。ゼオライト鉱石は、焼成により吸着の機能が著しく向上する。このゼオライト鉱石の粒状化は、小径のものほど良いが、取り扱い上5ミリ程度が望ましい。
【0027】
計量した単位重量のゼオライト石粒を、網目袋に装填する。網目袋の網目は、填め込んだゼオライト石粒が流出しない程度とし、出来るだけ通気性のよいものとする。ゼオライトは、この網目袋に詰め込んだ状態として多数袋用意しておく。
【0028】
次に、このゼオライトに対しフィトンチッドガスを吸着させる工程について説明する。
【0029】
上述の如く調整したゼオライト石粒を詰めた網目袋を、所定数束にまとめ、その束を、別に用意しておく圧力釜(真空釜)7の内部に、適宜段数に重ねて填めこみ、圧力釜7を密封する。
【0030】
次に、圧力釜7内を、真空ポンプPにより真空に脱気し、減圧状態にする。この真空びきは、40分以上続け、これにより、ゼオライトの吸着面の全てが、真空の脱気した減圧状態の雰囲気に曝されるようにする。
【0031】
この所定時間の真空びきが終了したところで、圧力釜7に、フィトンチッドガスを供給する。この供給は、檜葉から抽出してボンベに填め込んで保存しておいたフィトンチッドガスを、ボンベBから畳まれた状態の袋状体5に移し換え、その移し換えた袋状体5の口50を、圧力釜7に設けておく接続口70に接続し、その接続口70に設けておくバルブを開いて、袋状体5を圧力釜7に連通させる。この圧力釜7の接続口70に接続する袋状体5は、収集したガスをボンベBに移し換える前の、袋状体5をそのまま接続してもよい。
【0032】
これにより、袋状体5内のフィトンチッドガスは圧力釜7内の負圧より吸引されてその釜7内に送り込まれ、その送り込まれたガスは、圧力釜7内に填め込んでおいたゼオライト石粒に接触して吸着されていく。
【0033】
このゼオライト石粒に対するフィトンチッドガスの吸着が充分に行われるようにするために、圧力釜にフィトンチッドガスが填められた袋状体5を接続してしておく工程は、約1時間程度続け、ゆっくりと時間をかけて充分に吸着させる。
【0034】
この吸着工程が終えたところで、圧力釜を開き、素早くゼオライト石粒を、網目袋ごとに取り出し、束ねた網目袋ごとに、気密性のガスバリア袋に装入し、そのガスバリア袋の口をシーラーによりシール密封し、これにより鮮度保持剤の製品とする。
【0035】
この鮮度保持剤を使用するとき、例えば、果実・野菜類の生産者が、果実等を箱詰めして出荷する際に、その箱詰めした果実類の鮮度を保持させるために用いる場合にあっては、上述のガスバリア袋を開封して、フィトンチッドガスを吸着させたゼオライト石粒が填められている網目袋を取りだし、その網目袋ごと果実類を詰めた箱内に入れ込み、その箱の外周を気密性の強い包装紙で包み込み密封するように使用する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明手段の実施に使用するフィトンチッドガスの製造装置の概要を示す展開図である。
【図2】本発明手段の実施に用いる鮮度保持剤の製造装置の概要を示す展開図である。
【符号の説明】
【0037】
B…ボンベ、C…コンプレッサ、P…真空ポンプ、W…貯留室、Y…作業室、a…温度計、b…ヒータ、c…隔壁、d…換気扇、e…架枠、f…ハンガー、v…開閉バルブ、1…ボイラー、10…蒸気導出管、2…蒸し釜、20…蓋、3…抽出管、30…接続口、31…バルブ、4…冷却器、40…水受け、5・5’…袋状体、50…袋状体の口、60…抽き口、61…吐出口、7…圧力釜、70…接続口・抽き口、71…蓋板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸し釜に、檜葉を充填し水蒸気を供給して生成せしめるフィトンチッドガスを、その蒸し釜に接続せしめた内容積が拡縮する袋状体(5)内に収集せしめ、その収集したフィトンチッドガスを、袋状体5に填めた状態として、その袋状体(5)の口(50)を、ゼオライト石粒を填めた網目袋を装入して真空ポンプ(P)により真空に脱気した圧力釜(7)の接続口(70)に接続し、その接続口(70)に付設のバルブを開いて袋状体(5)内と圧力釜(7)内とを連通させ、袋状体(5)内のガスを圧力釜(7)内の負圧によりその釜(7)内に送給して、その釜(7)内のゼオライト石粒に吸着させる工程を行ない、この工程を終えたところで、圧力釜(7)を開き、ゼオライト石粒を網目袋ごと取り出して、気密性のガスバリヤ袋に装入し、その袋を密封して鮮度保持剤の製品とすることを特徴とする檜葉から抽出したフィトンチッドガスを用いる果実・野菜類の鮮度保持剤の製造方法。
【請求項2】
蒸し釜に、檜葉を充填し水蒸気を供給して生成せしめるフィトンチッドガスを、その蒸し釜に接続する抽出管の先端側に設けた接続口に対し吐出口を接続せしめた内容積が拡縮する袋状体(5)内に収集せしめ、その袋状体(5)内に収集せしめた前記ガスを真空ポンプ(P)で引き出してボンベ(B)に詰め換えて保存しておき、別に、焼成して小粒に造成したゼオライト鉱石を、所定単位重量に計量して、その単位重量ごとに対応する容量の網目袋に充填して多数袋用意しておき、このゼオライト石粒を填めた網目袋を、圧力釜(7)の中に適宜数積み重ねて装入し、その圧力釜(7)の蓋を閉じ、その釜(7)内を真空ポンプ(P)により真空に脱気し、次いで、前記ボンベ(B)に填めておいたフィトンチッドガスを袋状体(5)に詰め替えて、その袋状体(5)の口(50)を、この真空に脱気した圧力釜(7)の接続口(70)に、接続し、その接続口(70)に付設のバルブを開いて袋状体(5)内と圧力釜(7)内とを連通させ、袋状体(5)内のガスを圧力釜(7)内の負圧によりその釜(7)内に送給して、その釜(7)内のゼオライト石粒に吸着させる工程を行ない、この工程を終えたところで、圧力釜(7)を開き、ゼオライト石粒を網目袋ごと取り出して、気密性のガスバリヤ袋に装入し、その袋を密封して鮮度保持剤の製品とすることを特徴とする檜葉から抽出したフィトンチッドガスを用いる果実・野菜類の鮮度保持剤の製造方法。
【請求項3】
檜葉を詰めて供給する水蒸気によりフィトンチッドガスを生成せしめる蒸し釜(2)と、蒸し釜(2)に水蒸気を供給するボイラー(1)と、蒸し釜(2)に接続してその釜(2)内に生成してくるフィトンチッドガスを抽き出す抽出管(3)と、その抽出管(3)の先端側に設けた接続口(30)に、口(50)を装脱自在に接続しておく大径の袋状体(5)と、調整して粒状に造成したゼオライト石粒を装填して内部を真空に脱気する圧力釜(7)と、内部を真空に脱気した圧力釜(7)に、フィトンチッドガスが填められた袋状体(5)の口(50)を接続するよう設けておく接続口(70)と、からなる檜葉から抽出したフィトンチッドガスを用いる果実・野菜類の鮮度保持剤の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−35741(P2008−35741A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−211876(P2006−211876)
【出願日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(599012983)
【出願人】(506266953)加子母森林組合 (1)
【Fターム(参考)】