説明

次亜塩素酸による病気の予防及び治療法。

【課題】本発明の課題は、人を含む哺乳動物或いは鳥類の、ウィールス及び細菌、カビ、原生動物等の微生物に起因する病気の予防及び治療方法として、ウィールスの変異や耐性菌により予防治療効果がなくなる虞れのない、安価で簡単な方法を提供することにある。
【解決手段】次亜塩素酸水溶液或いは次亜塩素酸と次亜塩素酸塩の混合水溶液を、哺乳動物或いは鳥類の体内に注射などの方法で投与する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開発研究及び製造に多額の費用を要するワクチン或いは抗生物質等を使用せずに、安価且つ容易に大量に製造することが出来る次亜塩素酸水溶液或いは次亜塩素酸と次亜塩素酸塩との混合水溶液を注射、点滴その他の方法で哺乳動物或いは鳥類の体内に投与することにより、ウィールス、細菌等の微生物に起因する病気の予防或いは治療する技術である。
【背景技術】
【0002】
従来医学及び獣医学分野では、ウィールス、細菌等の微生物に起因する病気の治療及び予防に対しては、研究開発及び製造に多額の費用を要するワクチン及び抗生物質、合成抗菌剤等が開発使用されている。
【0003】
しかしながらワクチンに関しては、人インフルエンザウィールスで広く知られている如く、ウィールスが変異するとワクチンの効果がなくなる場合があるという問題がある。
【0004】
抗生物質に関しては、広く知られている如く耐性菌の問題がある。
【0005】
1915年以降、第一次世界大戦の結果として、200以上の細菌性活性組成物、中でも次亜塩素酸組成物が研究されてきた。それは血液中の好中球によって生成される酸化剤として最初に発見されたものである。
【0006】
その後の次亜塩素酸の医療への利用及び製造方法に関する研究の進展状況は、特表2005−507395(P2005−507395A)の特許公報に記載されている。
【0007】
現在では、好中球は人の場合では血球の60%弱を占める血球であるが、活性化した好中球はミエロペルオキシダーゼ酵素によって過酸化水素から次亜塩素酸ソーダより遥かに強力な殺菌力を持つ次亜塩素酸を活発に産生することが明らかになり、公知の事実として広く知られている。
【0008】
次亜塩素酸或いは次亜塩素酸塩の製造は極めて簡単である。例えば、次亜塩素酸の水溶液は、食塩水の電気分解法で安価に簡単に大量に製造することができ、国内の水泳プール及び浴槽の殺菌用だけで600台以上の食塩水電解装置が使用されている。
【0009】
更に一例を加えれば、日本全国の浄化槽の処理水の殺菌には、次亜塩素酸カルシュウムの錠剤が安価に広く使用されている。
【0010】
また次亜塩素酸の水溶液及び次亜塩素酸ソーダの水溶液は安全な物質であり、食品添加物として認可され、食品業界では殺菌に広く使用されている。
【0011】
医学の分野では、皮膚のみでなく、口腔内、鼻腔内、消化器官の内壁等広義の体表面の怪我や炎症等の消毒や殺菌治療に広く使用されている。
【0012】
体内の治療に関しては、特表2005−507395(P2005−507395A)の特許公報では、請求項4のe項に、『敗血症関節炎の関節内注射による注射』の記載があるが、この特許には、体内の広い範囲に拡散、浸透、循環し易い部位に溶液を投与して病気を治療あるいは予防することに関する記載はない。
特許検索の他に、1975年以降の全世界の文献検索(3800万件)をおこなったが、次亜塩素酸水溶液を注射、点滴その他の方法で体内に投与することに関する文献はゼロであった。
【特許文献1】公表特許公報(A) 特表2005−507395(P2005−507395A)
【0013】
後に記載する実施例では、養豚場の豚を対象に試験をおこなったが、豚のウィールス及び細菌等微生物に起因する病気の予防治療技術の現状を以下に記載する。
【0014】
豚にはウィールスに起因する病気として、オーエスキー病(AD)、繁殖豚・呼吸器障害症候群(PRRS)、日本脳炎、豚パルボウィルス病、豚エンテロウィルス病、豚インフルエンザ、離乳後多臓器性発育不良症候群(PMWS)、豚伝染性胃腸炎(TGE)、豚流行性下痢(PED)、豚コレラ、豚痘、口蹄疫等約15種類の病気がある。
【0015】
又豚の細菌による病気としては、丹毒、レプトスピラ病、サルモネラ病、連鎖球菌病、大腸菌病、壊死性腸炎、グレーサー病、マイコプラズマ病、萎縮性鼻炎(AR)、すす病、豚胸膜肺炎、パスツレラ病、豚赤痢、炭疽、破傷風等約18種類の病気がある。
【0016】
これ等の病気の発生予防としては、豚舎の消毒、導入豚の一定期間の隔離飼育、馴致による免疫力の付与、所謂オールイン・オールアウト方式による飼育ロット管理、養豚場への訪問者の制限或いは消毒等多くの手段が採用されているが、これだけでは不十分であり、多くの種類のワクチン、抗生物質、合成抗菌剤が使用されている。
【0017】
豚の病気では、PRRSが発生頻度が高く、その対策が重要視されている病気であるが、1990年代前半にPRRSウィールスが国内で始めて確認されてから、様々な対策が採られてきたが、有効なワクチンもなく、撲滅或いはコントロールは困難を極めている。
PRRSに関して1993年以降の国内特許公報を検索してみると7件あるが、全て外国から日本に出願されたワクチンに関する特許である。
【特許文献2】公開特許公報 特開平7―289250 オランダ
【特許文献3】公開特許公報 特開平10−117773 オランダ
【特許文献4】公開特許公報 特表平10−507372 スペイン
【特許文献5】公開特許公報 特表平11−509087 米国
【特許文献6】公開特許公報 特表2002−537845 オランダ
【特許文献7】公開特許公報 特表2003−520601 ドイツ
【特許文献8】公開特許公報 特表2003−533989 フランス
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
従来のワクチンや抗生物質等による治療予防方法は、治療予防方法の研究開発及び治療予防薬の製造には極めて多額の費用を要し、且つウィールスの変異や耐性菌の蔓延により治療予防効果がなくなる場合がるが、これに替わり、安価且つ簡単に製造できる簡単な構造の物質で且つ治療効果の安定な治療予防方法を提供することが、本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0019】
次亜塩素酸あるいは或いは次亜塩素酸と次亜塩素酸塩との混合水溶液を、哺乳動物或いは鳥類の関節部など投与した溶液が体内に拡散、浸透、循環し難い部位を除く、投与した溶液が拡散、浸透、循環し易い部位に注射などの方法で投与することにより、哺乳動物のウィールス或いは細菌、カビ、原生動物等の微生物による病気の予防及び治療を行なう方法である。
【発明の効果】
【0020】
本発明には、下記の三つの効果がある。
後に豚への適用実施例に示す如く、ウィールス及び細菌等の微生物による病気の発生及び治療、死亡率の低下に大きな効果がある。
ワクチンや抗生物質等と異なり、ウィールスの変異や耐性菌の問題がない。
注射薬の製造コストは、ワクチンや抗生物質などに比較して遥かに安価であり、予防治療コストが著しく削減できる。
【0021】
次亜塩素酸は体内では過酸化水素より強い最強の活性酸素(reactive oxygen species:ROS)であり、本発明の予防治療効果上最も重要な成分と考えられるが、次亜塩素酸と次亜塩素塩の混合水溶液の場合に、次亜塩素酸HOCLはアルカリ領域では乖離してOCLマイナスイオンとなり、次亜塩素酸とOCLマイナスオンとの比率は、溶液のpHによって大きく変わる。
例えば、次亜塩素酸と次亜塩素ソーダの混合水溶液の場合に、pH4〜6.5では90%以上が次亜塩素酸であり、pH8以上のアルカリ領域では次亜塩素酸は15%以下である。
【実施例】
【0022】
以下に、本発明を豚の最も発生頻度の高いPRRS病について、分娩子豚と離乳期の子豚を対象に実施した例を示す。
【0023】
豚の一生のなかで一番病気にかかり易い時期は、離乳から70日齢位までの、いわゆる離乳子豚の時期である。
その理由は、この時期に母豚からの移行抗体が消失し、野外の病原体に感染し易くなるためである。
【0024】
特に離乳期にかかる病気としてはPRRSが最も多く、子豚の死亡率が30%を越える場合も珍しくない。
【0025】
PRRSは複合感染病であって、離乳後の子豚がこの病気かかると、呼吸促迫、鼻炎、眼瞼浮腫、結膜炎などの症状を示し、発育遅延豚になる。PRRSウィルスに単独感染しても重篤な症状にはならないが、マイコプラズマ、サーコウィルス、ストレプトコッカス、パスツレラなどの混合感染により症状が重篤になる。
【0026】
表1に、離乳舎に移動した離乳子豚に、食塩水の電解で製造した次亜塩素酸と次亜塩素酸ソーダの混合水溶液(pH6.9、濃度60ppm)を2ml/回づつ、子豚の頚部に5日間毎日注射した場合としなかった場合の、子豚の死亡率の比較データを示す。
但し、A養豚場のみ、分娩舎に於いても、分娩後3日目、10日目、20目毎に、同じ注射をおこなった。
【表1】

【0027】
この表から、離乳子豚の死亡率は平均で28%から11%に低下しており、大きな効果があることは明瞭である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次亜塩素酸水溶液或いは次亜塩素酸と次亜塩素酸塩の混合水溶液を、人を含む哺乳動物及び鳥類を対象に、注射、点滴その他の方法で、関節部など投与した溶液が体内に広く浸透、拡散、循環し難い部位を除いた、投与した溶液が予防或いは治療に必要な体内の部位に拡散、浸透、循環し易い任意の部位に体内に投与することにより、ウィースル及び細菌、カビ、原生動物等の微生物に起因する病気の治療或いは予防をする方法。
【請求項2】
豚を対象とした請求項1に記載する方法。
【請求項3】
豚繁殖・呼吸障害症候群(Porcine Reproductive and Respiratory Syndrome 以下PRRSと略す)を対象とする請求項1に記載する方法。

【公開番号】特開2008−195612(P2008−195612A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−255263(P2006−255263)
【出願日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(597113402)株式会社ゴウダ (1)
【Fターム(参考)】