説明

歩数計測装置,プログラム,および携帯端末機

【課題】携帯端末機におけるスピーカからの音の放音に拘わらず携帯者の歩数を正確に検出できるようにする。
【解決手段】加速度センサ16は、携帯端末機10の携帯者の歩行によって生じる加速度を示す加速度信号を出力する。フィルタ部212は、加速度信号を補正した信号を出力する。フィルタ特性制御部215は、プレイヤ部111によって楽曲データMDが再生されている間、楽曲データMDの再生音に含まれてい周波数成分の帯域の成分が加速度信号から除去されるように、フィルタ部212によるフィルタ処理のフィルタ特性を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯端末機の携帯者の歩数を計測する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やスマートフォンなどと称される携帯端末機の中には、当該携帯端末機の携帯者の歩数を計測する歩数計としての機能を有するものがある。この種の携帯端末機には、マイクロホン、スピーカ、ディスプレイ、音源、CPUといった携帯端末機本来の機能を司る各装置のほかに加速度センサが搭載されている。この種の携帯端末機のCPUは、歩数の計測を指示する操作が行われた場合には、加速度センサの出力信号を取得し、この信号が示す加速度波形から一歩の歩行を計測し、計測した歩数をディスプレイに表示させる。
【0003】
この種の携帯端末機では、歩数の計数を行っている間にスピーカから着信音や楽曲の再生音などの音が発せられると、スピーカの振動が携帯端末機の筐体から加速度センサに伝わり、この振動が歩数の誤検出を発生させる、という問題がある。このようなスピーカの振動による誤検出の発生を防止する技術を開示した文献として、特許文献1がある。特許文献1に開示された携帯端末機は、CPU、通信部、操作部、メモリ、表示部、スピーカ、及び加速度センサを有している。この携帯端末機のメモリには、複数種類の楽曲データと、各楽曲データの再生音を放音させた場合におけるスピーカの振動波形を示す物理量である複数の振動パターンとが対応付けて記憶されている。この携帯端末機のCPUは、メモリ内における楽曲データの再生が指示された場合に次の2つの処理を行う。第1の処理では、CPUは、再生対象である楽曲データを音声信号に変換し、この音声信号をスピーカから音として出力させる。第2の処理では、CPUは、メモリ内における再生対象の楽曲データが示す振動パターンを加速度センサの出力信号から減算し、減算後の信号の振幅が閾値を超えた回数を歩数として計測する。この携帯端末機によると、加速度センサの出力信号からスピーカの振動によるノイズが除去されるため、歩数の計測を正確に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−177973号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、再生する楽曲データと対応する振動パターンがメモリ内に準備されていない場合、その楽曲データの再生によるノイズを加速度センサの出力信号から除去することができないという問題がある。また、この技術では、メモリ内における楽曲データの収録数が多くなるほどメモリ内に準備しておかねばならない振動パターンの種類も多くなるため、メモリの容量を浪費するという問題がある。
本発明は、このような課題に鑑みて為されたものであり、携帯端末機におけるスピーカからの音の放音に拘わらず携帯者の歩数を正確に検出できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明にかかる歩数計測装置は、加速度を示す加速度信号を取得する取得手段と、前記取得手段が取得した加速度信号にフィルタ処理を施すフィルタと、前記フィルタ処理の施された加速度信号に基づいて歩数を計数する計数手段と、楽曲を示す楽曲データが再生されている間、前記楽曲データの再生音に含まれる周波数成分の帯域の成分が減衰されるように前記フィルタ処理のフィルタ特性を制御する制御手段とを具備する。
【0007】
本発明では、制御手段は、楽曲データが再生されている間、その楽曲データの再生音に含まれる周波数成分の帯域の成分が減衰されるようにフィルタ処理のフィルタ特性を制御する。よって、本発明によると、楽曲データの再生中にスピーカの振動が加速度センサに伝わって歩数の正確な検出が妨げられる、という事態の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1及び第2実施形態である歩数計測装置を含む携帯端末機の電気的構成を示す図である。
【図2】同端末機の外観を示す斜視図である。
【図3】同端末機が実行するパラメータ生成処理を示す図である。
【図4】同端末機が実行するパラメータ生成処理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
<第1実施形態>
図1は、この発明の第1実施形態である歩数計測装置20を含む携帯端末機10の電気的構成を示すブロック図である。図2は、携帯端末機10の外観を示す斜視図である。図2に示すように、この携帯端末機10は、ヒンジによる開閉が可能な折り畳みタイプの筐体90を有する。筐体90の表面には、スピーカ51、ディスプレイ52、操作キー53、及びマイクロホン54が設けられている。また、筐体90には、ホストCPU11、RAM12、ROM13、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only
Memory)14、音源15、加速度センサ16、DAC(Digital to Analog Converter)17、ADC(Analog to Digital Converter)18、及び歩数計測装置20を含む制御装置60と、当該携帯端末機10における電力の供給源であるバッテリ61とが内蔵されている。
【0010】
ホストCPU11は、当該携帯端末機10の制御中枢としての役割を果たす装置である。ホストCPU11は、RAM12をワークエリアとして利用しつつ、ROM13やEEPROM14に記憶された各種プログラムを実行する。ROM13には、通話やWebブラウジングといった携帯端末機本来の機能を司るプログラムであるネイティブアプリケーションプログラムが記憶されている。EEPROM14には、インターネット上のサーバ装置(不図示)からダウンロードされた複数種類の楽曲データMDSEQ及びMDENCと、これらの再生時に起動されるプログラムである楽曲再生プログラムとが記憶されている。EEPROM14内の複数種類の楽曲データMDSEQ及びMDENCのうち楽曲データMDSEQは、MIDI(Musical Instrument Digital Interface)における音源15の制御内容を示すイベントデータと、相前後するイベントデータの実行タイミングの時間差を示すデルタタイムとを時系列順に並べたデータである。楽曲データMDENCは、楽曲の音波形をMP3(MPEG Audio Layer-3)やAAC(Advanced
Audio Coding)などの規格に従って圧縮符号化したデータである。以降の説明では、楽曲データMDSEQ及びMDENCを区別しない場合は楽曲データMDと記す。楽曲再生プログラムは、プレイヤ部111、シーケンサ部112、及びデコーダ部113の各部をホストCPU11に実現させるプログラムである。これら各部の役割は次の通りである。
【0011】
プレイヤ部111は、EEPROM14内の複数種類の楽曲データMDSEQ及びMDENCのうち操作キー53の操作によって再生が指示されたものを再生する。より詳細に説明すると、プレイヤ部111は、楽曲データMDSEQが再生対象として選択された場合、選択された楽曲データMDSEQをシーケンサ部112へ供給してその再生を指示するとともに、楽曲データMDSEQの再生テンポを決めるタイミング信号Stを同部112へ供給する。シーケンサ部112は、楽曲データMDSEQの再生が指示されると、タイミング信号Stの立ち上がり数をティック数TICKとしてカウントする。そして、シーケンサ部112は、ティック数TICKと楽曲データMDSEQにおけるデルタタイムとが一致する度にそのデルタタイムに後続するイベントデータを楽曲データMDSEQから取り出して音源15に送る、という操作を繰り返す。音源15は、シーケンサ部112から送られるイベントデータに従って生成した音サンプルをDAC17に供給する。この音サンプルはDAC17においてアナログ形式に変換された後、スピーカ51に供給される。このアナログ形式の信号によりスピーカ51が鼓動し、スピーカ51から楽曲データMDSEQの再生音が放音される。
【0012】
また、プレイヤ部111は、楽曲データMDENCが再生対象として選択された場合、選択された楽曲データMDENCをデコーダ部113へ供給してその再生を指示するとともに、楽曲データMDENCの再生テンポを決めるタイミング信号Stを同部113へ供給する。デコーダ部113は、楽曲データMDENCの再生が指示されると、その楽曲データMDENCに復号化処理を施して楽曲の音波形データを生成する。そして、デコーダ部113は、音波形データをなす一連の音サンプル列をタイミング信号Stが刻むテンポに合わせて所定時間長分ずつDAC17に供給する操作を繰り返す。この音サンプルはDAC17においてアナログ形式に変換された後、スピーカ51に供給される。このアナログ形式の信号によりスピーカ51が鼓動し、スピーカ51から楽曲データMDENCの再生音が放音される。
【0013】
図1において、歩数計測装置20は、MCU21、RAM22、及びROM23を有する。MCU21は、当該歩数計測装置20の制御中枢である。MCU21は、IC(Inter-Integrated Circuit)バスにより加速度センサ16と接続されている。MCU21は、RAM22をワークエリアとして利用しつつ、ROM23に記憶された歩数計測プログラムを実行する。歩数計測プログラムは、加速度取得部211、フィルタ部212、計数部213、ユーザインターフェース部214、及びフィルタ特性制御部215の各部をMCU21に実現させるプログラムである。これら各部の役割は次の通りである。
【0014】
加速度取得部211は、加速度センサ16に定期的にアクセスして同センサ16の出力信号SA(より具体的には、携帯端末機10の携帯者が歩行等をすることで、加速度センサ16に発生した加速度をサンプリングして得られた加速度信号SA)を取得し、この信号SAをフィルタ部212に供給する。
【0015】
フィルタ部212は、加速度信号SAに対して当該加速度信号SAにおけるフィルタリングパラメータPRMにより指定された周波数成分の帯域の成分を減衰させる3バンドのフィルタ処理を施し、フィルタ処理を経た信号SA’を計数部213に出力する。ここで、フィルタリングパラメータPRMは、フィルタ部212のフィルタ処理における第1、第2、及び第3バンドの減衰対象帯域の各々の中心周波数、ゲイン、及びQ値を指定するパラメータである。フィルタリングパラメータPRMの生成とフィルタ部212への設定はフィルタ特性制御部215によって行われる。詳しくは、後述する。
【0016】
計数部213は、フィルタ部212の出力信号SA’にピークが現れる度に当該携帯端末機10の携帯者による一歩の歩行が行われたとみなして歩数Numを計数し、この歩数NumをEEPROM14に記憶させる。ユーザインターフェース部214は、操作キー53によって歩数Numの閲覧が指示された場合、EEPROM14に記憶されている歩数Numを読み出し、この歩数Numを埋め込んだ計測結果画面をディスプレイ52に表示させる。
【0017】
フィルタ特性制御部215は、プレイヤ部111により楽曲データMDが再生されている間、楽曲データMDの再生音に含まれる周波数成分の帯域の成分が減衰されるように、フィルタ部212によるフィルタ処理のフィルタ特性を制御する。より詳細には、フィルタ特性制御部215は、EEPROM14に新たな楽曲データMDが記憶される度にパラメータ生成処理を実行し、プレイヤ部111がEEPROM14内の楽曲データMDを再生する度にパラメータ設定処理を実行する。
【0018】
パラメータ生成処理では、フィルタ特性制御部215は、次のような処理を行う。まず、フィルタ特性制御部215は、EEPROM14に新たに記憶された楽曲データMDを解釈または復号化してその楽曲データMDの再生音の音波形データMWDを生成する(図3(A)参照)。次に、フィルタ特性制御部215は、音波形データMWDにFFT(Fast Fourier Transform)処理を施してパワースペクトルRを求める(図3(B)参照)。このスペクトルRは、楽曲データMDの再生開始から終了までの全時間帯の総合的なスペクトルである。
【0019】
次に、フィルタ特性制御部215は、このパワースペクトルRから、フィルタ処理における第1バンドの中心周波数を示すデータDfP1(2バイト),第1バンドのゲインを示すデータDgP1(2バイト),第1バンドのQ値を示すデータDqP1(2バイト),第2バンドの中心周波数を示すデータDfP2(2バイト),第2バンドのゲインを示すデータDgP2(2バイト),第2バンドのQ値を示すデータDqP2(2バイト),第3バンドの中心周波数を示すデータDfP3(2バイト),第3バンドのゲインを示すデータDgP3(2バイト),及び第3バンドのQ値を示すデータDqP3(2バイト)を生成し、これらのデータDfP1,DgP1,DqP1,DfP2,DgP2,DqP2,DfP3,DgP3,及びDqP3を楽曲データMDに固有のフィルタリングパラメータPRMとしてEEPROM14に記憶する。
【0020】
より詳細に説明すると、フィルタ特性制御部215は、図3(C)に示すように、パワースペクトルRにおける最も大きな振幅を持ったピークP1の周波数f1をデータDfP1とし、ピークP1の振幅g1の符号を負にした値0(dB)−g1をデータDgP1とし、ピークP1における半値幅q1をデータDqP1とする。また、パワースペクトルRにおける2番目に大きな振幅を持ったピークP2の周波数f2をデータDfP2とし、ピークP2の振幅g2の符号を負にした値0(dB)−g2をデータDgP2とし、ピークP2における半値幅q2をデータDqP2とする。また、パワースペクトルRにおける3番目に大きな振幅を持ったピークP3の周波数f3をデータDfP3とし、ピークP3の振幅g3の符号を負にした値0(dB)−g3をデータDgP3とし、ピークP3における半値幅q3をデータDqP3とする。
【0021】
パラメータ設定処理では、フィルタ特性制御部215は、次のような処理を行う。フィルタ特性制御部215は、プレイヤ部111による楽曲データMDの再生に先立ち、再生対象である楽曲データMDと対応付けてEEPROM14に記憶されているフィルタリングパラメータPRMを読み出してRAM22に記憶し、このフィルタリングパラメータPRMをフィルタ部212に設定する。フィルタ部212は、楽曲データMDの再生開始から再生終了するまでの間のフィルタ処理では、フィルタ特性制御部215によって当該フィルタ部212に設定されたフィルタリングパラメータPRMに従ったフィルタ処理を加速度取得部211の出力信号SAに施す。
【0022】
以上説明したように、本実施形態では、フィルタ特性制御部215は、楽曲データMDが再生されている間、その楽曲データMDの再生音の周波数成分の帯域の成分が減衰されるように、フィルタ部212によるフィルタ処理のフィルタ特性を制御する。よって、本実施形態によると、楽曲データMDの再生中にスピーカ51の振動が筐体90から加速度センサ16に伝わって歩数Numの正確な検出が妨げられる、という事態の発生を防止することができる。
【0023】
また、本実施形態では、フィルタ特性制御部215は、楽曲データMDの再生に先立ち、その楽曲データMDに固有のフィルタリングパラメータPRMをフィルタ部212に設定することによりフィルタ処理のフィルタ特性を制御する。このフィルタリングパラメータPRMは、第1〜第3バンドにおける中心周波数、ゲイン、及びQ値を各々2バイトにより表す合計18バイドのデータから構成される。よって、本実施形態によると、各楽曲データMDが示す楽曲の周波数成分に応じたフィルタ部212の個別の制御を、特許文献1の技術の振動パターンよりもデータ量の小さなパラメータPRMを用いて実現することができる。
【0024】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。上記第1実施形態では、フィルタ特性制御部215は、楽曲データMDの再生に先だってフィルタ部212にフィルタリングパラメータPRMを設定することにより、楽曲データMDの再生開始から再生終了までの間におけるフィルタ処理のフィルタ特性を制御した。しかし、本実施形態では、フィルタ特性制御部215は、楽曲データMDが示す楽曲を時間軸上において分割した各再生区間毎にフィルタ部212のフィルタリングパラメータPRMを書き換え、各再生区間の再生音に含まれる各周波数成分の帯域の成分が減衰されるようにフィルタ処理のフィルタ特性を制御する。
【0025】
より詳細に説明すると、本実施形態では、フィルタ特性制御部215は、パラメータ生成処理及びパラメータ設定処理において、次のような処理を行う。パラメータ生成処理では、フィルタ特性制御部215は、EEPROM14に新たに記憶された楽曲データMDを解釈または復号化してその楽曲データMDの再生音の音波形データMWDを生成する(図4(A)参照)。次に、フィルタ特性制御部215は、音波形データMWDを時間軸上においてL分割した再生区間Z−i(i=1〜L)の各々について、当該再生区間Z−i内の音サンプル列にFFT処理を施してパワースペクトルR−iを求める(図4(B)参照)。次に、フィルタ特性制御部215は、再生区間Z−i(i=1〜L)のうち最初の再生区間Z−1のパワースペクトルR−1から、フィルタ処理における第1〜第3バンドの中心周波数、ゲイン、およびQ値を示すデータDfP1−1(2バイト)、DgP1−1(2バイト)、DqP1−1(2バイト)、DfP2−1(2バイト)、DgP2−1(2バイト)、DqP2−1(2バイト)、DfP3−1(2バイト)、DgP3−1(2バイト)、DqP3−1(2バイト)を生成し、これらのデータDfP1−1,DgP1−1,DqP1−1,DfP2−1,DgP2−1,DqP2−1,DfP3−1,DgP3−1,及びDqP3−1を再生区間Z−1のフィルタリングパラメータPRM−1とする(図4(C)参照)。
【0026】
以下、同様に、フィルタ特性制御部215は、2番目の再生区間Z−2のフィルタリングパラメータPRM−2、3番目の再生区間Z−3のフィルタリングパラメータPRM−3、…L番目の再生区間Z−LのフィルタリングパラメータPRM−Lを生成する。そして、フィルタ特性制御部215は、楽曲データMDが示す楽曲における各再生区間Z−iのフィルタリングパラメータPRM−iと各再生区間Z−iの再生時刻(音波形データMWDの先頭の音サンプルと各再生区間Z−iの先頭の音サンプルとの間の時間差)を示す時刻データDt−i(2バイト)の各対をEEPROM14に記憶させる。
【0027】
また、パラメータ設定処理では、フィルタ特性制御部215は、プレイヤ部111による楽曲データMDの再生に先立ち、再生対象である楽曲データMDと対応付けてEEPROM14に記憶されているL対のフィルタリングパラメータPRM−i及び時刻データDt−iを読み出してRAM22に記憶し、楽曲データMDの最初の再生区間Z−1のフィルタリングパラメータPRM−1をフィルタ部212に設定する。以降、フィルタ特性制御部215は、プレイヤ部111から供給されるタイミング信号Stを用いて楽曲データMDの再生開始からの時間を計時し、RAM22内の時刻データDt−iが示す再生時刻が到来する度に当該時刻データDt−iと対をなすフィルタリングパラメータPRM−iをフィルタ部212に設定する操作を繰り返す。フィルタ部212は、楽曲データMDの再生開始から再生終了までの間のフィルタ処理では、各再生区間Z−iの再生時点において当該フィルタ部212に設定されているフィルタリングパラメータPRMに従ったフィルタ処理を加速度取得部211の出力信号SAに施す。
【0028】
以上説明したように、本実施形態では、フィルタ特性制御部215は、楽曲データMDにおける各再生区間Z−iの再生と同期して、フィルタ部212に設定されるフィルタリングパラメータPRM−iを遂次書き換える。例えば、L=10とすると、楽曲データMD1つ分のフィルタリングパラメータPRM−i(i=1〜10)は時刻データDt−i(i=1〜10)も含めると200バイトとなる。本実施形態では、第1実施形態に比べるとフィルタリングパラメータPRM−i(i=1〜10)のデータ量は大きくなるものの、歩数Numの誤検出をより一層発生し難くすることができる。
【0029】
以上、この発明の第1及び第2実施形態について説明したが、この発明には他にも実施形態があり得る。例えば、以下の通りである。
(1)上記第1及び第2実施形態において、フィルタ部212によるフィルタ処理のバンド数を1つや2つにしてもよい。バンド数を少なくすることにより、フィルタ部212に設定するフィルタリングパラメータPRMのデータ量をより少なくすることができる。また、フィルタ部212によるフィルタ処理のバンド数を4つ以上にしてもよい。
【0030】
(2)上記第1及び第2実施形態では、フィルタ特性制御部215は、EEPROM14に新たな楽曲データMDが記憶される度にその楽曲データMDのフィルタリングパラメータPRMを生成してEEPROM14に記憶させ、EEPROM14内の楽曲データMDが再生される度にその楽曲データMDのフィルタリングパラメータPRMをEEPROM14から読み出してフィルタ部212に設定した。しかし、楽曲データMDの再生とその楽曲データMDについてのフィルタリングパラメータPRMの生成及び設定とを並行して行ってもよい。この場合、フィルタ特性制御部215は、楽曲データMDの再生音のスピーカ51からの放音よりも僅かな時間Tだけ前にその楽曲データMDの音波形を分析し、分析結果に応じて生成したパラメータPRMをフィルタ部212に遂次設定するようにするとよい。
【0031】
(4)上記第1及び第2実施形態では、フィルタ部212は、フィルタ特性制御部215による制御の下、楽曲データMDの再生音に含まれる周波数成分の帯域の成分を減衰させるフィルタ処理を行った。しかし、フィルタ部212は、楽曲データMDの再生音に含まれる周波数成分の帯域の成分を減衰させるフィルタ処理に加えて、当該歩数計測装置20が収められた筐体90に固有の振動周波数成分を減衰させるフィルタ処理を行ってもよい。そして、この場合、フィルタ特性制御部215は、当該歩数計測装置が収められた筐体に固有の振動周波数成分を減衰対象とするフィルタリングパラメータをフィルタに設定することによってフィルタ処理のフィルタ特性を制御するようにするとよい。
【0032】
(5)上記第1実施及び第2実施形態では、フィルタ部212は、加速度信号SAにおけるフィルタリングパラメータPRMにより指定された周波数成分を減衰させる処理をフィルタ処理として行った。しかし、フィルタ部212は、加速度信号SAにフィルタ係数列h(m=1〜M)を畳み込むFIR(Finite Impulse Response)フィルタ処理を行ってもよい。この場合において、フィルタ特性制御部215は、楽曲データMDを対象とする分析処理を行って楽曲データMDが示す楽曲の音波形の位相成分を求め、この位相成分と逆位相の位相成分をもったフィルタ係数列h(m=1〜M)をフィルタ部212に設定するようにするとよい。この実施形態によっても、スピーカ51の振動の影響による歩数Numの誤検出の発生を防止することができる。
【0033】
(6)上記第1及び第2実施形態では、フィルタ部212は、プレイヤ部111が楽曲データMDを再生していない期間においては、加速度取得部212から供給された信号SAにフィルタ処理を施すことなく計数部213に通過させていたが、この信号SAに所定のパラメータに従ったフィルタ処理を施してもよい。
【0034】
(7)上記第1及び第2実施形態では、フィルタ制御部215は、1つの楽曲データMDに対して1つのフィルタリングパラメータPRMを生成したが、EEPROM14に記憶されている複数の楽曲データMDを1つのグループとし、そのグループの楽曲データMDを纏めて分析し1つのフィルタリングパラメータPRMを生成するようにしてもよい。この場合、各グループに属する楽曲データMDを再生する際は各々に固有のフィルタリングパラメータPRMを使用するとよい。この実施形態では、特に、グループを楽曲のジャンルなどに分けるようにすることで、近似性のある楽曲データMDのフィルタリングパラメータPRMを1つにできるので、フィルタリングパラメータPRMのデータ量をより小さくすることができる。
【符号の説明】
【0035】
10…携帯端末機、11…ホストCPU、12…RAM、13…ROM、14…EEPROM、15…音源、16…加速度センサ、17…DAC、18…ADC、20…歩数計数装置、21…MCU、22…RAM、23…ROM、51…スピーカ、52…ディスプレイ、53…操作キー、54…マイクロホン、111…ホストCPU、112…シーケンサ部、113…デコーダ部、211…加速度取得部、212…フィルタ部、213…計数部、214…ユーザインターフェース部、215…フィルタ特性制御部。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
加速度を示す加速度信号を取得する取得手段と、
前記取得手段が取得した加速度信号にフィルタ処理を施すフィルタと、
前記フィルタ処理の施された加速度信号に基づいて歩数を計数する計数手段と、
楽曲を示す楽曲データが再生されている間、前記楽曲データの再生音に含まれる周波数成分の帯域の成分が減衰されるように前記フィルタ処理のフィルタ特性を制御する制御手段と
を具備することを特徴とする歩数計測装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記楽曲データが示す楽曲を時間軸上において分割した各再生区間毎に当該区間の再生音に基づく前記フィルタ特性の制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の歩数計測装置。
【請求項3】
複数種類の前記楽曲データと、各楽曲データが示す楽曲内の周波数成分を減衰対象とするフィルタリングパラメータとを対応付けて記憶した記憶手段を具備し、
前記制御手段は、
再生対象の楽曲データと対応付けて前記記憶手段に記憶されているフィルタリングパラメータを読み出し、このフィルタリングパラメータを前記フィルタに設定することによって前記フィルタ処理のフィルタ特性を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の歩数計測装置。
【請求項4】
前記制御手段は、
再生対象の楽曲データが示す楽曲の周波数成分を解析し、この周波数成分を減衰対象とするフィルタリングパラメータを生成し、このフィルタリングパラメータを前記フィルタに設定することによって前記フィルタ処理のフィルタ特性を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の歩数計測装置。
【請求項5】
前記制御手段は、
前記楽曲データの再生音に含まれる周波数成分の帯域の成分に加えて、当該歩数計測装置が収められた筐体に固有の振動周波数成分を減衰対象とするフィルタリングパラメータを前記フィルタに設定することによって前記フィルタ処理のフィルタ特性を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の歩数計測装置。
【請求項6】
コンピュータに、
加速度を示す加速度信号を取得する取得手段と、
前記取得手段が取得した加速度信号にフィルタ処理を施すフィルタと、
前記フィルタ処理の施された加速度信号に基づいて歩数を計数する計数手段と、
楽曲を示す楽曲データが再生されている間、前記楽曲データの再生音に含まれる周波数成分の帯域の成分が減衰されるように前記フィルタ処理のフィルタ特性を制御する制御手段と
を実現させるプログラム。
【請求項7】
楽曲を示す楽曲データを再生し再生音を放音する再生手段と、
加速度を検出する加速度検出手段と、
歩数計数部とを具備する携帯端末機であって、
前記歩数計測部は、
前記加速度検出手段より加速度を示す加速度信号を取得する取得手段と、
前記取得手段が取得した加速度信号にフィルタ処理を施すフィルタと、
前記フィルタ処理の施された加速度信号に基づいて歩数を計数する計数手段と、
前記再生手段において前記楽曲データが再生されている間、前記楽曲データの再生音に含まれる周波数成分の帯域の成分が減衰されるように前記フィルタ処理のフィルタ特性を制御する制御手段と
を具備することを特徴とする携帯端末機。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−213029(P2012−213029A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77496(P2011−77496)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】