説明

歩数計

【課題】鉛直下向きの加速度を精密に把握することで、歩数の計数精度を向上させた歩数計を提供することにある。
【解決手段】演算処理装置2の加速度検出手段20は3軸加速度センサ3の出力により加速度を検出し、方向検出手段21は加速度センサの向きを検出し、演算制御手段の歩数計算機能は、方向検出手段21が検出する鉛直下向きに対応した加速度検出手段20の検出加速度に基づいて歩数計算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩数計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ベルトに装着せず、ポケット等にいれても測定できる歩数計が提供されている(例えば特許文献1)。この歩数計は複数の加速度センサと、角度検出センサとの組み合わせにより、角度センサが検出する本体の向きに対応した加速度センサの出力信号を選択する方法や、複数の加速度センサの内、加速度センサの振動の大きい振動出力を取り出す方法が採用されている。
【特許文献1】特開平9−223214号公報(段落番号0018,0038)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上述の特許文献1に開示されている歩数計の構成では、歩数計の向きによって同じ加速度を与えた場合でも加速度センサの出力値が異なってくるため、選択された方向に対応する加速度センサの出力値が定められた値以上となった数を歩数と計数するのみでは、精度の良い計数ができないという問題があった。
【0004】
本発明は、上述の問題点に鑑みて為されたもので、その目的とするところは、鉛直下向きの加速度を精密に把握することで、歩数の計数精度を向上させた歩数計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するために、請求項1の発明では、3軸加速度センサと、3軸加速度センサの出力により、加速度を検出する加速度検出手段及び3軸加速度センサの向きを検出する方向検出手段と、該方向検出手段が検出する鉛直下向きに対応した加速度検出手段の検出加速度に基づいて歩数計算する歩数計算手段とを備えていることを特徴とする。
【0006】
請求項1の発明によれば、歩行時おいて一番変化が激しい鉛直下向き方向の加速度を用いて歩数を計算することで、精度良い歩数を得ることができる。
【0007】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、被測定対象者の進行方向の加速度値の大きさから、歩行中か否かの判断を行い、歩行中と判断されているときに歩数計算手段による歩数計算を決定する手段を備えていることを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明によれば、電車や車に搭乗しているとき等において、鉛直下向きの加速度を変動があっても、歩数計算を行わないため、歩行による歩数を正確に計算することができる。
【0009】
請求項3の発明では、請求項1又は2の発明において、一定歩数の検出時間より歩行速度を算出する歩行速度計測手段を有していることを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明によれば、歩数以外にも歩行速度を計測することができる。
【0011】
請求項4の発明では、請求項1乃至3の何れかの発明において、被装着者の進行方向の加速度値の大きさから、歩行中か否かの判断を行い、非歩行と判断された場合に3軸加速度センサの出力を前記加速度検出手段がサンプリングする間隔を歩行中のサンプリングの間隔より大きくする手段を備えていることを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明によれば、非歩行中における3軸加速度センサの出力のサンプリング間隔が長くなるため、その間の3軸加速度センサによる消費電力を低減することができ、しかも歩数計算手段の計算処理の負担も少なくなって消費電力も低減し、結果全体の消費電力が少なくなり、電池電源を使用する場合には電池消耗が少なく、しかも歩行中ではサンプリング間隔が非歩行中に比べて短くなるため、歩数算出の精度を落とすこともない。
【0013】
請求項5の発明では、請求項1乃至4の発明において、加速度検出手段が検出する加速度の大きさと、方向検出手段が検出する3軸加速度センサの向きとに基づいた操作情報を生成するユーザーインターフェースを備えていることを特徴とする。
【0014】
請求項5の発明によれば、歩数計を手で振ったりすることで、操作入力ができ、そのため操作釦を用いる操作入力部を設ける必要もなく、また操作釦の大きさの限界から制限されていた歩数計の小型化が可能となり、しかも3軸加速度センサを操作情報の信号源として兼用できるため、コストも高くならない。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、歩行時おいて一番変化が激しい鉛直下向き方向の加速度を用いて歩数を計算することで、精度良い歩数を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下本発明を実施形態により説明する。
【0017】
図1は 以下本発明を実施形態により説明する。
(実施形態1)
本実施形態は、3軸加速度センサ1と、マイクロコンピュータからなる演算処理装置2と、電池電源3と、歩数等を含む情報を表示するための液晶表示器のような表示器4と、設定や操作のための押釦群からなる操作入力部5とから構成され、歩数計本体Hの内部に3軸加速度センサ1と、演算処理装置2と、電池電源3とを内蔵するとともに、表示器4を表示面が外部に臨むように歩数計本体Hに装着し、操作入力部5を押釦が外部から操作可能なように歩数計本体Hに装着してある。
【0018】
演算処理装置2は、3軸加速度センサ1からの出力を所定間隔でサンプリングするとともに、サンプリング毎に3軸の加速度を検出する加速度検出手段20及び3軸加速度センサ1の出力から方向検出を行う方向検出手段21と、これら検出手段20,21の検出情報に基づき、鉛直方向の加速度を用いて歩数を算出する歩数計算手段の機能と、計算される歩数をリアルタイムに表示器4に表示させる制御機能と、操作入力部5の操作情報の処理を行う機能と、上述のサンプリングの周期を設定する機能とを有する演算制御手段22とをプログラムにより実現している。
【0019】
次に本実施形態の歩数算出の基本的な原理について簡単に説明する。
【0020】
まず歩数計本体Hを被装着者が装着携行したときに、内蔵している3軸加速度センサ1の鉛直下向きは装着状態に変わる。例えば今図2で示すように3軸加速度センサ1が傾いて装着されている場合、3軸加速度センサ1は鉛直下向きgに対してx,y,zの各軸の方向が共にずれている。尚図2では各ベクトル表現として矢印(→)を上部に付して示している。
【0021】
ここで3軸加速度センサ1が各軸に対してベクトルax,ay,azの加速度を出力しているとき、各ベクトルax,ay,azの加速度の変化分(加速度値)がある予め設定してある閾値よりも小さい場合、被装着者は静止していると考えられ、そのときの合成ベクトル(az+ay+az)は鉛直下向きgで大きさ1Gになるはずである。尚Gは重力加速度である。このときの各ベクトルax,ay,azと合成ベクトル(ax+ay+az)との角度を覚えておくことによって鉛直下向きgが認識できる。
【0022】
而して、本実施形態では、3軸加速度センサ1の出力に基づいて方向検出手段21が、各ベクトルax,ay,azと合成ベクトル(ax+ay+az)との角度に基づいて鉛直下向きgを検出し、この検出結果を演算制御手段2に送るようになっている。
【0023】
ここで一般に歩行時における変化が一番激しいのは鉛直方向の加速度であるので、演算制御手段22は、加速度検出手段20の検出加速度から方向検出手段2の検出情報に基づいて鉛直下向き9の加速度のみを基に歩数算出を行う。つまり鉛直下向きgの加速度値と予め設定している閾値とを比較して閾値を加速度値が越える度に1歩と算出して積算するのである。そして表示器5を制御して刻々変化する積算歩数を現在時の歩数として表示するのである。
【0024】
尚操作入力部5は、被装着者の個人情報を入力するための操作釦を備え、年令、体重、性別などの個人情報を、操作釦のインクリメント或いはデクリメントの操作情報により演算制御手段22へ与えるようになっており、これら個人情報は演算処理装置2の内蔵メモリ(図示せず)に格納され、適宜利用されるようになっている。
【0025】
(実施形態2)
ところで、被装着者が電車や自動車に搭乗しているとき、歩行しなくても、鉛直下向きgの加速度値が閾値を越えることがあり、そのため歩数として算出されてしまい、歩数の算出精度が低下する恐れがある。
【0026】
そこで本実施形態では、鉛直下向きgの次に歩行時にかかる加速度変化が大きい進行方向の加速度に注目し、この加速度値が歩行中であることを示す閾値とを比較して歩行中であるか否かを検出して被歩行中には歩数算出を行わないと決定を行う歩行検出機能22aを図3に示すように演算処理手段22の機能として持たせた点に特徴がある。
【0027】
つまり図4に示すように3軸加速度センサ1が出力する加速度値のベクトルax,ay,axは鉛直方向成分(ax+ay+az)gと進行方向成分(ax+ay+az)pに分けられ、この進行方向成分(ax+ay+az)pの変動(加速度値)が或る一定値よりも小さい場合、被装着者は歩行していないと考えられる。
【0028】
而して本実施形態では、演算制御手段22において、上述の進行方向成分(ax+ay+az)pの加速度値を抽出し、この進行方向成分(ax+ay+az)pの加速度値と前記一定値に対応した閾値とを比較して、加速度値が閾値未満の場合には歩数算出を行わないと決定する歩行検出機能22aして備え、それにより被装着者が電車や車に搭乗時などにおいて、鉛直下向きgの加速度値が歩数算出の閾値を越える場合があっても、それが歩数に影響されなくなり、正確な歩数算出ができるのである。
【0029】
本実施形態では、上述の進行方向成分抽出を利用して歩行と判断されたときに、進行方向成分(ax+ay+az)pの加速度値を時間で積分することで歩行速度を算出する歩行速度計測機能歩数計の機能として付加することもできる。
【0030】
つまり歩行検出機能22aが歩行中を検出しているときに、演算処理手段22は歩数算出と併行して歩行速度を算出し、その算出結果に基づいて現時点の積算歩数と歩行速度を表示器5で表示させるのである。
【0031】
図5のフローチャートは歩行速度の計測を行う場合の演算制御手段22の動作フローチャートを示しており、ステップS1は加速度検出手段20から出力される加速度値の入力ステップ、ステップS2は歩行検出機能22aが進行方向成分の抽出を行うステップ、次のステップS3は進行方向成分を用いて歩行中か否かの判定ステップ、ステップS4は歩行中判断されたときに演算処理手段22が歩数算出とともに歩行速度算出を行うステップである。
【0032】
また歩行検出機能22aの歩行検出を利用して、歩行中における3軸加速度センサ1から出力を取り込むサンプリングの間隔を歩行中と非歩行中とで変えるようにする機能を
持たせても良い。
【0033】
つまり、歩行周期を2〜3Hzをした場合、少なくとも歩行中では6Hz以上のサンプリング周期(サンプリング間隔)で加速度値のサンプリングを行わなければならないが、非歩行の場合には特に歩行周期に対応させたサンプリング周期である必要がなく、特にサンプリング間隔が短いと、3軸加速度センサ1への電源供給や、演算処理装置2で演算量の増加のため、電力を多く消費する。
【0034】
そこで、歩行検出機能22aが歩行中であると検出していないときには、演算処理装置2において、両検出手段20,21が3軸加速度センサ1から出力をサンプリングする間隔を長くするように設定し、つまりサンプリング周期を長くすることで、電力消費が押さえることができるのである。
【0035】
図6はサンプリング周期の切り換えに対応したフローチャートを示し、歩行中が検出されているときには予め設定されている基準のサンプリング周期T1で加速度値の入力をステップS1で行い、非歩行である場合にはサンプリング周期T1より長い周期T2で加速度値の入力を行うのである。尚ステップS2は歩行検出機能22aが進行歩行成分抽出を行うステップ、ステップS3は歩行中か否かの判定を行うステップ、ステップS4はサンプリング周期T1の設定ステップ、S5はサンプリング周期T2の設定ステップである。
(実施形態3)
実施形態1,2には被装着者の個人情報を入力するための操作釦を備え、年令、体重、性別などの個人情報を、操作釦のインクリメント或いはデクリメントの操作情報により演算制御手段22へ与える操作入力部5を備えているが、歩数計の小型化などにより操作し難いという課題がある。
【0036】
そこで、本実施形態では3軸加速度センサ1の出力を利用し、歩数計本体Hを傾けるか、或る一定の方向に振るなどの操作を両検出手段20,22の検出出力から判定する機能を演算制御手段22に備えるとともに、演算処理装置2の内蔵メモリに各操作と操作入力情報とを対応付けたテーブルを格納し、演算制御手段22では判定した操作に対応する操作入力情報をテーブルから読み出し、その操作情報に基づいて処理を行うようにしたものである。尚回路構成は実施形態1,2の何れでも良いのでここでは省略する。
【0037】
而して本実施形態では、歩数計本体Hを振ったり、傾けたりすることで、押釦操作と同様にインクリメント、デクリメントを表現することが可能になり、所定の情報入力ができることになる。そのため押釦からなる操作入力部5を実装せずにすむので低コスト化につながる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施形態1の回路構成図である。
【図2】実施形態1の原理説明図である。
【図3】実施形態2の回路構成図である。
【図4】実施形態2の原理説明図である。
【図5】実施形態2の歩行検出機能を利用した歩行速度計測のフローチャートである。
【図6】実施形態2の歩行検出機能を利用したサンプリング周期の切り換え処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0039】
1 3軸加速度センサ
2 演算処理装置
20 加速度検出手段
21 方向検出手段
22 演算制御手段
3 電池電源
4 表示器
5 操作入力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3軸加速度センサと、3軸加速度センサの出力により、加速度を検出する加速度検出手段及び3軸加速度センサの向きを検出する方向検出手段と、該方向検出手段が検出する鉛直下向きに対応した加速度検出手段の検出加速度に基づいて歩数計算する歩数計算手段とを備えていることを特徴とする歩数計。
【請求項2】
被装着者の進行方向の加速度値の大きさから、歩行中か否かの判断を行い、歩行中と判断されているときに歩数計算手段による歩数計算を決定する手段を備えていることを特徴とする請求項1記載の歩数計。
【請求項3】
一定歩数の検出時間より歩行速度を算出する歩行速度計測手段を有していることを特徴とする請求項1又は2記載の歩数計。
【請求項4】
被装着者の進行方向の加速度値の大きさから、歩行中か否かの判断を行い、非歩行と判断された場合に3軸加速度センサの出力を前記加速度検出手段がサンプリングする間隔を歩行中のサンプリングの間隔より大きくする手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか記載の歩数計。
【請求項5】
加速度検出手段が検出する加速度の大きさと、方向検出手段が検出する3軸加速度センサの向きとに基づいた操作情報を生成するユーザーインターフェースを備えていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか記載の歩数計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−293861(P2006−293861A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−116285(P2005−116285)
【出願日】平成17年4月13日(2005.4.13)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】