歩行型移植機
【課題】楽に前輪を大きく持ち上げることできるようにすること。
【解決手段】遊動輪としての左右一対の前輪と駆動輪としての左右一対の後輪とを有する機体上に、前記駆動輪を駆動する原動機部と、原動機部により駆動されて圃場に苗株を移植する移植部を設け、機体の後端部には後方へ向けて伸延する操作ハンドルの前端部を連結した。操作ハンドルは、少なくとも前後方向に伸延する左右一対のハンドル形成体を有し、各ハンドル形成体は、前部側である固定側部の先端部に連結部を介して後部側である可動側部の基端部を連結して形成し、連結部を介して可動側部の先端部を通常操作位置と通常操作位置から上方へ跳ね上げた跳上操作位置との間で位置変更可能となした。跳上操作位置では、可動側部の先端部を把持して左右一対の後輪を支点に可動側部を後下方に回動させることで左右一対の前輪を持ち上げ可能となした。
【解決手段】遊動輪としての左右一対の前輪と駆動輪としての左右一対の後輪とを有する機体上に、前記駆動輪を駆動する原動機部と、原動機部により駆動されて圃場に苗株を移植する移植部を設け、機体の後端部には後方へ向けて伸延する操作ハンドルの前端部を連結した。操作ハンドルは、少なくとも前後方向に伸延する左右一対のハンドル形成体を有し、各ハンドル形成体は、前部側である固定側部の先端部に連結部を介して後部側である可動側部の基端部を連結して形成し、連結部を介して可動側部の先端部を通常操作位置と通常操作位置から上方へ跳ね上げた跳上操作位置との間で位置変更可能となした。跳上操作位置では、可動側部の先端部を把持して左右一対の後輪を支点に可動側部を後下方に回動させることで左右一対の前輪を持ち上げ可能となした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場に成形された畝を跨いで走行しながら畝上に苗株を移植する歩行型移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歩行型移植機の一形態として、特許文献1に開示されたものがある。すなわち、特許文献1には、遊動輪としての左右一対の前輪と駆動輪としての左右一対の後輪とを有する機体フレーム上に、前記駆動輪を駆動する原動機部と、原動機部により駆動されて圃場に苗株を移植する移植部を設け、機体フレームの後端部には後方へ向けて伸延する操作ハンドルの前端部を連結した歩行型移植機が開示されている。そして、歩行型移植機では、移植部に設けた苗載台の下方かつ後輪の後方に空間部を形成している。
【0003】
このように構成することで、圃場の畝を跨ぐようにして(左右一対の前・後車輪間に畝が位置する状態)機体を走行させながら移植部により畝上に苗株を移植するようにしている。そして、他の畝に機体を移動させる際には、操作ハンドルを押し下げることで、後輪を支点とするてこの原理で前輪を持ち上げて、前輪を畝と干渉させないようにして機体を旋回させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−10701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、前記した歩行型移植機では、畝の高さが高く形成されている等の事情で、前輪を大きく持ち上げる必要性がある場合には、操作ハンドルを大きく押し下げる必要性がある。この場合、操作ハンドルを大きく押し下げ作業者の姿勢は必然的に低姿勢となり、かかる低姿勢で操作ハンドルを操作して機体を旋回させなくてはならない。そのため、特に身長の高い作業者にとっては身体的疲労が大きく、機体の他の畝への移動作業が煩雑になっていた。
【0006】
そこで、本発明は、楽に前輪を大きく持ち上げることできる歩行型移植機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明に係る歩行型移植機は、遊動輪としての左右一対の前輪と駆動輪としての左右一対の後輪とを有する機体上に、前記駆動輪を駆動する原動機部と、原動機部により駆動されて圃場に苗株を移植する移植部を設け、機体の後端部には後方へ向けて伸延する操作ハンドルの前端部を連結した歩行型移植機において、操作ハンドルは、少なくとも前後方向に伸延する左右一対のハンドル形成体を有し、各ハンドル形成体は、前部側である固定側部の先端部に連結部を介して後部側である可動側部の基端部を連結して形成し、連結部を介して可動側部の先端部を通常操作位置と通常操作位置から上方へ跳ね上げた跳上操作位置との間で位置変更可能となして、跳ね上げ操作位置では、可動側部の先端部を把持して左右一対の後輪を支点に可動側部を後下方に回動させることで左右一対の前輪を持ち上げ可能となしたことを特徴とする。
【0008】
かかる歩行型移植機では、移植作業を行うに際して畝を跨ぐように機体を畝上に配置する際には、操作ハンドルの可動側部を通常操作位置から跳上操作位置に位置変更する。そして、左右一対の後輪を支点とするとともに、跳上操作位置にて把持した可動側部の先端部を力点として、操作ハンドルを後下方に回動させる。そうすることで、てこの原理により左右一対の後輪を中心にして作用点側となる左右一対の前輪を持ち上げることができる。さらに、かかる状態にて、後輪を中心に機体を旋回させて走行させることで、畝を跨ぐように機体を畝上に配置することができる。また、移植作業をしていた畝から他の畝に機体を楽に移動させることができる。
【0009】
この際、作業者は、跳上操作位置にある可動側部の先端部を把持したまま操作ハンドルを介して前進する機体に抗することで、ないしは、操作ハンドルに後下方へ体重を凭れ掛けるようにして引き下げることで、後輪を中心に操作ハンドルを楽に下方へ回動させることができる。つまり、従来のように操作ハンドルを押し下げる場合に比して、楽に操作ハンドルを下方へ回動(力のモーメントを作用)させることができる。そのため、肉体的に非力な婦女子や老人であっても楽に操作ハンドルを下方へ回動させることができて、前輪の持ち上げ操作をすることができる。しかも、操作ハンドルは従来に比して低位置まで回動させなくても、前輪を大きく持ち上げることができるため、作業者、特に身長の高い作業者の労力と疲労を低減させることができる。
【0010】
また、畝高さに適応させて機体の高さ(操作ハンドル高さ)が変わっても、跳上操作位置を複数の位置に変更可能とすることで、作業者にとって最適な跳上操作位置を選択することができる。つまり、作業者の体格に適応させることができる。
【0011】
また、操作ハンドルは、後部側である可動側部を跳ね上げ操作位置まで跳ね上げ変更可能として、前部側である固定側部は固定状態のままとしているため、固定側部の上方に移植部に苗株を供給する苗株供給部等を配置するための空間を固定的に確保することができて、苗株供給部等に可動側部を干渉させることなく位置変更することができる。
【0012】
請求項2記載の発明に係る歩行型移植機は、請求項1記載の発明に係る歩行型移植機であって、各前記ハンドル形成体の連結部には、可動側部を通常操作位置と跳上操作位置とでそれぞれ固定・解除する固定・解除機構を設けると共に、可動側部の先端部近傍には、固定・解除機構を操作する操作機構を設けたことを特徴とする。
【0013】
かかる歩行型移植機では、可動側部を通常操作位置と跳上操作位置とに位置変更する際には、操作機構を適宜操作して固定・解除機構を固定作動ないしは解除作動させることで、可動側部を位置変更することができる。
【0014】
この際、可動側部の先端部を把持して可動側部の位置変更を行うが、操作機構を可動側部の先端部近傍に設けているため、可動側部の位置変更操作と操作機構の操作を楽にかつ堅実に行うことができる。
【0015】
また、各前記ハンドル形成体の連結部に固定・解除機構を設けているため、両方の固定・解除機構によりこれらに作用する荷重を分担することができる。そのため、両方の固定・解除機構の剛性を低減してコンパクト化を図ることができる。
【0016】
請求項3記載の発明に係る歩行型移植機は、請求項2記載の発明に係る歩行型移植機であって、前記操作機構の解除操作は、可動側部の先端部の把持操作と同時に可能となしたことを特徴とする。
【0017】
かかる歩行型移植機では、操作機構の解除操作を可動側部の先端部の把持操作と同時に行うことができるようにしているため、両操作を簡便かつ堅実に行うことができる。
【0018】
請求項4記載の発明に係る歩行型移植機は、請求項3記載の発明に係る歩行型移植機であって、前記操作機構は、可動側部の内方に配置したことを特徴とする。
【0019】
かかる歩行型移植機では、操作機構を可動側部の内方に配置しているため、操作機構に作業者の体等が誤って又は不慮に当たって作動するという不具合を回避することができて、安全性を確保することができる。
【0020】
請求項5記載の発明に係る歩行型移植機は、請求項4記載の発明に係る歩行型移植機であって、各前記ハンドル形成体の連結部に設けた固定・解除機構は、単一の操作機構により操作可能となしたことを特徴とする。
【0021】
かかる歩行型移植機では、単一の操作機構により各前記ハンドル形成体の連結部に設けた固定・解除機構を操作することができるため、適宜いずれか一方の手で操作機構を操作することで堅実に両方の固定・解除機構を固定作動ないしは解除作動させることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、次の効果を奏する。すなわち、本発明では、てこの原理を利用して前輪を大きくしかも楽に持ち上げることができるため、畝の高さが高い場合でも、機体が畝を跨いだ移植作業状態から機体が畝を跨がない非移植作業状態に楽に移行させることができる。その結果、作業者の労力と疲労の低減化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る歩行型移植機の側面説明図。
【図2】第1実施形態としての操作ハンドルの側面図。
【図3】第1実施形態としての操作ハンドルの平面説明図。
【図4】第1実施形態としての操作ハンドルの連結部の一部切欠側面図(通常操作位置)。
【図5】図4のI-I線断面図。
【図6】第1実施形態としての操作ハンドルの連結部の一部切欠側面図(跳上操作位置)。
【図7】前輪を持ち上げ操作する前の歩行型移植機の側面説明図。
【図8】前輪を持ち上げ操作した後の歩行型移植機の側面説明図。
【図9】第2実施形態としての操作ハンドルの側面図。
【図10】第2実施形態としての操作ハンドルの平面説明図。
【図11】第2実施形態としての操作ハンドルの姿勢変更操作手順の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
[歩行型移植機の全体説明]
図1に示す1は本実施形態に係る歩行型移植機であり、歩行型移植機1は、前後方向に伸延する機体フレーム2の前端部に前輪支持体3,3を介して左右一対の前輪4,4を取り付ける一方、機体フレーム2の後端部に後輪伝動ケース5,5を介して左右一対の後輪6,6を取り付けている。そして、前輪支持体3,3と後輪伝動ケース5,5に昇降連動機構7を介設して、昇降連動機構7により前輪支持体3,3及び後輪伝動ケース5,5の下端側を上下に揺動させて機体フレーム2を昇降させることで、地上高を調節可能としている。
【0025】
機体フレーム2上には、前部に原動機部としてのエンジン8を搭載し、その後方にミッション部9を配設して、連動ケース10を介してエンジン8とミッション部9を連動連結している。
【0026】
ミッション部9の後方には、ミッション部9と連動連結して移植部11を配設している。移植部11には、苗株を圃場Gの畝Uに移植する移植爪12と、苗株を受ける苗株受け位置と苗株を畝Uに移植する位置との間で移植爪12を昇降させる移植爪昇降機構13を設けている。
【0027】
このように、機体フレーム2上にエンジン8とミッション部9と連動ケース10と移植部11を配設して機体を構成している。機体の後端部である移植部11の上部には、後方へ向けて伸延する操作ハンドル14の前端部(基端部)を連結し、操作ハンドル14の前部に苗株供給部15を載設している。苗株供給部15は、前記した苗受け位置にある移植爪12に苗株を供給可能としている。
【0028】
[第1実施形態としての操作ハンドルの説明]
次に、第1実施形態としての操作ハンドル14について図2〜図6を参照しながら説明する。すなわち、操作ハンドル14は、図2〜図6に示すように、前後方向に直状に伸延する円筒状の左右一対のハンドル形成体20,20の後端部間に、左右方向に伸延する円筒状のハンドル連結形成体21を介設して、図3に示すように平面視略U字状に形成している。各ハンドル形成体20,20は、前部側である固定側部22,22の先端部(後端部)に連結部23,23を介して後部側である可動側部24,24の基端部(前端部)を連結して形成している。ここで、ハンドル連結形成体21は可動側部24,24の後端部間に介設されていることになる。
【0029】
そして、図1,図7及び図8に示すように、連結部23,23を介して可動側部24,24の先端部を通常操作位置(a)と通常操作位置(a)から上方へ跳ね上げた跳上操作位置(b)との間で位置変更可能となしている。そうすることで、跳ね上げ操作位置(b)では、可動側部24,24の先端部(後端部)ないしはハンドル連結形成体21を把持して左右一対の後輪6,6を支点に可動側部24,24を後下方に回動させることで、左右一対の前輪4,4を持ち上げ可能となしている。
【0030】
各ハンドル形成体20,20の連結部23,23には、図2及ぶ図3に示すように、可動側部24,24を通常操作位置(a)と跳上操作位置(b)とでそれぞれ固定・解除する固定・解除機構25,25を設けると共に、可動側部24,24の先端部近傍には、固定・解除機構25,25を操作する単一の操作機構26を可動側部24,24の内方に配置して設けている。そして、操作機構26の解除操作は、可動側部24,24の先端部の把持操作と同時に可能となしている。
【0031】
以下に、連結部23と固定・解除機構25と操作機構26の構成を、図4〜図6を参照しながら具体的に説明する。なお、左右一対の連結部23,23及び固定・解除機構25,25は、それぞれ左右両方が同一構成であることから、一方の連結部23及び固定・解除機構25について説明する。
【0032】
すなわち、連結部23は、図4〜図6に示すように、固定側部22の先端部(後端部)に連結体27を固設し、連結体27に枢支体28を設けて、枢支体28に可動側部24の基端部(前端部)を枢支している。
【0033】
連結体27は、略水平に配置した四角形板状の上面形成片30と、上面形成片30の前端縁部より後下方へ湾曲させて垂下した前面形成片31と、前面形成片31の左右側縁部及び上面形成片30の左右側縁部に連設した左・右側面形成片32,32とから形成している。
【0034】
前面形成片31は、後述する枢支ピン36,36の軸線を中心とする前方へ凸状の円弧形状に形成して、円弧方向に間隔を開けて複数(本実施形態では4個)の調整孔33を形成している。そして、固定側部22の先端部(後端部)に前面形成片31の前面上部を連設している。
【0035】
枢支体28は、左・右側面形成片32,32の外側面後部に、上下方向に伸延する左右一対の枢支片34,34を重合状態に面接触させ、同状態にて左・右側面形成片32,32にボルト35,35を介して枢支片34,34の下部を連結している。そして、枢支片34,34の上部には左・右側面形成片32,32側に軸線を向けて枢支ピン36,36を突設するとともに、左・右側面形成片32,32に形成した挿通孔37,37中に挿通させている。ここで、枢支ピン36,36の先端間には、後述する進退ピン案内筒片40を枢支するとともに、進退ピン41を進退自在に配置するための一定間隔を保持させている。
【0036】
固定・解除機構25は、円筒状に形成した可動側部24の基端部(前端部)内に、円筒状に形成した進退ピン案内筒片40を介して進退ピン41をその軸線方向(本実施例では前後方向)に進退自在に配置している。そして、進退ピン41の基端(後端)を押圧スプリング42により進出方向に弾性付勢している。43は進退ピン41の基端(後端)に連設したスプリング当片、44はスプリング止めピンである。
【0037】
進退ピン案内筒片40の後部には、左右方向に貫通する横貫通孔45を形成して、横貫通孔45中に前記した枢支ピン36,36の先端部を挿通している。つまり、枢支ピン36,36に進退ピン案内筒片40を枢支して、枢支ピン36,36を中心に進退ピン案内筒片40の先端側(前端側)を上下揺動自在となしている。したがって、上下揺動自在となした進退ピン案内筒片40を介して進退ピン41の先端側(前端側)を上下揺動させて、いずれかの調整孔33に進退ピン41の先端(前端)を抜き差し自在に挿入させることで、可動側部24を所望の姿勢に固定(ロック)することができる。
【0038】
操作機構26は、可動側部24を所望の姿勢に変更するために、進退ピン41を進退作動操作するものである。すなわち、操作機構26は、図2〜図4及び図6に示すように、左右側の進退ピン41,41の基端部(後端部)に連結したピン連結体46,46と、両ピン連結体46,46間に介設した操作体47とから形成している。
【0039】
ピン連結体46は、前後方向に伸延する上・下連結片48,49と、両上・下連結片48,49の後端間に介設した後連結片50とから側面視コ字状に形成している。そして、可動側部24の基端部(前端部)の直上方に上連結片48の先端部(前端部)を配置する一方、可動側部24の基端部(前端部)の直下方に下連結片49の先端部(前端部)を配置している。また、上・下連結片48,49の先端部(前端部)間には、ピン孔51,52を介して上下方向に軸線を向けて伸延する連結ピン53を可動側部24の基端部(前端部)に貫通状態に挿通している。54は連結ピン53の先端部に取り付けた抜け止めピンである。
【0040】
ここで、可動側部24の基端部(前端部)には、その軸線方向に伸延するガイド長孔55,55を上下方向に開口させて形成するとともに、進退ピン41の基端部(後端部)に上下方向に貫通する縦貫通孔56を形成している。そして、ガイド長孔55,55及び縦貫通孔56を介して可動側部24の基端部(前端部)に連結ピン53を挿通している。
【0041】
したがって、ピン連結体46は、連結ピン53を介して可動側部24の基端部(前端部)に前後摺動自在に連結されるとともに、進退ピン41に連動連結されることになる。その結果、ピン連結体46を後方に摺動移動させることで、押圧スプリング42により進出方向に弾性付勢されている進退ピン41を押圧スプリング42の弾性付勢に抗して後退摺動させて、挿入している調整孔33から進退ピン41の先端(前端)を抜き取ることができる。つまり、可動側部24の固定を解除することができる。また、可動側部24を上下方向所望の位置に回動させて、ピン連結体46の後方への摺動移動を解除することで、押圧スプリング42の弾性付勢力により進退ピン41を進出させて、符合する調整孔33に進退ピン41の先端を挿入させることができる。つまり、可動側部24を所望の姿勢に固定することができる。
【0042】
操作体47は、図3に示すように、左右方向に伸延する棒状片57を可動側部24の先端部の内方に沿わせて平面視略U字状に湾曲させて形成するとともに、両ピン連結体46,46の後連結片50,50に棒状片57の両端を連設している。そして、棒状片57は、可動側部24の先端部と一緒に片方の手で把持することができるように、可動側部24の先端部の内方に隣接させて配置している。特に、棒状片57の中途部と可動側部24の先端部(後端部)を形成するハンドル連結形成体21は、左右方向に直状かつ平行隣接状態に伸延させて形成して、棒状片57の中途部とハンドル連結形成体21を一緒に片方の手で楽に把持することができるようにしている。図3中、60はクラッチレバー、61はクラッチレバーガイド体、62は機体の昇降操作や移植部11のクラッチ操作をするための操作レバー、63は操作レバーガイド体である。
【0043】
したがって、棒状片57と可動側部24の先端部を一緒に片方の手で把持する、つまり、図3に一点鎖線で示すように、棒状片57を可動側部24の先端部側へ近接させる操作をすると、両ピン連結体46,46を後方に摺動移動させることができて、前記したように可動側部24の固定を解除することができる。また、可動側部24を所望の姿勢に変更して、棒状片57を可動側部24の先端部側へ近接させる操作(把持操作)を解除すると、前記したように押圧スプリング42の弾性付勢力により進退ピン41の先端を符合する調整孔33に挿入させることができて、可動側部24を所望の姿勢に固定することができる。ここで、可動側部24の姿勢変更は、いずれかの調整孔33を選択することで、作業者の体格等に応じて通常操作位置(a)ないしは跳上操作位置(b)を適宜選定することができる。
【0044】
本実施形態は上記のように構成しているものであり、例えば、移植作業を行った畝Uから機体を他の畝Uへ移動させる作業を行う際には、まず、ハンドル連結形成体21(ないしは可動側部24,24の先端部(後端部))と棒状片57を一緒に片方の手で把持することで、可動側部24,24の固定を解除する。そして、操作ハンドル14の可動側部24,24を所望の跳上姿勢に変更して、棒状片57の把持操作を解除することで、押圧スプリング42の弾性付勢力により進退ピン41の先端を符合する調整孔33に挿入させて、可動側部24,24を所望の跳上姿勢に固定する。つまり、図7に実線で示す通常操作位置(a)から想像線で示す跳上操作位置(b)に位置変更する。
【0045】
続いて、操作ハンドル14を介して前進する機体に抗することで、ないしは、操作ハンドル14に後下方へ体重を凭れ掛けるようにして引き下げることで、図8に示すように、左右一対の後輪6,6を支点とするとともに、跳上操作位置(b)にて把持したハンドル連結形成体21(ないしは可動側部24,24の先端部(後端部))を力点として、操作ハンドル14を楽に下方に回動(力のモーメントを作用)させることができる。そうすることで、てこの原理により左右一対の後輪6,6を中心にして作用点側となる左右一対の前輪4,4を簡単にかつ楽に持ち上げることができる。さらには、かかる状態にて、機体を旋回させて後輪6,6だけの二輪走行をさせることで、機体を小旋回移動させることができる。また、機体を小旋回移動させる必要性がある場合には、適宜同様の操作を行うことができる。Mは作業者である。
【0046】
この際、作業者Mは、跳上操作位置(b)から操作ハンドル14を下方へ大きく回動操作することができるため、操作ハンドル14を従来に比して低位置(畝Uに近接する地上高)まで回動させなくても、前輪4,4を畝Uよりも上方へ大きく持ち上げることができる。そのため、作業者M、特に身長の高い作業者Mは大きく腰を曲げる必要性がなくなって、労力と疲労を低減させることができる。
【0047】
畝高さに適応させて機体の高さ(操作ハンドル高さ)が変わっても、跳上操作位置(b)を複数の位置に変更可能としているため、作業者Mにとって最適な跳上操作位置(b)を選択することができる。つまり、作業者Mの体格に適応させることができる。
【0048】
単一の操作機構26により各ハンドル形成体20,20の連結部23,23に設けた固定・解除機構25,25を操作することができるため、適宜いずれか一方の手で操作機構26を操作することで堅実に両方の固定・解除機構25,25を固定作動ないしは解除作動させることができる。
【0049】
操作ハンドル14は、可動側部24を跳上操作位置(b)まで跳ね上げ変更可能として、固定側部22は固定状態のままとしているため、固定側部22の上方に苗株供給部15等を配置するための空間を固定的に確保することができて、苗株供給部15等に可動側部を干渉させることなく位置変更することができる。
【0050】
各ハンドル形成体20,20の連結部23に固定・解除機構25を設けているため、両方の固定・解除機構25,25によりこれらに作用する荷重を分担することができる。そのため、両方の固定・解除機構25,25の剛性を低減してコンパクト化を図ることができる。
【0051】
[第2実施形態としての操作ハンドルの説明]
次に、第2実施形態としての操作ハンドル14について図9〜図11を参照しながら説明する。第2実施形態としての操作ハンドル14は、基本的な構造を第1実施形態と同じくしているが、図9〜図11に示すように、通常操作位置(a)では可動側部24,24を機体側に近接配置してコンパクト化する一方、跳上操作位置(b)とする際には可動側部24,24を後方へ略水平に一定幅だけ後退移動させて、その後に跳上操作位置(b)に姿勢変更することで、てこの支点となる後輪6の接地点から可動側部24,24の先端部までの長さが長くなるようにした点で異なる。
【0052】
以下に、連結部23と固定・解除機構25と操作機構26の構成を、図9〜図11を参照しながら具体的に説明する。なお、左右一対の連結部23,23及び固定・解除機構25,25は、それぞれ左右両方が同一構成であることから、左方の連結部23及び固定・解除機構25並びに本実施形態では左方にのみ設けた操作機構26について説明する。
【0053】
すなわち、連結部23は、固定側部22の先端部(後端部)に連結体27を固設し、連結体27に枢支体28を前後摺動自在に設けて、枢支体28に可動側部24の基端部(前端部)を枢支している。
【0054】
そして、連結体27は、底部70と左・右側壁部71,71とから前後方向に伸延して前後方と上方が開口する断面略U字状に形成し、連結体27内に、可動側部24を前後方向に摺動自在に配置している。つまり、可動側部24は通常操作位置(a)では連結体27内に配置されて支持されている。
【0055】
連結体27の左・右側壁部71,71の前端部間には、左右方向に軸線を向けた前スプリング係止片73を横架している。前スプリング係止片73から一定間隔を開けた後方位置には、左・右側壁部71,71に前後方向に伸延するガイド用長孔74,74を左右対向状態に形成して、両ガイド用長孔74,74中に左右方向に軸線を向けた後スプリング係止片75を前後摺動自在に挿通している。前・後スプリング係止片73,75間には引っ張りスプリング76を介設している。後スプリング係止片75にはコ字状の連結ブラケット77を介して可動側部24,24の基端部(前端部)を連結している。
【0056】
固定・解除機構25は、ガイド用長孔74,74の上方に位置する左・右側壁部71,71の上端間に板状の固定・解除体78を被覆状に架設している。固定・解除体78は外側後端縁部に固定受け部79を形成するとともに、内側後端縁部に外側方と上下方が開口した係止用フック80を形成している。可動側部24の基端部(前端部)の上面には、固定受け部79と係合する係合突片87を突設している。そして、引っ張りスプリング76により前方へ弾性付勢されている可動側部24は、係合突片87を介して固定受け部79に係合して前方への摺動が規制されるようにしている。
【0057】
係止用フック80には、後述する操作機構26の係脱ピン81が係合離脱自在に係合している。そして、係止用フック80に係脱ピン81を係合させることで、可動側部24の後方への移動を規制して、可動側部24を固定(ロック)状態となすことができるようにしている。また、係止用フック80から係脱ピン81を離脱することで、可動側部24の後方への移動規制を解除して、可動側部24を後方へ摺動自在となすことができるようにしている。
【0058】
ガイド用長孔74,74の直後方に位置する左・右側壁部71,71には、跳上姿勢固定体82を跨架状に立設している。跳上姿勢固定体82は、左・右側壁部71,71に立設した起立片83,83と、起立片83,83の上部間に左右方向に軸線を向けて架設した係合ピン84と、係合ピン84の下面に取り付けた係脱ピン受け片85とから形成している。
【0059】
係脱ピン受け片85は、係合ピン84の下面から後上方へ向けて傾斜状に取り付けて、係脱ピン受け片85の下面で可動側部24の上面を受け止めて、可動側部24の上方への跳ね上げを規制するようにしている。係脱ピン受け片85には係脱ピン81の下端部が係脱する係脱孔86を上下方向に開口させて形成している。そして、係合ピン84に可動側部24の係合突片87を係合させるとともに、係脱ピン受け片85の係脱孔86に係脱ピン81を係合させることで、可動側部24を跳上姿勢に固定することができるようにしている。つまり、跳上姿勢位置(b)に固定することができる。
【0060】
操作機構26は、可動側部24の直上方位置において、可動側部24に沿って前後方向に伸延する棒状の操作ロッド90と、操作ロッド90の中途部を支持するロッド支持体91と、操作ロッド90の先端部(前端部)に下方へ軸線を向けて取り付けた係脱ピン81とから形成している。そして、操作機構26は、可動側部24の直上方への投影内に配置している。
【0061】
ロッド支持体91は、可動側部24の上面に左右一対の突片92,92を突設し、両突片92,92間に支点ピン93を横架して、支点ピン93の外周にコイルバネ94を巻回するとともに、コイルバネ94の一端を上方へ凸状に湾曲させてロッド係止フック95となしている。そして、支点ピン93上に操作ロッド90の中途部を交差状に当接させるとともに、操作ロッド90の中途部に係止フック95を係止させて、操作ロッド90の中途部を位置決めし、支点ピン93を支点として操作ロッド90の基端部(後端部)を可動側部24と一緒に把持することで、係脱ピン受け片85の係脱孔86から係脱ピン81を離脱させることができるようにしている。
【0062】
このように構成して、第2実施形態の操作ハンドル14では、図11(a)に示すように、通常操作位置(a)にある可動側部24の先端部と操作ロッド90の先端部を一緒に把持することで、てこの原理により支点ピン93を支点として係脱ピン81を係止用フック80から離脱させる。その結果、可動側部24の後方への規制が解除される。
【0063】
そして、図11(b)に示すように、可動側部24を連結体27内で後方へ水平に摺動移動させる。この際、可動側部24は、引っ張りスプリング76の弾性付勢力に抗して後スプリング係止片75がガイド用長孔74,74の後端に当接するまで摺動移動させる。続いて、図11(b)に一点鎖線で示すように、後スプリング係止片75を回動支点として可動側部24を上方へ跳ね上げる。
【0064】
次に、図11(c)に示すように、係合ピン84に可動側部24の係合突片87を係合させるべく、可動側部24を前下方へわずかに移動させる。
【0065】
図11(d)に示すように、係合ピン84に可動側部24の係合突片87を係合させるとともに、係脱ピン受け片85の下面に可動側部24の上面を当接させる。そして、操作ロッド90の先端部の把持を解除することで、コイルバネ94の弾性付勢力により係脱ピン81を下降させて、係脱ピン受け片85の係脱孔86に係脱ピン81を係合させる。かかる状態にて可動側部24は跳上操作位置(b)に固定(ロック)される。
【0066】
このようにして跳上操作位置(b)に姿勢変更した可動側部24,24は、その先端部(後端部))を把持して左右一対の後輪6,6を支点に可動側部24,24を後下方に回動させることで、てこの原理により左右一対の前輪4,4を簡単に持ち上げることができる。さらに、かかる状態にて、機体を旋回させて後輪6,6だけの二輪走行をさせることで、機体を楽に小旋回移動させることができる。つまり、機体を小旋回移動させる必要性がある場合には同様の操作を行うことができる。
【0067】
また、可動側部24を跳上操作位置(b)から通常操作位置(a)に戻す場合は、上記した手順とは逆の手順をたどることで簡単に戻すことができる。
【0068】
なお、操作ハンドル14の形状は本実施形態のものに限定されない。例えば、ハンドル連結形成体21を前方へ凸状に湾曲させて形成することもできる。また、ハンドル連結形成体21の中間部を切断して、操作ハンドル14を左右側に分離させて形成することも、さらには、ハンドル連結形成体21を削除してハンドル形成体20,20だけで操作ハンドル14を形成することもできる。
【0069】
そして、操作体47は、本実施形態と同様に操作性を良好に確保することができれば、本実施形態の形状に限定されるものではない。つまり、単一の操作体47を操作ハンドル14の内方に配置するとともに、操作ハンドル14形状に沿わせて形成することも、左右一対の操作体47を左右に分離形成した操作ハンドル14の内方に配置するとともに、操作ハンドル14形状に沿わせて形成することもできる。
【符号の説明】
【0070】
1 歩行型移植機
2 機体フレーム
3 前輪支持体
6 後輪
11 移植部
14 操作ハンドル
20 ハンドル形成体
21 ハンドル連結形成体
22 固定側部
23 連結部
24 可動側部
25 固定・解除機構
26 操作機構
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場に成形された畝を跨いで走行しながら畝上に苗株を移植する歩行型移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歩行型移植機の一形態として、特許文献1に開示されたものがある。すなわち、特許文献1には、遊動輪としての左右一対の前輪と駆動輪としての左右一対の後輪とを有する機体フレーム上に、前記駆動輪を駆動する原動機部と、原動機部により駆動されて圃場に苗株を移植する移植部を設け、機体フレームの後端部には後方へ向けて伸延する操作ハンドルの前端部を連結した歩行型移植機が開示されている。そして、歩行型移植機では、移植部に設けた苗載台の下方かつ後輪の後方に空間部を形成している。
【0003】
このように構成することで、圃場の畝を跨ぐようにして(左右一対の前・後車輪間に畝が位置する状態)機体を走行させながら移植部により畝上に苗株を移植するようにしている。そして、他の畝に機体を移動させる際には、操作ハンドルを押し下げることで、後輪を支点とするてこの原理で前輪を持ち上げて、前輪を畝と干渉させないようにして機体を旋回させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−10701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、前記した歩行型移植機では、畝の高さが高く形成されている等の事情で、前輪を大きく持ち上げる必要性がある場合には、操作ハンドルを大きく押し下げる必要性がある。この場合、操作ハンドルを大きく押し下げ作業者の姿勢は必然的に低姿勢となり、かかる低姿勢で操作ハンドルを操作して機体を旋回させなくてはならない。そのため、特に身長の高い作業者にとっては身体的疲労が大きく、機体の他の畝への移動作業が煩雑になっていた。
【0006】
そこで、本発明は、楽に前輪を大きく持ち上げることできる歩行型移植機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明に係る歩行型移植機は、遊動輪としての左右一対の前輪と駆動輪としての左右一対の後輪とを有する機体上に、前記駆動輪を駆動する原動機部と、原動機部により駆動されて圃場に苗株を移植する移植部を設け、機体の後端部には後方へ向けて伸延する操作ハンドルの前端部を連結した歩行型移植機において、操作ハンドルは、少なくとも前後方向に伸延する左右一対のハンドル形成体を有し、各ハンドル形成体は、前部側である固定側部の先端部に連結部を介して後部側である可動側部の基端部を連結して形成し、連結部を介して可動側部の先端部を通常操作位置と通常操作位置から上方へ跳ね上げた跳上操作位置との間で位置変更可能となして、跳ね上げ操作位置では、可動側部の先端部を把持して左右一対の後輪を支点に可動側部を後下方に回動させることで左右一対の前輪を持ち上げ可能となしたことを特徴とする。
【0008】
かかる歩行型移植機では、移植作業を行うに際して畝を跨ぐように機体を畝上に配置する際には、操作ハンドルの可動側部を通常操作位置から跳上操作位置に位置変更する。そして、左右一対の後輪を支点とするとともに、跳上操作位置にて把持した可動側部の先端部を力点として、操作ハンドルを後下方に回動させる。そうすることで、てこの原理により左右一対の後輪を中心にして作用点側となる左右一対の前輪を持ち上げることができる。さらに、かかる状態にて、後輪を中心に機体を旋回させて走行させることで、畝を跨ぐように機体を畝上に配置することができる。また、移植作業をしていた畝から他の畝に機体を楽に移動させることができる。
【0009】
この際、作業者は、跳上操作位置にある可動側部の先端部を把持したまま操作ハンドルを介して前進する機体に抗することで、ないしは、操作ハンドルに後下方へ体重を凭れ掛けるようにして引き下げることで、後輪を中心に操作ハンドルを楽に下方へ回動させることができる。つまり、従来のように操作ハンドルを押し下げる場合に比して、楽に操作ハンドルを下方へ回動(力のモーメントを作用)させることができる。そのため、肉体的に非力な婦女子や老人であっても楽に操作ハンドルを下方へ回動させることができて、前輪の持ち上げ操作をすることができる。しかも、操作ハンドルは従来に比して低位置まで回動させなくても、前輪を大きく持ち上げることができるため、作業者、特に身長の高い作業者の労力と疲労を低減させることができる。
【0010】
また、畝高さに適応させて機体の高さ(操作ハンドル高さ)が変わっても、跳上操作位置を複数の位置に変更可能とすることで、作業者にとって最適な跳上操作位置を選択することができる。つまり、作業者の体格に適応させることができる。
【0011】
また、操作ハンドルは、後部側である可動側部を跳ね上げ操作位置まで跳ね上げ変更可能として、前部側である固定側部は固定状態のままとしているため、固定側部の上方に移植部に苗株を供給する苗株供給部等を配置するための空間を固定的に確保することができて、苗株供給部等に可動側部を干渉させることなく位置変更することができる。
【0012】
請求項2記載の発明に係る歩行型移植機は、請求項1記載の発明に係る歩行型移植機であって、各前記ハンドル形成体の連結部には、可動側部を通常操作位置と跳上操作位置とでそれぞれ固定・解除する固定・解除機構を設けると共に、可動側部の先端部近傍には、固定・解除機構を操作する操作機構を設けたことを特徴とする。
【0013】
かかる歩行型移植機では、可動側部を通常操作位置と跳上操作位置とに位置変更する際には、操作機構を適宜操作して固定・解除機構を固定作動ないしは解除作動させることで、可動側部を位置変更することができる。
【0014】
この際、可動側部の先端部を把持して可動側部の位置変更を行うが、操作機構を可動側部の先端部近傍に設けているため、可動側部の位置変更操作と操作機構の操作を楽にかつ堅実に行うことができる。
【0015】
また、各前記ハンドル形成体の連結部に固定・解除機構を設けているため、両方の固定・解除機構によりこれらに作用する荷重を分担することができる。そのため、両方の固定・解除機構の剛性を低減してコンパクト化を図ることができる。
【0016】
請求項3記載の発明に係る歩行型移植機は、請求項2記載の発明に係る歩行型移植機であって、前記操作機構の解除操作は、可動側部の先端部の把持操作と同時に可能となしたことを特徴とする。
【0017】
かかる歩行型移植機では、操作機構の解除操作を可動側部の先端部の把持操作と同時に行うことができるようにしているため、両操作を簡便かつ堅実に行うことができる。
【0018】
請求項4記載の発明に係る歩行型移植機は、請求項3記載の発明に係る歩行型移植機であって、前記操作機構は、可動側部の内方に配置したことを特徴とする。
【0019】
かかる歩行型移植機では、操作機構を可動側部の内方に配置しているため、操作機構に作業者の体等が誤って又は不慮に当たって作動するという不具合を回避することができて、安全性を確保することができる。
【0020】
請求項5記載の発明に係る歩行型移植機は、請求項4記載の発明に係る歩行型移植機であって、各前記ハンドル形成体の連結部に設けた固定・解除機構は、単一の操作機構により操作可能となしたことを特徴とする。
【0021】
かかる歩行型移植機では、単一の操作機構により各前記ハンドル形成体の連結部に設けた固定・解除機構を操作することができるため、適宜いずれか一方の手で操作機構を操作することで堅実に両方の固定・解除機構を固定作動ないしは解除作動させることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、次の効果を奏する。すなわち、本発明では、てこの原理を利用して前輪を大きくしかも楽に持ち上げることができるため、畝の高さが高い場合でも、機体が畝を跨いだ移植作業状態から機体が畝を跨がない非移植作業状態に楽に移行させることができる。その結果、作業者の労力と疲労の低減化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る歩行型移植機の側面説明図。
【図2】第1実施形態としての操作ハンドルの側面図。
【図3】第1実施形態としての操作ハンドルの平面説明図。
【図4】第1実施形態としての操作ハンドルの連結部の一部切欠側面図(通常操作位置)。
【図5】図4のI-I線断面図。
【図6】第1実施形態としての操作ハンドルの連結部の一部切欠側面図(跳上操作位置)。
【図7】前輪を持ち上げ操作する前の歩行型移植機の側面説明図。
【図8】前輪を持ち上げ操作した後の歩行型移植機の側面説明図。
【図9】第2実施形態としての操作ハンドルの側面図。
【図10】第2実施形態としての操作ハンドルの平面説明図。
【図11】第2実施形態としての操作ハンドルの姿勢変更操作手順の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
[歩行型移植機の全体説明]
図1に示す1は本実施形態に係る歩行型移植機であり、歩行型移植機1は、前後方向に伸延する機体フレーム2の前端部に前輪支持体3,3を介して左右一対の前輪4,4を取り付ける一方、機体フレーム2の後端部に後輪伝動ケース5,5を介して左右一対の後輪6,6を取り付けている。そして、前輪支持体3,3と後輪伝動ケース5,5に昇降連動機構7を介設して、昇降連動機構7により前輪支持体3,3及び後輪伝動ケース5,5の下端側を上下に揺動させて機体フレーム2を昇降させることで、地上高を調節可能としている。
【0025】
機体フレーム2上には、前部に原動機部としてのエンジン8を搭載し、その後方にミッション部9を配設して、連動ケース10を介してエンジン8とミッション部9を連動連結している。
【0026】
ミッション部9の後方には、ミッション部9と連動連結して移植部11を配設している。移植部11には、苗株を圃場Gの畝Uに移植する移植爪12と、苗株を受ける苗株受け位置と苗株を畝Uに移植する位置との間で移植爪12を昇降させる移植爪昇降機構13を設けている。
【0027】
このように、機体フレーム2上にエンジン8とミッション部9と連動ケース10と移植部11を配設して機体を構成している。機体の後端部である移植部11の上部には、後方へ向けて伸延する操作ハンドル14の前端部(基端部)を連結し、操作ハンドル14の前部に苗株供給部15を載設している。苗株供給部15は、前記した苗受け位置にある移植爪12に苗株を供給可能としている。
【0028】
[第1実施形態としての操作ハンドルの説明]
次に、第1実施形態としての操作ハンドル14について図2〜図6を参照しながら説明する。すなわち、操作ハンドル14は、図2〜図6に示すように、前後方向に直状に伸延する円筒状の左右一対のハンドル形成体20,20の後端部間に、左右方向に伸延する円筒状のハンドル連結形成体21を介設して、図3に示すように平面視略U字状に形成している。各ハンドル形成体20,20は、前部側である固定側部22,22の先端部(後端部)に連結部23,23を介して後部側である可動側部24,24の基端部(前端部)を連結して形成している。ここで、ハンドル連結形成体21は可動側部24,24の後端部間に介設されていることになる。
【0029】
そして、図1,図7及び図8に示すように、連結部23,23を介して可動側部24,24の先端部を通常操作位置(a)と通常操作位置(a)から上方へ跳ね上げた跳上操作位置(b)との間で位置変更可能となしている。そうすることで、跳ね上げ操作位置(b)では、可動側部24,24の先端部(後端部)ないしはハンドル連結形成体21を把持して左右一対の後輪6,6を支点に可動側部24,24を後下方に回動させることで、左右一対の前輪4,4を持ち上げ可能となしている。
【0030】
各ハンドル形成体20,20の連結部23,23には、図2及ぶ図3に示すように、可動側部24,24を通常操作位置(a)と跳上操作位置(b)とでそれぞれ固定・解除する固定・解除機構25,25を設けると共に、可動側部24,24の先端部近傍には、固定・解除機構25,25を操作する単一の操作機構26を可動側部24,24の内方に配置して設けている。そして、操作機構26の解除操作は、可動側部24,24の先端部の把持操作と同時に可能となしている。
【0031】
以下に、連結部23と固定・解除機構25と操作機構26の構成を、図4〜図6を参照しながら具体的に説明する。なお、左右一対の連結部23,23及び固定・解除機構25,25は、それぞれ左右両方が同一構成であることから、一方の連結部23及び固定・解除機構25について説明する。
【0032】
すなわち、連結部23は、図4〜図6に示すように、固定側部22の先端部(後端部)に連結体27を固設し、連結体27に枢支体28を設けて、枢支体28に可動側部24の基端部(前端部)を枢支している。
【0033】
連結体27は、略水平に配置した四角形板状の上面形成片30と、上面形成片30の前端縁部より後下方へ湾曲させて垂下した前面形成片31と、前面形成片31の左右側縁部及び上面形成片30の左右側縁部に連設した左・右側面形成片32,32とから形成している。
【0034】
前面形成片31は、後述する枢支ピン36,36の軸線を中心とする前方へ凸状の円弧形状に形成して、円弧方向に間隔を開けて複数(本実施形態では4個)の調整孔33を形成している。そして、固定側部22の先端部(後端部)に前面形成片31の前面上部を連設している。
【0035】
枢支体28は、左・右側面形成片32,32の外側面後部に、上下方向に伸延する左右一対の枢支片34,34を重合状態に面接触させ、同状態にて左・右側面形成片32,32にボルト35,35を介して枢支片34,34の下部を連結している。そして、枢支片34,34の上部には左・右側面形成片32,32側に軸線を向けて枢支ピン36,36を突設するとともに、左・右側面形成片32,32に形成した挿通孔37,37中に挿通させている。ここで、枢支ピン36,36の先端間には、後述する進退ピン案内筒片40を枢支するとともに、進退ピン41を進退自在に配置するための一定間隔を保持させている。
【0036】
固定・解除機構25は、円筒状に形成した可動側部24の基端部(前端部)内に、円筒状に形成した進退ピン案内筒片40を介して進退ピン41をその軸線方向(本実施例では前後方向)に進退自在に配置している。そして、進退ピン41の基端(後端)を押圧スプリング42により進出方向に弾性付勢している。43は進退ピン41の基端(後端)に連設したスプリング当片、44はスプリング止めピンである。
【0037】
進退ピン案内筒片40の後部には、左右方向に貫通する横貫通孔45を形成して、横貫通孔45中に前記した枢支ピン36,36の先端部を挿通している。つまり、枢支ピン36,36に進退ピン案内筒片40を枢支して、枢支ピン36,36を中心に進退ピン案内筒片40の先端側(前端側)を上下揺動自在となしている。したがって、上下揺動自在となした進退ピン案内筒片40を介して進退ピン41の先端側(前端側)を上下揺動させて、いずれかの調整孔33に進退ピン41の先端(前端)を抜き差し自在に挿入させることで、可動側部24を所望の姿勢に固定(ロック)することができる。
【0038】
操作機構26は、可動側部24を所望の姿勢に変更するために、進退ピン41を進退作動操作するものである。すなわち、操作機構26は、図2〜図4及び図6に示すように、左右側の進退ピン41,41の基端部(後端部)に連結したピン連結体46,46と、両ピン連結体46,46間に介設した操作体47とから形成している。
【0039】
ピン連結体46は、前後方向に伸延する上・下連結片48,49と、両上・下連結片48,49の後端間に介設した後連結片50とから側面視コ字状に形成している。そして、可動側部24の基端部(前端部)の直上方に上連結片48の先端部(前端部)を配置する一方、可動側部24の基端部(前端部)の直下方に下連結片49の先端部(前端部)を配置している。また、上・下連結片48,49の先端部(前端部)間には、ピン孔51,52を介して上下方向に軸線を向けて伸延する連結ピン53を可動側部24の基端部(前端部)に貫通状態に挿通している。54は連結ピン53の先端部に取り付けた抜け止めピンである。
【0040】
ここで、可動側部24の基端部(前端部)には、その軸線方向に伸延するガイド長孔55,55を上下方向に開口させて形成するとともに、進退ピン41の基端部(後端部)に上下方向に貫通する縦貫通孔56を形成している。そして、ガイド長孔55,55及び縦貫通孔56を介して可動側部24の基端部(前端部)に連結ピン53を挿通している。
【0041】
したがって、ピン連結体46は、連結ピン53を介して可動側部24の基端部(前端部)に前後摺動自在に連結されるとともに、進退ピン41に連動連結されることになる。その結果、ピン連結体46を後方に摺動移動させることで、押圧スプリング42により進出方向に弾性付勢されている進退ピン41を押圧スプリング42の弾性付勢に抗して後退摺動させて、挿入している調整孔33から進退ピン41の先端(前端)を抜き取ることができる。つまり、可動側部24の固定を解除することができる。また、可動側部24を上下方向所望の位置に回動させて、ピン連結体46の後方への摺動移動を解除することで、押圧スプリング42の弾性付勢力により進退ピン41を進出させて、符合する調整孔33に進退ピン41の先端を挿入させることができる。つまり、可動側部24を所望の姿勢に固定することができる。
【0042】
操作体47は、図3に示すように、左右方向に伸延する棒状片57を可動側部24の先端部の内方に沿わせて平面視略U字状に湾曲させて形成するとともに、両ピン連結体46,46の後連結片50,50に棒状片57の両端を連設している。そして、棒状片57は、可動側部24の先端部と一緒に片方の手で把持することができるように、可動側部24の先端部の内方に隣接させて配置している。特に、棒状片57の中途部と可動側部24の先端部(後端部)を形成するハンドル連結形成体21は、左右方向に直状かつ平行隣接状態に伸延させて形成して、棒状片57の中途部とハンドル連結形成体21を一緒に片方の手で楽に把持することができるようにしている。図3中、60はクラッチレバー、61はクラッチレバーガイド体、62は機体の昇降操作や移植部11のクラッチ操作をするための操作レバー、63は操作レバーガイド体である。
【0043】
したがって、棒状片57と可動側部24の先端部を一緒に片方の手で把持する、つまり、図3に一点鎖線で示すように、棒状片57を可動側部24の先端部側へ近接させる操作をすると、両ピン連結体46,46を後方に摺動移動させることができて、前記したように可動側部24の固定を解除することができる。また、可動側部24を所望の姿勢に変更して、棒状片57を可動側部24の先端部側へ近接させる操作(把持操作)を解除すると、前記したように押圧スプリング42の弾性付勢力により進退ピン41の先端を符合する調整孔33に挿入させることができて、可動側部24を所望の姿勢に固定することができる。ここで、可動側部24の姿勢変更は、いずれかの調整孔33を選択することで、作業者の体格等に応じて通常操作位置(a)ないしは跳上操作位置(b)を適宜選定することができる。
【0044】
本実施形態は上記のように構成しているものであり、例えば、移植作業を行った畝Uから機体を他の畝Uへ移動させる作業を行う際には、まず、ハンドル連結形成体21(ないしは可動側部24,24の先端部(後端部))と棒状片57を一緒に片方の手で把持することで、可動側部24,24の固定を解除する。そして、操作ハンドル14の可動側部24,24を所望の跳上姿勢に変更して、棒状片57の把持操作を解除することで、押圧スプリング42の弾性付勢力により進退ピン41の先端を符合する調整孔33に挿入させて、可動側部24,24を所望の跳上姿勢に固定する。つまり、図7に実線で示す通常操作位置(a)から想像線で示す跳上操作位置(b)に位置変更する。
【0045】
続いて、操作ハンドル14を介して前進する機体に抗することで、ないしは、操作ハンドル14に後下方へ体重を凭れ掛けるようにして引き下げることで、図8に示すように、左右一対の後輪6,6を支点とするとともに、跳上操作位置(b)にて把持したハンドル連結形成体21(ないしは可動側部24,24の先端部(後端部))を力点として、操作ハンドル14を楽に下方に回動(力のモーメントを作用)させることができる。そうすることで、てこの原理により左右一対の後輪6,6を中心にして作用点側となる左右一対の前輪4,4を簡単にかつ楽に持ち上げることができる。さらには、かかる状態にて、機体を旋回させて後輪6,6だけの二輪走行をさせることで、機体を小旋回移動させることができる。また、機体を小旋回移動させる必要性がある場合には、適宜同様の操作を行うことができる。Mは作業者である。
【0046】
この際、作業者Mは、跳上操作位置(b)から操作ハンドル14を下方へ大きく回動操作することができるため、操作ハンドル14を従来に比して低位置(畝Uに近接する地上高)まで回動させなくても、前輪4,4を畝Uよりも上方へ大きく持ち上げることができる。そのため、作業者M、特に身長の高い作業者Mは大きく腰を曲げる必要性がなくなって、労力と疲労を低減させることができる。
【0047】
畝高さに適応させて機体の高さ(操作ハンドル高さ)が変わっても、跳上操作位置(b)を複数の位置に変更可能としているため、作業者Mにとって最適な跳上操作位置(b)を選択することができる。つまり、作業者Mの体格に適応させることができる。
【0048】
単一の操作機構26により各ハンドル形成体20,20の連結部23,23に設けた固定・解除機構25,25を操作することができるため、適宜いずれか一方の手で操作機構26を操作することで堅実に両方の固定・解除機構25,25を固定作動ないしは解除作動させることができる。
【0049】
操作ハンドル14は、可動側部24を跳上操作位置(b)まで跳ね上げ変更可能として、固定側部22は固定状態のままとしているため、固定側部22の上方に苗株供給部15等を配置するための空間を固定的に確保することができて、苗株供給部15等に可動側部を干渉させることなく位置変更することができる。
【0050】
各ハンドル形成体20,20の連結部23に固定・解除機構25を設けているため、両方の固定・解除機構25,25によりこれらに作用する荷重を分担することができる。そのため、両方の固定・解除機構25,25の剛性を低減してコンパクト化を図ることができる。
【0051】
[第2実施形態としての操作ハンドルの説明]
次に、第2実施形態としての操作ハンドル14について図9〜図11を参照しながら説明する。第2実施形態としての操作ハンドル14は、基本的な構造を第1実施形態と同じくしているが、図9〜図11に示すように、通常操作位置(a)では可動側部24,24を機体側に近接配置してコンパクト化する一方、跳上操作位置(b)とする際には可動側部24,24を後方へ略水平に一定幅だけ後退移動させて、その後に跳上操作位置(b)に姿勢変更することで、てこの支点となる後輪6の接地点から可動側部24,24の先端部までの長さが長くなるようにした点で異なる。
【0052】
以下に、連結部23と固定・解除機構25と操作機構26の構成を、図9〜図11を参照しながら具体的に説明する。なお、左右一対の連結部23,23及び固定・解除機構25,25は、それぞれ左右両方が同一構成であることから、左方の連結部23及び固定・解除機構25並びに本実施形態では左方にのみ設けた操作機構26について説明する。
【0053】
すなわち、連結部23は、固定側部22の先端部(後端部)に連結体27を固設し、連結体27に枢支体28を前後摺動自在に設けて、枢支体28に可動側部24の基端部(前端部)を枢支している。
【0054】
そして、連結体27は、底部70と左・右側壁部71,71とから前後方向に伸延して前後方と上方が開口する断面略U字状に形成し、連結体27内に、可動側部24を前後方向に摺動自在に配置している。つまり、可動側部24は通常操作位置(a)では連結体27内に配置されて支持されている。
【0055】
連結体27の左・右側壁部71,71の前端部間には、左右方向に軸線を向けた前スプリング係止片73を横架している。前スプリング係止片73から一定間隔を開けた後方位置には、左・右側壁部71,71に前後方向に伸延するガイド用長孔74,74を左右対向状態に形成して、両ガイド用長孔74,74中に左右方向に軸線を向けた後スプリング係止片75を前後摺動自在に挿通している。前・後スプリング係止片73,75間には引っ張りスプリング76を介設している。後スプリング係止片75にはコ字状の連結ブラケット77を介して可動側部24,24の基端部(前端部)を連結している。
【0056】
固定・解除機構25は、ガイド用長孔74,74の上方に位置する左・右側壁部71,71の上端間に板状の固定・解除体78を被覆状に架設している。固定・解除体78は外側後端縁部に固定受け部79を形成するとともに、内側後端縁部に外側方と上下方が開口した係止用フック80を形成している。可動側部24の基端部(前端部)の上面には、固定受け部79と係合する係合突片87を突設している。そして、引っ張りスプリング76により前方へ弾性付勢されている可動側部24は、係合突片87を介して固定受け部79に係合して前方への摺動が規制されるようにしている。
【0057】
係止用フック80には、後述する操作機構26の係脱ピン81が係合離脱自在に係合している。そして、係止用フック80に係脱ピン81を係合させることで、可動側部24の後方への移動を規制して、可動側部24を固定(ロック)状態となすことができるようにしている。また、係止用フック80から係脱ピン81を離脱することで、可動側部24の後方への移動規制を解除して、可動側部24を後方へ摺動自在となすことができるようにしている。
【0058】
ガイド用長孔74,74の直後方に位置する左・右側壁部71,71には、跳上姿勢固定体82を跨架状に立設している。跳上姿勢固定体82は、左・右側壁部71,71に立設した起立片83,83と、起立片83,83の上部間に左右方向に軸線を向けて架設した係合ピン84と、係合ピン84の下面に取り付けた係脱ピン受け片85とから形成している。
【0059】
係脱ピン受け片85は、係合ピン84の下面から後上方へ向けて傾斜状に取り付けて、係脱ピン受け片85の下面で可動側部24の上面を受け止めて、可動側部24の上方への跳ね上げを規制するようにしている。係脱ピン受け片85には係脱ピン81の下端部が係脱する係脱孔86を上下方向に開口させて形成している。そして、係合ピン84に可動側部24の係合突片87を係合させるとともに、係脱ピン受け片85の係脱孔86に係脱ピン81を係合させることで、可動側部24を跳上姿勢に固定することができるようにしている。つまり、跳上姿勢位置(b)に固定することができる。
【0060】
操作機構26は、可動側部24の直上方位置において、可動側部24に沿って前後方向に伸延する棒状の操作ロッド90と、操作ロッド90の中途部を支持するロッド支持体91と、操作ロッド90の先端部(前端部)に下方へ軸線を向けて取り付けた係脱ピン81とから形成している。そして、操作機構26は、可動側部24の直上方への投影内に配置している。
【0061】
ロッド支持体91は、可動側部24の上面に左右一対の突片92,92を突設し、両突片92,92間に支点ピン93を横架して、支点ピン93の外周にコイルバネ94を巻回するとともに、コイルバネ94の一端を上方へ凸状に湾曲させてロッド係止フック95となしている。そして、支点ピン93上に操作ロッド90の中途部を交差状に当接させるとともに、操作ロッド90の中途部に係止フック95を係止させて、操作ロッド90の中途部を位置決めし、支点ピン93を支点として操作ロッド90の基端部(後端部)を可動側部24と一緒に把持することで、係脱ピン受け片85の係脱孔86から係脱ピン81を離脱させることができるようにしている。
【0062】
このように構成して、第2実施形態の操作ハンドル14では、図11(a)に示すように、通常操作位置(a)にある可動側部24の先端部と操作ロッド90の先端部を一緒に把持することで、てこの原理により支点ピン93を支点として係脱ピン81を係止用フック80から離脱させる。その結果、可動側部24の後方への規制が解除される。
【0063】
そして、図11(b)に示すように、可動側部24を連結体27内で後方へ水平に摺動移動させる。この際、可動側部24は、引っ張りスプリング76の弾性付勢力に抗して後スプリング係止片75がガイド用長孔74,74の後端に当接するまで摺動移動させる。続いて、図11(b)に一点鎖線で示すように、後スプリング係止片75を回動支点として可動側部24を上方へ跳ね上げる。
【0064】
次に、図11(c)に示すように、係合ピン84に可動側部24の係合突片87を係合させるべく、可動側部24を前下方へわずかに移動させる。
【0065】
図11(d)に示すように、係合ピン84に可動側部24の係合突片87を係合させるとともに、係脱ピン受け片85の下面に可動側部24の上面を当接させる。そして、操作ロッド90の先端部の把持を解除することで、コイルバネ94の弾性付勢力により係脱ピン81を下降させて、係脱ピン受け片85の係脱孔86に係脱ピン81を係合させる。かかる状態にて可動側部24は跳上操作位置(b)に固定(ロック)される。
【0066】
このようにして跳上操作位置(b)に姿勢変更した可動側部24,24は、その先端部(後端部))を把持して左右一対の後輪6,6を支点に可動側部24,24を後下方に回動させることで、てこの原理により左右一対の前輪4,4を簡単に持ち上げることができる。さらに、かかる状態にて、機体を旋回させて後輪6,6だけの二輪走行をさせることで、機体を楽に小旋回移動させることができる。つまり、機体を小旋回移動させる必要性がある場合には同様の操作を行うことができる。
【0067】
また、可動側部24を跳上操作位置(b)から通常操作位置(a)に戻す場合は、上記した手順とは逆の手順をたどることで簡単に戻すことができる。
【0068】
なお、操作ハンドル14の形状は本実施形態のものに限定されない。例えば、ハンドル連結形成体21を前方へ凸状に湾曲させて形成することもできる。また、ハンドル連結形成体21の中間部を切断して、操作ハンドル14を左右側に分離させて形成することも、さらには、ハンドル連結形成体21を削除してハンドル形成体20,20だけで操作ハンドル14を形成することもできる。
【0069】
そして、操作体47は、本実施形態と同様に操作性を良好に確保することができれば、本実施形態の形状に限定されるものではない。つまり、単一の操作体47を操作ハンドル14の内方に配置するとともに、操作ハンドル14形状に沿わせて形成することも、左右一対の操作体47を左右に分離形成した操作ハンドル14の内方に配置するとともに、操作ハンドル14形状に沿わせて形成することもできる。
【符号の説明】
【0070】
1 歩行型移植機
2 機体フレーム
3 前輪支持体
6 後輪
11 移植部
14 操作ハンドル
20 ハンドル形成体
21 ハンドル連結形成体
22 固定側部
23 連結部
24 可動側部
25 固定・解除機構
26 操作機構
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊動輪としての左右一対の前輪と駆動輪としての左右一対の後輪とを有する機体上に、前記駆動輪を駆動する原動機部と、原動機部により駆動されて圃場に苗株を移植する移植部を設け、機体の後端部には後方へ向けて伸延する操作ハンドルの前端部を連結した歩行型移植機において、
操作ハンドルは、少なくとも前後方向に伸延する左右一対のハンドル形成体を有し、
各ハンドル形成体は、前部側である固定側部の先端部に連結部を介して後部側である可動側部の基端部を連結して形成し、連結部を介して可動側部の先端部を通常操作位置と通常操作位置から上方へ跳ね上げた跳上操作位置との間で位置変更可能となして、
跳上操作位置では、可動側部の先端部を把持して左右一対の後輪を支点に可動側部を後下方に回動させることで左右一対の前輪を持ち上げ可能となしたことを特徴とする歩行型移植機。
【請求項2】
各前記ハンドル形成体の連結部には、可動側部を通常操作位置と跳ね上げ操作位置とでそれぞれ固定・解除する固定・解除機構を設けると共に、可動側部の先端部近傍には、固定・解除機構を操作する操作機構を設けたことを特徴とする請求項1記載の歩行型移植機。
【請求項3】
前記操作機構の解除操作は、可動側部の先端部の把持操作と同時に可能となしたことを特徴とする請求項2記載の歩行型移植機。
【請求項4】
前記操作機構は、可動側部の内方に配置したことを特徴とする請求項3記載の歩行型移植機。
【請求項5】
各前記ハンドル形成体の連結部に設けた固定・解除機構は、単一の操作機構により操作可能となしたことを特徴とする請求項4記載の歩行型移植機。
【請求項1】
遊動輪としての左右一対の前輪と駆動輪としての左右一対の後輪とを有する機体上に、前記駆動輪を駆動する原動機部と、原動機部により駆動されて圃場に苗株を移植する移植部を設け、機体の後端部には後方へ向けて伸延する操作ハンドルの前端部を連結した歩行型移植機において、
操作ハンドルは、少なくとも前後方向に伸延する左右一対のハンドル形成体を有し、
各ハンドル形成体は、前部側である固定側部の先端部に連結部を介して後部側である可動側部の基端部を連結して形成し、連結部を介して可動側部の先端部を通常操作位置と通常操作位置から上方へ跳ね上げた跳上操作位置との間で位置変更可能となして、
跳上操作位置では、可動側部の先端部を把持して左右一対の後輪を支点に可動側部を後下方に回動させることで左右一対の前輪を持ち上げ可能となしたことを特徴とする歩行型移植機。
【請求項2】
各前記ハンドル形成体の連結部には、可動側部を通常操作位置と跳ね上げ操作位置とでそれぞれ固定・解除する固定・解除機構を設けると共に、可動側部の先端部近傍には、固定・解除機構を操作する操作機構を設けたことを特徴とする請求項1記載の歩行型移植機。
【請求項3】
前記操作機構の解除操作は、可動側部の先端部の把持操作と同時に可能となしたことを特徴とする請求項2記載の歩行型移植機。
【請求項4】
前記操作機構は、可動側部の内方に配置したことを特徴とする請求項3記載の歩行型移植機。
【請求項5】
各前記ハンドル形成体の連結部に設けた固定・解除機構は、単一の操作機構により操作可能となしたことを特徴とする請求項4記載の歩行型移植機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−161303(P2012−161303A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−26224(P2011−26224)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】
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