歩行者保護装置
【課題】ボンネット部が無いか車両前後方向に短いタイプの車両との衝突後、路面に倒れる際に人体の傷害の程度の軽減に繋がる姿勢を歩行者に与える歩行者保護装置を提供する。
【解決手段】歩行者保護装置3は、ボンネット部が無いか車両前後方向に短いタイプの車両1の前面に、車両に固定された固定回転軸35、38、および、移動可能な移動回転軸36、37、39により車両幅方向を軸として回転可能に取り付けられる複数のパネル31、32、33、34から成り、車両前面と衝突後の人体が、脚部を車両から遠い位置に、頭部を車両から近い位置にして路面に倒れるように、少なくとも1枚のパネルと路面法線のなす角度が、所定の角度である35°以上になるようパネル31、32、33、34を回転、移動させる。
【解決手段】歩行者保護装置3は、ボンネット部が無いか車両前後方向に短いタイプの車両1の前面に、車両に固定された固定回転軸35、38、および、移動可能な移動回転軸36、37、39により車両幅方向を軸として回転可能に取り付けられる複数のパネル31、32、33、34から成り、車両前面と衝突後の人体が、脚部を車両から遠い位置に、頭部を車両から近い位置にして路面に倒れるように、少なくとも1枚のパネルと路面法線のなす角度が、所定の角度である35°以上になるようパネル31、32、33、34を回転、移動させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は歩行者保護装置に関する。より詳しくは、キャブオーバ、セミキャブオーバ、ワンボックス等のボンネット部が無いか車両前後方向に短いタイプの車両前面に設けられ、車両と歩行者の衝突時に人体の傷害の程度を軽減する歩行者保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両と歩行者との衝突時に、歩行者の被害をできるかぎり抑えるための様々な工夫がなされてきた。その例として、特許文献1に示すような衝撃吸収のためのエアバッグを車両前面に装備するものや、特許文献2に示すような車両下部への巻き込み防止のためのガードを取り付けるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2005−503287号公報
【特許文献2】特開2006−273282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、キャブオーバ、セミキャブオーバ、ワンボックス等のボンネット部が無いか車両前後方向に短いタイプの車両と歩行者との衝突時に歩行者の被害が大きくなる要因として、車両衝突後、車両前方に人体が跳ねられ、跳ねられた人体が路面へ倒れるときに、多くの場合、頭部が車両から遠い位置、脚部が車両から近い位置になるような方向に人体が投げ出され、路面に頭部が衝突してしまうことが挙げられる。
【0005】
これを図11に示す。図11には、車両と衝突後の人体の挙動が右から左へと時系列で示されており、右端には車両衝突時の人体の状態、左端には路面に倒れた時の人体の状態が示されている。
ボンネット部が無いか車両前後方向に短いタイプの車両では、車両100の前面が路面120に対してほぼ垂直に形成されているので、車両100と衝突後の人体(110a)は、矢印Aに示すように車両100の前方に跳ねられる。その後、脚部が路面120に接地(110b)し、矢印Bに示す方向に回転するとともに、路面120に倒れる(110c)。
この一連の過程において、人体の脚部が路面120に接地(110b)した後、人体が路面に倒れる(110c)までの間、人体は頭部を車両100から遠い方、脚部を車両100から近い方として路面120に対して傾斜した姿勢をとる。
【0006】
このとき、着地の形態によっては、矢印Bで示す人体の回転が矢印Aに示す方向の人体の移動と相まって、人体、特に頭部が路面120に衝突する速度が大きくなり、路面120との衝突時に傷害の程度が大きくなる危険性がある。
これに対し、人体の脚部が路面120に接地した後、人体が路面に倒れるまでの間、人体が脚部を車両100から遠い方、頭部を車両100から近い方として路面120に対して傾斜した姿勢をとるようにすれば、上記のような危険性が生じず、人体の傷害の程度が軽減すると考えられる。
【0007】
なお、以下人体と車両の衝突を一次衝突と呼び、図11の人体110aで示す状態とする。また、一次衝突後、人体の一部(脚部)が路面に接してから人体が路面に倒れることを二次衝突と呼び、図11の110bから110cで示す状態とする。
【0008】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたもので、ボンネット部が無いか車両前後方向に短いタイプの車両との衝突後、路面に倒れる際に、人体の傷害の程度の軽減に繋がる姿勢を歩行者に与える歩行者保護装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するために本発明は、ボンネット部が無いか車両前後方向に短いタイプの車両前面に取り付けられ、車両幅方向を軸として回転可能なパネルを備える歩行者保護装置であって、前記パネルは、車両前面に人体が衝突した場合に、前記人体が脚部を車両から遠い位置に、かつ、頭部を車両に近い位置にして路面に倒れるよう、路面法線と前記パネルのなす角度が所定の角度以上になる位置まで、衝突の衝撃力により車両の後部方向に移動することを特徴とする歩行者保護装置である。これにより、衝突後、脚部を車両から近い位置に、かつ、頭部を車両から遠い位置にして路面に倒れる場合よりも、二次衝突時に頭部が路面に衝突する速度を小さくでき、人体が被る傷害の程度を小さくすることが可能になる。
ボンネット部が無いか車両前後方向に短いタイプの車両としては、例えばキャブオーバ、セミキャブオーバ、ワンボックスタイプのものがある。
【0010】
前記パネルは、車両前面に人体が衝突した場合に、衝突の衝撃力により、前記車両に固定され、人体の重心位置よりも低い位置に設けられる固定回転軸によって回転することで、固定回転軸よりも上部が車両の後部方向に移動することが望ましい。
【0011】
また、前記パネルは、車両前面に人体が衝突した場合に、衝突の衝撃力により、人体の略重心位置に設けられる移動回転軸を基点として、前記固定回転軸よりも上部が車両の後部方向に凹部形状となることが望ましい。これによって、人体が衝突後に車両から離脱するときの、人体の下肢部と路面法線のなす角度を大きくすることができる。
【0012】
また、前記パネルの下端と軸着され、車両幅方向を軸として回転可能なバンパーを更に備え、前記バンパーは、車両前面に人体が衝突した場合に、衝突の衝撃力により、前記固定回転軸によって回転することで、車両の前方方向に移動することが望ましい。これによって、人体の脚部がすくわれる形となり、人体が衝突後に車両から離脱するときの、人体の下肢部と路面法線のなす角度を大きくすることができる。
【0013】
また、前記パネルは蛇腹構造であっても良い。これによって、一次衝突の衝突エネルギーをより吸収することができる。
また、前記車両前面への人体衝突後に移動した前記パネルと路面法線のなす角度X1は、前記車両のフロントガラスと路面法線のなす前記フロントガラスの傾斜角度X2よりも小さくしても良い。これによって、頭部を含む上半身が、フロントガラス上に乗り上げる状態になり、上半身が車両から離れて路面に落ちるタイミングを遅くすることが可能となり、頭部に被る可能性のある傷害を軽減することが可能になる。
【0014】
また、路面法線方向の固定回転軸によって前記車両の左右両側の前面に一端が軸支された第1の側面パネルと、路面法線方向の移動回転軸によって前記第1の側面パネルの他端と軸着され、前記車両の左右両側の側面に係止された第2の側面パネルを更に備え、前記車両前面に人体が衝突した場合に、衝突の衝撃力により前記第2の側面パネルの係止がはずれ、前記路面法線方向の移動回転軸を軸として前記第2の側面パネルが車両前方に回転し、前記第2の側面パネルの回転により前記路面法線方向の移動回転軸と前記第1の側面パネルを前記車両の車両幅の中心方向に移動することにより、第2の側面パネルで人体が抱持されるようにしても良い。これにより、上述の車両の幅方向を軸として回転するパネルに加えて、路面法線方向を軸とする2枚のパネルを設け、衝突時に車両の前方中央方向にパネルを回転・移動させることにより、衝突した人体を抱え込み、上半身が車両から離れて路面に落ちるタイミングを遅くすることが可能となり、頭部傷害を軽減することが可能になる。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、ボンネット部が無いか車両前後方向に短いタイプの車両との衝突後、路面に倒れる際に人体の傷害の程度の軽減に繋がる姿勢を歩行者に与える歩行者保護装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】二次衝突における人体の挙動をシミュレーションした結果の概略を示す図
【図2】脚部接地時の人体と路面のなす角とその後の回転方向について解析を行った結果の概略を示す図
【図3】本発明の第1の実施形態に係る歩行者保護装置3の概略構成を示す説明図
【図4】本発明の第1の実施形態に係る歩行者保護装置3を有する車両と衝突時の人体の挙動について説明する図
【図5】本発明の第2の実施形態に係る歩行者保護装置4の概略構成を示す側面図
【図6】本発明の第3の実施形態に係る歩行者保護装置5の概略構成を示す側面図
【図7】本発明の第4の実施形態に係る歩行者保護装置6の概略構成を示す側面図
【図8】本発明の第5の実施形態に係る歩行者保護装置7の概略構成を示す側面図
【図9】本発明の第6の実施形態に係る歩行者保護装置8の概略構成を示す側面図
【図10】本発明の第7の実施形態に係る保護者拘束装置9の概略構成を示す側面図
【図11】車両と衝突時の人体の挙動について説明する図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の歩行者保護装置の実施形態について詳細に説明する。
【0018】
本発明の歩行者保護装置について説明する前に、まず、図1を参照しながら二次衝突時の人体の挙動について説明する。
図1は二次衝突における人体の挙動を、脚部が路面に接した時の人体と路面のなす角(路面の法線に対する角度)、衝突時の車両速度を変数としてシミュレーションした結果の概略を示すものである。
図1の各図には、人体の挙動が右から左へと時系列で示されており、右端には脚部が地面に接地した時の人体の状態、左端には路面に倒れた時の人体の状態が示されている。
【0019】
なお、図1には衝突時の車両速度が20km/hの場合の結果を示すが、検討時には衝突時の車両速度を40km/hとしたシミュレーションも行っている。ただし、以下示す車両速度が20km/hの場合の結果と同様の結果が得られたため、シミュレーション結果の表示は省略した。
なお、20km/h〜40km/hは衝突事故時の一般的な車両速度であり、本シミュレーション結果は歩行者と車両の衝突の観点から広く応用可能である。
【0020】
図1(a)には脚部が路面に接した時の人体と路面のなす角を30°、図1(b)にはこれを40°、図1(c)にはこれを50°とした場合の結果を示す。
【0021】
図1(a)に示すように、脚部接地時の人体210と路面240のなす角が30°のときは、以降人体210は矢印Dに示す方向に回転し、頭部を車両200から遠い位置、脚部を車両200から近い位置にして路面240に倒れる。
この場合、前述したように、人体210の回転が矢印Cに示す方向の人体210の移動と相まって、人体210、特に頭部が路面240に衝突する速度が大きくなり、二次衝突時に傷害の程度が大きくなる危険性がある。
【0022】
一方、図1(b)、図1(c)に示すように、脚部接地時の人体220、230と路面240のなす角度が40°、50°のときは、以降人体220、230は矢印E、Fに示す方向に回転し、脚部を車両200から遠い位置、頭部を車両200から近い位置にして人体220、230が路面240に対して傾斜した姿勢をとりながら路面240に倒れる。
この場合、上記のような問題が起こらず、人体の傷害の程度を軽減することができる。
【0023】
以上より、本シミュレーションにおける条件下では、一次衝突後、脚部接地時の人体と路面法線のなす角が30°以下のとき、人体の傷害の程度が大きくなり、これが40°以上であれば人体の傷害の程度は軽減されることがわかる。
【0024】
また、脚部接地時の人体と路面のなす角(路面に対する角度)とその後の人体の回転方向について、古典的な力学解析手法を用いた解析を行った。その結果の概要を図2に示す。
【0025】
図2において、図2(a)は解析モデルを示す図であり、300は人体を模した剛体棒、310は路面を示す。
図2(a)に示す解析モデルより、剛体棒300の重心G回りのモーメントの釣り合いを考えると、次式が得られる。
Fg・I・cosθ−Ff・I・sinθ+M=0
また、μ=f(V)、Ff=μ・Fg、I=0.57・H(男性)、I=0.55・H(女性)である。
ここで、Fgは剛体棒300の重量、Ffは路面310の摩擦力、Mは剛体棒300の重心G回りの回転モーメント、Vは剛体棒300のすべり速度、Hは剛体棒300の長さ、Iは剛体棒300の下端から重心までの長さ、θは剛体棒300と路面310のなす角度、μは路面310の摩擦係数である。
【0026】
路面310の摩擦係数μに任意の値を代入して上式を回転モーメントMについて解くと、剛体棒300を回転させないために剛体棒300に与えるべき回転モーメントMが、剛体棒300の長さHと重量Fg(人体で身長、体重に相当)、及び剛体棒300と路面310のなす角度θに対して求まる。
図2(b)は、μに一般的なアスファルト道路の摩擦係数である0.7を代入して解析を行って得られた、剛体棒300の重心G回りの回転モーメントMと、角度θとの関係を示す図である。
なお、図2(b)の複数の曲線は、男性、女性、子供など、様々な体型の人体を想定して剛体棒300の長さHと重量Fgの値を定めて解析を行った結果を表わしている。
【0027】
図2(b)に示す各曲線より上の範囲の回転モーメントMが剛体棒300の重心G回りに発生すると、図2(a)より、剛体棒300は時計回りに回転する。
図2(a)における時計回りの回転は、図1に示すような車両衝突時においては、一次衝突後、二次衝突時に脚部を車両200から遠い方に、頭部を車両200から近い方にして人体が路面に対して傾斜した姿勢をとる矢印EやFで示す回転に相当し、人体の傷害の程度が小さくなると予想される回転方向である。
【0028】
図2(b)からは、本解析の条件下では、一次衝突後、脚部接地時に人体と路面のなす角θと人体の重心に与える回転モーメントMを図2(b)においてハッチングされた領域の範囲とすることで、体型に関わらず、二次衝突時に脚部を車両から遠い方に、頭部を車両から近い方にして人体が路面に対して傾斜した姿勢をとるような回転を行うことがわかる。また、シンプルな条件設定としては、一次衝突後、脚部接地時に人体と路面とのなす角θを55°以下とし、少なくとも図2(a)の時計回りの方向に回転モーメントを与えればよいことがわかる。これは図2(b)においてハッチングされた領域内の点線で囲まれた領域に相当する。
なお、図2(a)に示す角度θが55°以下であるとは、路面の法線とのなす角が35°以上であることに等しく、図2に示した解析結果は図1に示したシミュレーション結果と概ね一致する。
【0029】
以上示したように、二次衝突時、脚部を車両から遠い位置に、頭部を車両から近い位置にして人体が路面に対し傾斜した姿勢をとりながら路面に倒れることにより、人体、特に頭部の傷害の程度が軽減される。このため、一次衝突後、人体の一部(脚部)が接地時の人体と路面(法線)とのなす角度等を所望のものとすることが有効である。
これらの知見等に基づき、発明者らは歩行者保護装置を発明した。以下本発明の歩行者保護装置について説明を行う。
【0030】
(第1の実施形態)
まず、図3を参照しながら、本発明の第1の実施形態に係る歩行者保護装置3について説明する。
図3(a)は第1の実施形態に係る歩行者保護装置3の概要を示す側面図、図3(b)は、同図(a)の歩行者保護装置3を車両1の前方斜め方向から見た概略斜視図である。
【0031】
車両1は、キャブオーバタイプの車両であり、前面にフロントガラス14、フロントパネル16等を有し、歩行者保護装置3は、車両1の前面のフロントパネル16の下端から上端までを覆うように車両幅方向に配置される。
図3には図示しないが、歩行者保護装置3を、車両1のフロントパネル16の側面部分まで覆うように配置してもよい。
また、特に図示しないが、歩行者保護パネル9でフロントパネル16の前照灯や方向指示器、ナンバープレートやグリルなどの位置に該当する部分には、通常の走行に支障をきたさないよう穴部等が設けられている。
なお、本実施形態はキャブオーバタイプの車両を例にあげ説明するが、この他、セミキャブオーバ、ワンボックス等のボンネット部が無いか車両前後方向に短いタイプの車両、すなわち一次衝突後の人体が車両前方に跳ねられるような車両前面形状を有する車両、に本発明の歩行者保護装置を適用することができる。
【0032】
また、車両1は、歩行者保護装置3がフロントパネル16を覆うのではなく、フロントパネル16を歩行者保護装置3として形成しても良い。以下では、車両1は、歩行者保護装置3がフロントパネル16を覆うものとして説明するが、フロントパネル16を歩行者保護装置3として形成する場合であっても、本発明を適用できる。
【0033】
第1の実施形態に係る歩行者保護装置3は、3つのパネル(パネル1(31)、パネル2(32)、パネル3(33))とバンパー34が移動回転ジョイント(36、37、39)および固定回転ジョイント35、38によって一体化され、固定回転ジョイント35、38によって車両1に取り付けられた構造である。
尚、図3(a)では、車両1の衝突前の歩行者保護装置3のパネル1(31)、パネル2(32)、パネル3(33)、バンパー34の形状を実線で、衝突後のそれぞれの形状を二重線で示す。
【0034】
図3(a)および図3(b)に示すように、歩行者保護装置3を構成するパネル1(31)の車両幅方向の一端は、固定回転ジョイント35によって車両1のフロントパネル16のフロントガラス14下部に車両幅方向を軸として回転可能に軸支される。パネル1(31)の車両幅方向の他の一端は移動回転ジョイント36を介してパネル2(32)と軸着される。
パネル1(31)は、衝突前の通常の状態では、固定回転ジョイント35から車両1の前方向に張り出すような角度に支持される。
【0035】
移動回転ジョイント36を介してパネル1(31)と軸着されたパネル2(32)の車両幅方向の他の一端は、移動回転ジョイント37を介してパネル3(33)に軸着される。
パネル3(33)の面上には、図3(b)に示すように車両幅方向に固定回転ジョイント38が設けられ、車両1に軸支される。
また、パネル3(33)の車両幅方向の他の一端は、移動回転ジョイント39を介してバンパー34に軸着される。
【0036】
固定回転ジョイント35、38、および、移動回転ジョイント36、37、39は、例えば蝶番のような機械式のジョイント部材、または、外力によって塑性変形可能な金属、樹脂等の部材によって構築される。
また、3枚のパネル31、32、33は、金属または樹脂等の矩形の平板部材で構築される。また、バンパー34は、パネル31、32、33と同様の金属または樹脂等の矩形の平板部材からなり、移動固定ジョイント39と接続されていない他端は車両の後方方向に折り曲げられる。
【0037】
前述したように、図3(a)および図3(b)には図示していないが、歩行者保護装置3に、金属または樹脂等の部材による側面部材を取り付けてもよい。側面部分により、フロントパネル16を覆うように歩行者保護装置3を設けることが可能になる。
【0038】
図3(a)に示すように、歩行者保護装置3に人体が衝突すると、衝突による衝撃力により移動回転ジョイント36、37、および、パネル1(31)、パネル2(32)は、車両1の後部方向であるR方向に移動し、それぞれ、36’、37’、31’、32’の位置に移動する。移動回転ジョイント37は、歩行者の略重心位置に設けられており、衝突による衝撃力により、移動回転ジョイント37を基点として、パネル1(31)とパネル2(32)とパネル3(33)が車両1の後部方向に凹部を形成し、歩行者の腰部を深く受け止める。これによって、歩行者が衝突後に車両1から離脱するときの、歩行者の下肢部と路面法線のなす角度を大きくすることができる。
この移動により、車両1のフロントパネル16は塑性変形する。通常、車両のフロント部分には衝撃力を吸収しやすくするためのクラッシャブルゾーン(中空部)が設けられており、歩行者保護装置3の各パネル31、32、33と各移動回転ジョイント36、37はフロントパネル16を塑性変形させて、図3(a)の二重線で示した衝突後の位置に達する。
【0039】
一方、固定回転ジョイント38は、歩行者の重心位置よりも低い位置に設けられており、パネル3(33)は、固定回転ジョイント38の周りに、上部はR方向に、下部は反対にL方向に回転し、パネル3(33)と移動回転ジョイント39によって係合しているバンパー34は、L方向(車両の前方方向)に移動する。
【0040】
以上のように、歩行者保護装置3は、衝突後に、全体として、図3(a)に示すような逆S字状に変形する。
変形後の歩行者保護装置3は、歩行者の重心位置よりも低い固定回転ジョイント38によって回転し、パネル3(33)は33’の位置まで回転し、パネル3(33’)と路面法線のなす角度は元の位置より増加し、35°以上になる。これによって、衝突後に人体の下肢部がパネル3(33’)上に倒れこむことになり、前述した図1(b)、(c)の場合と同様の転倒状態になり、頭部の傷害の発生を軽減することが可能になる。
【0041】
次に、図4を用いて、第1の実施の形態に係る歩行者保護装置3を有する車両と衝突時の人体の挙動について説明する。
【0042】
車両1と歩行者との衝突時には、前述したように、衝突の衝撃により、歩行者保護装置3のパネル1(31')、パネル2(32')は後方に移動し、バンパー(34')は前方に移動し、さらにパネル3(33')は路面法線となす角度θの値が大きくなる方向に固定回転ジョイント38を軸として回転する。
角度θは、前述したように35°以上になる。
【0043】
人体は、車両1と一次衝突(人体11)においては、下肢部が、路面法線とのなす角度θが35°以上のパネル3(33')上に沿うように衝突する。また、このとき人体11は脚部をすくわれるような形となるので、その後、C方向に進み、二次衝突時には、まず脚部が路面17に接地し(人体13)、脚部接地時には、人体13と路面法線のなす角度は35°以上かつ回転モーメントEが働いている状態となる。よって、その後人体は脚部を車両1から遠い位置に、頭部を車両1から近い位置にして路面17に対して傾斜した姿勢をとりながら、路面17に倒れる(人体15)。この姿勢は、前述したように、人体、特に頭部の傷害の程度の軽減に繋がる姿勢である。
【0044】
以上説明したように、第1の実施形態の歩行者保護装置3によれば、ボンネット部が無いか車両前後方向に短いタイプの車両1との衝突後に歩行者が路面に倒れる際に、脚部を車両から遠い位置、頭部を車両から近い位置として路面に対して傾斜した姿勢をとり、すなわち人体の傷害の程度の軽減に繋がる姿勢を歩行者に与えることができる。
【0045】
(第2の実施形態)
次に、図5を参照しながら、本発明の第2の実施形態に係る歩行者保護装置4について説明する。
図5は第2の実施形態に係る歩行者保護装置4の概要を示す側面図である。
【0046】
第2の実施形態に係る歩行者保護装置4は、3つのパネル(パネル1(41)、パネル2(42)、パネル3(43))とバンパー44が移動回転ジョイント(46、47)および固定回転ジョイント(45、48)によって一体化され、固定回転ジョイント45、48によって車両1に取り付けられた構造である。
【0047】
第2の実施形態に係る歩行者保護装置4は、下部の固定回転ジョイント48がパネル3(43)の一端に取り付けられている。
第2の実施の形態の歩行者保護装置4も、第1の実施の形態の歩行者保護装置3と同様に、衝突の衝撃力によって、人体との一次衝突における歩行者保護装置3の形状を、路面法線との角度θが35°以上になるように変形可能にする構造である。
尚、車両1の衝突前の歩行者保護装置4のパネル1(41)、パネル2(42)、パネル3(43)、バンパー44の形状を実線で、衝突後のそれぞれの形状を二重線で示す。
【0048】
図5に示すように、歩行者保護装置4を構成するパネル1(41)の車両幅方向の一端は、固定回転ジョイント45によって車両1のフロントパネル16のフロントガラス14下部に車両幅方向を軸として回転可能に軸支される。パネル1(41)の車両幅方向の他の一端は移動回転ジョイント46を介してパネル2(42)と軸着される。
パネル1(41)は、衝突前の通常の状態では、固定回転ジョイント45から車両1の前方向に張り出すような角度に支持される。
【0049】
移動回転ジョイント46を介してパネル1(41)と軸着されたパネル2(42)の車両幅方向の他の一端は、移動回転ジョイント47を介してパネル3(43)に軸着される。
また、パネル3(43)の車両幅方向の他の一端は、固定回転ジョイント48を介してバンパー44に軸着される。固定回転ジョイント48は、歩行者の重心位置よりも低い車両1のフロントパネル部分に固定されている。
【0050】
固定回転ジョイント45、48、および、移動回転ジョイント46、47は、機械式のジョイント部材、または、外力によって塑性変形可能な金属、樹脂等の部材によって形成される。
また、パネル41、42、43、バンパー44は、金属または樹脂等の矩形の平板部材で形成される。
【0051】
図5に示すように、歩行者保護装置4は、車両1前面に人体が衝突すると、衝突の衝撃力により変形し、移動回転ジョイント46、47、および、パネル1(41)、パネル2(42)、パネル3(43)の位置が車両1の後部方向であるR方向に、それぞれ、46’、47’、41’、42’、43’の位置に移動する。移動回転ジョイント47は、歩行者の略重心位置に設けられており、衝突による衝撃力により、移動回転ジョイント47を基点として、パネル1(41)とパネル2(42)とパネル3(43)が車両1の後部方向に凹部を形成し、歩行者の腰部を深く受け止める。これによって、歩行者が衝突後に車両1から離脱するときの、歩行者の下肢部と路面法線のなす角度を大きくすることができる。
車両1のフロントパネル16も歩行者保護装置4の変形により塑性変形する。
一方、パネル3(43)と固定回転ジョイント43によって係合しているバンパー44は移動しない。
【0052】
以上のように、歩行者保護装置4は、衝突後の変形により、パネル3(43’)と路面法線のなす角度θは元の位置の場合より増加し、35°以上になる。これにより、一次衝突において、人体の下肢部がパネル3(43’)上に沿うように倒れ込み、前述した図1(b)、(c)の場合と同様の良好な転倒状態になり、頭部の傷害の発生を軽減することが可能になる。
【0053】
以上に説明したように、第2の実施形態の歩行者保護装置4によれば、ボンネット部が無いか車両前後方向に短いタイプの車両1との衝突後に歩行者が、脚部を車両から遠い位置、頭部を車両から近い位置として路面に倒れることが可能になり、人体の傷害の程度の軽減に繋がる姿勢を歩行者に与えることができる。
【0054】
(第3の実施形態)
次に、図6を参照しながら、本発明の第3の実施形態に係る歩行者保護装置5について説明する。
図6(a)は、第3の実施形態に係る歩行者保護装置5の概要を示す側面図である。
【0055】
第3の実施形態に係る歩行者保護装置5は、3つのパネル(パネル1(51)、パネル2(52)、パネル3(53))とバンパー54が移動回転ジョイント(56、57)および固定回転ジョイント(55、58)によって一体化され、固定回転ジョイント55、58によって車両1に取り付けられた構造であり、この構造は、第1の実施の形態に係る歩行者保護装置3と同様である。
【0056】
第3の実施形態に係る歩行者保護装置5の特徴は、パネル1(51)およびパネル2(52)の部材として蛇腹構造の部材を用いる点である。
図6(b)に示すように、山折、谷折のある蛇腹構造の部材をパネルをパネル1(51)およびパネル2(52)に用いることにより、衝突時に、板状のパネルよりも柔軟な変形が可能であり、衝撃エネルギーをより吸収することが可能になる。
【0057】
また、第3の実施の形態の歩行者保護装置5も、第1の実施の形態の歩行者保護装置3と同様に、衝突の衝撃力によって、人体との一次衝突における歩行者保護装置5の形状を、路面法線との角度θが35°以上になるように変形可能にする構造である。
尚、車両1の衝突前の歩行者保護装置5のパネル1(51)、パネル2(52)、パネル3(53)、バンパー54の形状を実線で、衝突後のそれぞれの形状を二重線で示す。
【0058】
図6(a)に示すように、歩行者保護装置5を構成するパネル1(51)の車両幅方向の一端は、固定回転ジョイント55によって車両1のフロントパネル16のフロントガラス14下部に車両幅方向を軸として回転可能に軸支される。パネル1(51)の車両幅方向の他の一端は移動回転ジョイント56を介してパネル2(52)と軸着される。
パネル1(51)は、衝突前の通常の状態では、固定回転ジョイント55から車両1の前方向に張り出すような角度に支持される。
【0059】
移動回転ジョイント56を介してパネル1(51)と軸着されたパネル2(52)の車両幅方向の他の一端は、移動回転ジョイント57を介してパネル3(53)に軸着される。
パネル3(53)の面上には、車両幅方向に固定回転ジョイント58が設けられ、車両1に軸支される。固定回転ジョイント58は、歩行者の重心位置よりも低い車両1のフロントパネル部分に固定されている。
また、パネル3(53)の車両幅方向の他の一端は、移動回転ジョイント59を介してバンパー54に軸着される。
【0060】
蛇腹構造のパネル1(51)、パネル2(52)には、金属または樹脂等の素材の、例えば、蛇腹状に成形された部材を使用する。パネル3(53)、バンパー54は、金属または樹脂等の矩形の平板部材で形成される。
また、固定回転ジョイント55、58、および、移動回転ジョイント56、57は、機械式のジョイント部材、または、外力によって塑性変形可能な金属、樹脂等の部材によって形成される。
【0061】
図6に示すように、歩行者保護装置5は、車両1前面に人体が衝突すると、衝突の衝撃力により変形し、移動回転ジョイント56、57、および、パネル1(51)、パネル2(52)の位置が車両1の後部方向であるR方向に、それぞれ、56’、57’、51’、52’の位置に移動する。移動回転ジョイント57は、歩行者の略重心位置に設けられており、衝突による衝撃力により、移動回転ジョイント57を基点として、パネル1(51)とパネル2(52)とパネル3(53)が車両1の後部方向に凹部を形成し、歩行者の腰部を深く受け止める。これによって、歩行者が衝突後に車両1から離脱するときの、歩行者の下肢部と路面法線のなす角度を大きくすることができる。
車両1のフロントパネル16も歩行者保護装置5の変形により塑性変形する。
一方、固定回転ジョイント58は、歩行者の重心位置よりも低い位置に設けられており、パネル3(53)は、固定回転ジョイント58の周りに、上部はR方向に、下部は反対にL方向に回転し、パネル3(53)と移動回転ジョイント59によって係合しているバンパー54は、L方向(車両の前方方向)に移動する。
【0062】
以上のように、歩行者保護装置5は、衝突後に、全体として、図6に示すような逆S字状に変形し、変形後の歩行者保護装置5は、パネル3(53’)と路面法線のなす角度θが元の位置の場合より増加し35°以上になる。これにより、一次衝突において、人体の下肢部がパネル3(53’)上に沿うように倒れ込み、前述した図1(b)、(c)の場合と同様の良好な転倒状態になり、頭部の傷害の発生を軽減することが可能になる。
【0063】
以上に説明したように、第3の実施形態の歩行者保護装置5によれば、ボンネット部が無いか車両前後方向に短いタイプの車両1との衝突後に歩行者が、脚部を車両から遠い位置、頭部を車両から近い位置として路面に倒れることが可能になり、人体の傷害の程度の軽減に繋がる姿勢を歩行者に与えることができる。
【0064】
(第4の実施形態)
次に、図7を参照しながら、本発明の第4の実施形態に係る歩行者保護装置6について説明する。
図7は第4の実施形態に係る歩行者保護装置6の概要を示す側面図である。
【0065】
第4の実施形態に係る歩行者保護装置6は、1つのパネル1(61)とバンパー62が移動回転ジョイント64によって一体化され、固定回転ジョイント63によって車両1に取り付けられた構造であり、以上に説明した第1〜第3の実施形態に係る歩行者保護装置3〜5の構造よりも単純な構造を採る。
【0066】
第4の実施の形態の歩行者保護装置6も、第1の実施の形態の歩行者保護装置3と同様に、衝突の衝撃力によって、人体との一次衝突における歩行者保護装置6の形状を、路面法線との角度θが35°以上になるように変形可能にする構造である。
尚、車両1の衝突前の歩行者保護装置6のパネル1(61)、バンパー64の形状を実線で、衝突後のそれぞれの形状を二重線で示す。
【0067】
図7に示すように、歩行者保護装置6を構成するパネル1(61)は、パネル1(61)上に設けられた車両幅方向の固定回転ジョイント63によって車両1のフロントパネル16に回転可能に軸支される。固定回転ジョイント63の位置は、歩行者の重心位置よりも低い高さに設けられる。
パネル1(61)の車両幅方向の下部の一端は移動回転ジョイント64を介しバンパー62に軸着される。
【0068】
固定回転ジョイント63、および、移動回転ジョイント64は、機械式のジョイント部材、または、外力によって塑性変形可能な金属、樹脂等の部材によって形成される。
また、パネル1(61)およびバンパー62は、金属または樹脂等の矩形の平板部材で形成される。
【0069】
図7に示すように、歩行者保護装置6は、車両1前面に人体が衝突すると、衝突の衝撃力により、パネル1(61)が固定回転ジョイント63を軸に回転し、固定回転ジョイント63より上部はR方向(車両1の後方方向)に、固定回転ジョイント63より下部はL方向(車両1の前方方向)に移動する。
パネル1(63)と移動回転ジョイント64によって係合しているバンパー62はL方向(車両1の前方方向)に移動する。
歩行者保護装置6の変形に伴い、車両1のフロントパネル16も塑性変形する。
【0070】
以上のように、歩行者保護装置6は、衝突後の変形により、バンパー62は車両1の前方に、パネル1(61)の固定回転ジョイント63よりも上部は車両1の後方に回転し、パネル1(61')と路面法線のなす角度θが元の位置の場合より増加し、35°以上になる。これにより、一次衝突において、人体の下肢部がパネル1(61’)上に沿うように倒れ込み、前述した図1(b)、(c)の場合と同様の良好な転倒状態になり、頭部の傷害の発生を軽減することが可能になる。
【0071】
尚、図7に示すように、フロントパネル16のフロントガラス14下部の部分65の剛性は、衝突時の衝撃力により65’の位置まで塑性変形する程度とすることで、第1の実施形態におけるパネル1と同等の役割を果たす。
【0072】
以上に説明したように、第4の実施形態の歩行者保護装置6によれば、ボンネット部が無いか車両前後方向に短いタイプの車両1との衝突後に歩行者が、脚部を車両から遠い位置、頭部を車両から近い位置として路面に倒れることが可能になり、人体の傷害の程度の軽減に繋がる姿勢を歩行者に与えることができる。
【0073】
(第5の実施形態)
次に、図8を参照しながら、本発明の第5の実施形態に係る歩行者保護装置7について説明する。
図8は第5の実施形態に係る歩行者保護装置7の概要を示す側面図である。
【0074】
第5の実施形態に係る歩行者保護装置7は、2つのパネル1(71)、パネル2(72)、バンパー73と、2つの固定回転ジョイント74、75で構成される。
第5の実施形態に係る歩行者保護装置7は、2つのパネル1(71)およびパネル2(72)が移動回転ジョイント等により係合されていない点を特徴とする。
【0075】
第5実施の形態の歩行者保護装置7も、第1の実施の形態の歩行者保護装置3と同様に、衝突の衝撃力によって、人体との一次衝突における歩行者保護装置7の形状を、路面法線との角度θが35°以上になるように変形可能にする構造である。
尚、車両1の衝突前の歩行者保護装置7の2枚のパネル71、72、および、バンパー73の形状を実線で、衝突後のそれぞれの形状を二重線で示す。
【0076】
図8に示すように、歩行者保護装置7を構成するパネル1(71)は、パネル1(71)の車両幅方向の一端に接続された固定回転ジョイント74によって車両1のフロントパネル16のフロントガラス14の下部に回転可能に軸支される。
一方、もう1枚のパネル2(72)は、車両幅方向の下端に接続された固定回転ジョイント75により車両1のフロントパネル16に軸支される。
下部の固定回転ジョイント75の位置は、歩行者の重心位置よりも低い高さに設けられる。
パネル2(72)下端は固定回転ジョイント75を介してバンパー73に軸着される。
【0077】
固定回転ジョイント74、75は、機械式のジョイント部材、または、外力によって塑性変形可能な金属、樹脂等の部材によって形成される。
また、パネル1(71)、パネル2(72)、およびバンパー73は、金属または樹脂等の矩形の平板部材で形成される。
【0078】
衝突のない通常時には、歩行者保護装置7のパネル1(71)とパネル2(72)の固定回転ジョイントで固定されていない側の端の部分は、パネル1(71)のパネル先端がパネル2(72)の面に突き当たることにより互いに支持される。パネル2(72)上のパネル1(71)の先端が突き当たる部分に、パネル1(71)のパネル先端を嵌めることができる浅い溝を設けてもよい。この場合、溝の深さは、衝突時の衝撃によりパネル1(71)がはずれる程度とする。
【0079】
図8に示すように、歩行者保護装置7のパネル1(71)とパネル2(72)の支持状態が解消され、パネル1(71)は固定回転ジョイント74を軸にR1方向に回転し71’の位置に、パネル2(72)は固定回転ジョイント75を軸にR2方向に回転し、パネル1(71)に重なるように72’の位置に移動する。
また、バンパー73も固定回転ジョイント75を軸にL方向に回転し、73’の位置に移動する。
歩行者保護装置7の変形に伴い、車両1のフロントパネル16も塑性変形する。
【0080】
以上のように、歩行者保護装置7は、衝突後の変形により、バンパー73は車両1の前方に、パネル1(71)およびパネル2(72)は車両1の後方方向に回転し、パネル2(72')およびパネル1(71')と路面法線のなす角度θが元の位置の場合より増加し、35°以上になる。これにより、一次衝突において、人体の下肢部がパネル2(72’)上に沿うように倒れ込み、前述した図1(b)、(c)の場合と同様の良好な転倒状態になり、頭部の傷害の発生を軽減することが可能になる。
【0081】
尚、フロントガラスは、図8に示す14'の位置に配置されることが望ましい。すなわち、フロントガラスと路面法線がなす角度を、パネル61’と路面法線のなす角度θ(35°以上)に近くすることにより、より良好な転倒状態にすることができる。
【0082】
以上に説明したように、第5の実施形態の歩行者保護装置7によれば、ボンネット部が無いか車両前後方向に短いタイプの車両1との衝突後に歩行者が、脚部を車両から遠い位置、頭部を車両から近い位置として路面に倒れることが可能になり、人体の傷害の程度の軽減に繋がる姿勢を歩行者に与えることができる。
【0083】
(第6の実施形態)
次に、図9を参照しながら、本発明の第6の実施形態に係る歩行者保護装置8について説明する。
図9は第6の実施形態に係る歩行者保護装置8の概要を示す側面図である。
【0084】
第6の実施形態に係る歩行者保護装置8は、以上に説明した第1〜第5の実施形態に係る歩行者保護装置3、4、5、6、7のいずれかを使用する。
図9に示すように、衝突後の歩行者保護装置8が路面法線となす角度をX1とし、フロントガラス14の面が路面法線となす角度をX2とする。
このとき、角度X2を角度X1よりも大きく(X2>X1)することにより、衝突時に、頭部を含む上半身がフロントガラス14に乗り上げる状態になり、その結果、上半身が車両1から離脱するタイミングを下肢部が離脱するタイミングと比較して遅らすことが可能になる。これにより、より良好な転倒状態を創出することが可能になり、頭部の傷害の発生を軽減することがより可能になる。
【0085】
以上に説明したように、第6の実施形態の歩行者保護装置8によれば、ボンネット部が無いか車両前後方向に短いタイプの車両1との衝突後に歩行者が、脚部を車両から遠い位置、頭部を車両から近い位置として路面に倒れることが可能になり、人体の傷害の程度の軽減に繋がる姿勢を歩行者に与えることができる。
【0086】
(第7の実施形態)
次に、図10を参照しながら、本発明の第7の実施形態に係る歩行者拘束装置9について説明する。
図10は第7の実施形態に係る歩行者拘束装置9の概要を示す側面図である。
【0087】
第7の実施形態に係る歩行者拘束装置9は、以上に説明した第1〜第5の実施形態に係る歩行者保護装置3、4、5、6、7のいずれかに加えて設けられ、衝突後に人体の上半身部分を抱えるように拘束することにより、人体が車両1から離脱するタイミングをより遅らせるものである。
【0088】
図10(a)は、第7の実施形態に係る歩行者拘束装置9が装備された車両1の鳥瞰図、図10(b)は、図10(a)の側面図である。
図10(a)に示すように、歩行者拘束装置9は、パネル2(92)、パネル3(93)、パネル4(94)、パネル5(95)と、固定回転ジョイント97および99、移動回転ジョイント101および102、支持部96および98等により構成される。
【0089】
歩行者拘束装置9の固定回転ジョイント97および99、移動回転ジョイント101、102は、第1〜第5の実施の形態に係る行者保護装置3、4、5、6、7、の回転ジョイントとは異なり、路面法線方向を軸として回転する。
また、歩行者拘束装置9は、車両1について左右対称に装備されることから、パネル92、パネル93、固定ジョイント部97、移動ジョイント部101、支持部96より成る歩行者拘束装置9の車両右側部分と、パネル94、パネル95、固定ジョイント部99、移動ジョイント部102、支持部98より成る歩行者拘束装置9の車両左側部分は左右対称の構造と機能を有する。
【0090】
歩行者拘束装置9の右側部分は、フロントパネル16上部に固定された支持部96に路面法線方向を軸として回転する固定回転ジョイント97が取り付けられ、固定回転ジョイント97にはパネル2(92)が軸着される。すなわち、パネル2(92)は、図10(b)に示すように、固定回転ジョイント97を中心に、路面と水平に回転する。
パネル2(92)のもう一方の路面法線方向の端部には、路面法線方向を軸として回転する移動回転ジョイント101が取り付けられ、移動回転ジョイント101にはパネル3(93)が接続される。移動回転ジョイント101には回転バネが取り付けられ、パネル3(93)が回転する際の回転力を増す働きをする。
パネル3(93)は図10(a)に示すように湾曲したパネルよりなる。パネル3(93)の移動回転ジョイント101接続部とは反対の端部は、衝突前の通常時には、図示しない係止具により車両1の側部に係止される。
【0091】
歩行者拘束装置9の車両左側部分を構成するパネル94、パネル95、固定ジョイント部99、移動ジョイント部102、支持部98は、上述の車両右側部分と左右対称なので、説明は省略する。
また、パネル1(91)は、第1〜第5の実施形態に係る歩行者保護装置3、4、5、6、7を構成するパネルであり、車両幅方向を軸として回転する。衝突時には、衝突の衝撃力により、矢印R方向に移動する。パネル1(91)は、歩行者保護装置3のパネルと同様の構造と機能を有するので、ここでは説明を省略する。
【0092】
固定回転ジョイント97、99、移動回転ジョイント101、102は、機械式のジョイント部材、または、外力によって塑性変形可能な金属、樹脂等の部材によって形成される。
また、パネル2(92)、パネル4(94)は、金属または樹脂等の矩形の平板部材、パネル3(93)、パネル5(95)は、金属または樹脂等の矩形の湾曲部材により形成される。
【0093】
衝突時には、パネル3(93)およびパネル5(95)が車両1の側部にそれぞれ係止されている係止具がはずれ、パネル3(93)およびパネル5(95)が、それぞれ移動回転ジョイント101および102を軸に、それぞれ矢印P方向および矢印P’方向に回転する。移動回転ジョイント101および102には回転バネが取り付けられており、パネル3(93)およびパネル5(95)の回転力は付勢される。
この付勢された矢印P方向、および矢印P’方向の回転力により、移動回転ジョイント101および102と、それらにそれぞれ接続されたパネル2(92)およびパネル4(94)が、それぞれ固定回転ジョイント97および99を軸に矢印Q方向および矢印Q’方向に移動する。
【0094】
最終的に、車両右側のパネル2(92)およびパネル3(93)と、車両左側のパネル4(94)およびパネル5(95)は、図10(a)に示すように、パネル2(92’)およびパネル3(93’)と、パネル4(94’)およびパネル5(95’)の位置に移動する。
これは、図10(b)に示すように、車両1の前面に、歩行者の重心位置より上部の部分から、腕状のパネルが2本突出することになる。
これにより、衝突後の人体が、パネル3(93’)とパネル4(94‘)によって囲まれる空間に抱き込まれるように抱持され、上半身が車両1から離脱するタイミングを下肢部が離脱するタイミングと比較して遅らすことが可能になる。これにより、より良好な転倒状態を創出することが可能になり、頭部の傷害の発生を軽減することがより可能になる。
【0095】
以上に説明したように、第7の実施形態の歩行者拘束装置9によれば、ボンネット部が無いか車両前後方向に短いタイプの車両1との衝突後に歩行者が、脚部を車両から遠い位置、頭部を車両から近い位置として路面に倒れることが可能になり、人体の傷害の程度の軽減に繋がる姿勢を歩行者に与えることができる。
【0096】
以上、添付図面を参照しながら、本発明にかかる歩行者保護装置等の実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0097】
1………車両
3、4、5、6、7、8………歩行者保護装置
9………歩行者拘束装置
14………フロントガラス
16………フロントパネル
31、32、33………パネル
34………バンパー
35、38………固定回転ジョイント
36、37、39………移動回転ジョイント
【技術分野】
【0001】
本発明は歩行者保護装置に関する。より詳しくは、キャブオーバ、セミキャブオーバ、ワンボックス等のボンネット部が無いか車両前後方向に短いタイプの車両前面に設けられ、車両と歩行者の衝突時に人体の傷害の程度を軽減する歩行者保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両と歩行者との衝突時に、歩行者の被害をできるかぎり抑えるための様々な工夫がなされてきた。その例として、特許文献1に示すような衝撃吸収のためのエアバッグを車両前面に装備するものや、特許文献2に示すような車両下部への巻き込み防止のためのガードを取り付けるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2005−503287号公報
【特許文献2】特開2006−273282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、キャブオーバ、セミキャブオーバ、ワンボックス等のボンネット部が無いか車両前後方向に短いタイプの車両と歩行者との衝突時に歩行者の被害が大きくなる要因として、車両衝突後、車両前方に人体が跳ねられ、跳ねられた人体が路面へ倒れるときに、多くの場合、頭部が車両から遠い位置、脚部が車両から近い位置になるような方向に人体が投げ出され、路面に頭部が衝突してしまうことが挙げられる。
【0005】
これを図11に示す。図11には、車両と衝突後の人体の挙動が右から左へと時系列で示されており、右端には車両衝突時の人体の状態、左端には路面に倒れた時の人体の状態が示されている。
ボンネット部が無いか車両前後方向に短いタイプの車両では、車両100の前面が路面120に対してほぼ垂直に形成されているので、車両100と衝突後の人体(110a)は、矢印Aに示すように車両100の前方に跳ねられる。その後、脚部が路面120に接地(110b)し、矢印Bに示す方向に回転するとともに、路面120に倒れる(110c)。
この一連の過程において、人体の脚部が路面120に接地(110b)した後、人体が路面に倒れる(110c)までの間、人体は頭部を車両100から遠い方、脚部を車両100から近い方として路面120に対して傾斜した姿勢をとる。
【0006】
このとき、着地の形態によっては、矢印Bで示す人体の回転が矢印Aに示す方向の人体の移動と相まって、人体、特に頭部が路面120に衝突する速度が大きくなり、路面120との衝突時に傷害の程度が大きくなる危険性がある。
これに対し、人体の脚部が路面120に接地した後、人体が路面に倒れるまでの間、人体が脚部を車両100から遠い方、頭部を車両100から近い方として路面120に対して傾斜した姿勢をとるようにすれば、上記のような危険性が生じず、人体の傷害の程度が軽減すると考えられる。
【0007】
なお、以下人体と車両の衝突を一次衝突と呼び、図11の人体110aで示す状態とする。また、一次衝突後、人体の一部(脚部)が路面に接してから人体が路面に倒れることを二次衝突と呼び、図11の110bから110cで示す状態とする。
【0008】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたもので、ボンネット部が無いか車両前後方向に短いタイプの車両との衝突後、路面に倒れる際に、人体の傷害の程度の軽減に繋がる姿勢を歩行者に与える歩行者保護装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するために本発明は、ボンネット部が無いか車両前後方向に短いタイプの車両前面に取り付けられ、車両幅方向を軸として回転可能なパネルを備える歩行者保護装置であって、前記パネルは、車両前面に人体が衝突した場合に、前記人体が脚部を車両から遠い位置に、かつ、頭部を車両に近い位置にして路面に倒れるよう、路面法線と前記パネルのなす角度が所定の角度以上になる位置まで、衝突の衝撃力により車両の後部方向に移動することを特徴とする歩行者保護装置である。これにより、衝突後、脚部を車両から近い位置に、かつ、頭部を車両から遠い位置にして路面に倒れる場合よりも、二次衝突時に頭部が路面に衝突する速度を小さくでき、人体が被る傷害の程度を小さくすることが可能になる。
ボンネット部が無いか車両前後方向に短いタイプの車両としては、例えばキャブオーバ、セミキャブオーバ、ワンボックスタイプのものがある。
【0010】
前記パネルは、車両前面に人体が衝突した場合に、衝突の衝撃力により、前記車両に固定され、人体の重心位置よりも低い位置に設けられる固定回転軸によって回転することで、固定回転軸よりも上部が車両の後部方向に移動することが望ましい。
【0011】
また、前記パネルは、車両前面に人体が衝突した場合に、衝突の衝撃力により、人体の略重心位置に設けられる移動回転軸を基点として、前記固定回転軸よりも上部が車両の後部方向に凹部形状となることが望ましい。これによって、人体が衝突後に車両から離脱するときの、人体の下肢部と路面法線のなす角度を大きくすることができる。
【0012】
また、前記パネルの下端と軸着され、車両幅方向を軸として回転可能なバンパーを更に備え、前記バンパーは、車両前面に人体が衝突した場合に、衝突の衝撃力により、前記固定回転軸によって回転することで、車両の前方方向に移動することが望ましい。これによって、人体の脚部がすくわれる形となり、人体が衝突後に車両から離脱するときの、人体の下肢部と路面法線のなす角度を大きくすることができる。
【0013】
また、前記パネルは蛇腹構造であっても良い。これによって、一次衝突の衝突エネルギーをより吸収することができる。
また、前記車両前面への人体衝突後に移動した前記パネルと路面法線のなす角度X1は、前記車両のフロントガラスと路面法線のなす前記フロントガラスの傾斜角度X2よりも小さくしても良い。これによって、頭部を含む上半身が、フロントガラス上に乗り上げる状態になり、上半身が車両から離れて路面に落ちるタイミングを遅くすることが可能となり、頭部に被る可能性のある傷害を軽減することが可能になる。
【0014】
また、路面法線方向の固定回転軸によって前記車両の左右両側の前面に一端が軸支された第1の側面パネルと、路面法線方向の移動回転軸によって前記第1の側面パネルの他端と軸着され、前記車両の左右両側の側面に係止された第2の側面パネルを更に備え、前記車両前面に人体が衝突した場合に、衝突の衝撃力により前記第2の側面パネルの係止がはずれ、前記路面法線方向の移動回転軸を軸として前記第2の側面パネルが車両前方に回転し、前記第2の側面パネルの回転により前記路面法線方向の移動回転軸と前記第1の側面パネルを前記車両の車両幅の中心方向に移動することにより、第2の側面パネルで人体が抱持されるようにしても良い。これにより、上述の車両の幅方向を軸として回転するパネルに加えて、路面法線方向を軸とする2枚のパネルを設け、衝突時に車両の前方中央方向にパネルを回転・移動させることにより、衝突した人体を抱え込み、上半身が車両から離れて路面に落ちるタイミングを遅くすることが可能となり、頭部傷害を軽減することが可能になる。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、ボンネット部が無いか車両前後方向に短いタイプの車両との衝突後、路面に倒れる際に人体の傷害の程度の軽減に繋がる姿勢を歩行者に与える歩行者保護装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】二次衝突における人体の挙動をシミュレーションした結果の概略を示す図
【図2】脚部接地時の人体と路面のなす角とその後の回転方向について解析を行った結果の概略を示す図
【図3】本発明の第1の実施形態に係る歩行者保護装置3の概略構成を示す説明図
【図4】本発明の第1の実施形態に係る歩行者保護装置3を有する車両と衝突時の人体の挙動について説明する図
【図5】本発明の第2の実施形態に係る歩行者保護装置4の概略構成を示す側面図
【図6】本発明の第3の実施形態に係る歩行者保護装置5の概略構成を示す側面図
【図7】本発明の第4の実施形態に係る歩行者保護装置6の概略構成を示す側面図
【図8】本発明の第5の実施形態に係る歩行者保護装置7の概略構成を示す側面図
【図9】本発明の第6の実施形態に係る歩行者保護装置8の概略構成を示す側面図
【図10】本発明の第7の実施形態に係る保護者拘束装置9の概略構成を示す側面図
【図11】車両と衝突時の人体の挙動について説明する図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の歩行者保護装置の実施形態について詳細に説明する。
【0018】
本発明の歩行者保護装置について説明する前に、まず、図1を参照しながら二次衝突時の人体の挙動について説明する。
図1は二次衝突における人体の挙動を、脚部が路面に接した時の人体と路面のなす角(路面の法線に対する角度)、衝突時の車両速度を変数としてシミュレーションした結果の概略を示すものである。
図1の各図には、人体の挙動が右から左へと時系列で示されており、右端には脚部が地面に接地した時の人体の状態、左端には路面に倒れた時の人体の状態が示されている。
【0019】
なお、図1には衝突時の車両速度が20km/hの場合の結果を示すが、検討時には衝突時の車両速度を40km/hとしたシミュレーションも行っている。ただし、以下示す車両速度が20km/hの場合の結果と同様の結果が得られたため、シミュレーション結果の表示は省略した。
なお、20km/h〜40km/hは衝突事故時の一般的な車両速度であり、本シミュレーション結果は歩行者と車両の衝突の観点から広く応用可能である。
【0020】
図1(a)には脚部が路面に接した時の人体と路面のなす角を30°、図1(b)にはこれを40°、図1(c)にはこれを50°とした場合の結果を示す。
【0021】
図1(a)に示すように、脚部接地時の人体210と路面240のなす角が30°のときは、以降人体210は矢印Dに示す方向に回転し、頭部を車両200から遠い位置、脚部を車両200から近い位置にして路面240に倒れる。
この場合、前述したように、人体210の回転が矢印Cに示す方向の人体210の移動と相まって、人体210、特に頭部が路面240に衝突する速度が大きくなり、二次衝突時に傷害の程度が大きくなる危険性がある。
【0022】
一方、図1(b)、図1(c)に示すように、脚部接地時の人体220、230と路面240のなす角度が40°、50°のときは、以降人体220、230は矢印E、Fに示す方向に回転し、脚部を車両200から遠い位置、頭部を車両200から近い位置にして人体220、230が路面240に対して傾斜した姿勢をとりながら路面240に倒れる。
この場合、上記のような問題が起こらず、人体の傷害の程度を軽減することができる。
【0023】
以上より、本シミュレーションにおける条件下では、一次衝突後、脚部接地時の人体と路面法線のなす角が30°以下のとき、人体の傷害の程度が大きくなり、これが40°以上であれば人体の傷害の程度は軽減されることがわかる。
【0024】
また、脚部接地時の人体と路面のなす角(路面に対する角度)とその後の人体の回転方向について、古典的な力学解析手法を用いた解析を行った。その結果の概要を図2に示す。
【0025】
図2において、図2(a)は解析モデルを示す図であり、300は人体を模した剛体棒、310は路面を示す。
図2(a)に示す解析モデルより、剛体棒300の重心G回りのモーメントの釣り合いを考えると、次式が得られる。
Fg・I・cosθ−Ff・I・sinθ+M=0
また、μ=f(V)、Ff=μ・Fg、I=0.57・H(男性)、I=0.55・H(女性)である。
ここで、Fgは剛体棒300の重量、Ffは路面310の摩擦力、Mは剛体棒300の重心G回りの回転モーメント、Vは剛体棒300のすべり速度、Hは剛体棒300の長さ、Iは剛体棒300の下端から重心までの長さ、θは剛体棒300と路面310のなす角度、μは路面310の摩擦係数である。
【0026】
路面310の摩擦係数μに任意の値を代入して上式を回転モーメントMについて解くと、剛体棒300を回転させないために剛体棒300に与えるべき回転モーメントMが、剛体棒300の長さHと重量Fg(人体で身長、体重に相当)、及び剛体棒300と路面310のなす角度θに対して求まる。
図2(b)は、μに一般的なアスファルト道路の摩擦係数である0.7を代入して解析を行って得られた、剛体棒300の重心G回りの回転モーメントMと、角度θとの関係を示す図である。
なお、図2(b)の複数の曲線は、男性、女性、子供など、様々な体型の人体を想定して剛体棒300の長さHと重量Fgの値を定めて解析を行った結果を表わしている。
【0027】
図2(b)に示す各曲線より上の範囲の回転モーメントMが剛体棒300の重心G回りに発生すると、図2(a)より、剛体棒300は時計回りに回転する。
図2(a)における時計回りの回転は、図1に示すような車両衝突時においては、一次衝突後、二次衝突時に脚部を車両200から遠い方に、頭部を車両200から近い方にして人体が路面に対して傾斜した姿勢をとる矢印EやFで示す回転に相当し、人体の傷害の程度が小さくなると予想される回転方向である。
【0028】
図2(b)からは、本解析の条件下では、一次衝突後、脚部接地時に人体と路面のなす角θと人体の重心に与える回転モーメントMを図2(b)においてハッチングされた領域の範囲とすることで、体型に関わらず、二次衝突時に脚部を車両から遠い方に、頭部を車両から近い方にして人体が路面に対して傾斜した姿勢をとるような回転を行うことがわかる。また、シンプルな条件設定としては、一次衝突後、脚部接地時に人体と路面とのなす角θを55°以下とし、少なくとも図2(a)の時計回りの方向に回転モーメントを与えればよいことがわかる。これは図2(b)においてハッチングされた領域内の点線で囲まれた領域に相当する。
なお、図2(a)に示す角度θが55°以下であるとは、路面の法線とのなす角が35°以上であることに等しく、図2に示した解析結果は図1に示したシミュレーション結果と概ね一致する。
【0029】
以上示したように、二次衝突時、脚部を車両から遠い位置に、頭部を車両から近い位置にして人体が路面に対し傾斜した姿勢をとりながら路面に倒れることにより、人体、特に頭部の傷害の程度が軽減される。このため、一次衝突後、人体の一部(脚部)が接地時の人体と路面(法線)とのなす角度等を所望のものとすることが有効である。
これらの知見等に基づき、発明者らは歩行者保護装置を発明した。以下本発明の歩行者保護装置について説明を行う。
【0030】
(第1の実施形態)
まず、図3を参照しながら、本発明の第1の実施形態に係る歩行者保護装置3について説明する。
図3(a)は第1の実施形態に係る歩行者保護装置3の概要を示す側面図、図3(b)は、同図(a)の歩行者保護装置3を車両1の前方斜め方向から見た概略斜視図である。
【0031】
車両1は、キャブオーバタイプの車両であり、前面にフロントガラス14、フロントパネル16等を有し、歩行者保護装置3は、車両1の前面のフロントパネル16の下端から上端までを覆うように車両幅方向に配置される。
図3には図示しないが、歩行者保護装置3を、車両1のフロントパネル16の側面部分まで覆うように配置してもよい。
また、特に図示しないが、歩行者保護パネル9でフロントパネル16の前照灯や方向指示器、ナンバープレートやグリルなどの位置に該当する部分には、通常の走行に支障をきたさないよう穴部等が設けられている。
なお、本実施形態はキャブオーバタイプの車両を例にあげ説明するが、この他、セミキャブオーバ、ワンボックス等のボンネット部が無いか車両前後方向に短いタイプの車両、すなわち一次衝突後の人体が車両前方に跳ねられるような車両前面形状を有する車両、に本発明の歩行者保護装置を適用することができる。
【0032】
また、車両1は、歩行者保護装置3がフロントパネル16を覆うのではなく、フロントパネル16を歩行者保護装置3として形成しても良い。以下では、車両1は、歩行者保護装置3がフロントパネル16を覆うものとして説明するが、フロントパネル16を歩行者保護装置3として形成する場合であっても、本発明を適用できる。
【0033】
第1の実施形態に係る歩行者保護装置3は、3つのパネル(パネル1(31)、パネル2(32)、パネル3(33))とバンパー34が移動回転ジョイント(36、37、39)および固定回転ジョイント35、38によって一体化され、固定回転ジョイント35、38によって車両1に取り付けられた構造である。
尚、図3(a)では、車両1の衝突前の歩行者保護装置3のパネル1(31)、パネル2(32)、パネル3(33)、バンパー34の形状を実線で、衝突後のそれぞれの形状を二重線で示す。
【0034】
図3(a)および図3(b)に示すように、歩行者保護装置3を構成するパネル1(31)の車両幅方向の一端は、固定回転ジョイント35によって車両1のフロントパネル16のフロントガラス14下部に車両幅方向を軸として回転可能に軸支される。パネル1(31)の車両幅方向の他の一端は移動回転ジョイント36を介してパネル2(32)と軸着される。
パネル1(31)は、衝突前の通常の状態では、固定回転ジョイント35から車両1の前方向に張り出すような角度に支持される。
【0035】
移動回転ジョイント36を介してパネル1(31)と軸着されたパネル2(32)の車両幅方向の他の一端は、移動回転ジョイント37を介してパネル3(33)に軸着される。
パネル3(33)の面上には、図3(b)に示すように車両幅方向に固定回転ジョイント38が設けられ、車両1に軸支される。
また、パネル3(33)の車両幅方向の他の一端は、移動回転ジョイント39を介してバンパー34に軸着される。
【0036】
固定回転ジョイント35、38、および、移動回転ジョイント36、37、39は、例えば蝶番のような機械式のジョイント部材、または、外力によって塑性変形可能な金属、樹脂等の部材によって構築される。
また、3枚のパネル31、32、33は、金属または樹脂等の矩形の平板部材で構築される。また、バンパー34は、パネル31、32、33と同様の金属または樹脂等の矩形の平板部材からなり、移動固定ジョイント39と接続されていない他端は車両の後方方向に折り曲げられる。
【0037】
前述したように、図3(a)および図3(b)には図示していないが、歩行者保護装置3に、金属または樹脂等の部材による側面部材を取り付けてもよい。側面部分により、フロントパネル16を覆うように歩行者保護装置3を設けることが可能になる。
【0038】
図3(a)に示すように、歩行者保護装置3に人体が衝突すると、衝突による衝撃力により移動回転ジョイント36、37、および、パネル1(31)、パネル2(32)は、車両1の後部方向であるR方向に移動し、それぞれ、36’、37’、31’、32’の位置に移動する。移動回転ジョイント37は、歩行者の略重心位置に設けられており、衝突による衝撃力により、移動回転ジョイント37を基点として、パネル1(31)とパネル2(32)とパネル3(33)が車両1の後部方向に凹部を形成し、歩行者の腰部を深く受け止める。これによって、歩行者が衝突後に車両1から離脱するときの、歩行者の下肢部と路面法線のなす角度を大きくすることができる。
この移動により、車両1のフロントパネル16は塑性変形する。通常、車両のフロント部分には衝撃力を吸収しやすくするためのクラッシャブルゾーン(中空部)が設けられており、歩行者保護装置3の各パネル31、32、33と各移動回転ジョイント36、37はフロントパネル16を塑性変形させて、図3(a)の二重線で示した衝突後の位置に達する。
【0039】
一方、固定回転ジョイント38は、歩行者の重心位置よりも低い位置に設けられており、パネル3(33)は、固定回転ジョイント38の周りに、上部はR方向に、下部は反対にL方向に回転し、パネル3(33)と移動回転ジョイント39によって係合しているバンパー34は、L方向(車両の前方方向)に移動する。
【0040】
以上のように、歩行者保護装置3は、衝突後に、全体として、図3(a)に示すような逆S字状に変形する。
変形後の歩行者保護装置3は、歩行者の重心位置よりも低い固定回転ジョイント38によって回転し、パネル3(33)は33’の位置まで回転し、パネル3(33’)と路面法線のなす角度は元の位置より増加し、35°以上になる。これによって、衝突後に人体の下肢部がパネル3(33’)上に倒れこむことになり、前述した図1(b)、(c)の場合と同様の転倒状態になり、頭部の傷害の発生を軽減することが可能になる。
【0041】
次に、図4を用いて、第1の実施の形態に係る歩行者保護装置3を有する車両と衝突時の人体の挙動について説明する。
【0042】
車両1と歩行者との衝突時には、前述したように、衝突の衝撃により、歩行者保護装置3のパネル1(31')、パネル2(32')は後方に移動し、バンパー(34')は前方に移動し、さらにパネル3(33')は路面法線となす角度θの値が大きくなる方向に固定回転ジョイント38を軸として回転する。
角度θは、前述したように35°以上になる。
【0043】
人体は、車両1と一次衝突(人体11)においては、下肢部が、路面法線とのなす角度θが35°以上のパネル3(33')上に沿うように衝突する。また、このとき人体11は脚部をすくわれるような形となるので、その後、C方向に進み、二次衝突時には、まず脚部が路面17に接地し(人体13)、脚部接地時には、人体13と路面法線のなす角度は35°以上かつ回転モーメントEが働いている状態となる。よって、その後人体は脚部を車両1から遠い位置に、頭部を車両1から近い位置にして路面17に対して傾斜した姿勢をとりながら、路面17に倒れる(人体15)。この姿勢は、前述したように、人体、特に頭部の傷害の程度の軽減に繋がる姿勢である。
【0044】
以上説明したように、第1の実施形態の歩行者保護装置3によれば、ボンネット部が無いか車両前後方向に短いタイプの車両1との衝突後に歩行者が路面に倒れる際に、脚部を車両から遠い位置、頭部を車両から近い位置として路面に対して傾斜した姿勢をとり、すなわち人体の傷害の程度の軽減に繋がる姿勢を歩行者に与えることができる。
【0045】
(第2の実施形態)
次に、図5を参照しながら、本発明の第2の実施形態に係る歩行者保護装置4について説明する。
図5は第2の実施形態に係る歩行者保護装置4の概要を示す側面図である。
【0046】
第2の実施形態に係る歩行者保護装置4は、3つのパネル(パネル1(41)、パネル2(42)、パネル3(43))とバンパー44が移動回転ジョイント(46、47)および固定回転ジョイント(45、48)によって一体化され、固定回転ジョイント45、48によって車両1に取り付けられた構造である。
【0047】
第2の実施形態に係る歩行者保護装置4は、下部の固定回転ジョイント48がパネル3(43)の一端に取り付けられている。
第2の実施の形態の歩行者保護装置4も、第1の実施の形態の歩行者保護装置3と同様に、衝突の衝撃力によって、人体との一次衝突における歩行者保護装置3の形状を、路面法線との角度θが35°以上になるように変形可能にする構造である。
尚、車両1の衝突前の歩行者保護装置4のパネル1(41)、パネル2(42)、パネル3(43)、バンパー44の形状を実線で、衝突後のそれぞれの形状を二重線で示す。
【0048】
図5に示すように、歩行者保護装置4を構成するパネル1(41)の車両幅方向の一端は、固定回転ジョイント45によって車両1のフロントパネル16のフロントガラス14下部に車両幅方向を軸として回転可能に軸支される。パネル1(41)の車両幅方向の他の一端は移動回転ジョイント46を介してパネル2(42)と軸着される。
パネル1(41)は、衝突前の通常の状態では、固定回転ジョイント45から車両1の前方向に張り出すような角度に支持される。
【0049】
移動回転ジョイント46を介してパネル1(41)と軸着されたパネル2(42)の車両幅方向の他の一端は、移動回転ジョイント47を介してパネル3(43)に軸着される。
また、パネル3(43)の車両幅方向の他の一端は、固定回転ジョイント48を介してバンパー44に軸着される。固定回転ジョイント48は、歩行者の重心位置よりも低い車両1のフロントパネル部分に固定されている。
【0050】
固定回転ジョイント45、48、および、移動回転ジョイント46、47は、機械式のジョイント部材、または、外力によって塑性変形可能な金属、樹脂等の部材によって形成される。
また、パネル41、42、43、バンパー44は、金属または樹脂等の矩形の平板部材で形成される。
【0051】
図5に示すように、歩行者保護装置4は、車両1前面に人体が衝突すると、衝突の衝撃力により変形し、移動回転ジョイント46、47、および、パネル1(41)、パネル2(42)、パネル3(43)の位置が車両1の後部方向であるR方向に、それぞれ、46’、47’、41’、42’、43’の位置に移動する。移動回転ジョイント47は、歩行者の略重心位置に設けられており、衝突による衝撃力により、移動回転ジョイント47を基点として、パネル1(41)とパネル2(42)とパネル3(43)が車両1の後部方向に凹部を形成し、歩行者の腰部を深く受け止める。これによって、歩行者が衝突後に車両1から離脱するときの、歩行者の下肢部と路面法線のなす角度を大きくすることができる。
車両1のフロントパネル16も歩行者保護装置4の変形により塑性変形する。
一方、パネル3(43)と固定回転ジョイント43によって係合しているバンパー44は移動しない。
【0052】
以上のように、歩行者保護装置4は、衝突後の変形により、パネル3(43’)と路面法線のなす角度θは元の位置の場合より増加し、35°以上になる。これにより、一次衝突において、人体の下肢部がパネル3(43’)上に沿うように倒れ込み、前述した図1(b)、(c)の場合と同様の良好な転倒状態になり、頭部の傷害の発生を軽減することが可能になる。
【0053】
以上に説明したように、第2の実施形態の歩行者保護装置4によれば、ボンネット部が無いか車両前後方向に短いタイプの車両1との衝突後に歩行者が、脚部を車両から遠い位置、頭部を車両から近い位置として路面に倒れることが可能になり、人体の傷害の程度の軽減に繋がる姿勢を歩行者に与えることができる。
【0054】
(第3の実施形態)
次に、図6を参照しながら、本発明の第3の実施形態に係る歩行者保護装置5について説明する。
図6(a)は、第3の実施形態に係る歩行者保護装置5の概要を示す側面図である。
【0055】
第3の実施形態に係る歩行者保護装置5は、3つのパネル(パネル1(51)、パネル2(52)、パネル3(53))とバンパー54が移動回転ジョイント(56、57)および固定回転ジョイント(55、58)によって一体化され、固定回転ジョイント55、58によって車両1に取り付けられた構造であり、この構造は、第1の実施の形態に係る歩行者保護装置3と同様である。
【0056】
第3の実施形態に係る歩行者保護装置5の特徴は、パネル1(51)およびパネル2(52)の部材として蛇腹構造の部材を用いる点である。
図6(b)に示すように、山折、谷折のある蛇腹構造の部材をパネルをパネル1(51)およびパネル2(52)に用いることにより、衝突時に、板状のパネルよりも柔軟な変形が可能であり、衝撃エネルギーをより吸収することが可能になる。
【0057】
また、第3の実施の形態の歩行者保護装置5も、第1の実施の形態の歩行者保護装置3と同様に、衝突の衝撃力によって、人体との一次衝突における歩行者保護装置5の形状を、路面法線との角度θが35°以上になるように変形可能にする構造である。
尚、車両1の衝突前の歩行者保護装置5のパネル1(51)、パネル2(52)、パネル3(53)、バンパー54の形状を実線で、衝突後のそれぞれの形状を二重線で示す。
【0058】
図6(a)に示すように、歩行者保護装置5を構成するパネル1(51)の車両幅方向の一端は、固定回転ジョイント55によって車両1のフロントパネル16のフロントガラス14下部に車両幅方向を軸として回転可能に軸支される。パネル1(51)の車両幅方向の他の一端は移動回転ジョイント56を介してパネル2(52)と軸着される。
パネル1(51)は、衝突前の通常の状態では、固定回転ジョイント55から車両1の前方向に張り出すような角度に支持される。
【0059】
移動回転ジョイント56を介してパネル1(51)と軸着されたパネル2(52)の車両幅方向の他の一端は、移動回転ジョイント57を介してパネル3(53)に軸着される。
パネル3(53)の面上には、車両幅方向に固定回転ジョイント58が設けられ、車両1に軸支される。固定回転ジョイント58は、歩行者の重心位置よりも低い車両1のフロントパネル部分に固定されている。
また、パネル3(53)の車両幅方向の他の一端は、移動回転ジョイント59を介してバンパー54に軸着される。
【0060】
蛇腹構造のパネル1(51)、パネル2(52)には、金属または樹脂等の素材の、例えば、蛇腹状に成形された部材を使用する。パネル3(53)、バンパー54は、金属または樹脂等の矩形の平板部材で形成される。
また、固定回転ジョイント55、58、および、移動回転ジョイント56、57は、機械式のジョイント部材、または、外力によって塑性変形可能な金属、樹脂等の部材によって形成される。
【0061】
図6に示すように、歩行者保護装置5は、車両1前面に人体が衝突すると、衝突の衝撃力により変形し、移動回転ジョイント56、57、および、パネル1(51)、パネル2(52)の位置が車両1の後部方向であるR方向に、それぞれ、56’、57’、51’、52’の位置に移動する。移動回転ジョイント57は、歩行者の略重心位置に設けられており、衝突による衝撃力により、移動回転ジョイント57を基点として、パネル1(51)とパネル2(52)とパネル3(53)が車両1の後部方向に凹部を形成し、歩行者の腰部を深く受け止める。これによって、歩行者が衝突後に車両1から離脱するときの、歩行者の下肢部と路面法線のなす角度を大きくすることができる。
車両1のフロントパネル16も歩行者保護装置5の変形により塑性変形する。
一方、固定回転ジョイント58は、歩行者の重心位置よりも低い位置に設けられており、パネル3(53)は、固定回転ジョイント58の周りに、上部はR方向に、下部は反対にL方向に回転し、パネル3(53)と移動回転ジョイント59によって係合しているバンパー54は、L方向(車両の前方方向)に移動する。
【0062】
以上のように、歩行者保護装置5は、衝突後に、全体として、図6に示すような逆S字状に変形し、変形後の歩行者保護装置5は、パネル3(53’)と路面法線のなす角度θが元の位置の場合より増加し35°以上になる。これにより、一次衝突において、人体の下肢部がパネル3(53’)上に沿うように倒れ込み、前述した図1(b)、(c)の場合と同様の良好な転倒状態になり、頭部の傷害の発生を軽減することが可能になる。
【0063】
以上に説明したように、第3の実施形態の歩行者保護装置5によれば、ボンネット部が無いか車両前後方向に短いタイプの車両1との衝突後に歩行者が、脚部を車両から遠い位置、頭部を車両から近い位置として路面に倒れることが可能になり、人体の傷害の程度の軽減に繋がる姿勢を歩行者に与えることができる。
【0064】
(第4の実施形態)
次に、図7を参照しながら、本発明の第4の実施形態に係る歩行者保護装置6について説明する。
図7は第4の実施形態に係る歩行者保護装置6の概要を示す側面図である。
【0065】
第4の実施形態に係る歩行者保護装置6は、1つのパネル1(61)とバンパー62が移動回転ジョイント64によって一体化され、固定回転ジョイント63によって車両1に取り付けられた構造であり、以上に説明した第1〜第3の実施形態に係る歩行者保護装置3〜5の構造よりも単純な構造を採る。
【0066】
第4の実施の形態の歩行者保護装置6も、第1の実施の形態の歩行者保護装置3と同様に、衝突の衝撃力によって、人体との一次衝突における歩行者保護装置6の形状を、路面法線との角度θが35°以上になるように変形可能にする構造である。
尚、車両1の衝突前の歩行者保護装置6のパネル1(61)、バンパー64の形状を実線で、衝突後のそれぞれの形状を二重線で示す。
【0067】
図7に示すように、歩行者保護装置6を構成するパネル1(61)は、パネル1(61)上に設けられた車両幅方向の固定回転ジョイント63によって車両1のフロントパネル16に回転可能に軸支される。固定回転ジョイント63の位置は、歩行者の重心位置よりも低い高さに設けられる。
パネル1(61)の車両幅方向の下部の一端は移動回転ジョイント64を介しバンパー62に軸着される。
【0068】
固定回転ジョイント63、および、移動回転ジョイント64は、機械式のジョイント部材、または、外力によって塑性変形可能な金属、樹脂等の部材によって形成される。
また、パネル1(61)およびバンパー62は、金属または樹脂等の矩形の平板部材で形成される。
【0069】
図7に示すように、歩行者保護装置6は、車両1前面に人体が衝突すると、衝突の衝撃力により、パネル1(61)が固定回転ジョイント63を軸に回転し、固定回転ジョイント63より上部はR方向(車両1の後方方向)に、固定回転ジョイント63より下部はL方向(車両1の前方方向)に移動する。
パネル1(63)と移動回転ジョイント64によって係合しているバンパー62はL方向(車両1の前方方向)に移動する。
歩行者保護装置6の変形に伴い、車両1のフロントパネル16も塑性変形する。
【0070】
以上のように、歩行者保護装置6は、衝突後の変形により、バンパー62は車両1の前方に、パネル1(61)の固定回転ジョイント63よりも上部は車両1の後方に回転し、パネル1(61')と路面法線のなす角度θが元の位置の場合より増加し、35°以上になる。これにより、一次衝突において、人体の下肢部がパネル1(61’)上に沿うように倒れ込み、前述した図1(b)、(c)の場合と同様の良好な転倒状態になり、頭部の傷害の発生を軽減することが可能になる。
【0071】
尚、図7に示すように、フロントパネル16のフロントガラス14下部の部分65の剛性は、衝突時の衝撃力により65’の位置まで塑性変形する程度とすることで、第1の実施形態におけるパネル1と同等の役割を果たす。
【0072】
以上に説明したように、第4の実施形態の歩行者保護装置6によれば、ボンネット部が無いか車両前後方向に短いタイプの車両1との衝突後に歩行者が、脚部を車両から遠い位置、頭部を車両から近い位置として路面に倒れることが可能になり、人体の傷害の程度の軽減に繋がる姿勢を歩行者に与えることができる。
【0073】
(第5の実施形態)
次に、図8を参照しながら、本発明の第5の実施形態に係る歩行者保護装置7について説明する。
図8は第5の実施形態に係る歩行者保護装置7の概要を示す側面図である。
【0074】
第5の実施形態に係る歩行者保護装置7は、2つのパネル1(71)、パネル2(72)、バンパー73と、2つの固定回転ジョイント74、75で構成される。
第5の実施形態に係る歩行者保護装置7は、2つのパネル1(71)およびパネル2(72)が移動回転ジョイント等により係合されていない点を特徴とする。
【0075】
第5実施の形態の歩行者保護装置7も、第1の実施の形態の歩行者保護装置3と同様に、衝突の衝撃力によって、人体との一次衝突における歩行者保護装置7の形状を、路面法線との角度θが35°以上になるように変形可能にする構造である。
尚、車両1の衝突前の歩行者保護装置7の2枚のパネル71、72、および、バンパー73の形状を実線で、衝突後のそれぞれの形状を二重線で示す。
【0076】
図8に示すように、歩行者保護装置7を構成するパネル1(71)は、パネル1(71)の車両幅方向の一端に接続された固定回転ジョイント74によって車両1のフロントパネル16のフロントガラス14の下部に回転可能に軸支される。
一方、もう1枚のパネル2(72)は、車両幅方向の下端に接続された固定回転ジョイント75により車両1のフロントパネル16に軸支される。
下部の固定回転ジョイント75の位置は、歩行者の重心位置よりも低い高さに設けられる。
パネル2(72)下端は固定回転ジョイント75を介してバンパー73に軸着される。
【0077】
固定回転ジョイント74、75は、機械式のジョイント部材、または、外力によって塑性変形可能な金属、樹脂等の部材によって形成される。
また、パネル1(71)、パネル2(72)、およびバンパー73は、金属または樹脂等の矩形の平板部材で形成される。
【0078】
衝突のない通常時には、歩行者保護装置7のパネル1(71)とパネル2(72)の固定回転ジョイントで固定されていない側の端の部分は、パネル1(71)のパネル先端がパネル2(72)の面に突き当たることにより互いに支持される。パネル2(72)上のパネル1(71)の先端が突き当たる部分に、パネル1(71)のパネル先端を嵌めることができる浅い溝を設けてもよい。この場合、溝の深さは、衝突時の衝撃によりパネル1(71)がはずれる程度とする。
【0079】
図8に示すように、歩行者保護装置7のパネル1(71)とパネル2(72)の支持状態が解消され、パネル1(71)は固定回転ジョイント74を軸にR1方向に回転し71’の位置に、パネル2(72)は固定回転ジョイント75を軸にR2方向に回転し、パネル1(71)に重なるように72’の位置に移動する。
また、バンパー73も固定回転ジョイント75を軸にL方向に回転し、73’の位置に移動する。
歩行者保護装置7の変形に伴い、車両1のフロントパネル16も塑性変形する。
【0080】
以上のように、歩行者保護装置7は、衝突後の変形により、バンパー73は車両1の前方に、パネル1(71)およびパネル2(72)は車両1の後方方向に回転し、パネル2(72')およびパネル1(71')と路面法線のなす角度θが元の位置の場合より増加し、35°以上になる。これにより、一次衝突において、人体の下肢部がパネル2(72’)上に沿うように倒れ込み、前述した図1(b)、(c)の場合と同様の良好な転倒状態になり、頭部の傷害の発生を軽減することが可能になる。
【0081】
尚、フロントガラスは、図8に示す14'の位置に配置されることが望ましい。すなわち、フロントガラスと路面法線がなす角度を、パネル61’と路面法線のなす角度θ(35°以上)に近くすることにより、より良好な転倒状態にすることができる。
【0082】
以上に説明したように、第5の実施形態の歩行者保護装置7によれば、ボンネット部が無いか車両前後方向に短いタイプの車両1との衝突後に歩行者が、脚部を車両から遠い位置、頭部を車両から近い位置として路面に倒れることが可能になり、人体の傷害の程度の軽減に繋がる姿勢を歩行者に与えることができる。
【0083】
(第6の実施形態)
次に、図9を参照しながら、本発明の第6の実施形態に係る歩行者保護装置8について説明する。
図9は第6の実施形態に係る歩行者保護装置8の概要を示す側面図である。
【0084】
第6の実施形態に係る歩行者保護装置8は、以上に説明した第1〜第5の実施形態に係る歩行者保護装置3、4、5、6、7のいずれかを使用する。
図9に示すように、衝突後の歩行者保護装置8が路面法線となす角度をX1とし、フロントガラス14の面が路面法線となす角度をX2とする。
このとき、角度X2を角度X1よりも大きく(X2>X1)することにより、衝突時に、頭部を含む上半身がフロントガラス14に乗り上げる状態になり、その結果、上半身が車両1から離脱するタイミングを下肢部が離脱するタイミングと比較して遅らすことが可能になる。これにより、より良好な転倒状態を創出することが可能になり、頭部の傷害の発生を軽減することがより可能になる。
【0085】
以上に説明したように、第6の実施形態の歩行者保護装置8によれば、ボンネット部が無いか車両前後方向に短いタイプの車両1との衝突後に歩行者が、脚部を車両から遠い位置、頭部を車両から近い位置として路面に倒れることが可能になり、人体の傷害の程度の軽減に繋がる姿勢を歩行者に与えることができる。
【0086】
(第7の実施形態)
次に、図10を参照しながら、本発明の第7の実施形態に係る歩行者拘束装置9について説明する。
図10は第7の実施形態に係る歩行者拘束装置9の概要を示す側面図である。
【0087】
第7の実施形態に係る歩行者拘束装置9は、以上に説明した第1〜第5の実施形態に係る歩行者保護装置3、4、5、6、7のいずれかに加えて設けられ、衝突後に人体の上半身部分を抱えるように拘束することにより、人体が車両1から離脱するタイミングをより遅らせるものである。
【0088】
図10(a)は、第7の実施形態に係る歩行者拘束装置9が装備された車両1の鳥瞰図、図10(b)は、図10(a)の側面図である。
図10(a)に示すように、歩行者拘束装置9は、パネル2(92)、パネル3(93)、パネル4(94)、パネル5(95)と、固定回転ジョイント97および99、移動回転ジョイント101および102、支持部96および98等により構成される。
【0089】
歩行者拘束装置9の固定回転ジョイント97および99、移動回転ジョイント101、102は、第1〜第5の実施の形態に係る行者保護装置3、4、5、6、7、の回転ジョイントとは異なり、路面法線方向を軸として回転する。
また、歩行者拘束装置9は、車両1について左右対称に装備されることから、パネル92、パネル93、固定ジョイント部97、移動ジョイント部101、支持部96より成る歩行者拘束装置9の車両右側部分と、パネル94、パネル95、固定ジョイント部99、移動ジョイント部102、支持部98より成る歩行者拘束装置9の車両左側部分は左右対称の構造と機能を有する。
【0090】
歩行者拘束装置9の右側部分は、フロントパネル16上部に固定された支持部96に路面法線方向を軸として回転する固定回転ジョイント97が取り付けられ、固定回転ジョイント97にはパネル2(92)が軸着される。すなわち、パネル2(92)は、図10(b)に示すように、固定回転ジョイント97を中心に、路面と水平に回転する。
パネル2(92)のもう一方の路面法線方向の端部には、路面法線方向を軸として回転する移動回転ジョイント101が取り付けられ、移動回転ジョイント101にはパネル3(93)が接続される。移動回転ジョイント101には回転バネが取り付けられ、パネル3(93)が回転する際の回転力を増す働きをする。
パネル3(93)は図10(a)に示すように湾曲したパネルよりなる。パネル3(93)の移動回転ジョイント101接続部とは反対の端部は、衝突前の通常時には、図示しない係止具により車両1の側部に係止される。
【0091】
歩行者拘束装置9の車両左側部分を構成するパネル94、パネル95、固定ジョイント部99、移動ジョイント部102、支持部98は、上述の車両右側部分と左右対称なので、説明は省略する。
また、パネル1(91)は、第1〜第5の実施形態に係る歩行者保護装置3、4、5、6、7を構成するパネルであり、車両幅方向を軸として回転する。衝突時には、衝突の衝撃力により、矢印R方向に移動する。パネル1(91)は、歩行者保護装置3のパネルと同様の構造と機能を有するので、ここでは説明を省略する。
【0092】
固定回転ジョイント97、99、移動回転ジョイント101、102は、機械式のジョイント部材、または、外力によって塑性変形可能な金属、樹脂等の部材によって形成される。
また、パネル2(92)、パネル4(94)は、金属または樹脂等の矩形の平板部材、パネル3(93)、パネル5(95)は、金属または樹脂等の矩形の湾曲部材により形成される。
【0093】
衝突時には、パネル3(93)およびパネル5(95)が車両1の側部にそれぞれ係止されている係止具がはずれ、パネル3(93)およびパネル5(95)が、それぞれ移動回転ジョイント101および102を軸に、それぞれ矢印P方向および矢印P’方向に回転する。移動回転ジョイント101および102には回転バネが取り付けられており、パネル3(93)およびパネル5(95)の回転力は付勢される。
この付勢された矢印P方向、および矢印P’方向の回転力により、移動回転ジョイント101および102と、それらにそれぞれ接続されたパネル2(92)およびパネル4(94)が、それぞれ固定回転ジョイント97および99を軸に矢印Q方向および矢印Q’方向に移動する。
【0094】
最終的に、車両右側のパネル2(92)およびパネル3(93)と、車両左側のパネル4(94)およびパネル5(95)は、図10(a)に示すように、パネル2(92’)およびパネル3(93’)と、パネル4(94’)およびパネル5(95’)の位置に移動する。
これは、図10(b)に示すように、車両1の前面に、歩行者の重心位置より上部の部分から、腕状のパネルが2本突出することになる。
これにより、衝突後の人体が、パネル3(93’)とパネル4(94‘)によって囲まれる空間に抱き込まれるように抱持され、上半身が車両1から離脱するタイミングを下肢部が離脱するタイミングと比較して遅らすことが可能になる。これにより、より良好な転倒状態を創出することが可能になり、頭部の傷害の発生を軽減することがより可能になる。
【0095】
以上に説明したように、第7の実施形態の歩行者拘束装置9によれば、ボンネット部が無いか車両前後方向に短いタイプの車両1との衝突後に歩行者が、脚部を車両から遠い位置、頭部を車両から近い位置として路面に倒れることが可能になり、人体の傷害の程度の軽減に繋がる姿勢を歩行者に与えることができる。
【0096】
以上、添付図面を参照しながら、本発明にかかる歩行者保護装置等の実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0097】
1………車両
3、4、5、6、7、8………歩行者保護装置
9………歩行者拘束装置
14………フロントガラス
16………フロントパネル
31、32、33………パネル
34………バンパー
35、38………固定回転ジョイント
36、37、39………移動回転ジョイント
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボンネット部が無いか車両前後方向に短いタイプの車両前面に取り付けられ、車両幅方向を軸として回転可能なパネルを備える歩行者保護装置であって、
前記パネルは、車両前面に人体が衝突した場合に、前記人体が脚部を車両から遠い位置に、かつ、頭部を車両に近い位置にして路面に倒れるよう、路面法線と前記パネルのなす角度が所定の角度以上になる位置まで、衝突の衝撃力により車両の後部方向に移動することを特徴とする歩行者保護装置。
【請求項2】
前記パネルは、車両前面に人体が衝突した場合に、衝突の衝撃力により、前記車両に固定され、人体の重心位置よりも低い位置に設けられる固定回転軸によって回転することで、固定回転軸よりも上部が車両の後部方向に移動することを特徴とする請求項1に記載の歩行者保護装置。
【請求項3】
前記パネルは、車両前面に人体が衝突した場合に、衝突の衝撃力により、人体の略重心位置に設けられる移動回転軸を基点として、前記固定回転軸よりも上部が車両の後部方向に凹部形状となることを特徴とする請求項2に記載の歩行者保護装置。
【請求項4】
前記パネルの下端と軸着され、車両幅方向を軸として回転可能なバンパーを更に備え、
前記バンパーは、車両前面に人体が衝突した場合に、衝突の衝撃力により、前記固定回転軸によって回転することで、車両の前方方向に移動することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の歩行者保護装置。
【請求項5】
前記パネルは蛇腹構造であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の歩行者保護装置。
【請求項6】
前記車両前面への人体衝突後に移動した前記パネルと路面法線のなす角度X1は、前記車両のフロントガラスと路面法線のなす前記フロントガラスの傾斜角度X2よりも小さいことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の歩行者保護装置。
【請求項7】
路面法線方向の固定回転軸によって前記車両の左右両側の前面に一端が軸支された第1の側面パネルと、路面法線方向の移動回転軸によって前記第1の側面パネルの他端と軸着され、前記車両の左右両側の側面に係止された第2の側面パネルを更に備え、
前記車両前面に人体が衝突した場合に、衝突の衝撃力により前記第2の側面パネルの係止がはずれ、前記路面法線方向の移動回転軸を軸として前記第2の側面パネルが車両前方に回転し、前記第2の側面パネルの回転により前記路面法線方向の移動回転軸と前記第1の側面パネルを前記車両の車両幅の中心方向に移動することにより、第2の側面パネルで人体が抱持されることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の歩行者保護装置。
【請求項1】
ボンネット部が無いか車両前後方向に短いタイプの車両前面に取り付けられ、車両幅方向を軸として回転可能なパネルを備える歩行者保護装置であって、
前記パネルは、車両前面に人体が衝突した場合に、前記人体が脚部を車両から遠い位置に、かつ、頭部を車両に近い位置にして路面に倒れるよう、路面法線と前記パネルのなす角度が所定の角度以上になる位置まで、衝突の衝撃力により車両の後部方向に移動することを特徴とする歩行者保護装置。
【請求項2】
前記パネルは、車両前面に人体が衝突した場合に、衝突の衝撃力により、前記車両に固定され、人体の重心位置よりも低い位置に設けられる固定回転軸によって回転することで、固定回転軸よりも上部が車両の後部方向に移動することを特徴とする請求項1に記載の歩行者保護装置。
【請求項3】
前記パネルは、車両前面に人体が衝突した場合に、衝突の衝撃力により、人体の略重心位置に設けられる移動回転軸を基点として、前記固定回転軸よりも上部が車両の後部方向に凹部形状となることを特徴とする請求項2に記載の歩行者保護装置。
【請求項4】
前記パネルの下端と軸着され、車両幅方向を軸として回転可能なバンパーを更に備え、
前記バンパーは、車両前面に人体が衝突した場合に、衝突の衝撃力により、前記固定回転軸によって回転することで、車両の前方方向に移動することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の歩行者保護装置。
【請求項5】
前記パネルは蛇腹構造であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の歩行者保護装置。
【請求項6】
前記車両前面への人体衝突後に移動した前記パネルと路面法線のなす角度X1は、前記車両のフロントガラスと路面法線のなす前記フロントガラスの傾斜角度X2よりも小さいことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の歩行者保護装置。
【請求項7】
路面法線方向の固定回転軸によって前記車両の左右両側の前面に一端が軸支された第1の側面パネルと、路面法線方向の移動回転軸によって前記第1の側面パネルの他端と軸着され、前記車両の左右両側の側面に係止された第2の側面パネルを更に備え、
前記車両前面に人体が衝突した場合に、衝突の衝撃力により前記第2の側面パネルの係止がはずれ、前記路面法線方向の移動回転軸を軸として前記第2の側面パネルが車両前方に回転し、前記第2の側面パネルの回転により前記路面法線方向の移動回転軸と前記第1の側面パネルを前記車両の車両幅の中心方向に移動することにより、第2の側面パネルで人体が抱持されることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の歩行者保護装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−221729(P2010−221729A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−67955(P2009−67955)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
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