説明

歩行補助システム

【課題】麻痺者の足の拘縮を矯正する歩行補助システムを提供すること
【解決手段】本発明にかかる歩行補助システムは、歩行補助装置10と、歩行補助装置10のユーザHが足に装着するインナーシューズ30とを備えた歩行補助システムである。歩行補助装置10は、腿部に装着される装具12と、装具12と連結され、地面と接触する足底ユニット22と、足底ユニット22が地面と接触する際にかかる力を検出する検出センサと、検出センサの検出結果に応じて、装具12の動きを制御するコントローラ11と、を備える。インナーシューズ30は、ユーザのつま先の拘縮部分を底部34側に付勢することにより拘縮を抑制し、つま先の伸長状態を維持するつま先部31を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行補助装置と装着具を備えた歩行補助システムに関する。
【背景技術】
【0002】
事故、病気等により脚部が麻痺した人(以下、麻痺者と記述)の歩行をアシストする歩行補助装置が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、下腿装具、足首ジョイントにより下腿装具と連結される足装具を備えた歩行補助装置が開示されている。この足装具は、ソールプレート上に靴が面ファスナによって取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−110176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
麻痺者は、つま先が拘縮することにより、自分で足指を伸ばせないことが多い。特に、麻痺者のつま先が丸まった状態であることが多い。その場合、歩行補助装置を用いて歩行する際に、麻痺者の足指の先が靴に当たってしまい、麻痺者のつま先が傷んでしまう可能性がある。さらに、歩行補助装置が、地面と接触する際に足部にかかる力を検出するセンサを備え、その検出結果に応じて麻痺者の歩行を制御するような場合には、麻痺者のつま先からかかる力により、地面と接触する際にかかる力を正しく検出できない可能性もある。その場合、歩行補助装置は歩行を正確に制御できなくなってしまう。
【0006】
特許文献1にかかる歩行補助装置においては、麻痺者の足の拘縮を矯正する対策については、何ら講じられていない。
【0007】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、麻痺者の足の拘縮を矯正する歩行補助システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかる歩行補助システムは、歩行補助装置と、当該歩行補助装置のユーザが足に装着する装着具とを備えた歩行補助システムである。前記歩行補助装置は、腿部に装着される装具と、前記装具と連結され、地面と接触する足平部と、前記足平部が地面と接触する際にかかる力を検出する検出部と、前記検出部の検出結果に応じて、前記装具の動きを制御するコントローラと、を備え、前記装着具は、前記ユーザのつま先の拘縮部分を底部側に付勢することにより拘縮を抑制し、つま先の伸長状態を維持する矯正部を有する。このような構成により、矯正部によって、ユーザのつま先の拘縮部分は装着具の底部側に付勢されるため、ユーザの足の拘縮を矯正することができる。
【0009】
前記矯正部は、前記ユーザのつま先全体を被覆してもよい。このような構成により、矯正部から、底部側へ付勢する力がつま先全体にかかるため、ユーザのつま先がより均一に底部に接することができる。このため、ユーザの足の拘縮をより的確に矯正することができる。
【0010】
前記装着具において、前記矯正部の前記底部からの高さは、前記ユーザの伸長状態のつま先の高さと略同一であってもよい。このような構成により、ユーザは、矯正部によるつま先の圧迫感を感じることなく、つま先を伸長状態に維持することができる。
【0011】
前記装着具の前記底部は、前記ユーザの足からかかる荷重に対して変形しない程度の剛性を有してもよい。このような構成により、足平部には、ユーザのつま先からの集中荷重が伝わらない。そのため、足平部を柔らかい素材により構成しても、検出部は、足平部が地面と接触する際にかかる力をより正確に検出することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、麻痺者の足の拘縮を矯正する歩行補助システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施の形態1にかかる歩行補助システムの一例を示した斜視図である。
【図2】実施の形態1にかかるソールフレームの一例を示した斜視図である。
【図3】実施の形態1にかかるソールフレームの一例を示した断面図である。
【図4】実施の形態1にかかるインナーシューズの一例を示した斜視図である。
【図5】実施の形態1にかかるインナーシューズ及びソールフレームの取り付けの一例を示した側面図である。
【図6】実施の形態1にかかる歩行補助システムの装着例を示した第1の図である。
【図7】実施の形態1にかかる歩行補助システムの装着例を示した第2の図である。
【図8】一般的な靴を装着した場合の足の形状と、実施の形態1にかかるインナーシューズを装着した場合の足の形状を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態1
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態にかかる歩行補助システムの一例を、模式的に示した斜視図である。歩行補助システム100は、大きく分けて歩行補助装置10及びインナーシューズ30を備える。歩行補助装置10は、麻痺者であるユーザHの右脚に装着されており、ユーザHの膝関節にトルクを与えることによって、ユーザHの歩行動作を補助する。インナーシューズ30は、歩行補助装置10のユーザHが足に装着する装着具である。
【0015】
以下、歩行補助装置10の各部について説明する。歩行補助装置10は、大きく分けて、コントローラ11、ユーザHの腿部に装着される装具12、足首ジョイント18及びユーザHの足を支持するソールフレーム20を備える。装具12は、上腿装具13、膝ジョイント14及び下腿装具17を備える。さらに、歩行補助装置10は、歩行補助装置10のバッテリー、スイッチ等を備えた図示しない制御ユニットを備えている。
【0016】
ここで、図1に示す座標系について説明する。図面に示すXYZ座標系においてX軸がロール軸、Y軸がピッチ軸、Z軸がヨー軸に相当する。ロール軸は、ユーザHの前後方向(ソールフレーム20の長手方向)に伸びており、ピッチ軸は、ユーザHの左右方向(ソールフレーム20の横方向)に伸びており、ヨー軸は、ユーザHの上下方向に伸びている。
換言すれば、ヨー軸は、ソールフレーム20の足裏面に略直交する。
【0017】
コントローラ11は、ソールフレーム20に取り付けられた荷重センサの荷重の検出結果に基づいて、ユーザHの歩行動作を補助するように、上腿装具13、下腿装具17中に内蔵されたモータを駆動する。これにより、コントローラ11は、装具12の動きを制御する。ソールフレーム20に取り付けられた荷重センサについては後述する。
【0018】
なお、コントローラ11は、荷重センサの検出結果だけでなく、膝ジョイント14、足首ジョイント18に取り付けられた、図示されていないエンコーダの検出結果にも基づいて、モータを駆動してもよい。コントローラ11は、制御ユニットから制御信号を受信することにより、歩行補助装置10の動作の停止、変更等を実行する。コントローラ11が実行する歩行補助のための制御についての説明は省略する。
【0019】
上腿装具13は、ユーザHの上腿に固定される。なお、上腿装具13にはコントローラ11が取り付けられている。
【0020】
膝ジョイント14は、ユーザHの膝の外側に位置するモータ付ジョイント14aと、ユーザHの膝の内側に位置するサブジョイント14bを備える。ここで、モータ付ジョイント14a及びサブジョイント14bは、ユーザHの膝関節のピッチ軸と同軸に位置する。コントローラ11は、モータ付ジョイント14aのモータを駆動することによって、下腿装具17をピッチ軸周りに揺動させる。これにより、歩行補助装置10は、ユーザHの膝関節にトルクを加え、歩行動作を補助する。
【0021】
下腿装具17は、連結バー15及び右のリンク16a、左のリンク16bを備える。下腿装具17は、膝ジョイント14によって、上腿装具13に対して揺動可能に連結されている。下腿装具17は、ユーザHの下腿に固定される。
【0022】
連結バー15は、左右のリンク16a、16bを連結するとともに、下腿装具17をユーザHの下腿に固定する。リンク16a、16bは、ユーザHの下腿のピッチ軸方向両側に位置しており、足首ジョイント18を介して、ソールフレーム20と連結されている。
【0023】
足首ジョイント18は、ユーザHの足首の外側に位置するモータ付ジョイント18aと、ユーザHの足首の内側に位置するサブジョイント18bを備える。モータ付ジョイント18a及びサブジョイント18bは、ユーザHの足首のピッチ軸と同軸に位置する。コントローラ11は、モータ付ジョイント18aのモータを駆動することによって、ソールフレーム20をピッチ軸周りに揺動させる。これにより、歩行補助装置10は、ユーザHの足首関節にトルクを加え、歩行動作を補助する。
【0024】
ソールフレーム20は、ユーザHの足に固定される。ソールフレーム20は、足首ジョイント18によって、下腿装具17に対して揺動可能に連結されている。より詳しくは、ソールフレーム20は、リンク21によって足首ジョイント18と連結されており、足首ジョイント18の回転によって、下腿装具17に対して揺動する。
【0025】
ソールフレーム20は、右のリンク21a、左のリンク21b及び足底ユニット(足平部)22を備える。さらに、図1では図示が省略されているが、ソールフレーム20は、インナーシューズ30を足底ユニット22上に固定するためのベルトをさらに備える。この構成により、ソールフレーム20は、インナーシューズ30を支持する。
【0026】
図2は、ソールフレーム20の一例を示した斜視図である。リンク21には、上部に足首ジョイント18と連結するための穴が設けられている。足底ユニット22は、ユーザHが歩行補助装置10を用いて歩行する際に裏面が地面に接触する部分であり、左右の側面にはリンク21の下端が固定されている。リンク21により、足底ユニット22は装具12と接続される。ベルト23、24は、インナーシューズ30を足底ユニット22上に固定するためのベルトである。ベルト23の一端は、足底ユニット22前部の左側面に予め固定されており、他端を足底ユニット22前部の右側面に固定することができる。ベルト24の一端は、足底ユニット22中央部の左側面に予め固定されており、他端を足底ユニット22中央部の右側面に固定することができる。これにより、インナーシューズ30を足底ユニット22とベルト23、24との間に挟み込んだ状態で、ベルト23、24の他端を足底ユニット22の右側面に固定することによって、インナーシューズ30を足底ユニット22上に固定することができる。
【0027】
図3は、ソールフレーム20の断面図である。足底ユニット22は、上ソールプレート221、ラバー枠222及び下ソールプレート223を備える。上ソールプレート221は、後述するインナーシューズ30が接触する部分である。ラバー枠222は、上ソールプレート221と下ソールプレート223に挟まれている部分であり、ユーザHと接地面との間の荷重を検知する荷重センサ(検出部)が設けられている。この荷重センサにより、歩行補助装置10は、足底ユニット22が地面と接触する際にかかる力を検出することができる。下ソールプレート223は、地面と接地する部分であり、地面からの床反力をラバー枠222内の荷重センサに伝える部分である。上ソールプレート221、ラバー枠222及び下ソールプレート223は、柔軟性を有する素材で構成されている。
【0028】
次に、ユーザHの足に装着されるインナーシューズ30の構造について、詳細に説明する。図4は、インナーシューズ30の一例を示した斜視図である。インナーシューズ30は、つま先部31、踵被覆部32、側面部33及び底部34を備える靴である。
【0029】
つま先部31は、インナーシューズ30の上面前部を覆う。これにより、ユーザHがインナーシューズ30を装着した際には、つま先部31は、ユーザHのつま先部分を覆う。つま先部31は、前から後ろにかけて、なだらかに傾斜することにより底部34からの高さが高くなる形状をしている。つま先部31は、これにより、伸長状態の足のつま先の形状に密着した形状となっている。
【0030】
つま先部31の先端部の底部34からの高さは、人の足指が伸びた状態のつま先の高さと略同一である。このつま先部31は、ユーザHのつま先が拘縮する(曲がる)ことにより、ユーザHのつま先から荷重がかかっても、形状が殆ど変形しない(曲がらない)程度の剛性を有する硬質素材で構成されている。換言すれば、つま先部31は、つま先が拘縮しようとする力が生じた場合に、その反力によってつま先の拘縮部分を底部34に押し付ける(付勢する)ことにより、足の拘縮を抑制する。この硬質素材は、例えばカーボン素材の強化プラスチック、アルミ等の素材である。
【0031】
踵被覆部32は、インナーシューズ30の後面を覆うことにより、ユーザの踵部分を覆う被覆部である。踵被覆部32は、例えば綿、布等の軟質素材で構成されている。これにより、ユーザの装着性が向上され、靴ずれ等を抑制することができる。
【0032】
側面部33は、つま先部31及び踵被覆部32と、底部34とを連結する部材である。図3において、側面部33は、つま先部31と底部34とを連結する前側面部33aと、踵被覆部32と底部34とを連結する後側面部33bとに分けられる。側面部33のうち、少なくとも前側面部33aは、剛性を有する硬質素材で構成される。
【0033】
底部34は、足のつま先が載る部分である前底部34aと、それ以外の足の部分が載る後底部34bに分けられる。底部34のうち、少なくとも前底部34aは、剛性を有する硬質素材で構成されている。この硬質素材は、前述の通り、ユーザHのつま先から荷重がかかっても殆ど変形しない程度の剛性を有する。
【0034】
図5は、インナーシューズ30をソールフレーム20の足底ユニット22上(上ソールプレート221上)に固定した状態を示す側面図である。インナーシューズ30は、ベルト23、24により、足底ユニット22上に固定される。ベルト23は、インナーシューズ30のつま先部31を跨ぐようにして足底ユニット22の両端に固定され、つま先部31を足底ユニット22上に固定する。ベルト24も同様にして、インナーシューズ30の中央部を足底ユニット22上に固定する。
【0035】
次に、図6、図7を用いて、歩行補助システム100の装着方法を示す。まず、ユーザHは、上腿及び下腿に、予め装具12を装着する。
【0036】
次に、ユーザHは、インナーシューズ30を足に装着する。図6は、ユーザHが予め上腿及び下腿に装具12を装着した状態で、足を手元に引き寄せ、インナーシューズ30を手元で足に装着している状態を示している。
【0037】
そして、ユーザHは、インナーシューズ30を装着した足を足底ユニット22の上面に置いて、インナーシューズ30を足底ユニット22の上面に固定する。図7において、ユーザHは、台Sに座った状態で、ベルト23、24の端を足底ユニット22の右側面に固定することにより、足元のインナーシューズ30を足底ユニット22の上面に固定している。この具体的な固定方法については、図5にて説明した通りである。
【0038】
以上に説明した歩行補助システム100は、以下の効果を奏する。
【0039】
第1に、歩行補助システム100は、ユーザの足の拘縮を抑制することができる。
【0040】
以下、この効果の詳細について説明する。図8は、足が拘縮し、つま先が丸くなった状態の麻痺者の足の形状の断面図である。図8(a)は、一般的な靴を装着した場合の麻痺者の足の形状の断面を示しており、図8(b)は、インナーシューズ30を装着した場合の麻痺者の足の形状の断面を示している。
【0041】
一般的な靴は、つま先部が柔軟な素材で構成されており、麻痺者のつま先が曲がり丸くなっても、靴底に対してつま先を押しつける程度の弾性力は有さない。そのため、麻痺者が靴を装着した場合でも、足の拘縮を抑制することができず、つま先は丸くなった状態のままである。
【0042】
図8(a)には、足の拘縮により、麻痺者のかかとと足Fの指先だけが靴底Pに接触している様子が示されている。この場合には、指先以外の足Fの前半分は靴底Pに接触せず、指先が靴底Pにほぼ点接触している状態になる。そのため、麻痺者の荷重による重力は、かかとから力F1が、指先からは力F2が、それぞれ集中して靴底Pにかかる。指先からの力F2は、図8(a)において右回りの方向にかかる力であるため、靴底Pのつま先は、図8(a)において右回りの方向に曲がった状態になる。
【0043】
このような状態で、麻痺者が歩行補助装置10を装着した場合には、ソールフレーム20のつま先の狭い部分に、前述の力F2が集中荷重としてかかることになる。そのため、ソールフレーム20のその部分には、力F2に対応する内部応力が発生する。その内部応力を、ラバー枠222に取り付けられた荷重センサは、床からの反力として検出してしまう。それにより、荷重センサは正しく麻痺者と接地面との間の荷重を検知することができなくなる可能性がある。その場合には、歩行補助装置10は、歩行を正確に制御できなくなる。
【0044】
このように、地面からの反力の検出結果に基づいてユーザの歩行をアシストするウェアラブルロボットにおいては、足の形状が丸まったような場合では地面からの反力を正確にセンシングできない可能性があるという、ロボット特有の課題があった。言いかえれば、ロボットが地面からの反力を正確にセンシングするか否かは、ユーザの足の形状に依存していた。
【0045】
本実施の形態にかかる歩行補助装置10では、インナーシューズ30における足のつま先の上部が接触するつま先部31と、足のつま先の下部が接触する前底部34aは、つま先から力がかかっても曲がらない程度の剛性を有する硬質部材で構成されている。そして、つま先部31の底部34からの高さは、人の足指が伸びた状態のつま先の高さと略同一である。そのため、つま先部31からは、足Fのつま先の拘縮部分を底部34に押し付ける(付勢する)力が生ずるため、麻痺者は足をインナーシューズ30に装着した際、足指が曲がった状態からまっすぐに伸びた状態になる。つまり、麻痺者の足の形状が自然に矯正されて、拘縮を抑制することができる。
【0046】
図8(b)には、以上のようにして、麻痺者の足Fのつま先の伸長が維持されている状態が示されている。ここで、「つま先が伸長した状態」は、足先の指が伸びているだけでなく、足Fの足裏部分が、足底ユニット22の上ソールプレート221の表面と略同一に接触している状態を示す。図8(b)において、麻痺者の荷重として、かかとからは力F3が、指先からは力F4が、それぞれ底部34にかかる。ここで、力F4は、図8(a)における力F2に比較して弱い力である。そして、足Fの足裏部分が、足底ユニット22の上ソールプレート221の表面と略同一に接触しているため、麻痺者の荷重は、足裏全体から底部34に比較的均一にかかる。そのため、足底ユニット22のつま先部分に発生する内部応力が抑制される。それにより、荷重センサはより的確に麻痺者と接地面との間の荷重を検知することができるため、歩行補助システム100は、歩行をより正確に制御することができる。
【0047】
そして、図8(a)に示した足の状態のままで歩行した場合には、麻痺者は足のつま先が靴底に接触したままで歩行するため、つま先に傷みが生じることもありえる。しかし、麻痺者がインナーシューズ30を装着した場合には、拘縮自体が抑制されることにより、麻痺者のつま先の傷みを防止する効果も得られる。
【0048】
さらに、前底部34aは硬質部材であるため、麻痺者のつま先が丸まることにより力が加えられても、図8(a)のようには曲がらず、曲がり方は抑制される。そのため、前底部34aの下面に配置された足底ユニット22につま先からの集中荷重が殆ど伝わらず、荷重センサの床反力の誤検出を抑制することができる。
【0049】
以上の通り、歩行補助システム100は、ユーザの足部形状に依存せずに、地面からの反力をより正確にセンシングすることができる。
【0050】
なお、つま先が曲がる足の拘縮には、つま先が丸くなる場合と、反り返る場合の2通りが考えられる。本実施の形態にかかるインナーシューズ30では、つま先部31及び前底部34aのいずれも硬質部材により構成されているため、どちらの拘縮も抑制することができる。
【0051】
第2に、歩行補助システム100は、麻痺者の足の拘縮を、より的確に矯正することができる。インナーシューズ30において、つま先部31は、麻痺者のつま先全体を被覆している。そのため、つま先部31から、底部34側へ締め付ける力が麻痺者のつま先全体にかかるため、ユーザのつま先がより均一に底部に接することができるため、麻痺者の足の拘縮を、より的確に矯正できる。
【0052】
第3に、歩行補助システム100を装着した麻痺者は圧迫感を感じることなく、つま先の伸長状態を維持することができる。つま先部31の底部34からの高さは、麻痺者の伸長状態のつま先の高さと略同一であるため、麻痺者は、つま先部31を伸長状態にした際に、つま先部31によってつま先が圧迫されることがない。
【0053】
第4に、歩行補助システム100において、足底ユニット22を、より多様な素材により構成することができる。つま先部31の底部34は、ユーザの足からの力に対して変形しない程度の剛性を有する。このような構成により、ソールフレーム20の足底ユニット22には、麻痺者のつま先からの力が伝わらない。そのため、足底ユニット22を柔らかい素材により構成しても、荷重センサは、足底ユニット22が地面と接触する際にかかる力をより正確に検出することができる。
【0054】
その他にも、歩行補助システム100は、以下の効果を奏する。
【0055】
麻痺者は、無理な姿勢をとらずに、歩行補助システム100を簡単に着脱できる。一般的な麻痺者の歩行をアシストするウェアラブルロボット、麻痺者の立脚を補助する長下肢装具においては、装具の構成部品全てが一体となって固定された状態で装着されるため、装着の際に、麻痺者は無理な姿勢をとる必要があった。これは、装具の装着具(特に、拘束のベースとなる足部)が分割できないということに起因する。これにより、そのため、重度の麻痺者、片麻痺者等、麻痺の度合いが重い麻痺者は、装具を装着できない可能性があった。
【0056】
しかしながら、本実施の形態にかかる歩行補助システム100においては、人体の足部を包み込むインナーシューズ30と、体重を支持するソールフレーム20は自在に分割できる。このため、図6、図7において示した通り、麻痺者は足にインナーシューズ30を手元で装着することができる。そして、インナーシューズ30は、ソールフレーム20のベルト23、24により、簡単にソールフレーム20の面上に固定することができる。以上の通り、麻痺者は、無理な姿勢をとる必要がなく、単純な装着方法で、歩行補助装置10を装着することができる。このため、歩行補助システム100は、実用化に適したウェアラブルロボットといえる。
【0057】
歩行補助システム100において、ソールフレーム20は、歩行中に足から外れないよう強固に、かつ人体に痛みを与えず、麻痺者の足に固定することができる。ソールフレーム20への足の拘束が強固すぎると足を傷めてしまい、逆に緩すぎるとソールフレーム20は体重を支持できない。一般的な長下肢装具は、フレームに足をベルトで固定し、その状態で上から靴を履いて締めていた。そのため、ベルトからの力が足の特定部分にかかることが多く、足を傷めてしまうことが、長下肢装具における足部の欠点として存在した。
【0058】
しかしながら、本実施の形態にかかる歩行補助システム100においては、インナーシューズ30によって足を包み込み、その上からベルトにより足をソールフレーム20の面上に固定するため、足にかかる圧力が分散される。それにより、足を強固に拘束するとともに、足に生ずる傷みも抑制することができる。
【0059】
歩行補助システム100は、インナーシューズ30のつま先の開き角(歩向角)を簡単に微調整できる。歩行時のつま先の開き角には個人差があるため、人に合わせたインナーシューズ30のつま先の開き角の微調整が必要となる。一般的な長下肢装具では、一人ひとり、フレームをつま先の開き角に応じて曲げることによるカスタマイズ製作がなされている。そのため、麻痺者が長下肢装具のつま先の開き角の微調整をすることはできないという、足部の問題点がある。
【0060】
しかしながら、本実施の形態にかかる歩行補助システム100においては、インナーシューズ30は、ソールフレーム20に対して簡易に動かすことができる。これにより、足底ユニット22上におけるインナーシューズ30の位置を簡単に変更することができる。そのため、つま先の開き角、歩向角の個人差があっても、麻痺者による変更が簡易に実行できる。
【0061】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、インナーシューズ30は、足底ユニット22の上面(上ソールプレート221の上面)に予め固定されていてもよい。インナーシューズ30は、踵被覆部32を備えなくともよい。インナーシューズ30は、側面部33がなく、つま先部31と、それに連結された底部34のみが備わるサンダル状の形状であってもよい。
【0062】
足底ユニット22の上面(上ソールプレート221の上面)に、麻痺者の足に装着される装着具として、つま先部31、前側面部33a及び前底部34aのみが設けられていてもよい。さらに、足底ユニット22の上面に、つま先部31及びつま先部31と直接連結された前底部34aのみが設けられていてもよい。麻痺者は、足底ユニット22の上面に足を載せ、つま先をその装着具に挿入することにより、足の拘縮を抑制することができる。
【0063】
つま先部31は、麻痺者のつま先全体を覆うのではなく、つま先の関節部分のみを覆う程度の大きさでもよい。このような構成でも、麻痺者のつま先には、足底ユニット22の上面側に付勢する力が働くことにより、麻痺者の足の拘縮が抑制される。
【0064】
ただし、麻痺者のつま先は、足先の指が伸びているだけでなく、地面と接触する足Fの足裏部分が足底ユニット22の上ソールプレート221の表面と略同一に接触している状態が好ましい。これにより、麻痺者の荷重が足裏全体から靴底に比較的均一にかかり、荷重センサはより的確に麻痺者と接地面との間の荷重を検知することができるからである。
【0065】
つま先部31等は、剛性を有する素材でなくとも、ゴム等の柔らかいが弾性を有する素材により構成されていてもよい。つまり、つま先部31等は、麻痺者のつま先の拘縮部分を底部側に付勢する程度の弾性力を有するような、いかなる素材でもよい。
【0066】
足底ユニット22上において、インナーシューズ30を固定する部品は、ベルトに限らず、例えば紐などのバンドでもよい。そのようなバンドによって、インナーシューズ30を足底ユニット22とバンドの中央部に挟み込み、インナーシューズ30を足底ユニット22側に締めつけることによって、インナーシューズ30を固定することができる。あるいは、足底ユニット22上及びインナーシューズ30の底部34に面ファスナを設けることにより、足底ユニット22上にインナーシューズ30を接着してもよい。
【符号の説明】
【0067】
10 歩行補助装置
11 コントローラ
12 装具
13 上腿装具
14 膝ジョイント
15 連結バー
16 リンク
17 下腿装具
18 足首ジョイント
20 ソールフレーム
21 リンク
22 足底ユニット
23、24 ベルト
30 インナーシューズ
31 つま先部
32 踵被覆部
33 側面部
34 底部
100 歩行補助システム
221 上ソールプレート
222 ラバー枠
223 下ソールプレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歩行補助装置と、当該歩行補助装置のユーザが足に装着する装着具とを備えた歩行補助システムであって、
前記歩行補助装置は、
腿部に装着される装具と、
前記装具と連結され、地面と接触する足平部と、
前記足平部が地面と接触する際にかかる力を検出する検出部と、
前記検出部の検出結果に応じて、前記装具の動きを制御するコントローラと、を備え、
前記装着具は、前記ユーザのつま先の拘縮部分を前記装着具の底部側に付勢することにより拘縮を抑制し、つま先の伸長状態を維持する矯正部を有する、
歩行補助システム。
【請求項2】
前記矯正部は、前記ユーザのつま先全体を被覆する、
請求項1に記載の歩行補助システム。
【請求項3】
前記装着具において、前記矯正部の前記底部からの高さは、前記ユーザの伸長状態のつま先の高さと略同一である、
請求項1又は2に記載の歩行補助システム。
【請求項4】
前記装着具の前記底部は、前記ユーザの足からかかる荷重に対して変形しない程度の剛性を有する、
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の歩行補助システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−94322(P2013−94322A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238339(P2011−238339)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)